JP5376366B2 - 電磁波発生装置および電磁波発生方法 - Google Patents

電磁波発生装置および電磁波発生方法 Download PDF

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Description

本発明は、パルス列レーザー光、テラヘルツ波またはミリ波を発生させる電磁波発生装置および電磁波発生方法に関する。
電磁波とは、電磁場の周期的な変化が波動として伝播するものであり、電磁場の周期的な変化が波動として伝播するものは、すべて電磁波に含まれる。
また、特に本出願において、波長が10−7m(0.1μm)〜10−2m(10mm)のパルスレーザー光、パルス列レーザー光、テラヘルツ波およびミリ波の電磁波を対象とする。
なお、近赤外(波長800nm)のフェムト秒レーザー光、可視光のフェムト秒レーザーも含め、レーザー発光するものは全ての波長において、本出願における電磁波に含まれる。
テラヘルツ波(THz波)の周波数は、0.3〜10THzであり、ν(周波数)=c(光速)/λ(波長)の関係式より、波長に換算すると、波長は1mm〜30μmである。
テラヘルツ波は、電波と光波の中間領域に当たる電磁波であり、電波のように紙やプラスティック等様々な物質に対して透過性を持ち、同時に光のように適度な空間分解能も兼ね備える。さらに、物質によって固有の吸収スペクトルを有することから、例えば分光測定により、小包などに隠された物質の種類を同定し、爆発物などの危険物を検知するような応用が期待できる。これを実現するには、様々な周波数で同調するテラヘルツ波の発生装置が不可欠である。
フェムト秒レーザー光を非線形光学素子に照射し、分光測定に適したテラヘルツ波を発生させる手段に関しては、例えば、特許文献1、2及び非特許文献1〜3に開示されている。
特許文献1と非特許文献1は、空間位相変調器を用いたフェムト秒レーザーパルス列の生成と単一周波数発生手段を開示している。
広帯域光パルスの位相スペクトルに変調を加えることにより、可変な複数の波長におけるパルス列を発生させることができる。この原理を利用して生成した等間隔のフェムト秒パルス列を非線形光学素子に照射させると、テラヘルツ波パルスが連続波の波形を形成する。したがって、テラヘルツ波パルス間隔を周期とする周波数成分が強く発生する。この手段は、フェムト秒パルス列の時間間隔とパルス数を自由に変えられる利点がある。
非特許文献2は、複屈折結晶の複屈折性を用いたフェムト秒パルス列の生成と単一周波数発生手段を開示している。
フェムト秒レーザー光を複屈折結晶に透過させると、その複屈折性により、異なる偏光方向のフェムト秒レーザーパルス間に時間遅延が生じる。この原理を用いて、時間的に等間隔のパルス列を生成し、単一周波数のテラヘルツ波を発生させることができる。しかし、この手段では、フェムト秒パルス列の時間間隔を変えるためには、結晶の長さが異なる複屈折性結晶を必要とする。
非特許文献3では、空間分散ビームの差周波混合を用いた単一周波数発生手段を開示している。
フェムト秒レーザー光を回折格子に照射することによって、空間的に分散を与えた楕円形のビーム(空間分散ビーム)を生成し、それを二つに分ける。一つのビームを空間的にシフトさせた状態で2つのビームを重ねて非線形光学素子に照射することでテラヘルツ波を発生させる。このとき、2つの光の波長差はほぼ一定となるので、差周波混合により単一周波数のテラヘルツ波が発生する。また、片方の空間分散ビームを空間的にシフトさせる値を変化させることによって、テラヘルツ波の周波数同調が可能である。
特許文献2は、単一のフェムト秒レーザーパルスによる広帯域発生手段を開示している。これは広帯域のフェムト秒パルスレーザーを用いて、広帯域のテラヘルツ波パルスを発生させる手段である。
特開2001−174764号公報 特開2002−223017号公報
J.Ahn, A.V.Efimov, R.D.Averitt, A.J.Taylor,"Terahertz waveform synthesis via optical rectification of shaped ultrafast laser pulses"Opt.Express 11,(2003.10.6) Froberg, N.M.Bin Bin Hu, Xi−Cheng Zhang, Auston,D.H,"Terahertz radiation from a photoconducting antenna array"IEEE J.Quantum Elecctron 2291−2301(1992.10) Ken−ichiro Maki,Chiko Otani,"Terahertz beam steering and frequency tuning by using the spatial dispersion of ultrafast laser pulses"Opt.Express 16,10158−10169(2008.7.7)
上述した空間位相変調器を用いたフェムト秒パルス列生成および単一周波数のテラヘルツ波発生方法(特許文献1と非特許文献1)は、市販化されている空間光変調器が、二百万円程度と高価であることや、位相変調する液晶画素の表示切替速度に依存するため応答速度が遅い(数十Hz程度)という問題点がある。また、二つの回折格子と空間光変調器(SLM)を使用するため、レーザー光強度が低下し、テラヘルツ波の出力が低下する問題点もある。
上述した複屈折結晶を用いた手段(非特許文献2)は、結晶の長さによって発生するテラヘルツ波の周波数が一意に決まる。そのため、所望の周波数に同調するためには、所定の長さの複屈折性結晶を準備しなければならない。したがって、任意の周波数に周波数同調することは、実質的に不可能である。さらに、結晶を透過することによってパルス幅が拡がり、レーザー光の尖頭値の値が低下するので、テラヘルツ波の信号強度の低下を防ぐために分散補償が必要になるという問題がある。
上述した空間分散ビームの差周波混合を用いた手段(非特許文献3)は、空間分散ビーム形成のためにフェムト秒パルスの尖頭値の値が低下する問題点がある。また、テラヘルツ波発生は二次の非線形光学効果を利用するので、その出力はレーザー光強度の二乗に比例する。したがって、テラヘルツ波の出力が低下する欠点がある。
上述した単一のフェムト秒レーザーパルスによる広帯域発生手段(特許文献2)は、測定した短パルスのテラヘルツ波の時間波形をフーリエ変換することによって、様々な周波数成分の情報を得ることができる。しかし、一つのテラヘルツパルスに全ての周波数成分を含んでいるため、特定の周波数領域の高分解分光測定には使用できない。
本発明は、これらの問題点の少なくとも一部を改善するためになされたものである。本発明の実施例の目的は、例えば、簡易かつ安価な構造で、パルス列レーザー光、テラヘルツ波またはミリ波を発生させることができる電磁波発生装置と電磁波発生方法を提供することにある。
本発明の一実施態様の電磁波発生装置は、以下の特徴点を有する。
(1)互いに対向して配置された第1および第2のミラーを有し、該第1のミラーは、互いにその一部で密接する境界線を跨いで段差部を有する第1と第2の反射面を有し、前記第1および第2のミラーの間に入射するフェムト秒レーザーパルス又はピコ秒レーザーパルスのパルスレーザー光を、前記境界線を跨ぐ前記第1と第2の反射面での反射により第1と第2の反射面の段差間隔に比例する時間差で空間的に分布した複数のパルスレーザー光からなる空間分布パルス列レーザー光に変換する空間分布パルス列変換装置と、
前記空間分布パルス列レーザー光を集光して同軸上に時間的に等間隔な複数のパルスレーザー光からなる同軸パルス列レーザー光を生成する集光レンズとを備えることを特徴とする。
(2)また、本発明の実施態様として、本発明の電磁波発生装置は、前記フェムト秒レーザーパルス又はピコ秒レーザーパルスのパルスレーザー光を出力するパルスレーザー装置を備える。
(3)また、前記電磁波は、パルス列レーザー光、テラヘルツ波またはミリ波である。
(4)さらに、前記同軸パルス列レーザー光から周波数帯域の狭いテラヘルツ波またはミリ波を発生させる光伝導アンテナ又は非線形光学結晶を備える。
(5)また、前記第1のミラーの第1と第2の反射面の一方又は両方をその反射面に直交する方向に連続的に移動し、境界線における段差間隔を変化させるパルス間隔調整装置を備え、
これにより前記同軸パルス列レーザー光の時間間隔を連続的に変化させる。
(6)本発明の一実施態様において、前記第1と第2の反射面上において、境界線方向をy軸、これに直交する方向をz軸、前記反射面に直交する方向をx軸とする3次元空間において、
前記第2のミラーの反射面は、xz平面およびxy平面において、前記第1と第2の反射面に平行であり、
前記パルスレーザー光は、少なくともx軸に対し傾斜して前記第1および第2のミラーの間に入射する。
(7)また、本発明の別の実施態様において、前記第1と第2の反射面上において、境界線方向をy軸、これに直交する方向をz軸、前記反射面に直交する方向をx軸とする3次元空間において、
前記第2のミラーの反射面は、xz平面において前記第1と第2の反射面と平行であり、かつxy平面において、前記第1と第2の反射面と非平行である。
(8)さらに、本発明の別の実施態様において、前記第2のミラーは、互いにその一部で密接する境界線を跨いで段差部を有する第3と第4の反射面を有する。
また本発明の一実施態様の電磁波発生方法は、以下の特徴点を有する。
(9)互いに対向して配置された第1および第2のミラーを準備し、該第1のミラーに、互いにその一部で密接する境界線を跨いで段差部を有する第1と第2の反射面を設け、
前記第1および第2のミラーの間にフェムト秒レーザーパルス又はピコ秒レーザーパルスのパルスレーザー光を入射させ、該パルスレーザー光を前記境界線を跨ぐ前記第1と第2の反射面での反射により第1と第2の反射面の段差間隔に比例する時間差で空間的に分布した複数のパルスレーザー光からなる空間分布パルス列レーザー光に変換し、
前記空間分布パルス列レーザー光を集光して同軸上に時間的に等間隔な複数のパルスレーザー光からなる同軸パルス列レーザー光を生成する、ことを特徴とする。
(10)また、本発明の実施態様として、本発明の電磁波発生方法は、前記同軸パルス列レーザー光を光伝導アンテナ又は非線形光学結晶に入射し、周波数帯域の狭いテラヘルツ波またはミリ波を発生させる。
(11)また、前記第1のミラーの第1と第2の反射面の一方又は両方をその反射面に直交する方向に連続的に移動して境界線における段差間隔を変化させ、前記同軸パルス列レーザー光の時間間隔を連続的に変化させる。
本発明によれば、従来技術の問題点を改善できる。
以下は本発明の実施例の効果である。
本発明の一実施態様では、単一のパルスレーザー光(フェムト秒レーザー光又はピコ秒レーザー光)から時間的に等間隔の同軸パルス列レーザー光を生成し、さらにそれを用いて可変調整可能な単一周波数のテラヘルツ波またはミリ波を発生させるものである。
上述した本発明の装置及び方法によれば、空間分布パルス列変換装置により、単一のパルスレーザー光を複数のパルスレーザー光からなる空間分布パルス列レーザー光に変換し、集光レンズにより、空間分布パルス列レーザー光を同軸上に時間的に等間隔な複数のパルスレーザー光からなる同軸パルス列レーザー光を生成することができる。
また、本発明の実施形態によれば、光伝導アンテナ又は非線形光学結晶を備え、前記同軸パルス列レーザー光を光伝導アンテナ又は非線形光学結晶に入射することにより、周波数帯域の狭いテラヘルツ波またはミリ波を発生させることができる。
さらに、パルス間隔調整装置を備え、前記第1のミラー第1と第2の反射面の一方又は両方をその反射面に直交する方向に連続的に移動して境界線における段差間隔を変化させ、前記同軸パルス列レーザー光の時間間隔を連続的に変化させることにより、発生する周波数帯域の狭いテラヘルツ波またはミリ波の同調周波数を変化させることができる。
また、パルス間隔調整装置を、例えばピエゾ素子とこれに電圧を印加する電源装置で構成することで、同調周波数を高い応答速度(例えば1〜3kHz)で変化させることができる。
上述した本発明の実施例に係る装置及び方法は、従来技術と比較して以下の効果を有する。
(1) 単一のパルスレーザー光(フェムト秒パルス)による広帯域のテラヘルツ波発生と比べて、広帯域な周波数成分から所望の周波数の分光情報を得ることができるために、周波数成分を切り分ける必要がない。
(2) 従来の複屈折光学結晶によるパルス列レーザー光(フェムト秒パルス列)を生成する手段では、所望の周波数に同調するためには、所定の長さの複屈折光学結晶を準備する必要があり、任意の周波数に同調することは実質的に不可能であることと、パルス幅拡大によるテラヘルツ波の出力低下を防ぐための分散補償が必要であるという問題点があった。しかし、本発明では、第1と第2の反射面の段差間隔を変化させれば、容易に周波数同調が可能であり、ミラー間の反射のみを用いているため、分散補償の必要がない。
(3) 空間分散ビームの差周波混合の場合には、レーザー光強度の低下とパルス幅の拡大によるテラヘルツ波の出力低下という欠点があるが、本発明はミラー間の反射を用いているだけなので、その問題は解消される。
(4) 空間位相変調器と比較すると、リニアアクチュエータで段差ミラーを制御することで数kHzの応答速度で周波数を同調することができ、数百倍高速であることや、ミラーとピエゾ素子で数十万円程度であり、(1/10)にできる。さらに、空間位相変調器では、二つの回折格子と空間光変調器によって、レーザー光強度が低下し、テラヘルツ波の出力も低下するという問題点があったが、本発明ではミラー間の反射のみを用いているため、その問題は解消される。
本発明による段差ミラーの構成図である。 本発明による段差ミラーの作用説明図である。 本発明におけるレンズ集光による同軸パルス列レーザー光生成の説明図である。 本発明により発生するテラヘルツ波の波形図である。 同軸パルス列レーザー光から周波数帯域の狭いテラヘルツ波を発生させる非線形光学素子の模式図である。 本発明の一実施例による電磁波発生装置の全体構成図である 図6の補足説明図である 段差ミラーと対向ミラーが平行な場合の位置関係を示す図である。 段差ミラーと対向ミラーが平行でない場合の位置関係を示す図である。 本発明の第1実施例を示す図である。 本発明の第2実施例を示す図である。 本発明の第3実施例を示す図である。
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
初めに、図1〜図4を参照して、本発明の原理を説明する。なお、以下の説明において、パルスレーザー光はフェムト秒レーザー光であるが、本発明はこれに限定されず、ピコ秒レーザー光であってもよい。
図1は、本発明による段差ミラーの構成図である。この図において、(A)は段差ミラー22の正面図と側面図、(B)は対向ミラー24と段差ミラー22間の往復反射の模式図である。ここで、段差ミラーとは、互いにその一部で密接する境界線23を跨いで段差部を有する第1と第2の反射面22a,22bを有する反射ミラーであり、対向ミラー24はこれに対抗する反射ミラーである。
図2は、本発明による段差ミラーの作用説明図である。この図において、
(A)はレーザー光の段差ミラーでの反射の説明図、(B)〜(D)はレーザー光における時間遅延の空間分布図である。
また、図3は、本発明におけるレンズ集光による同軸パルス列レーザー光生成の説明図である。
さらに、図4は、本発明により発生するテラヘルツ波の波形図である。この図において、(A)は単一のフェムト秒パルスから発生するテラヘルツ波の波形を示す図、(B)はフェムト秒パルス列から発生するテラヘルツ波の波形を示す図である。なお、図4(A)および(B)の右向きの矢印は時間軸を表す。
本発明は、例えば、単一のパルスレーザー光(フェムト秒レーザー光又はピコ秒レーザー光)から、時間的に等間隔に複数個のパルスレーザー光が並ぶ同軸パルス列レーザー光を生成し、さらにそれを用いて単一周波数のテラヘルツ波またはミリ波を発生させるものである。
ここで、テラヘルツ波とミリ波は共に電磁波である。また、発生した電磁波は後述するように周波数同調が可能である。
図1(A)に示すように、段差ミラー22の反射面22a,22b(第1と第2の反射面)を数百μm程度ずらして隙間がないように組み合わせる。すなわち、段差ミラー22は、2枚の互いに平行な反射面22a,22bを有し、その反射面の密接する境界線23を境に可変調整可能な段差間隔ΔLを有する。
段差ミラー22の境界部分23でレーザー光を反射させると、図1(A)の右図に示すように、上側の第1反射面22aで反射したレーザー光2と下側の第2反射面22bで反射したレーザー光2の間に、段差ミラー22の段差間隔ΔLだけ光学距離に差が生じる。従って、単一のパルスレーザー光2から2つのパルス列が生成される。
次に、図1(B)のように、対向ミラー24と段差ミラー22との間で、レーザー光2を往復反射させる。
このとき、図2(A)で示すように、段差ミラー22の境界線23に対するレーザー光2の反射位置を、(1)、(2)、(3)の順番にずらしていく。なおこの図2(B)〜図2(D)で、21a、21b、21cは、それぞれ、(1)(2)(3)の反射位置において段差ミラー22の境界線23に当たるレーザーの位置である。
段差ミラー22における一回目の反射(1)で、図1(B)の上側の第1反射面22aで反射したレーザー光2を基準として、下側の第2反射面22bで反射したレーザー光2の間に、段差ミラー22の段差間隔ΔLの光学距離だけ時間遅延が生じる(図2(B))。
次に、二回目の反射(2)では、(1)と(2)で上側の第1反射面22aで反射したレーザー光を基準として、(1)で下側の第2反射面22bで反射し、(2)で上側の第1反射面22aで反射したレーザー光は段差間隔ΔLの光学距離だけ時間遅延が生じ、(1)と(2)で下側の第2反射面22bで反射したレーザー光は2ΔLの光学距離だけ時間遅延が生じる(図2(C))。
最後に三回目の反射(3)では、(1)と(2)と(3)で上側の第1反射面22aで反射したレーザー光を基準として、(1)と(2)で上側の第1反射面22aで反射し、(3)で下側の第2反射面22bで反射したレーザー光は段差間隔ΔLの光学距離だけ時間遅延が生じ、(1)で上側の第1反射面22aで反射し、(2)と(3)で下側の第2反射面22bで反射したレーザー光は2ΔLの光学距離だけ時間遅延が生じ、(1)と(2)と(3)で下側の第2反射面22bで反射したレーザー光は3ΔLの光学距離だけ時間遅延が生じる(図2(D))。
このようにして、レーザー光2は、図2(D)に示すように、段差間隔ΔLに相当する時間間隔の複数のパルスレーザー光からなるパルス列3(「空間分布パルス列レーザー光」と呼ぶ)に変換される。
そして、異なった時間遅延で空間的に分布した空間分布パルス列レーザー光3を集光レンズ26で集光することで、図3に示すように、時間的にのみ等間隔なパルスレーザー光4(「同軸パルス列レーザー光」と呼ぶ)が生成される。
なお、集光レンズ26で集光することによって、時間的に等間隔なパルス列を生成しているわけではない。集光レンズ26で集光することで、時間的かつ空間的にも分布しているレーザー光を時間的にのみ列となるレーザー光に変換している。
次に、単一周波数のテラヘルツ波が発生する原理を説明する。
まず、1つのパルスレーザー光3(フェムト秒レーザー光)を光伝導アンテナの一つであるダイポールアンテナに照射したときに発生したテラヘルツ波の時間波形は、図4(A)の右図のようになる。これは、フェムト秒パルス照射により、電極間にキャリアが励起され、キャリアの時間変化に対応して電磁波が放射されることによる。詳細は、後述する装置構成の説明において説明する。
次に、数ps程度の時間間隔の同軸パルス列レーザー光4(フェムト秒パルス列)でテラヘルツ波5bを発生した場合の時間波形を図4(B)に示す。テラヘルツ波パルスが連続波の波形を形成する。したがって、THzパルス間隔を周期とする周波数成分が強く発生する。
さらに、段差ミラー22の段差間隔を調整することにより、パルス間隔を任意に変化させることができる。つまり、第1反射面22a又は第2反射面22bを移動させる簡易的な方法で、テラヘルツ波の周波数を所望の周波数に同調することが可能である。
また、テラヘルツ波に替えてミリ波を発生させることも同様にできる。
上記の例において、電磁波発生素子として光伝導アンテナの一種のダイポールアンテナを用いた場合、周波数可変範囲は0.6THz〜1THzである。
しかるに、空間位相変調器で生成したフェムト秒パルス列を、非線形光学素子の一種であるZnTe結晶に照射して発生させた場合のTHz波の周波数は、1THz〜3THzまで周波数可変であることは公知である。
そして、光源として、同じパルス幅100fs程度のフェムト秒レーザー光を用いても、発生素子として、例えば、非線形光学素子の一種であるZnTe結晶を用いれば、ミリ波帯からテラヘルツ波帯の周波数の電磁波を発生させることができる。よって、ミリ波を発生させることも可能であるし、ミリ波帯からテラヘルツ波帯の周波数の電磁波を発生させることも可能である。
図5は、同軸パルス列レーザー光4から周波数帯域の狭いテラヘルツ波5を発生させる非線形光学素子30の模式図である。この図は、非線形光学素子の1つであるダイポール型の光伝導アンテナ素子を示している。
光伝導アンテナ素子30は、高速応答する低温成長ガリウムヒ素基板31上に、中央部に微小なギャップ32aを形成するように電極32が取り付けられている。このギャップ32a間に電源33で電圧を印加した状態で、ガリウムヒ素のバンドギャップよりも大きな光子エネルギーを持ったレーザーパルス4をギャップ32aに照射すると、キャリアが励起される。この時間変化に応答してテラヘルツ波5が放射される。
図6は、本発明による電磁波発生装置の全体構成図であり、図7は図6の補足説明図である。図6において、本発明の電磁波発生装置は、空間分布パルス列変換装置20と集光レンズ26を備える。
空間分布パルス列変換装置20は、図1(A)に示したように、互いに対向して配置された第1および第2のミラー22,24を有し、第1のミラー22は、互いにその一部で密接する境界線23を跨いで段差部を有する第1と第2の反射面22a,22bを有する。第1と第2の反射面22a,22bは、好ましくは互いに平行である。第1のミラー22は段差ミラーであり、第2のミラー24はこの例では段差のない対向ミラーである。
また、空間分布パルス列変換装置20は、図1(B)および図2(A)〜図2(D)に示したように、第1および第2のミラー22,24の間に入射するフェムト秒レーザーパルス又はピコ秒レーザーパルスのパルスレーザー光2を、境界線23を跨ぐ第1と第2の反射面22a,22bでの反射により第1と第2の反射面の段差間隔に比例する時間差で空間的に分布した複数のパルスレーザー光からなる空間分布パルス列レーザー光3に変換する。
図6において、空間分布パルス列変換装置20は、さらに、パルス間隔調整装置28を有する。
パルス間隔調整装置28は、段差ミラー22を構成する第1と第2の反射面22a,22bの一方又は両方をその反射面に直交する方向に連続的に移動可能なリニアアクチュエータを有する。
例えば、第1と第2の反射面22a,22bの少なくとも一方に、段差間隔ΔLを可変調整可能なリニアアクチュエータが設けられ、段差間隔ΔLを連続的に移動可能になっている。リニアアクチュエータは、例えばピエゾ素子とこれに電圧を印加する電源装置とで構成することができる。
集光レンズ26は、図3に示したように、空間分布パルス列レーザー光3を集光して同軸上に時間的に等間隔な複数のパルスレーザー光からなる同軸パルス列レーザー光4を生成する。
図6において、本発明の電磁波発生装置は、さらに、パルスレーザー装置10を備える。
パルスレーザー装置10は、フェムト秒レーザーパルス又はピコ秒レーザーパルスのパルスレーザー光1を出力する。フェムト秒レーザー光のパルス幅は(1〜数100)×10−15秒(fs)であり、又はピコ秒レーザー光のパルス幅は(1〜数100)10−12秒(ps)である。
上述した空間分布パルス列変換装置20は、単一のパルスレーザー光1(図7(C)参照)からパルス間隔が等しい同軸パルス列レーザー光4(図7(D)参照)を生成する。ここで、同軸パルス列レーザー光4とは、図3に示したように、時間的に等間隔な複数のパルスレーザー光4を意味する。但し、時間的に等間隔であることは必須ではない。
この例において、本発明の電磁波発生装置は、さらに、反射ミラー12a,12b、シリンドリカルレンズ14a,14b、反射ミラー16、および反射ミラー18a,18bを備える。
反射ミラー12a,12bは、パルスレーザー光1を反射して2つのシリンドリカルレンズ14a,14bに導く機能を有する。
2つのシリンドリカルレンズ14a,14bは、それぞれの焦点距離f,fが異なっており、パルスレーザー光1のビーム断面形状を円形(図7(A)参照)から楕円形(図7(B)参照)に変換する。これは、シリンドリカルレンズの焦点距離の比(f/f)が、レーザービーム形状の長径対短径の比が等しくなるように変換される。断面形状が楕円形のパルスレーザー光を、楕円パルスレーザー光2と呼ぶ。
反射ミラー16は、シリンドリカルレンズ14a,14bを出た楕円パルスレーザー光2を反射して段差ミラー22と対向ミラー24の間に導く機能を有する。
この例において、段差ミラー22と対向ミラー24は互いに平行に配置され、反射ミラー16は、段差ミラー22と対向ミラー24との間で楕円パルスレーザー光2を往復反射させ、かつ段差ミラー22における反射ごとに、その反射位置を境界線23に交差する方向にずらすように位置決めされている。
上述した空間分布パルス列変換装置20により、第1および第2のミラー22,24の間に入射するパルスレーザー光2を、境界線23を跨ぐ第1と第2の反射面22a,22bでの反射により第1と第2の反射面の段差間隔に比例する時間差で空間的に分布した複数のパルスレーザー光からなる空間分布パルス列レーザー光3に変換することができる。
すなわち段差ミラー22と対向ミラー24の間で複数回反射された楕円パルスレーザー光2は、図2(B)〜図2(D)に示したように、時間的に等間隔なパルス間隔で空間的に分布した空間分布パルス列レーザー光3となる。
反射ミラー18a,18bは、段差ミラー22と対向ミラー24の間から出た空間分布パルス列レーザー光3を反射して集光レンズ26に導く機能を有する。
集光レンズ26は、空間的に分布した空間分布パルス列レーザー光3を集光して時間的に等間隔なパルス列レーザー光(同軸パルス列レーザー光4)を生成する。
図6において、本発明の電磁波発生装置は、さらに、電磁波変換デバイス30を備える。
電磁波変換デバイス30は、同軸パルス列レーザー光4から周波数帯域の狭いテラヘルツ波5またはミリ波を発生させる。電磁波変換デバイス30には、光伝導アンテナ又は非線形光学結晶等を用いることができる。
上述した図6及び図7は、フェムト秒パルス列(パルス列レーザー光4)の生成と、これを用いたテラヘルツ波5を発生させる装置の構成を示している。
ビーム径が2mmの円形のフェムト秒レーザー光1から、焦点距離の異なる2つのシリンドリカルレンズ14a,14bを用いて、レーザー光2の形状を楕円にする。そして、そのレーザー光2を図1に示したように段差ミラー22と対向ミラー24の間で往復反射させ、フェムト秒パルス列(空間分布パルス列レーザー光3)に変換する。その後、空間的に分布した空間分布パルス列レーザー光3から集光レンズ26で同軸パルス列レーザー光4を生成し、図5に示したダイポール型光伝導アンテナ30のギャップ32aに集光させる。すると、時間的に等間隔なフェムト秒パルス列(同軸パルス列レーザー光4)によって電流変調が加わり、低温成長ガリウムヒ素基板31の裏面からテラヘルツ波5が放射される。
図8と図9は、空間分布パルス列変換装置20を構成する第1のミラーと第2のミラーの位置関係を示す実施形態図である。
このうち、図8(A)(B)は、第1のミラーと第2のミラーが平行な場合、図9(A)(B)は、第1のミラーと第2のミラーが平行でない場合であり、それぞれ(A)は第2のミラー24Aが単一の反射面を有する場合、(B)は、第2のミラー24Bが互いにその一部で密接する境界線を跨いで段差部を有する第3と第4の反射面24a,24bを有する場合である。
すなわち、これらの図において、第2のミラーは、平面ミラーでも段差ミラーでもどちらでもよい。以下、第2のミラーが平面ミラーの場合を「対向平面ミラー」、第2のミラーが段差ミラーの場合を「対向段差ミラー」と呼ぶ。
図8と図9において、第1のミラーと第2のミラーの位置関係は、図8(A)(B)と図9(A)(B)の4通りある。
図8(A)は、段差ミラー22と対向する対向平面ミラー24Aの反射面が、xy平面とxz平面(但し、xyz軸は互いに直交するものとする。以下、同じ。)の両方において、平行な関係にある場合である。すなわち、第1と第2の反射面上において、境界線方向をy軸、これに直交する方向をz軸、第1と第2の反射面22a,22bに直交する方向をx軸とする3次元空間において、第2のミラー(対向平面ミラー24A)の反射面は、xz平面およびxy平面において、第1と第2の反射面22a,22bに平行に構成されている。
図8(A)の位置関係は、上述した図6に相当する。
図8(B)は、段差ミラー22と対向する対向段差ミラー24Bの反射面が、xy平面とxz平面の両方において、平行な関係にある場合である。すなわち、第1と第2の反射面上において、境界線方向をy軸、これに直交する方向をz軸、第1と第2の反射面22a,22bに直交する方向をx軸とする3次元空間において、第2のミラー(対向段差ミラー24B)の反射面は、xz平面およびxy平面において、第1と第2の反射面22a,22bに平行に構成されている。
図8(A)の位置関係は、上述した図6において対向ミラー24を対向段差ミラー24Bに置き換えた場合に相当する。その他の構成は図6と同様である。
上述した図8(A)(B)の例では、パルスレーザー光2は、少なくともx軸に対し傾斜して第1および第2のミラー22、24の間に入射するようになっている。この傾斜角は、反射ごとに、その反射位置を境界線23に交差する方向にずらす距離に応じて、設定する。
上述した構成により、楕円パルスレーザー光2をx軸に対しわずかに傾斜させて入射させることにより、段差ミラー22と対向ミラー24との間で楕円パルスレーザー光2を往復反射させ、かつ段差ミラー22における反射ごとに、その反射位置を境界線23に交差する方向にずらすことができる。
また、図8(B)の配置では、対向段差ミラー24Bにおいてもその反射位置を第3と第4の反射面24a,24bの境界線に交差する方向にずらすことができる。
図9(A)は、段差ミラー22と対向する対向平面ミラー24Aの反射面が、xy平面では非平行、xz平面では平行な関係にある場合である。すなわち、第1と第2の反射面上において、境界線方向をy軸、これに直交する方向をz軸、前記反射面に直交する方向をx軸とする3次元空間において、第2のミラー(対向平面ミラー24A)の反射面は、xz平面において第1と第2の反射面22a,22bと平行であり、かつxy平面において、第1と第2の反射面22a,22bと非平行に構成されている。
図9(B)は、段差ミラー22と対向する対向段差ミラー24Bの反射面が、xy平面では非平行、xz平面では平行な関係にある場合である。すなわち、第1と第2の反射面上において、境界線方向をy軸、これに直交する方向をz軸、前記反射面に直交する方向をx軸とする3次元空間において、第2のミラー(対向段差ミラー24B)の反射面は、xz平面において第1と第2の反射面22a,22bと平行であり、かつxy平面において、第1と第2の反射面22a,22bと非平行に構成されている。
上述した図9(A)(B)の例では、対向平面ミラー24A又は対向段差ミラー24Bの反射面は、パルスレーザー光2を段差ミラー22の異なる位置に反射するように設定されている。
上述した構成により、パルスレーザー光2を段差ミラー22と対向ミラー24との間に入射させることにより、段差ミラー22と対向平面ミラー24A又は対向段差ミラー24Bとの間でパルスレーザー光2を往復反射させ、かつ段差ミラー22における反射ごとに、その反射位置を境界線23に交差する方向にずらすことができる。
また、図8(B)の配置では、対向段差ミラー24Bにおいてもその反射位置を第3と第4の反射面24a,24bの境界線に交差する方向にずらすことができる。
なお、図8と図9において、xz平面では対向する二つのミラーの反射面は平行である必要がある。そうでなければ、21a(図2(B))と21b(図2(C))との位置xの座標間隔と21b(図2(C))と21c(図2(D))との位置xの座標間隔が等しくならない。それが等しくないと、それぞれのフェムト秒パルスのレーザー光強度にばらつきが生じてしまい、さらには、発生するテラヘルツ波の出力強度もばらつくという問題点がある。
以下、本発明の実施例を説明する。
図10は、本発明の第1実施例を示す図である。
この図において、図10(A)は、パルスレーザー装置10から出力された単一のパルスレーザー光1(フェムト秒パルス)をダイポール型光伝導アンテナ30に照射させたときに測定された時間波形を示す図である。
この図から、約0.4psのパルス幅の電磁波パルスが一つ発生していることがわかる。
図10(C)の曲線A(単一パルス)は、図10(A)の時間波形を元にフーリエ変換を用いて計算されたテラヘルツ波のスペクトルを示す図である。
この図から、図10(A)の電磁波パルスの線幅は約650GHzであり、広帯域にテラヘルツ波が発生していることがわかる。
次に、図10(B)は、図6に示した本発明の電磁波発生装置を用いて、一つのフェムト秒パルスから4つのフェムト秒パルス(パルス列レーザー光4)を発生させ、それダイポール型光伝導アンテナ30に照射させたときに測定された時間波形を示す図である。
この図から、テラヘルツ波パルス5が4つ確認でき、その時間間隔は約1.3psの実質的に等間隔な周期となっていることがわかる。また、図10(C)の曲線B(パルス列)の電磁波スペクトルは、その周期に相当する0.8THzが中心周波数成分であり、線幅は約130GHzであった。
図10(C)の曲線B(パルス列)は、曲線A(単一パルス)の場合と比較すると、明らかに周波数の帯域が狭いことがわかる。これらの結果から、図1〜図4で説明した原理を用いた図6の装置によって、フェムト秒パルス列(パルス列レーザー光)を生成し、狭帯域なテラヘルツ波5が発生したことがわかる。これによって、分光測定において、より高い周波数分解能のスペクトルを取得することができる。
次に、周波数同調が可能なことを示すために、中心周波数を1THzとするテラヘルツ波が発生したときの第1と第2の反射面の段差間隔を0(基準)として、0、30μm、70μm、210μmの値だけその間隔を離して実験を行った。
図11は、本発明の第2実施例を示す図であり、片方の反射面(22a又は22b)をシフトさせた時のテラヘルツ波の時間波形を示す図である。
この図において、(A)(B)(C)はそれぞれ段差間隔が0、70μm、210μmの場合のテラヘルツ波の時間波形を示す。(A)(B)(C)の順でパルス間隔が広くなっていることがわかる。
図12は、本発明の第3実施例を示す図であり、片方の反射面(22a又は22b)をシフトさせた時のテラヘルツ波シペクトルの変化を示す図である。
この図において、0.6THz、0.8THz、0.9THz、1THzにパワーのピークが発生している。また、反射面の段差間隔を広げれば、テラヘルツ波の中心周波数が低周波数側にシフトしている。これより、原理と一致する実験結果が得られ、0.6THzから1THzまで周波数可変であることを示せた。
以下、本発明を従来技術と比較して、その特徴を説明する。
本発明の特徴は、単一のパルスレーザー光(フェムト秒レーザー光又はピコ秒レーザー光)から、時間的に等間隔に複数個のパルスレーザー光が並ぶ同軸パルス列レーザー光を生成し、さらにそれを用いて単一周波数のテラヘルツ波またはミリ波を発生させることができることである。
従来、フェムト秒レーザーを用いた単一周波数のテラヘルツ波発生においては、空間分散ビームの差周波混合による手段と複屈折結晶を用いたフェムト秒パルス列によるテラヘルツ波発生手段とがある。
前者(空間分散ビームの差周波混合)の場合、レーザー光に分散を与えるためパルスの尖頭値が低下する。非線形光学素子の励起によるテラヘルツ波発生は二次の非線形光学効果であり、テラヘルツ波の出力はレーザー光強度の二乗に比例するので、テラヘルツ波の出力が低下してしまう欠点がある。
後者(複屈折結晶を用いたフェムト秒パルス列)の場合、複屈折結晶の長さに比例した時間遅延によってフェムト秒パルス列を生成するため、結晶の長さで一意にパルス間隔が決定され、発生するテラヘルツ波の周波数を任意に変えるためには、長さの異なる結晶に置き換えなければならない。また、結晶を透過すると、群速度分散によりパルス幅が拡がる。パルスの尖頭値低下によるテラヘルツ波の出力低下を防ぐために、負分散を与えてパルス幅を狭くする分散補償が必要である。加えて、フェムト秒パルス列を生成するという点において、空間光変調器を用いた方法がある。空間光変調器は自由に波形整形ができるが、値段が高価(二百万円程度)かつその応答速度が遅い(数十Hz)等の問題がある。
これらに対して、本発明は、ミラーの反射のみを用いるので、群速度分散によるパルス幅の拡大への影響がほとんどない。さらに、段差ミラーの段差間隔を変えるだけで、容易にフェムト秒パルス間隔を制御できるため、発生するテラヘルツ波の同調も容易である。制御には、ピエゾ素子などが考えられ、数kHzで周波数同調が可能であり、値段も数十万円程度である。
本発明により同調可能な周波数の範囲は、レーザー励起する非線形光学素子の種類によって制限される。また、パルス数は反射回数に比例して増やせるので、テラヘルツ波の線幅をより狭くすることは、技術的に簡単である。
市販されている出力パワーが1Wのフェムト秒レーザーの場合を例に挙げる。単一パルスによるテラヘルツ波発生では、レーザーパワーは10mWでテラヘルツ波の出力は飽和する。したがって、一つのパルスあたり10mWとして100個のパルスを生成することができ、周波数1THzで線幅10GHzを達成することができる。
なお、光源はフェムト秒レーザーでなく、ピコ秒レーザーでも可能である。上記のレーザーは、パルス幅が1fsから33psの間のレーザーを指す。
ここで、33psとは、30GHzの周波数において、本発明の手法で狭線幅なスペクトルの電磁波を発生させるための最長のパルス幅である。
また、段差ミラーの形成には図1、図2では形状がD型の反射ミラーを用いたが、形状がD型であることは必須ではない。境界線23のエッジ部分で反射可能なミラーであればいい。
さらに、テラヘルツ波の発生部は、光伝導アンテナのみならず、非線形光学結晶など、非線形性を持つデバイスを有すればよい。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない限りで種々に変更できることは勿論である。
1 パルスレーザー光(フェムト秒レーザー光又はピコ秒レーザー光)、
2 楕円パルスレーザー光、3 空間分布パルス列レーザー光、
4 同軸パルス列レーザー光、
10 パルスレーザー装置、12a,12b 反射ミラー、
14a,14b シリンドリカルレンズ、
16 反射ミラー、18a,18b 反射ミラー、
20 空間分布パルス列変換装置、
22 第1のミラー(段差ミラー)、
22a 第1反射面、22b 第2反射面、23 境界線、
24 第2のミラー(対向ミラー)、
24A 対向平面ミラー、24B 対向段差ミラー、
24a 第3反射面、24b 第4反射面、
26 集光レンズ、
28 パルス間隔調整装置(ピエゾ素子と電源装置)、
30 電磁波変換デバイス
(非線形光学素子、光伝導アンテナ又は非線形光学結晶)、
31 低温成長ガリウムヒ素基板、32 電極、
32a ギャップ、33 電源

Claims (11)

  1. 互いに対向して配置された第1および第2のミラーを有し、該第1のミラーは、互いにその一部で密接する境界線を跨いで段差部を有する第1と第2の反射面を有し、前記第1および第2のミラーの間に入射するフェムト秒レーザーパルス又はピコ秒レーザーパルスのパルスレーザー光を、前記境界線を跨ぐ前記第1と第2の反射面での反射により第1と第2の反射面の段差間隔に比例する時間差で空間的に分布した複数のパルスレーザー光からなる空間分布パルス列レーザー光に変換する空間分布パルス列変換装置と、
    前記空間分布パルス列レーザー光を集光して同軸上に時間的に等間隔な複数のパルスレーザー光からなる同軸パルス列レーザー光を生成する集光レンズとを備えることを特徴とする電磁波発生装置。
  2. 前記フェムト秒レーザーパルス又はピコ秒レーザーパルスのパルスレーザー光を出力するパルスレーザー装置を備えることを特徴とする請求項1記載の電磁波発生装置。
  3. 前記電磁波は、パルス列レーザー光、テラヘルツ波またはミリ波であることを特徴とする請求項1記載の電磁波発生装置。
  4. 前記同軸パルス列レーザー光から周波数帯域の狭いテラヘルツ波またはミリ波を発生させる光伝導アンテナ又は非線形光学結晶を備えることを特徴とする請求項1に記載の電磁波発生装置。
  5. 前記第1のミラーの第1と第2の反射面の一方又は両方をその反射面に直交する方向に連続的に移動し、境界線における段差間隔を変化させるパルス間隔調整装置を備え、
    これにより前記同軸パルス列レーザー光の時間間隔を連続的に変化させることを特徴とする請求項1に記載の電磁波発生装置。
  6. 前記第1と第2の反射面上において、境界線方向をy軸、これに直交する方向をz軸、前記反射面に直交する方向をx軸とする3次元空間において、
    前記第2のミラーの反射面は、xz平面およびxy平面において、前記第1と第2の反射面に平行であり、
    前記パルスレーザー光は、少なくともx軸に対し傾斜して前記第1および第2のミラーの間に入射する、ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波発生装置。
  7. 前記第1と第2の反射面上において、境界線方向をy軸、これに直交する方向をz軸、前記反射面に直交する方向をx軸とする3次元空間において、
    前記第2のミラーの反射面は、xz平面において前記第1と第2の反射面と平行であり、かつxy平面において、前記第1と第2の反射面と非平行である、ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波発生装置。
  8. 前記第2のミラーは、互いにその一部で密接する境界線を跨いで段差部を有する第3と第4の反射面を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波発生装置。
  9. 互いに対向して配置された第1および第2のミラーを準備し、該第1のミラーに、互いにその一部で密接する境界線を跨いで段差部を有する第1と第2の反射面を設け、
    前記第1および第2のミラーの間にフェムト秒レーザーパルス又はピコ秒レーザーパルスのパルスレーザー光を入射させ、該パルスレーザー光を前記境界線を跨ぐ前記第1と第2の反射面での反射により第1と第2の反射面の段差間隔に比例する時間差で空間的に分布した複数のパルスレーザー光からなる空間分布パルス列レーザー光に変換し、
    前記空間分布パルス列レーザー光を集光して同軸上に時間的に等間隔な複数のパルスレーザー光からなる同軸パルス列レーザー光を生成する、ことを特徴とする電磁波発生方法。
  10. 前記同軸パルス列レーザー光を光伝導アンテナ又は非線形光学結晶に入射し、周波数帯域の狭いテラヘルツ波またはミリ波を発生させる、ことを特徴とする請求項9に記載の電磁波発生方法。
  11. 前記第1のミラーの第1と第2の反射面の一方又は両方をその反射面に直交する方向に連続的に移動して境界線における段差間隔を変化させ、前記同軸パルス列レーザー光の時間間隔を連続的に変化させることを特徴とする請求項9に記載の電磁波発生方法。
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