JP4692499B2 - 車両の制振制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車等の車両の制振制御装置に係り、より詳細には、車両の駆動出力(駆動力又は駆動トルク)を制御して車体の振動を抑制する制振制御装置に係る。
車両の走行中のピッチ・バウンス等の振動は、車両の加減速時に車体に作用する制駆動力(若しくは慣性力)又はその他の車体に作用する外力により発生するところ、それらの力は、車輪(駆動時には、駆動輪)が路面に対して作用している「車輪トルク」(車輪と接地路面上との間に作用するトルク)に反映される。そこで、車両の制振制御の分野に於いて、車両のエンジン又はその他の駆動装置の駆動出力制御を通して車輪トルクを調節して、車両の走行中に於ける車体の振動を抑制することが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。かかる駆動出力制御による振動の制振制御に於いては、所謂車体のばね上・ばね下振動の力学的モデルを仮定して構築された運動モデルを用いて、車両の加減速要求があった場合又は車体に外力(外乱)が作用して車輪トルクに変動があった場合に車体に生ずるピッチ・バウンス振動を予測し、その予測された振動が抑制されるように車両の駆動装置の駆動出力が調節される。このような形式の制振制御の場合、サスペンションによる制振制御の如く発生した振動エネルギーを吸収することにより抑制するというよりは、振動を発生する力の源を調節して振動エネルギーの発生が抑えられることになるので、制振作用が比較的速やかであり、また、エネルギー効率が良いなどの利点を有する。また、駆動出力制御による制振制御に於いては、制御対象が駆動装置の駆動出力(駆動トルク)に集約されるので、制御の調節が比較的に容易である。
上記の如き駆動出力制御による制振制御を行う制振制御装置(又は駆動力制御装置)に於いては、既に述べた如く、車輪に於いて実際に発生している車輪トルクが制御に於ける外乱として制振制御装置に対してフィードバックされ、外乱による振動の制振のために必要な駆動出力の調節量は、車両に実際に発生している車輪トルクに基づいて決定される。しかしながら、車両の走行中の車輪トルクの値が直接に検出可能なセンサ、例えば、ホイールトルクセンサやホイール六分力計など、は、車両の設計上又はコスト上の問題により、試験車両等を除き、通常の車両には搭載されない。そこで、上記の如き制振制御装置に於いては、外乱入力としてフィードバックされる車輪トルク値として、車輪速、車両の駆動装置の出力軸の回転速等のその他の容易に検出可能なパラメータに基づいて推定される車輪トルク推定値が使用されている(例えば、本願出願人による特願2006−284642参照。)。
上記の如き制振制御の外乱として入力される実際の車輪トルク値を車輪速又は車両の駆動装置の出力軸の回転速を用いて推定する場合、路面に対して作用する車輪の力が、そのグリップ限界(最大摩擦円)を越えると、車輪が路面上を「スリップ(滑る)」する状態(「スリップ状態」)となり、車輪トルク推定値の精度が悪化する。そこで、上記の特願2006−284642に於いては、車輪トルクの推定に際して、車輪のスリップ状態を示す車輪スリップ状態量を算出し、車輪スリップ状態量の表すスリップの程度が大きいほど車輪トルク推定値の絶対値が小さくなるよう車輪トルク推定値を補正することを提案した。なお、ここで、「スリップの程度」とは、車輪がスリップ状態となったときの車輪と路面との間の摩擦力の大きさに相当するものと考えてよい(車輪の表面と路面との間に相対的な滑りが発生するとき、その際の摩擦力が低減するほど車輪の表面と路面とのスリップは大きくなる。)。また、「車輪スリップ状態量」は、車輪がグリップ状態からスリップ状態へ遷移することを検出できる指標であり、かかる「車輪スリップ状態量」としては、例えば、車輪のスリップ率又はスリップ比(これらの用語に於いて、「スリップ」の用語が使用されているが、この場合の「スリップ」は、タイヤが路面にグリップしているか否かによらず、車速と車輪速(車輪の回転速に車輪半径を乗じた値)とのずれを意味しており、上記の「スリップ状態」の場合の如く、車輪が路面上を「滑る」意味での「スリップ」とは異なる。)、或いは、車両の駆動輪の車輪速と車両の従動輪の車輪速との比(車両の加速中、従動輪の車輪速は、駆動輪がグリップ状態にあるか否かによらず、車速に対応した値になるが、駆動輪の車輪速は、駆動輪がスリップ状態になると、車速に対応しなくなる。)が採用される。
特開2004−168148 特開2006−69472
ところで、近年の自動車等の車両に於いては、車両の制動系装置を制御する制御装置、例えば、VSC(Vehicle Stability Control)、TRC(Traction Control)、VDIM(登録商標)(Vehicle Dynamics Integrated Management System)、ABS等の制御装置(以下、「制動制御装置」と称する。)が装備されている。これらの制動制御装置では、上記の如き車輪のスリップ状態を示す「車輪スリップ状態量」を算出し、その算出値に基づいて、車輪のスリップ率の低減するための制御など、それぞれの制御方法に従った制御を実行する。従って、上記の如き駆動出力制御による制振制御を行う制振制御装置は、前記の如き制動制御装置の搭載された車両に搭載される場合には、特願2006−284642の実施形態に於いても記載されているように、車両の制動制御装置により算出される「車輪スリップ状態量」を利用するよう構成され、これにより、一つの車両に於いて、制御の構成を簡単化又は効率化する(同一の計測値、制御量等を重複して計測又は算出することを避ける)ようになっている。
上記の如く、制振制御装置が、制動制御装置により算出される「車輪スリップ状態量」を利用するよう構成されている場合、制動制御装置が何等かの理由により作動していない状況では、制振制御装置に車輪のスリップの程度についての情報が入力されず、その場合、車輪トルク推定値による制振制御を良好に実行できなくなる可能性がある。しかしながら、特願2006−284642に於いては、かかる状況に於ける対策が取られていなかった。
かくして、本発明の主要な一つの課題は、上記の如く制動制御装置から車輪のスリップの状態に関する情報を受信し、その情報に基づいて駆動出力制御による制振制御装置に於いて、制動制御装置が非作動状態にある場合の制御態様を提案することである。
本発明によれば、車両の駆動出力制御による車体のピッチ又はバウンス振動を抑制する制振制御を実行する形式の制振制御装置であって、車両の車輪と路面との接地個所に於いて発生する車輪に作用する車輪トルク推定値を取得する車輪トルク推定値取得部と、車輪トルク推定値に基づいてピッチ又はバウンス振動振幅を抑制するよう車両の駆動トルクを制御する駆動トルク制御部と、更に、車輪のスリップを低減するための車両の制動制御装置から車輪のスリップ状態を示す車輪スリップ状態量を取得するスリップ状態量取得部とを含み、車輪スリップ状態量が表すスリップの程度に基づいて駆動トルクの制御量を補正する制振制御装置にして、制動制御装置が作動可能な状態でないときには、制動制御装置が作動可能な状態のときに比して駆動トルクの制御量を低減することを特徴とする車両の制振制御装置が提供される。
既に述べた如く、車輪のスリップ状態を示す車輪スリップ状態量を車両の制動制御装置から取得するようになっている制振制御装置の場合、制動制御装置が作動可能な状態となっていない場合又は作動が禁止されている場合には、車輪がグリップ状態にあるかスリップ状態にあるかについての情報が得られず、従って、駆動トルクの制御量を適切に制御できない場合がある。例えば、車輪がスリップ状態となっているときに、車輪速に基づいて推定される車輪トルク推定値は、実際に車輪に発生しているトルクよりも過大になっており、そのような車輪トルク推定値に基づいて算出される駆動トルクの制御量は、制振作用が低下するだけでなく、反って過剰に駆動トルクが変動することにより、車両に於いて前後方向振動を発生することも起こり得る。かかる状況は、制振制御に期待されるところの、車両の操縦安定性や乗り心地を向上するという目的に反する。そこで、制動制御装置が作動可能な状態でないときには、制動制御装置が作動可能な状態のときに比して駆動トルクの制御量を低減し、車輪がスリップ状態となったときに制振制御装置が作動されることによる不具合が解消されることとなる。
上記の本発明の制振制御装置に於いて、特に、駆動トルク制御部による駆動トルクの制御量が車輪トルク推定値と車両の運転者による(例えば、アクセルペダルの踏み込みによる)駆動要求量に基づいて決定される場合、制動制御装置が作動可能な状態でないときには、車輪トルク推定値に基づく駆動力の制御量を実質的に0に低減するようになっていてよい。これにより、車輪の状態が検出できず、車輪トルク推定値が精度よく算出できない場合には、実質的に、外乱に対する制振制御そのものを中止し、制振制御装置が作動されることによる不具合の発生が抑制される。一方、車両の運転者による駆動要求量に基づく制振制御(下記の実施形態に於ける「フィードフォワード制御」に相当する。)については、その制御量は、車輪トルク推定値の精度には依存しないので、実行されてもよい。ただし、車輪のタイヤがスリップ状態の場合には、車輪に対する駆動トルク制御が良好に実行されないので、制御量の低減又は制御実行の中止が為されてもよい。
上記の構成に於いて、制動制御装置としては、車両の運転者により選択的に作動可能な状態とされるABS制御、VSC及びTRCから成る群から選択される少なくとも一つであってよく、該制動制御装置が運転者の選択により作動可能な状態とされないとき、制動制御装置が作動可能な状態のときに比して駆動トルクの制御量を低減するようになっていてよい。また、車両に所謂「VDIM」(登録商標)[以下、同様]、即ち、ABS制御、VSC、TRC或いはステアリング制御といった制御を含む車両の挙動安定性を統合的に制御する装置が装備されている場合には、制動制御装置は、VDIMの一部であってよく、VDIMが運転者の選択により作動可能な状態とされないとき、駆動トルクの制御量を低減するようになっていてよい。これらの場合、駆動トルクの制御量の低減に際して、車輪トルク推定値に基づく制振制御を実質的に中止するようになっていてもよい。
また、車両の制動装置が異常であることにより制動制御装置が作動可能な状態でないときには、やはり、車輪の状態を検知することができないので、その場合には、制動制御装置が作動可能な状態のときに比して駆動トルクの制御量を低減するようになっていてよい。この場合にも、駆動トルクの制御量の低減に際して、車輪トルク推定値に基づく制振制御を実質的に中止するようになっていてよい。
上記の本発明の構成によれば、一つの車両に搭載される制御の構成を簡単化又は効率化するべく、制振制御装置が制動制御装置により算出される車輪のスリップ状態量を利用するよう構成されている場合に、制動制御装置が作動可能でない状況下に於いて制振制御装置の作動により不具合が生ずることが回避されることとなる。特に、近年、車両に於いては、複数の制御が実行できるよう、例えば、VDIMの如き統合的に車両の走行制御が実行できるようになる一方、車両のコスト、製造時の労力、使用時の車両における負担を軽減するために、構成を簡単化及び効率化する必要がある。本発明の構成は、そのような一つの車両に於いて複数の制御構成が搭載される場合に於いて、制振制御装置が予期しない不適切な作用を発生してしまうことを回避するものであるということができる。
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
装置の構成
図1(A)は、本発明の制振制御装置の好ましい実施形態が搭載される自動車等の車両を模式的に示している。同図に於いて、左右前輪12FL、12FRと、左右後輪12RL、12RRを有する車両10には、通常の態様にて、運転者によるアクセルペダル14の踏込みに応じて後輪に駆動力又は駆動トルクを発生する駆動装置20が搭載される。駆動装置20は、図示の例では、エンジン22から、トルクコンバータ24、自動変速機26、差動歯車装置28等を介して、駆動トルク或いは回転駆動力が後輪12RL、12RRへ伝達されるよう構成される。しかしながら、エンジン22に代えて電動機が用いられる電気式、或いは、エンジンと電動機との双方を有するハイブリッド式の駆動装置であってもよい。また、車両は、四輪駆動車又は前輪駆動車であってもよい。なお、簡単のため図示していないが、車両10には、通常の車両と同様に各輪に制動力を発生する制動装置と前輪又は前後輪の舵角を制御するためのステアリング装置が設けられる。
駆動装置20の作動は、電子制御装置50により制御される。電子制御装置50は、通常の形式の、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、ROM、RAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路を含んでいてよい。電子制御装置50には、各輪に搭載された車輪速センサ30i(i=FL、FR、RL、RR)からの車輪速Vwi(i=FL、FR、RL、RR)を表す信号と、車両の各部に設けられたセンサからのエンジンの回転速ne、変速機の回転速no、アクセルペダル踏込量θa等の信号が入力される。なお、上記以外に、本実施形態の車両に於いて実行されるべき各種制御に必要な種々のパラメータを得るための各種検出信号が入力されてよいことは理解されるべきである。電子制御装置50は、図1(B)に於いてより詳細に模式的に示されているように、駆動装置20の作動を制御する駆動制御装置50aと制動装置(図示せず)の作動を制御する制動制御装置50bとから構成されてよい。
制動制御装置50bは、当業者にとって公知の、ABS制御、VSC、TRCといった制動制御、即ち、車輪と路面との間の摩擦力(車輪の前後力と横力とのベクトル和)が過大になり限界を越えることを抑制し、或いは、かかる車輪の摩擦力がその限界を越えることに起因する車両の挙動の悪化を防止するべく車輪上の前後力又はスリップ率を制御するものであってよく、或いは、ABS制御、VSC、TRCの車輪のスリップ率制御に加えてステアリング制御等を含めて車両の挙動の安定性を図るVDIMであってよい。なお、VDIMが搭載される場合には、制動制御装置は、VDIMの一部を構成することとなる。かかる制動制御装置には、図示の如く、各輪の車輪速センサ30FR、FL、RR、RLからの、車輪が所定量回転する毎に逐次的に生成されるパルス形式の電気信号が入力され、かかる逐次的に入力されるパルス信号の到来する時間間隔を計測することにより車輪の回転速が算出され、これに車輪半径が乗ぜられることにより、車輪速値r・ωが算出される。また、後に詳細に述べる如く、車輪トルク推定値の算出に於いて、車輪のタイヤがスリップ状態であるか否か、及び、スリップ状態であるときには、そのスリップの程度を表す指標である「車輪スリップ状態量」が算出される。かかる車輪速値r・ω及び車輪スリップ状態量は、車輪トルク推定値を算出するために、駆動制御装置50aへ送信される。なお、車輪回転速から車輪速への演算は、駆動制御装置50aにて行われてもよい。その場合、車輪回転速が制動制御装置50bから駆動制御装置50aへ与えられる。
上記の如き、ABS制御、VSC、TRC等の制動制御又はVDIMによる制御は、車両の運転者がアクセスすることのできる場所(例えば、運転席のフロントパネルの任意の場所)に設けられたON−OFFスイッチ52(図に於いては、簡単のため、一つしか設けられていないが、実行可能される制御毎に設けられていてよい。)により選択的に作動可能状態にされる。即ち、これらの制動制御は、運転者の意志により、スイッチ52がONのときのみ作動可能状態となり、スイッチ52がOFFのときは、作動禁止状態となる。また、図示していないが、制動装置の作動に異常がある場合又は車輪速センサに異常がある場合には、当業者に於いて公知の態様にて、制動制御が不能であることが検出され、その場合には、前記の列記の制動制御装置は、その作動が禁止される。そして、制動制御装置が作動禁止状態となったときには、車輪スリップ状態量の算出も実行されなくなる。従って、その場合には、以下に述べる如く、制振制御装置に於ける車輪トルク推定値に基づく制振制御が中止されることとなる。かかる目的のために、制動制御装置50bから駆動制御装置50aへは、車輪速値及び車輪スリップ状態量の他に、VSC、ABS若しくはTRC等の車輪のスリップ率を制御する各種制御が実行可能な状態にあるか否かを表す信号が送信される。
また、車輪のスリップ状態の程度に依る車輪トルク推定値の補正は、以下に説明される如く、VSC、ABS若しくはTRC等の制御が実際に実行される場合のみ行われるようになっていてよい。そこで、制動制御装置50bから駆動制御装置50aへは、上記の一連の信号の他に、VSC、ABS若しくはTRC等の車輪のスリップ率を制御する各種制御の実行の有無を示す情報が送信される。更に、車輪速センサに異常があって、車輪速値が取得できない場合には、車輪トルク推定値の推定方法を変更する必要があるので、車輪速値が取得できないことを示す車輪速無効状態情報が制動制御装置50bから駆動制御装置50aへ与えられるようになっていてよい。
駆動制御装置50aに於いては、運転者からの駆動要求がアクセルペダル踏込量θaに基づいて運転者の要求する駆動装置の目標出力トルク(要求駆動トルク)が決定される。しかしながら、本発明の駆動制御装置に於いては、駆動トルク制御による車体のピッチ/バウンス振動制振制御を実行するべく、要求駆動トルクが修正され、その修正された要求トルクに対応する制御指令が駆動装置20へ与えられる。かかるピッチ/バウンス振動制振制御に於いては、(1)駆動輪に於いて路面との間に作用する力による駆動輪の車輪トルク推定値の算出、(2)車体振動の運動モデルによるピッチ/バウンス振動状態量の演算、(3)ピッチ/バウンス振動状態量を抑制する車輪トルクの修正量の算出とこれに基づく要求トルクの修正が実行される。(1)の車輪トルク推定値は、制動制御装置50bから受信した駆動輪の車輪速値(又は、駆動輪の車輪回転速)、或いは、エンジンの回転速neに基づいて算出されてよい。なお、本発明の制振制御装置は、(1)−(3)の処理作動に於いて実現されることは理解されるべきである。
車体のピッチ/バウンス振動制振制御を行う駆動力制御の構成
車両に於いて、運転者の駆動要求に基づいて駆動装置が作動して車輪トルクの変動が生ずると、図2(A)に例示されている如き車体10に於いて、車体の重心Cgの鉛直方向(z方向)のバウンス振動と、車体の重心周りのピッチ方向(θ方向)のピッチ振動が発生し得る。また、車両の走行中に路面から車輪上に外力又はトルク(外乱)が作用すると、その外乱が車両に伝達され、やはり車体にバウンス方向及びピッチ方向の振動が発生し得る。そこで、図示の実施形態に於いては、車体のピッチ・バウンス振動の運動モデルを構築し、そのモデルに於いて要求駆動トルク(を車輪トルクに換算した値)と、現在の車輪トルク(の推定値)とを入力した際の車体の変位z、θとその変化率dz/dt、dθ/dt、即ち、車体振動の状態変数を算出し、モデルから得られた状態変数が0に収束するように、即ち、ピッチ/バウンス振動が抑制されるよう駆動装置の駆動トルクが調節される(要求駆動トルクが修正される。)。
図2(B)は、本発明の実施形態に於ける駆動力制御の構成を制御ブロックの形式で模式的に示したものである(なお、各制御ブロックの作動は、(C0、C3を除き)電子制御装置50の駆動制御装置50a又は制動制御装置50bのいずれかにより実行される。)。図2(B)を参照して、本発明の実施形態の駆動トルク制御に於いては、概して述べれば、運転者の駆動要求を車両へ与える駆動制御器と、車体のピッチ/バウンス振動を抑制するよう運転者の駆動要求を修正するための制振制御器とから構成される。駆動制御器に於いては、運転者の駆動要求、即ち、アクセルペダルの踏み込み量(C0)が、通常の態様にて、要求駆動トルクに換算された後(C1)、要求駆動トルクが、駆動装置の制御指令に変換され(C2)、駆動装置(C3)へ送信される。[制御指令は、ガソリンエンジンであれば、目標スロットル開度、ディーゼルエンジンであれば、目標燃料噴射量、モータであれば、目標電流量などである。]
一方、制振制御器は、フィードフォワード制御部分とフィードバック制御部分とから構成される。フィードフォワード制御部分は、所謂、最適レギュレータの構成を有し、ここでは、下記に説明される如く、C1の要求駆動トルクを車輪トルクに換算した値(運転者要求車輪トルクTw0)が車体のピッチ・バウンス振動の運動モデル部分(C4)に入力され、運動モデル部分(C4)では、入力されたトルクに対する車体の状態変数の応答が算出され、その状態変数を最小に収束する要求駆動車輪トルクの修正量が算出される(C5)。また、フィードバック制御部分に於いては、車輪トルク推定器(C6)にて、後に説明される如く車輪トルク推定値Twが算出され、車輪トルク推定値は、フィードバック制御ゲインFB(運転モデルに於ける運転者要求車輪トルクTw0と車輪トルク推定値Twとの寄与のバランスを調整するためのゲイン)が乗ぜられた後、外乱入力として、要求車輪トルクに加算されて運動モデル部分(C4)へ入力され、これにより、外乱に対する要求車輪トルクの修正分も算出される。C5の要求車輪トルクの修正量は、駆動装置の要求トルクの単位に換算されて、加算器(C1a)に送信され、かくして、要求駆動トルクは、ピッチ・バウンス振動が発生しないように修正された後、制御指令に変換されて(C2)、駆動装置(C3)へ与えられることとなる。
制振制御の原理
本発明の実施形態に於ける制振制御に於いては、既に触れたように、まず、車体のバウンス方向及びピッチ方向の力学的運動モデルを仮定して、運転者要求車輪トルクTw0と車輪トルク推定値Tw(外乱)とを入力としたバウンス方向及びピッチ方向の状態変数の状態方程式を構成する。そして、かかる状態方程式から、最適レギュレータの理論を用いてバウンス方向及びピッチ方向の状態変数を0に収束させる入力(トルク値)を決定し、得られたトルク値に基づいて要求駆動トルクが修正される。
車体のバウンス方向及びピッチ方向の力学的運動モデルとして、例えば、図3(A)に示されている如く、車体を質量M及び慣性モーメントIの剛体Sとみなし、かかる剛体Sが、弾性率kfと減衰率cfの前輪サスペンションと弾性率krと減衰率crの後輪サスペンションにより支持されているとする(車体のばね上振動モデル)。この場合、車体の重心のバウンス方向の運動方程式とピッチ方向の運動方程式は、下記の数1の如く表される。
Figure 0004692499
ここに於いて、Lf、Lrは、それぞれ、重心から前輪軸及び後輪軸までの距離であり、rは、車輪半径であり、hは、重心の路面からの高さである。なお、式(1a)に於いて、第1、第2項は、前輪軸から、第3、4項は、後輪軸からの力の成分であり、式(1b)に於いて、第1項は、前輪軸から、第2項は、後輪軸からの力のモーメント成分である。式(1b)に於ける第3項は、駆動輪に於いて発生している車輪トルクT(=Tw0+Tw)が車体の重心周りに与える力のモーメント成分である。
上記の式(1a)及び(1b)は、車体の変位z、θとその変化率dz/dt、dθ/dtを状態変数ベクトルX(t)として、下記の式(2a)の如く、(線形システムの)状態方程式の形式に書き換えることができる。
dX(t)/dt=A・X(t)+B・u(t) …(2a)
ここで、X(t)、A、Bは、それぞれ、
Figure 0004692499
であり、行列Aの各要素a1-a4及びb1-b4は、それぞれ、式(1a)、(1b)のz、θ、dz/dt、dθ/dtの係数をまとめることにより与えられ、
a1=-(kf+kr)/M、a2=-(cf+cr)/M、
a3=-(kf・Lf-kr・Lr)/M、a4=-(cf・Lf-cr・Lr)/M、
b1=-(Lf・kf-Lr・kr)/I、b2=-(Lf・cf-Lr・cr)/I、
b3=-(Lf2・kf+Lr2・kr)/I、b4=-(Lf2・cf+Lr2・cr)/I
である。また、u(t)は、
u(t)=T
であり、状態方程式(2a)にて表されるシステムの入力である。従って、式(1b)より、行列Bの要素p1は、
p1=h/(I・r)
である。
状態方程式(2a)に於いて、
u(t)=−K・X(t) …(2b)
とおくと、状態方程式(2a)は、
dX(t)/dt=(A−BK)・X(t) …(2c)
となる。従って、X(t)の初期値X0(t)をX0(t)=(0,0,0,0)と設定して(トルク入力がされる前には振動はないものとする。)、状態変数ベクトルX(t)の微分方程式(2c)を解いたときに、X(t)、即ち、バウンス方向及びピッチ方向の変位及びのその時間変化率、の大きさを0に収束させるゲインKが決定されれば、ピッチ・バウンス振動を抑制するトルク値u(t)が決定されることとなる。
ゲインKは、所謂、最適レギュレータの理論を用いて決定することができる。かかる理論によれば、2次形式の評価関数
J=1/2・∫(XQX+uRu)dt …(3a)
(積分範囲は、0から∞)
の値が最小になるとき、状態方程式(2a)に於いてX(t)が安定的に収束し、評価関数Jを最小にする行列Kは、
K=R−1・B・P
により与えられることが知られている。ここで、Pは、リカッティ方程式
-dP/dt=AP+PA+Q−PBR−1
の解である。リカッティ方程式は、線形システムの分野に於いて知られている任意の方法により解くことができ、これにより、ゲインKが決定される。
なお、評価関数J及びリカッティ方程式中のQ、Rは、それぞれ、任意に設定される半正定対称行列、正定対称行列であり、システムの設計者により決定される評価関数Jの重み行列である。例えば、ここで考えている運動モデルの場合、Q、Rは、
Figure 0004692499
などと置いて、式(3a)に於いて、状態ベクトルの成分うち、特定のもの、例えば、dz/dt、dθ/dt、のノルム(大きさ)をその他の成分、例えば、z、θ、のノルムより大きく設定すると、ノルムを大きく設定された成分が相対的に、より安定的に収束されることとなる。また、Qの成分の値を大きくすると、過渡特性重視、即ち、状態ベクトルの値が速やかに安定値に収束し、Rの値を大きくすると、消費エネルギーが低減される。
実際の制振制御装置の作動に於いては、図2(B)のブロック図に示されている如く、運動モデルC4に於いて、トルク入力値を用いて式(2a)の微分方程式を解くことにより、状態変数ベクトルX(t)が算出される。次いで、C5にて、上記の如く状態変数ベクトルX(t)を0又は最小値に収束させるべく決定されたゲインKを運動モデルC4の出力である状態ベクトルX(t)に乗じた値U(t)が、(駆動装置のトルクに換算されて)加算器(C1a)に於いて、要求駆動トルクから差し引かれる(運動モデルC4の演算のために、運動モデルC4のトルク入力値にもフィードバックされる。(状態フィードバック)。)式(1a)及び(1b)で表されるシステムは、共振システムであり、任意の入力に対して状態変数ベクトルの値は、実質的には、システムの固有振動数を概ね中心した或るスペクトル特性を有する帯域の周波数成分のみとなる。かくして、U(t)(の換算値)が要求駆動トルクから差し引かれるよう構成することにより、要求駆動トルクのうち、システムの固有振動数の成分、即ち、車体に於いてピッチ・バウンス振動を引き起こす成分が修正され、車体に於けるピッチ・バウンス振動が抑制されることとなる。車輪トルク推定器から送信されてくるTw(外乱)に於いてピッチ・バウンス振動を引き起こす変動が発生した場合には、そのTw(外乱)による振動が収束するよう駆動装置へ入力される要求トルク指令が−U(t)を用いて修正される。
通常の自動車等の車両のピッチ・バウンス方向の振動の共振周波数は、概ね1〜2Hz程度であり、かかる周波数帯域の振動の速さは、現在の車両に於ける要求指令に対する車輪トルクの制御応答の速さによれば、車輪に於けるトルク外乱を検出し、その外乱に対する補償量を車輪の駆動トルクに反映させることのできるレベルである。従って、ピッチ・バウンス振動を惹起し得る車輪に発生した外乱トルク及びこれによるピッチ・バウンス振動は、制振制御による要求駆動トルクの修正により駆動装置の出力する駆動トルクの変動によって相殺されることとなる。
なお、車体のバウンス方向及びピッチ方向の力学的運動モデルとして、例えば、図3(B)に示されている如く、図3(A)の構成に加えて、前輪及び後輪のタイヤのばね弾性を考慮したモデル(車体のばね上・下振動モデル)が採用されてもよい。前輪及び後輪のタイヤが、それぞれ、弾性率ktf、ktrを有しているとすると、図3(B)から理解される如く、車体の重心のバウンス方向の運動方程式とピッチ方向の運動方程式は、下記の数4の如く表される。
Figure 0004692499
ここに於いて、xf、xrは、前輪、後輪のばね下変位量であり、mf、mrは、前輪、後輪のばね下の質量である。式(4a)−(4b)は、z、θ、xf、xrとその時間微分値を状態変数ベクトルとして、図3(A)の場合と同様に、式(2a)の如き状態方程式を構成し(ただし、行列Aは、8行8列、行列Bは、8行1列となる。)最適レギュレータの理論に従って、状態変数ベクトルの大きさが0を収束させるゲイン行列Kを決定することができる。実際の制振制御は、図3(A)の場合と同様である。
車輪トルク推定値の算出
図2(B)の制振制御器のフィードバック制御部分に於いて、フィードフォワード制御部分へ外乱として入力される車輪トルクは、理想的には、各輪にトルクセンサを設け、実際に検出されればよいが、既に述べた如く、通常の車両の各輪にトルクセンサを設けることは困難なので、走行中の車両に於けるその他の検出可能な値から車輪トルク推定器(C6)にて推定された車輪トルク推定値が用いられる。
車輪トルク推定値Twは、典型的には、駆動輪の車輪速センサから得られる車輪回転速ω又は車輪速値r・ωの時間微分を用いて、
Tw=M・r・dω/dt …(5)
と推定することができる。ここに於いて、Mは、車両の質量であり、rは、車輪半径である。[駆動輪が路面の接地個所に於いて発生している駆動力の総和が、車両の全体の駆動力M・G(Gは、加速度)に等しいとすると、車輪トルクTwは、
Tw=M・G・r …(5a)
にて与えられる。車両の加速度Gは、車輪速度r・ωの微分値より、
G=r・dω/dt …(5b)
で与えられるので、車輪トルクは、式(5)の如く推定される。]
車輪トルク推定値の修正
上記の如き車輪トルクの推定に於いて、車両の前進走行中、駆動輪のタイヤが路面をグリップして駆動力を発生している場合には、式(5)は、実際に発生している車輪トルクに概ね一致していることが期待される。しかしながら、駆動輪に於ける路面反力が増大し、最大摩擦円を越えると、タイヤがスリップ状態(タイヤが滑る)になり、そうなると、式(5b)が成立しなくなるため、式(5)の推定値の精度が悪化することとなる。また、一部の高機能センサを除き、車輪に通常搭載されている車輪速センサからの信号からは、車輪の回転速度の大きさは、検出できるが、車輪が前転しているのか後転しているのかの情報は取得できない。従って、制振制御器が、通常は、車両が前進していることを前提として構成されているところ、車両が後進しているときに、上記の推定値をそのまま、制振制御器へ入力してしまうと、車輪トルクが実際のものとは、逆向きに制振制御器へ入力されてしまうこととなる。更に、車輪速センサが故障するなど、車輪速が正確に検出できない場合にも、式(5)の車輪トルク推定値も精度が悪化することとなる。
そこで、本発明では、上記の如く車輪トルク推定器(C6)による車輪トルク推定値の推定精度が悪化すると想定される状況に於いて、下記の式(6)の如く、車輪トルク推定値の修正が行われる。
Tw=κslip・κsign・M・r・dω/dt …(6)
ここに於いて、κslipは、車輪スリップ状態量の関数として与えられる量であり、図4に示されている如きマップを用いて与えられる。また、κsignは、車輪の前転中は、κsign=1であり、車輪の後転中は、κsign=−1とされる。
上記の車輪トルク推定値の修正式(6)中のκslipは、図4から理解される如く、タイヤがグリップ状態にあるときは、κslip=1とされ、タイヤがスリップ状態になったときには、タイヤのスリップ状態を表す任意の指標(車輪スリップ状態量)に応じて、低減される(完全にホイールスピンした状態(車両に車輪トルクがかからない状態)に於いては、κslip=0)。駆動輪のタイヤがスリップ状態になった場合、式(5b)にて車輪速の時間微分により算出される加速度Gの値は、実際の加速度よりも大きくなり、従って、車輪速から推定された車輪トルク推定値は、実際の値よりも大きくなることが予想される。従って、駆動輪のタイヤがスリップ状態になったときには、κslipが乗算されることにより、車輪トルク推定値Twが下方修正される。
車輪のタイヤのスリップの程度を表す指標である車輪スリップ状態量は、例えば、左右の駆動輪の車輪速の平均値に対する左右の従動輪の車輪速の平均値の比であってよい。この場合、駆動輪がスリップ状態となると駆動輪の車輪速が相対的に増大し、その結果、車輪速の比、即ち、車輪スリップ状態量が低減する。又、車輪スリップ状態量として、タイヤのスリップ率、スリップ比が用いられてもよい。なお、車輪スリップ状態量が、スリップの程度が大きくなると共に増大する値として定義される場合には、車輪スリップ状態量が増大するとともに、κslipの値が低減され、図4の例の如く、車輪スリップ状態量が、スリップの程度が大きくなると共に低減する値として定義される場合には、車輪スリップ状態量が低減するとともに、κslipの値が低減されるべきであり、いずれの場合も本発明の範囲に属することは理解されるべきである。
なお、式(6)の車輪トルク推定値のκslipによる修正は、車輪スリップ状態量の値を監視することによりなされてもよいが、以下の条件(a)−(c)が成立したときに車輪スリップ状態量の値に基づいて実行されるようになっていてよい。
(a)VSC、TRC又はABS制御が実行されたとき
(これらの制御が実行される場合、通常、タイヤがグリップ状態からスリップ状態へ遷移したときである。)
(b)左右の従動輪の車輪速の平均値と左右の駆動輪の車輪速の平均値との差が所定期間の間、所定量を超えたとき。
(c)所定時間の間、車輪速の時間微分値が所定の閾値を越えたとき。なお、所定の閾値は、車両が出し得ない加速度に設定されてよい。
車輪スリップ状態量の算出を実行するスリップ状態量算出部は、制動制御装置50b(図1B)に於いて、κslipによる修正を行う車輪トルク補正部は、駆動制御装置50a(図1B)に於いて、それぞれCPU及びその他の構成要素の作動により実現される。なお、本実施形態の制御システムは、線形システムであるので、制御入力である車輪トルク推定値を補正することにより、制御出力である駆動トルクの制御量が補正されることとなることは理解されるべきである。
式(6)のκsignの値は、上記の如く、車輪の後転中に於いて、κsign=−1に設定される。既に触れたように、通常の車輪速センサでは、車輪の方向を検出できないので、車輪の後転時は、例えば、
(d)オートマチック車両であれば、変速機のシフトレバーがRレンジになっていること、
(e)マニュアル車両であれば、リバーススイッチがONになっていること
により検出されてよい。なお、車輪に搭載された車輪速センサが、車輪の回転方向を検出できるものであれば、κsignを用いずに、車輪の後転時は、車輪回転速ωを負の値にして式(6)が用いられてよい。
ところで、車輪速センサに異常が発生し、車輪速の検出精度が悪化した場合には、式(5)又は(6)による車輪トルク推定値の精度も悪化するので、その場合には、駆動輪の車輪回転速又は車輪速は、駆動装置の回転速から算出されてよい。駆動装置のエンジン又はモータの出力軸の回転速Neを用いる場合には、駆動輪の車輪回転速は、
ωe=Ne×トランスミッション(変速機)ギア比×デフ(差動装置)ギア比 …(7)
により与えられる。また、変速機の出力軸の回転速Noを用いる場合には、
ωo=No×デフギア比 …(8)
により与えられる。そして、式(7)又は(8)の駆動輪の車輪回転速ωの推定値は、式(6)に代入され、車輪トルク推定値が算出される。
式(7)又は(8)による車輪トルク推定値の算出は、例えば、下記の条件(f)−(i)のいずれかが成立したときに実行されるようになっていてよい。
(f)車輪速センサの信号に異常が発生し、「異常状態」と判定されたとき。
(g)制動制御装置50b(図1B)に於いて、車輪速センサの異常を判定したとき。
(h)車輪速センサの信号から算出される車輪速と、駆動装置の出力軸の回転速から式(7)により算出される車輪速との差が、所定期間、所定値を越えているとき。
(i)車輪速センサの信号から算出される車輪速と、変速機の出力軸の回転速から式(8)により算出される車輪速との差が、所定期間、所定値を越えているとき。
なお、本実施形態に於いては、車輪速センサの異常は、上記の如く、当業者にとって公知の態様により検出され、そのことを示す信号は、制動制御装置50bから駆動制御装置50aへ送信される。
制振制御の修正
上記の車輪トルク推定値の演算に於いて、車輪のスリップの程度を表す車輪スリップ状態量は、既に述べた如く、ABS制御、VSC、TRC等の制動制御装置又はVDIMの作動が禁止されているときには算出されない。その場合、式(6)のκslipも算出されないこととなる。従って、上記の各種制御の作動可能でない場合には、図2(B)のフィードバックゲインFBが低減され又は0に設定され、車輪トルク推定値Twの運動モデルC4への入力値が低減又は遮断される。具体的には、下記の条件(j)−(l)のいずれかが成立したときにフィードバック制御ゲインFBが低減される。
(j)ABS制御、VSC、TRCのためのON−OFFスイッチがいずれもOFFになっているとき。
(k)VDIMのためのON−OFFスイッチがOFFになっているとき。
(l)制動装置の異常により、ABS制御、VSC及びTRC又はVDIMが作動を禁止されているとき。
なお、条件(j)−(l)が成立するとき、フィードバック制御ゲインFBは、典型的には、FB=0に設定されるが、車輪速が低いときには、スリップしている可能性が低いので、フィードバックゲインFBは、車輪速が増大するとも低減するように、例えば、
FB=λ/ω …(9)
と設定されてもよい。なお、λは、実験的に又は理論的に決定される正の定数である。この場合、車輪速が高くなると、FBの値は、実質的に0となる。
一方、運転者の駆動要求から換算される要求駆動トルクに基づく制振制御のための制御量の修正、即ち、フィードフォワード制御による制御量の修正は、車輪トルク推定値を使用しないので(運動モデルは、線形モデルであるため)、上記の(j)−(l)の条件のいずれかが成立する場合であってもそのまま実行されてよい。しかしながら、車輪がスリップ状態となっているか否かを検出することができず、また、もし車輪がスリップ状態となっている場合には、駆動トルクの増大は、スリップ状態を悪化させることになる。従って、制振制御のための制御量の振幅が低減されるか或いは制振制御そのものを中止するようになっていてもよい。制御量の振幅の低減は、例えば、式(9)と同様に、車輪速の大きさが大きくなるとともに低減されるようになっていてもよい。
なお、上記の条件(j)−(l)のいずれも成立していないときに、上記の車輪トルク推定値の修正(式(6))を実行しても、車輪トルク推定値の精度が改善されないと判断される場合にも、運動モデルC4への車輪トルク推定値の入力が遮断されるようになっていてもよい。また、車輪がスリップ状態になる場合については、車輪スリップ状態量の表すスリップの程度が所定の程度よりも大きい場合、例えば、図4のマップに於いて、車輪スリップ状態量が所定値S以下のときは、破線にて示す如く、κslip=0となるよう設定し、実質的に運動モデルC4への車輪トルク推定値の入力が遮断されるようになっていてよい。また、条件(a)−(i)が成立するときには、U(t)=0として、制振制御の実行を中止する(要求駆動トルクの修正を中止する)ようになっていてもよい。
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
更に、上記の実施形態に於ける制振制御は、運動モデルとしてばね上又はばね上・ばね下運動モデルを仮定して最適レギュレータの理論を利用した制振制御であるが、本発明の概念は、車輪トルク推定値を利用するものであれば、ここに紹介されているもの以外の運動モデルを採用したもの或いは最適レギュレータ以外の制御手法により制振を行うものにも適用され、そのような場合も本発明の範囲に属する。
図1Aは、本発明による制振制御装置の好ましい実施形態が実現される自動車の模式図を示している。図1Bは、図1Aの電子制御装置の内部構成をより詳細な模式図である。 図2Aは、本発明の好ましい実施形態の一つである制振制御装置に於いて抑制される車体振動の状態変数を説明する図である。図2Bは、本発明の好ましい実施形態に於ける制振制御の構成を制御ブロック図の形式で表した図である。 図3は、本発明の好ましい実施形態の制振制御装置に於いて仮定される車体振動の力学的運動モデルを説明する図である。図3Aは、ばね上振動モデルを用いた場合であり、図3Bは、ばね上・ばね下振動モデルを用いた場合である。 図4は、車輪スリップ状態量に応じて変化する車輪トルク推定値のための補正係数κslipのマップをグラフの形式で示したものである。
符号の説明
10…車体
12FL、FR、RL、RR…車輪
14…アクセルペダル
20…駆動装置
30FL、FR、RL、RR…車輪速センサ
50…電子制御装置
50a…駆動制御装置
50b…制動制御装置
52…スイッチ

Claims (5)

  1. 車両の駆動出力を制御することにより前記車両のピッチ又はバウンス振動を抑制する車両の制振制御装置であって、前記車両の車輪と路面との接地個所に於いて発生する車輪に作用する車輪トルク推定値を取得する車輪トルク推定値取得部と、前記車輪トルク推定値に基づいて前記ピッチ又はバウンス振動振幅を抑制するよう前記車両の駆動トルクを制御する駆動トルク制御部と、前記車輪のスリップを低減するための前記車両の制動制御装置から前記車輪のスリップ状態を示す車輪スリップ状態量を取得するスリップ状態量取得部とを含み、前記車輪スリップ状態量が表すスリップの程度に基づいて前記駆動トルクの制御量を補正する制振制御装置にして、前記制動制御装置が作動可能な状態でないときには、前記制動制御装置が作動可能な状態のときに比して前記駆動トルクの制御量を低減することを特徴とする車両の制振制御装置。
  2. 請求項1の装置であって、前記駆動トルク制御部による前記駆動トルクの制御量が前記車輪トルク推定値と前記車両の運転者による駆動要求量とに基づいて決定され、前記制動制御装置が作動可能な状態でないときには、前記車輪トルク推定値に基づく前記駆動トルクの制御量を実質的に0に低減することを特徴とする装置。
  3. 請求項1の装置であって、前記制動制御装置が前記車両の運転者により選択的に作動可能な状態とされるABS制御、VSC及びTRCから成る群から選択される少なくとも一つであり、該制動制御装置が前記運転者の選択により作動可能な状態とされないとき、前記制動制御装置が作動可能な状態のときに比して前記駆動力の制御量を低減することを特徴とする装置。
  4. 請求項1の装置であって、前記制動制御装置が前記車両の運転者により選択的に作動可能な状態とされる車両の挙動安定性を統合的に制御する装置の一部であり、前記車両の挙動安定性を統合的に制御する装置が前記運転者の選択により作動可能な状態とされないとき、前記駆動トルクの制御量を低減することを特徴とする装置。
  5. 請求項1の装置であって、前記車両の制動装置が異常であることにより前記制動制御装置が作動可能な状態でないときに、前記制動制御装置が作動可能な状態のときに比して前記駆動トルクの制御量を低減することを特徴とする装置。
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