JP5260581B2 - 多孔質電極基材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
従来は、機械強度を強くするために、炭素短繊維と樹脂炭化物とを密に結着させるなどの方法がとられていたが、ガス透過度が小さくなり、燃料電池に組んだ時の性能が落ちてしまうことが多かった。一方、ガス透過度を大きく維持しようとすると機械強度が弱くなり、取り扱い方法に制限があるものとなった。
特許文献2には、安価な多孔質電極基材の製造方法が記載されている。この方法で得られる多孔質電極基材は、ウェブが厚み方向にも配向しているため、厚み方向の導電性やガス透過度は、満足できる値であるが、機械強度が弱く、厚み方向に配向した繊維が電解質膜を突き破ってしまう、一度プレスすると脆くなってしまうなど取り扱いの面で課題があった。
特許文献3には、多孔質炭素基材のひび割れを防止し、機械強度を上げるため、細孔直径10μm以下の細孔容積が0.05〜0.16cc/gである多孔質電極基材が記載されている。しかし、このように10μm以下の細孔が少ないものでは、保水性が小さいため水分管理が難しく、燃料電池の発電が十分に行えないと考えられる。
炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などいずれであって良いが、ポリアクリロニトリル系炭素繊維が好ましく、特に用いる炭素繊維がポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維のみからなることが多孔質炭素電極基材の機械的強度が比較的高くすることができるので好ましい。
炭素短繊維の直径は、3〜9μmであることが、炭素短繊維の生産コスト、分散性、最終多孔質炭素電極基材の平滑性の面から必要である、4μm以上、8μm以下であることが好ましい。
炭素短繊維の繊維長は、後述のバインダーとの結着性や分散性の点からは、2〜12mmが好ましい。
本発明において、「実質的に二次元平面内においてランダムな方向に分散」とは、炭素短繊維がおおむね一つの面を形成するように横たわっているという意味である。これにより炭素短繊維による短絡や炭素短繊維の折損を防止することができる。
本発明において、樹脂炭化物は、樹脂を炭化してできた、炭素短繊維同士を結着する物質である。樹脂としては、フェノール樹脂など炭素繊維との結着力が強く、炭化時の残存重量が大きいものが好ましいが、特に限定はされない。
この樹脂炭化物は、樹脂の種類や炭素繊維紙への含浸量により、最終的に多孔質炭素電極基材に炭化物として残る割合が異なる。
多孔質電極基材を100質量%とした時に、その中の樹脂炭化物が25〜40質量%であることが好ましく、更に好ましい下限及び上限は、それぞれ28質量%および34質量%である。
炭素短繊維同士を完全に結着し多孔質電極基材の機械的強度を十二分なものに保つためには、樹脂炭化物が25質量%以上必要である。完全に結着されなかった炭素短繊維は、多孔質電極基材から脱落し、電解質膜に刺さり短絡の原因となることがある。一方、多孔質電極基材中の炭素短繊維の比率を高く保ち、樹脂の硬化時の加圧により細孔が樹脂により埋められることがないよう、40質量%以下とすることが有利である。
本発明では、まず、従来の多孔質電極基材と同様に、炭素短繊維同士が不定形の樹脂炭化物で結着されていることが必要である。
本発明では、不定形の樹脂炭化物とともに、機械強度と反応ガス・水分管理を両立させるという観点から、炭素短繊維と炭素短繊維とを架橋する最小繊維径3μm以下で網状の樹脂炭化物の存在が必要である。
この網状の樹脂炭化物は、炭素短繊維とは外観が異なり、さらに、網状の樹脂炭化物を構成する炭素の配向は、炭素短繊維中の炭素の配列が非常によく配向しているのに対して、上述の不定形の樹脂炭化物と同様である。
炭素短繊維と炭素短繊維が最小繊維径3μm以下で網状の樹脂炭化物で架橋されている様子を図1に示した。図1のように炭素短繊維間に網状の樹脂炭化物を架橋させることにより、直径2μm程度の小さな孔と直径50μm程度の大きな孔両方を混在させることができる。細い網状の樹脂炭化物は、炭素繊維に比して補強効果はあまり大きくないが、細孔を細分化するため、ガス透過度を小さくする傾向にある。しかし、高加湿条件下で小さな孔が発生水を吸収しても比較的大きな孔が存在しているため、ガスが流れなくなり性能が急に悪くなる(いわゆるフラッディング)ことはない。ガス透過度の高い従来の多孔質電極基材は、その上に形成される触媒層や高分子膜が乾きやすい問題があったが、網状の樹脂炭化物の架橋を有する本発明の多孔質電極基材では、網状の樹脂炭化物が多数の小さい孔を形成しているので、保水性が良く、反応ガスの供給および排出のバランスも安定なので、燃料電池に組んだときの性能を向上させることができる。
本発明の多孔質電極基材は、水銀圧入法によって細孔の半径の分布を測定したとき、細孔の半径が10μm以下にも、50μm以上にも分布のピークを有することが好ましい。これにより本発明の多孔質電極基材は、反応ガスを反応部(触媒層)に効率よく送り届ける機能だけでなく、反応ガスに含まれている水や発電により発生する水を効率よく排出す
る機能も有することとなる。反応ガスを効率よく反応部(触媒層)に送り届けるためには50μm以上の半径を有する細孔の存在が有効であり、効率よく水を排出するためには、大量に水分が発生した時に水分を一時的に取り込むための孔として10μm以下の半径を有する細孔の存在が有効である。
本発明の多孔質電極基材は、炭素短繊維と炭素短繊維とが不定形の樹脂炭化物で結着されてできる大きい細孔と、炭素短繊維と炭素短繊維とが網状の樹脂炭化物で架橋されて形成される小さい孔と、を有するため、上述の細孔半径の分布を有することが可能となる。
本発明におけるガス透過度とは、JIS規格P−8117に準拠した方法によって求められる値で、多孔質電極基材のガスの抜けやすさを表す。多孔質電極基材を3mmφの孔のあいたセルに挟み、孔から1.29kPaの圧力で200mLのガスを流し、ガスが透過するのにかかった時間を測定することで算出できる。
本発明の多孔質電極基材の好ましいガス透過度は、2000m/sec・MPa以下で、さらに好ましくは、1900m/sec・MPa以下である。本発明の多孔質電極基材では、網状の樹脂炭化物の存在により比較的ガスの透気度が小さくなっている。本発明の多孔質電極基材のガス透過度を大きくするためには、かなり目付を小さくするか嵩密度を下げる必要がある。本発明では、多孔質電極基材のガス透過度が2000m/sec・MPa以下とすることにより、目付が小さくても割づらく、また、嵩密度が小さくても炭素短繊維が厚み方向に立ってないものとすることができる。
本発明の多孔質電極基材は、76.2mm以下の直径を有する紙管に巻けることが、製造に用いる設備、梱包品のコンパクト化が図れるという点から好ましい。紙管サイズが小さい場合は、持ち運びが容易であるという点でも好ましい。
本発明の多孔質電極基材の製造方法は、実質的に二次元平面においてランダムな方向に分散せしめられた繊維直径が3〜9μmの炭素短繊維および濾水度が400〜900mlのフィブリル化されたポリエチレン繊維からなる炭素繊維紙に樹脂を含浸したのち樹脂を炭素化する多孔質電極基材の製造方法である。
製造コストの低下ができるという点から全工程にわたり多孔質電極基材の製造が連続的に行なわれることが好ましい。
本発明では、上述の樹脂炭化物による、
1)炭素短繊維同士が不定形の樹脂炭化物で結着
2)最小繊維径3μm以下で網状の樹脂炭化物により架橋された構造をとるためにフィブリル状物を使用する。
フィブリル状物は、樹脂の炭素化により消失するが、フィブリル状物の周りに付着した樹脂が樹脂炭化物として残り、樹脂炭化物の網状構造形成に寄与する。
フィブリル状物としては、濾水度が400〜900ml、フィブリル化されたポリエチレン繊維であることが必要である。濾水度を400ml以上とすることにより、多孔質電極基材の表面状態を良好なものとすることができる。また、炭素繊維紙を抄紙によって製造する場合には、抄紙時の水抜けが良好なものとなる。一方、900ml以下とすることにより、フィブリル状物を形成する繊維の直径を適切なものとすることができ、多孔質電極基材の表面が粗になることがなく、燃料電池としたときに他の部材との接触を良好に保つことができる。
フィブリル状物は、炭素短繊維と一緒に分散し、炭素短繊維の再収束を防止する役割も果たす。また、樹脂によっては、樹脂の硬化に縮合水を生成するものもあるが、フィブリル状物には、その水を吸収、排出する役割も期待できる。そのため、水との親和性にも優れているものが好ましい。炭素繊維との親和性、取り扱い性、コストの点からフィブリル化されたポリエチレン繊維が好ましい。
炭素繊維紙の製造を抄紙によって行う場合は、フィブリル状物が抄紙時の分散媒に不溶でかつ膨潤しないことが必須である。分散媒に溶解するフィブリル状物を用いた場合は、樹脂が付着する段階で形状が既に変化しているため網状の樹脂炭化物を形成することができない。
架橋構造を効率的に形成するという点からフィブリル状物を構成する繊維の表面自由エネルギーが使用する炭素短繊維の表面自由エネルギーより大きいものが好ましい。フィブリル状物を構成する繊維の表面自由エネルギーが炭素短繊維より大きいことで、含浸樹脂が繊維に優先的に付着し、炭素化後、網状の架橋構造が形成されやすくなる。
炭素繊維紙中のフィブリル状物の重量比率は、10〜70質量%であることが好ましい。フィブリル状物が10質量%以上とすることで、網状の樹脂炭化物を十分に発達させることができ、多孔質電極基材に十分な機械強度とガス透過度を付与できる。また、フィブリル状物は、樹脂を押圧下で硬化するときに生じるうねりやシワ等の外力に打ち勝つための補強材としてもはたらくすため、10質量%以上であることが好ましい。一方、フィブリル状物が70質量%以下としておけば、炭素短繊維に付着する樹脂の不足により多孔質電極基材が崩れやすくなったり、厚み制御が難しくなるのを防ぐことができる。
本発明の多孔質電極基材の製造方法では、炭素繊維紙の構成材料として有機高分子化合物を加えることができる。有機高分子化合物は、炭素繊維紙中で各成分をつなぎとめるバインダーとしてはたらく。有機高分子化合物としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、などを用いることができる。その中でも、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、セルロース、ポリ酢酸ビニル等が好ましく用いられる。特にポリビニルアルコールは抄紙工程での結着力に優れるため、炭素短繊維の脱落が少なくバインダーとして好ましい。本発明では、有機高分子化合物を繊維状として用いることも可能である。
炭素繊維紙は抄紙によって好適に得られる。抄紙方法としては、液体の媒体中に炭素短繊維を分散させて抄造する湿式法や、空気中に炭素短繊維を分散させて降り積もらせる乾式法が適用できる。中でも湿式法が好ましい。また、前述したように炭素短繊維同士の開繊、再収束を防止する役割を果たすフィブリル状物合成繊維を適当量混ぜることが必要であり、炭素短繊維同士を結着させるバインダーとして適当量の有機高分子物質を混ぜることが好ましい。
フィブリル状物および必要に応じて有機高分子化合物を炭素短繊維に混入する方法としては、炭素短繊維とともに水中で攪拌分散させる方法と、直接混ぜ込む方法があるが、均一に分散させるためには水中で拡散分散させる方法が好ましい。このように有機高分子化合物を混ぜることにより、炭素繊維紙の強度を保持し、その製造途中で炭素繊維紙から炭素短繊維が剥離したり、炭素短繊維の配向が変化したりするのを防止することができる。
また、抄紙は連続で行なう方法やバッチ式で行なう方法があるが、本発明において行なう抄紙は、特に目付のコントロールが容易であるという点と生産性および機械的強度の観点から連続抄紙が好ましい。
本発明で樹脂として用いる樹脂組成物は、常温において粘着性、あるいは流動性を示す物でかつ炭素化後も導電性物質として残存する物質が好ましく、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、アラミド樹脂、ピッチ等を単体もしくは混合物として用いることができる。前記フェノール樹脂としては、アルカリ触媒存在下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって得られるレゾールタイプフェノール樹脂を用いることができる。
又、レゾールタイプのフェノール樹脂に公知の方法によって酸性触媒下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって生成する、固体の熱融着性を示すノボラックタイプのフェノール樹脂を溶解混入させることもできるが、この場合は硬化剤、例えばヘキサメチレンジアミンを含有した、自己架橋タイプのものが好ましい。
フェノール類としては、例えば、フェノール、レゾルシン、クレゾール、キシロール等が用いられる。アルデヒド類としては、例えばホルマリン、パラホルムアルデヒド、フルフラール等が用いられる。また、これらを混合物として用いることができる。これらはフェノール樹脂として市販品を利用することも可能である。
炭素繊維紙に付着する樹脂の樹脂量は、炭素短繊維100質量部に対し、70〜120質量部の樹脂を付着させる。前述した、水やガスの供給および排出がスムーズに行なわれ、曲げ強度に優れた電極基材を製造するには、樹脂炭化物の比率が20〜30質量%になるように樹脂を付着しておくため、70〜120質量部の樹脂を付着させる。
炭素繊維紙に樹脂を含浸する方法としては、炭素繊維紙に樹脂を含浸させることができればよく、特段の制限はないが、コーターを用いて炭素繊維紙表面に樹脂を均一にコートする方法、絞り装置を用いるdip−nip方法、もしくは炭素繊維紙と樹脂フィルムを重ねて、樹脂を炭素繊維紙に転写する方法が、連続的に行なうことができ、生産性および長尺ものも製造できるという点で好ましい。
樹脂を含浸された炭素繊維紙は、そのまま炭素化することも可能である。しかし、炭素化する前に樹脂を硬化することが樹脂の炭素化時の気化を抑制し、多孔質電極基材の強度向上のために好ましい。硬化は、樹脂を含浸された炭素繊維紙を均等に加熱できる技術であれば、いかなる技術も適用できる。その例としては、樹脂を含浸された炭素繊維紙の上下両面から剛板を重ね、加熱する方法や上下両面から熱風を吹き付ける方法、また連続ベルト装置や連続熱風炉を用いる方法が挙げられる。
硬化された樹脂は、続いて炭素化される。多孔質電極基材の導電性を高めるために、不活性ガス中で炭素化する。炭素化は、炭素繊維紙の全長にわたって連続で行なうことが好ましい。電極基材が長尺であれば、電極基材の生産性が高くなるだけでなく、その後工程のMembrane Electrode Assembly(MEA)製造も連続で行なうことができ、燃料電池のコスト低減化に大きく寄与することができる。
炭素化は、不活性処理雰囲気下にて1000〜3000℃の温度範囲で、炭素繊維紙の全長にわたって連続して焼成処理することが好ましい。本発明の炭素化においては、不活性雰囲気下にて1000〜3000℃の温度範囲で焼成する炭素化処理の前に行われる、300〜800℃の程度の不活性雰囲気での焼成による前処理を行っても良い。
炭素繊維紙に樹脂を付着した後、加熱により、炭素繊維紙表面を平滑にする工程を含んでいることが好ましい。炭素繊維表面を平滑する方法としては、特に限定されないが、上下両面から平滑な剛板にて熱プレスする方法や連続ベルトプレス装置を用いて行なう方法がある。中でも連続ベルトプレス装置を用いて行なう方法が、長尺の多孔質電極基材ができるという点で好ましい。多孔質電極基材が長尺であれば、多孔質電極基材の生産性が高くなるだけでなく、その後のMEMBRANE ELECTRODE ASSEMBLY(MEA)製造も連続で行なうことができ、燃料電池のコスト低減化に大きく寄与することができる。表面を平滑にする工程がない場合も良好な強度とガス透過度とをともに有する多孔質電極基材が得られるが、その多孔質電極基材に大きな起伏があるため、セルを組んだとき多孔質電極基材と周辺基材との接触が十分でなく好ましくない。
連続ベルト装置におけるプレス方法としては、ロールプレスによりベルトに線圧で圧力を加える方法と液圧ヘッドプレスにより面圧でプレスする方法があるが、後者の方がより平滑な多孔質電極基材が得られるという点で好ましい。効果的に表面を平滑にするためには、樹脂が最も軟化する温度でプレスし、その後加熱または冷却により樹脂を固定する方法が最もよい。炭素繊維紙に含浸される樹脂の比率が多い場合は、プレス圧が低くても平滑にすることが容易である。このとき必要以上にプレス圧を高くすることは、多孔質電極基材としたときその組織が緻密になりすぎる、激しく変形するなどの問題が生じるのであまり好ましくない。プレス圧が高く緻密になりすぎた場合は、焼成時に発生するガスがうまく排出されず多孔質電極基材の組織を壊してしまうこともある。剛板に挟んで、又、連続ベルト装置で炭素繊維紙に含浸した樹脂の硬化を行う時は、剛板やベルトに樹脂が付着しないようにあらかじめ剥離剤を塗っておくか、炭素繊維紙と剛板やベルトとの間に離型紙を挟んで行なうことが好ましい。
実施例中の各物性値等は以下の方法で測定した。
多孔質電極基材中の炭素繊維紙の抄紙時の長手方向が試験片の長辺になるように、80×10mmのサイズに10枚切り取る。曲げ強度試験装置を用いて、支点間距離を2cmにし、歪み速度10mm/minで荷重をかけていき、試験片が破断したときの荷重を測定した。10枚の試験片の平均値である。
JIS規格P−8117に準拠した方法によって求められる。多孔質電極基材の試験片を3mmφの孔を有するセルに挟み、孔から1.29kPaの圧力で200mLのガスを流し、ガスが透過するのにかかった時間を測定するし、以下の式より算出した。
ガス透過度(m/sec・MPa)
=気体透過量(m3)/気体透過孔面積(m2)/透過時間(sec)/透過圧(MPa)
水銀圧入法により、細孔容積と細孔半径の細孔分布を求め、その50%の細孔容積を示す時の半径を電極基材の平均細孔径とした。なお、用いた水銀ポロシメーターは、Quantachrome社製 Pore Master−60である。
多孔質電極基材の厚みは、厚み測定装置ダイヤルシックネスゲージ7321(ミツトヨ製)を使用し、測定した。このときの測定子の大きさは、直径10mmで測定圧力は1.5kPaで行った。
多孔質電極基材中の炭素繊維紙の抄紙時の長手方向が試験片の長辺になるように、100×20mmのサイズに切り取る。電極基材の片面に2cmの間隔をあけて銅線をのせ、10mA/cm2の電流密度で電流を流した時の抵抗を測定した。
多孔質電極基材の厚さ方向の電気抵抗(貫通方向抵抗)は、試料を銅板にはさみ、銅板の上下から1MPaで加圧し、10mA/cm2の電流密度で電流を流したときの抵抗値を測定し、次式より求めた。
貫通抵抗(Ω・cm2)=測定抵抗値(Ω)×試料面積(cm2)
樹脂炭化物の重量比は、得られた多孔質電極基材の目付と使用した炭素短繊維の目付から次式より算出した。
樹脂炭化物重量比(質量%)
=[多孔質電極基材目付(g/m2)−炭素短繊維目付(g/m2)]×100÷多孔質電極基材目付(g/m2)
平均繊維径が7μm、平均繊維長が3mmのポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維と平均繊維径が4μm、平均繊維長が3mmのPAN系炭素繊維を50:50(質量比)で混合した炭素短繊維を用意した。
有機高分子化合物として、ポリビニルアルコール(PVA)の短繊維(クラレ株式会社製VBP105−1 カット長3mm)を用意した。
さらにフィブリル状物として、ポリエチレンパルプ(三井化学株式会社製SWP 濾水度450ml、JIS P8121のパルプ濾水度試験法(1)カナダ標準型で測定)を用意した。
炭素短繊維を湿式短網連続抄紙装置のスラリータンクで水中に均一に分散解繊し、十分に分散したところにPVA短繊維およびポリエチレンパルプを炭素短繊維100質量部に対して、それぞれ13質量部、38質量部となるように均一に分散し、送り出した。
送り出されたウェブを短網板に通し、ドライヤー乾燥後、坪量28g/m2、長さ100mの炭素繊維紙Aを得た(各組成の坪量は表1に記載、以下同じ)。分散状態は良好であった。
次に炭素繊維紙Aをフェノール樹脂(フェノライトJ−325・大日本インキ化学株式会社製)の40質量%メタノール溶液が付着したローラーに炭素繊維紙を均一に片面ずつ接触させた後、連続的に熱風を吹きかけ乾燥した。坪量47g/m2の樹脂付着炭素繊維紙を得た。このとき炭素短繊維100質量部に対し、フェノール樹脂を100質量部付着した。
次に、この樹脂付着炭素繊維紙を2枚貼り合せて一対のエンドレスベルトを備えた連続式加熱プレス装置(ダブルベルトプレス装置:DBP)にて連続的に加熱し、表面が平滑化されたシートを得た。(シート厚み:200μm、幅:30cm、長さ100m)このときの予熱ゾーンでの予熱温度は150℃、予熱時間は5分であり、加熱加圧ゾーンでの温度は250℃、プレス圧力は線圧8.0×104N/mであった。なお、シートがベルトに貼り付かないように2枚の離型紙の間に挟んでDBPを通した。
その後、このシートを、窒素ガス雰囲気中にて500℃の連続焼成炉にて5分間フェノール樹脂の硬化処理および前炭素化したのち、窒素ガス雰囲気中にて2000℃の連続焼成炉において5分間加熱し、炭素化することで長さ100mの電極基材を連続的に得て、外径30cmの円筒型紙管に巻き取った。炭素繊維の分散は良好で、取り扱いやすい電極基材であった。評価結果を表に示した。
表1にそれぞれ記載された条件とする以外は、実施例1と同様に操作し、表面が平滑な多孔質電極基材を得た。評価結果を表2に示した。実施例3で得られた多孔質電極基材の細孔分布を図5に示す。網状の樹脂炭化物の存在により2本のピークが見られ、細孔の分布範囲が広くなっている。さらに、この多孔質電極基材を用いて固体高分子型燃料電池の単セルを作成し、電池特性を評価したところ80℃の加湿条件において安定した性能が得られた。結果を図6に示す。
実施例2において、ポリエチレンパルプの添加量を0とするほかは、実施例2と同様にして、坪量26g/m2、長さ100mの炭素繊維紙を得た。分散状態は良好であった。次に、実施例2と同様にして坪量48g/m2の樹脂付着炭素繊維紙を得た。これ以降は、実施例2と同様の方法にて電極基材を得た。ガス透過性には優れているが、脆く、繊維の脱落が見られた。
バッチの抄紙装置に炭素短繊維100質量部に対してポリビニルアルコールの短繊維が15質量部になるように調整したスラリーを入れて攪拌し、漉き取り30g/m2の炭素繊維紙を得た。また、炭素繊短繊維100質量部に対し、フェノール樹脂を150質量部付着して坪量69g/m2の樹脂付着炭素繊維紙を得た。この樹脂付着炭素繊維紙を2枚張り合わせ、180℃にて10分間・0.2MPaにてプレスし、樹脂を硬化させた。これを不活性ガス中2000℃にて炭素化処理することにより電極基材を得た。抵抗が低く
、ガス透過度も高いサンプルであった。しかし、電池特性を実施例3のサンプルと比較したところ性能があまり高くなかった。細孔分布からも分かるが、この電極基材には小さい孔が少ないため電極内の水分の管理能があまり高くないためこのような結果になったと思われる。
フィブリル状物として、木材パルプ(濾水度550ml)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で電極基材を得た。表面が平滑な電極基材であったが、図2からも分かるが、この電極基材には小さい孔が少ないため電極内の水分の管理能があまり高くないため、電池にしたときの性能があまり高くない。評価結果を表に示した。
炭素短繊維として、平均繊維径が4μm、平均繊維長が3mmのポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維を使用した以外は、比較例3と同様の方法で電極基材を得た。表面が平滑な電極基材であったが、この電極基材には小さい孔が少ないため電極内の水分の管理能があまり高くないため、電池にしたときの性能があまり高くない。評価結果を表に示した。
フィブリル状物として、麻パルプ(濾水度350ml)を使用した以外は、比較例3と同様の方法で電極基材を得た。表面が平滑な電極基材であったが、この電極基材には小さい孔が少ないため電極内の水分の管理能があまり高くないため、電池にしたときの性能があまり高くない。評価結果を表に示した。
Claims (1)
- 実質的に二次元平面においてランダムな方向に分散せしめられた繊維直径が3〜9μmで繊維長が2〜12mmの炭素短繊維、濾水度が400〜900mlのフィブリル化されたポリエチレン繊維10〜70質量%、およびポリビニルアルコールからなる炭素繊維紙に、炭素短繊維100質量部に対し70〜120質量部の樹脂を含浸したのち樹脂を炭素化する多孔質電極基材の製造方法。
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