以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、電子写真方式により画像を形成する画像形成装置(以下、「プリンタ」という。)に適用した場合について説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本実施の形態に係るプリンタ10の全体構成を説明する。
同図に示されるように、本実施の形態に係るプリンタ10は、当該プリンタ10の外壁を構成する筐体12の内部に、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各トナーに対応した光ビームを出射する光走査装置14Y,14M,14C,14Kが固定されている。また、光走査装置14Kに隣接する位置に、プリンタ10の各部の動作を制御する制御部70が設けられている。なお、光走査装置14Y,14M,14C,14Kを含め、符号の末尾に‘Y’,‘M’,‘C’,‘K’の何れかの文字が付加されている部位は、付加されている文字に対応する色に対応するものであることを表す。
光走査装置14Y,14M,14C,14Kは、光源から出射された光ビームを図示しない回転多面鏡(ポリゴンミラー)で走査するとともに、反射ミラー等の複数の光学部品で反射して、対応する色のトナーに対応した光ビーム16Y,16M,16C,16Kを出射する。
光ビーム16Y,16M,16C,16Kは、それぞれ対応する各感光体18Y,18M,18C,18Kに導かれる。各感光体18Y,18M,18C,18Kは、図示しないモータ及びギア等を有する駆動手段によって、矢印A方向に回転する。
感光体18Y,18M,18C,18Kの回転方向上流側には、感光体18Y,18M,18C,18Kの表面を帯電する帯電器20Y,20M,20C,20Kが設けられている。
また、感光体18Y,18M,18C,18Kの回転方向下流側には、Y,M,C,Kの各トナーをそれぞれ感光体18Y,18M,18C,18K上に現像する現像器22Y,22M,22C,22Kが設けられている。
感光体18Y,18M,18C,18Kの回転方向で、現像器22Y,22M,22C,22Kの下流側には、現像されたトナー像が一次転写される中間転写ベルト28が配置されている。
中間転写ベルト28は、ポリイミドあるいはポリアミド等の樹脂にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の無端ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は106〜1014Ωcmとなるように形成されており、その厚みは例えば0.1mm程度に構成されている。
感光体18Y,18M,18C,18Kと中間転写ベルト28が対向する位置で中間転写ベルト28の内側には、感光体18Y,18M,18C,18K上に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト28に転写する一次転写ロール24Y,24M,24C,24Kが配置されている。この一次転写ロール24Y,24M,24C,24Kによって、感光体18Y,18M,18C,18Kから中間転写ベルト28に一次転写を行う一次転写部25が構成されている。
一次転写ロール24Y,24M,24C,24Kは、図示しないシャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とを有している。ここで、上記シャフトは、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。また、上記スポンジ層は、カーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5〜108.5Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。
一次転写ロール24Y,24M,24C,24Kは、中間転写ベルト28を挟んで各感光体18Y,18M,18C,18Kに圧接されている。一次転写ロール24Y,24M,24C,24Kには、図示しない電圧印加手段によって対応する色のトナーの帯電極性(本実施の形態では、マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加される。これにより、各々の感光体18Y,18M,18C,18K上のトナー像が中間転写ベルト28に順次、静電吸引され、中間転写ベルト28上において重畳されたトナー像が形成される。
さらに、感光体18Y,18M,18C,18Kの回転方向下流側には、感光体18Y,18M,18C,18K上の残留トナーが除去されるクリーナ26Y,26M,26C,26Kが設けられている。
一方、中間転写ベルト28の内側には、定速性に優れたモータ(図示省略。)により駆動されて中間転写ベルト28を移動させる駆動ロール30と、各感光体18Y,18M,18C,18Kの配列方向に沿って略直線状に延び、中間転写ベルト28を支持する支持ロール32が設けられている。これにより、中間転写ベルト28は、矢印B方向に所定の速度で循環駆動される。
また、中間転写ベルト28の内側には、中間転写ベルト28に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト28の蛇行を防止するテンションロール34が設けられている。
また、中間転写ベルト28の移動方向下流側には、中間転写ベルト28上のトナー像を記録用紙P上に転写する二次転写部42が設けられている。
二次転写部42は、中間転写ベルト28のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール38と、バックアップロール36とを含んで構成されている。
二次転写ロール38は、図示しないシャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。ここで、上記シャフトは、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。また、上記スポンジ層は、カーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が1×107.5Ωcm以上1×108.5Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。
また、二次転写ロール38は、中間転写ベルト28を挟んでバックアップロール36に圧接配置されている。ここで、二次転写ロール38は、接地されるとともにバックアップロール36との間に二次転写バイアスが印加され、2次転写部42に搬送される記録用紙P上にトナー像を二次転写する。
バックアップロール36は、表面がカーボンを分散したEPDMとNBRとのブレンドゴムのチューブで構成され、内部がEPDMゴムで構成されている。そして、表面抵抗率が1×107Ω/□以上1010Ω/□以下となるように形成され、硬度は例えば70°(アスカーC)に設定される。
また、バックアップロール36は、中間転写ベルト28の裏面側に配置されて二次転写ロール38の対向電極を形成しており、バックアップロール36と接触配置された金属製の給電ロール40を介して二次転写バイアスが安定的に印加される。
中間転写ベルト28の移動方向における二次転写部42の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト28上の残留トナーや紙粉を除去する中間転写ベルトクリーナ46が、中間転写ベルト28に対して接離自在に設けられている。また、中間転写ベルトクリーナ46における中間転写ベルト28の内側には、クリーニングバックアップロール44が設けられている。
一方、イエロー・トナーに対応する一次転写ロール24Yの上流側には、各トナーに対応した画像形成のタイミングを合わせるための基準となる信号を発生するホームポジションセンサ48が設けられている。
ホームポジションセンサ48は、中間転写ベルト28の裏側に設けられた所定のマークを検知して基準信号を発生する。この基準信号に基づいて、前述の制御部70がプリンタ10の各部を動作させ、画像形成を開始する。
また、ブラック・トナーに対応する一次転写ロール24Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が設けられている。
一方、プリンタ10の下方側には、記録用紙Pを収納する用紙トレイ50が設けられている。用紙トレイ50の一方端には、記録用紙Pを所定のタイミングで取り出して搬送するピックアップロール52が設けられている。
ピックアップロール52の上方には、図示しないモータ及びギア等を有する駆動手段で回転駆動され、ピックアップロール52によって送出された記録用紙Pを、前述の二次転写部42に搬送する複数の搬送ロール54、56が設けられている。
また、記録用紙Pの搬送方向における搬送ロール56の下流側には、記録用紙Pを二次転写部42へ送り込む搬送シュート58が設けられている。
さらに、二次転写部42における記録用紙Pの送出方向には、トナー像の二次転写が終了した記録用紙Pを定着装置100へ搬送する搬送ベルト60が設けられている。搬送ベルト60は、張架ロール57、59によって張架され、図示しないモータ及びギア等を有する駆動手段で移動可能に設けられている。
定着装置100の入口側には、記録用紙Pを定着装置100に案内するガイド62が設けられている。また、定着装置100の出口側には、プリンタ10の筐体12に固定された用紙集積トレイ64が設けられている。
ここで、プリンタ10の画像形成工程について説明する。
まず、図示しない画像読取装置やパーソナル・コンピュータ等から出力される画像データが、図示しない画像処理装置によって所定の画像処理を施される。当該画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の所定の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y,M,C,Kの4色の色材階調データに変換され、光走査装置14Y,14M,14C,14Kに出力される。
光走査装置14Y,14M,14C,14Kは、入力された色材階調データに応じて、光ビーム16Y,16M,16C,16Kを各々の感光体18Y,18M,18C,18Kに照射する。
感光体18Y,18M,18C,18Kは、予め帯電器20Y,20M,20C,20Kによって表面が帯電されており、光ビーム16Y,16M,16C,16Kによって表面が露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、現像器22Y,22M,22C,22Kによって、Y,M,C,Kの各色のトナー像として現像される。
続いて、感光体18Y,18M,18C,18K上に形成されたトナー像は、一次転写部25において中間転写ベルト28上に転写される。この転写は、一次転写ロール24Y,24M,24C,24Kにより中間転写ベルト28に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト28の表面に順次重ね合わせることで行われる。
続いて、トナー像が転写された中間転写ベルト28は、二次転写部42に搬送される。
一方、トナー像が二次転写部42に搬送されるタイミングに合わせてピックアップロール52が回転し、用紙トレイ50から所定サイズの記録用紙Pが送出される。
ピックアップロール52により送出された記録用紙Pは、搬送ロール54、56により搬送され、搬送シュート58を経て二次転写部42に到達する。この二次転写部42に到達する前に記録用紙Pは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト28の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、記録用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせが行われる。
二次転写部42では、中間転写ベルト28を介して、二次転写ロール38がバックアップロール36に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された記録用紙Pは、中間転写ベルト28と二次転写ロール38との間に挟み込まれる。
また、このとき、給電ロール40からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加され、二次転写ロール38とバックアップロール36との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト28上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール38とバックアップロール36とによって押圧され、記録用紙P上に一括して静電転写される。
続いて、トナー像が静電転写された記録用紙Pは、二次転写ロール38によって中間転写ベルト28から剥離された状態でそのまま搬送され、搬送ベルト60へと搬送される。
搬送ベルト60では、定着装置100における最適な搬送速度に合わせて、記録用紙Pを定着装置100まで搬送する。定着装置100に搬送された記録用紙P上の未定着トナー像は、定着装置100によって記録用紙P上に定着される。
定着画像が形成された記録用紙Pは、用紙集積トレイ64に排出され集積される。
一方、記録用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト28上に残った残留トナーは、中間転写ベルト28の回転移動にともなって中間転写ベルトクリーナ46まで搬送され、中間転写ベルト28上から除去される。
このようにして、プリンタ10の画像形成が行われる。
次に、本実施の形態に係る定着装置100について説明する。
図2に示すように、定着装置100は、記録用紙Pの進入又は排出を行うための開口が形成された筐体122を備えている。
筐体122の内部には、矢印D方向へ回転する無端状の定着ベルト102が設けられている。
定着ベルト102は、図4(b)に示すように、内側から外側に向けて基層134、発熱層132、保護層130、弾性層128、及び離型層126を有しており、これらが積層され、一体となっている。
基層134は、定着ベルト102の強度を保持するベースとなるもので、ポリイミド(PI)で構成されている。基層134の厚さは30〜80μmとしている。なお、基層134として、非磁性ステンレスを用いてもよい。
発熱層132は、後述する磁界H(図2参照)を打ち消す磁界を生成するように渦電流が流れる電磁誘導作用により発熱する金属材料であり、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリウム、アンチモン、又はこれらの合金の金属材料を用いることができる。本実施の形態では、固有抵抗を1.7×10−8Ωm以下に小さくして必要な発熱量を効率よく得ること、及び低コストの観点から、発熱層132として銅を用いている。
また、発熱層132は、熱容量が小さい方が定着装置100のウォームアップ時間を短縮することができるため、できるだけ薄い層を設けることが望ましく、10μmとしている。
保護層130は、基層と同等の合成樹脂で構成され、厚さを40〜60μmとするか、あるいは非磁性ステンレス(固有抵抗7.2×10−7Ωm)で構成され、厚さを30〜60μmとしている。また、ニッケル(固有抵抗7×10−8Ωm)で構成され、厚さを5〜9μmとしてもよい。
弾性層128は、優れた弾性と耐熱性が得られる等の観点から、シリコン系ゴム、又はフッ素系ゴムが用いられ、本実施の形態ではシリコンゴムを用いている。
離型層126は、記録用紙P上で溶融されたトナーT(図2参照)との接着力を弱めて、記録用紙Pを定着ベルト102から剥離し易くするために設けられる。優れた表面離型性を得るためには、離型層126として、フッ素樹脂、シリコン樹脂、又はポリイミド樹脂を用いることが好ましく、本実施の形態ではPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)を用いている。なお、本実施の形態では、離型層126の厚さは30μmとしている。
一方、図2に示されるように、定着ベルト102の外周面と対向する位置には、絶縁性の材料で構成されたボビン108が配置されている。ボビン108と定着ベルト102との間隔は1〜3mm程度となっている。ボビン108は、定着ベルト102の外周面に倣った略円弧状に形成されており、凸部108Aが突設されている。
ボビン108には、励磁コイル110が、凸部108Aを中心として軸方向(図2の紙面奥行き方向)に複数回巻き回されている。
励磁コイル110と対向する位置には、ボビン108の円弧状に倣って略円弧状に形成されたフェライト系の磁性体からなる磁性コア112が配置され、ボビン108に支持されている。
一方、定着ベルト102の内側には、非磁性体であるアルミニウムあるいは非磁性ステンレスからなる固定部材114が、定着ベルト102と非接触で配置され、両端が定着装置100の筐体122に固定されている。
固定部材114は、定着ベルト102と対向して円弧状に形成された円弧部114Aと、柱状に形成された柱部114Bとで構成され、円弧部114Aと柱部114Bは一体成形されている。
固定部材114の円弧部114Aには、該円弧部114Aに沿って、前述の磁性コア112と同様の材質からなる磁性コア116が設けられている。磁性コア116は、定着ベルト102と非接触状態となっている。この磁性コア116と磁性コア112との間で、定着ベルト102を貫通した磁界Hによる閉磁路が形成され、磁界Hが強められる。磁性コアは、整磁合金(感温磁性部材)でもかまわない。
また、固定部材114の柱部114Bの端面には、定着ベルト102を内側から支持する支持部材118が固定されている。
支持部材118は、ウレタンゴム又はスポンジ等の弾性を有する部材で構成され、一端面が定着ベルト102の内周面と接触して定着ベルトを外方向へ押圧している。
一方、定着ベルト102の外周面と対向する位置には、定着ベルト102を支持部材118に向けて加圧するとともに、図示しないモータ及びギア等を有する駆動機構により矢印E方向に回転する加圧ロール104が配置されている。
加圧ロール104は、ステンレスあるいはアルミニウム等の金属からなる芯金106の周囲に、スポンジ、シリコンゴム及びPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)が被覆された構成となっている。
また、加圧ロール104は、図5に示すリトラクト機構によって矢印A、B方向に移動可能となっており、矢印A方向に移動したときは定着ベルト102の外周面と接触して加圧し、矢印B方向に移動したときは定着ベルト102の外周面から離間するようになっている。
ここで、加圧ロール104のリトラクト機構について説明する。
図5には、加圧ロール104を定着ベルト102に接触又は離間させるリトラクト機構部150が示されている。
リトラクト機構部150は、板金で構成され、加圧ロール104の両端部を回転可能に支持する図示しないベアリングが固定されたアーム部材152を有している。
アーム部材152は、筐体122の内側で加圧ロール104の両端部に立設された一対の側板154に、円柱状の支持ピン156によって取り付けられ、矢印R1方向に揺動可能となっている。
側板154の側面には、ボルト158が、側板154の側面と略平行に設けられている。ボルト158は、先端部が、側板154に突設された板状の固定部160の穴部157に締結され、後端部が、図示しない係合部に接着されることにより固定される。
また、アーム部材152の支持ピン156と反対側には、ボルト158が挿通可能な大きさの穴部159が形成された板状の付勢部162が突設されている。
ここで、ボルト158が付勢部162の穴部159に挿通されると共に、所定の弾性力のバネ164がボルト158に外挿され、さらに、ボルト158の先端部が、穴部157に締結されることにより、固定部160と付勢部162の間にバネ164が設けられる。
アーム部材152は、バネ164の付勢力によって下側へ付勢される。これにより、加圧ロール104が、定着ベルト102から離れる。
一方、アーム部材152の近傍には、略円柱状の支持ピン168を軸として矢印R2方向へ揺動する偏芯カム166が設けられている。
偏芯カム166には、所定の歯数のギア部172が設けられている。ギア部172には、所定の歯数の駆動ギア174が噛合している。また、駆動ギア174は、図示しない電源によって駆動される駆動モータ176の正転(反時計回りの回転)及び逆転(時計回りの回転)によって、偏芯カム166を揺動させる。
ここで、駆動モータ176が正転され、駆動ギア174が正転方向へ回転すると、偏芯カム166は、上側に揺動する。これにより、偏芯カム166が、アーム部材152と接触して、アーム部材152を定着ベルト102側へ揺動させ、加圧ロール104が、定着ベルト102に接触(圧接)する。
また、駆動モータ176が逆転され、駆動ギア174が逆転方向へ回転すると、偏芯カム166は、下側に揺動する。これにより、偏芯カム166が、アーム部材152の接触部170から離れ、アーム部材152が、バネ164で下側へ付勢されて、加圧ロール104が、定着ベルト102から離れる。
図2に示すように、加圧ロール104が定着ベルト102を支持部材118側に加圧すると、定着ベルト102と加圧ロール104の接触部(ニップ部)において、定着ベルト102に凹部103が形成され、凹部103に隣接する位置に凸部105が形成される。
このニップ部の形状は、トナーTが載った記録用紙Pが通過するときに、定着ベルト102から剥離させる方向に湾曲した形状となっている。このため、矢印IN方向から搬送されてきた記録用紙Pは、それ自体の腰の強さでニップ部の形状に倣って矢印OUT方向に排出される。
また、支持部材118は、定着ベルト102を加圧ロール104側に押圧するとともに定着ベルト102の内周面に倣って湾曲し、ニップ幅を広げる。
定着ベルト102の裏面で、励磁コイル110と対向する領域で且つ記録用紙Pの通過領域には、定着ベルト102裏面の温度を測定するサーミスタ120が接触して設けられている。サーミスタ120の接触位置は、記録用紙Pのサイズの大小によって測定値が変わらないように、定着ベルト102の軸方向(図2の紙面奥行き方向)の略中央部となっている。
サーミスタ120は、定着ベルト102裏面から与えられる熱量に応じて抵抗値が変化することで、定着ベルト102裏面の温度を計測する。
図4(a)に示すように、サーミスタ120は、配線136を介して、前述の制御部70(図1参照)の内部に設けられた制御回路138に接続されている。また、制御回路138は、配線140を介して通電回路142に接続されており、通電回路142は、配線144、146を介して前述の励磁コイル110に接続されている。
ここで、制御回路138は、サーミスタ120から送られた電気量に基づいて定着ベルト102裏面の温度を測定し、この測定温度と、定着装置100により記録用紙PにトナーTを定着させる際の定着ベルト102裏面の好適な温度として後述するROM74の所定領域に予め記憶されている定着設定温度(本実施の形態では170°C)とを比較する。そして、測定温度が定着設定温度よりも低い場合は、通電回路142を駆動して励磁コイル110に通電し、磁気回路としての磁界H(図2参照)を発生させる。一方、測定温度が定着設定温度よりも高い場合は、通電回路142を停止する。
通電回路142は、制御回路138から送られる電気信号に基づいて駆動又は駆動停止され、配線144、146を介して励磁コイル110に所定の周波数の交流電流を供給又は供給停止する。
このように、本実施の形態に係るプリンタ10では、定着ベルト102の温度を上記定着設定温度に一致させるためのフィードバック制御を制御回路138により行うものとされている。
次に、定着ベルト102及び加圧ロール104の回転機構について説明する。なお、各シャフト及び各ギアは、前述の筐体122(図2参照)の側板に設けられている。
図6に示すように、定着装置100は、前述の制御部70から通電されて駆動する駆動モータ180を備えている。
駆動モータ180には、シャフト182が取り付けられており、シャフト182に駆動ギア184が取り付けられている。駆動ギア184には、シャフト186に外挿された第1ギア188の大径部188Bが噛合されている。また、第1ギア188の小径部188Aは、シャフト190に外挿された第2ギア192に噛合されている。
第2ギア192は、第1ギア188と異なる位置で、シャフト194に外挿された第3ギア196に噛合されている。第3ギア196は、第2ギア192と異なる位置で、シャフト198に外挿された第4ギア200に噛合されている。
第4ギア200は、第3ギア196と異なる位置で、加圧ロール104のシャフト202に外挿された加圧ロール駆動ギア204に噛合されている。
加圧ロール駆動ギア204は、前述のリトラクト機構部150が動作しても、常時第4ギア200と噛合するようになっている。
一方、シャフト182には、駆動ギア184の他に、クラッチ付ギア206が設けられている。クラッチ付ギア206は、シャフト208に外挿された第5ギア210に噛合されている。
第5ギア210は、クラッチ付ギア206と異なる位置で、シャフト212に外挿された定着ベルト駆動ギア214に噛合されている。定着ベルト駆動ギア214は、略円柱状のキャップ部(図示せず)が形成されており、このキャップ部が定着ベルト102の一方の端部に嵌め込まれ、接着によって固定されている。
なお、上記各ギアは、各シャフトと嵌合しており、図示しないEリング等によりシャフトから抜けないように固定されている。
また、クラッチ付ギア206は、駆動モータ180の駆動力によって回転するときの周速度よりも、加圧ロール104によって回転するときの周速度が大きいとき、空転して、駆動ギア184から定着ベルト駆動ギア214に伝達される駆動力を遮断するようになっている。
次に、プリンタ10の制御部70の構成について説明する。
図3に示すように、制御部70は、プリンタ10の各種制御を行う中央処理装置(CPU)72と、各種制御プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)74と、前述したサーミスタ120で測定された温度測定データ等の各種データを一時的に記憶したり、各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられたりする記憶手段としてのRAM(Random Access Memory)76と、所定のクロックで動作するタイマ78とを有している。なお、制御部70は、前述の制御回路138(図4(a)参照)を含んでいる。
CPU72は、各種信号の入出力が行われる入出力インタフェース80に接続されており、この入出力インタフェース80を介して、フォトセンサ117、スイッチ82、ユーザ・インタフェース(UI)84、サーミスタ120、駆動モータ180、及び駆動モータ176に接続されている。なお、スイッチ82は、プリンタ10(図1参照)の電源をオン(ON)/オフ(OFF)するためのスイッチであり、ユーザ・インタフェース84は、画像形成等の実行をユーザが直接指示するための入力パネル等で構成されている。
ここで、フォトセンサ117、スイッチ82、ユーザ・インタフェース84、及びサーミスタ120から入出力インタフェース80を介してCPU72に信号が入力される。一方、CPU72からの制御信号は、入出力インタフェース80を介して、駆動モータ180、及び駆動モータ176に出力される。
次に、定着ベルト102の周速度検知について説明する。
図2及び図7に示すように、定着ベルト102の外周面から所定距離離間して、フォトセンサ117が対向配置されている。
フォトセンサ117は、図7(b)に示すように、フォトセンサ117の本体を構成する筐体121の内部に、光を出射する出射部123と、被検知対象物で反射された反射光(RL)を受光して電気信号に変換する受光部125とを備えている。
フォトセンサ117には、電源線127と信号線129が接続されている。ここで、図示しない電源から電源線127を介して電力が供給されることで、出射部123から光を出射する。
また、信号線129の他端は、前述の入出力インタフェース80(図3参照)を介してCPU72(図3参照)に接続されており、受光部125で受光される光の光量に基づいて生成された電気信号(パルス信号)が、信号線129を通ってCPU72に送られる。
図7(a)に示すように、定着ベルト102は、長手方向において、記録用紙P(矢印C方向に進行)が通過する通紙領域(L2)と、記録用紙Pが通過しない非通紙領域(L1、L3)を有している。ここで、定着ベルト102の非通紙領域L3に、アルミ箔あるいはベルト表面と反射率の異なる材料からなり、矩形状のマーク材119が設けられている。
図7(b)に示すように、マーク材119は、予め定着ベルト102の製造過程において、弾性層128と離型層126の間に埋め込まれている。本実施の形態に係るプリンタ10では、マーク材119の厚さを、6〜20μmとしている。
なお、定着ベルト102の離型層126は、前述のフォトセンサ117の出射部123から出射された光を透過可能に構成されており、離型層126に入射した光は、マーク材119の表面で反射され、反射光RLとなって受光部125で受光される。
また、図7(a)に示すように、前述のフォトセンサ117の取り付け位置は、マーク材119が移動する移動領域(L4)と対向する位置とされている。
ここで、定着ベルト102が矢印X方向に回転移動すると、マーク材119も矢印X方向に移動する。
マーク材119がフォトセンサ117と対向する位置に来た場合、マーク材119で光が反射されるため、フォトセンサ117からハイ(High)・レベルの信号が出力される。一方、マーク材119がフォトセンサ117と対向する位置に無い場合、定着ベルト102表面で光が乱反射されるなどして、フォトセンサ117に反射光RLがほとんど入射しないので、フォトセンサ117からロー(Low)・レベルの信号が出力される。
これにより、ハイ・レベルの信号及びロー・レベルの信号を有するパルス信号が生成される。マーク材119の幅を、このパルス信号の立ち上がり期間(ハイ・レベル)の時間で除することにより、定着ベルト102の周速度が求められる。
定着ベルト102の周速度の測定は、定着ベルト駆動ギア214に取り付けられたアクチュエータ(風車のような羽を複数持ったようなもの。図示せず。)の回転をフォトセンサで検知し、ハイ・レベルの信号及びロー・レベルの信号を有するパルス信号を生成させることによって行ってもかまわない。この場合、定着ベルト102の層内にマーク材119を埋め込む場合に比較し劣化のおそれが少なく、より長い寿命で確実に周速度の測定が可能となる。
次に、本実施の形態の作用として、本発明に特に関係する定着装置100の作用を、図8を参照しつつ詳細に説明する。なお、図8は、前述した画像形成工程を行うためにCPU72により実行されるプログラムのうち、定着装置100の制御に関する部分のみを抽出したプログラム(以下、「定着処理プログラム」という。)の処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM74の所定領域に予め記憶されている。
同図のステップ500では、駆動モータ180への電力供給を開始することにより、定着ベルト102及び加圧ロール104の回転を開始させる。なお、この時点では、加圧ロール104はリトラクト機構部150(図5参照)によって定着ベルト102から離間している。
次のステップ502では、予め定められた第1サンプリング周期(本実施の形態では20ms)での定着ベルト102の周速度のサンプリング(ここでは、フォトセンサ117からの上記パルス信号の取得、当該パルス信号の立ち上がり期間(ハイ・レベル期間)でマーク材119の幅を除算することによる定着ベルト102の周速度の算出、及び当該周速度のRAM76への記憶。)を開始する。
次のステップ504では、上記ステップ502の処理によって開始された定着ベルト102の周速度のサンプリング結果に基づいて、定着ベルト102の周速度を、定着ベルト102に加圧ロール104が圧接していない状態での定着ベルト102の目標とする周速度として予め定められたベルト単独目標速度(本実施の形態では169.8mm/s)とするためのフィードバック制御(以下、「周速度フィードバック制御」という。)を開始する。
なお、本実施の形態に係るプリンタ10では、上記周速度フィードバック制御として、上記サンプリングによってRAM76に記憶された周速度の所定数(本実施の形態では10)単位での平均値が上記ベルト単独目標速度より低い場合に加圧ロール104の回転速度を所定速度だけ上昇させ、上記平均値が上記ベルト単独目標速度より高い場合に加圧ロール104の回転速度を所定速度だけ下降させるように駆動モータ180を制御する制御を適用している。なお、本実施の形態に係るプリンタ10では、当該周速度フィードバック制御において加圧ロール104の回転速度を昇降させる上記所定速度として、その時点の定着ベルト102の周速度とベルト単独目標速度の差に応じた速度(一例として、当該差の10分の1の速度)を適用しているが、これに限らず、例えば、その時点の定着ベルト102の周速度のみに応じた速度(一例として、当該周速度の100分の1の速度)を適用する形態等、定着ベルト102の周速度をベルト単独目標速度に近づけることのできる速度であれば如何なる速度も適用することができることは言うまでもない。
次のステップ506では、前述した定着ベルト102の温度のフィードバック制御を開始させるように制御回路138を制御する。このフィードバック制御が開始されると、定着ベルト102の導電層132に磁界Hによって渦電流が誘導され、定着ベルト102が発熱する。この時点では、定着ベルト102と加圧ロール104が接触していないため、定着ベルト102の熱量が加圧ロール104に伝導せず、定着ベルト102を短時間で昇温加熱することができる。
次のステップ508では、加圧ロール104を定着ベルト102に圧接させる条件として予め定められた条件(以下、「圧接条件」という。)が満足されるまで待機する。なお、本実施の形態に係るプリンタ10では、上記圧接条件として、サーミスタ120によって測定された定着ベルト102裏面の温度が上記定着設定温度に達した、との条件を適用しているが、これに限らず、例えば、上記ステップ506の処理による定着ベルト102の温度のフィードバック制御を開始してから、定着ベルト102裏面の温度が上記定着設定温度に達するまでの期間として予め実機を用いた実験や、実機の設計仕様等を用いたコンピュータ・シミュレーション等により得られた期間が経過した、との条件等、定着ベルト102裏面の温度が上記定着設定温度に達したことを示す条件であれば如何なる条件も適用できることは言うまでもない。
次のステップ510では、リトラクト機構部150の駆動モータ176の駆動を開始することにより、加圧ロール104の定着ベルト102への圧接を開始させ、次のステップ512にて当該圧接が終了するまで待機する。
次のステップ514では、上記ステップ502の処理によって開始した定着ベルト102の周速度のサンプリング周期を、上記第1サンプリング周期より長い周期である第2サンプリング周期(本実施の形態では100ms)に変更する。従って、これ以降、すなわち加圧ロール104が定着ベルト102に圧接された時点以降の定着ベルト102の周速度のサンプリング周期として第2サンプリング周期が適用される結果、周速度フィードバック制御の実行周期が、第1サンプリング周期と第2サンプリング周期との差に応じた期間だけ長くなることになる。
次のステップ516では、周速度フィードバック制御の目標速度を、ベルト単独目標速度から、定着ベルト102と加圧ロール104とが圧接している状態での定着ベルト102の目標とする周速度として予め定められた定着目標速度(本実施の形態では175mm/s)に変更する。従って、これ以降、当該定着目標速度を目標として周速度フィードバック制御が行われることになる。
これ以降、未定着トナー像を保持した記録用紙Pが、定着ベルト102と加圧ロール104の間の定着ニップ部に送り込まれる。
定着ニップ部内では、トナー像が加熱及び加圧され、記録用紙P上に定着される。
続いて、記録用紙Pは、定着ニップ部の出口における定着ベルト102の曲率の変化によって定着ベルト102から剥離され、用紙集積トレイ64に搬送される。
次のステップ518では、本定着処理プログラムを終了させる条件として予め定められた条件(以下、「終了条件」という。)が満足されるまで待機する。なお、本実施の形態に係るプリンタ10では、上記終了条件として、連続的に実行する画像形成処理が終了した、との条件を適用しているが、これに限らず、例えば、ユーザからユーザ・インタフェース84を介して画像形成処理の実行を中止する指示入力が行われた、との条件、プリンタ10に画像形成処理を継続できない不具合が発生した、との条件、スイッチ82がオフされた、との条件等、他の条件を適用することができることも言うまでもない。
次のステップ520では、予め定められた定着終了処理を実行し、その後に本定着処理プログラムを終了する。なお、本実施の形態に係るプリンタ10では、上記定着終了処理として、上記ステップ500の処理により開始した定着ベルト102及び加圧ロール104の回転の停止、上記ステップ502の処理により開始した定着ベルト102の周速度のサンプリングの停止、上記ステップ504の処理により開始した周速度フィードバック制御の停止、上記ステップ506の処理により開始した定着ベルト102の温度のフィードバック制御の停止、及び上記ステップ510の処理によって定着ベルト102に圧接された加圧ロール104を定着ベルト102から離間させる制御を行っている。
定着装置100により連続して定着が行われると、定着ベルト102は熱容量が低いため、ほとんど外径が変化しないが、加圧ロール104は熱膨張によって外径が拡大することになる。
特に、加圧ロール104の記録用紙Pが通過しない非通紙領域では、記録用紙Pに熱量が奪われずに蓄積されるため、通紙領域よりも温度が高温となり、外径が大きくなる。
このままの状態で定着ベルト102及び加圧ロール104を回転させると、定着ベルト102と加圧ロール104の間でスリップが生じて、両者の間を通過するトナー画像が伸びてしまう。
また、定着ベルト102は、加圧ロール104と接触しているため、加圧ロール104に合わせるようにして周速度が大きくなり、定着ベルト駆動ギア214による周速度よりも大きくなって、座屈し易くなってしまう。
しかし、本実施の形態に係るリトラクト機構部150では、駆動モータ180の駆動力によって回転する定着ベルト102の周速よりも、加圧ロール104によって回転する定着ベルト102の周速が大きいとき、クラッチ付ギア206が空転するので、駆動ギア184から定着ベルト駆動ギア214に伝達される駆動力が遮断される。
これにより、定着ベルト102は、加圧ロール104と連れ回りするようになり、定着ベルト102と加圧ロール104の周速度差によるスリップが生じにくくなるので、定着時のトナー画像の伸びが抑えられる。
また、駆動モータ180の駆動力によって回転する定着ベルト102の周速度よりも、加圧ロール104によって回転する定着ベルト102の周速度の方が大きくなることによる、ねじりせん断力の発生が抑えられる結果、定着ベルト102が座屈しにくくなり、定着装置100を長期間使用可能となる。
ここで、連続定着時に、定着ベルト102を加圧ロール104に連れ回りさせるだけでは、周速度が増加していくことになる。
しかし、本実施の形態に係るプリンタ10では、図7に示すように、定着ベルト102の周速度をフォトセンサ117で検知されるパルス信号に基づいて検知して、予め定めておいた基準速度よりも早い場合は、基準速度となるように、駆動モータ180の回転速度を低下させる。
これにより、定着ベルト102が加圧ロール104と連れ回りしても、定着ベルト102の周速度の変動が抑えられる。
一方、本発明者らによるプリンタ10の実機を用いた実験により、一例として図9の破線で示されるように、定着ベルト102の周速度のサンプリング周期を比較的短い周期(図9に示す例では20ms)として周速度フィードバック制御を行った場合のプロセススピード(定着ベルト102の周速度)は、応答性はよい(速い)ものの、オーバーシュートが発生し、その後もチャタリングしているように振動してしまう結果、定着処理を行う際の許容速度範囲(図9に示す例では174.7mm/sから175.4mm/sまでの範囲)に収まるのに比較的長時間を要することが判明した。
これに対し、一例として図9の2点鎖線で示されるように、上記サンプリング周期を比較的長い周期(図9に示す例では100ms)として周速度フィードバック制御を行った場合のプロセススピードは、応答性は悪く、上記許容速度範囲に収まるのに比較的長時間を要するものの、許容速度範囲に入った後は変動が少なく、安定していることが判明した。
そこで、本実施の形態に係るプリンタ10では、上述した定着処理プログラムにより、上記サンプリング周期を加圧ロール104が定着ベルト102に圧接される位置に移動される前のサンプリング周期より移動された後のサンプリング周期を長くするようにしている。
これにより、一例として図9の一点鎖線で示されるように、上記オーバーシュート及び振動が低減されると共に、許容速度範囲に入った後の安定性が向上される。
ところで、図9の一点鎖線で示される例では、このようにサンプリング周期を加圧ロール104による圧接前後で切り替えても、必要なタイミング(記録用紙Pが定着ニップ部により狭持されるタイミング)までに定着ベルト102の周速度を許容速度範囲に収めることができない場合がある。
そこで、本実施の形態に係るプリンタ10では、加圧ロール104が定着ベルト102に圧接される位置に移動されるタイミングが、周速度フィードバック制御による定着ベルト102の周速度が、上記必要なタイミングに許容速度範囲内に収まるタイミングとなるように調整されている。
これにより、一例として図9の太実線で示されるように、上記必要なタイミングまでに定着ベルト102の周速度が許容速度範囲内に収められる。
[第2の実施の形態]
本第2の実施の形態では、周速度フィードバック制御を行う際に定着ベルト102の周速度の平均値を算出するときに適用する、上記サンプリングによってRAM76に記憶された周速度の数を、加圧ロール104が定着ベルト102に圧接される前に比較して多くする場合の形態例について説明する。
なお、本第2の実施の形態に係るプリンタ10の構成は、上記第1の実施の形態に係るプリンタ10(図1〜図7参照。)と同一であるので、ここでの説明は省略する。
以下、本第2の実施の形態の作用として、本発明に特に関係する定着装置100の作用を、図10を参照しつつ詳細に説明する。なお、図10は、本第2の実施の形態に係る定着処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムにおける上記第1の実施の形態に係る定着処理プログラムと同一の処理を行うステップについては図8と同一のステップ番号を付する。
同図に示されるように、本第2の実施の形態に係る定着処理プログラムは、上記第1の実施の形態に係る定着処理プログラムに比較して、ステップ514の処理に代えて、ステップ515の処理が適用されている点のみが異なっている。
すなわち、本第2の実施の形態に係る定着処理プログラムでは、上記第1の実施の形態に係る定着処理プログラムにおいて、ステップ514によりステップ502の処理によって開始した定着ベルト102の周速度のサンプリング周期を第1サンプリング周期より長い周期である第2サンプリング周期に変更する処理を行うことに代えて、ステップ515により、上記ステップ504の処理によって開始した周速度フィードバック制御において定着ベルト102の周速度の平均値を算出するときに適用する、上記サンプリングによってRAM76に記憶された周速度の数(以下、「平均化数」という。)を、加圧ロール104が定着ベルト102に圧接される前に比較して多く(本実施の形態では50)する。
従って、これ以降、周速度フィードバック制御の実行周期が、上記平均化数の増分に応じた期間だけ長くなる結果、上記第1の実施の形態と同様、一例として図9の一点鎖線で示されるように、上記オーバーシュート及び振動が低減されると共に、許容速度範囲に入った後の安定性が向上される。
ここで、本第2の実施の形態に係るプリンタ10においても、加圧ロール104が定着ベルト102に圧接される位置に移動されるタイミングが、周速度フィードバック制御による定着ベルト102の周速度が、必要なタイミングに許容速度範囲内に収まるタイミングとなるように調整されている。
これにより、上記第1の実施の形態と同様、一例として図9の太実線で示されるように、上記必要なタイミングまでに定着ベルト102の周速度が許容速度範囲内に収められる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
例えば、上記各実施の形態では、定着処理をソフトウェア構成及びハードウェア構成の組み合わせによって実現した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、当該定着処理をソフトウェア構成のみ、またはハードウェア構成のみにより実現する形態とすることもできる。
また、上記各実施の形態では、本発明を、電子写真方式による画像形成装置に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、液体現像剤を用いる画像形成装置に適用する形態とすることもできる。
また、上記各実施の形態では、定着ベルト102の温度をサーミスタ120によって検出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、熱電対等の他の温度センサにより検出する形態とすることもできる。
また、上記各実施の形態におけるクラッチ付ギア206を、トルクリミッタを有するギア等の他のギヤとする形態とすることもできる。
また、加圧ロール104の定着ベルト102に圧接される位置への移動前後で変更するパラメータとして、上記第1の実施の形態では定着ベルト102の周速度のサンプリング周期を適用し、上記第2の実施の形態では上記平均化数を適用した場合について説明したが、これら2種類のパラメータを双方とも適用する形態とすることもできる。
その他、上記各実施の形態で説明したプリンタ10の構成(図1〜図7参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したりすることができることは言うまでもない。
さらに、上記各実施の形態で説明した定着処理プログラムの処理の流れ(図8,図10参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。