JP5329372B2 - 圧延銅箔、並びにこれを用いた負極集電体、負極板及び二次電池 - Google Patents
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Description
リチウムイオン二次電池としては、アルミニウム箔にLiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4等の化合物をコーティングしたものを正極として用い、銅箔に炭素質材料等を活物質としてコーティングしたものを負極に用いるものが知られている(図2)。
圧延銅箔の製造プロセスでは、タフピッチ銅のインゴットを熱間圧延した後、冷間圧延と焼鈍とを繰り返し、最後に最終冷間圧延で、例えば35〜5μmの範囲の所定の厚みに仕上げる。
(1)活物質と結着剤とを溶剤に混練分散したペーストを、集電体となる銅箔の片面もしくは両面に塗布して負極板材とする。
(2)150〜300℃の温度で数時間から数十時間加熱し乾燥する。
(3)必要に応じ、負極板材に加圧する。
(4)せん断加工を施し、所定形状の負極板へ成型する。
せん断加工の例としては、プレス機による打ち抜き加工、シャーリングによる切断加工、丸刃スリッターによる切断加工等がある。
又、リチウムイオン二次電池では、充電時にはリチウムイオンが正極から負極に移動し、放電時にはリチウムイオンが負極から正極に移動する。リチウムイオンの移動に伴って負極活物質が膨張収縮するため、銅箔は充放電によって機械的な繰り返しストレスを受ける。そのため、軟化した銅箔は充放電による機械的な繰り返しストレスを受けて変形し、銅箔表面に塗布された活物質が剥離しやすいと共に、銅箔自体も損傷しやすくなる。
このような課題に対応するため、タフピッチ銅を素材とする圧延銅箔に替わり、銅合金を素材とする圧延銅箔(以下、銅合金箔)が提案されている。
特開2000−133276(特許文献2)では、Znを10〜35%の範囲で含有する銅合金箔が開示されている。
特開平11−339811(特許文献3)では、Cu−0.1%Fe−0.03%P、Cu−0.3%Cr−0.25%Sn−0.2%Zn及びCu−0.1%Niを素材とする銅合金箔が開示されている。
特開2000−328159(特許文献4)では、0.002〜0.45重量%のPを含有し、これに0.006〜0.25重量%のFeまたは/及び0.005〜0.25重量%のAgを添加した銅合金箔が開示されている。これら合金は、りん脱酸銅をベースとしており、Pの特性への弊害を発現させないようにP濃度を制限している。
特開2003−286528(特許文献5)では、0.063〜0.231%のSnを含有し、水素濃度と酸素濃度を適正に調整した銅合金箔が開示されている。この銅箔はピンホールと屈曲寿命が改善されており、リチウムイオン二次電池の負極集電体にも使用できる。
本発明者らの検討結果によれば、従来の負極集電体用銅合金箔のなかでは、特許文献5の無酸素銅をベースとするCu−Sn合金が、比較的特性、製造性、コストのバランスに優れていたが、二次電池の充放電サイクル特性という点では充分なものではなかった。
本発明はCu−Sn合金箔を改良することにより、リチウムイオン二次電池をはじめとする二次電池の負極集電体材料として好適な、充放電サイクル寿命に優れる圧延銅箔、並びにこれを用いた負極集電体、負極板及び二次電池を提供することを目的とする。
(1)0.05〜0.22質量%のSnを含有し残部Cu及び不純物からなる無酸素銅ベースの銅合金箔であり、表面酸化膜中のSn濃度が0.16〜1.5質量%であり、480MPa以上の引張り強さ及び80%IACS以上の導電率を有するとともに、300℃で30分間加熱後に400MPa以上の引張り強さを維持することを特徴とする、二次電池用負極集電体用圧延銅箔。
(2)更に0.1質量%以下のAgを含有することを特徴とする(1)記載の圧延銅箔。
(3)上記(1)又は(2)記載の圧延銅箔より構成される負極集電体。
(4)上記(3)に記載の負極集電体の少なくとも片面に、炭素質材料または黒鉛質材料を主成分とする負極活物質層を有する負極板。
(5)上記(3)に記載の負極集電体の少なくとも片面に、金属リチウム、金属すず、すず化合物、けい素単体、及びけい素化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含有する活物質層を有する負極板。
(6)上記(4)又は(5)記載の負極板が、リチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質の主成分とする正極板とセパレータを介して絶縁配置された極板群、非水電解液、並びに極板群及び非水電解液を収容する電池ケースとから構成される二次電池。
本発明では、銅箔の強度と耐熱性を改善するために無酸素銅にSnを添加している。Sn濃度が0.05%以上、好ましくは0.10%以上であると強度と耐熱性に優れた銅箔が得られる。一方、Sn濃度が0.22%を超えると、導電率が低下して二次電池の負極集電体用として不適当になる。より好ましくは0.15%以下であり、この場合83%IACS以上の導電率が安定して得られる。
充放電ストレスによる銅箔の変形が生じず、電池の信頼性を更に向上させるには、乾燥工程を経た後に400MPa以上の引張強さを保つことが好ましい。本発明で求められる乾燥工程での熱負荷レベルは、300℃で30分間の熱処理に相当する。これは従来の熱負荷の基準である200℃で30分(特許文献1)、300℃で5分(特許文献4)などの条件より極めて厳しい条件である。
本発明の圧延銅箔は、300℃で30分間加熱後の引張強さが、好ましくは400MPa以上、より好ましくは450MPa以上である。ここで、300℃で30分間加熱後に400MPa以上の引張強さを維持するためには、圧延上がりの状態で、480MPa以上、好ましくは520MPa以上の引張強さを有している必要がある。
Sn濃度が0.05%以上であると、上記条件加熱後の引張強さが400MPa以上、0.10%以上であると450MPa以上になる。
本発明の表面酸化膜中のSn濃度は、0.16〜1.5質量%である。
SnはCuより酸化しやすいため、酸化膜中のSn濃度は母地中のSn濃度と比較して高くなる。銅箔の表面に酸化すずが存在すると、金属化合物等の負極活物質に対する親和性が上昇するため、負極活物質を塗布して負極を製造する工程の作業効率が上昇する利点があることが予測できる。従って、従来技術では、Sn含有銅箔表面に必然的に存在する酸化すずに対する問題点は特に認識されていなかった。しかし、本発明者は、酸化膜中のSn濃度が1.5%を越えると、酸化膜が脆くなって母地から剥離しやすくなり、銅箔と活物質との結合性が阻害されることを発見した。酸化膜中のSn濃度を1.5%以下に制御することで、銅箔と活物質との密着性が向上し、電池の充放電サイクル寿命が向上した。
一方、酸化膜中のSn濃度を0.16%未満に調整しようとすると、活物質との密着性以外のところで弊害が生じる。例えば、後述するように、表面に酸化すずを局在させないために酸化雰囲気下で焼鈍を行うと、厚く不均一な酸化膜が生成し、酸洗後の最終圧延では材料破断が頻発する。
本発明の銅合金箔の酸化膜の厚さは1〜4nmであり、この範囲であれば酸化膜の厚みが銅箔と活物質との密着性に影響を及ぼすことはない。
本発明では、酸化膜のSn濃度は、XPS(X線光電子分光法)により試料表面をArスパッタリングしてSn濃度プロファイルを測定し、得られたプロファイルの、母地濃度に対応するベースラインよりも表面側に存在する最大ピーク濃度として表される。また、酸化膜の厚さは、上記XPSのO濃度のプロファイルにおいて、表面に濃化したOが母地のO濃度まで低下するときの深さとして表される。
インゴットの溶製では、まずカーボンによる脱酸反応を利用して溶銅中の酸素濃度を10ppm以下に下げ、その後Snを添加する。溶銅中の酸素濃度が10ppmを超える状態でSnを添加すると、Snが酸化し、酸化すずの介在物が生成してしまう。次に、インゴットを熱間圧延により厚さ10mm程度の板とし、その後冷間圧延と再結晶焼鈍を繰り返し、最後に冷間圧延で所定厚み(一般的には35〜5μm)に仕上げる。厚みが5μm以下になると、単位面積当たりの引張強さが高くても破断しやすくなる。一方、35μmを超えると、負極板が厚くなるため二次電池を小型化しにくくなる。
再結晶焼鈍は、炉温が300〜800℃の範囲、焼鈍時間が数秒間〜数時間の範囲で、焼鈍後の結晶粒径が所定の大きさ(通常は3〜30μm)になる条件で行われる。焼鈍後の材料は、焼鈍中に生成した表面酸化膜を除去するため、硫酸水溶液等を用いて酸洗される。
雰囲気の還元性が強い場合、SnがCuより酸化しやすい傾向がそのまま要因となってCuが酸化せずにSnが優先的に酸化し、Snリッチな酸化膜が形成される。焼鈍後の酸洗の際、Cuの酸化物は酸に溶けやすいが、Snの酸化物は酸に溶けにくいため、酸化膜中のSn濃度はさらに高くなる。焼鈍で生成した酸化膜は、最終圧延において部分的に割れたり剥離したりする場合もあるが、そのほとんどは箔製品の表面に残留する。
一方、雰囲気の酸化性が強いと、SnとCuとの酸化傾向の差を区別できないほどSnとCuが同程度の速度で酸化され、酸化膜中のCu/Sn濃度比が母地中のCu/Sn濃度比に近付くものの、酸化膜が厚く不均一に成長する。このため酸洗後の材料表面に凹凸やピットが生じ、箔への圧延において銅箔にピンホールが生じたり銅箔が破断したりする。
本発明に関わる負極板及び二次電池は、上記銅箔を負極集電体として用いることを特徴とするものであり、これ以外の構成については限定されず、一般に用いられている公知のものを用いることができる。
負極は、本発明の負極集電体と、負極集電体の片面もしくは両面に形成される負極活物質より構成される。負極活物質としては、リチウムの吸蔵放出が可能な炭素質物、金属、金属化合物(金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物)、リチウム合金などが挙げられる。
前記炭素質物としては、黒鉛、コークス、炭素繊維、球状炭素、熱分解気相炭素質物、樹脂焼成体などの黒鉛質材料もしくは炭素質材料;熱硬化性樹脂、等方性ピッチ、メソフェーズピッチ系炭素、メソフェーズピッチ系炭素繊維、メソフェーズ小球体などに500〜3000℃で熱処理を施すことにより得られる黒鉛質材料または炭素質材料;等が挙げられる。
前記金属としては、リチウム、アルミニウム、マグネシウム、すず、けい素等が挙げられる。
前記金属酸化物としては、すず酸化物、ケイ素酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブ酸化物、タングステン酸化物等が挙げられる。前記金属硫化物としては、すず硫化物、チタン硫化物等が挙げられる。前記金属窒化物としては、リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等が挙げられる。
リチウム合金としては、リチウムアルミニウム合金、リチウムすず合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等が挙げられる。
負極活物質含有層には、導電剤を含有させることができる。導電剤としては、アセチレンブラック、粉末状膨張黒鉛などのグラファイト類、炭素繊維粉砕物、黒鉛化炭素繊維粉砕物、等が挙げられる。
正極は、正極集電体と、前記正極集電体の片面もしくは両面に形成される正極活物質含有層より構成される。
正極集電体としては、アルミニウム板、アルミニウムメッシュ材等が挙げられる。
正極活物質含有層は、例えば、活物質と結着剤とを含有する。正極活物質としては、二酸化マンガン、二硫化モリブデン、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4等のカルコゲン化合物が挙げられる。これらのカルコゲン化合物は、2種以上の混合物で用いても良い。結着剤としては、フッ素系樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂のような熱可塑性エラストマー系樹脂、またはフッ素ゴムのようなゴム系樹脂を用いることができる。
活物質含有層には、導電補助材としてアセチレンブラック、粉末状膨張黒鉛などのグラファイト類、炭素繊維粉砕物、黒鉛化炭素繊維粉砕物、等をさらに含有することができる。
正極と負極の間には、セパレータか、固体もしくはゲル状の電解質層を配置することができる。セパレータとしては、例えば20〜30μmの厚さを有するポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルム等を用いることができる。
非水電解質には、液状、ゲル状もしくは固体状の形態を有するものを使用することができる。また、非水電解質は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解される電解質とを含むことが望ましい。
非水溶媒としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。使用する非水溶媒の種類は、1種類もしくは2種類以上にすることが可能である。
電解質としては、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化硼酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)等が挙げられる。電解質は、単独でも混合物の形態でも使用することができる。
カーボン脱酸により酸素濃度を調整した溶銅にSnを添加した後、幅が500mm、厚みが200mmのインゴットに鋳造した。このインゴットを850℃で3時間加熱し、熱間圧延により厚み10mmの板にした。次に、表面の酸化スケールを研削除去し、冷間圧延により1.5mmの板とした。その後、再結晶焼鈍と冷間圧延を繰り返して、最終の圧延で厚みを18〜6μmに仕上げた。
再結晶焼鈍は連続焼鈍ラインを用いて行った。炉温を700℃とし、焼鈍後の結晶粒径が10μmになるように、材料の通板速度(炉内の滞留時間)を調整した。
最終圧延の加工度を変化させるために、最終焼鈍(最終冷間圧延直前の焼鈍)を施す板厚を予め調整した。
銅箔表面の酸化膜中のSn濃度を、最終再結晶焼鈍における炉内のガス雰囲気の酸化還元雰囲気を、下記手法により適宜制御することにより調整した。用いた連続焼鈍炉は、ブタンガスと空気との混合ガスを燃焼させて熱源とする炉であり、炉内の雰囲気はCO、CO2、O2、N2の混合ガスである。ブタンガスと空気との混合比を変化させることにより、CO濃度とCO2濃度との比(CO/CO2)を調整した。CO/CO2比が大きくなると還元性雰囲気となり、CO/CO2比が小さくなると酸化性雰囲気となる。炉から出た後の材料は10質量%硫酸水溶液で酸洗処理した。最終圧延後に得られた圧延銅箔について、下記評価を行った。
銅箔母地中の酸素濃度を不活性ガス溶融−赤外線吸収法で、Sn及びAg濃度をICP−質量分析法で分析した。ここで、Sn及びAg分析には銅箔試料を用いたが、O分析には1.5mmの板から採取した試料を用いた。これは、箔試料では質量に対する表面積の比率が非常に大きいため(例えば1gの試料の場合、厚さ1.5mmの板の表面積は1.5cm2に対し、厚さ10μmの箔の表面積は220cm2)、銅箔試料を用いて酸素を分析すると、表面の酸化膜及び吸着水膜中の酸素が加算され、酸素分析値が銅箔中の酸素濃度より50ppm程度増加するためである。なお、箔試料を用い、これが無酸素銅ベースの箔であることを判定するためには、試料の金属組織を観察し、酸化物粒子が存在しないこと(直径2μm以上の酸化物粒子が0.01個/mm2以下)を確認すればよい。なお、分析限界は1ppmであるが表中の表示は、質量%の小数点以下2桁までとした。
負極活物質の乾燥工程を模して圧延銅箔試料を300℃で30分間加熱した。加熱前及び加熱後の試料に対し、IPC(Institute for Interconnecting and Packaging Electronics Circuits)規格、IPC−TM−650;Method 2.4.19に準じて引張強さを求めた。試験片は、幅12.7mm、長さ150mmとし、試験片の長さ方向が圧延方向と平行になるように採取した。引張り速度は50mm/minとした。
圧延上がり(加熱前)の試料に対し引張り試験用の試験片を用い、四端子法により20℃での導電率を求めた。
XPS(X線光電子分光法)を用い、試料表面をArスパッタリングしながらO及びSnを分析することにより、試料表層におけるO及びSnの濃度プロファイルを測定した。測定条件は次の通りである。
装置:アルバック・ファイ株式会社製5600MC、到達真空度:1.4×10-7Pa、励起源:単色化AlKα、出力:210W、検出面積:800μmφ、入射角:45度、取り出し角:45度、中和銃なし。
(スパッタ条件)イオン種:Ar+、加速電圧:3kV、掃引領域:3mm×3mm、レート:SiO2換算で2.0nm/min。
後述する発明例6での測定結果を図1に示す。Sn濃度プロファイルにおけるSnのピーク値は0.8%であり、この値を酸化膜中のSn濃度とした。また、O濃度のプロファイルより酸化膜の厚みを読み取ると1.8nmとなる。ここで、酸化膜の厚さは、図中に点線で示すように、O濃度曲線の裾の部分に接線を引き、この接線が母地のO濃度(この場合はゼロ質量%)と交わる深さとした。
図2に示す円筒型のリチウムイオン二次電池を以下の手順で作製し、サイクル寿命を測定した。
(1)負極活物質として鱗片状黒鉛粉末50重量部、結着剤としてスチレンブタジエンゴム5重量部、そして増粘剤としてカルボキシルメチルセルロース1重量部に対して水99重量部に溶解した増粘剤水溶液23重量部を、混錬分散して負極用ペーストを得た。この負極用ペーストを圧延銅箔試料表面にドクターブレード方式で厚さ200μmに両面塗布し、300℃で30分間加熱し乾燥した。加圧して厚さを160μmに調整した後、せん断加工により成型し負極板6を得た。
(2)正極活物質としてLiCoO2粉末50重量部、導電剤としてアセチレンブラック1.5重量部、結着剤としてPTFE50重量%水性ディスパージョン7重量部、増粘剤としてカルボキシルメチルセルロース1重量%水溶液41.5重量部を、混練分散して正極用ペーストを得た。この正極用ペーストを、厚さ30μmのアルミニウム箔からなる集電体上にドクターブレード方式で厚さ約230μmに両面塗布して200℃で1時間加熱し乾燥した。加圧して厚さを180μmに調整した後、せん断加工により成型し正極板5を得た。
(3)正極板5と負極板6とを、厚さ20μmのポリプロピレン樹脂製の微多孔膜からなるセパレータ7を介して絶縁した状態で渦巻状に巻回した電極群を電池ケース8に収容した。
(4)負極板6から連接する負極リード9を、前記ケース8と下部絶縁板10を介して電気的に接続した。同様に正極板5から連接する正極リード3を、封口板1の内部端子に上部絶縁板4を介して電気的に接続した。これらの後、非水電解液を注液し、封口板1と電池ケース8とを絶縁ガスケット2を介してかしめ封口して、直径17mm、高さ50mmサイズで電池容量が780mAhの円筒型リチウムイオン二次電池を作製した。
(5)電解液は、エチレンカーボネート30体積%、エチルメチルカーボネート50体積%、プロピオン酸メチル20体積%の混合溶媒中に、電解質としてヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を1.0モル溶かした電解液を所定量注液した。この電解液を正極活物質層及び負極活物質層内に含浸させた。
比較例1、2、発明例3〜10及び比較例11では、銅合金中のSn濃度の効果を検討している。
発明例3〜10は本発明の範囲内のSn濃度であり、目的とする特性が得られた。発明例3、4はSn濃度が低いため熱履歴後の引張強さにやや劣る。発明例9、10はSn濃度が高いため導電率がやや低い。
比較例1は従来の無添加無酸素銅であり、活物質乾燥工程における300℃での30分間の熱履歴により、銅箔の引張強さが200MPa近くまで低下した。また、比較例2は無酸素銅にSnを添加したものの添加量が0.05%未満であっため、300℃での30分間の熱履歴後、引張強さが400MPaを下回った。熱履歴後の引張強さが低いため、比較例1及び2の銅箔は、充放電の繰り返しストレスを受けて変形し、銅箔表面に塗布された活物質が剥離した。その結果、サイクル寿命が600回に満たなかった。一方、比較例11は0.22%を超えるSnを添加したために導電率が80%IACSを下回ってしまい、発熱や電圧損失により目的とする二次電池を製造できなくなる。
比較例14は酸素が10ppmを超えたものであり、添加したSnの一部が酸化して酸化すずとなった。このため、300℃で30分間加熱後の引張強さが400MPaを下回った。更に、充放電の繰り返しストレスを受けた際に酸化すずを起点として銅箔にクラックが生じて銅箔が変形し活物質が剥離した結果、サイクル寿命が600回を大きく下回った。
発明例15〜18は、発明例5〜7の箔厚10μmに対して6μmと12μmの箔厚としても、酸化膜の厚さが1〜4nmの範囲内であれば箔厚に関係なく目的とする効果を得られることを示す。
発明例20〜22は本発明の範囲内の表面酸化膜中Sn濃度であり、目的とする特性が得られた。
比較例19では、最終焼鈍の際のCO/CO2比を0.1未満として雰囲気の酸化性が強くしたところ、表面酸化膜中のSn濃度は低いが厚く不均一な酸化膜が生成し、酸洗で酸化膜を溶解した後の表面に顕著な凹凸が生じた。次工程の最終圧延で、この凹凸に起因して材料が破断し、特性を評価できなかった。表中「*1」は評価不能を示す。
比較例23及び24では、最終焼鈍の際のCO/CO2比が0.3を超え雰囲気の還元性が強くなりすぎ、表面酸化膜のSn濃度が1.5%を超えた。この酸化膜は脆いため銅箔と活物質との結合性が阻害され、充放電の繰り返しストレスを受けた際に活物質が銅箔から剥離し、サイクル寿命が600回に満たなかった。
発明例26〜30は適正な最終圧延加工度を採用したため、目的とする特性が得られた。発明例26は加工度がやや低く、発明例30は加工度がやや高いため熱履歴後の引張強さにやや劣る。
比較例25は加工度が80%未満であったため、圧延上がりの引張強さが480MPa未満となり、この影響により、300℃で30分間の熱履歴を受けた後の引張強さが400MPaを下回った。比較例31は加工度が98%を超えたため、焼鈍軟化が促進され300℃で30分間の熱履歴を受けた後の引張強さが400MPaを下回った。比較例25及び31の銅箔は、充放電の繰り返しストレスを受けて変形し、銅箔表面に塗布された活物質が剥離した。その結果、サイクル寿命が600回に満たなかった。
2:絶縁ガスケット
3:正極リード
4:上部絶縁板
5:正極板
6:負極板
7:セパレータ
8:電池ケース
9:負極リード
10:下部絶縁板
Claims (6)
- 0.05〜0.22質量%のSnを含有し残部Cu及び不純物からなる無酸素銅ベースの銅合金箔であり、表面酸化膜中のSn濃度が0.16〜1.5質量%であり、480MPa以上の引張り強さ及び80%IACS以上の導電率を有するとともに、300℃で30分間加熱後に400MPa以上の引張り強さを維持することを特徴とする、二次電池用負極集電体用圧延銅箔。
- 更に0.1質量%以下のAgを含有することを特徴とする請求項1記載の圧延銅箔。
- 請求項1又は2記載の圧延銅箔より構成される負極集電体。
- 請求項3に記載の負極集電体の少なくとも片面に、炭素質材料または黒鉛質材料を主成分とする負極活物質層を有する負極板。
- 請求項3に記載の負極集電体の少なくとも片面に、金属リチウム、金属すず、すず化合物、けい素単体、及びけい素化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含有する活物質層を有する負極板。
- 請求項4又は5記載の負極板が、リチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質の主成分とする正極板とセパレータを介して絶縁配置された極板群、非水電解液、並びに極板群及び非水電解液を収容する電池ケースとから構成される二次電池。
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