JP4910794B2 - 車両の制振制御を行う駆動制御装置 - Google Patents

車両の制振制御を行う駆動制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、自動車等の車両の駆動制御装置に係り、より詳細には、車両の駆動出力(駆動力又は駆動トルク)を制御して車体の振動を抑制する制振制御機能を有する駆動制御装置に係る。
車両の走行中のピッチ・バウンス等の振動は、車両の加減速時に車体に作用する制駆動力(若しくは慣性力)又はその他の車体に作用する外力により発生するところ、それらの力は、車輪(駆動時には、駆動輪)が路面に対して作用している「車輪トルク」(車輪と接地路面上との間に作用するトルク)に反映される。そこで、車両の制振制御の分野に於いて、車両のエンジン又はその他の駆動装置の駆動出力制御を通して車輪トルクを調節して、車両の走行中に於ける車体の振動を抑制することが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。かかる駆動出力制御による振動の制振制御に於いては、所謂車体のばね上・ばね下振動の力学的モデルを仮定して構築された運動モデルを用いて、車両の加減速要求があった場合又は車体に外力(外乱)が作用して車輪トルクに変動があった場合に車体に生ずるピッチ・バウンス振動を予測し、その予測された振動が抑制されるように車両の駆動装置の駆動出力が調節される。
上記の如き駆動出力制御による制振制御に於いては、サスペンションによる制振制御の如く発生した振動エネルギーを吸収することにより振動を抑制するというよりは、振動を発生する力の源を調節して振動エネルギーの発生を抑えることになるので、制振作用が比較的速やかであり、また、エネルギー効率が良いなどの利点を有する。また、駆動出力制御による制振制御に於いては、制御対象が駆動装置の駆動出力(駆動トルク)に集約されるので、制御の調節が比較的に容易である。
特開2004−168148 特開2006−69472
ところで、車両の駆動装置がガソリンエンジンである場合、よく知られているように、エンジンの駆動出力は、吸入空気量(及び点火時期等)によって制御される。従って、上記の如き制振制御のための駆動出力制御が実行される際には、吸入空気量は、運転者のアクセルペダルの踏み込み量等(又は自動走行制御装置等)に応じた駆動力又は駆動トルクの要求量(要求駆動力又はトルク)に対して、ピッチ・バウンス振動を抑制するべく上下に振動する要求駆動トルク補償成分が重畳された制御量に対応して変動するよう制御されることとなる。要求駆動トルク補償成分の振幅は、車両の加減速要求又は車輪上に作用する車輪トルクの外乱のピッチ・バウンス振動を惹起する周波数成分の大きさに依って決定されるので、そのようなピッチ・バウンス振動を惹起する周波数成分が比較的大きく、これにより、要求駆動トルク補償成分が重畳された吸入空気量の制御量が吸入空気量の可変範囲を超える場合には、制振制御により要求される吸入空気量の変動が実現されず、制振効果が低減されることとなる。
この点に関し、特に、ガソリンエンジンに於いては、駆動出力制御とは別に、低負荷時のエンジン回転の安定性を保持するためのアイドル回転速度制御(ISC:Idle Speed Control)が実行され、そのための吸入空気量(ISC流量)がエンジンへ送られるようになっており、駆動出力制御のために許される吸入空気量の可変範囲は、ISC流量の存在により低負荷側で制限されることとなる。従って、エンジンが低負荷状態にある場合に、制振制御の要求駆動トルク補償成分が下側に振れると、ISCの作用によって吸入空気量の変動が制限され易くなり、これにより、制振効果が低減してしまうことが起き得る。しかしながら、従来の技術に於いて、上記の如く制振制御のための吸入空気量の変動が制限され得ることについては考慮されていない。
本発明によれば、ガソリンエンジンを駆動装置とする車両の制振制御のための駆動出力制御を実行する形式の駆動制御装置であって、制振制御の実行中に於いて、吸入空気量の変動がISCによる制限を受けることなく、より良好に制振効果が得られるよう改良された車両の駆動制御装置が提供される。
本発明の車両の駆動出力を制御して車両のピッチ又はバウンス振動を抑制する制振制御を実行する車両のガソリンエンジンの駆動制御装置は、車両の車輪と路面との接地個所に於いて発生する車輪に作用する車輪トルクに基づいてピッチ又はバウンス振動振幅を抑制するようエンジンの駆動トルクを制御する制振制御部と、エンジンのアイドル回転速度を制御するためのアイドル回転速度制御吸入空気量(ISC流量)を制御するアイドル回転速度制御部(ISC部)とを含み、制振制御部による制振制御の実行時に、アイドル回転速度制御部がアイドル回転速度制御吸入空気量を低減することを特徴とする。
既に述べた如く、通常のガソリンエンジンに於いては、その低負荷時の回転状態(運転状態)を安定化させるためにエンジンへISC流量が供給され、駆動出力制御のための吸入空気量の可変範囲が低負荷側に於いて制限される。従って、制振制御により要求される駆動トルクが下方に振れるとき、特に、エンジンの低負荷時(例えば、降坂時など)には、制振制御により要求される駆動トルクに対応する吸入空気量がISC流量よりも低い場合には、吸入空気量の変動が達成されず(吸入空気量がISC流量より低くならない。)、期待通りの制振効果が得られないこととなる。そこで、上記の本発明の構成に於いては、制振制御部による制振制御の実行時には、ISC流量が低減されるよう構成し、これにより、吸入空気量が制振制御により要求される駆動トルクに追従して低減できるよう制御構成が修正される。換言すれば、ISC流量の低減によって、吸入空気量の可変範囲が拡大され、少なくとも制振制御による駆動トルクの振幅が下側で制限される可能性が低減されることとなる。
上記の制振制御の実行時のISC流量の低減の実行する時期に関して、ISCはエンジンの安定性を確保するために必要であり、不用に低減されるべきではないことを考慮して、一つの態様としては、ISC流量は、制振制御部による制振制御が開始されたときに、(制振制御の開始以前に比して)低減されるようになっていてよい。又、制振制御が実行されるのは、車両の加減速要求があったとき又は車輪トルクに外乱が発生したときであるので、当然ながら、車両の走行中である。つまり、車両の停止時には、制振制御が実行されることは、通常有り得ないので、制振制御が開始されたときにISC流量を低減し、車両の停止時には、通常の態様にてISC流量が供給されるようになっていてよい。しかしながら、ISCは、車両の停止時に限らず、エンジンの低負荷時に於けるエンジンの運転状態の安定性をも維持する目的もあるので、制振制御部による制振制御の実行時のうち真に必要なとき、即ち、ISC部の制御下、ISC流量がエンジンへ供給されることにより、制振制御部により要求される吸入空気量が下方に変化できないときに、ISC流量を低減するようになっていてもよい。制振制御部により要求される吸入空気量が下方に変化できない状態の検出は、例えば、車両の走行中に検出した吸入空気量がISC流量に実質的に一致しているか、或いは、スロットル開度がISC流量を達成する開度に実質的に一致した状態が所定期間継続していることを検出することにより為されてよい。
上記の本発明の装置に於ける、制振制御の実行時のISC流量の低減の具体的な態様としては、例えば、ISC流量が車両の停止時に所定のエンジン回転数を達成するよう予め定められた第一の成分と、エンジン回転数に基づいて決定される第二の成分との和である場合には、第二の成分が実質的に0に低減されるようになっていてよい。かかる構成によれば、制振制御により要求される駆動トルクの変動が大きく、その変動量が、大幅に下方に振れたとしても、車両の停止時に所定のエンジン回転数を達成するよう予め定められた第一の成分は、常に担保され、かくして、エンジンの運転状態が著しく不安定になることが回避されることとなる(吸入空気量が車両の停止時よりも少なくなることは回避される。)。
なお、上記の如くISC流量を低減した場合には、エンジンへ供給される吸入空気量の総量も低減されることとなる。従って、車両を或る速度又は加速度にて走行させる場合、車両の運転者(又は自動走行制御装置等)は、ISC流量を低減した状態では、低減しない状態よりも、例えば、アクセルペダルをより深く踏み込むなどして、車両に対してより大きな要求量を与える必要があり、操作負担が大きくなる。そこで、上記の本発明の装置に於いては、(特に運転者の)より大きな要求量を出す操作負担を軽減する構成が含まれていてよい。そのような構成として、例えば、駆動制御装置が、エンジンの要求駆動トルクを決定する要求駆動トルク決定部と、要求駆動トルクに基づいて目標吸入空気量を決定する吸入空気量決定部とを含み、制振制御部がピッチ又はバウンス振動振幅を抑制するべく算出された要求駆動トルク補償成分により前記要求駆動トルクを修正し、吸入空気量決定部が前記修正された要求駆動トルクに基づいて目標吸入空気量を決定するよう構成されている場合には、制振制御部による制振制御の実行時にISC空気量が低減される際に、修正された要求駆動トルクに基づいて決定される目標吸入空気量を増大するようになっていてよい。かかる構成によれば、ISC流量が低減されたときに吸入空気量を増大するべく駆動要求量を増大する操作負担が軽減されることとなる。
上記の本発明の駆動制御装置によれば、要すれば、ガソリンエンジンに於いて駆動出力制御によるピッチ・バウンス制振制御を実行させる際に、ISC流量を低減し、その分、駆動出力制御による吸入空気量の低負荷側の可変範囲を拡大することによって、吸入空気量が制振制御からの要求に対して良好に追従可能な状態が提供されることとなる。そして、かかる制御構成により、制振制御の期待通りの駆動出力の変動、即ち、車輪トルクの変動が実現され易くなり、制振効果が向上される。
特に理解されるべきことは、本発明の対象となっているピッチ・バウンス制振制御に於いては、運転者又は自動走行制御装置等が要求するエンジン負荷要求とは、別に、独立的にピッチ・バウンス振動を相殺する目的で駆動トルクの上下振動を要求するというややユニークな駆動制御を実行する場合があるという点である。典型的な車両又は車輪の回転の加減速を目的とするエンジンの駆動制御であれば、一般的には、エンジンに要求される駆動トルクの変化は、運転者又は自動走行制御装置等からの要求を修正する程度であるので、運転者又は自動走行制御装置によるエンジン負荷要求から大きく変動することは、あまり多くはないと考えられる。従って、エンジンが低負荷状態であれば、エンジン負荷要求は、然程に変動しないであろう。しかしながら、ピッチ・バウンス制振に於ける駆動出力制御の場合、運転者又は自動走行制御装置が要求するエンジン負荷要求が低負荷であっても、車輪トルクへの外乱のうちピッチ・バウンス振動を惹起する成分が大きければ、エンジンに要求される駆動トルクの振幅が大きく変動することがあり、その場合、要求される吸入空気量がISC流量を下回ることも起き得ることとなる。本発明の制御の構成は、そのようなピッチ・バウンス制振制御のユニークな制御手法に於いて発生する状況に着目し、ピッチ・バウンス制振制御をガソリンエンジンの駆動制御に組み込む際に、ピッチ・バウンス制振制御と既存のISCとを協調させつつ、ピッチ・バウンス制振制御が車両に於いて適切に反映され、制振効果が有効に発揮されるようにするものであるということができる。
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
装置の構成
図1(A)は、本発明の制振制御を実行する駆動制御装置の好ましい実施形態が搭載される自動車等の車両を模式的に示している。同図に於いて、左右前輪12FL、12FRと、左右後輪12RL、12RRを有する車両10には、通常の態様にて、運転者によるアクセルペダル14の踏込みに応じて後輪に駆動力又は駆動トルクを発生する駆動装置20が搭載される。駆動装置20は、図示の例では、エンジン22から、トルクコンバータ24、自動変速機26、差動歯車装置28等を介して、駆動トルク或いは回転駆動力が後輪12RL、12RRへ伝達されるよう構成される。エンジン22は、公知の態様のガソリンエンジンであり、アクセルペダルの踏み込み量及び下記に説明する制御量に応じて決定される要求駆動トルクを達成するよう吸入空気量を調節すべく、スロットル弁22aの開度が制御される。また、簡単のため図示していないが、車両10には、通常の車両と同様に各輪に制動力を発生する制動装置と前輪又は前後輪の舵角を制御するためのステアリング装置が設けられる。なお、車両は、四輪駆動車又は前輪駆動車であってもよい。
エンジン22の駆動出力、即ち、スロットル開度は、電子制御装置50の指令(目標スロットル開度θst)に基づきスロットル弁アクチュエータ(図示せず)が作動することによって調節される。電子制御装置50は、通常の形式の、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、ROM、RAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路を含んでいてよい。電子制御装置50には、各輪に搭載された車輪速センサ30i(i=FL、FR、RL、RR)からの車輪速Vwi(i=FL、FR、RL、RR)を表す信号と、車両の各部に設けられたセンサからのエンジンの回転速ne、変速機の回転速no、アクセルペダル踏込量θa等の信号が入力される。なお、上記以外に、本実施形態の車両に於いて実行されるべき各種制御に必要な種々のパラメータを得るための各種検出信号が入力されてよいことは理解されるべきである。電子制御装置50は、図1(B)に於いてより詳細に模式的に示されているように、エンジン及びその他の駆動装置20の作動を制御する駆動制御装置50aと制動装置(図示せず)の作動を制御する制動制御装置50bとから構成されてよい。制動制御装置50bには、図示の如く、各輪の車輪速センサ30FR、FL、RR、RLからの、車輪が所定量回転する毎に逐次的に生成されるパルス形式の電気信号が入力され、かかる逐次的に入力されるパルス信号の到来する時間間隔を計測することにより車輪の回転速が算出され、これに車輪半径が乗ぜられることにより、車輪速値r・ωが算出される。そして、その車輪速値r・ωは、駆動制御装置50aへ送信されて、車輪トルク推定値の算出に用いられる。なお、車輪回転速から車輪速への演算は、駆動制御装置50aにて行われてもよい。その場合、車輪回転速が制動制御装置50bから駆動制御装置50aへ与えられる。
駆動制御装置50aに於いては、運転者からの駆動要求がアクセルペダル踏込量θaに基づいて運転者の要求するエンジンの要求駆動トルクを決定する要求駆動トルク決定部51と、駆動トルク制御による車体のピッチ/バウンス振動制振制御を実行するための要求駆動トルク補償成分を算出して要求駆動トルクを修正する制振制御部52とが含まれる。ピッチ/バウンス振動制振制御に於いては、後でより詳細に説明される如く、(1)駆動輪に於いて路面との間に作用する力による駆動輪の車輪トルク推定値の算出、(2)車体振動の運動モデルによるピッチ/バウンス振動状態量の演算、(3)ピッチ/バウンス振動状態量を抑制する車輪トルクの修正量の算出とこれに基づく要求駆動トルクの修正が実行される。そして、制振制御部52により修正された要求駆動トルクの指令値に基づき、吸入空気量決定部53に於いて、要求駆動トルクを達成する吸入空気量の目標値が決定される(吸入空気量の他、点火時期、燃料噴射量等の、要求されたエンジン作動を実現するためのパラメータの目標値も適宜決定される。)。
また、更に、駆動制御装置50aには、エンジンフリクションその他の回転負荷に抗してエンジンの安定的な回転を維持するためのアイドル回転速度制御(ISC)部54が設けられる。ISC部は、後に詳細に説明される如く、車両の停止中又は低負荷運転状態(エンジンの回転数が負荷に対して相対的に高い場合、例えば、降坂時など、)に、安定なエンジンを確保するべくエンジンへ送られる空気量(ISC流量)を、エンジンの回転数を参照して決定する。そして、目標スロットル開度決定部55に於いて、制振制御による要求駆動トルク補償成分により修正された要求駆動トルクに基づく吸入空気量に対応するスロットル開度と、ISC流量に対応するスロットル開度とが、それぞれ決定され、最終的なスロットル開度の目標値θstが決定されて、エンジン22のスロットル弁アクチュエータへ制御指令として送信される。また、ISC流量の大小によって、要求駆動トルクを達成するための吸入空気量が変化するので、ISC流量の設定値が吸入空気量決定部53へ送信され、要求駆動トルクに対応する吸入空気量の決定の際に考慮できるよう構成される。
なお、上記の本発明の駆動制御装置の各部は、電子制御装置50内のマイクロコンピュータ等の処理作動に於いて実現されることは理解されるべきである。以下、駆動トルク制御による制振制御とこれと協調して実行されるISCの構成との作動についてそれぞれ詳細に説明する。
車体のピッチ/バウンス振動制振制御を行う駆動トルク制御の構成
車両に於いて、運転者の駆動要求に基づいて駆動装置が作動して車輪トルクの変動が生ずると、図2(A)に例示されている如き車体10に於いて、車体の重心Cgの鉛直方向(z方向)のバウンス振動と、車体の重心周りのピッチ方向(θ方向)のピッチ振動が発生し得る。また、車両の走行中に路面から車輪上に外力又はトルク(外乱)が作用すると、その外乱が車両に伝達され、やはり車体にバウンス方向及びピッチ方向の振動が発生し得る。そこで、ここに例示するピッチ・バウンス振動制振制御に於いては、車体のピッチ・バウンス振動の運動モデルを構築し、そのモデルに於いて要求駆動トルク(を車輪トルクに換算した値)と、現在の車輪トルク(の推定値)とを入力した際の車体の変位z、θとその変化率dz/dt、dθ/dt、即ち、車体振動の状態変数を算出し、モデルから得られた状態変数が0に収束するように、即ち、ピッチ/バウンス振動が抑制されるよう駆動装置(エンジン)の駆動トルクが調節される(要求駆動トルクが修正される。)。
図2(B)は、本発明の実施形態に於ける駆動トルク制御の構成を制御ブロックの形式で模式的に示したものである。なお、各制御ブロックの作動は、(C0、C3を除き)電子制御装置50の駆動制御装置50a又は制動制御装置50bのいずれかにより実行される。図2(B)を参照して、本発明の実施形態の駆動トルク制御に於いては、運転者の駆動要求を車両へ与える要求駆動トルク決定部51と、車体のピッチ/バウンス振動を抑制するよう運転者の駆動要求を修正するための制振制御部52とから構成される(図1(B)参照)。要求駆動トルク決定部に於いては、運転者の駆動要求、即ち、アクセルペダルの踏み込み量(C0)が、通常の態様にて、要求駆動トルクに換算された後(C1)、要求駆動トルクが、目標吸入空気量、目標スロットル開度の順に変換されてスロットル弁アクチュエータへの制御指令が決定され(C2:点火時期、燃料噴射量等のその他の作動パラメータの目標値も決定される。)、駆動装置(C3)へ送信される。なお、図2(B)には示されていないが、目標スロットル開度には、更にISC流量を実現する成分が加算される。
一方、制振制御部は、フィードフォワード制御部分とフィードバック制御部分とから構成される。フィードフォワード制御部分は、所謂、最適レギュレータの構成を有し、ここでは、下記に説明される如く、C1の要求駆動トルクを車輪トルクに換算した値(運転者要求車輪トルクTw0)が車体のピッチ・バウンス振動の運動モデル部分(C4)に入力され、運動モデル部分(C4)では、入力されたトルクに対する車体の状態変数の応答が算出され、その状態変数を最小に収束する要求駆動車輪トルクの修正量が算出される(C5)。また、フィードバック制御部分に於いては、車輪トルク推定器(C6)にて、後に説明される如く車輪トルク推定値Twが算出され、車輪トルク推定値は、フィードバック制御ゲインFB(運転モデルに於ける運転者要求車輪トルクTw0と車輪トルク推定値Twとの寄与のバランスを調整するためのゲイン)が乗ぜられた後、外乱入力として、要求車輪トルクに加算されて運動モデル部分(C4)へ入力され、これにより、外乱に対する要求車輪トルクの修正分も算出される。C5の要求車輪トルクの修正量は、駆動装置の要求トルクの単位に換算されて(要求駆動トルク補償成分)、加算器(C1a)に送信され、かくして、要求駆動トルクは、ピッチ・バウンス振動が発生しないように修正された後、制御指令に変換されて(C2)、駆動装置(C3)へ与えられることとなる。
上記のフィードフォワード制御部分へ外乱として入力される車輪トルクは、理想的には、各輪にトルクセンサを設け、実際に検出されればよいが、通常の車両の各輪にトルクセンサを設けることは困難なので、車輪トルクの外乱入力として、走行中の車両に於けるその他の検出可能な値から車輪トルク推定器(C6)にて推定された車輪トルク推定値が用いられる。車輪トルク推定値Twは、典型的には、駆動輪の車輪速センサから得られる車輪回転速ω又は車輪速値r・ωの時間微分を用いて、
Tw=M・r・dω/dt …(5)
と推定することができる。ここに於いて、Mは、車両の質量であり、rは、車輪半径である。[駆動輪が路面の接地個所に於いて発生している駆動力の総和が、車両の全体の駆動力M・G(Gは、加速度)に等しいとすると、車輪トルクTwは、
Tw=M・G・r …(5a)
にて与えられる。車両の加速度Gは、車輪速度r・ωの微分値より、
G=r・dω/dt …(5b)
で与えられるので、車輪トルクは、式(5)の如く推定される。]
制振制御の原理
本発明の実施形態に於ける制振制御に於いては、既に触れたように、まず、車体のバウンス方向及びピッチ方向の力学的運動モデルを仮定して、運転者要求車輪トルクTw0と車輪トルク推定値Tw(外乱)とを入力としたバウンス方向及びピッチ方向の状態変数の状態方程式を構成する。そして、かかる状態方程式から、最適レギュレータの理論を用いてバウンス方向及びピッチ方向の状態変数を0に収束させる入力(トルク値)を決定し、得られたトルク値に基づいて要求駆動トルクが修正される。
車体のバウンス方向及びピッチ方向の力学的運動モデルとして、例えば、図3(A)に示されている如く、車体を質量M及び慣性モーメントIの剛体Sとみなし、かかる剛体Sが、弾性率kfと減衰率cfの前輪サスペンションと弾性率krと減衰率crの後輪サスペンションにより支持されているとする(車体のばね上振動モデル)。この場合、車体の重心のバウンス方向の運動方程式とピッチ方向の運動方程式は、下記の数1の如く表される。
Figure 0004910794
ここに於いて、Lf、Lrは、それぞれ、重心から前輪軸及び後輪軸までの距離であり、rは、車輪半径であり、hは、重心の路面からの高さである。なお、式(1a)に於いて、第1、第2項は、前輪軸から、第3、4項は、後輪軸からの力の成分であり、式(1b)に於いて、第1項は、前輪軸から、第2項は、後輪軸からの力のモーメント成分である。式(1b)に於ける第3項は、駆動輪に於いて発生している車輪トルクT(=Tw0+Tw)が車体の重心周りに与える力のモーメント成分である。
上記の式(1a)及び(1b)は、車体の変位z、θとその変化率dz/dt、dθ/dtを状態変数ベクトルX(t)として、下記の式(2a)の如く、(線形システムの)状態方程式の形式に書き換えることができる。
dX(t)/dt=A・X(t)+B・u(t) …(2a)
ここで、X(t)、A、Bは、それぞれ、
Figure 0004910794
であり、行列Aの各要素a1-a4及びb1-b4は、それぞれ、式(1a)、(1b)のz、θ、dz/dt、dθ/dtの係数をまとめることにより与えられ、
a1=-(kf+kr)/M、a2=-(cf+cr)/M、
a3=-(kf・Lf-kr・Lr)/M、a4=-(cf・Lf-cr・Lr)/M、
b1=-(Lf・kf-Lr・kr)/I、b2=-(Lf・cf-Lr・cr)/I、
b3=-(Lf2・kf+Lr2・kr)/I、b4=-(Lf2・cf+Lr2・cr)/I
である。また、u(t)は、
u(t)=T
であり、状態方程式(2a)にて表されるシステムの入力である。従って、式(1b)より、行列Bの要素p1は、
p1=h/(I・r)
である。
状態方程式(2a)に於いて、
u(t)=−K・X(t) …(2b)
とおくと、状態方程式(2a)は、
dX(t)/dt=(A−BK)・X(t) …(2c)
となる。従って、X(t)の初期値X0(t)をX0(t)=(0,0,0,0)と設定して(トルク入力がされる前には振動はないものとする。)、状態変数ベクトルX(t)の微分方程式(2c)を解いたときに、X(t)、即ち、バウンス方向及びピッチ方向の変位及びその時間変化率、の大きさを0に収束させるゲインKが決定されれば、ピッチ・バウンス振動を抑制するトルク値u(t)が決定されることとなる。
ゲインKは、所謂、最適レギュレータの理論を用いて決定することができる。かかる理論によれば、2次形式の評価関数
J=1/2・∫(XQX+uRu)dt …(3a)
(積分範囲は、0から∞)
の値が最小になるとき、状態方程式(2a)に於いてX(t)が安定的に収束し、評価関数Jを最小にする行列Kは、
K=R−1・B・P
により与えられることが知られている。ここで、Pは、リカッティ方程式
-dP/dt=AP+PA+Q−PBR−1
の解である。リカッティ方程式は、線形システムの分野に於いて知られている任意の方法により解くことができ、これにより、ゲインKが決定される。
なお、評価関数J及びリカッティ方程式中のQ、Rは、それぞれ、任意に設定される半正定対称行列、正定対称行列であり、システムの設計者により決定される評価関数Jの重み行列である。例えば、ここで考えている運動モデルの場合、Q、Rは、
Figure 0004910794
などと置いて、式(3a)に於いて、状態ベクトルの成分うち、特定のもの、例えば、dz/dt、dθ/dt、のノルム(大きさ)をその他の成分、例えば、z、θ、のノルムより大きく設定すると、ノルムを大きく設定された成分が相対的に、より安定的に収束されることとなる。また、Qの成分の値を大きくすると、過渡特性重視、即ち、状態ベクトルの値が速やかに安定値に収束し、Rの値を大きくすると、消費エネルギーが低減される。
実際の制振制御部の作動は、図2(B)のブロック図に示されている如く、運動モデルC4に於いて、トルク入力値を用いて式(2a)の微分方程式を解くことにより、状態変数ベクトルX(t)が算出される。次いで、C5にて、上記の如く状態変数ベクトルX(t)を0又は最小値に収束させるべく決定されたゲインKを運動モデルC4の出力である状態ベクトルX(t)に乗じた値U(t)が、(駆動装置のトルクに換算されて)加算器(C1a)に於いて、要求駆動トルクから差し引かれる(運動モデルC4の演算のために、運動モデルC4のトルク入力値にもフィードバックされる。(状態フィードバック)。)式(1a)及び(1b)で表されるシステムは、共振システムであり、任意の入力に対して状態変数ベクトルの値は、実質的には、システムの固有振動数を概ね中心した或るスペクトル特性を有する帯域の周波数成分のみとなる。かくして、U(t)の換算値、即ち、要求駆動トルク補償成分が要求駆動トルクから差し引かれるよう構成することにより、要求駆動トルクのうち、システムの固有振動数の成分、即ち、車体に於いてピッチ・バウンス振動を引き起こす成分が修正され、車体に於けるピッチ・バウンス振動が抑制されることとなる。車輪トルク推定器から送信されてくるTw(外乱)に於いてピッチ・バウンス振動を引き起こす変動が発生した場合には、そのTw(外乱)による振動が収束するよう駆動装置へ入力される要求トルク指令が−U(t)を用いて修正される。
なお、車体のバウンス方向及びピッチ方向の力学的運動モデルとして、例えば、図3(B)に示されている如く、図3(A)の構成に加えて、前輪及び後輪のタイヤのばね弾性を考慮したモデル(車体のばね上・下振動モデル)が採用されてもよい。前輪及び後輪のタイヤが、それぞれ、弾性率ktf、ktrを有しているとすると、図3(B)から理解される如く、車体の重心のバウンス方向の運動方程式とピッチ方向の運動方程式は、下記の数4の如く表される。
Figure 0004910794
ここに於いて、xf、xrは、前輪、後輪のばね下変位量であり、mf、mrは、前輪、後輪のばね下の質量である。式(4a)−(4b)は、z、θ、xf、xrとその時間微分値を状態変数ベクトルとして、図3(A)の場合と同様に、式(2a)の如き状態方程式を構成し(ただし、行列Aは、8行8列、行列Bは、8行1列となる。)、最適レギュレータの理論に従って、状態変数ベクトルの大きさが0を収束させるゲイン行列Kを決定することができる。実際の制振制御は、図3(A)の場合と同様である。
アイドル回転速度制御について
車両の駆動装置がガソリンエンジンである場合、既に述べた如く、エンジンの回転状態を安定化させるために、ISC部の制御下、ISC流量が、上記の要求駆動トルクに対応する目標吸入空気量に加えて、エンジンへ供給される。かかるISCに於いては、エンジンがアイドリング状態にある場合(車両の停止中)には、エンジンが安定的に回転を維持するための空気量がエンジンへ吸入されるようスロットル開度が設定される。また、車両の走行中に於いても、エンジンの負荷に対してエンジンの回転数が高い場合に吸入空気量が過少であると、エンジンの燃焼の不安定化、触媒の劣化、エンジンサージ等の操縦性不良等の問題が発生するため、エンジン回転数の増大とともにISC流量が増大するようスロットル開度が増大される。従って、車両の走行中の通常のガソリンエンジンに於いては、アイドル状態時のエンジン回転を安定化させる吸入空気量(第一の成分)を、図4(A)に例示されている如く、エンジン回転数の関数として決定される流量の増分(第二の成分)だけかさ上げした流量が、最終的なISC流量として常に供給される。そして、スロットル弁に於ける実際の開度は、その最終ISC流量を実現するよう決定されたスロットル開度(最終ISC開度 図4(B)参照)を固定値として、その最終ISC開度に、前記の要求駆動トルクに基づく吸入空気量に対応するスロットル開度が加算された値となるよう制御される。
制振制御のためのISCの修正
上記の説明から理解される如く、要求駆動トルクに重畳する制振制御による要求駆動トルク補償成分は、それが外乱入力に起因するものである場合には、運転者からの駆動要求とは独立的に(制振制御システムは、図示の例の如く、通常、線形システムである。)上下に振動する。従って、外乱の振れ幅が大きければ、運転者からの駆動要求が比較的小さく、即ち、エンジンが低負荷状態にあるときでも修正後(加算器C1aの通過後)の要求駆動トルクが上下に大きく振れる場合がある。しかしながら、従前のガソリンエンジンの駆動制御は、最終ISC流量又はこれに対応する最終ISC開度は、必ず維持されるよう制御されるよう構成されているので、制振制御の要求する駆動トルクが実現できない状態が発生することがある。
例えば、エンジンが低負荷状態にあるとき、即ち、運転者からの要求駆動トルクに対応するスロットル開度が小さく、従って、スロットル弁の実際の開度が最終ISC開度に比較的近い場合を考えると、制振制御による要求駆動トルク補償成分の振幅が小さければ、図5(A)に示されている如く、要求駆動トルク補償成分に対応するスロットル開度の成分は制限されることなく、スロットル弁の実際の開度に反映され、従って、期待される制振効果が得られることとなる。しかしながら、制振制御による要求駆動トルク補償成分の振幅が大きく、従って、図5(B)に示されている如く、要求駆動トルク補償成分の変動に対応するスロットル開度の指令値の成分が下側に振れて、修正後の要求駆動トルクが負になる状況(図中の点線にて示されている状態)に於いては、スロットル開度は、最終ISC開度よりも小さくなることが禁止されるので(要求駆動トルクに基づく吸入空気量及びこれに対応するスロットル開度が負値になることが禁止される。)、制振制御の要求に応じて小さくならず、その結果、吸入空気量が低減されず、制振制御の要求する駆動トルクの変動が実現されないこととなる。また、上記の如く、最終ISC開度の第二の成分は、エンジン回転数に依存して増大するので、エンジン回転数が高いほど或いは車速が高いほど、要求駆動トルクの反映されない範囲が拡大し、制振制御の要求が実現されない状態が発生し易くなり、制振効果が低下してしまうこととなる(図5の一点鎖線参照)。
そこで、本発明の駆動制御装置のISC部では、「発明の開示」の欄に記載されている如く、制振制御の実行中は、要求駆動トルク補償成分の振幅に対応してスロットル開度が、より小さい値まで変動できるようISC流量が低減される。
図6(A)は、本発明の駆動制御装置内のISC部に於いて、車両の運転中に所定のサイクル時間にて繰り返し実行される最終ISC流量及び最終ISC開度の設定処理をフローチャートの形式で表したものである。同図を参照して、ISC部内の設定処理に於いては、まず、従前のISCと同様に、車両の停止時のアイドル状態の回転を維持するためのISC流量、即ち、ISC流量の第一の成分が決定され(ステップ10)、次いで、制振制御が実行中か否か、即ち、ピッチ・バウンス振動の抑制のための要求駆動トルクの振動が発生しているか否かが判定される(ステップ20)。かかる判定に於いては、例えば、制振制御部に於ける要求駆動トルク補償成分U(C5の出力)及びその時間微分値を参照して、それらの絶対値が共に所定の微小量より小さいときに、即ち、実質的に0であるときに、制振制御が作動していないと判定するようになっていてよい。制振制御が実行されていないときは、図4(A)に例示されたマップを用いてエンジン回転数に基づきISC流量の第二の成分
(ステップ30)が決定される。そして、第一及び第二の成分を加算して、最終ISC流量が決定される(ステップ40)。
一方、ステップ10で、制振制御が実行中であると判定された場合には、制振制御の要求に基づいて変化するスロットル開度が、図5(B)に例示されている如く、ISC開度に達することにより、下方に変化できない状況が発生しているか否かが判定される(ステップ50)。かかる判定は、例えば、一つの態様として、スロットル弁に於ける実際の開度が(制振制御が実行されている状況で)最終ISC流量に対応する最終ISC開度に実質的に一致した状態が所定期間持続していることを検出することによりなされてよい。この場合、図6(B)に例示されている如く、スロットル弁アクチュエータへ送信される目標スロットル開度の値θstと、最終ISC流量に対応するISC開度θiscとの差が所定値(θo)以下であるときに(ステップ51)、カウンタをスタートし(ステップ52)、サイクルを繰り返す間にカウンタが所定値に達したときに(ステップ53)、スロットル弁に於ける実際の開度がISC開度θiscに達してそれ以上下方に変化できない状況になっていると判定されてよい。なお、スロットル開度がISC開度に制限される状況であることの判定は、所定の期間、制振制御による修正後の要求駆動トルクに対応する吸入空気量が実質的に0になっていることにより判定されてもよい。
かくして、スロットル開度がISC開度に達し、吸入空気量が更に低減することができないことが判定されると、ISC流量の第一の成分がそのまま最終ISC流量として設定され、ISC流量の第二の成分は、最終ISC流量から除外される(ステップ60)。これにより、最終ISC流量が低減され、ISC流量の第二の成分が除外された分だけ、要求駆動トルクに対応する吸入空気量の可変範囲が下側に拡大されることとなる。なお、かかるISC流量の低減処理に関し、理解されるべきことは、ISC流量の低減が実行されても、ISC流量の第一の成分は、維持されるという点である。この構成によれば、吸入空気量が車両の停止中のアイドル回転数を維持するのに必要な吸入空気量は最低限確保されることとなり、制振制御による過度の吸入空気量の変化によってエンジンの運転状態が著しく不安定になることが回避されることとなる。
かくして、最終ISC流量が決定されると(ステップ40、60)、その値が目標スロットル開度決定部55へ送信され(ステップ70)、要求駆動トルクに対応する吸入空気量と加算され、目標スロットル開度θstが決定される。
上記の処理に於いて、最終ISC流量は、一旦、低減された状態となると、制振制御が終了するまで、低減された状態に維持されてよい。かかる処理作動を達成するために、ステップ50でスロットル開度がISC開度に達していないと判定された場合、ISC流量の低減処理が既に実行されているか否かが判定され(ステップ65)、ISC流量の低減処理が既になされている場合には、ステップ60にてISC流量の第一の成分がそのまま最終ISC流量として設定される。そして、ISC流量の低減は、ステップ10に於いて、制振制御が実行されていないと判定されたときに解除される。なお、上記の構成に於いては、制振制御により要求によって、実際のスロットル開度が最終ISC開度を下回る場合から、ISC流量の低減が実行されるようになっているが、制振制御が開始された時点、即ち、ステップ20で制振制御が実行中と判定されて時点でISC流量の低減処理を実行するようになっていてもよい。その場合には、ステップ50、ステップ65は、省略される。
図7は、或る車速に於いて、上記のISC流量の設定に依って吸入空気量の可変範囲が如何に変化するかを模式的に示したものであり、同図の左側が、通常の状態、即ち、上記の如きISC流量の低減がなされていない状態であり、右側が、ISC流量の低減がなされた状態である。同図を参照して、車速が同じである場合には、ISC流量の大小によらず、(制振制御による吸気量の変動成分を考慮しない場合の)エンジンに吸入されるべき空気量は、同一となり、従って、実際の総吸入空気量は、ISC流量の低減処理の有無によらず、同一の値となる。また、既に述べた如く、最終ISC流量(最終ISC開度時)は、要求駆動トルクに対応するスロットル開度によらず、固定されることとなるので、要求駆動トルクに対応する変化する吸入空気量の可変範囲は、スロットル開度が最終ISC開度の時からスロットル弁全開時までの範囲となる。従って、もし通常の状態(図中、左側)に於いて、(制振制御による吸気量の変動成分を考慮しない)要求駆動トルクが比較的小さい場合には、実際の総吸入空気量は、最終ISC流量に近接した状態となり、これに制振制御による吸気量の変動成分が重畳され、その成分が下側に振れると、すぐに最終ISC流量に達し、吸入空気量の変化が制限されることとなる。
一方、図中、右側の如く、最終ISC流量から第二の成分を除去し又は実質的に0とし、これに対応して最終ISC開度が設定されている場合には、実際の総吸入空気量は、通常の状態よりも相対的に最終ISC流量から離れていることになる。従って、この場合には、制振制御による吸気量の変動成分が重畳されても、総吸入空気量が最終ISC流量に到達する可能性が低くなり、従って、制振制御の要求が反映され易くなるので、制振効果がより良好に発揮されるようになる。
ところで、図7を参照して、最終ISC流量が低減された場合、実際の吸入空気量は、その可変幅は拡大されるが、その絶対的な値は変化しない。即ち、最終ISC流量の低減処理は、言わば、運転者の駆動要求操作のゼロ点又は始点を低減することに相当する。従って、最終ISC流量が低減された場合、同じ車速を達成するためには、運転者はより大きな駆動要求操作をすることが必要となり、運転者の操作負担が増大することとなる。そこで、そのような操作負担を軽減するために、上記の如き最終ISC流量が低減された場合には、図8に例示されている如く、運転者の駆動要求操作量(アクセルペダルの踏込量)に対するスロットル開度の応答量が増大するよう制御の構成が修正されてよい。
運転者の駆動要求操作量に対するスロットル開度の応答量の増大は、運転者の駆動要求操作量がスロットル開度に反映されるまでの過程の任意の段階、例えば、駆動要求操作量から要求駆動トルクに変換する段階、或いは、要求駆動トルクを吸入空気量の目標値に変換する段階でなされてよい。もっとも、かかる制御の構成の修正は、制振制御による要求駆動トルク補償成分については、最終ISC流量の低減処理の有無によらず、増幅されることなく、スロットル開度に反映されるよう為される。
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
上記の実施形態は、スロットル弁を調節してISC流量を供給するよう構成されているが、吸気管にスロットル弁をバイパスする流路が設けられ、そのバイパス流路の流量をISC弁により制御するようになっていてもよい。
また、上記の実施形態に於ける車輪トルク推定値が車輪速から推定されるものであるが、車輪トルク推定値が車輪速から以外のパラメータから推定されるものであってもよい。また、上記の実施形態に於ける制振制御は、運動モデルとしてばね上又はばね上・ばね下運動モデルを仮定して最適レギュレータの理論を利用した制振制御であるが、本発明の概念は、車輪トルクを利用するものであれば、ここに紹介されているもの以外の運動モデルを採用したもの或いは最適レギュレータ以外の制御手法により制振を行うものにも適用され、そのような場合も本発明の範囲に属する。
図1Aは、本発明による駆動制御装置の好ましい実施形態が実現される自動車の模式図を示している。図1Bは、図1Aの電子制御装置の内部構成をより詳細な模式図である。 図2Aは、本発明の好ましい実施形態の一つである駆動制御装置の制振制御部の作動に於いて抑制される車体振動の状態変数を説明する図である。図2Bは、本発明の好ましい実施形態に於ける制振制御の構成を制御ブロック図の形式で表した図である。 図3は、本発明の好ましい実施形態の制振制御部に於いて仮定される車体振動の力学的運動モデルを説明する図である。図3Aは、ばね上振動モデルを用いた場合であり、図3Bは、ばね上・ばね下振動モデルを用いた場合である。 図4(A)は、ISC流量の、エンジン回転数に応じて増大する成分(第二の成分)を決定するためのマップである。図4(B)は、最終ISC流量を達成するスロットル開度(最終ISC開度)を決定するためのマップである。 図5は、制振制御が実行されている場合の実際のスロットル弁に於ける開度の時間変化を示す。(A)は、制振制御による要求駆動トルク補償成分の変動が比較的小さい場合の例であり、(B)は、要求駆動トルク補償成分の変動が比較的大きい場合である。図中、「運転者駆動要求相当開度」とは、運転者の駆動要求に対応する要求駆動トルクに対応する吸入空気量(制振制御が実行されない場合)を達成するスロットル開度である。スロットル弁の開度は、ISC開度より小さくなることが禁止されるため、要求駆動トルク補償成分の変動が比較的大きく、要求駆動トルクがISC開度を下回る開度を要求しても実際のスロットル弁の開度は、ISC開度以下にはならず、ISC開度を下回る分に相当する要求駆動トルク補償成分の変動(点線で示された部分)は無視されることとなる。(B)に於いて、一点鎖線は、エンジン回転数が増大した場合にISC開度が増大し、要求駆動トルクに対応して要求される開度の変動幅が更に制限されることを示している。 図6(A)は、本発明のISC部に於けるISC流量設定の処理をフローチャートの形式で表したものである。図6(B)は、図6(A)のステップ50に於けるスロットル開度がISC開度に到達し、更に下方に変化できない状況が発生しているか否かを判定する処理をフローチャートの形式で表したものである。 図7は、図6のISC部のISC流量の設定によって吸入空気量の可変範囲が如何に変更されるかを示す図である。 図8は、アクセルペダルの踏込量とスロットル開度の関係を示す図であり、図6のISC部のISC流量の低減処理が行われた場合(ISC流量低減あり)には、通常の状態(ISC流量低減なし)よりも、或るアクセルペダルの踏込量に対するスロットル開度が増大される場合の例を示している。アクセルペダルの踏込量に対するスロットル開度の増大量は、実験的に又は理論的に任意に決定されてよい。
符号の説明
10…車体
12FL、FR、RL、RR…車輪
14…アクセルペダル
20…駆動装置
22…ガソリンエンジン
22a…スロットル弁
30FL、FR、RL、RR…車輪速センサ
50…電子制御装置
50a…駆動制御装置
50b…制動制御装置

Claims (5)

  1. 車両の駆動出力を制御して前記車両のピッチ又はバウンス振動を抑制する制振制御を実行する車両のガソリンエンジンの駆動制御装置であって、前記車両の車輪と路面との接地個所に於いて発生する前記車輪に作用する車輪トルクに基づいて前記ピッチ又はバウンス振動振幅を抑制するよう前記エンジンの駆動トルクを制御する制振制御部と前記車両の停止時に所定のエンジン回転数を達成するよう予め定められた第一の成分と、前記エンジン回転数に基づいて決定される第二の成分との和であるアイドル回転速度制御吸入空気量を決定前記エンジンへ供給される吸入空気量が前記アイドル回転速度制御吸入空気量よりも低くならないようにするアイドル回転速度制御部とを含み、前記制振制御部による制振制御の実行時に前記アイドル回転速度制御部が前記アイドル回転速度制御吸入空気量を低減することを特徴とする車両の制振制御装置。
  2. 請求項1の装置であって、前記制振制御部による制振制御が開始されたときに、前記制振制御の開始以前に比して前記アイドル回転速度制御吸入空気量が低減されることを特徴とする装置。
  3. 請求項1の装置であって、前記制振制御部による制振制御の実行中に、前記吸入空気量が前記アイドル回転速度制御吸入空気量に一致したと判定されたときに、前記アイドル回転速度制御吸入空気量が低減されることを特徴とする装置。
  4. 請求項1の装置であって、前記アイドル回転速度制御吸入空気量が前記制振制御部による制振制御の実行時に前記アイドル回転速度制御部によって前記アイドル回転速度制御吸入空気量が低減される際には、前記第二の成分が0に低減されることを特徴とする装置。
  5. 請求項1の装置であって、前記エンジンの要求駆動トルクを決定する要求駆動トルク決定部と、前記要求駆動トルクに基づいて目標吸入空気量を決定する吸入空気量決定部とを含み、前記制振制御部が前記ピッチ又はバウンス振動振幅を抑制するべく算出された要求駆動トルク補償成分により前記要求駆動トルクを修正し、前記吸入空気量決定部が前記修正された要求駆動トルクに基づいて目標吸入空気量を決定し、前記制振制御部による制振制御の実行時に前記アイドル回転速度制御吸入空気量が低減される際には、前記修正された要求駆動トルクに基づいて決定される目標吸入空気量を増大することを特徴とする装置。
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