JP5272949B2 - 車両の制振制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車等の車両の制振制御装置に係り、より詳細には、車両の車輪と接地路面上との間に作用するトルク(以下、「車輪トルク」と称する。)を制御して車体のピッチ・バウンス振動等の車体振動を抑制する制振制御装置に係る。
車両の走行中のピッチ・バウンス振動等の車体振動は、車両の加減速時に車体に作用する制駆動力(若しくは慣性力)又はその他の車体に作用する外力により発生するところ、それらの力は、車輪トルクに反映される。そこで、車両の制振制御の分野に於いて、車両の制駆動力制御を通して車輪トルクを調節し、車両の走行中に於ける車体の振動を抑制することが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。かかる車輪トルク又は制駆動力制御による車体振動の制振制御に於いては、車両の加減速要求若しくは旋回要求による車輪トルクの変動が予想される場合又は車体に外力(路面上の凹凸又は異物、勾配又は摩擦状態の変化などの車両の走行路面上の状態変化による路面反力の変動や風等の力などの力学的な外乱)が作用して車輪トルクに変動があった場合に、所謂車体のばね上振動又はばね上・ばね下振動の力学的モデルなどを仮定して構築された車体振動の運動モデルを用いて、車体に生ずるピッチ・バウンス振動を予測し、その予測された振動が抑制されるように車輪のトルク又は制駆動力が調節される。このような形式の制振制御の場合、サスペンションによる制振制御の如く発生した振動エネルギーを吸収することにより抑制するというよりは、振動を発生する力の源を調節して振動エネルギーの発生が抑えられることになるので、制振作用が比較的速やかであり、また、エネルギー効率が良いなどの利点を有する。また、上記の如き制振制御に於いては、制御対象が車輪トルク又は車輪の制駆動力に集約されるので、制御の調節が比較的に容易である。
上記の如き車輪トルク制御又は制駆動力制御による制振制御では、典型的には、まず、車両の加減速要求若しくは旋回要求に対応する車輪トルクの予測値又は車体に作用する外力に対応する車輪トルクの実際値又は推定値が車体振動モデルに基づいて構成される演算器(モデル演算器)へ入力され、そこに於いて、車両の重心周りのピッチ方向及び/又は重心のバウンス方向の変位及び/又はその時間変化率(以下、これらの値を「ピッチ・バウンス振動状態値」と称する。)の予測値が算出される。そして、それらの算出されたピッチ・バウンス振動状態値の各々が0に収束するように車輪トルク制御又は制駆動力制御を実行するアクチュエータ、即ち、エンジン又はモータ等の車両の駆動装置、制動装置又は操舵装置に対して車輪トルク又は制駆動力に対する補償成分(車輪トルクの修正量)が制御指令として与えられる。ピッチ・バウンス振動状態値の予測値は、ピッチ・バウンス方向に車体に作用する(車輪トルクを含む)力及びモーメントの釣り合いから導出されるピッチ・バウンス振動状態値の微分方程式を解くことによって算出され、モデル演算器に於いては、かかる微分方程式を逐次的に数値的に解くための積分器が組み込まれている(実施の形態の欄参照)。
特開2004−168148 特開2006−69472
上記の微分方程式を解いてピッチ・バウンス振動状態値の予測値を算出するモデル演算器に関して、かかるモデル演算器から過大な振幅が出力されると、それに対応して、過大な振幅の補償成分が車輪トルク又は制駆動力を制御するアクチュエータへ与えられてしまう場合があり得る。そこで、モデル演算器には、その出力値の振幅が予め定められた範囲内に制限されるように、即ち、出力値に“ガードがかけられる”ようにする構成が設けられているのが一般的である。しかしながら、モデル演算器の出力値にガードがかかる場合、その出力値の波形が頭打ちとなり、その出力値から算定される補償成分の精度が悪化することとなる。また、モデル演算器に含まれる積分器に於ける演算は、逐次的に算出した値を累積していく態様にて実行されるので、一旦、出力値にガードがかかったまま、積分演算を続けると、モデル演算器又は積分器の出力値により与えられるピッチ・バウンス状態値の予測値に於いて誤差が残存又は蓄積されることとなる。
また、上記の如きモデル演算器の出力値の波形の頭打ちの現象は、演算により算出される値が、モデル演算器の容量桁数を超える場合、つまり、算出値がオーバーフローする場合にも生ずる。制振制御装置に於いて用いられるモデル演算器及びその内部の積分器は、典型的には、ディジタル計算機により構成されているので、モデル演算器内で処理可能な数値は、その桁数が予め限られている。例えば、16ビットのディジタル計算機であれば、表現可能な数値の個数は、正負方向のそれぞれについて、215個(32768個)である。即ち、モデル演算器により算出される値の分解能を1/8192に設定したとすると、出力可能な数値範囲は、±4となり、算出値がこの範囲から逸脱すると、オーバーフローとなって、演算が不可能となる。従って、算出値を精度よく算出しようとして、分解能を細かく設定すると、算出値の絶対値が大きくなったときに、その波形の頭打ちが生じ、これにより、上記の出力値にガードをかける場合と同様に補償成分の精度の悪化、モデル演算器(特に積分器を含む場合)の出力値に於ける誤差の残存又は蓄積といった不具合が生ずることとなり得る。
かくして、本発明の解決しようとする主な課題は、車輪トルク制御又は制駆動力制御による制振制御装置に於ける上記のモデル演算器の出力値又は算出値の波形の頭打ちの現象に関わる不具合に対処するべく、制振制御装置の構成を改良することである。
本発明によれば、車両の車輪と路面との接地個所に於いて発生する車輪トルクを制御することにより車両のピッチ・バウンス振動等の車体振動を抑制する車両の制振制御装置であって、振動状態値又は車体の振動振幅を低減するよう車輪トルクを補償するための補償成分を算出するために用いられるモデル演算器の出力値に“波形の頭打ち”が生じたとき又は生ずるおそれがあるときに、かかる“波形の頭打ち”が車輪トルク又は制駆動力を制御するアクチュエータへ与えられる制振制御のための補償成分に反映されないよう構成された制振制御装置が提供される。
まず、本発明の制振制御装置は、車両の車体振動モデルに基づいて車両の車体の振動振幅を低減するよう車輪トルクの要求値に重畳されて車輪トルクを補償するための補償成分を算出する補償成分決定部を含む。即ち、本発明の制振制御装置は、基本的には、車両の走行中に運転者又は自動運転制御による制駆動要求(又は旋回要求)又は車体に作用する外乱によって発生し得る車体のピッチ・バウンス等の車体振動を低減又は相殺するよう車輪トルクを補償する形式の制振制御装置であり、典型的には、補償成分決定部にて算出された補償成分は、エンジン又はモータなどの車両の駆動装置へ与えられる駆動トルクの要求値(又は車両の制動装置若しくは操舵装置に対する要求値)に重畳され、これにより、駆動トルクの要求値に含まれている車体振動を惹起する成分が低減又は除去され、或いは、車体に作用する外乱に於ける車体振動を惹起する成分(起振力)の作用を相殺する方向に駆動トルクが制御され、車輪に於ける車輪トルクが補償される。補償成分決定部は、補償成分を算出するためのモデル演算器を含んでおり、かかるモデル演算器は、典型的には、積分器を用いて車両の車体振動モデルに基づいて車体の振動変位とその微分値を予測し、補償成分は、かかる予測される車体の振動変位及びその微分値に基づいて決定されるようになっていてよい。
しかしながら、既に述べた如く、モデル演算器の出力値の絶対値が大きくなって、かかる出力値にガードがかかる場合、或いは、かかる出力値がモデル演算器の演算可能範囲を逸脱する場合(オーバーフロー)には、出力値の波形の頭打ちが発生することとなり、これにより、モデル演算器の出力値(典型的には、車体の振動変位とその微分値の予測値)から算出される補償成分の波形も変形することとなる。そうすると、補償成分に応答して実際に発生する車輪トルクの周波数と位相が、制振制御により予定された車輪トルクの周波数と位相と相違し、或いは、車体の振動を抑制するどころか、増幅し得る周波数成分が車輪トルクに於いて発生する場合もおき得る。
そこで、本発明の制振制御装置では、制振制御により予定される周波数と位相以外の成分が車輪トルク制御に入力されることを回避するために、モデル演算器の出力値の大きさが所定値に到達したときには、その所定値に到達したモデル演算器の出力値に基づいて算出される補償成分が車輪トルクの要求値に重畳されないよう構成される。なお、ここで、「所定値」とは、絶対値が過大な補償成分が車輪トルクの要求値に重畳されることを回避するためのガードの上限値と下限値の絶対値、或いは、モデル演算器の出力値がモデル演算器の演算可能な数値範囲を超えないようにかかる演算可能な数値範囲の限界値の絶対値又はそれよりも若干小さく設定される値であってよい。
モデル演算器の出力値の大きさが所定値に到達したときの一つの具体的な実施の態様としては、車両の車体振動を抑制する車輪トルクの制御が中止されるようになっていてよい。これにより、単純な構成にて制御の不具合を回避することが可能となる。[例えば、モデル演算器の出力値がピッチ・バウンス振動状態値の予測値のいずれかであり、「所定値」が通常の振動状態で想定され得るピッチ・バウンス状態値の最大値に設定されているとすれば、出力値が所定値を超えるということは、モデル演算器が精度よくピッチ・バウンス振動状態値の予測を行っていないこととなる。従って、その場合、車両の車体振動を抑制する車輪トルクの制御の中止により、精度のよくない制振制御による不具合を回避できることとなる。]
また、特に、モデル演算器が、所定のビット数で表される数値の演算が可能なディジタル計算機である場合、モデル演算器の出力値の大きさが所定値に到達したときの別の具体的な実施の態様として、モデル演算器の出力値の大きさが所定ビット数により決定される所定値に到達したときに、モデル演算器の1ビット当たりの数値幅を増大する、即ち、モデル演算器の演算の分解能を粗くするように構成されていてよい。
当業者に於いて理解される如く、ディジタル計算機にて構成されるモデル演算器にて数値演算を実行する場合、1ビット当たりに割り当てられる数値幅、即ち、モデル演算器で分解可能な数値の幅の最小値(演算器の分解能)は、出力値に要求される精度と、出力されると想定される数値に応じて設定される。出力値をより精度よく算出しようとする場合には、モデル演算器に於ける演算値の分解能が細かくなるように、1ビット当たりの数値幅が小さくなるよう設定すればよい。しかしながら、通常、モデル演算器に使用されるディジタル計算機のビット数は固定されており、計算機で表現可能な数値の上下限値に制限があるため、出力される値の大きさが前記の上下限値の絶対値を超える場合には、モデル演算器はオーバーフローとなり、演算不能となる。従って、オーバーフローを回避するためには、1ビット当たりの数値幅がより大きく設定される必要があるが、そうなると、出力値の分解能が粗くなり、高精度の出力値を得ることができなくなる。実際、本発明の対象となる制振制御では、種々の要因で、通常想定される値域から逸脱する出力値がモデル演算器から出力される場合があり、そのような通常ではない絶対値の大きな値に備えてモデル演算器の分解能を設定すると、制御の精度が低下してしまうこととなる。また、モデル演算器には、積分器が含まれていることがあり、その場合、積分器の演算は、逐次的に値を累積していく態様にて実行されるので、一時的にでも、通常想定される値域から逸脱する値が発生してオーバーフローが起きると、それ以降に算出される値に於いてオーバーフローの際の誤差が残存することとなる。
そこで、本発明の上記の態様の装置は、モデル演算器の出力値の大きさが所定のビット数により決定される所定値に到達したとき、つまり、モデル演算器の出力値がオーバーフローするおそれがあるときに、モデル演算器の1ビット当たりの数値幅を増大し、これにより、オーバーフローを回避するよう構成される。この場合、「所定値」とは、モデル演算器の演算可能な数値の大きさの最大値又はそれよりも絶対値の小さい値となるように定められる。モデル演算器の1ビット当たりの数値幅が増大されることにより、モデル演算器の出力値は、モデル演算器の演算可能な値域内に収まることとなり、結局、所定値に到達したモデル演算器の出力値に基づいて算出される補償成分が車輪トルクの要求値に重畳されることがなくなる。また、オーバーフローが回避されることから、出力値に於いてオーバーフローの際の誤差が残存することがなくなるので、通常想定される値域から逸脱する出力値がモデル演算器から出力された後も、(精度が低下するが)、制振制御を継続されてよいこととなる。
また、上記の構成に於いて、モデル演算器の1ビット当たりの数値幅は、モデル演算器の出力値が大きくなるほど、増大されるようになっていてもよい。この場合、出力値の大きさに依存して分解能が変更されることになるので、広範囲の振幅域に於いて、精度よく且つオーバーフローすることなくモデル演算が実行できることとなる。
ところで、上記の一連の態様に於いて、モデル演算器が積分器を含む場合であって、モデル演算器の出力値の大きさが所定値に到達し、これに応答して、車両の車体振動を抑制する車輪トルクの制御が中止されることにより、或いは、モデル演算器の1ビット当たりの数値幅が増大されることにより、所定値に到達したモデル演算器の出力値に基づいて算出される補償成分が車輪トルクの要求値に重畳されない状態となった後に、車両の車輪速微分値が所定期間に亙って実質的に0となったときには、モデル演算器に含まれる積分器の出力値を0に設定し、モデル演算器の出力値に基づいて算出される補償成分の車輪トルクの要求値への重畳を再開するようになっていてよい。車輪速微分値が所定期間に亙って実質的に0となったとき(例えば、車両が停止したときなど)には、車体振動は実質的に消滅し、積分器の出力値は0に強制的にリセットしてもよい状態と考えられる。従って、積分器の出力値を0にすることにより、積分器内に残存し得る誤差を除去して、補償成分の車輪トルクの要求値への重畳を再開して、制振制御を実行するようになっていてよい。
なお、既に述べた如く、補償成分決定部の補償成分を算出するためのモデル演算器に於いて積分器を含む場合、積分器の演算は、逐次的に値を累積していく態様にて実行されるので、積分値に誤差が一旦入り込むと、その誤差は、残存し続け、補償成分の精度を悪化させる。従って、本発明の制振制御装置に於いては、別の態様として、モデル演算器又は積分器の出力値の大きさが所定値に到達したか否かによらず、車両が停止したとき又は車両の車輪速微分値が所定期間に亙って実質的に0となったときには、積分器の出力値が0に設定され、積分値に入り込んだ誤差が除去されるようになっていてよい。
総じて、本発明によれば、車輪トルク制御又は制駆動力制御による制振制御装置に於いて、補償成分の算出のために用いられるモデル演算器の出力値に於ける“頭打ち”された波形及びそれによる誤差を含む補償成分が車輪トルク又は制駆動力を制御するアクチュエータへ入力されることが回避され、これにより、モデル演算器の出力値の大きさが過大であることに起因して制振制御により予定された車輪トルクの周波数と位相が発生できないことによる不具合が回避されることとなる。また、特に、モデル演算器の分解能をモデル演算器の出力値に対応して可変にする態様によれば、制振制御により抑制可能な振動の振幅範囲が従前に比して拡大されることとなり有利である。
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
図1は、本発明による制振制御装置の好ましい実施形態が実現される自動車の模式図を示している。 図2は、図1の電子制御装置の実施形態の内部構成を制御ブロック図の形式で表したものである。駆動トルク要求値決定部51、制御指令決定部53には、図示されているもの以外の、例えば、エンジン温度等の種々のパラメータが入力されてよい。 図3Aは、本発明の好ましい実施形態の制振制御の作動に於いて抑制される車体振動の状態変数を説明する図である。図3Bは、本発明の好ましい実施形態の制振制御に於いて仮定される車体振動の力学的運動モデルの一つである「ばね上振動モデル」について説明する図であり、図3Cは、ばね上・ばね下振動モデルについて説明する図である。図3Dは、本発明の好ましい実施形態に於ける補償成分決定部の構成を制御ブロック図の形式で表した図である。 図4Aは、図3Dの補償成分決定部内のモデル演算器の構成をより詳細な制御ブロック図の形式で表した図であり、図4Bは、モデル演算器内の積分器の構成を制御ブロック図の形式で表した図である。 図5は、図2の補償成分決定部に於けるモデル演算器(積分器)の出力値に応じて制御態様を変更する処理をフローチャートの形式で表した図である。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
装置の構成
図1は、本発明の制振制御装置の好ましい実施形態が搭載される自動車等の車両を模式的に示している。同図に於いて、左右前輪12FL、12FRと、左右後輪12RL、12RRを有する車両10には、通常の態様にて、運転者によるアクセルペダル14の踏込みに応じて後輪に駆動力又は駆動トルクを発生する駆動装置20が搭載される。駆動装置20は、図示の例では、図1に例示されている如く、駆動トルク或いは回転駆動力が、エンジン22から、トルクコンバータ24、自動変速機26、差動歯車装置28等を介して、後輪12RL、12RRへ伝達されるよう構成される。しかしながら、駆動装置は、エンジン22に代えて電動機が用いられる電気式、或いは、エンジンと電動機との双方を有するハイブリッド式の駆動装置が用いられてもよい。なお、車両は、四輪駆動車又は前輪駆動車であってもよい。また、簡単のため図示していないが、車両10には、通常の車両と同様に、ブレーキペダル16の踏込みに応じて各輪に制動力を発生する制動系装置と前輪又は前後輪の舵角を制御するためのステアリング装置が設けられる。
駆動装置20の作動制御及びその他の車両の各部の作動制御は、電子制御装置50により制御される。電子制御装置50は、通常の形式の、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、ROM、RAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路を含んでいてよい。電子制御装置50には、各輪に搭載された車輪速センサ30i(i=FL、FR、RL、RR)からの車輪速を表す信号Vwi(i=FL、FR、RL、RR)と、車両の各部に設けられたセンサからのエンジンの回転速ne、変速機の回転速no、アクセルペダル踏込量θa、ブレーキペダル踏込量θb等の信号が入力される(図1参照)。なお、上記以外に、本実施形態の車両に於いて実行されるべき各種制御に必要な種々のパラメータを得るための各種検出信号が入力されてよいことは理解されるべきである。
本発明の制振制御装置は、上記の電子制御装置50に於いて実現される。図2は、かかる電子制御装置50の実施形態の内部の構成を制御ブロックの形式で表したものである。同図を参照して、電子制御装置50は、エンジンの作動を制御する駆動制御装置50a、制動装置(図示せず)の作動を制御する制動制御装置50b、更に、公知の車両の電子制御装置に装備される各種の制御装置(図示せず)を含んでいてよい。なお、制振制御装置を含む駆動制御装置等の各種の制御装置の構成及び作動は、車両の運転中、電子制御装置50内のCPU等の処理作動に於いて実現されることは理解されるべきである。
制動制御装置50bには、図示の如く、各輪の車輪速センサ30i(i=FR、FL、RR、RL)からの、車輪が所定量回転する毎に逐次的に生成されるパルス形式の電気信号が入力され、かかる逐次的に入力されるパルス信号の到来する時間間隔を計測することにより車輪の回転速ωが算出され、これに車輪半径rが乗ぜられることにより、車輪速値r・ωが算出される。そして、その車輪速値r・ωは、後に詳細に説明する制振制御を実行するために、駆動制御装置50a(車輪トルク推定器52c)へ送信されて、車輪トルク推定値の算出に用いられる。なお、車輪回転速から車輪速への演算は、駆動制御装置50aにて行われてもよい。その場合、車輪回転速が制動制御装置50bから駆動制御装置50aへ与えられる。
駆動制御装置50aは、基本的な構成として、アクセルペダルセンサからのアクセルペダル踏込量又はアクセル開度θaに基づいて運転者の要求するエンジンの駆動トルク要求値を決定する駆動トルク要求値決定部51と、車輪トルク(駆動トルク)制御による車体のピッチ/バウンス振動制振制御を実行するための補償成分を算出して駆動トルク要求値を補償(修正)する補償成分決定部52と、かかる補償成分決定部により算出された補償成分により補償された駆動トルク要求値に基づいてその要求値を達成するよう、公知の任意の形式にてエンジン各部の制御指令を生成し、対応する制御器(図示せず)へ送信する制御指令決定部53を含んでいる。
かかる基本構成に於いて、駆動トルク要求値決定部51は、公知の任意の手法によりアクセル開度θaに対応して駆動トルク要求値(補償前)を決定して出力するようになっていてよい。なお、「アクセル開度」とは、車両の運転者によるアクセルペダルの踏込量若しくは操作量、又は、自動走行制御装置(図示せず)が装備されている車両の場合には自動走行制御装置による駆動トルク若しくは駆動出力の要求量を表す量であり、車両に対する加減速力又は制駆動トルクの要求量を表す。駆動トルク要求値の単位は、基本的には、エンジンに於ける駆動トルクであってよいが、ガソリンエンジンであれば、吸入空気量又はスロットル開度、ディーゼルエンジンであれば、燃料噴射量、モータであれば、電流値であってよい(以下、特に断らない限り、駆動トルク要求値の単位は、エンジンに於ける駆動トルクであるものとする。)。
補償成分決定部52は、図示の如く、駆動トルク要求値決定部51に於いて決定された駆動トルク要求値(補償前)を車輪トルクに変換した値(車輪トルク要求値)と、車輪トルク推定器52cにて車輪速r・ωから推定される現に車輪に作用している車輪トルクの推定値とを受信し、後に詳細に説明される態様により、車体振動モデル(車輪トルク要求値及び推定値を入力(トルク入力)として車体のピッチ・バウンス方向の振動変位を出力するモデル演算器)を用いて、車輪トルク要求値及び推定値に於ける車体にピッチ・バウンス振動を惹起し得る振動成分を低減又は相殺する補償成分(K・X)を算出する。なお、車輪トルク推定器52cからの車輪トルクTwの入力に際しては、車体振動モデルに於ける運転者要求車輪トルクTw0と車輪トルク推定値Twとの寄与のバランスを調整するために、車輪トルクTwは、フィードバック制御ゲイン(入力ゲイン)λinが乗ぜられてから、補償成分決定部に入力されるようになっていてよい(乗算器52d)。また更に、補償成分決定部は、運転者によるブレーキ操作又はステアリング操作により車輪に生ずる車輪トルクの変化に起因するピッチ・バウンス振動を制振するための補償成分を算出するようになっていてよい。その場合には、図中点線にて示されている如く、車輪トルク推定器52xにてブレーキ操作量又はステアリング操作量に基づいて推定される車輪トルク推定値が補償成分決定部に入力され、車輪トルク要求値等と同様に処理されて、補償成分が算出される。ブレーキ操作量又はステアリング操作量に基づく車輪トルクの変化量の推定は、任意の方法により為されてよい。
かくして、補償成分決定部52で算出された補償成分(K・X)は、駆動トルク要求値の単位に変換されて(補償成分U)、加算器a1へ向けて送信され、加算器a1に於いて駆動トルク要求値(補償前)に補償成分が重畳されることにより、駆動トルク要求値が補償される(図示の例では、駆動トルク要求値から補償成分Uが差し引かれるよう構成されている。)。なお、補償成分決定部52から補償成分(K・X)を出力する際に、補償成分の寄与を任意の目的で調節するために、制御ゲインλoutを補償成分K・Xに乗ずる乗算器52fが設けられていてよい(即ち、補償成分は、λout・K・Xの状態で加算器a1へ送られる。)。そして、制御指令決定部53に於いて、補償後の駆動トルク要求値に基づいて、そのときのエンジン回転数及び/又はエンジン温度等を参照して、予め実験的に又は理論的に定められたマップを用いて、公知の態様にて、駆動トルクを達成するように、エンジンの各部の駆動器(図示せず)への制御指令の決定及び各駆動器への制御指令の送信が為される。
上記の補償成分決定部52の構成に於いては、後により詳細に説明される如く、補償成分は、車体振動モデルに於いて算出される車体の振動状態値(振動変位とその時間微分値)の予測値から決定される。かかる構成に於いて、車体の振動状態値の予測値の振幅が大きくなり、これにより、補償成分の振幅が大きくなると、これに対応してエンジンの駆動出力が大きく振動することとなる。そこで、かかる駆動出力の過大な振動を回避するべく、通常、補償成分決定部52又は車体振動モデルから所定の制限値を超えた値が出力されないようにするガードが設けられる。即ち、車体の振動状態値又は補償成分の値が所定の制限値に達すると、出力値の変化は、その所定の制限値にて頭打ちになり、過大な駆動出力を与える制御指令がエンジンの各部の駆動器へ送信されることが回避される。しかしながら、かかる車体の振動状態値又は補償成分の頭打ちが生ずると、補償成分の波形が変形してしまい、これにより、良好な制振制御が達成されず、或いは、波形の変化により、補償成分の周波数特性又は位相特性が変化し、駆動出力に於いて予期しない周波数・位相成分が発生してしまう可能性がある。
また、既に触れた如く、補償成分決定部52内の車体振動モデルを構成するモデル演算器は、所定のビット数のディジタル計算機により構成され、処理可能な数値の桁数(容量桁数)が予め限られているところ、車体振動モデルの算出値(振動状態値)の絶対値が大きくなると、計算機がオーバーフロー状態となって、やはり算出値が頭打ちとなる。その場合も、上記の場合と同様に補償成分の波形が変形してしまい、これにより、良好な制振制御が達成されないこととなる。
そこで、本発明の制御装置に於いては、上記の基本構成に加えて、所定の制限値にて頭打ちになった車体の振動状態値又は補償成分の値が駆動トルク要求値に反映されないように又は重畳されないようにする構成が設けられ、これにより、駆動出力に於いて、制振制御による過大な振動を回避するとともに予期しない周波数成分・位相成分が発生しないようにすることが試みられる。その具体的な態様のいくつかが、後により詳細に説明される。
装置の作動の概要
以下、図2に例示の装置で実行される制振制御の構成及び作動について説明する。なお、制振制御装置は、図示の例では、駆動制御装置に於いて、補償成分決定部52を主要な構成要素として実現されることは理解されるべきである。補償成分決定部52にて算出される補償成分によるピッチ・バウンス制振制御は、以下の如き態様にて行われてよい。
(制振制御の原理)
車両に於いて、運転者の駆動要求に基づいて駆動装置が作動して車輪トルクの変動が生ずると、図3(A)に例示されている如き車体10に於いて、車体の重心Cgの鉛直方向(z方向)のバウンス振動と、車体の重心周りのピッチ方向(θ方向)のピッチ振動が発生し得る。また、車両の走行中に路面状態の変化や風の影響により車輪上に力又はトルク(外乱)が作用すると、その外乱が車両に伝達され、やはり車体にバウンス方向及びピッチ方向の振動が発生し得る。そこで、ここに例示するピッチ・バウンス振動制振制御に於いては、車体のピッチ・バウンス振動の運動モデル(車体振動モデル)を構築し、そのモデルに於いて駆動トルク要求値を車輪トルクに換算した値(車輪トルク要求値)及び/又は現在の車輪トルク推定値を入力した際の車体の変位z、θとその変化率dz/dt、dθ/dt、即ち、車体振動の状態変数(振動状態値)を算出し、モデルから得られた状態変数が0に収束するように、即ち、ピッチ/バウンス振動が抑制されるよう駆動装置(エンジン)の駆動トルクが調節される(駆動トルク要求値が補償される。)。
かくして、まず、制振制御に於ける車体のバウンス方向及びピッチ方向の力学的運動モデルとして、例えば、図3(B)に示されている如く、車体を質量M及び慣性モーメントIの剛体Sとみなし、かかる剛体Sが、弾性率kfと減衰率cfの前輪サスペンションと弾性率krと減衰率crの後輪サスペンションにより支持されているとする(車体のばね上振動モデル)。この場合、車体の重心のバウンス方向の運動方程式とピッチ方向の運動方程式は、下記の数1の如く表される。
Figure 0005272949
ここに於いて、Lf、Lrは、それぞれ、重心から前輪軸及び後輪軸までの水平方向距離であり、rは、車輪半径であり、hは、重心の路面からの高さ(即ち、重心の車高)である。なお、式(1a)に於いて、第1、2項は、前輪軸から、第3、4項は、後輪軸からの力の成分であり、式(1b)に於いて、第1項は、前輪軸から、第2項は、後輪軸からの力のモーメント成分である。式(1b)に於ける第3項は、駆動輪に於いて発生する車輪トルクTが車体の重心周りに与える力のモーメント成分である。
上記の式(1a)及び(1b)は、車体の変位z、θとその変化率dz/dt、dθ/dtを状態変数ベクトルX(t)として、下記の式(2a)の如く、(線形システムの)状態方程式の形式に書き換えることができる。
dX(t)/dt=A・X(t)+B・u(t) …(2a)
ここで、X(t)、A、Bは、それぞれ、
Figure 0005272949
であり、行列Aの各要素a1-a4及びb1-b4は、それぞれ、式(1a)、(1b)のz、θ、dz/dt、dθ/dtの係数をまとめることにより与えられ、
a1=-(kf+kr)/M、a2=-(cf+cr)/M、
a3=-(kf・Lf-kr・Lr)/M、a4=-(cf・Lf-cr・Lr)/M、
b1=-(Lf・kf-Lr・kr)/I、b2=-(Lf・cf-Lr・cr)/I、 …(2b)
b3=-(Lf2・kf+Lr2・kr)/I、b4=-(Lf2・cf+Lr2・cr)/I
である。また、u(t)は、
u(t)=T
であり、状態方程式(2a)にて表されるシステムの入力である。従って、式(1b)より、行列Bの要素p1は、
p1=h/(I・r)
である。
状態方程式(2a)に於いて、
u(t)=−K・X(t) …(2c)
とおくと、状態方程式(2a)は、
dX(t)/dt=(A−BK)・X(t) …(2d)
となる。従って、X(t)の初期値X0(t)をX0(t)=(0,0,0,0)と設定して(トルク入力がされる前には振動はないものとする。)、状態変数ベクトルX(t)の微分方程式(2d)を解いたときに、X(t)、即ち、バウンス方向及びピッチ方向の変位及びその時間変化率、の大きさを0に収束させるゲインKが決定されれば、ピッチ・バウンス振動を抑制するトルク値u(t)が決定されることとなる。かかるトルク値u(t)をエンジンの駆動トルク要求値に変換した値が制振制御によりエンジンに与えられる補償成分である。
ゲインKは、所謂、最適レギュレータの理論を用いて決定することができる。かかる理論によれば、2次形式の評価関数
J=1/2・∫(XQX+uRu)dt …(3a)
(積分範囲は、0から∞)
の値が最小になるとき、状態方程式(2a)に於いてX(t)が安定的に収束し、評価関数Jを最小にする行列Kは、
K=R−1・B・P …(3b)
により与えられることが知られている。ここで、Pは、リカッティ方程式
-dP/dt=AP+PA+Q−PBR−1
の解である。リカッティ方程式は、線形システムの分野に於いて知られている任意の方法により解くことができ、これにより、ゲインKが決定される。
上記の評価関数J及びリカッティ方程式中のQ、Rは、それぞれ、任意に設定される半正定対称行列、正定対称行列であり、システムの設計者により決定される評価関数Jの重み行列である。例えば、ここで考えている運動モデルの場合、Q、Rは、
Figure 0005272949
などと置いて、式(3a)に於いて、状態変数ベクトルの成分のうち、特定のもの、例えば、dz/dt、dθ/dt、のノルム(大きさ)をその他の成分、例えば、z、θ、のノルムより大きく設定すると、ノルムを大きく設定された成分が相対的に、より安定的に収束されることとなる。また、Qの成分の値q1〜q4を大きくすると、過渡特性重視、即ち、状態変数ベクトルの値が速やかに安定値に収束し、Rの値ρを大きくすると、消費エネルギーが低減される。
なお、車体のバウンス方向及びピッチ方向の力学的運動モデルとして、例えば、図3(C)に示されている如く、図3(B)の構成に加えて、前輪及び後輪のタイヤのばね弾性を考慮したモデル(車体のばね上・下振動モデル)が採用されてもよい。前輪及び後輪のタイヤが、それぞれ、弾性率ktf、ktrを有しているとすると、図3(C)から理解される如く、車体の重心のバウンス方向の運動方程式とピッチ方向の運動方程式は、下記の数4の如く表される。
Figure 0005272949
ここに於いて、xf、xrは、前輪、後輪のばね下変位量であり、mf、mrは、前輪、後輪のばね下の質量である。式(4a)−(4b)は、z、θ、xf、xrとその時間微分値を状態変数ベクトルとして、図3(B)の場合と同様に、式(2a)の如き状態方程式を構成し(ただし、行列Aは、8行8列、行列Bは、8行1列となる。)、最適レギュレータの理論に従って、状態変数ベクトルの大きさを0に収束させるゲイン行列Kを決定することができる。
(車輪トルクの推定)
図3(B)、(C)に於ける車体振動モデルに対してトルク入力Tとして、入力されるトルクのうち、外乱の作用として入力される現に発生している車輪トルクの値Twは、理想的には、各輪にトルクセンサを設け、実際に検出されればよいが、通常の車両の各輪にトルクセンサを設けることは困難である。そこで、図示の例では、車輪トルクの外乱入力として、走行中の車両に於けるその他の検出可能な値から車輪トルク推定器52c(図2)にて推定された車輪トルク推定値が用いられる。車輪トルク推定値Twは、典型的には、駆動輪の車輪速センサから得られる車輪回転速ω又は車輪速値r・ωの時間微分を用いて、
Tw=M・r・dω/dt …(5)
と推定することができる。ここに於いて、Mは、車両の質量であり、rは、車輪半径である。[駆動輪が路面の接地個所に於いて発生している駆動力の総和が、車両の全体の駆動力M・G(Gは、加速度)に等しいとすると、車輪トルクTwは、
Tw=M・G・r …(5a)
にて与えられる。車両の加速度Gは、車輪速度r・ωの微分値より、
G=r・dω/dt …(5b)
で与えられるので、車輪トルクは、式(5)の如く推定される。]なお、車輪トルク推定値は、車輪速ではなく、エンジン回転速、変速機回転速、タービン回転速など、駆動輪に作動的に連結した駆動系の回転軸の回転速から推定されるようになっていてもよい。駆動装置のエンジン又はモータの出力軸の回転速neを用いる場合には、駆動輪の車輪回転速は、
ωe=ne×トランスミッション(変速機)ギア比×デフ(差動装置)ギア比 …(6)
により与えられる。また、変速機の出力軸の回転速noを用いる場合には、
ωo=no×デフギア比 …(7)
により与えられる。そして、式(6)又は(7)の駆動輪の車輪回転速ωの推定値は、式(5)に代入され、車輪トルク推定値が算出される。
(補償成分決定部の概略構成)
図3(D)は、上記のピッチ・バウンス制振制御のための補償成分Uを算出する図2の補償成分決定部52内部の制御処理の基本構成を概略的に示したものである。図3(D)の制御構成に於いては、まず、車体振動モデルの車輪トルク入力端へ、駆動トルク要求決定部51からの駆動トルク要求値を車輪トルクに換算して得られる車輪トルク要求値Twoと現に車輪に於いて発生している車輪トルク(の推定値)Twが、それぞれ、入力される(更に、図中点線の如く、ブレーキ操作量又はステアリング操作量に対応する車輪トルク推定値が入力されるようになっていてよい。)。次いで、モデル演算器に於いて、そのトルク入力値T(=Two+Tw)を用いて式(2a)の微分方程式を解くことにより、状態変数ベクトルX(t)が算出される。そして、その状態変数ベクトルX(t)に、上記の如く状態変数ベクトルX(t)を0又は最小値に収束させるべく決定されたゲインKを乗じた値K・X(=−u(t))が算出され、そのK・Xがエンジンの駆動トルク要求値単位の補償成分Uに換算される。かくして算出された補償成分は、加算器a1へ送信され、加算器a1に於いて、駆動トルク要求値に重畳され、これにより、K・X(t)の値に相当する成分が駆動トルク要求値から差し引かれることとなる。車体のピッチ・バウンス振動システムは、図3(B)又は(C)からも理解される如く、共振システムであり、任意の入力に対して状態変数ベクトルX(t)の値は、実質的には、システムの固有振動数を概ね中心とした或るスペクトル特性を有する帯域(通常、1〜5Hz程度)の周波数成分のみとなっている。従って、上記の如く、駆動トルク要求値からK・X(t)を差し引く構成により、駆動トルク要求値或いは現に発生している車輪トルクのうち、システムの固有振動数の成分、即ち、車体に於いてピッチ・バウンス振動を引き起こす成分が低減又は除去され、車体に於けるピッチ・バウンス振動が抑制されることとなる。
モデル演算器の改良
上記に説明されている如きモデル演算器は、既に触れた如く、所定のビット数のディジタル計算機により構成され、所定の容量桁数を有する。即ち、モデル演算器の分解能、即ち、1ビット当たりの数値幅を細かくするほど、算出値の精度は向上するが、その分、処理可能な数値範囲が狭くなり、オーバーフローを起し易くなる。そして、一旦、オーバーフローを起すと、算出値の振幅が頭打ちになることで、振動波形が変形することとなり、エンジンへ制御指令として送られる補償成分内に制振制御に於いて予定してしない周波数成分・位相成分が発生することとなると共に、モデル演算器には、積分器が含まれているので(典型的には、積分器の出力値がそのまま状態変数ベクトルの各要素値となっている。)、それ以後の演算結果が不正確になる。従って、モデル演算器の分解能は、モデル演算に於いて算出される数値に要求される精度と、モデル演算器に於いて出現すると想定される数値の範囲とを考慮して決定される必要がある。
しかしながら、モデル演算器に於いて出現する数値の範囲に関して、モデル演算器にて算出される状態変数ベクトルの各要素の値(振動状態値)は、車輪トルク推定値からの推定演算の結果であるので、非現実的に過大な振幅が算出されてしまうことが起こり得る(例えば、車輪速が急変するとき、雪道等の路面摩擦係数が低い路面を走行中にタイヤがスリップし、車輪がロック又はホイールスピンしたときなどに起き得る。)。かかる過大な振幅の状態変数ベクトルが発生し得ることを想定して、そのような値でもオーバーフローを回避するべく、モデル演算器の分解能を設定してしまうと、現実的な振幅の振動を抑制するべき補償成分の精度が悪化すると共に、状態変数ベクトルの各要素の振幅が過大であることにより振幅が過大になった補償成分が、エンジンの制御指令へ送信され、エンジンの駆動出力が過剰に振動するおそれがある。かかる不具合に対処すべく、即ち、正常な振動に対する補償成分の精度を維持しながら、エンジンの駆動出力の過剰な振動を回避するための対策の一つとして、モデル演算器内で算出される状態変数ベクトルの各要素或いは補償成分に対してガードをかけて、状態変数ベクトルの各要素の値と補償成分の値とが、所定の値域、例えば、現実的な振動範囲、を逸脱しないようにすることが考えられるが、単に、モデル演算器内の算出値に対してガードを設ける方法の場合、値の変動が所定の値域の境界値で制限され、結局、算出値が頭打ち状態になり、制振制御に於いて予定してしない周波数成分・位相成分が発生することとなる。また、ガードがかけられた算出値を積分器の演算に用いると、演算結果が不正確になる。
そこで、本発明の装置では、モデル演算器の算出値の精度をできるだけ維持しながら、過大な振幅の補償成分がエンジンの制御指令として与えられることを回避し、且つ、ガード又はオーバーフローにより頭打ちになったモデル演算器の算出値が補償成分に反映されないようにすべく、モデル演算器の構成が改良される。以下、好ましいモデル演算器の改良の態様について説明する。
(モデル演算器の詳細な構成)
図4(A)は、車体振動モデルとして、図3(B)にて例示された式(1a)−(1b)又は(2a)−(2b)により表されるばね上振動モデルを採用した場合のモデル演算器であって、本発明による改良を更に含む構成をより詳細に制御ブロック図の形式にて表したものである。同図を参照して、図示のモデル演算器に於いては、概して述べれば、状態変数ベクトルXの時間微分dX/dtの各要素をそれぞれ積分して、対応する状態変数ベクトルの各要素の値を算出する積分器100a、100b、100c、100dと、状態変数ベクトルXと行列Aとの乗算A・Xを実行する行列演算器100eと、車輪トルクTと行列Bとの乗算B・Tを実行する乗算器100gとが設けられる。かかる構成に於いて、基本的な処理としては、まず、行列演算器100eと乗算器100gは、図から理解される如く、各積分器から出力される状態変数ベクトルの要素値[z、dz/dt、θ、dθ/dt]を受信し、或いは、車輪トルクTを受容して、最終的に、式(1a)、(1b)の左辺に於いて表されているdz/dt、dθ/dtを算出する(ここに於いて、行列演算器100eからの値は、次の演算サイクルに供されることになるので、遅延器100a’、b’により与えられる前回値である。)。これらの算出値は、それぞれ、積分器100a、100bの端子i2へ与えられて積分され、dz/dt、dθ/dtが算出され、さらに、これらの算出値が、それぞれ、積分器100c、100dの端子i2へ与えられて積分され、z、θが算出される。そして、算出された状態変数ベクトルの要素値[z、dz/dt、θ、dθ/dt]は、行列演算器100eに送られると共に、状態変数ベクトルXとゲイン行列Kとの乗算である補償成分K・Xを算出する行列演算器100fにも送信される。各積分器100a、100b、100c、100dは、それぞれ、図4(B)に示されている如き構成を有しており、その各々に於いて、基本的には、入力i2から受信される状態変数ベクトルXの各要素の時間微分値[dz/dt、dz/dt、dθ/dt、dθ/dt]に対して乗算器102aに於いて微小時間dtを乗じた値と、遅延器102dから与えられるそれまでに累積した各時間微分値と微小時間dtとの積の積分値とが加算器102bに於いて加算されることにより、それぞれ、状態変数ベクトルXの各要素[dz/dt、z、dθ/dt、θ]が算出され、スイッチsw1を通過して出力される。モデル演算器は、通常は、上記の処理を繰り返し実行し、これにより、逐次的に、式(2a)の微分方程式を解きつつ、状態変数ベクトルの要素値を出力し、補償成分K・Xが出力されることとなる。
しかしながら、本発明の装置では、更に、上記の各積分器の出力端o1に於いて、ガード102cが設けられ、かかるガードに於いて、積分値の絶対値が所定値に到達したときには、各積分器の出力端o2からガードON信号が発せられる。そして、図4(A)のOR演算器100hに於いて、積分器のうち少なくとも一つからガードON信号が発せられたときには、後に説明するいくつかの手法のうちのいずれかに従って、制振制御の態様又はモデル演算器の演算処理の態様に変更が為される。以下、ガードON信号が発せられた時の態様の変更の例について説明する。
ガードON信号が発せられた時の態様
例1
一つの態様に於いて、モデル演算器(の積分器)から出力される状態変数ベクトルの要素のうちの少なくとも一つに於いて、その絶対値が所定値に到達しガードON信号が発せられたときには、制振制御が中止されるようになっていてよい。具体的には、OR演算器100hの出力がONになったときには、図2の制御ゲイン52eのゲインλoutが0に設定され、これにより、補償成分が駆動トルク要求値に重畳されることが阻止されるようになっていてよい。ガードに設定される所定値は、実際の車両に於いて起こり得る変位及び変位の時間変化率の大きさの最大値に設定されてよく、モデル演算器の分解能は、最大値がモデル演算器を構成するディジタル計算機の容量桁数の限界にて表現されるよう設定されてよい。即ち、
所定値←[1ビット当たりの数値幅]×[容量桁数に対応するビット数−1]
と設定されてよい(−1は、正負符号に割り当てられるビット数を引くことに対応している。)。制振制御が中止された場合、モデル演算器内の演算は、実行されてもされなくてもよい。かかる構成によれば、所定値で頭打ちになった状態変数ベクトルの要素値(振動状態値)から算出された補償成分が駆動トルク要求値に重畳されないこととなり、制振制御で予期しない周波数成分・位相成分の制御指令がエンジンへ与えられることが回避されることとなる。なお、制振制御の復帰は、下記の例5又は6に従って為されてよい。
例2
もう一つの態様に於いて、モデル演算器(の積分器)から出力される状態変数ベクトルの要素のうちの少なくとも一つに於いて、その絶対値が所定値に到達し、ガードON信号が発せられたときには、モデル演算器の分解能を粗くする、即ち、1ビット当たりの数値幅を増大し、モデル演算器に於いて処理可能な数値範囲を拡大するようになっていてよい。具体的には、OR演算器100hの出力がONになったときには、まず、全ての積分器のガード102の出力側に於いて点線にて示されている乗算器102e(図4(B))に於いて、算出値に1/ξを乗じて、絶対値が低減される(ξは、正の定数)。そして、行列演算器100fの出力側に於いて点線にて示されている乗算器100j(図4(A))に於いて、算出値にξを乗じて、出力値の絶対値が元に戻される。これ以降のサイクルに於いては、乗算器100gの入力側に設けられた点線にて示されている乗算器100i(図4(A))に於いて、車輪トルク入力値に1/ξを乗じて、その絶対値が低減され、乗算器100jに於いて算出値にξを乗じて出力値の絶対値が元に戻される(乗算器102eの演算は、OR演算器100hの出力がONになった直後のみ実行され、それ以降は実行されない。)。ガードに設定される所定値は、実際の車両に於いて通常発生する変位及び変位の時間変化率の大きさの最大値に設定されてよく、モデル演算器の分解能は、かかる最大値がモデル演算器を構成するディジタル計算機の容量桁数の限界内にて表現されるよう設定される(最大値は、容量桁数の限界に相当する値よりも若干小さい値に設定されてよい。)
かかる構成によれば、積分器の出力値の少なくとも一つが所定値に到達すると、モデル演算器内にて伝達される算出値の利用ビット数が低減されるので、これにより、変位及びそれらの時間変化率の大きさが通常発生する最大値を超えても、(算出される振動状態値の精度が低下するが、)モデル演算器のオーバーフローの発生する可能性が低減されるので、頭打ちになった値から算出された補償成分が駆動トルク要求値に重畳されないようになることが期待される。また、積分器から出力される状態変数ベクトルの要素の少なくとも一つが所定値に到達する前は、通常発生する変位及び変位の時間変化率に於いて望ましい精度が達成されるようにモデル演算器の分解能を設定できる点で有利である。なお、乗算器100jの出力値が実際の車両に於いて起こり得る変位及び変位の時間変化率の範囲を逸脱しているときには、任意の手法で、例えば、制御ゲイン52eのλoutの値を調節して、過大な振幅の補償成分が駆動トルク要求値に重畳されないようになっていてよい。[駆動トルク要求値に重畳される補償成分の精度は、モデル演算器で算出される値の演算精度よりも低くてもよい。モデル演算器での演算は、積分操作を含み、数値が累積していく形式なので、誤差が蓄積又は残存され易く、従って、可能な限り演算精度が高いことが望ましい。他方、駆動トルク要求値から変換されてエンジンの各部に送信される制御指令の精度は、モデル演算器内の値の精度は要求されない。従って、一般には、補償成分は、補償成分決定部から出力される際、精度を落とした後(分解能を粗くした後)、駆動トルク要求値に重畳される。即ち、行列演算器100fの出力端よりも下流に於いて、分解能を粗くしておくことにより、乗算器100jの算出値がその信号の下流に於いてオーバーフローすることは回避される。]なお、分解能の復帰は、下記の例5又は6に従って為されてよい。
例3
上記の例2の態様を更に発展させた態様として、モデル演算器で算出される状態変数ベクトルの要素値の絶対値が大きくなるほど、モデル演算器の分解能が粗くなるよう設定し、モデル演算器に於いて処理可能な数値範囲が拡大できるようになっていてもよい。具体的には、各積分器のガード102cに於いて、積分値の利用ビット数が(所定値に相当する)所定のビット数に到達したときには、例2に説明した態様にて、乗算器102eにより積分値の利用ビット数を低減した後(積分値の絶対値を低減することに相当)、乗算器100iにより車輪トルク入力値の絶対値を、一段階低減し、乗算器100jにより低減された補償成分の絶対値を元に戻す処理が行なわれる。その後、更に、積分値の利用ビット数が所定のビット数に到達する度に、乗算器102eにより積分値の利用ビット数を低減した後、乗算器100iにより車輪トルク入力値の絶対値を、もう1段階、低減し(積分値の利用ビット数の所定のビット数への到達がn回目であれば、1/ξを乗ずる)、乗算器100jにより低減された補償成分の絶対値を元に戻す処理が実行されるようにする(ξを乗ずる)。かかる構成によれば、モデル演算器の分解能がモデル演算器で算出される値の絶対値の大きさに応じて変更され、モデル演算器に於いてオーバーフローの発生の可能性を低減されることが可能となる。また、かかる分解能可変の構成により、初めに於いて、モデル演算器の分解能が細かく設定され、従って、モデル演算器で処理可能な数値範囲が比較的狭くても(つまり、ガード102cに於ける所定値が比較的小さくても)、オーバーフローを発生させずに振動状態値の推定演算を継続することが可能となる。ただし、一旦、分解能を粗くしたときには、モデル演算器内の算出値の精度は低下しているので、再度、分解能を戻すときには、下記の例5又は6に従って為されることが好ましい。
例4
更に別の態様として、車両に電子制御サスペンションなどの装置のための上下方向Gセンサなどの車体のピッチ・バウンス方向の変位を検出できるセンサ或いはその他のピッチ・バウンス方向の変位を検出できる手段(他の手法によりピッチ・バウンス方向の変位を推定する場合を含む。)が搭載されている場合には、モデル演算器(の積分器)から出力される状態変数ベクトルの要素のうちの少なくとも一つに於いてその絶対値が所定値に到達しガードON信号が発せられたときに、上記の如きセンサ又はその他の手段から取得される値を用いて状態変数ベクトルの各要素値を決定し、それらを用いて補償成分K・Xを算出するようになっていてもよい(状態値の代用)。[上下方向Gセンサ等のセンサ検出値の場合、一般に、気温の変化等の理由によって時間が経過するにつれてドリフト現象が発生し、これにより、長期間使用する場合には、検出値の精度が低下する。従って、センサ又はその他の手段から取得される状態変数ベクトルの各要素値を用いる構成の使用は、限定的に行われるべきである。]かかる構成によれば、所定値で頭打ちになった振動状態値から算出された補償成分が駆動トルク要求値に重畳されないこととなり、制振制御で予期しない周波数成分・位相成分の制御指令がエンジンへ与えられることが回避されることとなる。なお、モデル演算器の出力値を用いた制振制御の復帰は、下記の例5又は6に従って為されてよい。
積分器のリセット
ところで、既に触れたように、各積分器の積分操作は、算出値を逐次的に累積する態様にて為されるので、算出値に一旦誤差が進入すると、それ以降、誤差が残存し、また、継続的に誤差が発生すると、誤差が蓄積されることとなる(シミュレーション実験によれば、車輪トルク入力が或る有意な値から0となった後、振動状態値が0に収束するまでに数秒を要することが見出されている。)。そこで、図4(A)、(B)に示されている如く、各積分器は、後に説明するいくつかの条件が成立したとき、端子i1にリセット信号が与えられ、これにより、スイッチsw1が切り替わり、出力値に0が与えられ、リセットされる(遅延器102dの出力が0に設定される)よう構成されるようになっていてよい。かかる構成によれば、各積分器がリセットされたときに、それまでに算出値に蓄積又は残存する誤差が解消され、制振制御を精度よく再開することが可能となる。なお、モデル演算器から出力される状態変数ベクトルの要素のうちの少なくとも一つに於いてその絶対値が所定値に到達しガードON信号が発せられた後に於いて、上記の例1〜4に記載されている如くモデル演算器の演算処理の態様又は制振制御の態様に変更が為された場合、モデル演算器内の算出値の精度は低下していることになるので、そのまま変更前の状態が復帰することは好ましくない。そこで、例1〜4に記載の変更が為された場合、リセット信号が発せられ、積分器のリセットが為された後、変更前の状態が復帰されるようになっていてよい。以下、リセット信号が発せられる条件の例について説明する。
例5
車両が停車しているときには、ピッチ・バウンス振動は発生しない。そこで、一つの態様として、車両が停車したときに、積分器を強制的にリセットするリセット信号が発せられるようになっていてよい。車両の停車の判定ついて、例えば、車速が0.5〜1秒間に亙って0となったときに、車両が停車したと判定するようになっていてよい。
例6
上記までの説明から理解される如く、車輪トルクが実質的に0であるときには、車体振動は発生していないはずである。そこで、別の態様として、車輪速微分値=0の状態が所定の時間(例えば、数秒間)継続したときには、積分器を強制的にリセットするリセット信号が発せられるようになっていてよい。
制御処理の流れ
かくして、本発明の装置では、モデル演算器から出力される状態変数ベクトルの要素のうちの少なくとも一つに於いてその絶対値が所定値に到達しガードON信号が発せられたときに、例1〜4のいずれかの態様にて制御の態様を変更し、例5〜6のいずれかの条件(復帰条件)が成立したとき、制御の態様を変更前の状態に戻す処理が実行される。図5は、かかる処理をフローチャートの形式にて表したものである。同図を参照して、同処理に於いては、まず、制御態様が既に変更されているか否か、即ち、制振制御が停止中か否か(例1の場合)、分解能が変更中か否か(例2、3の場合)、或いは、状態値として他のセンサ又は手段にて得られた値を使用しているか否か(例4の場合)、が判定され(ステップ10)、制御態様の変更が為されていないときには、振動状態値の大きさのいずれかが所定値を逸脱しているか否か(つまり、ガードON信号が発せられているか否か)が判定される(ステップ20)。そして、いずれの振動状態値の大きさも所定の範囲内にあれば、通常の制振制御(例1〜4の態様の変更なし)が実行される(ステップ50)。他方、振動状態値の大きさのいずれかが所定値を逸脱しているときには、制御態様の変更(制振制御停止、分解能変更又は状態値代用)が実行される(ステップ30)。また、ステップ30の制御態様の変更が実行された場合には、ステップ10の判定の後、復帰条件が成立しているか否かが判定され(ステップ40)、復帰条件が成立していなければ、変更された制御態様が継続され、復帰条件が成立していたときには、これまでの積分器の算出値を0にリセットし(ステップ45)、通常の制振制御が復帰される(ステップ50)。
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
例えば、上記の実施形態に於ける車輪トルク推定値が車輪速から推定されるものであるが、車輪トルク推定値が車輪速から以外のパラメータから推定されるものであってもよい。また、上記の実施形態に於ける制振制御は、車体振動の運動モデルとしてばね上振動モデル又はばね上・ばね下振動モデルを仮定して最適レギュレータの理論を利用したピッチ・バウンス振動の制振制御であるが、本発明の概念は、車輪トルクを利用するものであれば、ここに紹介されているもの以外の車体振動の運動モデルを採用したもの或いは最適レギュレータ以外の制御手法により任意の車体振動の制振を行うものにも適用され、そのような場合も本発明の範囲に属する。特に、図3(C)に例示のばね上・ばね下振動モデルを用いた場合に於いても図4(A)、(B)に記載したモデル演算器の改良が略同様に適用されてよいことは理解されるべきであり、そのような場合も本発明の範囲に属する。
10…車体
12FL、FR、RL、RR…車輪
14…アクセルペダル
20…駆動装置
30FL、FR、RL、RR…車輪速センサ
50…電子制御装置
50a…駆動制御装置
50b…制動制御装置

Claims (3)

  1. 車輪と路面との接地個所に於いて発生する車輪トルクを制御することにより前記車両の車体振動を抑制する車両の制振制御装置であって、前記車両の車体振動モデルに基づいて前記車両の車体の振動振幅を低減するよう前記車輪トルクの要求値に重畳されて前記車輪トルクを補償するための補償成分を算出する補償成分決定部を含み、前記補償成分決定部が前記補償成分を算出するためのモデル演算器を含み、前記モデル演算器の出力値の大きさが所定値に到達したときには、前記所定値に到達したモデル演算器の出力値に基づいて算出される前記補償成分が前記車輪トルクの要求値に重畳されず、前記車両の車体振動を抑制する車輪トルクの制御が中止されることを特徴とする装置。
  2. 請求項1の装置であって、前記モデル演算器が積分器を含み、前記積分器の出力値の大きさが前記所定値に到達した後、前記車両の車輪速微分値が所定期間に亙って実質的に0となったとき、前記積分器の出力値を0に設定し、前記積分器の出力値に基づいて算出される前記補償成分の前記車輪トルクの要求値への重畳を再開することを特徴とする装置。
  3. 請求項1又は2の装置であって、前記モデル演算器が積分器を用いて前記車両の車体振動モデルに基づいて前記車体の振動変位及びその微分値を予測するモデル演算器であり、前記補償成分が前記予測される車体の振動変位及びその微分値に基づいて決定されることを特徴とする装置。
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