(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明のメンテナンス装置が設けられた水性インク用のインクジェット型両面印刷装置による第1実施形態について説明する。尚、ここでいう水性インクとは、水分を含むインクのことであり、O/W(Oil in Water)型及びW/O(Water in Oil)型のエマルションインクをも含む概念である。
図1は、第1実施形態によるメンテナンス装置が設けられた両面印刷装置の全体概略図である。図2は、メンテナンス装置の全体平面図である。図3は、メンテナンス装置及びインクジェットヘッドの分解斜視図である。図4は、図2のIV−IV線に沿った断面図である。図5は、ワイパー部が後方へ移動した状態でのメンテナンス装置の部分拡大斜視図である。図6は、両面印刷装置の制御系を説明するブロック図である。以下の説明において、ユーザが位置する図1の紙面表方向を前方とする。図1に示すように、ユーザから視て、上下左右を上下左右方向とする。尚、図2〜図5は、メンテナンス装置がクリーニング位置に配置されている状態での図である。
尚、図1の太線で示す経路が、印刷用紙が搬送される搬送経路である。搬送経路のうち実線及び点線で示す経路が通常経路RCである。搬送経路のうち一点鎖線で示す経路が、反転経路RRである。搬送経路のうち二点鎖線で示す経路が、給紙経路RSである。
図1に示すように、両面印刷装置1は、給紙部2と、印刷部3と、乾燥部4と、排紙部5と、反転部6と、メンテナンス装置7と、各部を収納する筐体8と、各部を制御する制御部9とを備えている。
給紙部2は、印刷用紙PAを給紙するものである。給紙部2は、搬送経路の最も上流側に配置されている。給紙部2は、サイド給紙台11と、複数の内部給紙台12a、12b、12cと、複数対の給紙ローラ13とを備えている。サイド給紙台11及び内部給紙台12a〜12cには、給紙される印刷用紙PAが積層される。給紙ローラ13は、各給紙台11、12a〜12cから印刷用紙PAを搬送して印刷部3へと給紙する。
印刷部3は、印刷用紙PAを搬送しつつ、印刷用紙PAに画像を印刷する。印刷部3は、給紙部2の下流側に配置されている。印刷部3は、レジストローラ21と、ベルト搬送部22と、インクジェットヘッド23K、23C、23M、23Yとを備えている。
レジストローラ21は、給紙部2から給紙された未印刷の印刷用紙PAをベルト搬送部22へと搬送する。また、レジストローラ21は、反転部6から再給紙される片面印刷済みの印刷用紙PAをベルト搬送部22へと搬送する。
ベルト搬送部22は、レジストローラ21から搬送された印刷用紙PAを吸引しつつ、乾燥部4へと搬送する。ベルト搬送部22は、4個のプーリ25と、搬送ベルト26と、吸引ファン27とを備えている。搬送ベルト26は、4個のプーリ25にわたって掛けられている。搬送ベルト26には、複数の吸引孔が形成されている。吸引ファン27は、下方向への気流を生じさせる。これにより、印刷用紙PAが、搬送ベルト26の吸引孔に吸引される。
インクジェットヘッド23K、23C、23M、23Yは、水性インクを印刷用紙PAへと吐出して、画像を印刷する。インクジェットヘッド23K、23C、23M、23Yは、ライン型である。図2に示すように、インクジェットヘッド23Kは、前後方向に3列、左右方向に2列配置されている。即ち、6個のインクジェットヘッド23Kが、3×2の千鳥型のマトリックス状に配置されている。また、インクジェットヘッド23C、23M、23Yも同様に3×2のマトリックス状に配置されている。インクジェットヘッド23K、23C、23M、23Yには、それぞれ黒色インク、シアン色インク、マゼンダ色インク、黄色インクが供給される。尚、以下の説明において、色の区別が必要ない場合は、インクジェットヘッドの符号を「23」とする。
乾燥部4は、印刷済みの印刷用紙PAを乾燥しつつ搬送する。乾燥部4は、印刷部3の下流側に配置されている。乾燥部4は、乾燥炉31と、3対の搬送ローラ32と、加熱送風部33とを備えている。
乾燥炉31は、印刷用紙PAをガイドしつつ、加熱送風部33から送られる加熱気体を貯溜するものである。乾燥炉31は、通常経路RCに沿って構成されている。乾燥炉31の内部には、印刷用紙PAの通常経路RCの一部を構成する搬送空間(図示略)が形成されている。搬送ローラ32は、乾燥炉31の内部の印刷用紙PAを搬送する。加熱送風部33は、乾燥炉31の内部に加熱気体を送風する。これにより、印刷された印刷用紙PAは、乾燥炉31の内部を搬送されつつ、乾燥される。
排紙部5は、印刷済みの印刷用紙PAを排紙して、積層する。排紙部5は、乾燥部4の下流側に配置されている。排紙部5は、通常経路RCの最も下流側に配置されている。排紙部5は、切替機構41と、2対の排紙ローラ42と、排紙台43とを備えている。
切替機構41は、通常経路RCと両面印刷用の反転経路RRとの間で印刷用紙PAの搬送経路を切り替るものである。印刷用紙PAは、切替機構41によって排紙台43または反転部6の何れかに搬送される。排紙ローラ42は、印刷用紙PAを排紙台43へと排紙するものである。排紙台43は、排紙ローラ42によって搬送された印刷済みの印刷用紙PAが載置されるものである。排紙台43は、排紙揃えを向上させるために傾斜されている。
反転部6は、片面が印刷された印刷用紙PAを反転させて印刷部3へと搬送するものである。反転部6は、1対の往路ローラ61と、フリッパ62と、1対の往復ローラ63と、スイッチバック部64と、1対の復路ローラ65とを備えている。
往路ローラ61は、切替機構41を介して、乾燥部4から搬送される片面印刷済みの印刷用紙PAを、往復ローラ63へと搬送する。フリッパ62は、往路ローラ61により搬送される印刷用紙PAを往復ローラ63へとガイドする。また、フリッパ62は、往復ローラ63により搬送される印刷用紙PAを復路ローラ65へとガイドする。
往復ローラ63は、スイッチバック部64へと印刷用紙PAを搬入する。また、往復ローラ63は、スイッチバック部64から搬出された印刷用紙PAを復路ローラ65へと搬送する。尚、スイッチバック部64へと搬入する際の往復ローラ63の回転方向と、スイッチバック部64から搬出する場合の往復ローラ63の回転方向は、逆方向である。スイッチバック部64は、往復ローラ63によって搬入された印刷用紙PAを往復ローラ63へと搬出するものである。スイッチバック部64は、排紙台43の内部に形成された中空部によって構成されている。復路ローラ65は、往復ローラ63から搬送された印刷用紙PAをレジストローラ21へと搬送する。
メンテナンス装置7は、水性インク99が吐出されるインクジェットヘッド23の下面(以下、ノズル面23aという)をクリーニングするものである。
メンテナンス装置7は、印刷時には、図1の実線で示す待機位置に配置される。待機位置は、ベルト搬送部22の右側の下方である。メンテナンス装置7は、インクジェットヘッド23のノズル面23aをクリーニングする際には、図1の点線で示すクリーニング位置に移動される。クリーニング位置は、ベルト搬送部22とインクジェットヘッド23との間である。
図2〜図6に示すように、メンテナンス装置7は、インク受け部材71と、駆動部72と、ワイパー部73と、ワイパークリーナ部74と、移動モータ75と、上下モータ76 とを備えている。
インク受け部材71は、クリーニングよって除去された水性インク99等を受けるものである。インク受け部材71は、メンテナンス装置7の各部材を保持する。インク受け部材71は、直方体形状に形成されている。インク受け部材71の中央部には、水性インク99を受けるための凹部71aが形成されている。凹部71aは、平面視にて、インクジェットヘッド23が配置されている領域よりも大きくなるように形成されている。インク受け部材71の上側は、開口されている。
駆動部72は、インクジェットヘッド23のノズル面23aをクリーニングするためにワイパー部73を前後方向(クリーニング方向)に移動させるものである。駆動部72は、駆動モータ81と、駆動ベルト82と、1対の駆動プーリ83a、83bと、1対のネジ歯車84a、84bとを備えている。
駆動モータ81は、制御部9から信号によって、所定の方向の回転駆動力を生じさせる。駆動モータ81は、インク受け部材71の前面の外側に配置されている。駆動モータ81は、出力ギヤ81aを有する。出力ギヤ81aは、駆動ベルト82に駆動モータ81の回転駆動力を伝達する。出力ギヤ81aは、駆動ベルト82の中央部に配置されている。駆動ベルト82は、駆動モータ81から伝達された回転駆動力を駆動プーリ83a、83bへと伝達する。駆動ベルト82は、駆動プーリ83aと駆動プーリ83bとの間にわたってかけられている。
1対の駆動プーリ83a、83bは、駆動ベルト82から伝達された回転駆動力をネジ歯車84a、84bへと伝達する。駆動プーリ83aと駆動プーリ83bは、左右方向に所定の間隔を開けて、同じ高さに配置されている。駆動プーリ83a、83bは、インク受け部材71の前面部に回転可能に支持されている。
ネジ歯車84a、84bは、駆動モータ81から伝達された回転駆動力によってワイパー部73を前後方向へと移動させる。ネジ歯車84a、84bは、凹部71aの略全長にわたって設けられている。ネジ歯車84a(84b)の前端部は、駆動プーリ83a(83b)の後瑞に固定されている。ネジ歯車84a(84b)の後端部は、インク受け部材71の後端部に回転可能に支持されている。これにより、ネジ歯車84a(84b)は、駆動プーリ83a(83b)とともに回転される。
ワイパー部73は、インクジェットヘッド23のノズル面23aに付着した水性インク99等を除去して、クリーニングする。ワイパー部73は、取付台86と、固定具87と、8枚のワイパー88とを備えている。
取付台86は、ワイパー88が取り付けられるものである。取付台86は、直方体形状に構成されている。取付台86には、一対のネジ孔86a、86bが形成されている。ネジ孔86a、86bには、ネジ歯車84a、84bが貫通され、且つ、螺合されている。これにより、ネジ歯車84a、84bが回転されると、取付台86は前後方向に移動する。テーパ部89が、取付台86の上端部に形成されている。テーパ部89は、上方に向かって徐々に細くなるように形成されている。これにより、テーパ部89は、後述するワイパークリーナ部74のワイパークリーナ93を上方へとガイドする。
ワイパー88は、ノズル面23aを摺動することによって水性インク99等を除去して、インクジェットヘッド23のノズル面23aをクリーニングする。ワイパー88は、弾性変形可能なゴム等の樹脂によって構成されている。ワイパー88を構成する材料は、ノズル面23aを破損させない程度の弾力を有する材料が好ましい。ワイパー88は、長方形の薄板状に形成されている。ワイパー88の下端部は、固定具87によって取付台86のテーパ部89よりも下部に固定されている。図2に示すように、8枚のワイパー88は、平面視にて、前後方向に配列されたインクジェットヘッド23の延長線上に配置されている。図4に示すように、ワイパー88の上端部は、取付台86の上面よりも高くなるように構成されている。ワイパー88の上端部は、クリーニング位置において、インクジェットヘッド23のノズル面23aよりも高くなるように配置されている。これにより、ワイパー88は、前後方向に移動されてインクジェットヘッド23と接すると、弾性変形されてノズル面23aを摺動する。
ワイパークリーナ部74は、ワイパー88をクリーニングするものである。ワイパークリーナ部74は、周回モータ(請求項のワイパークリーナ移動手段に相当)91と、4個の周回プーリ92a、92b、92c、92dと、ワイパークリーナ93とを備えている。
周回モータ91は、ワイパークリーナ93を周回させるものである。換言すると、周回モータ91は、ワイパークリーナ93が延びる方向(左右方向)にワイパークリーナ93を移動させる。周回モータ91は、インク受け部材71の前面に固定されている。
4個の周回プーリ92a〜92dは、ワイパークリーナ93にテンションを与えるとともに、ワイパークリーナ93に周回モータ91の駆動力を伝達させるものである。周回プーリ92a〜92dは、同一鉛直面内の長方形の頂点の位置に配置されている。周回プーリ92a〜92dは、回転可能にインク受け部材71に支持されている。
ワイパークリーナ93は、ワイパー88の後面を摺動して、ワイパー88に付着した水性インク99等を除去するものである。ワイパークリーナ93は、金属製のワイヤからなる。ワイパークリーナ93は、無端のリング状に形成されている。ワイパークリーナ93は、4個の周回プーリ92a〜92dにわたってかけられている。ワイパークリーナ93の上側部分と下側部分は、左右方向に延びるように配置されている。即ち、ワイパークリーナ93の上側部分と下側部分は、ワイパー88が移動する前後方向と直交する方向に配置されている。図4に示すように、ワイパークリーナ93の上側部分は、ワイパー部73の取付台86の上面よりも低く、且つ、ワイパー88の下端よりも高い位置に配置されている。より具体的には、ワイパークリーナ93の上側部分は、テーパ部89の斜面が形成された高さの範囲内に配置されている。これにより、ワイパークリーナ93の上側部分は、前後方向に移動するワイパー88の移動領域内に配置されることになる。ワイパークリーナ93の下側部分は、取付台86の下面よりも低い高さに配置されている。図4に示すように、ワイパークリーナ93の前後方向における位置は、インクジェットヘッド23と駆動ベルト82との間に配置されている。ここで、ワイパークリーナ93と駆動ベルト82との間隔は、取付台86の前後方向の幅よりも大きい。ワイパー88をクリーニングする際に、取付台86が、駆動ベルト82とワイパークリーナ93との間に移動するためである。
移動モータ75は、メンテナンス装置7を図1に示す待機位置と後述する退避位置との間で移動させるものである。
上下モータ76は、ベルト搬送部22とともにメンテナンス装置7を上下に移動させるものである。これにより、上下モータ76は、ベルト搬送部22及びメンテナンス装置7を図1に示すクリーニング位置、印刷位置、及び、退避位置の間で移動させる。
次に、図6を参照して、両面印刷装置1の制御系について説明する。
制御部9は、両面印刷装置1の制御全般を司るものである。制御部9は、種々の演算を行うCPU9aと、各情報が一時的に記憶されるRAM9bと、印刷用プログラム及びクリーニング用プログラム等が記憶されているROM9cと、入出力を行うためのI/Oポート9dとを備えている。
I/Oポート9dには、給紙部2、印刷部3、乾燥部4、排紙部5及び反転部6とが入出力可能に接続されている。
I/Oポート9dには、メンテナンス装置7の駆動モータ81、周回モータ91、移動モータ75及び上下モータ76が接続されている。これにより、制御部9は、クリーニング動作時に、以下の制御を実行することができる。具体的には、制御部9は、駆動モータ81を駆動させて、ワイパー88によってインクジェットヘッド23をクリーニングさせる。制御部9は、周回モータ91を駆動させて、ワイパークリーナ93を周回させる。制御部9は、移動モータ75を駆動させて、メンテナンス装置7を待機位置と退避位置との間で移動させる。制御部9は、上下モータ76を駆動させて、ベルト搬送部22及びメンテナンス装置7をクリーニング位置、印刷位置、及び、退避位置の間で上下方向に移動させる。
(印刷動作)
次に、上述した第1実施形態による両面印刷装置1の印刷動作について説明する。
最初、未印刷の印刷用紙PAは、給紙台11、12a〜12cの何れかから給紙ローラ13により給紙経路RSに沿って、印刷部3のレジストローラ21へと搬送される。
印刷部3では、印刷用紙PAは、レジストローラ21によって搬送された後、吸引ファン27によって搬送ベルト26に吸引されて搬送される。そして、印刷用紙PAは、搬送されつつ、インクジェットヘッド23によって吐出された水性インクにより、画像が印刷される。ここで、印刷用紙PAは、印刷された水性インクによってカール状に変形される。印刷後、印刷用紙PAは、ベルト搬送部22によって更に搬送されて、乾燥部4の乾燥炉31へと搬入される。
乾燥部4では、印刷用紙PAは、乾燥炉31の内面によってガイドされつつ、搬送ローラ32によって乾燥炉31の内部の搬送空間を搬送される。ここで、乾燥炉31の搬送空間には、加熱送風部33から加熱気体が送風されている。この加熱気体は、乾燥炉31の搬送空間に沿って流れる。これにより、乾燥炉31の内部を搬送される印刷用紙PAは、加熱気体の中を搬送されることになる。このため、水性インクによって湿った印刷用紙PAが乾燥炉31の内部で乾燥されるとともに、水性インク中の水分が印刷用紙PAの裏面まで迅速に浸透する。この結果、印刷用紙PAのカール量が減衰する。この後、印刷用紙PAは、乾燥炉31から排出される。
ここで、片面印刷の場合は、印刷用紙PAは、排紙部5へと搬送される。排紙部5では、印刷用紙PAは、切替機構41によりガイドされつつ、排紙ローラ42によって排紙台43に排紙される。これにより、片面印刷動作が終了する。
一方、両面印刷の場合は、印刷用紙PAが切替機構41まで搬送される。この後、両面印刷動作では、印刷用紙PAは、切替機構41によって反転部6の反転経路RRへとガイドされる。反転部6では、印刷用紙PAは、フリッパ62にガイドされつつ、往路ローラ61によって往復ローラ63へと搬送される。次に、印刷用紙PAは、往復ローラ63によってスイッチバック部64へと一時的に搬入された後、往復ローラ63へと搬出される。そして、印刷用紙PAは、フリッパ62にガイドされつつ、往路とは逆回転された往復ローラ63によって復路ローラ65へと搬送される。この後、復路ローラ65によって印刷部3のレジストローラ21へと再給紙される。
印刷部3では、印刷用紙PAは、レジストローラ21及びベルト搬送部22によって搬送される。ここで、印刷用紙PAの他方の面(以下、第2印刷面という)が、インクジェットヘッド23側に向けられて搬送される。これにより、画像が、インクジェットヘッド23によって、印刷用紙PAの第2印刷面に印刷される。この後、両面印刷された印刷用紙PAは、乾燥部4によって乾燥されつつ搬送される。次に、印刷用紙PAは、切替機構41にガイドされて、排紙部5へと搬送される。この後、印刷用紙PAは、排紙台43へと排紙される。これにより、第1印刷面及び第2印刷面に画像が印刷された両面印刷動作が終了する。
(クリーニング動作)
次に、上述した第1実施形態のメンテナンス装置7によるインクジェットヘッド23のクリーニング動作について説明する。
図7は、クリーニング動作を説明するためのフローチャートである。図8〜図17は、クリーニング動作を説明するための動作図である。尚、図8〜図10は、メンテナンス装置の周辺の正面図である。図11、図12、図14〜図17は、図4と同じ位置の側面図である。図13は、図4よりも後方の側面図である。
まず、図7及び図8に示すように、制御部9が上下モータ76を駆動させて、ベルト搬送部22を印刷位置から下方の退避位置へと移動させる(S1)。
次に、図9に示すように、制御部9は、移動モータ75を駆動させることにより、メンテナンス装置7を待機位置から左上方の退避位置へと移動させる(S2)。
次に、図10に示すように、制御部9が上下モータ76を駆動させることにより、ベルト搬送部22を退避位置から上方のクリーニング位置へと移動させる。これにより、メンテナンス装置7が、退避位置からクリーニング位置へと移動する(S3)。ここで、図11に示すように、メンテナンス装置7がクリーニング位置に移動されると、ワイパー88の上端部は、インクジェットヘッド23のノズル面23aよりも上方に位置する。また、ワイパー88は、前後方向において、最も前方のインクジェットヘッド23とワイパークリーナ93との間に配置されている。
次に、制御部9は、パージ部(図示略)を駆動させて、インクジェットヘッド23のノズル面23aのノズル(図示略)から水性インク99を押し出す(S4)。これにより、図11に示すように、一定量の水性インク99が、ノズル面23aに付着する。
次に、制御部9は、駆動モータ81を駆動させる。これにより、駆動モータ81の回転駆動力が、出力ギヤ81a、駆動ベルト82、駆動プーリ83a、83bを伝達して、ネジ歯車84a、84bを所定の方向に回転させる。この結果、ワイパー88が、ネジ歯車84a、84bに螺合されている取付台86とともに後方へと移動する(S5)。図12に示すように、ワイパー88の上部がインクジェットヘッド23と接触する位置まで移動すると、ワイパー88はインクジェットヘッド23に押圧されて弾性変形する。この状態で更にワイパー88が後方へ移動すると、ワイパー88の後面が、インクジェットヘッド23のノズル面23aを摺動する。これにより、ノズル面23aに押し出された水性インク99が、増粘したインクや埃等とともにワイパー88の後面によって除去される。これにより、水性インク99が、印刷動作において、インクジェットヘッド23のノズル面23aから正常に吐出される状態となる。
次に、ワイパー88が最も後方のインクジェットヘッド23よりも後方まで移動すると(図13参照)、制御部9は、駆動モータ81を停止する。これにより、ワイパー88及び取付台86が停止する(S6)。尚、制御部9は、ワイパー88の位置を位置検出センサやロータリーエンコーダ等により検出する。
次に、制御部9は、上下モータ76を駆動させて、図13に示すように、ベルト搬送部22とともにメンテナンス装置7を下方の退避位置へと移動させる(S7)。この退避位置では、ワイパー88の上端部は、インクジェットヘッド23のノズル面23aよりも下方に位置する。
次に、制御部9は、駆動モータ81を駆動させて、ワイパー88を前方へと移動させる(S8)。ここで、メンテナンス装置7は退避位置に配置されているので、ワイパー88は、インクジェットヘッド23と接触することなく、前方へと移動する。
次に、図14に示すように、取付台86がワイパークリーナ93と接触する位置まで移動すると、ワイパークリーナ93の上側部分が取付台86のテーパ部89によって上方へ押し上げられる。これにより、ワイパークリーナ93の上側部分は、取付台86の上側を円滑に越える。尚、図14〜図17では、インクジェットヘッド23を省略している。
更に、図15に示すように、ワイパー88及び取付台86が前方に移動すると、ワイパークリーナ93の上側部分は、ワイパー88を弾性変形させつつ、ワイパー88の前面を摺動しつつ移動する。
この状態で、図16に示すように、ワイパー88及び取付台86が駆動ベルト82の近傍まで移動すると、制御部9は駆動モータ81を停止する。これにより、ワイパー88及び取付台86は停止する(S9)。この位置では、ワイパークリーナ93がワイパー88から離隔する。これにより、ワイパークリーナ93によって弾性変形されていたワイパー88が、元の形状に戻る。
次に、制御部9は駆動モータ81を駆動させて、ワイパー88及び取付台86を後方へと移動させる(S10)。これにより、図17に示すように、水性インク99が残存するワイパー88の後面が、ワイパークリーナ93に接触する。ワイパー88は、ワイパークリーナ93に押圧されつつ後方へ移動するので、ワイパー88は前方へ反るように弾性変形される。ワイパークリーナ93は、取付台86とによってワイパー88を挟みつつ、ワイパー88の後面を摺動する。これにより、ワイパー88の後面に残存する水性インク99がワイパークリーナ93によって除去される。
次に、ワイパー88及び取付台86が、図11に示す初期位置まで移動すると、制御部9は、駆動モータ81を停止する。これにより、ワイパー88及び取付台86が停止する(S11)。
次に、制御部9は、周回モータ91を駆動させて、ワイパークリーナ93を半周だけ周回させる(S12)。これにより、水性インク99が付着した上側のワイパークリーナ93が下側に配置され、水性インク99の付着がない下側のワイパークリーナ93が上側に配置されることになる。ここで、ワイパークリーナ93に付着した水性インク99は、周回プーリ92a〜92dとの当接によってインク受け部材71へと落下する。これにより、ワイパークリーナ93を周回させることにより、ワイパークリーナ93が周回プーリ92a〜92dによってクリーニングされる。
次に、制御部9は、移動モータ75を駆動させて、メンテナンス装置7を図1の実線で示す待機位置まで移動させる(S13)。
次に、制御部9は、上下モータ76を駆動させて、ベルト搬送部22を図1に示す印刷位置へと移動させる(S14)。
この結果、メンテナンス装置7のクリーニング動作が終了する。
(メンテナンス装置の効果)
次に、上述した第1実施形態によるメンテナンス装置7の効果について説明する。
上述したようにメンテナンス装置7では、ワイパークリーナ93によってワイパー88に付着した水性インク99を除去している。ここでワイパークリーナ93は金属製のワイヤなので、ワイパークリーナ93が除去した水性インク99はワイパークリーナ93から容易に落下する。これにより、ワイパークリーナ93に残存するインクを低減できる。これに伴って、ワイパークリーナ93の交換周期の長期化、ワイパークリーナ93の交換作業の低減等も実現できる。
また、メンテナンス装置7では、ワイパークリーナ93をワイヤによって構成しているので、ワイパークリーナ93がワイパー88に接触すると、ワイパークリーナ93はワイパー88の形状に合わせて容易に変形する。これにより、ワイパークリーナ93は、ワイパー88との接触領域を増加させることができる。この結果、ワイパークリーナ93は、ワイパー88の略全幅にわたって接触するので、ワイパー88に付着した水性インク99を効率よく除去できる。
また、メンテナンス装置7では、ワイパークリーナ93の上側部分が、取付台86の上面よりも低い位置に配置されている。これにより、ワイパークリーナ93は、ワイパー88がインクジェットヘッド23と接触する領域よりも下側からワイパー88をクリーニングすることができる。この結果、ワイパークリーナ93は、ワイパー88がインクジェットヘッド23と接触する領域よりも広い領域内の水性インク99を除去できる。
また、メンテナンス装置7では、ワイパークリーナ93の上側部分が、取付台86の上面よりも低い位置に配置されているので、ワイパークリーナ93と取付台86とにより、ワイパー88を挟むことができる。これにより、ワイパークリーナ93は、水性インク99に強い力を作用させることができる。この結果、ワイパークリーナ93は、固化した水性インク99をも除去できる。
また、メンテナンス装置7では、取付台86の上端部にテーパ部89が形成されている。これにより、取付台86の上面を越える際に、ワイパークリーナ93がテーパ部89によって上方にガイドされるので、ワイパークリーナ93に作用する抵抗が低減される。この結果、ワイパークリーナ93は、円滑に取付台86の上側を越えることができる。更に、ワイパークリーナ93の上側部分が、テーパ部89が形成された領域内の高さに配置されている。これにより、ワイパークリーナ93が確実にテーパ部89によってガイドされる。
また、メンテナンス装置7は、ワイパークリーナ93を周回させる周回モータ91を備えている。これにより、周回モータ91によってワイパークリーナ93を約半周させることによって、水性インク99があまり付着していないワイパークリーナ93の部分を上側に配置することができる。この結果、ワイパークリーナ93に付着した水性インク99が、ワイパー88に戻ることを低減できる。
また、インクジェットヘッド23の数が増えて、インクジェットヘッド23が配置されている領域が大きくなると、ワイパー88が配置されている領域も大きくなる。しかし、メンテナンス装置7では、ワイパークリーナ93を構成するワイヤを長くすることによって、ワイパー88の大きさに柔軟に対応することができる。
(第2実施形態)
次に、上述した実施形態のワイパークリーナ部を変更した第2実施形態について説明する。図18は、第2実施形態によるワイパークリーナ部の背面図である。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付けて説明を省略する。
図18に示すように第2実施形態によるワイパークリーナ部74Aは、周回モータ91と、4個の周回プーリ(請求項のワイパークリーナ保持部材に相当)92a〜92dと、ワイパークリーナ93と、プーリ支持部材95と、引っ張りバネ(請求項の弾性部材に相当)96と、ゴムベラ97とを備えている。
左下に配置された周回プーリ92cは、固着された小径の支持軸92ccを有する。
プーリ支持部材95は、板状に構成されている。プーリ支持部材95は、鉛直面と平行に配置されている。プーリ支持部材95には、支持軸92ccが挿通される長穴95aが形成されている。長穴95aは、左右方向に沿って形成されている。これにより、周回プーリ92cは、プーリ支持部材95によって左右方向に移動可能に支持される。
引っ張りバネ96は、周回プーリ92cに左方向の弾性力を付与する。引っ張りバネ96の一端部は、支持軸92ccに固定されている。引っ張りバネ96の他端部は、インク受け部材71に固定されている。
ゴムベラ97は、ワイパークリーナ93に付着した水性インク99を削ぎ落とすものである。ゴムベラ97は、1個の角が鋭角の三角柱状に構成されている。ゴムベラ97の鋭角部分が、ワイパークリーナ93を挟み右下の周回プーリ92dと反対側に配置されている。これにより、ゴムベラ97と周回プーリ92dとが、ワイパークリーナ93を挟むことができる。
第2実施形態では、ワイパークリーナ93によってワイパー88をクリーニングする際に、ワイパークリーナ93が、ワイパー88または取付台86と接触して押圧されると、引っ張りバネ96が伸長する。これにより、ワイパークリーナ93のテンションの増加を低減して、ワイパークリーナ93とワイパー88との間に作用する抵抗を低減できる。この結果、ワイパー88のクリーニングをより円滑に行うことができる。
また、ワイパークリーナ93が、ゴムベラ97と周回プーリ92dとによって挟まれている。これにより、ワイパークリーナ93に付着された水性インク99が、ワイパークリーナ93を周回させることによってより確実に除去できる。
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。以下、上記実施形態を一部変更した変更形態について説明する。
上述した実施形態を構成する各部材の形状、配置、数値、材料等は適宜変更可能である。また、上述した実施形態を組み合わせてもよい。
上述した実施形態では、水性インク用のインクジェット型両面印刷装置に本発明を適用したが、溶剤系の油性インク用のインクジェット型両面印刷装置や、片面印刷装置等の他のインクジェット型印刷装置に本発明を適用してもよい。
上述した実施形態ではワイパークリーナを金属製のワイヤとしたが、ワイパークリーナを細いワイヤが寄られて束ねられた寄り線によって構成してもよい。これにより、ワイパークリーナは、毛細管力によってインクを効率よく除去できる。また、ワイパークリーナを樹脂製の線状部材によって構成してもよい。
上述した実施形態では、ワイパークリーナを取付台の上面よりも低い位置に配置したが、ワイパークリーナを取付台の上面よりも高い位置に配置してもよいが、ワイパークリーナは、取付台の上面の近傍が好ましい。
上述した実施形態では、取付台にテーパ部を形成したが、テーパ部は省略してもよい。また、取付台の前面または後面の一方のみが傾斜したテーパ部に構成してもよい。テーパ部の上面の水平面を省略して、上端部まで傾斜させてもよい。
上述した実施形態では、ワイパークリーナが周回モータによって周回可能に構成したが、ワイパークリーナは周回不能に固定してもよい。また、ワイパークリーナをモータ等によって巻取可能に構成してもよい、
上述した実施形態では、ワイパークリーナをインク受け部材の前端部分に配置したが、ワイパークリーナをインク受け部材の後瑞部分に配置してもよい。また、複数のワイパークリーナを前後方向の途中部に所定間隔で配置してもよい。
上述した実施形態では、ワイパークリーナを左右方向に延びるように配置したが、ワイパークリーナが延びる方向は、ワイパーが移動する方向(前後方向)と交差する方向であればよい。