以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明を適用したショーケース1の斜視図、図2はショーケース1の縦断側面図、図3は冷却装置Rの冷媒回路図をそれぞれ示している。
ショーケース1は前面に開口する断面略コ字状の断熱壁3と、その両側に取り付けられた側板4によって本体5が構成されており、この断熱壁3の内側には間隔を存して背面に背面パネル6が配設され、この背面パネル6と断熱壁3間にダクト9が形成されている。また、背面パネル6の下端には、前方に延在するデックパン10、背面パネル6の上端には、断熱壁3の天井部3Aと所定間隔を存して天井パネル2が設けられており、これら背面パネル6、デックパン10及び天井パネル2の内側に前面に開口する陳列室11が構成されている。そして、デックパン10の下方にはダクト9に連通して下部ダクト14が構成されている。
この下部ダクト14の前端は陳列室11の前面開口下縁に位置すると共に、複数のスリットから成る冷気吸込口17に連通している。デックパン10の下方の下部ダクト14内には陳列室11内に冷気を供給するための冷却用送風機7が配設され、陳列室11のダクト9内には冷却装置の冷凍サイクルを構成する蒸発器15が縦設されている。そして、断熱壁3の前面開口上縁には、天井パネル2の前端に位置して左右に渡って冷気吐出部材8が設けられている。この冷気吐出部材8は、前下部に整流部材としてのハニカムが取り付けられており、ダクト9内を上昇してきた冷気を陳列室11の前下方及び前部に吐出可能としている。
また、陳列室11内には、上下に商品陳列用の複数段の棚装置25、26、27、28が架設されている。各棚装置25〜28には、詳細は後述する如く高温冷媒配管25H〜28Hが配設されている。
一方、断熱壁3の下側には機械室19が構成されており、この機械室19内には前記蒸発器15と共に冷却装置Rの冷凍サイクルを構成する圧縮機40、放熱器41や放熱器用送風機42が配設されている。尚、23は機械室19の前面を開閉自在に閉じるパネルである。24は機械室19内下部に設けられたドレン水蒸発装置である。このドレン水蒸発装置24は、図示しないドレンホースを介して蒸発器15からのドレン水(露水や除霜水など)が流入し、貯留されるものであり、内部には、蒸発パイプ43が配設されている。
ここで、図3を参照して本実施例における冷却装置Rの冷媒回路を説明する。本実施例における冷却装置Rは、圧縮機40と、蒸発パイプ43と、放熱器41と、減圧装置としての電子膨張弁44と、蒸発器15等を環状に接続することにより構成されている。本実施例の圧縮機40は、内部中間圧型2段圧縮式のロータリコンプレッサであり、密閉容器内に駆動要素としての電動要素と、当該電動要素により駆動される第1及び第2の回転圧縮要素にて構成されている。
圧縮機40の冷媒吐出管52は蒸発パイプ43を介して放熱器41の入口側に接続されている。圧縮機40の第1の回転圧縮要素に冷媒を導入するための冷媒導入管46の一端は、第1の回転圧縮要素のシリンダと連通しており、他端は内部熱交換器45の低圧側流路45Aの流出側に接続されている。他方、圧縮機40の第1の回転圧縮要素で圧縮された冷媒を第2の回転圧縮要素に導入するための冷媒導入管47は、圧縮機40の外部の中間冷却回路48を通過するように設けられている。当該中間冷却回路48には、第1の回転圧縮要素で圧縮された冷媒を冷却するための熱交換器41Aが設置されており、第1の回転圧縮要素で圧縮された中間圧の冷媒は、熱交換器41Aにて冷却された後、第2の回転圧縮要素に吸い込まれる構成とされている。なお、この熱交換器41Aは、前記放熱器41と一体に形成されており、これら熱交換器41A及び放熱器41は、放熱器用送風機42にて空冷されるものとする。
一方、放熱器41の出口側に接続された冷媒配管49は前記内部熱交換器45の高圧側流路45Bの流入側に接続されている。内部熱交換器45は、前記低圧側流路45Aと高圧側流路45Bとが交熱的に設けられており、これにより、放熱器41から出た高圧側の冷媒と蒸発器15から出た低圧側の冷媒との熱交換が行われる。そして、高圧側流路45Bの出口側に接続された冷媒配管50は、電子膨張弁44を介して蒸発器15に接続される。そして、蒸発器15の出口側に接続された冷媒配管51は、内部熱交換器45の低圧側流路45Aの入口側に接続されている。
本実施例において、上述した如き冷媒吐出管52には、圧縮機40と蒸発パイプ43との間に三方弁(弁装置)53と連結配管60を介して各棚装置25乃至28のそれぞれに設けられる高温冷媒配管25H乃至28Hが接続されている。各高温冷媒配管25H、26H、27H、28Hはそれぞれ図示しない分岐配管を介して並列に接続されており、各高温冷媒配管の冷媒流入側には、電動開閉弁(弁装置)25V、26V、27V、28V(図6のみ図示する)が介設されている。また、各高温冷媒配管の冷媒流出側は、図示しない合流配管が設けられており、当該合流配管には、高温冷媒配管側から冷媒配管52(蒸発パイプ43側)方向を順方向とする逆止弁54が介設された連結配管60が接続されている。各高温冷媒配管の冷媒流出側に接続された連結配管60の他端は、三方弁53の冷媒下流側であって、蒸発パイプ43の冷媒上流側に接続されている。
次に、上記図2に加えて、図4、図5を参照して陳列室11内に架設される棚装置について説明する。図4は棚装置26の縦断正面図、図5は図4の部分拡大図をそれぞれ示している。なお、ここでは、棚ダクト29が設けられた上から二段目の棚装置26を例に挙げて説明する。
棚装置26は、左右一対のブラケット30と、当該ブラケット30に係合される固定棚部31と、この固定棚部31に対して前後に移動可能に設けられる可動棚部32とから構成される。
ブラケット30の後端には、係合爪33が形成されており、この係合爪33を陳列室11内の左右に上下に渡って取り付けられた棚支柱18の係合孔に係脱自在に係合される。これにより、陳列室11内に所定の高さ位置に左右一対ずつ取り付けられる。このとき、係合爪33は、棚装置26の前側が低く傾斜して架設されるように形成されている。そして、これら一対のブラケット30、30それぞれの外面にスライドレール34の固定側34Aが前後に渡って取り付けられ、左右で一対を成す。
可動棚部32は、前後に延在する一対の枠部材37、37とこの枠部材37上に取り付けられ、商品を載置するための商品載置面38Aを構成する棚板38等から構成されている。この棚板38は熱伝導を効率的に行うことができる金属板からなる。
枠部材37は、ブラケット30の外側において下方に折曲され、降下辺37Aが形成されており、この降下辺37A、37Aの内側に前記スライドレール34の可動側34Bがそれぞれ取り付けられる。これにより、棚板38は枠部材37の降下辺37Aに取り付けられるスライドレール34の可動側34Bと、ブラケット30に取り付けられる固定側34Aによって、ブラケット30、30に対し前後に摺動自在とされる。
そして、固定棚部31は、棚板38の下側に位置してブラケット30の内側に設けられる取付機構36により、対を構成するブラケット30、30の内側に位置して着脱自在に取り付けられる。この固定棚部31は、少なくとも上面(可動棚部32に対向する面)に断熱材56が設けられた固定棚部本体57により構成されている。そして、この断熱材56よりも可動棚部32側に位置する固定棚部本体57の上面には、上述した如き冷媒回路の高圧側を構成する高温冷媒配管26Hが配設されている。そして、この高温冷媒配管26Hの上方には、熱良導性の板状部材にて構成される保護カバー58が前記ブラケット30、30の上端間に渡って設けられている。
なお、この保護カバー58の上面は、押し込まれた状態の可動棚部32の棚板38と当接、若しくは近接した状態となるように設けられている。即ち、当該保護カバー58は、上面が可動棚部32の棚板38と少許寸法を存して設けられてもよく、可動棚部32の前後移動によって、該可動棚部32が後側に押し込まれた状態のときのみ、該棚部32が下側に落ち込んで棚板38と保護カバー58とが当接する構成としても良い。
ここで、固定棚部本体57上面に配設される高温冷媒配管26Hは、図6の平面図にて示すように固定棚部本体57前部及び両側部が、他の部分(例えば中央部)より密となるように配置されている。また、前述した如く高温冷媒配管26Hの冷媒流入側に電動開閉弁26Vが介設されており、この図6に矢印で示すように高温冷媒配管26Hに流入した高温の冷媒は最初に前部に流れ、その後両側部に流れた後、最後に後部を流れて高温冷媒配管26Hから流出する構成とされている。更に、当該高温冷媒配管26Hは、上面が前記保護カバー58と当接又は近接して設けられると共に、該配管26Hは固定棚部本体57に接する面と保護カバー58に当接又は近接する面が平らに形成された扁平管により構成されている。
これにより、当該高温冷媒配管26Hは、保護カバー58を介して熱伝導により、及び/又は輻射熱により可動棚部32の棚板38の商品載置面38Aと熱交換関係に配置される。また、この高温冷媒配管26Hは、図3に示すように本体5側に配設される冷媒回路と可撓性を有する連結配管(フレキシブルチューブ)60により接続されている。なお、当該高温冷媒配管26Hが配設される固定棚部31は、ブラケット30によって本体5側の棚支柱18に対して上下位置変更可能に架設される。そのため、所定の範囲だけ当該固定棚部31の架設位置を変更可能とするため、連結配管60は、所定の弛みを保たせて配設される。
これにより、棚装置の上下位置変更に伴い、当該棚装置を構成する固定棚部31に設けられる高温冷媒配管が上下高さ位置が変更されても、係る連結配管60によって、本体5側に設けられた冷媒回路と支障なく接続することが可能となる。
本実施例において、棚装置26を構成する固定棚部31は、上記に加えて固定棚部本体57が内部中空の矩形状を呈し内部に冷気ダクト29が形成されており、当該前端は、棚板38の前端よりも前方まで延在している。後端は、棚板38の後端よりも後方まで延在している。そして、固定棚部本体57の後面(後端)は、後ろ向きに開口した連通部61が形成され、下面前端には左右方向に延在して下向きに開口した中間冷気吐出口62が形成されている。
ここで、固定棚部本体57の後端に形成される連通部61は、棚装置26の背面に設けられる背面パネル6前面に当接して設けられ、当該位置に対応する背面パネル6には、左右に渡ってダクト9と、棚ダクト29とを連通するための図示しない連通孔が形成されている。
そして、この背面パネル6には、上から二段目を構成する棚装置26の上方向に対応する位置であって、当該棚装置26に設けられる棚ダクト29の連通部61より上側に左右に延在する図示しない透孔が形成されている。この透孔には、ダンパー63が保持されている。
当該ダンパー63は、透孔内部において前後に移動可能に形成されており、後部はダクト9内に押し込まれた状態で、該ダクト9内を閉塞し、ダクト9内を上昇してくる冷気のダンパー63より上側への供給を停止可能とする。他方、ダンパー63は、手前側(陳列室11側)に引かれた状態で、ダクト9側から当該ダンパー63を退避させ、ダクト9を開放可能とする。
なお、本実施例において、棚ダクト29が設けられている棚装置は、上から二段目に架設される棚装置26のみとし、これ以外の棚装置25、27、28には、上述した如き固定棚部本体57に棚ダクト29が形成されていない。ただし、当該実施例に限定されるものではなく、全ての棚装置に当該棚ダクト29を構成し、背面パネル6には、それぞれの棚装置の架設位置に応じた高さに連通孔が形成され、それぞれに対応してダンパーを設けても良い。
次に、図7を参照して本実施例における制御装置(制御手段)Cについて説明する。制御装置Cは、汎用のマイクロコンピュータにより構成されており、各種設定スイッチや表示部などを備えたコントロールパネル65が接続されている。また、制御装置Cの入力側には、庫内温度を検出する庫内温度センサ67と、各棚装置25、26、27、28の温度を検出する棚センサ25T、26T、27T、28Tと、圧縮機40の吸込側に接続された冷媒導入管46に取り付けられた吸込温度センサ72と、蒸発器15の冷媒入口側の冷媒温度を検出するための冷媒入口側温度センサ73、蒸発器15の冷媒出口側の冷媒温度を検出するための冷媒出口側温度センサ74と、陳列室11内の使用形態(加熱領域の棚数及び冷却領域の棚数)を切り換えるダイヤルスイッチ66等が接続されている。
ここで、庫内温度センサ67は、例えば、ダクト9内に配設される蒸発器15の冷気吹出側に設けられており、陳列室11内の温度を検出するものである。なお、当該庫内温度センサ67の取付位置は当該位置に限定されるものではない。棚センサ25T〜28Tは、各棚装置に設けられて、各棚装置の商品載置面38Aの温度を検出するものである。
他方、制御装置Cの出力側には、圧縮機40の圧縮機モータ40Mと、電子膨張弁44と、各棚装置25〜28に対しそれぞれ設けられる電動開閉弁25V〜28Vと、前記三方弁53と、冷却用送風機7の送風機モータ7Mと、放熱器用送風機42の送風機モータ42M等が接続されている。
ここで、圧縮機モータ40Mはインバータ装置69を介して接続されており、これによって、圧縮機モータ40Mの運転周波数を任意に変更可能とされている。各送風機モータ7M、42Mは、それぞれチョッパ回路などの駆動回路70、71を介して接続されており、これによって、送風機モータ7M、42Mの回転数を任意に変更可能とされている。
以上の構成で、ショーケース1の制御動作を説明する。先ず初めに、制御装置Cは、コントロールパネル65の入力設定、及び、ダイヤルスイッチ66の出力に基づき、陳列室11全体を冷却領域として冷蔵使用するのか、全体を加熱領域として温蔵使用するのか、上から二段目の棚装置26より上側の陳列室11内(第1の領域)を加熱領域とし、該棚装置26より下側の陳列室11内(第2の領域)を冷却領域とした冷/温使用とするのかを判断する。
(温蔵使用)
陳列室11内全体を加熱領域として温蔵使用する場合には、コントロールパネル65により、全体を加熱領域とする旨入力する。制御装置Cは、コントロールパネル65の入力設定に基づき、陳列室11内全体を加熱領域として温蔵使用すると判断した場合には、三方弁53を高温冷媒配管25H〜28H(連結配管60)側に切り換えると共に、各電動開閉弁25V〜28Vを開放する。そして各棚センサ25T〜28Tが検出する棚温度に基づき、冷却装置Rを構成する圧縮機40の圧縮機モータ40Mをインバータ装置69により制御し、加熱運転を実行する。なお、当該加熱運転では、冷却用送風機7は停止する。
即ち、圧縮機40の圧縮機モータ40Mの運転が開始されると、低圧の冷媒ガスが圧縮機40の第1の回転圧縮要素に吸い込まれて圧縮され、中間圧となり、密閉容器内に吐出される。密閉容器内に吐出された冷媒は、冷媒導入管47から一旦密閉容器の外部に吐出され、中間冷却回路48に入り、熱交換器41Aを通過する。そこで、冷媒は、放熱器用送風機42による通風を受けて放熱する。
その後、冷媒は第2の回転圧縮要素に吸い込まれて圧縮され、高温高圧の冷媒ガスとなり、冷媒吐出管52より圧縮機40の外部に吐出される。本実施例では、冷媒として二酸化炭素を用いることから、当該冷媒は適切な超臨界圧力まで圧縮されている。
冷媒吐出管52から吐出された高温の冷媒は、三方弁53が各高温冷媒配管25H〜28H側に切り換えられていることから、連結配管60及び各電動開閉弁25V〜28Vを介して各棚装置25〜28に配設される高温冷媒配管25H〜28H内に流入する。
このとき、各高温冷媒配管は、詳細は上述したように固定棚部31と可動棚部32とからなる棚装置の固定棚部31側に取り付けられ、可動棚部32を構成する棚板38の商品載置面38Aと、保護カバー58を介して熱交換関係に配置されている。即ち、高温冷媒配管が当接又は近接して設けられる保護カバー58は、押し込まれた状態(陳列状態)の可動棚部32の棚板38と当接、若しくは近接した状態となるように設けられている。
従って、圧縮機40から吐出された高温の冷媒が、連結配管60を介して棚装置に設けられた高温冷媒配管に流入することにより、該高温冷媒配管及び棚板38が保護カバー58に当接している場合には、高温冷媒配管を流れる圧縮機40から吐出された高温冷媒からの熱伝導によって、棚装置の商品載置面38A更には、該商品載置面38Aに載置される商品を加熱することができる。この場合、商品載置面38Aに載置される商品は、高温冷媒配管からの輻射熱によっても加熱することができる。また、該高温冷媒配管及び棚板38が保護カバー58に近接している場合には、高温冷媒配管を流れる圧縮機40から吐出された高温冷媒からの輻射熱によって、棚装置の商品載置面38A更には、該商品載置面38Aに載置される商品を加熱することができる。
これにより、棚装置の商品載置面に載置される商品を当該高温冷媒配管が流れる高温冷媒の伝導熱及び/又は輻射熱によって加熱することが可能となり、商品を加温した状態で陳列することができる。
また、高温冷媒配管は、固定棚部31に設けられており、当該固定棚部31と熱交換関係に且つ、前後移動自在に可動棚部32が設けられているため、該可動棚部32上の商品を効率的に加熱することができ、利便性の向上を実現することが可能となる。
特に、本実施例では、冷媒として二酸化炭素が用いられているため、高圧側が臨界圧力となり、各棚装置に設けられた高温冷媒配管により高温の加熱を実現することが可能となる。
また、本実施例では、図6に示すように棚装置を構成する固定棚部31に設けられる高温冷媒配管は、棚装置の前部が他の部分よりも密に配置されているので、販売効率の高い棚装置前部の商品を優先的に加熱することができ、顧客に適温状態の商品を提供することが可能となる。
更に、当該高温冷媒配管は、棚装置の前部及び両側部が他の部分よりも密に配置されているので、端部に位置することで放熱しやすい棚装置前部及び両側部の商品を効率的に加熱することが可能となる。これにより、棚装置上に商品の加熱効率を高めることができる。
また、図5に示すように、高温冷媒配管は扁平管にて構成され、棚装置の商品載置面38Aと熱交換関係に配置されているため、高温冷媒配管と棚装置との当接面積、若しくは、対向面積を拡大することが可能となり、棚装置の商品載置面38Aの加熱効率の向上を図ることが可能となる。
その後、各棚装置に設けられる高温冷媒配管25H〜28Hを経た冷媒は、そこで、放熱した後、逆止弁54を介してドレン水蒸発装置24に配設される蒸発パイプ43に流入し、その後、放熱器41に流入する。蒸発パイプ43及び放熱器41にて放熱した冷媒は、その後、内部熱交換器45の高圧側流路45Bに流入し、低圧側流路45Aを流れる蒸発器15からの冷媒に熱を奪われて冷却される。
内部熱交換器45で冷却され、高圧側流路45Bから流出した冷媒は電子膨張弁44に至る。冷媒は制御装置Cにて開度制御が行われる電子膨張弁44により減圧され、気液二相の混合体とされて、蒸発器15内に流入する。そこで冷媒が蒸発した後、内部熱交換器45の低圧側流路45A内に流入し、高圧側流路45Bを流れる高温の冷媒と熱交換させることで、加熱され、完全に気体の状態とされる。その後、冷媒導入管46から圧縮機40の第1の回転圧縮要素内に帰還する。
上記温蔵使用時において、制御装置Cは、各棚装置25〜28に設けられる棚センサ25T〜28Tによる出力温度が所定の設定加熱温度範囲(例えば、ディファレンシャル温度として設定温度±2℃)である場合には、圧縮機40の圧縮機モータ40Mをインバータ装置69により運転周波数を所定の周波数、例えば50Hzとして運転し、放熱器用送風機42の送風機モータ42Mを駆動回路71により回転数を所定の回転数、例えば500rpmとして運転する。
一方、棚センサ25T〜28Tによる出力温度が所定の設定加熱温度範囲よりも低い場合、即ち、加熱能力が不足している場合には、圧縮機40の圧縮機モータ40Mをインバータ装置69により運転周波数を所定の周波数よりも高い周波数、例えば60Hzとして運転する、若しくは、放熱器用送風機42の送風機モータ42Mを駆動回路71により回転数を所定の回転数よりも低い回転数、例えば200rpmとして運転する。なお、この両者を行っても良い。
これにより、圧縮機40からの吐出冷媒量を増加させることができ、棚装置に設けられる高温冷媒配管25H〜28Hにおける加熱能力を向上させることができる。また、放熱器用送風機42の回転数を低下させることにより、放熱器41における放熱量を低減させることで、高温冷媒配管25H〜28Hにおける放熱量、即ち加熱能力を向上させることが可能となる。
他方、棚センサ25T〜28Tによる出力温度が所定の設定加熱温度範囲よりも高い場合、即ち、加熱能力が過剰である場合には、圧縮機40の圧縮機モータ40Mをインバータ装置69により運転周波数を所定の周波数よりも低い周波数にて運転する、若しくは、圧縮機モータ40Mを停止する。
なお、本実施例では、各棚装置25〜28に設けられる棚センサ25T〜28Tの出力に基づき圧縮機40の運転周波数制御や放熱器用送風機42の回転数制御を行うものとしているが、これに限定されるものではなく、例えば、各棚センサ25T〜28Tの内の何れか一つによる検出温度に基づいて当該制御を行っても良い。
また、制御装置Cは、図8に示すように、蒸発器15の冷媒入口側の冷媒温度を検出する冷媒入口側温度センサ73と、冷媒出口側の冷媒温度を検出する冷媒出口側温度センサ74の検出温度に基づき過熱度を算出する。そして、当該過熱度と、冷媒導入管46に取り付けられた吸込温度センサ72による検出温度に基づき、電子膨張弁44の開度を制御する。
即ち、制御装置Cは、蒸発器15における過熱度が所定値、例えば3degよりも高く、且つ、吸込温度が所定温度、例えば+30℃未満である場合には、電子膨張弁44の開度を所定の開度、例えば250パルスとする。一方、蒸発器15における過熱度が前記所定値よりも高く、且つ、吸込温度が前記所定温度以上である場合には、電子膨張弁44の開度を前記所定の開度よりも小さく、例えば200パルスとする。他方、蒸発器15における過熱度が前記所定値よりも低く、且つ、吸込温度が前記所定温度未満である場合には、電子膨張弁44の開度を所定の開度よりも大きく、例えば300パルスとする。
これにより、蒸発器15内部の冷媒量を適切に調整でき、適度な過熱度にて蒸発器15において冷媒の蒸発を行うことが可能となる。従って、過熱度が所定の値を下回ることにより生じる圧縮機40への液バックを未然に回避することができる。
これにより、棚装置を加熱するための電気ヒータ等を格別に設けることなく、冷却装置Rの高温冷媒配管を用いて陳列室11内の棚装置を適切な加熱温度に維持することが可能となる。また、冷媒回路を構成する高温冷媒配管25H〜28Hを用いて陳列室11内の棚装置25〜28を加熱することから、電気ヒータを用いて陳列室11内を加熱する場合に比して熱効率がよい。
(冷蔵使用)
次に、陳列室11内全体を冷却領域として冷蔵使用する場合について説明する。この場合、棚装置26に設けられたダンパー63を前方に引き出し、コントロールパネル65により、全体を冷却領域とする旨入力する。制御装置Cは、ダイヤルスイッチ66による出力とコントロールパネル65の入力設定に基づき、陳列室11内全体を冷却領域として冷蔵使用すると判断した場合には、三方弁53を蒸発パイプ43側に切り換えると共に、各電動開閉弁25V〜28Vを閉鎖する。これにより、弁装置を構成する三方弁53及び各電動開閉弁25V〜28Vにより各高温冷媒配管25H〜28Hへの冷媒の流通を阻止する。そして、棚装置25〜28に設けられる棚センサ25T〜28Tの出力温度に基づき、冷却装置Rを構成する圧縮機40の圧縮機モータ40Mをインバータ装置69により制御し、冷却運転を実行する。
この場合、冷媒吐出管52から吐出された冷媒は、三方弁53が蒸発パイプ43側に切り換えられていることから、当該蒸発パイプ43を介して放熱器41に流入し、ドレン水蒸発装置24に配設される蒸発パイプ43及び放熱器41にて放熱した後、内部熱交換器45を経て電子膨張弁44に至る。冷媒は制御装置Cにて開度制御が行われる電子膨張弁44により減圧され、気液二相の混合体とされて、蒸発器15内に流入する。そこで冷媒が蒸発することで冷却作用を発揮する。その後、内部熱交換器45にて完全に気体の状態とされた後、冷媒導入管46から圧縮機40の第1の回転圧縮要素内に帰還する。
これにより、蒸発器15と熱交換した冷気は、ダクト9と連通する下部ダクト14内に配設された冷却用送風機7により冷気吐出部材8に設けられた冷気吐出口や棚装置26に設けられた棚ダクト29の中間冷気吐出口62を介してから陳列室11内に吐出され、一部の冷気は陳列室11内を循環して陳列室11内を所定の冷却温度に冷却した後、陳列室11の前面開口下縁に位置する冷気吸込口17を介して下部ダクト14内に帰還する。これにより、陳列室11の前面開口には、冷気によるエアーカーテンが形成され、陳列室11内の冷気漏出や外気侵入が抑制される。また、陳列室11内の全域が冷蔵温度に冷却された冷却領域とされて、全棚装置上の商品が冷却される。
ここで、制御装置Cは、図9に示すように、各棚装置25〜28に設けられる各棚センサ25T〜28Tの検出温度に基づき、現在の棚温度が所定の設定冷却温度範囲(例えば、ディファレンシャル温度として設定温度±2℃)である場合には、冷却用送風機7の送風機モータ7Mを駆動回路70により、所定の回転数、例えば1500rpmとする。
一方、現在の棚温度が上記設定冷却温度範囲よりも高い場合、即ち、陳列室11内の熱負荷に対し冷却能力が不足している場合には、冷却用送風機7の送風機モータ7Mを駆動回路70により、前記所定の回転数よりも高い回転数、例えば1700rpmとする。他方、現在の棚温度が上記設定冷却温度範囲よりも低い場合、即ち、陳列室11内の熱負荷に対し冷却能力が過剰である場合には、冷却用送風機7の送風機モータ7Mを駆動回路70により、前記所定の回転数よりも低い回転数、例えば1300rpmとする。なお、これに限定されるものではなく、冷却制御を圧縮機の運転周波数制御又はON/OFF制御により実行しても良い。
なお、過熱度及び吸込温度に基づく電子膨張弁44の開度制御は、上記温蔵使用の場合と同様に行う。詳細は省略する。
(冷/温使用)
次に、上から二段目の棚装置26より上側の陳列室11内(第1の領域)を加熱領域とし、該棚装置26より下側の陳列室11内(第2の領域)を冷却領域として使用する場合について説明する。この場合、棚装置26に設けられたダンパー63を後方に押し込み、コントロールパネル65により、陳列室上部(第1の領域。上から二段目の棚装置26より上側の陳列室)を加熱領域とし、陳列室下部(第2の領域。棚装置26より下側の陳列室)を冷却領域とする旨入力する。
制御装置Cは、ダイヤルスイッチ66による出力とコントロールパネル65の入力設定に基づき、ダンパー63及び棚装置26の断熱材56により区画される陳列室上部を加熱領域とした温蔵使用、陳列室下部を冷却領域とした冷蔵使用すると判断した場合には、三方弁53を連結配管60側に切り換えると共に、電動開閉弁25Vと26Vを開放し、電動開閉弁27Vと28Vを閉鎖する。これにより、陳列室上部に架設される棚装置25の高温冷媒配管25Hと、棚装置26の高温冷媒配管26Hへの高温冷媒の流通が許容されると共に、陳列室下部に架設される棚装置27の高温冷媒配管27Hと、棚装置28の高温冷媒配管28Hへの高温冷媒の流通が阻止される。そして、各棚装置25〜28に設けられるそれぞれの棚センサ25T〜28Tが検出する棚温度に基づき、冷却装置Rを構成する圧縮機40の圧縮機モータ40Mをインバータ装置69により制御し、冷却/加熱運転を実行する。
この場合、冷媒吐出管52から吐出された冷媒は、三方弁53が連結配管60側に切り換えられていることから、連結配管60及び各電動開閉弁25V、26Vを介して陳列室上部に架設される棚装置25、26の高温冷媒配管25H、26H内に流入する。これにより、上記温蔵使用の場合と同様に、棚装置25、26は、高温冷媒配管25H、26Hを流れる圧縮機40から吐出された高温冷媒からの熱伝導、及び/又は輻射熱によって、商品載置面38Aや該載置面に載置される商品が加熱される。
これにより、棚装置25及び26が架設される陳列室上側(第1の領域)は、加熱領域として使用される。
一方、前記高温冷媒配管25H及び26Hを経た高温冷媒は、蒸発パイプ43、放熱器41、内部熱交換器45内に順次流入し、放熱された後、電子膨張弁44に至る。冷媒は制御装置Cにて開度制御が行われる電子膨張弁44により減圧され、気液二相の混合体とされて、蒸発器15内に流入する。そこで冷媒が蒸発することで冷却作用を発揮した後、内部熱交換器45に流入し、完全に気体の状態とされ、冷媒導入管46から圧縮機40の第1の回転圧縮要素内に帰還する。
このとき、ダクト9内は、棚装置26に設けられる連通部61上方にてダンパー63により閉塞されていることから、蒸発器15と熱交換した冷気は、ダクト9と連通する下部ダクト14内に配設された冷却用送風機7により棚装置26に設けられた棚ダクト29の中間冷気吐出口62を介してから下側の陳列室11内(第2の領域)に吐出され、一部の冷気は当該第2の領域内を循環して該領域を所定の冷却温度に冷却した後、陳列室11の前面開口下縁に位置する冷気吸込口17を介して下部ダクト14内に帰還する。
これにより、棚装置26の下側に形成される第2の領域の前面開口には、冷気によるエアーカーテンが形成され、当該領域内の冷気漏出や外気侵入が抑制される。また、第2の領域が冷蔵温度に冷却された冷却領域とされて、棚装置27、28上の商品が冷却される。
このように、弁装置としての三方弁53や各電動開閉弁25V〜28Vを切り換えることによって、棚装置26より上側に形成される陳列室(第1の領域)を加熱領域として使用することが可能となると共に、棚装置26より下側に形成される陳列室(第2の領域)を冷却領域として使用することが可能となる。
特に、第1の領域に設けられた高温冷媒配管25H、26Hは、一連の冷媒回路を構成する冷媒高圧側に位置して高温冷媒を効率的に放熱させることが可能となるため、当該高温冷媒配管25H、26Hを経て電子膨張弁44に入る冷媒の温度を効率的に下げることができ、蒸発器15におけるエントロピー差を拡大することができる。従って、第2の領域を冷却する蒸発器15による冷却能力の向上を図ることが可能となる。
また、この場合、圧縮機40から吐出された高温冷媒は、棚装置25、26に設けられた高温冷媒配管25H、26Hにて放熱された後に、機械室19に設けられた放熱器41にて放熱されることから、大気に放出される熱を最小限とすることができる。従って、ショーケース全体としての排出熱量を低減することが可能となる。
上記冷/温使用時において、制御装置Cは、上記図8に示すような過熱度及び吸込温度に基づく電子膨張弁44の開度制御に加えて図10に示すように、各棚装置25〜28に設けられる棚センサ25T〜28Tによる出力温度に基づき、圧縮機40の圧縮機モータ40Mの運転周波数及び放熱器用送風機41の回転数制御を行う。
即ち、第1の領域(加熱領域)に設けられる棚センサ25T及び/又は26T(ここでは、第1の温度検出手段を構成する)による出力温度が所定の設定加熱温度範囲である場合であって、第2の領域(冷却領域)に設けられる棚センサ27T及び/又は28T(ここでは、第2の温度検出手段を構成する)による出力温度が所定の設定冷却温度範囲である場合には、圧縮機40の圧縮機モータ40Mをインバータ装置69により運転周波数を所定の周波数、例えば50Hzとして運転し、放熱器用送風機42の送風機モータ42Mを駆動回路71により回転数を所定の回転数、例えば500rpmとして運転する。
一方、第1の領域(加熱領域)に設けられる棚センサ25T及び/又は26Tによる出力温度が所定の設定加熱温度範囲よりも低く、第2の領域(冷却領域)に設けられる棚センサ27T及び/又は28Tによる出力温度が所定の設定冷却温度範囲である場合には、加熱領域における加熱能力が不足し、冷却領域における冷却能力が充足していると考えられる。
この場合、制御装置Cは、圧縮機モータ40Mの運転周波数は維持したまま、放熱器用送風機42の送風機モータ42Mを駆動回路71により回転数を所定の回転数よりも低い回転数、例えば200rpmとして運転する。
これにより、放熱器用送風機42の回転数を低下させることで、冷媒回路の高圧側に配設される放熱器41における放熱量を減少させることができ、棚装置25、26に設けられる高温冷媒配管25H、26Hにおける放熱量を増加させて、第1の領域の加熱能力の不足を解消することができる。
他方、第1の領域(加熱領域)に設けられる棚センサ25T及び/又は26Tによる出力温度が所定の設定加熱温度範囲であって、第2の領域(冷却領域)に設けられる棚センサ27T及び/又は28Tによる出力温度が所定の設定冷却温度範囲よりも高い場合には、加熱領域における加熱能力が充足しており、冷却領域における冷却能力が不足していると考えられる。
この場合、制御装置Cは、圧縮機モータ40Mの運転周波数は維持したまま、放熱器用送風機42の送風機モータ42Mを駆動回路71により回転数を所定の回転数よりも高い回転数、例えば800rpmとして運転する。
これにより、放熱器用送風機42の回転数を上昇させることで、冷媒回路の高圧側に配設される放熱器41における放熱量を増大させることができ、第1の領域の棚装置25、26に設けられる高温冷媒配管25H、26Hにおける放熱量を維持しつつ、蒸発器15における吸熱量を増加させて冷却能力の不足を解消することができる。
また、この場合、冷却領域における冷却能力が不足していることから、上記冷蔵使用の場合と同様に、冷却用送風機7の送風機モータ7Mを駆動回路70により、前記所定の回転数よりも高い回転数、例えば1700rpmとし、蒸発器15における吸熱量を増加させて、冷却能力の不足を解消しても良い。
そして、第1の領域(加熱領域)に設けられる棚センサ25T及び/又は26Tによる出力温度が所定の設定加熱温度範囲よりも低く、第2の領域(冷却領域)に設けられる棚センサ27T及び/又は28Tによる出力温度が所定の設定冷却温度範囲よりも高い場合には、加熱領域における加熱能力が不足し、且つ、冷却領域における冷却能力も不足していると考えられる。
この場合、制御装置Cは、放熱器用送風機42の送風機モータ42Mの回転数を維持したまま、圧縮機40の圧縮機モータ40Mの運転周波数をインバータ装置69により所定の運転周波数よりも高い運転周波数、例えば60Hzとして運転する。
これにより、圧縮機40からの吐出冷媒量を増加させて第1の領域の加熱能力の不足を解消することができると共に、第2の領域を冷却する蒸発器15における蒸発冷媒量を増加させて、冷却能力の不足を解消することができる。
なお、第1の領域(加熱領域)に設けられる棚センサ25T及び/又は26Tによる出力温度が所定の設定加熱温度範囲よりも高い場合には、三方弁53を蒸発パイプ43側に切り換えて、高温冷媒が棚装置25、26に設けられる高温冷媒配管25H、26H内に流入することを阻止しても良い。また、これ以外にも電子膨張弁44の開度を拡大させることで、冷媒の絞り量を低減し、高温冷媒配管25H、26Hにおける放熱量を低減させても良い。
なお、本実施例では、棚装置26に棚ダクト29を形成し、ダンパー63を切り換えることによって、該ダンパー63と棚装置26(断熱材56)によって、該棚装置26より上側の陳列室内と、下側の陳列室内とを区画し、上側を第1の領域として温蔵使用とし、下側を第2の領域として冷蔵使用としているが、領域を区画する棚装置は、この棚装置26に限定されるものではない。即ち、各棚装置25、27、28にも棚ダクト29を形成し、それぞれに対応するダンパー63を備えることによって、任意の高さにて陳列室11内を第1の領域と第2の領域とに区画することが可能となる。
また、上記実施例では、冷却領域の温度制御を冷却領域に設けられる棚センサに基づき行っているが、これに限定されるものではなく、蒸発器15の冷気吹出側などに設けられる庫内温度センサ67に基づき行っても良い。