以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[車両の全体構成]
図1は、本発明の実施の形態の車両100の主たる構成を示す図である。なお車両100は、モータとエンジンとを車両の駆動に併用するハイブリッド自動車であるが、本発明は、モータで車輪を駆動する電気自動車、燃料電池自動車等に対しても適用することができる。
図1を参照して、車両100は、バッテリBと、接続部40と、昇圧コンバータ12と、平滑用コンデンサC1、C2と、放電用抵抗R2と、電圧センサ13,21と、負荷回路23と、エンジン4と、モータジェネレータMG1,MG2と、動力分割機構3と、車輪2と、制御装置30とを含む。
車両100は、さらに、電源ラインPL1,PL2と、接地ラインSLと、バッテリBの端子間の電圧VBを検出する電圧センサ10と、バッテリBに流れる電流IBを検出する電流センサ11とを含む。バッテリBとしては、たとえば、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池を用いることができる。
接続部40は、バッテリBの負極と接地ラインSLとの間に接続されるシステムメインリレーSMR3と、バッテリBの正極と電源ラインPL1との間に接続されるシステムメインリレーSMR2と、システムメインリレーSMR2と並列接続される直列に接続された抵抗R1およびシステムメインリレーSMR1とを含む。システムメインリレーSMR1〜SMR3は、制御装置30から与えられる制御信号CONT1〜CONT3にそれぞれ応じて導通/非導通状態が制御される。
コンデンサC1は、システムメインリレーSMR1〜SMR3オン時において、バッテリBの端子間電圧を平滑化する。コンデンサC1は、電源ラインPL1と接地ラインSL間に接続される。また、電源ラインPL1と接地ラインSL間には、電気負荷回路である電動エアコン42とDC/DCコンバータ44とが並列に接続されている。DC/DCコンバータ44は、補機バッテリ46を充電したり、図示しない補機負荷に電力を供給したりする。
電圧センサ21は、コンデンサC1の両端間の電圧VLを検知して制御装置30に対して出力する。昇圧コンバータ12は、コンデンサC1の端子間電圧を昇圧する。コンデンサC2は、昇圧コンバータ12によって昇圧された電圧を平滑化する。電圧センサ13は、平滑用コンデンサC2の端子間電圧VHを検知して制御装置30に出力する。放電用抵抗R2は、システム停止後に電圧VHが確実にゼロに下げるために入れられている。
負荷回路23は、インバータ14および22を含む。インバータ14は、昇圧コンバータ12から与えられる直流電圧を三相交流に変換してモータジェネレータMG1に出力する。
動力分割機構3は、エンジン4とモータジェネレータMG1,MG2に結合されて、これらの間で動力を分配する機構である。たとえば動力分割機構としてはサンギヤ、プラネタリキャリヤ、リングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車機構を用いることができる。この3つの回転軸がエンジン4、モータジェネレータMG1,MG2の各回転軸にそれぞれ接続される。
なおモータジェネレータMG2の回転軸は、図示しない減速ギヤおよび差動ギヤによって車輪2に結合されている。また動力分割機構3の内部にモータジェネレータMG2の回転軸に対する減速機をさらに組み込んでもよい。また、この減速機の減速比を切り替え可能に構成した変速機を組み込んでも良い。
昇圧コンバータ12は、一方端が電源ラインPL1に接続されるリアクトルL1と、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間に直列に接続されるIGBT素子Q1,Q2と、IGBT素子Q1,Q2にそれぞれ並列に接続されるダイオードD1,D2とを含む。
リアクトルL1の他方端はIGBT素子Q1のエミッタおよびIGBT素子Q2のコレクタに接続される。ダイオードD1のカソードはIGBT素子Q1のコレクタと接続され、ダイオードD1のアノードはIGBT素子Q1のエミッタと接続される。ダイオードD2のカソードはIGBT素子Q2のコレクタと接続され、ダイオードD2のアノードはIGBT素子Q2のエミッタと接続される。
インバータ14は、昇圧コンバータ12から昇圧された電圧を受けて、たとえばエンジン4を始動させるために、モータジェネレータMG1を駆動する。また、インバータ14は、エンジン4から伝達される動力によってモータジェネレータMG1で発電された電力を昇圧コンバータ12に戻す。このとき昇圧コンバータ12は、降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。
インバータ14は、U相アーム15と、V相アーム16と、W相アーム17とを含む。U相アーム15,V相アーム16,およびW相アーム17は、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間に並列に接続される。
U相アーム15は、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間に直列接続されたIGBT素子Q3,Q4と、IGBT素子Q3,Q4とそれぞれ並列に接続されるダイオードD3,D4とを含む。ダイオードD3のカソードはIGBT素子Q3のコレクタと接続され、ダイオードD3のアノードはIGBT素子Q3のエミッタと接続される。ダイオードD4のカソードはIGBT素子Q4のコレクタと接続され、ダイオードD4のアノードはIGBT素子Q4のエミッタと接続される。
V相アーム16は、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間に直列接続されたIGBT素子Q5,Q6と、IGBT素子Q5,Q6とそれぞれ並列に接続されるダイオードD5,D6とを含む。ダイオードD5のカソードはIGBT素子Q5のコレクタと接続され、ダイオードD5のアノードはIGBT素子Q5のエミッタと接続される。ダイオードD6のカソードはIGBT素子Q6のコレクタと接続され、ダイオードD6のアノードはIGBT素子Q6のエミッタと接続される。
W相アーム17は、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間に直列接続されたIGBT素子Q7,Q8と、IGBT素子Q7,Q8とそれぞれ並列に接続されるダイオードD7,D8とを含む。ダイオードD7のカソードはIGBT素子Q7のコレクタと接続され、ダイオードD7のアノードはIGBT素子Q7のエミッタと接続される。ダイオードD8のカソードはIGBT素子Q8のコレクタと接続され、ダイオードD8のアノードはIGBT素子Q8のエミッタと接続される。
各相のアームの中間点は、モータジェネレータMG1の各相のコイルの一端に接続されている。すなわち、モータジェネレータMG1は、三相の永久磁石同期モータであり、U,V,W相の3つのコイルは各々一方端が中点に共に接続されている。そして、U相コイルの他方端がIGBT素子Q3,Q4の接続ノードに接続される。またV相コイルの他方端がIGBT素子Q5,Q6の接続ノードに接続される。またW相コイルの他方端がIGBT素子Q7,Q8の接続ノードに接続される。
なお、以上のIGBT素子Q1〜Q8に代えてパワーMOSFET等の他の電力スイッチング素子を用いても良い。
電流センサ24は、モータジェネレータMG1に流れる電流をモータ電流値MCRT1として検出し、モータ電流値MCRT1を制御装置30へ出力する。
インバータ22は、電源ラインPL2と接地ラインSLに接続されている。インバータ22は、車輪2を駆動するモータジェネレータMG2に対して昇圧コンバータ12の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。またインバータ22は、回生制動に伴い、モータジェネレータMG2において発電された電力を昇圧コンバータ12に戻す。このとき昇圧コンバータ12は、降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。なお、インバータ22の内部の構成は、図示しないがインバータ14と同様であり、詳細な説明は繰返さない。
制御装置30は、トルク指令値TR1,TR2、モータ回転数MRN1,MRN2、電圧VB,VH、電流IBの各値、モータ電流値MCRT1,MCRT2および起動指示IGONを受ける。そして制御装置30は、昇圧コンバータ12に対して昇圧指示、降圧指示および動作禁止等を含む指示を与える信号PWCを出力する。
さらに、制御装置30は、インバータ14に対して、駆動指示、回生指示および動作禁止指示等を含む指示を与える信号PWM1を出力する。駆動指示は、昇圧コンバータ12の出力である直流電圧をモータジェネレータMG1を駆動するための交流電圧に変換させる指示である。また、回生指示は、モータジェネレータMG1で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ12側に戻すための指示である。
同様に制御装置30は、インバータ22に対して、駆動指示、回生指示および動作禁止指示等を含む指示を与える信号PWM2を出力する。駆動指示は、昇圧コンバータ12の出力である直流電圧をモータジェネレータMG2を駆動するための交流電圧に変換させる指示である。また、回生指示は、モータジェネレータMG2で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ12側に戻すための指示である。
図2は、図1の制御装置30の機能ブロック図である。なお、この制御装置30は、ソフトウエアでもハードウエアでも実現が可能である。
図1、図2を参照して、制御装置30は、PM(Power Management)−ECU31と、MG(Motor Generator)−ECU32とを含む。
PM−ECU31は、アクセルペダルの位置を検出するアクセルポジションセンサ26からアクセル開度Accを受け、車速センサ28から車速に比例する車輪速Nwを受ける。
PM−ECU31は、アクセル開度Acc、車輪速Nwおよび他の各種センサの出力に基づいて運転者の要求出力を算出し、図1のバッテリBを監視する図示しない電池監視ユニットから送られてくるバッテリの充電状態SOCを考慮し、トータルの出力を算出する。そして、PM−ECU31は、ブレーキ要求も考慮しつつエンジン4、モータジェネレータMG1,MG2への駆動力の配分の演算を行ない、モータジェネレータMG1を駆動する指令GINS、モータジェネレータMG2を駆動する指令MINSを出力する。指令GINSは、後に説明する3相ON要求フラグFXなどの各種フラグを含む。
駆動指令を出す一方で、PM−ECU31は、短絡発生を示す信号GFINV,MFINVに応答して禁止信号GSDN0,MSDN0をそれぞれ出力する。短絡発生を示す信号GFINV,MFINVは、ジェネレータ過電流検出部60およびモータ過電流検出部62によって出力される。ジェネレータ過電流検出部60およびモータ過電流検出部62は、MG1電流センサ24およびMG2電流センサ25によって検出された電流値を所定のしきい値で判定し短絡を検出する。
MG−ECU32は、駆動指令GINSを受けてPWM処理を行ないインバータ14中のIGBT素子Q3〜Q8の駆動信号の元となる信号を発生させるジェネレータ制御部54と、駆動指令MINSを受けてPWM処理を行ないインバータ22中のIGBT素子の駆動信号の元となる信号を発生させるモータ制御部55とを含む。
MG−ECU32は、さらに、禁止信号GSDN0とジェネレータ過電流検出部60の出力するフェイル信号GFINVとを受けて禁止信号GSDNを出力するNOR回路51と、禁止信号GSDNとジェネレータ制御部54の出力とを受けてインバータ14の制御信号PWM1を出力するAND回路57とを含む。
MG−ECU32は、さらに、禁止信号MSDN0とモータ過電流検出部62の出力するフェイル信号MFINVとを受けて禁止信号MSDNを出力するNOR回路52と、禁止信号MSDNとモータ制御部55の出力とを受けてインバータ22の制御信号PWM2を出力するAND回路58とを含む。
電流センサ24,25において検出される電流が所定の過電圧を超えると、直ちに過電流検出部60,62がこれを検出して禁止信号GSDN、MSDNを活性化させてインバータ14およびインバータ22をシャットダウンする。これは、電気負荷保護のためにインバータ14およびインバータ22のシャットダウンはなるべく早く行なったほうが良いからである。
電流センサ24,25で検出された電流が所定の過電流よりも減少した場合、過電流検出部60,62は禁止を解除するが、PM−ECU31からの禁止信号GSDN0、MSDN0、CSDN0が活性化されている間は、それぞれ禁止信号GSDN、MSDNの活性化は維持される。
[3相ON状態での退避走行制御]
以下、インバータの1相の上アームまたは下アームのスイッチング素子にON固定となる故障が発生したときに、強制的に他の2相の対応するアームもON状態に制御することを3相ON制御といい、そのように制御された状態を3相ON状態と呼ぶこととする。3相ON状態では、インバータは、3相とも上アームON状態または3相とも下アームON状態のどちらかの状態に制御されている。
図3は、図2におけるPM−ECU31において実行される3相ON状態で退避走行を許可する制御を説明するためのフローチャートである。このフローチャートの処理は、所定の時間経過ごとまたは所定の条件が成立するごとにメインルーチンから呼び出されて実行される。
図2、図3を参照して、ジェネレータ過電流検出部60は、MG1電流センサ24の出力を観測して短絡の発生の有無を判断し、短絡が発生していればフェイル信号GFINVを活性化させる。なお、このときモータ過電流検出部62も、MG2電流センサ25の出力を観測して短絡の発生の有無を判断し、短絡が発生していればフェイル信号MFINVを活性化させる。
ステップS1において、PM−ECU31は、フェイル信号GFINVの活性化を検出したか否かを判断する。ステップS1においてフェイル信号GFINVの活性化が検出されない場合には、ステップS6に処理が進み制御はメインルーチンに移される。
ステップS2においてフェイル信号GFINVの活性化が検出された場合には、PM−ECU31は、電流算出許可フラグFCをON状態に設定する。図2において電流算出許可フラグFCがON状態に設定されると、短絡の有無を検出するだけでなくより細かい判定が可能となる。そして、ステップS3で1相短絡が発生しているか否かが判断される。なお、モータジェネレータの短絡故障の検出方法は、公知の様々な検出方法を採用すれば良いが、例えば、MG1を駆動するインバータ14の各相のスイッチング素子のオン/オフの制御パターンと、各相に流れる電流の検出パターンとに基づいて、1相短絡や2相短絡を検出するようにすれば良い。
ステップS3において1相短絡が検出されない場合には、ステップS6に処理が進み制御はメインルーチンに移される。一方、ステップS3において1相短絡が検出されている場合には、ステップS4に処理が進む。
ステップS4では、3相ON要求フラグFXがON状態に設定される。そして、ステップS5において3相ON状態で退避走行の許可がされる。なお、図13に示される特性から、所定の回転速度K(rpm)を超えたときに3相ON状態となるように制御が行われるようにしてもよい。
ステップS5の処理が終了すると、ステップS6に処理が進み制御はメインルーチンに移される。
図4は、1相短絡状態から3相ON状態に制御を切り替えた様子を示した波形図である。
図4において、横軸が時間、縦軸が電流を示す。時刻t0〜t1では、W相の下アーム(図1のQ8)に短絡故障が生じた状態でモータジェネレータMG1が回転されている。このとき短絡が生じているW相のコイルに流れる電流は、負の値を示し故障が発生していないときよりも大きな電流が流れる。そして、通常はゼロであるなまし電流値の絶対値|Iwf|はIf1という正の値となる。3相のコイルは中性点で接続されているので、U相電流IuとV相電流IvとW相電流Iwの合計はゼロである。したがって、U相電流IuとV相電流Ivの合計がW相電流と符号が反対で大きさが等しくなるようにU相電流IuとV相電流Ivが流れる。
時刻t1〜t2では、図2のPM−ECU31が3相ON要求フラグFXを活性化させた結果、ジェネレータ制御部54がU,V,W相の下アーム(図1のQ4,Q6,Q8)を導通させている。この状態では、U相電流IuとV相電流IvとW相電流Iwの各々は、I=0を中心として振動する正弦波に近い電流がながれる。そしてなまし電流値の絶対値|Iwf|はゼロである。
1相短絡故障発生時には、原則として以上のような3相ON制御で修理工場までの退避走行を行なう。しかし、ノイズ等の影響により正しく3相ON制御に移行せずに1相短絡故障が発生した状態で走行が継続される場合や、3相ON制御に移行した後にモータの過電流が生じる場合があり、故障個所を拡大しないためにも適切な保護をすることが望ましい。そこで本実施の形態では、以下に説明する第1〜第5の保護制御を導入して、モータジェネレータやインバータの保護を図る。なお、第1〜第5の保護制御は各々個別に導入されてもよいし、第1〜第5の保護制御を組み合わせた状態で1車両に導入されてもよい。
[第1の保護制御]
第1の保護制御は、インバータ1相故障が発生していても、図3の処理ではセンサ誤差などの関係から短絡が検出されず、3相ON制御に移行しなかったばあいに、別の短絡電流検知処理によって車両の電源供給を停止し、モータを保護するものである。
図5は、モータジェネレータMG1の第1の保護制御の処理構造を示したフローチャートである。この処理によって、図3で説明したフェイル信号GFINVがセンサ誤差やノイズ等の影響によって検出できない場合でも、モータジェネレータが保護される。
図5を参照して、まず、ステップS11においてジェネレータゲート遮断が実行される。ゲート遮断は、図1のIGBT素子Q3〜Q8をすべてOFF状態に制御することである。ゲート遮断すると、インバータ14はモータのコイルに故障が生じていなければ、モータ電流MCRTはゼロとなるはずである。したがってゲート遮断をしておくことによって、短絡電流の発生を容易に監視することが可能になる。
続いてステップS12において、電流算出許可フラグFCがオン状態に設定されているか否かが判断される。電流算出許可フラグFCは、通常走行中であればオフ状態であり、何らかの異常が検出された場合にオン状態に設定されるフラグである。電流算出許可フラグFCがオン状態に設定されると、電流値を計測するなど発生した故障を詳細に分類することが可能となる。
ステップS12で電流算出許可フラグFCがON状態である場合には、ステップS13に処理が進む。一方、ステップS12で電流算出許可フラグFCがON状態で無い場合には、ステップS22に処理が進む。
ステップS13では、3相ON要求フラグFXがOFF状態に設定されているか否かが判断される。3相ON要求フラグFXは、図3のフローチャートでフェイル信号GFINVがフェイル検出状態であり、かつ1相短絡であると判定された場合にオン状態に設定されるフラグである。
ステップS13において、3相ON要求フラグFXがOFF状態であった場合には、ステップS14に処理が進む。一方、ステップS13において、3相ON要求フラグFXがOFF状態でない場合には、ステップS22に処理が進む。
ステップS14では、モータジェネレータMG1のV相電流Iv、W相電流Iwを検出する電流センサ25の出力が、固定値に固定されていないか判断される。たとえば、電流センサ25に故障が生じていたり、電流センサ25の配線が断線したりすると、電流センサの出力はゼロ(またはある固定値)に張り付いて動かなくなることが多い。MG−ECU32は、センサの出力を受信してこのような張り付き故障が生じていないことを確認する。
ステップS14において、V相電流、W相電流センサ出力が固定値に固定されていなければ、ステップS15に処理が進む。ステップS15では、V相電流、W相電流いずれかのなまし電流値の絶対値がしきい値I1以上であるか否かが判断される。なまし電流値は、フィルタ処理や平均化処理などの急峻な変化をカットする処理をかけた後の電流値である。このフィルタ処理は、たとえば適切に時定数を選んだローパスフィルタや一時遅れフィルタなどを使用することができる。
ステップS15において、V相およびW相のいずれにも、|なまし電流値|≧I1が成立した場合には、ステップS16に処理が進む。ステップS16では、短絡電流検出カウンタをカウントアップし短絡電流未検出カウンタをクリアする。ここで、短絡電流検出カウンタは、ある条件が所定時間継続していると短絡が発生していると判断するための時間をカウントするためのカウンタである。また、短絡電流未検出カウンタは、別の条件が所定時間継続していると短絡が発生していないと判断するための時間をカウントするためのカウンタである。
一方、ステップS15において、|なまし電流値|≧I1が成立していない場合には、ステップS17に処理が進む。ステップS17では、短絡電流未検出カウンタをカウントアップし、短絡電流検出カウンタをクリアする。
ステップS15の処理の後、ステップS16またはステップS17の処理が実行された後には、ステップS18に処理が進む。
ステップS18では、短絡電流検出カウンタの示す時間がしきい値TNG1(ms)以上であるか否かが判断される。ステップS18において、短絡電流検出カウンタの示す時間がしきい値TNG1(ms)以上であった場合には、ステップS20に処理が進む。ステップS20では、短絡電流検知フラグF1がON状態に設定される。短絡電流検知フラグF1がON状態に設定されると、PM−ECU31は、システムメインリレーSMR1〜SMR3をすべてOFF状態に設定して電力供給を遮断することにより、モータジェネレータMG1のコイルを過熱から保護する。そして、ステップS24に処理が進み、制御はメインルーチンに移される。
一方、ステップS18で、短絡電流検出カウンタの示す時間がしきい値TNG1(ms)以上でなかった場合には、ステップS19に処理が進む。ステップS19では、短絡電流未検出カウンタの示す時間がしきい値TOK1(ms)以上であるか否かが判断される。
ステップS19において、短絡電流未検出カウンタの示す時間がしきい値TOK1(ms)以上であった場合には、ステップS21に処理が進む。ステップS21では、短絡電流検知フラグF1がOFF状態に設定される。たとえば、保護のために一度システムメインリレーがOFF状態(Ready−OFF状態)に設定されても、運転者から再起動の指令が与えられる場合がある。この場合は、再起動時に短絡電流検知フラグF1がOFF状態に設定されることにより、PM−ECU31は、再びシステムメインリレーを導通状態に設定することが可能となる。そして車両は、バッテリBから電力をモータジェネレータに供給することが可能な走行可能状態(Ready−ON状態)となる。
ステップS12で電流算出許可フラグがON状態でなかったとき、ステップS13で3相ON要求フラグFXがOFFでなかったとき、または、ステップS14でV相電流センサ、W相電流センサの出力のいずれかが固定値に固定されているときには、ステップS22に処理が進む。
ステップS22では、短絡電流検出カウンタおよび短絡電流未検出カウンタを共にクリアする。そしてステップS22の処理が終了した場合および、ステップS19において、短絡電流未検出カウンタが示す時間がしきい値TOK1(ms)以上でなかった場合には、ステップS23に処理が進む。
ステップS23では、短絡電流検知フラグF1は前回値と同じ値に保持される。そして、ステップS24に処理が進み制御はメインルーチンに移される。
以上説明したように、第1の保護制御では、インバータのスイッチング素子の1相に短絡故障が発生したとき(たとえば、MG1のV相上アーム短絡)、短絡相には直流成分を含む電流が流れる。短絡相判定を実施するために、U,V,W相のすべてで電流値(なまし処理と絶対値処理おこなったもの)が所定のしきい値を超えていた場合に短絡判定を確定させ、その後3相ON制御に移行する。このとき、何らかの要因で電流値が短絡判定しきい値を超えていて所定時間経過しているにも関わらず、3相ON制御に移行しなかった場合であっても、短絡電流の検出を行ない、車両をReady−OFF状態とすることでモータの磁石の減磁を防止することができる。
[第2の保護制御]
図6は、モータジェネレータMG1の第2の保護制御の処理構造を示したフローチャートである。第2の保護制御では、電流センサに故障が生じて短絡判定ができない場合でも、モータジェネレータが保護される。
図6を参照して、まず、ステップS31においてジェネレータゲート遮断が実行される。ゲート遮断は、図1のIGBT素子Q3〜Q8をすべてOFF状態に制御することである。ゲート遮断すると、インバータ14はモータのコイルに故障が生じていなければ、モータ電流MCRTはゼロとなるはずである。したがってゲート遮断をしておくことによって、短絡電流の発生を容易に監視することが可能になる。
続いてステップS32において、電流算出許可フラグFCがオン状態に設定されているか否かが判断される。電流算出許可フラグFCは、通常走行中であればオフ状態であり、何らかの異常が検出された場合にオン状態に設定されるフラグである。電流算出許可フラグFCがオン状態に設定されると、電流値を計測するなど発生した故障を詳細に分類することが可能となる。
ステップS32で電流算出許可フラグFCがON状態である場合には、ステップS33に処理が進む。一方、ステップS32で電流算出許可フラグFCがON状態で無い場合には、ステップS45に処理が進む。
ステップS33では、3相ON要求フラグFXがOFF状態に設定されているか否かが判断される。3相ON要求フラグFXは、図3のフローチャートでフェイル信号GFINVがフェイル検出状態であり、かつ1相短絡であると判定された場合にオン状態に設定されるフラグである。
ステップS33において、3相ON要求フラグFXがOFF状態であった場合には、ステップS34に処理が進む。一方、ステップS33において、3相ON要求フラグFXがOFF状態でない場合には、ステップS45に処理が進む。
ステップS34では、モータジェネレータMG1のV相電流Iv、W相電流Iwを検出する電流センサ25の出力が、固定値に固定されているか否かが判断される。たとえば、電流センサ25に故障が生じていたり、電流センサ25の配線が断線したりすると、電流センサの出力はゼロ(またはある固定値)に張り付いて動かなくなることが多い。MG−ECU32は、センサの出力を受信してこのような張り付き故障が生じていることを検出する。
ステップS34において、V相電流、W相電流センサ出力が固定値に固定されていれば、ステップS35に処理が進む。ステップS35では、出力が固定されていない相のなまし電流値の絶対値がしきい値I2以上であるか否かが判断される。
ステップS35において、出力非固定相の|なまし電流値|≧I2が成立した場合には、ステップS38に処理が進む。
一方、ステップS34で、V相電流およびW相電流のセンサ出力が固定値に固定されていない場合には、ステップS36に処理が進む。ステップS36では、図2のジェネレータ過電流検出部60が過電流を検出したことを示すGFINVの履歴が無いかが判断される。GFINVの履歴がない場合はステップS37に処理が進み、履歴があった場合にはステップS45に処理が進む。
ステップS37では、U相、V相、W相のいずれかの相のなまし電流値の絶対値がしきい値I2より大きいか否かが判断される。ステップS37において|なまし電流値|≧I2が成立した場合にはステップS38に処理が進み、成立しなかった場合にはステップS39に処理が進む。
ステップS38では、短絡電流検出カウンタをカウントアップし短絡電流未検出カウンタをクリアする。ここで、短絡電流検出カウンタは、ある条件が所定時間継続していると短絡が発生していると判断するための時間をカウントするためのカウンタである。また、短絡電流未検出カウンタは、別の条件が所定時間継続していると短絡が発生していないと判断するための時間をカウントするためのカウンタである。
一方、ステップS39では、短絡電流未検出カウンタをカウントアップし、短絡電流検出カウンタをクリアする。
ステップS35またはステップS37の処理の後、ステップS38またはステップS39の処理が実行された後には、ステップS40に処理が進む。
ステップS40では、短絡電流検出カウンタの示す時間がしきい値TNG2(ms)以上であるか否かが判断される。ステップS40において、短絡電流検出カウンタの示す時間がしきい値TNG2(ms)以上であった場合には、ステップS43に処理が進む。ステップS43では、短絡電流検知フラグF2がON状態に設定される。短絡電流検知フラグF2がON状態に設定されると、PM−ECU31は、システムメインリレーSMR1〜SMR3をすべてOFF状態に設定して電力供給を遮断することにより、モータジェネレータMG1のコイルを過熱から保護する。そして、ステップS47に処理が進み、制御はメインルーチンに移される。
一方、ステップS40で、短絡電流検出カウンタの示す時間がしきい値TNG2(ms)以上でなかった場合には、ステップS42に処理が進む。ステップS42では、短絡電流未検出カウンタの示す時間がしきい値TOK2(ms)以上であるか否かが判断される。
ステップS42において、短絡電流未検出カウンタの示す時間がしきい値TOK2(ms)以上であった場合には、ステップS44に処理が進む。ステップS44では、短絡電流検知フラグF2がOFF状態に設定される。たとえば、保護のために一度システムメインリレーがOFF状態に設定されても、運転者から再起動の指令が与えられる場合がある。この場合は、再起動時に短絡電流検知フラグF2がOFF状態に設定されることにより、PM−ECU31は、再びシステムメインリレーを導通状態に設定することが可能となる。そして車両は、バッテリBから電力をモータジェネレータに供給することが可能な走行可能状態(Ready−ON状態)となる。
ステップS32で電流算出許可フラグがON状態でなかったとき、ステップS33で3相ON要求フラグFXがOFFでなかったとき、または、ステップS36でGFINVの検出履歴があったときには、ステップS45に処理が進む。
ステップS45では、短絡電流検出カウンタおよび短絡電流未検出カウンタを共にクリアする。そしてステップS45の処理が終了した場合および、ステップS42において、短絡電流未検出カウンタが示す時間がしきい値TOK2(ms)以上で無かった場合には、ステップS46に処理が進む。
ステップS46では、短絡電流検知フラグF2は前回値と同じ値に保持される。そして、ステップS47に処理が進み制御はメインルーチンに移される。
以上説明したように、第2の保護制御では、電流センサの出力が固定されてしまうような故障が発生している場合に、モータ保護を図ることができる。電流センサ出力が故障した場合には、インバータ1相短絡が発生しても短絡相を判定することができないため、3相ON制御へ移行することができない。このとき、1相短絡状態で走行を継続することによるモータの磁石の減磁を防止するため、U,V,W相のいずれかの電流値(なまし処理および絶対値処理を行なったもの)が所定のしきい値を超えており所定時間が経過した場合には短絡電流を検出を確定し、車両をReady−OFF状態に移行させ、モータを保護する。
[第3の保護制御]
第3の保護制御は、インバータ1相短絡故障発生後に、短絡が検出され3相ON制御に入った後に1相オープン故障が発生した場合にモータの保護を図るものである。オープン相の電流値には、直流成分が現れる。この直流成分を検出することによって3相ON制御中の1相オープン故障を検出し、走行継続した場合のモータの磁石の減磁やコイル過熱を防止する。
図7は、モータジェネレータMG1の第3の保護制御の処理構造を示したフローチャートである。第3の保護制御では、3相ON制御移行後に、1相のみオープン故障した場合にモータのロータの永久磁石の減磁を防止するものである。
図7を参照して、まず、ステップS61においてジェネレータゲート遮断が実行される。ゲート遮断は、図1のIGBT素子Q3〜Q8をすべてOFF状態に制御することである。ゲート遮断すると、インバータ14はモータのコイルに故障が生じていなければ、モータ電流MCRTはゼロとなるはずである。したがってゲート遮断をしておくことによって、短絡電流の発生を容易に監視することが可能になる。
続いてステップS62において、電流算出許可フラグFCがオン状態に設定されているか否かが判断される。電流算出許可フラグFCは、通常走行中であればオフ状態であり、何らかの異常が検出された場合にオン状態に設定されるフラグである。電流算出許可フラグFCがオン状態に設定されると、電流値を計測するなど発生した故障を詳細に分類することが可能となる。
ステップS62で電流算出許可フラグFCがON状態である場合には、ステップS63に処理が進む。一方、ステップS62で電流算出許可フラグFCがON状態で無い場合には、ステップS71に処理が進む。
ステップS63では、3相ON要求フラグFXがOFF状態に設定されているか否かが判断される。3相ON要求フラグFXは、図3のフローチャートでフェイル信号GFINVがフェイル検出状態であり、かつ1相短絡であると判定された場合にオン状態に設定されるフラグである。
ステップS63において、3相ON制御に移行中であった場合には、ステップS64に処理が進む。一方、ステップS63において、3相ON制御に移行中でない場合には、ステップS71に処理が進む。
ステップS64では、モータジェネレータMG1のV相電流またはW相電流のなまし電流値の絶対値がしきい値I3以上であるか否かが判断される。
ステップS64において、V相またはW相に|なまし電流値|≧I3が成立した場合には、ステップS65に処理が進む。
図8は、図7のしきい値I3について説明をするための図である。
図8を参照して、3相ON制御が正常に行なわれていれば、波形W0に示すように、各相の電流なまし値はゼロになる。ここで、3相ON制御に移行した後にスイッチング素子にオープン故障が生じた場合を考える。3相ON制御移行後のオープン故障は、2相ON制御で走行することに等しくなる。すなわち、オープン故障が生じた相での電流なまし値は波形W1、W2に示すように、2相ON制御の電流値となることが予想される。この電流値はモータジェネレータの回転速度が増加するにつれて増加する。そこで、回転速度A(rpm)の時の2相ON制御時の電流値I3をしきい値I3とする。
再び図7を参照して、ステップS65では、短絡電流検出カウンタをカウントアップし短絡電流未検出カウンタをクリアする。ここで、短絡電流検出カウンタは、ある条件が所定時間継続していると短絡が発生していると判断するための時間をカウントするためのカウンタである。また、短絡電流未検出カウンタは、別の条件が所定時間継続していると短絡が発生していないと判断するための時間をカウントするためのカウンタである。
一方、ステップS64において、|なまし電流値|≧I3が成立していない場合には、ステップS66に処理が進む。ステップS66では、短絡電流未検出カウンタをカウントアップし、短絡電流検出カウンタをクリアする。
ステップS64の処理の後、ステップS65またはステップS66の処理が実行された後には、ステップS67に処理が進む。
ステップS67では、短絡電流検出カウンタの示す時間がしきい値TNG3(ms)以上であるか否かが判断される。ステップS67において、短絡電流検出カウンタの示す時間がしきい値TNG3(ms)以上であった場合には、ステップS69に処理が進む。ステップS69では、短絡電流検知フラグF3がON状態に設定される。短絡電流検知フラグF3がON状態に設定されると、PM−ECU31は、システムメインリレーSMR1〜SMR3をすべてOFF状態に設定して電力供給を遮断することにより、モータジェネレータMG1のコイルを過熱から保護する。そして、ステップS73に処理が進み、制御はメインルーチンに移される。
一方、ステップS67で、短絡電流検出カウンタの示す時間がしきい値TNG3(ms)以上でなかった場合には、ステップS68に処理が進む。ステップS68では、短絡電流未検出カウンタの示す時間がしきい値TOK3(ms)以上であるか否かが判断される。
ステップS68において、短絡電流未検出カウンタの示す時間がしきい値TOK3(ms)以上であった場合には、ステップS70に処理が進む。ステップS70では、短絡電流検知フラグF3がOFF状態に設定される。たとえば、保護のために一度システムメインリレーがOFF状態に設定されても、運転者から再起動の指令が与えられる場合がある。この場合は、再起動時に短絡電流検知フラグF3がOFF状態に設定されることにより、PM−ECU31は、再びシステムメインリレーを導通状態に設定することが可能となる。そして車両は、バッテリBから電力をモータジェネレータに供給することが可能な走行可能状態(Ready−ON状態)となる。
ステップS62で電流算出許可フラグがON状態でなかったとき、ステップS63で3相ON制御に移行中で無かったときには、ステップS71に処理が進む。
ステップS71では、短絡電流検出カウンタおよび短絡電流未検出カウンタを共にクリアする。そしてステップS71の処理が終了した場合および、ステップS68において、短絡電流未検出カウンタが示す時間がしきい値TOK3(ms)以上で無かった場合には、ステップS72に処理が進む。
ステップS72では、短絡電流検知フラグF3は前回値と同じ値に保持される。そして、ステップS73に処理が進み制御はメインルーチンに移される。
以上説明したように、第3の保護制御では、3相ON制御中にU,V,W相のいずれかの相(たとえばW相)がオープン故障したときに他の2相(たとえばU相とV相)が短絡した状態となる。これは多相短絡と呼ばれる。多相短絡では、短絡相の電流成分に直流成分が含まれるため、電流値になまし処理および絶対値処理を行なうと、ゼロからオフセットした値が得られる。この処理後の値がしきい値を超え、所定時間が経過すると短絡電流の検出を確定し、車両をReady−OFF状態に移行させモータを保護する。
[第4の保護制御]
インバータ1相短絡故障発生後に、短絡異常を検出するしきい値より小さいがモータ定格電流を超える電流領域がそんざいする。ここで、定格電流とは、所定時間(たとえば1時間)流しても負荷率を制限する温度(たとえば160℃)にモータ温度が達しない電流値である。第4の保護制御では、1相短絡状態でモータ定格電流をコイル電流が所定時間継続して流れた場合には、短絡電流検出を確定させて車両をReady−OFF状態に移行させモータコイルの過熱を防止する。
図9は、モータジェネレータMG1の第4の保護制御の処理構造を示したフローチャートである。第4の保護制御では、短絡と判定される電流レベルではないが、モータ定格電流を超えた電流が流れる場合にモータコイルの過熱を防止するものである。
図9を参照して、ステップS100においてジェネレータゲート遮断が実行される。ゲート遮断は、図1のIGBT素子Q3〜Q8をすべてOFF状態に制御することである。ゲート遮断すると、インバータ14はモータのコイルに故障が生じていなければ、モータ電流MCRTはゼロとなるはずである。したがってゲート遮断をしておくことによって、短絡電流の発生を容易に監視することが可能になる。
続いてステップS101において、電流算出許可フラグFCがオン状態に設定されているか否かが判断される。電流算出許可フラグFCは、通常走行中であればオフ状態であり、何らかの異常が検出された場合にオン状態に設定されるフラグである。電流算出許可フラグFCがオン状態に設定されると、電流値を計測するなど発生した故障を詳細に分類することが可能となる。
ステップS101で電流算出許可フラグFCがON状態である場合には、ステップS102に処理が進む。一方、ステップS101で電流算出許可フラグFCがON状態で無い場合には、ステップS112に処理が進む。
ステップS102では、3相ON要求フラグFXがOFF状態に設定されているか否かが判断される。3相ON要求フラグFXは、図3のフローチャートでフェイル信号GFINVがフェイル検出状態であり、かつ1相短絡であると判定された場合にオン状態に設定されるフラグである。
ステップS102において、3相ON要求フラグFXがOFF状態であった場合には、ステップS104に処理が進む。一方、ステップS102において、3相ON要求フラグFXがOFF状態でない場合には、ステップS103に処理が進む。
ステップS103では、ジェネレータゲートが遮断中であるか否かが判断される。ステップS103において、ジェネレータゲートが遮断中であった場合には、ステップS104に処理が進み、遮断中で無かった場合にはステップS112に処理が進む。
ステップS104では、モータジェネレータMG1のV相電流Iv、W相電流Iwを検出する電流センサ25の出力が、固定値に固定されていないか判断される。たとえば、電流センサ25に故障が生じていたり、電流センサ25の配線が断線したりすると、電流センサの出力はゼロ(またはある固定値)に張り付いて動かなくなることが多い。MG−ECU32は、センサの出力を受信してこのような張り付き故障が生じていないことを確認する。
ステップS104において、V相電流、W相電流センサ出力が固定値に固定されていなければ、ステップS105に処理が進む。一方、ステップS104において、V相電流、W相電流センサ出力がともに固定値に固定されていれば、ステップS107に処理が進む。
ステップS105では、V相電流、W相電流いずれかのなまし電流値の絶対値がしきい値I4以上であるか否かが判断される。なお、しきい値I4は、図5のステップS15の判定に用いられるしきい値I1や図6のステップS35の判定に用いられるしきい値I2と比べると低めの値に設定されている。
ステップS105において、V相およびW相のいずれにも|なまし電流値|≧I4が成立した場合には、ステップS106に処理が進む。ステップS106では、短絡電流検出カウンタをカウントアップし短絡電流未検出カウンタをクリアする。ここで、短絡電流検出カウンタは、ある条件が所定時間継続していると短絡が発生していると判断するための時間をカウントするためのカウンタである。また、短絡電流未検出カウンタは、別の条件が所定時間継続していると短絡が発生していないと判断するための時間をカウントするためのカウンタである。一方、ステップS105において、|なまし電流値|≧I4が成立していない場合には、ステップS107に処理が進む。
ステップS107では、短絡電流未検出カウンタをカウントアップし、短絡電流検出カウンタをクリアする。
ステップS104、S105の処理の後、ステップS106またはステップS107の処理が実行された後には、ステップS108に処理が進む。
ステップS108では、短絡電流検出カウンタの示す時間がしきい値TNG4(ms)以上であるか否かが判断される。ステップS108において、短絡電流検出カウンタの示す時間がしきい値TNG4(ms)以上であった場合には、ステップS110に処理が進む。ステップS110では、短絡電流検知フラグF4がON状態に設定される。短絡電流検知フラグF4がON状態に設定されると、PM−ECU31は、システムメインリレーSMR1〜SMR3をすべてOFF状態に設定して電力供給を遮断することにより、モータジェネレータMG1のコイルを過熱から保護する。そして、ステップS114に処理が進み、制御はメインルーチンに移される。
一方、ステップS108で、短絡電流検出カウンタの示す時間がしきい値TNG1(ms)以上でなかった場合には、ステップS109に処理が進む。ステップS109では、短絡電流未検出カウンタの示す時間がしきい値TOK4(ms)以上であるか否かが判断される。
ステップS109において、短絡電流未検出カウンタの示す時間がしきい値TOK4(ms)以上であった場合には、ステップS111に処理が進む。ステップS111では、短絡電流検知フラグF4がOFF状態に設定される。たとえば、保護のために一度システムメインリレーがOFF状態に設定されても、運転者から再起動の指令が与えられる場合がある。この場合は、再起動時に短絡電流検知フラグF4がOFF状態に設定されることにより、PM−ECU31は、再びシステムメインリレーを導通状態に設定することが可能となる。そして車両は、バッテリBから電力をモータジェネレータに供給することが可能な走行可能状態(Ready−ON状態)となる。
ステップS101で電流算出許可フラグがON状態でなかったとき、ステップS103でジェネレータゲート遮断中で無かった場合にはステップS112に処理が進む。
ステップS112では、短絡電流検出カウンタおよび短絡電流未検出カウンタを共にクリアする。そしてステップS112の処理が終了した場合および、ステップS109において、短絡電流未検出カウンタが示す時間がしきい値TOK4(ms)以上で無かった場合には、ステップS113に処理が進む。
ステップS113では、短絡電流検知フラグF4は前回値と同じ値に保持される。そして、ステップS114に処理が進み制御はメインルーチンに移される。
以上説明したように、第4の保護制御では、1相短絡故障発生後に短絡判定しきい値まで電流が到達しない場合は3相ON制御には移行しないが、このときでもモータ定格電流をこえて電流が流れる状態が長時間継続する場合には、モータコイルの過熱を防止することができる。すなわち、なまし処理および絶対値処理を行なった後の電流値がしきい値I2を超えずにI4を超えた状況が所定時間継続した場合には、短絡電流検出を確定させ車両をReady−OFF状態に制御しモータを保護する。
[第5の保護制御]
図10は、モータジェネレータMG1の第5の保護制御における異常検出のための電流しきい値と継続時間について説明するための図である。第5の保護制御は、1相短絡故障が発生した後に、モータのロータの永久磁石の減磁およびモータコイルの過熱を防止するものである。
図10を参照して、第5の保護制御では、モータのロータの永久磁石の減磁防止という観点から定まる電流しきい値I5と、モータコイルの過熱防止という観点から定まる電流しきい値I6を用いる。ここで、I5>I6であり、T1<T2である。
すなわち、しきい値I5は、減磁保護のための電流仕様により要求される電流瞬時値に対するしきい値である。短時間である期間T1だけでもこのしきい値I5を超える電流が検出された場合に、保護が必要であることが検出される。
一方、しきい値I6は、連続定格電流仕様により要求されるしきい値である。したがって、連続運転時間に相当する所定期間T2の間このしきい値I6を超える電流が検出された場合に、保護が必要であることが検出される。このしきい値I6は、なまし電流値を見て判定することができる。
図11は、モータジェネレータMG1の第5の保護制御の処理構造を示したフローチャートである。
図11を参照して、ステップS120においてジェネレータゲート遮断が実行される。ゲート遮断は、図1のIGBT素子Q3〜Q8をすべてOFF状態に制御することである。ゲート遮断すると、インバータ14はモータのコイルに故障が生じていなければ、モータ電流MCRTはゼロとなるはずである。したがってゲート遮断をしておくことによって、短絡電流の発生を容易に監視することが可能になる。
続いてステップS121において、電流算出許可フラグFCがオン状態に設定されているか否かが判断される。電流算出許可フラグFCは、通常走行中であればオフ状態であり、何らかの異常が検出された場合にオン状態に設定されるフラグである。電流算出許可フラグFCがオン状態に設定されると、電流値を計測するなど発生した故障を詳細に分類することが可能となる。
ステップS121で電流算出許可フラグFCがON状態である場合には、ステップS122に処理が進む。一方、ステップS121で電流算出許可フラグFCがON状態で無い場合には、ステップS132に処理が進む。
ステップS122では、V相電流検出センサ、W相電流検出センサのうち、センサ出力が固定値になっている故障(張り付き故障)を起こしていないセンサを使用して、電流を観測し、短絡故障を検出する。
そして、ステップS123において後に図12で説明する仮異常フラグFTがONであるか否かが判断される。この仮異常フラグFTは、なまし電流値ではなく電流の瞬時値に基づいて異常を判断した結果を示すフラグである。ステップS123において、仮異常フラグFTがONであった場合にはステップS128に処理が進み、仮異常フラグFTがONで無かった場合にはステップS124に処理が進む。
ステップS124では、3相ON要求フラグFXがOFF状態に設定されているか否かが判断される。3相ON要求フラグFXは、図3のフローチャートでフェイル信号GFINVがフェイル検出状態であり、かつ1相短絡であると判定された場合にオン状態に設定されるフラグである。
ステップS124において、3相ON要求フラグFXがOFF状態であった場合には、ステップS125に処理が進む。一方、ステップS124において、3相ON要求フラグFXがOFF状態でない場合には、ステップS129に処理が進む。
ステップS125では、モータ電流またはジェネレータ電流のなまし電流値の絶対値がしきい値I6以上であるか否かが判断される。しきい値I6は、図10で説明したように、コイル過熱防止という観点から定められるしきい値である。
ステップS125において、|なまし電流値|≧I6が成立した場合にはステップS126に処理が進み、成立しなかった場合にはステップS129に処理が進む。ステップS126では、コイル過熱カウンタがカウントアップされる。ステップS129では、コイル過熱カウンタがクリアされる。
ステップS126においてコイル過熱カウンタがカウントアップされた場合には、ステップS127に処理がすすみ、カウント値がC1以上であるか否かが判断される。このカウント値のしきい値C1は、図11のフローチャートの制御の制御周期を乗じた時間だけしきい値I6以上の電流が流れたことをしめす。したがって、制御周期のC1倍が、図10の期間T2に相当する。
ステップS127において、カウント値≧C1であった場合には、ステップS128に処理が進み、カウント値≧C1でなかった場合には、ステップS130に処理が進む。
ステップS130では、仮異常フラグFTのOFF状態が100ms継続したか否かが判断される。ステップS130において仮異常フラグFTのOFF状態が100ms継続していた場合には、ステップS131に処理が進む。
ステップS123やステップS127からステップS128に処理が進んだ場合は、短絡電流検知フラグF5がON状態に設定される。短絡電流検知フラグF5がON状態に設定されると、PM−ECU31は、システムメインリレーSMR1〜SMR3をすべてOFF状態に設定して電力供給を遮断することにより、モータジェネレータMG1、MG2のコイルを過熱から保護する。そして、ステップS133に処理が進み、制御はメインルーチンに移される。
一方、ステップS130からステップS131に処理が進んだ場合には、短絡電流検知フラグF5がOFF状態に設定される。たとえば、保護のために一度システムメインリレーがOFF状態に設定されても、運転者から再起動の指令が与えられる場合がある。この場合は、再起動時に短絡電流検知フラグF5がOFF状態に設定されることにより、PM−ECU31は、再びシステムメインリレーを導通状態に設定することが可能となる。そして車両は、バッテリBから電力をモータジェネレータに供給することが可能な走行可能状態(Ready−ON状態)となる。
また、ステップS121やステップS130からステップS132に処理が進んだ場合には、短絡電流検知フラグF5は前回値と同じ値に保持される。そして、ステップS133に処理が進み制御はメインルーチンに移される。
図12は、図11のステップS123で参照される仮異常フラグFTのON/OFF制御を示したフローチャートである。
図12を参照して、ステップS150においてジェネレータゲート遮断が実行される。ゲート遮断は、図1のIGBT素子Q3〜Q8をすべてOFF状態に制御することである。ゲート遮断すると、インバータ14はモータのコイルに故障が生じていなければ、モータ電流MCRTはゼロとなるはずである。したがってゲート遮断をしておくことによって、短絡電流の発生を容易に監視することが可能になる。
続いてステップS151において、電流算出許可フラグFCがオン状態に設定されているか否かが判断される。電流算出許可フラグFCは、通常走行中であればオフ状態であり、何らかの異常が検出された場合にオン状態に設定されるフラグである。電流算出許可フラグFCがオン状態に設定されると、電流値を計測するなど発生した故障を詳細に分類することが可能となる。
ステップS151で電流算出許可フラグFCがON状態である場合には、ステップS152に処理が進む。一方、ステップS151で電流算出許可フラグFCがON状態で無い場合には、ステップS157に処理が進む。
ステップS152では、電流監視要求成立後期間T2(s)が経過したが、すなわち、ステップS151で判断した電流算出許可フラグFCがON状態となっている期間がT2以上であるか否かが判断される。
ステップS152において、期間T2が経過していた場合には、ステップS153に処理が進み、期間T2が経過していなかった場合には、ステップS157に処理が進む。
ステップS153では、電流センサで検出された生値である電流瞬時値の絶対値がしきい値I5以上であるか否かが判断される。しきい値I5は、既に図10で説明した減磁防止のためのしきい値である。ステップS153で|電流瞬時値|≧I5が成立している場合には、ステップS154に処理が進み、成立していない場合にはステップS157に処理が進む。
ステップS154では、仮異常カウンタをカウントアップし、続いてステップS155において、そのカウント値がしきい値C2以上となったか否かが判断される。ステップS155においてカウント値≧C2が成立した場合にはステップS156に処理が進み仮異常フラグFTがON状態に設定される。一方、ステップS155においてカウント値≧C2が成立しなかった場合にはステップS160に処理が進み仮異常フラグFTは前回値が保持される。
ステップS151,S152,S153のいずれかからステップS157に処理が進んだ場合には、電流算出許可フラグがOFFに戻っているか否かが判断される。ステップS157において電流算出許可フラグがOFF状態であった場合には、ステップS159に処理が進み、OFF状態でなかった場合には、ステップS158に処理が進む。
ステップS158においは、|電流瞬時値|<I5が成立するか否かが判断される。ここでステップS158において、|電流瞬時値|<I5が成立した場合には、ステップS159に処理が進み、成立しなかった場合にはステップS160に処理が進む。
ステップS159では、仮異常フラグFTはOFF状態に設定される。またステップS160では仮異常フラグFTは前回値が保持される。ステップS156,159,160のいずれかにおいて仮異常フラグFTの設定が行われた後には、ステップS161に処理が進み、図11においてステップS123の仮異常フラグFTの判断に設定結果が用いられる。
以上説明したように、第5の保護制御では、1相短絡故障発生後に、短絡相に大電流が流れることについては、電流瞬時値を検知してしきい値I5で判定し、所定時間(極短時間)継続して超えていたらモータの磁石の減磁防止のため、短絡電流検出異常を確定し、車両をReady−OFF状態に設定する。
また、電流値(フィルタ処理などのなまし処理あり)がモータ定格電流から決まるしきい値I6を超え、所定時間継続したらモータコイルの過熱防止のため短絡電流検出異常を確定し、車両をReady−OFF状態に設定する。
最後に、本実施の形態について図1等を用いて総括する。本実施の形態の、モータ制御装置は、インバータ14,22を用いてモータ(MG1,MG2)を制御するモータ制御装置であって、インバータ14は、モータの多相コイルに流れる電流をそれぞれ制御するための多相アーム(15,16,17)を含み、多相アームの各々は、電流のオンオフを制御するための上アームと下アームとを含む。モータ制御装置は、多相アームのうちの1相において上アームまたは下アームの短絡故障が発生したか否かを判断する1相短絡検出手段(S3)と、1相短絡検出手段の出力に基づき多相アームの上アームまたは下アームを同時にオン状態に制御する多相同時オン制御を行なう多相アームオン手段(S4)と、多相アームオン手段による多相同時オン制御が実行されていない場合において、1相短絡検出手段とは別途に短絡故障を検出しインバータに供給する電流を遮断する電流遮断手段(S11〜S24,S31〜S47,S100〜S114,S120〜S133)とを含む。
好ましくは、モータ制御装置は、多相アームオン手段による多相同時オン制御の実行中において、多相コイルの各相に流れる電流を観測し電流値の直流成分に応じて各相がオープン故障であるか否かを判定する、オープン故障判定手段(S61〜S72)をさらに含む。
好ましくは、インバータは、蓄電装置(B)にリレー(SMR1〜SMR3)を介して接続される。電流遮断手段は、多相コイルに流れる電流が所定電流値を超える時間が所定時間よりも長いときにリレーに遮断指令を送信する(S120〜S133)。
好ましくは、モータ(MG1)および他のモータ(MG2)は、車両に搭載される。多相アームオン手段は、他のモータ(MG2)を用いて車両を退避走行させる際にモータ(MG1)の引きずりトルクを低下させるために多相同時オン制御を行なう。
以上より、1相短絡故障が発生したときに退避走行を行なっても、モータが保護されるので他の故障が重ねて発生することを防ぐことができ、修理の際にも最小限の修理で済む。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
2 車輪、3 動力分割機構、4 エンジン、10,13,21 電圧センサ、11,24,25 電流センサ、12 昇圧コンバータ、14,22 インバータ、15 U相アーム、16 V相アーム、17 W相アーム、23 負荷回路、26 アクセルポジションセンサ、28 車速センサ、30 制御装置、40 接続部、42 電動エアコン、44 DC/DCコンバータ、46 補機バッテリ、51,52 NOR回路、54 ジェネレータ制御部、55 モータ制御部、57,58 AND回路、60 ジェネレータ過電流検出部、62 モータ過電流検出部、100 車両、B バッテリ、C1,C2 平滑用コンデンサ、D1〜D8 ダイオード、L1 リアクトル、MG1,MG2 モータジェネレータ、PL1,PL2 電源ライン、Q1〜Q8 素子、R1,R2 抵抗、SMR1〜SMR3 システムメインリレー。