上記したように、本発明のプロセスカートリッジは、感光体が、導電性支持体上に感光層を有したものである。さらに、該感光層の最表面層が一般式(1)の繰り返し構造単位と一般式(2)の繰り返し構造単位を有し、かつ、末端の少なくとも片方が一般式(3)の末端構造を有するポリカーボネート重合体と、化学式(4)のポリジメチルシロキサンを含むものである。そして、一般式(2)及び一般式(3)におけるシロキサン部の平均繰返し数m及びnの関係がm=nである。また、帯電部材は、その表面に対する感光層に使用されている化学式(4)のポリジメチルシロキサンの接触角Xが、10.0°以上70.0°以下であることを特徴とする。
(式(1)中、Xは、単結合、−O−、−S−又は置換若しくは無置換のアルキリデン基であり、R
11乃至R
18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基、置換若しくは無置換のアルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基である。また、*は結合位置を示す。)
(式(2)中、R
21及びR
22は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、R
23乃至R
26は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルキル基又はアリール基であり、aは1乃至30の整数、mは1乃至500の整数を示す。また、*は結合位置を示す。)
(式(3)中、R
31及びR
32は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基、置換若しくは無置換のアルキル基又はアリール基であり、R
33及びR
34は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、R
35乃至R
39は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルキル基又はアリール基であり、bは1乃至30の整数、nは1乃至500の整数を示す。また、*は結合位置を示す。)
(式(4)中、lは繰り返し単位数の平均値を示す。)
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
〔1〕プロセスカートリッジ
まず、本発明のプロセスカートリッジを備えた電子写真装置について説明する。図1はその電子写真装置の一例の概略構成図である。
1は像担持体としての回転ドラム型の感光体である。この感光体1は、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。プロセススピードは可変である。本図において、感光体1は、ロール状の導電性支持体、該支持体上に電荷発生層及び電荷輸送層からなる感光層を有する感光体である。感光体1は、感光体表面を所定の極性、電位に帯電させるため電荷注入層をさらに有しても良い。なお、本発明において重要な構成要素である感光体については後述する。
3は帯電部材である。なお、帯電部材3としては、ローラ形状が一般的である(以下、このローラ形状の帯電部材を特に「帯電ローラ」という)。帯電ローラ3と、帯電ローラ3に帯電バイアスを印加する帯電バイアス印加電源(不図示)とによって帯電手段が構成されている。この帯電バイアス印加電源から直流電圧のみあるいは直流電圧に交流電圧を重畳して、帯電部材に電圧が印加される。帯電部材には、直流電圧のみの電圧を印加するための電圧印加手段を有する電子写真装置に、本発明のプロセスカートリッジを使用することが好ましい。帯電ローラ3は、感光体1に所定の押圧力で接触させてあり、本例では、感光体1の回転に対して順方向に回転駆動する。この帯電ローラ3に対して帯電バイアス印加電源から、直流電圧(例えば−1000V)が印加されることで、感光体1の表面が極性電位(例えば暗部電位−500V)に一様に帯電処理される。なお、本帯電部材についても、後述する。
4は露光光(画像露光光)である。露光手段(不図示)から出力されるスリット露光やレーザービーム走査露光などが露光光4に該当する。感光体1の帯電処理面に露光光4を照射すると、感光体帯電面の露光明部の電位が目的の画像に応じて選択的に低下(減衰)して(例えば明部電位−150V)、感光体1表面に静電潜像が形成される。
5は現像手段である。現像手段5としては公知の手段を利用することができる。例えば本図における現像手段5は、トナーを収容する現像容器、その開口部に配設されてトナーを担持搬送するトナー担持体及びトナー担持体表面へのトナーの担持量(トナー層厚)を規制するトナー規制部材(不図示)を有する構成とされている。現像手段5は、感光体1表面の静電潜像の露光明部に、感光体1の帯電極性と同極性に帯電しているトナー(ネガトナー)を選択性に付着させて静電潜像をトナー像として可視化(現像)する。なお、本図では、現像バイアス電位−350Vとなるようにトナー担持体は電圧印加されている。感光体1表面の静電潜像の現像には、例えば、ジャンピング現像法、接触現像法、磁気ブラシ法などがあるが、トナーの飛散性改善の観点から、接触現像法が好ましい。トナー担持体としては、接触安定性の確保という面から、ゴム等の弾性材料を用いることが望ましい。例えば、金属等の導電性支持体上に導電性を付与した弾性層を設けた現像ローラを例示できる。現像ローラでは、弾性材料を発泡成形した発泡体を弾性層としてもよい。また、さらにこの上に表面層を設けたり、表面処理を施したりしてもよい。表面処理としては、UV及び電子線を用いる表面処理、化合物等を表面に付着及び含浸させる表面改質処理等を挙げることができる。
6は転写手段であり、本図では転写ローラを示してある。転写ローラ6は公知の手段を利用することができ、例えば、金属等の導電性支持体上に中抵抗に調整された弾性樹脂層を被覆してなる転写ローラを例示できる。転写ローラ6は、転写ニップ部が形成されるように、感光体1に所定の押圧力で接触されており、感光体1の回転と順方向に感光体1の回転周速度とほぼ同じ周速度で回転する。また、該転写ローラには、転写バイアス印加電源(不図示)からトナーの帯電特性とは逆極性の転写電圧が印加されている。転写材供給手段(不図示)から感光体1と転写ローラ6との間(転写ニップ部)に感光体1の回転と同期して転写材(紙など)Pが給紙される。その転写材Pの裏面が転写電圧を印加した転写ローラ6により、トナーの帯電極性とは逆極性に帯電されることにより、転写ニップ部において感光体1表面に担されているトナー画像が転写材Pの表面に静電転写される。
トナー像の転写を受けた転写材Pは、感光体1から分離してトナー定着手段8へ導入され、そこで像定着され、画像形成物(プリント、コピー)として装置外へ排出される。両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合、この画像形成物は、不図示の再循環搬送機機構に導入されて転写ニップ部へ再導入される。
トナー像転写後の感光体1は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化される。感光体1は、必要により、さらに前露光手段(不図示)からの前露光により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、帯電手段が本図に示すような接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
本図では、感光体1、帯電部材(帯電ローラ)3、現像手段5及びクリーニング手段7が一体となり、プロセウカートリッジ9になっており、これが電子写真装置本体にガイドレール10によって着脱可能な構成となっている。しかし、本発明のプロセスカートリッジでは、感光体1と帯電部材3を以下に詳述するような構成である限り、感光体1及び帯電部材3以外の構成手段と一体となっている必要はない。
〔2〕感光体
本発明に用いる感光体は導電性支持体上に感光層を有する感光体である。該感光層の最表面層には、上記したシロキサン部を有するポリカーボネート重合体及び化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサンが含まれる。そして、該ポリカーボネート重合体は、一般式(2)の繰り返し構造単位中及び一般式(3)の端末構造中のシロキサン部の平均繰返し数m及びnの関係が、m=nである。
上記ポリカーボネート重合体を感光層の最表面層に含有する感光体が、極めて高い潤滑性を示し、また、耐ソルベントクラック性及び良好な電子写真特性を有する理由について説明する。
このポリカーボネート重合体は、ポリカーボネート主鎖の少なくとも片方の末端に、ポリシロキサン部を有する末端構造を有する、主鎖にもシロキサン部がある。したがって、末端にポリシロキサン部を有することで、シロキサン部の自由度が増加し、より表面近傍に局所的にシロキサン部が配設される。このために、非常高い初期潤滑性を示すものと思われる。この時、シロキサン部の鎖長が大きい方が、表面の潤滑性向上に有効であり、一般式(2)及び一般式(3)中のシロキサン部の繰り返し単位数nが10以上である時、特に高い潤滑性を示す。この場合、表面の純水に対する接触角は100°以上と極めて高くなる。これは、使用初期に最も発生し易いブレード反転、ブレード鳴き等のトラブルの回避に効果的に働き、特に、最も厳しい高湿環境でも効果的である。
また、シロキサン連鎖が主鎖にも存在することで、ポリカーボネート重合体自体がキャスト膜になった場合のひずみである内部応力を緩和する効果がある。そして、仮にある程度薬品が感光層内部に浸透してもソルベントクラックが起こり難くなっていると思われる。
ポリカーボネート重合体中のシロキサン部は、ポリアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン等より誘導されたものである。具体的にはジメチルシロキサン鎖、ジエチルシロキサン鎖、ジフェニルシロキサン鎖、メチルフェニルシロキサン鎖等が挙げられる。これらは2種類以上が混在していてもよい。シロキサン部の長さは、一般式(2)及び一般式(3)中の平均繰返し数であるm及びnで表され、m及びnが1乃至500であり、好適には10乃至100である。十分な潤滑性を得るためにはある程度大きい方が好ましいが、m及びnが500を超えるようなものでは、ポリカーボネート重合体よりもポリシロキサンの性質が強くなり、実用的ではない。
平均繰返し数m及びnが同じ大きさであることが望ましく、本発明では、電荷輸送層の被膜の透明性が大きく高まり、被膜の光学的特性の面からも好ましい。なお、シロキサン部がこのような平均繰返し数である時、低残留電位で高感度、ゴースト等のメモリー画像の発生を抑制するといった効果も見られる。
さらに、上記ポリカーボネート重合体と化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサンを混合して使用すると、特性の悪化もなく、更に高い初期滑り性が発現される。
化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサンの混合比は、上記ポリカーボネート重合体に対して、5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、かつ、これら2種の合計の含有量は、最表面層の全固形分に対し、0.1質量%以上5.0質量%以下が好ましい。混合比が5質量%以上20質量%以下であることにより、上記ポリカーボネート重合体との相乗効果で、特に感光体使用時の初期に極めて高い滑り性が発現する。これら2種の合計の含有量が、最表面層の全固形分に対し0.1質量%以上5.0質量%以下であることにより、ポリジメチルシロキサンが含有されていても、被膜の白濁を防止し、残電上昇や感度低下といった電子写真特性の悪化が防止される。また、化学式(4)中のシロキサン部の平均繰返し数lは10乃至100が好ましい。100を超えるようなものでは、少量添加であっても感光層にした際に被膜が白濁し易く、被膜の光学的特性からも好ましくないことがある。なお、これら成分の平均繰返し数m、n、lが同じであると、さらに被膜の白濁防止、残電上昇や感度低下といった電子写真特性の悪化防止に有用である。
なお、ポリジメチルシロキサンを単独で添加しても、本発明にかかる感光体のような、高い滑り性が発現せず、少量の添加によっても残留電位が著しく増加し易く、被膜が白濁する。したがって、被膜の光学的特性の面からも、画質が低下し、感度低下による濃度薄、ゴースト等のメモリー現象が発生する。しかし、上記ポリカーボネート重合体と上記した混合比で使用し、上記の割合で最表面層に添加すると、そのような弊害が発生せず、低残留電位で、高感度、耐久によるゴースト等のメモリー画像の発生も見られなかった。ここで、前述理由からポリカーボネート重合体同様、ポリジメチルシロキサンとの混合物の状態でもm、n、lの平均繰返し数は同じであることが好ましい。
ポリカーボネート重合体及びポリジメチルシロキサンの平均繰返し数は、例えば、BRUKER社製の飛行時間型質量分析計「MALDI−TOF−MS」で測定することができる。なお、本明細書において、「平均繰返し数が同じ」とは、測定誤差も考慮し、±3の範囲内であることを意味する。したがって、「m=n」は、「m=n±3」を表している。
以下に、上記ポリカーボネート重合体は、以下のようにして得られる。すなわち、一般式(1)に示される繰り返し構造単位を形成する樹脂構成材料、一般式(2)で示される繰り返し構成単位を形成するシロキサン化合物及び一般式(3)で示される末端構造を形成するシロキサン化合物を混合して炭酸エステル化して製造される。
一般式(1)で示される繰り返し構造単位を形成する樹脂構成材料(以下、「ビスフェノール化合物」ともいう)の具体例を表1及び表2に示す。なお、これらは例示であり、これらに限定されるものではない。
次に、一般式(2)で示される構造単位を形成するシロキサン化合物(以下、「シロキサン化合物1」ともいう)の具体例を表3に示す。なお、表中のmはシロキサン鎖の平均繰返し数であり、1乃至500である。また、これらは例示であり、これらに限定されるものではない。
一般式(2)中の平均繰返し数aが3以下となり、R23乃至R26がいずれもメチル基となる化合物(2−1)、化合物(2−2)、化合物(2−5)、化合物(2−6)及び化合物(2−8)が好ましく、特に、化合物(2−1)が好ましい。
次に、一般式(3)で示される末端構造を形成するのシロキサン化合物(以下、「シロキサン化合物2」ともいう)の具体例を表4に示す。なお、表中のnはシロキサン鎖の平均繰返し数であり、1乃至500である。また、これらは例示であり、これらに限定されるものではない。
一般式(3)中の平均繰返し数bが3以下となり、R33乃至R39がいずれもメチル基となる化合物(3−1)、化合物(3−2)及び化合物(3−3)が好ましく、特に、化合物(3−1)が好ましい。
なお、上記ポリカーボネート重合体中のシロキサン部の合計量は、10質量%以上60質量%以下であることが好ましい。なお、本発明におけるシロキサン部とはSi−O結合の繰り返し部分を指し、Siに直接結合している置換基も含む。シロキサン部の合計量が10質量%よりも少ないと電荷輸送層に添加する割合を増やさないと高い潤滑性を発揮し難くなり、耐久性との両立が難しい場合がある。逆に、60質量%よりも多いと、製造が難しく、被膜の透明性や電子写真特性に支障が生じる場合がある。なお、ここでのシロキサン部の合計量とは、一般式(2)の繰り返し構成単位中のシロキサン部及び一般式(3)の末端構造中のシロキサン部の全質量(合計)が、重合体全体の質量に対してどれだけの割合であるかを、質量%で示したものである。
また、上記ポリカーボネート重合体は、粘度平均分子量(Mv)が5,000以上200,000以下であることが好ましく、特に、10,000以上100,000以下であることが好ましい。合成の際、分子量を調節するために、上記一官能のシロキサン化合物に加え、他の一官能性化合物を末端停止剤として併用してもよい。このような停止剤としては、例えば、フェノール、p−クミルフェノール、p−t−ブチルフェノール、安息香酸、塩化ベンジルのような通常ポリカーボネートを製造する際に使用される化合物が挙げられる。
このポリカーボネート重合体は、優れた潤滑性及び優れた強度を有するが、より優れた強度を有する樹脂と混合して用いることが好ましい。混合比は、本発明にかかるポリカーボネート重合体0.5質重量部に対して他の樹脂が1質量部以上99質量部以下であることが好ましい。本発明にかかるポリカーボネート重合体は、感光層の表面近傍に集中し易いために少ないブレンド比でも高い潤滑性を発揮する。
なお、合成時に二官能のシロキサン化合物を加えず、一官能のシロキサン化合物のみを用いてポリカーボネート重合体を製造すると、主鎖にシロキサン鎖を持たず、末端のいずれか一方又は両方がシロキサン鎖を持つ末端封止のポリカーボネート重合体が得られる。このポリカーボネート重合体は、本発明にかかる主鎖と末端の両方にシロキサン鎖を持つポリカーボネート重合体と併用してもよい。
次に、本発明に用いる感光体の構成について説明する。
感光体の表面層、すなわち感光層の最表面層は、感光層が電荷輸送材料と電荷発生材料とを同一の層に含有する単層型の場合は感光層そのものであり、電荷輸送材料を含有する電荷輸送層と電荷発生材料を含有する電荷発生層の2層積層型では電荷輸送層である。更には、電荷輸送層上に保護層を設ける場合は、感光体の表面層は保護層である。なお、保護層は、導電性金属酸化物等の導電性粒子を含有してもよい。なお、本発明においては、電子写真特性の点から積層型であることが好ましい。
以下に、積層型の感光体構成について説明する。
感光体の導電性支持体は、少なくとも表面が導電性であり、接触帯電に対して耐える剛性を有するものである。すなわち、アルミニウム、ニッケル、銅、金、鉄等の金属又は合金でできた円筒状のものが適当である。また、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ガラス等の絶縁性材料の表面上にアルミニウム、銀、金等の金属や酸化インジウム、酸化スズ等で導電薄膜を形成したもの、カーボンや導電性フィラーを樹脂中に分散した導電性樹脂を材料したものも使用できる。なお、機械的強度、製造の容易さ等からアルミニウム等の金属製が好ましい。
導電性支持体の表面は、電気的特性改善あるいは密着性改善のために、陽極酸化等の電気化学的な処理を行ったり、アルカリリン酸塩水溶液やリン酸あるいはタンニン酸を主成分とする酸性水溶液にフッ素化合物の金属塩を溶解した液中で化学処理したりしてもよい。
また、単一波長のレーザー光を用いたプリンターに本感光体を用いる場合には、干渉縞を抑制するために導電性支持体の表面を適度に粗面化しておくことが好ましい。具体的には、支持体表面をホーニング、ブラスト、切削、電界研磨等の処理をした支持体とする。また、アルミニウムやアルミニウム合金からなり、その表面に導電性金属酸化物及び結着樹脂からなる導電性皮膜を有する支持体を用いることもできる。
ホーニング処理としては、乾式法及び湿式法があるがいずれでもよい。湿式法ホーニング処理は、水等の液体に粉末状の研磨剤を懸濁し、高速度で支持基体表面に吹き付けて粗面化する方法であり、表面粗さは吹き付け圧力、速度、研磨剤の量、種類、形状、大きさ、硬度、比重及び懸濁温度等により制御することができる。同様に、乾式法ホーニング処理は、研磨剤をエアーにより、高速度で導電性支持体表面に吹き付けて粗面化する方法であり、湿式ホーニング処理と同じように表面粗さを制御することができる。これらホーニング処理に用いる研磨剤としては、炭化ケイ素、アルミナ、鉄、ガラスビーズ等の粒子が挙げられる。
支持体と電荷発生層又は後述の中間層との間には、レーザー光等の散乱による干渉縞の防止や、支持体の傷の被覆を目的とした導電層を設けてもよい。
導電層は、カーボンブラック、金属粒子、金属酸化物粒子等の導電性粒子を結着樹脂に分散させて形成することができる。好適な金属酸化物粒子としては、酸化亜鉛や酸化チタンの粒子が挙げられる。また、導電性粒子は被覆されていてもよい。
導電性粒子の体積抵抗率は0.1Ω・cm以上1000.0Ω・cm以下が好ましく、1Ω・cm以上1000Ω・cm以下がより好ましい。また、導電性粒子の平均粒径は0.05μm以上1.00μm以下が好ましく、0.07μm以上0.70μm以下がより好ましい。導電層中の導電性粒子の割合は、導電層全質量に対して1.0質量%以上90質量%以下が好ましく、5.0質量%以上80.0質量%以下がより好ましい。なお、粉体の体積抵抗率は、測定サンプルは49MPaの圧力で固めてコイン状としたものを用い、抵抗測定装置「ロレスタAP」(商品名、三菱化学株式会社製)を用いて測定した値である。また、平均粒径は、遠心沈降法により測定した値である。
導電層に用いられる結着樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。これらは単独で、混合又は共重合体として2種以上で用いることができる。これら結着樹脂は、支持体に対する接着性が良好であるとともに、導電性粒子の分散性を向上させ、かつ、成膜後の耐溶剤性が良好である。これらの中でも、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリアミド樹脂が好ましい。導電層の膜厚は0.1μm以上30.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以上20.0μm以下であることがより好ましい。
導電層の体積抵抗率は1013Ω・cm以下であることが好ましく、105Ω・cm以上1012Ω・cm以下であることがより好ましい。なお、導電層の体積抵抗率は、測定対象の導電層の形成に用いたのと同じ材料をアルミニウム板上に被膜を形成し、この被膜上に金の薄膜を形成して、アルミニウム板と金薄膜の両電極間を流れる電流値をpAメーターで測定して求めた値である。
また、導電層には、必要に応じてフッ素やアンチモンを含有させてもよいし、導電層の表面性を高めるために、レベリング剤を添加してもよい。
また、支持体又は導電層と電荷発生層との間には、必要に応じてバリア機能や接着機能を有する中間層(下引き層、接着層とも呼ばれる。)を設けてもよい。中間層は、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体からの電荷注入性改良、感光層の電気的破壊に対する保護等のために形成される。
中間層は、アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エチルセルロース樹脂、エチレン−アクリル酸コポリマー、エポキシ樹脂、カゼイン樹脂、シリコーン樹脂、ゼラチン樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ユリア樹脂等の樹脂や、酸化アルミニウム等の材料を用いて形成することができる。
中間層の膜厚は0.05μm以上5.00μm以下であることが好ましく、0.30μm以上3.00μm以下であることがより好ましい。
積層型感光体の場合、支持体、導電層又は中間層の上に電荷発生層が形成される。電荷発生層は、電荷発生材料をその0.3質量倍以上4質量倍以下バインダー樹脂と共に溶剤中によく分散した分散液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。なお、分散には、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、液衝突型高速分散機等を使用することができる。
電荷発生材料としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、ジスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクリドン及び非対称キノシアニン系の顔料等が使用できる。各種電荷発生物質の中でも、高感度であるという点で、近年フタロシアニン顔料が広く使用されている。
代表的なフタロシアニン顔料として、オキシチタニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等が挙げられる。
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、セルロース樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ベンザール樹脂、メラミン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルメタクリレート樹脂、ポリビニルアクリレート樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。特に、ブチラール樹脂が好ましい。これらは単独で、混合又は共重合体として2種以上を用いることができる。
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生物質の溶解性や分散安定性から選択される。好ましい有機溶剤として、アルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物等が挙げられる。
電荷発生層の膜厚は5μm以下であることが好ましく、0.01μm以上2.00μm以下であることがより好ましく、0.05μm以上0.30μm以下であることがより一層好ましい。
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、電子搬送性剤等を必要に応じて添加することもできる。
電荷発生層上には電荷輸送層が形成されている。電荷輸送層は電荷輸送物質を含有している。電荷輸送物質としては、例えば、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物、トリアリールメタン化合物等が使用できる。これら電荷輸送物質は1種のみであっても、2種以上であってもよい。なお、本発明では、電荷輸送層が最表面層である場合、少なくとも上記シロキサン部を有するポリカーボネート重合体及び化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサンを含有することが必須である。さらに必要に応じて他のバインダー樹脂をブレンドし、適当な溶剤を用いて溶解した溶液を塗布し、乾燥することによって、電荷発生層を形成することができる。なお、乾燥温度は100℃以上の温度で乾燥させるとポリカーボネート重合体あるいはポリジメチルシロキサンが表面に移行し易くなりより高い潤滑性を発揮するのでより好ましい。
ブレンドするバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂が使用できる。特に、ポリアリレート樹脂及びポリカーボネート樹脂が本発明にかかるポリカーボネート重合体との相溶性や、電子写真特性、耐久性向上から好ましい。これらは、単独で、混合又は共重合体として2種以上を用いることができる。
電荷輸送物質とバインダー樹脂は、質量比で2:1乃至1:2の範囲で使用することが好ましい。また、電荷輸送層の膜厚は5μm以上50μm以下であることが好ましく、7μm以上30μm以下であることがより好ましい。
電荷輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、フッ素オイル等の界面活性剤、フッ素樹脂粉体等のフィラー、更にフッ素原子含有化合物等の添加剤が含まれていてもよい。
また、感光層が単層型の場合は、上述のような電荷発生材料や電荷輸送物質を、上記シロキサン部を有するポリカーボネート重合体、化学式(4)で示されるポリシロキサンと共にバインダー樹脂に分散した溶液を塗布し、乾燥することによって感光層を形成できる。その場合、感光層の膜厚は5μm以上40μm以下であることが好ましく、15μm以上30μm以下であることが好ましい。
上記各層の塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法等の塗布方法を用いることができる塗布の際の液粘度は、塗工性から1mPa・s以上500mPa・s以下であることが好ましい。
〔3〕帯電部材
上述のような良好な潤滑性をもつ感光体に対して、接触して使用する帯電部材にどのような特性を持たせることが、さらなる摺動性向上に効果的であるかを、本発明者らは検討した。その結果、本例のような、最表面に化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサンが多く含まれると推測される感光体に対し、帯電部材の最表面の親和性が低い方が、密着力や摩擦力が抑えられ、摺動性のさらなる向上に効果的であることを見出した。
すなわち、帯電部材の最表面における、化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサンの接触角Xが、10.0°以上70.0°以下である時、非常に良好な摺動性を示し、繰り返し使用しても摩耗することなく、高耐久・高画質を維持できることがわかった。また、帯電部材の最表面が上述のような接触角Xが実現する時、前記帯電部材の最表面の単位面積あたりに含まれるフッ素原子の個数比率Yは、5.00%以上40.00%以下であることもわかった。
なお、Xが10.0°未満の場合、帯電部材と感光体との接触部分における親和性が高くなり、密着力や摩擦力が大きくなってしまい、目的とする高耐久・高画質の実現に必要な感光体と帯電部材との摺動性が不十分となる。また、Xが70.0°より大きい場合、前記帯電部材の最表面の単位面積あたりに含まれる全原子個数に対するフッ素原子の個数比率Yが40.00%より多くなる。その結果、帯電部材表面の動摩擦係数が大きくなりすぎ、感光体との良好な摺動性が得にくくなる。より好ましいXは20.0°以上50.0°以下である。
接触角Xは、接触角測定装置「接触角計CA−X ROLL型」(商品名、協和界面株式会社製)を使用して、以下のようにして測定した。
まず、その構造が化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサン「DMS−T21−100GM」(商品名、GELEST社製)をシリンジに入れて接触角計に装着した。シリンジの先端が接触しないよう注意しながら試料台に帯電部材をセットした。なお、帯電部材が帯電ロールである時はシリンジの先端がロール頂点にくるように目視で確認しながら行った。その後、シリンジからポリジメチルシロキサンの液滴を押し出して、帯電部材に着滴させた。そうすると図3に示すように帯電部材表面103aに液滴103bが着滴し、その液滴103bが帯電部材表面103aとなす角θを計測した。この測定を帯電部材の表面の任意の9ヶ所で行い、その平均値を当該帯電部材の接触角Xとした。なお、帯電ローラでは周方向で任意の3点と長手方向の任意の3点の計9ヶ所で測定した。
[接触角の詳細な測定条件]
測定: 液滴法(真円フィッティング)
液量: 1μl
着滴認識: 自動
画像処理: アルゴリズム−無反射
イメージモード: フレーム
スレッシホールドレベル: 自動
また、フッ素原子の個数比率Yは、X線光電子分光装置(ESCA)「Quantum2000」(商品名、アルバックファイ社製)を用いて、以下のようにして測定した。まず、帯電部材表面の任意の10箇所を選び、帯電部材の表面から深さ方向に2mm、表面は5mm角の正方形状に、カミソリで採取したものをサンプルとした。そのサンプルの表層側にX線が照射されるように、サンプルをプラテン上に置き、アルミニウム製のカバーでサンプルの一部を抑えるように固定することにより導通を確保した。以下の条件で定量分析した10サンプルのフッ素原子(F)のatom%の平均値をYとした。
[F原子atom%の詳細な測定条件]
X線: モノクロAl Kα線 25W/15kV
測定領域: ポイント φ100μm
パスエネルギー: 58.70eV
ステップ幅: 0.125eV
分析指定元素(Sweep回数): F1s(5回)、Zn2p3(5回)、S2p(10回)、N1s(10回)、Si2p(5回)、O1s(5回)、C1s(5回)、Ca2p(5回)(この順番で測定)
設定時間: 3分
帯電部材の表面層を構成する材料としては、上記ポリジメチルシロキサンへの接触角Xが達成される表面が形成されならば、樹脂及びエラストマーから適宜選択して用いることができる。樹脂としては、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(CEBC)等が使用できる。また、エラストマーとしては、合成ゴム及び熱可塑性エラストマーが使用できる。、例えば、合成ゴムとして、天然ゴム(加硫処理等)、EPDM、SBR、シリコーンゴム、ウレタンゴム、IR、BR、NBR、CR等が挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミドポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエンポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニルポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニルポリオレフィン系熱可塑性エラストマー及び塩素化ポリエチレンポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらの材料は、単独で、また二種類以上を混合して用いてもよく、共重合体であってもよい。特に、コストダウンや電気特性の向上に伴う表面層の薄層化や、耐ブリードアウト性、耐付着汚染性などを考慮すると、オキシアルキレン基を有するポリシロキサンを含有することが好ましい。
帯電部材を構成する上記のオキシアルキレン基を有するポリシロキサンは、例えば、下記工程A及び工程Bを経て得ることができる。
工程A:加水分解性シラン化合物と、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物とを加水分解によって縮合させる縮合工程。
工程B:カチオン重合可能な基を開裂させることにより、工程Aにより得られた加水分解縮合を架橋させる架橋工程。
加水分解性シラン化合物としては、置換されていてもよいアリール基を有する加水分解性シラン化合物を用いることが好ましい。これらのなかでは、下記一般式(6)で示される構造を有するアリール基を有する加水分解性シラン化合物が好適である。
〔式(6)中、R
61及びR
62は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキルであり、Ar
61は、アリール基である。iは0乃至2の整数、jは1乃至3の整数で、かつ、i+j=3である。〕
上記一般式(6)中のR61又はR62のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、Ar61のアリール基としては、フェニル基が好ましい。
以下に上記一般式(6)で表されるアリール基を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
(6−1)フェニルトリメトキシシラン
(6−2)フェニルトリエトキシシラン
(6−3)フェニルトリプロポキシシラン
カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物としては、下記一般式(7)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物が好適である。
〔式(7)中、R
71及びR
72は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基であり、Z
61は2価の有機基であり、Rc
61はカチオン重合可能な基である。dは0乃至2の整数、eは1乃至3以下の整数で、かつ、d+e=3である。〕
上記一般式(7)中のRc71のカチオン重合可能な基は、開裂によってオキシアルキレン基を生成する、カチオン重合可能な有機基を意味し、例えば、エポキシ基やオキセタン基などの環状エーテル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。これらの中では、入手の容易性及び反応制御の容易性の観点から、エポキシ基であることが好ましい。
また、上記オキシアルキレン基とは、−O−R−(−R−:アルキレン基)で示される構造を有する2価の基である(「アルキレンエーテル基」と呼ばれることもある)。
上記一般式(7)中のR71又はR72のアルキル基としては、炭素数1乃至3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基がより好ましい。
上記一般式(7)中のZ71の2価の有機基としては、例えば、アルキレン基及びアリーレン基などが挙げられる。これらの中では、炭素数1乃至6のアルキレン基が好ましく、特に、エチレン基がより好ましい。
また、上記一般式(7)中のeは3であることが好ましい。上記一般式(7)中のdが2の場合、2個のR71は互いに異なっていてもよい。また、eが2又は3の場合、2個又は3個のR72は互いに異なっていてもよい。
以下に、上記一般式(7)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
(7−1):グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(7−2):グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
(7−3):エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン
(7−4):エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン
また、製造される帯電部材の表面の離型性を向上させる観点から、上記工程Aにおいて、これら加水分解性シラン化合物だけでなく、第3の原料として、さらに下記一般式(5)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用することがより好ましい。一般式(5)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を用いることによって、得られるポリシロキサンは、フッ化アルキル基(パーフルオロアルキル基)を有するポリシロキサンとなる。
〔式(5)中、R
51及びR
52は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基であり、Z
51は2価の有機基であり、Rf
51は炭素数1乃至11のフッ化アルキル基である。fは0乃至2の整数、gは1乃至3の整数で、かつ、f+g=3である。)
上記一般式(5)中のR51及びR52のアルキル基としては、炭素数1乃至3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基がより好ましい。
また、上記一般式(5)中のZ51の2価の有機基としては、例えば、アルキレン基及びアリーレン基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1乃至6のアルキレン基が好ましく、特に、エチレン基がより好ましい。また、上記一般式(5)中のRf51の炭素数1乃至31のフッ化アルキル基としては、処理性の観点から、特に炭素数6乃至11の直鎖状のフッ化アルキル基が好ましい。
上記一般式(5)中のgは3であることが好ましい。また、上記一般式(5)中のfが2の場合、2個のR51は互いに異なっていてもよい。上記一般式(5)中のgが2又は3の場合、2個又は3個のR52は互いに異なっていてもよい。
以下に、上記一般式(5)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。なお、式中のRはメチル基又はエチル基である。
(5−1):CF3(CH2)2Si(OR)3
(5−2):F(CF2)2(CH2)2Si(OR)3
(5−3):F(CF2)4(CH2)2Si(OR)3
(5−4):F(CF2)6(CH2)2Si(OR)3
(5−5):F(CF2)8(CH2)2Si(OR)3
(5−6):F(CF2)10(CH2)2Si(OR)3
中では、化合物(3−4)〜化合物(3−6)が好ましい。
これらの加水分解性シラン化合物は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、上記工程Aにおいて、上述の加水分解性シラン化合物以外の加水分解性シランをさらに併用してもよい。上述の加水分解性シラン化合物以外の加水分解性シランとしては、例えば、下記一般式(8)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物が挙げられる。
〔式(8)中、R
81は、フェニル基置換のアルキル基若しくは無置換のアルキル基、又は、アルキル基置換のアリール基若しくは無置換のアリール基であり、R
82は飽和若しくは不飽和の1価の炭化水素基である。hは0乃至3の整数、kは1乃至4の整数で、かつ、h+k=4である。)
上記一般式(8)中のR81のフェニル基置換のアルキル基若しくは無置換のアルキル基のアルキル基としては、炭素数1乃至21の直鎖状のアルキル基が好ましい。上記一般式(8)中のR81のアルキル基置換のアリール基若しくは無置換のアリール基のアリール基としては、フェニル基が好ましい。
上記一般式(8)中のhは1乃至3の整数であることが好ましく、特に、1であることがより好ましい。また、上記一般式(8)中のkは1乃至3の整数であることが好ましく、特に、3であることがより好ましい。
上記一般式(8)中のR82の飽和又は不飽和の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1乃至3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基、n−プロピル基がより好ましい。
上記一般式(8)中のhが2又は3の場合、2個又は3個のR81は互いに異なっていてもよい。また、上記式(8)中のkが2、3又は4の場合、2個、3個又は4個のR82は互いに異なっていてもよい。
以下に、上記一般式(8)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
(8−1):テトラメトキシシラン
(8−2):テトラエトキシシラン
(8−3):テトラプロポキシシラン
(8−4):メチルトリメトキシシラン
(8−5):メチルトリエトキシシラン
(8−6):メチルトリプロポキシシラン
(8−7):エチルトリメトキシシラン
(8−8):エチルトリエトキシシラン
(8−9):エチルトリプロポキシシラン
(8−10):プロピルトリメトキシシラン
(8−11):プロピルトリエトキシシラン
(8−12):プロピルトリプロポキシシラン
(8−13):ヘキシルトリメトキシシラン
(8−14):ヘキシルトリエトキシシラン
(8−15):フェニルトリプロポキシシラン
(8−16):デシルトリメトキシシラン
(8−17):デシルトリエトキシシラン
(8−18):デシルトリプロポキシシラン
ここにおいて、オキシアルキレン基を有するポリシロキサンが、フッ化アルキル基を有し、かつ、ポリシロキサンの全質量に対して、アリール基が2質量%以上40質量%以下、アルキル基が2質量%以上30質量%以下、オキシアルキレン基が5質量%以上90質量%以下及びフッ化アルキル基が2質量%以上50質量%以下であることが、表面特性から好ましい。
なお、本明細書では、上記加水分解性シラン化合物のうち、一般式(6)で示される加水分解性シラン化合物を「カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物」といい、その他の加水分解性シラン化合物を「他の加水分解性シラン化合物」とする。
次に、本発明にかかる帯電部材の構成を、前記ポリシロキサンを含有する表面層の具体的な形成方法を含めて説明する。
図2に、本発明の帯電部材の一例である帯電ローラの、軸方向に対し垂直な面における断面模式図を示す。図2中、101は帯電部材支持体であり、102は導電性弾性層であり、103は表面層である。感光体と帯電部材との当接ニップを十分に確保する観点から、帯電部材は、例えば図2に示したように、帯電部材支持体101と表面層103との間に導電性弾性層102を設けた構成であることが好ましい。換言すれば、帯電部材は、帯電部材支持体101、該支持体101上に形成された導電性弾性層102、及び、該導電性弾性層102上に形成された表面層103を有するものであることが好ましい。また、帯電部材支持体101と導電性弾性層102との間や導電性弾性層102と表面層103との間に別の層を1つ又は2つ以上設けてもよい。
以下、帯電部材支持体、該帯電部材支持体上に形成された導電性弾性層、及び、該導電性弾性層上に形成された表面層を有する帯電部材を例にとって説明する。
帯電部材支持体としては、導電性を有していればよく(導電性支持体)、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケルなどの金属製(合金製)の支持体を用いることができる。また、これらの表面に耐傷性付与を目的として、導電性を損なわない範囲で、メッキ処理などの表面処理を施してもよい。
導電性弾性層を構成する材料として、従来の帯電部材の弾性層(導電性弾性層)に用いられているゴムや熱可塑性エラストマーなどの弾性体を1種又は2種以上用いることができる。
ゴムとしては、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリロニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴム及びアルキルエーテルゴムなどが挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマーなどが挙げられる。スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、「ラバロン」(商品名、三菱化学株式会社製)、「セプトンコンパウンド」(商品名、クラレ株式会社製)などがある。オレフィン系エラストマーの市販品としては、例えば、「サーモラン(商品名、三菱化学株式会社製)」、「ミラストマー」(商品名、三井化学株式開き社製)、「住友TPE」(商品名、住友化学株式会社製)、「サントプレーン」(商品名、アドバンストエラストマーシステムズ社製)などがある。
また、導電性弾性層には、導電剤を適宜使用することによって、その導電性を所定の値にすることができる。導電性弾性層の電気抵抗は、導電剤の種類及び使用量を適宜選択することによって調整することができ、その電気抵抗の好適な範囲は102Ω以上108Ω以下であり、より好適な範囲は103Ω以上106Ω以下である。
導電性弾性層に用いられる導電剤としては、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、帯電防止剤、電解質などが挙げられる。
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム及び変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウムなどの第四級アンモニウム塩を用いることができる。第四級アンモニウム塩として、具体的には、過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、エトサルフェート塩及びハロゲン化ベンジル塩(臭化ベンジル塩や塩化ベンジル塩など)などが挙げられる。
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩及び高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩を用いることができる。
帯電防止剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及び多価アルコール脂肪酸エステルなどの非イオン性帯電防止剤などが挙げられる。
電解質としては、例えば、周期律表第1族の金属(LiやNaやKなど)の塩(第四級アンモニウム塩など)が挙げられる。周期律表第1族の金属の塩として、具体的には、LiCF3SO3、NaClO4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCN及びNaClなどが挙げられる。
また、導電剤として、周期律表第2族の金属(CaやBaなど)の塩(Ca(ClO4)2など)やこれから誘導される帯電防止剤が、イソシアネート(一級アミノ基や二級アミノ基など)と反応可能な活性水素を有する基(水酸基やカルボキシル基など)を1つ以上持ったものを用いることもできる。また、これらと多価アルコール(1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)若しくはその誘導体との錯体や、これらとモノオール(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなど)との錯体などのイオン導電性導電剤を用いることもできる。
また、導電剤として、ケッチェンブラックEC(商品名)、アセチレンブラック、ゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、及び、熱分解カーボンなどの導電性のカーボンを用いることもできる。ゴム用カーボンとして、具体的には、SAF(超耐摩耗性)、ISAF(準超耐摩耗性)、HAF(高耐摩耗性)、FEF(良押し出し性)、GPF(汎用性)、SRF(中補強性)、FT(微粒熱分解)、MT(中粒熱分解)などの各ゴム用カーボンが挙げられる。また、天然グラファイト、人造グラファイトなどのグラファイトを用いることもできる。また、導電性弾性層用の導電剤として、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物や、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウムなどの金属を用いることもできる。また、ポリアニリン、ポリピロール及びポリアセチレンなどの導電性ポリマーを用いることもできる。
また、導電性弾性層には、無機又は有機の充填剤や架橋剤を添加してもよい。
充填剤としては、例えば、シリカ(ホワイトカーボン)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウムなどが挙げられる。架橋剤としては、例えば、イオウ、過酸化物、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤などが挙げられる。
導電性弾性層の硬度は、帯電部材と被帯電体である電子写真感光体とを当接させた際の帯電部材の変形を抑制する観点から、アスカーC硬度で70度以上であることが好ましく、73度以上であることがより好ましい。本発明において、アスカーC硬度の測定は、測定対象の表面にゴム硬さ計「アスカーゴム硬度計C型」(商品名、高分子計器株式会社製)の押針を当接し、1000g加重の条件で行った。
これらのゴム材料の混合方法として、バンバリーミキサーや加圧式ニーダーといった密閉型混合機を使用した混合方法や、オープンロールのような開放型の混合機を使用した混合方法などを例示することができる。
混合された未加硫ゴム材料はベント式押出機によってチューブ状に成形される。図4にベント式押出機の概要を模式的に示す。押出機50はシリンダー51内に押出スクリュー52を回転自在に内挿している。スクリュー52の先端側のシリンダー51端部にはクロスヘッド53が取り付けられている。シリンダー51にはベント口55が設けられており、ベント口55は不図示の真空ポンプへ接続されており、該真空ポンプによりシリンダー51内が真空引きされる。材料投入口54より投入された未加硫ゴムは、押出スクリュー52の回転により、クロスヘッド53側へと搬送される。未加硫ゴム材料はシリンダー内を通過する際に、ベント口に接続された真空ポンプにより、未加硫ゴムの揮発分が除去される。クロスヘッド53へと搬送された未加硫ゴムは、不図示の芯金供給装置より供給された芯金31の外周に積層され、クロスヘッド先端のダイス56を通り、芯金31と共に共押出される。
押出機50のシリンダー51、スクリュー52、クロスヘッド53は各々、不図示の温調機によって指定された温度に保たれている。押出時の温度は高い方がベント効果は良好で、未加硫成形体の揮発成分を低減させることができる。これはゴムの気体透過性が高温であるほど大きくなるためであるが、あまりに温度を上げすぎると、押出加工中に加硫反応が始まってしまう、いわゆるヤケ(スコーチともいう)の問題が生じる。よって好ましい押出機50の設定温度は60℃以上100℃以下である。
図5には押出機から押出されたローラの連続加硫装置の概要を模式的に示した。押出機50により、芯金31の外周に未加硫ゴムが積層された未加硫ゴムローラーは、不図示の搬送コンベアーによって、加硫炉60へ連続的に搬送される。加硫炉60は予め加硫温度に保たれており、搬送されるスピードと加硫炉60の長さにより、加硫時間が調整される。加硫温度と時間は使用される原料ゴムの種類に依存するが、一般的に140℃乃至200℃、15分乃至120分とされる。
さらに、精密な導電性弾性層形状とするため、加硫されたローラ状の導電性弾性体は、研磨によって成形することが好ましい。微妙なクラウン形状を精密に仕上げるため、導電性弾性層の軸方向全長よりも幅の広い回転砥石を用いて研磨することがより好ましい。
研磨の一例を図6に示す。図6のように弾性ローラ71は回転する砥石72と平行に保持され回転している。弾性ローラの回転軸と砥石の回転軸とを平行を保ったまま距離を変化させることにより、研磨され、導電性弾性層の表面形状がクラウン形状となり、表面粗さも一定になる。砥石の形状は、導電性弾性層の形状が良好なクラウン形状となるように、ダイヤモンドの刃物73を使って精密な形状に整えられる。砥石の材質は、グリーンカーボランダム等の公知の材質で、研磨条件に応じて砥石の番手を決定する。
以下、表面層の具体的な形成方法の一例について説明する。
まず、アリール基を有する加水分解性シラン化合物及びカチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物、並びに、必要に応じてその他の加水分解性シラン化合物を水の存在下で加水分解反応させることによって加水分解縮合物を得る(工程A)。加水分解反応の際、温度やpHなどを制御することで、加水分解縮合物の縮合度を調整することができる。
また、加水分解反応の際、加水分解反応の触媒として金属アルコキシドなどを利用し、縮合度を制御してもよい。金属アルコキシドとしては、アルミニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、ジルコニアアルコキシドなど、ならびに、これらの錯体(アセチルアセトン錯体など)を挙げることができる。
また、工程Aでの、アリール基を有する加水分解性シラン化合物及びカチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物の配合割合は、得られるポリシロキサン中の基及びシロキサン部の含有量が次の範囲となることが好ましい。
アリール基の含有量 :2質量%乃至40質量%
アルキル基の含有量 :2質量%乃至30質量%
オキシアルキレン基の含有量 :5質量%乃至90質量%
上記含有量は、いずれもポリシロキサンの全質量に対する百分率を示し、アリール基、オキシアルキレン基及びシロキサン部を合わせた含有量は、通常、5質量%以上90質量%以下とすることが好ましく、15質量%以上50質量%以下とすることがより好ましい。また、アリール基を有する加水分解性シラン化合物を、全加水分解性シラン化合物に対して20mol%以上70mol%以下になるように配合することがより好ましい。
また、工程Aにおいて、上記式(6)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用する場合には、得られるポリシロキサン中の基及び部分の含有量が次の範囲となることが好ましい。
アリール基の含有量 :2質量%乃至40質量%
アルキル基の含有量 :2質量%乃至30質量%
オキシアルキレン基の含有量 :5質量%乃至90質量%
フッ化アルキル基の含有量 :2質量%乃至50質量%
上記含有量は、いずれもポリシロキサン化合物の全質量に対する百分率を示し、アリール基、オキシアルキレン基、フッ化アルキル基及びシロキサン部を合わせた含有量は、通常、10質量%以上90質量%以下とすることが好ましく、15質量%以上50質量%以下とすることがより好ましい。また、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物とフッ化アルキル基を含有する加水分解性シラン化合物とのモル比は10:1乃至1:10になるようにすることがより好ましい。
次に、加水分解縮合物を含む表面層用塗布液を調製し、表面層の直下となる層(例えば導電性弾性層。帯電部材支持体の場合もある。)の上に、調製した表面層用塗布液を塗布する。
表面層用塗布液を調製する際には、塗布性向上のために、加水分解縮合物以外に、適当な溶剤を用いてもよい。適当な溶剤としては、例えば、エタノール及び2−ブタノールなどのアルコールや、酢酸エチルやメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなど、あるいは、これらを混合したものが挙げられる。また、表面層用塗布液を導電性弾性部材(導電性弾性層)上に塗布する際には、ロールコーター塗布、浸漬塗布、リング塗布などの方法を採用することができる。
上記加水分解性シラン化合物としては、置換及び無置換アリール基から選ばれた少なくとも一種の基を有する加水分解性シラン化合物を用いることが好ましい。これらのなかでは、一般式(5)で示される構造を有するアリール基を有する加水分解性シラン化合物が好適である。
次に、導電性弾性部材(導電性弾性層)上に塗布された表面層用塗布液層に活性エネルギー線を照射する。すると、表面層用塗布液層に含まれる加水分解性縮合物に含まれるカチオン重合可能な基は開裂する。これによって、該表面塗布液層中の加水分解縮合物を架橋させることができる。加水分解縮合物は架橋によって硬化し、これを乾燥すると表面層が形成される(工程B)。
活性エネルギー照射時に発生した熱により、導電性弾性部材の導電性弾性層が膨張し、その後冷却によって収縮した際、表面層がこの膨張・収縮に十分に追従しないと、シワやクラックが多い表面層になってしまう場合がある。架橋反応に紫外線を用いた場合、短時間(15分以内)に加水分解性縮合物を架橋することができる上、熱の発生も少なく、表面層のシワやクラックが発生しにくい。また、帯電部材の置かれる環境が温湿度の変化が急激な環境である場合、その温湿度の変化による導電性弾性層の膨張・収縮に表面層が十分に追従しないと、表面層にシワやクラックが発生することがある。架橋反応を熱の発生が少ない紫外線によって行えば、導電性弾性層と表面層との密着性が高まり、導電性弾性層の膨張・収縮に表面層が十分に追従できるようになるため、環境の温湿度の変化による表面層のシワやクラックも抑制することができる。また、架橋反応を紫外線によって行えば、熱履歴による導電性弾性層の劣化を抑制することができるため、導電性弾性層の電気的特性の低下を抑制することもできる。これらの理由により、活性エネルギー線としては、紫外線を用いることが好ましい。
紫外線の照射には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、エキシマUVランプなどを用いることができ、これらのうち、紫外線の波長が150nm乃至480nmの光を豊富に含む紫外線源が好ましく用いられる。
なお、紫外線の積算光量は、以下のように定義される。
紫外線積算光量[mJ/cm2]=紫外線強度[mW/cm2]×照射時間[s]
紫外線の積算光量の調節は、照射時間や、ランプ出力や、ランプと被照射体との距離などで行うことが可能である。また、照射時間内で積算光量に勾配をつけてもよい。低圧水銀ランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機株式会社製の紫外線積算光量計UIT−150−A(商品名)やUVD−S254(商品名)を用いて測定することができる。エキシマUVランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機株式会社製の紫外線積算光量計UIT−150−A(商品名)やVUV−S172(商品名)を用いて測定することができる。
また、架橋反応の際、架橋効率向上の観点から、カチオン重合触媒(重合開始剤)を共存させておくことが好ましい。例えば、活性エネルギー線によって賦活化されるルイス酸のオニウム塩に対してエポキシ基は高い反応性を示すことから、上記のカチオン重合可能な基がエポキシ基である場合、カチオン重合触媒としては、ルイス酸のオニウム塩を用いることが好ましい。
その他のカチオン重合触媒としては、例えば、ボレート塩、イミド構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、アゾ化合物、過酸化物などが挙げられる。各種カチオン重合触媒の中でも、感度、安定性及び反応性から、芳香族スルホニウム塩や芳香族ヨードニウム塩が好ましい。特に、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム塩や、下記化学式(9)の化合物「アデカオプトマーSP150」(商品名、旭電化工業株式会社製)や、下記化学式(10)の化合物「イルガキュア261」(商品名、チバスペシャルティーケミカルズ社製)が好ましい。
カチオン重合触媒の使用量は、加水分解縮合物に対して0.1質量%以上3.0質量%以下であることが好ましい。
また、帯電部材の表面へのトナーや外添剤の固着を抑制するために、帯電部材の表面(=表面層の表面)の粗さ(Rzjis;JIS B 0601:2001に準拠して測定)は10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましい。
また、電子写真感光体との当接ニップを十分に確保する観点から、帯電部材の表面層の弾性率は30GPa以下であることが好ましい。一方、一般的に、表面層の弾性率は小さくなるほど架橋密度が小さくなる傾向にある。このため、帯電部材に導電性弾性層を設ける場合には、導電性弾性層中の低分子量成分が帯電部材の表面にブリードアウトして電子写真感光体の表面を汚染してしまうのを抑制する観点から、表面層の弾性率は100MPa以上であることが好ましい。
また、表面層の層厚は厚いほど低分子量成分のブリードアウトの抑制する効果が大きくなる傾向にあるため、帯電部材に導電性弾性層を設ける場合には、表面層の層厚は0.010μm以上であることが好ましく、0.050μm以上であることがより好ましい。一方、表面層の層厚は薄いほど帯電部材の帯電能が向上する傾向にあるため、表面層の層厚は1.000μm以下であることが好ましく、0.300μm以下であることがより好ましい。
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
(合成例1 ポリカーボネート重合体I)
10%水酸化ナトリウム水溶液500mlに、ビスフェノール化合物(1−13)120gを溶解した。この溶液にジクロロメタン300mlを加え攪拌し、溶液温度を10℃乃至15℃に保ちながら、ホスゲン100gを1時間かけて吹き込んだ。ホスゲンを約70%吹き込んだところでシロキサン化合物(2−1)(平均繰返し数m=40)25gとシロキサン化合物(3−1)(平均繰返し数n=40)55gを溶液に加えた。ホスゲンの導入終了後、激しく攪拌して反応液を乳化させ、0.2mlのトリエチルアミンを加え、さらに1時間攪拌した。その後ジクロロメタン相を分離し、リン酸で中和した後、pH7程度になるまで水洗を繰り返した。続いてこの液相をイソプロパノール中に滴下し、沈殿物をろ過、乾燥して、白色粉状のポリカーボネート重合体Iを得た。
得られたポリカーボネート重合体Iの組成分析及び物性測定を以下のようにした。
FT−IR(株式会社島津製作所製)による測定:カルボニル基による吸収、エーテル結合による吸収1240cm-1及びカーボネート結合が確認された。また、3650cm-1乃至3200cm-1の吸収はほとんどなく、水酸基は認められなかった。更に、1100cm-1乃至1000cm-1のシロキサンに起因するピークも確認された。1H−NMRにおいてもシロキサン部位及びポリカーボネート部位が存在することが確認された。MALDI−TOF−MSにより測定したところ、化合物(2−1)から形成されたシロキサン部と化合物(3−1)から形成されたシロキサン部が質量比で約1:2であり、平均繰返し数の比m:nはおよそ40:40であることを確認できた。また、粘度平均分子量(Mv)は20600であり、シロキサン部の質量構成比率は約40%である。したがって、このポリカーボネート重合体は両方の末端にポリシロキサン部を有した構造であり、かつ主鎖にもシロキサン部を有する構造である。
粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ(Ubelode)型粘度計を用いて測定した比粘度から極限粘度を求め、これをマーク−ホーウィンク(Mark−Houwink)の粘度式にて算出した。具体的には、試料0.5gをジクロロメタン100mlに溶解し、ウベローデ型粘度計で、25℃における比粘度を測定し、この比粘度から極限粘度を求めた。そして、マーク−ホーウィンクの粘度式のKとaをそれぞれ1.23×10-4と0.83として、粘度平均分子量を算出した。
(合成例2 ポリカーボネート重合体II)
シロキサン化合物(2−1)を平均繰返し数m=20のものに、また、シロキサン化合物(3−1)を平均繰返し数n=20のものにした以外は、合成例1と同様にしてポリカーボネート重合体IIを得た。このものは、FT−IRでエーテル結合、カーボネート結合が確認された。また、MALDI−TOF−MSの測定では、化合物(2−1)から形成されたシロキサン部と化合物(3−1)から形成されたシロキサン部が質量比で約1:2であり、平均繰返し数の比m:nはおよそ20:20であることが確認できた。また、粘度平均分子量(Mv)は26000であり、シロキサン部の質量構成比率は約40%である。したがって、このポリカーボネート重合体IIは両方の末端にポリシロキサン部を有した構造であり、かつ主鎖にもシロキサン部を有する構造である。
(合成例3 ポリカーボネート重合体III)
シロキサン化合物(2−1)を平均繰返し数m=10のものとした以外は、合成例1と同様にしてポリカーボネート重合体IIIを得た。このものは、FT−IRでエーテル結合、カーボネート結合が確認された。また、MALDI−TOF−MSの測定では、化合物(2−1)から形成されたシロキサン部と化合物(3−1)から形成されたシロキサン部が質量比で約1:2であり、平均繰返し数の比m:nはおよそ10:40であることが確認できた。また、粘度平均分子量(Mv)は19000であり、シロキサン部の質量構成比率は約20%である。したがって、このポリカーボネート重合体IIIは両方の末端にポリシロキサン部を有した構造であり、かつ主鎖にもシロキサン部を有する構造である。
<製造例1 感光体1>
直径30mm、長さ260mmのアルミニウムシリンダーを支持体とした。
10質量%酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した酸化チタン粒子 50部、レゾール型フェノール樹脂 25部、メトキシプロパノール 30部、メタノール 30部及びシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、重量平均分子量:3000)0.002部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、これを140℃で20分間硬化して、膜厚が20μmである導電層を形成した。
次に、N−メトキシメチル化6ナイロン 5部をメタノール 95部に溶解して、中間層用塗布液を調製した。この中間層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、これを100℃で20分間乾燥して、膜厚が0.5μmである中間層を形成した。
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質) 10部、下記化学式(11)の化合物 0.1部、及びポリビニルブチラール樹脂「エスレックBX−1(商品名、積水化学工業株式会社製)5部を溶解させ、その後、酢酸エチル250部を加えて、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を中間層上に浸漬塗布し、これを100℃で10分間乾燥して、膜厚が0.16μmである電荷発生層を形成した。
次いで、電荷輸送物質として下記化学式(12)の化合物 35部と下記化学式(13)で示される化合物 5部を
下記構造式(14)で示される繰り返し構成単位を有するポリカーボネート樹脂(重量平均分子量:55000) 50部、合成例1で得られたポリカーボネート重合体I 1.8部及び化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサン 0.2部と共に、モノクロルベンゼン400部に溶解して、電荷輸送層用溶液(粘度220mPa・s)を得た。
上記で作製した電荷発生層の上に、この溶液を浸漬塗布し、120℃で1時間加熱乾燥し、膜厚が15μmである電荷輸送層を形成し、感光体1を作製した。
〈製造例2 感光体2〉
ポリカーボネート重合体Iを4.0部と、化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサンを0.4部にした以外は、製造例1と同様にして、感光体2を作製した。
〈製造例3 感光体3〉
ポリカーボネート重合体Iを0.1部と、化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサンを0.01部にした以外は、製造例1と同様にして、感光体3を作製した。
〈製造例4 感光体4〉
ポリカーボネート重合体Iを0.05部と、化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサンを0.01部にした以外は、製造例1と同様にして、感光体4を作製した。
〈製造例5 感光体5〉
化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサンを0.5部にした以外は、製造例1と同様にして、感光体5を作製した。
〈製造例6 感光体6〉
ポリカーボネート重合体Iを4.0部と、化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサンを1.0部にした以外は、製造例1と同様にして、感光体6を作製した。
〈製造例7 感光体7〉
化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサンを0.1部にした以外は、製造例1と同様にして、感光体7を作製した。
〈製造例8 感光体8〉
化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサンを0.07部にした以外は、製造例1と同様にして、感光体8を作製した。
〈製造例9 感光体9〉
化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサンを0.4部にした以外は、製造例1と同様にして、感光体9を作製した。
〈製造例10 感光体10〉
ポリカーボネート重合体Iを合成例2で得られたポリカーボネート重合体IIに換えた以外は、製造例1と同様にして、感光体10を作製した。
〈製造例11 感光体11〉
ポリカーボネート重合体I及び化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサンを加えない以外は、実施例1と同様にして、感光体11を作製した。
〈製造例12 感光体12〉
ポリカーボネート重合体Iを用いず、代わりにシロキサン化合物(3−1)4.0部を用いた以外は、製造例1と同様にして、感光体12を作製した。
〈製造例13 感光体13〉
ポリカーボネート重合体Iを用いず、代わりに化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサンを4.0部に増やした以外は、製造例1と同様にして、感光体13を作製した。
〈製造例14 感光体14〉
ポリカーボネート重合体Iを合成例3で得られたポリカーボネート重合体IIIに変更し、かつ化学式(4)で示されるポリジメチルシロキサンを加えない以外は、製造例1と同様にして、感光体14を作製した。
製造例1〜14の感光体の表面層を形成するための原材料の配合量及び得られた感光体の物性を表5に示す。
〈製造例15 帯電部材1〉
(帯電ローラの作製)
・弾性層用の未加硫ゴム組成物の調製
原料ゴムとしてNBR「JSR N230SV」(商品名、JSR株式会社製)100部、加工助剤としてステアリン酸亜鉛1部、加硫促進助剤として酸化亜鉛5部、充填剤として炭酸カルシウム「ナノックス#30」(商品名、丸尾カルシウム株式会社製)20部、導電剤としてカーボンブラック「トーカブラック#7360SB」(商品名、東海カーボン株式会社製)48部を6リットル加圧ニーダー「TD6−15MDX」(商品名、株式会社トーシン製)にて、充填率70vol%、ブレード回転数30rpmで16分混合して、A練りゴム組成物を得た。この未加硫ゴム組成物174質量部に対して、架橋剤として硫黄1.2部、加硫促進剤としてテトラベンジルチウラムジスルフィド「PERKACIT−TBzTD」(商品名、FLEXSYS社製)4.5部をロール径12インチのオープンロールにて、前ロール回転数8rpm、後ロール回転数10rpm、ロール間隙2mmで、左右の切り返しを合計20回実施した後、ロール間隙を0.5mmとして薄通し10回を行い、弾性層用の未加硫ゴム組成物を得た。
・弾性層の形成
得られた未加硫ゴム組成物を、クロスヘッドを用いた押出成形によって、芯金(直径6mm、長さ252mm)を中心として、同軸状に円筒形に同時に押出し、端部を切断して、芯金の外周に未加硫の弾性層を積層した未加硫ゴムローラーを作製した。押出機はシリンダー径45mm(Φ45)、L/D=20の押出機を使用し、押出時の温調はヘッド90℃、シリンダー90℃、スクリュー90℃とした。
未加硫ゴムローラーは連続して200本押出し、直ちに連続加硫炉で160℃、60分の加硫を行った。加硫後、両端を切断し、弾性層部分の軸方向幅を228mmとした後、導電性弾性層部分の表面を回転砥石で研磨して、導電性弾性ローラ(表面研磨後の導電性弾性ローラ)を得た。この導電性弾性ローラは、端部直径8.2mm、中央部直径8.5mmのクラウン形状の導電性弾性層を有しており、この導電性弾性層の表面の十点平均粗さ(Rzjis)は5.23μm、振れは28μmであった。また、導電性弾性層のアスカーC硬度は78度であった。
十点平均粗さ(Rzjis)はJIS B 0601:2001に準拠して測定した。
振れの測定は、高精度レーザー測定機「LSM−430v」(商品名、ミツトヨ株式会社製)を用いて行った。詳しくは、該測定機を用いて外径を測定し、最大外径値と最小外径値の差を外径差振れとし、この測定を5点で行い、5点の外径差振れの平均値を被測定物の振れとした。
アスカーC硬度の測定は、前述したように、測定対象の表面にゴム硬さ計「アスカーゴム硬度計C型」(商品名)の押針を当接し、23℃/50%RH環境下において、1000g加重の条件で行った。
押出し200本目の弾性ローラについて、図7に概略図を示した弾性ローラの電気抵抗測定装置を用い、電気抵抗及びその周ムラ測定を行った。弾性ローラ40は芯金31の両端部を不図示の押圧手段で円柱状のアルミドラム42に圧接され、アルミドラム42の回転駆動に伴い従動回転する。この状態で、弾性ローラ40の芯金部分31に電源43を用いて直流電圧を印加し、42のアルミドラムに直列に接続した抵抗43にかる電圧から、ゴムローラーの電気抵抗を算出した。なお、測定は、温度23℃、湿度50%RH(N/Nとも記載する)環境下で、芯金とアルミドラムの間に直流200Vの電圧を3秒印加して行った。なお、電気抵抗は最後の2秒間の平均値とし、同時に2秒間の最大値及び最小値を測定し、最大値/最小値を周ムラとした。その結果、本弾性ローラの電気抵抗は1.2×104Ω、周ムラは1.2倍であった。
・表面層用塗布液の調製
次に、下記原料を混合した後、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流(120℃)を行って、加水分解性シラン化合物の縮合物を得た。
・フェニルトリエトキシシラン(PhTES) 44.43g(0.185mol)(加水分解性シラン化合物総量に対して57.75mol%相当))
・グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)17.15g(0.062mol)
・ヘキシルトリメトキシシラン(HETMS) 13.18g(0.064mol)
・トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FTS、パーフルオロアルキル基の炭素数6) 4.90g(0.010mol)
・水 25.93g
・エタノール 58.63g
この縮合物を2−ブタノール/エタノールの混合溶媒に添加することによって、固形分7質量%の縮合物含有アルコール溶液を調製した。この100gに対して、光カチオン重合開始剤「アデカオプトマーSP−150」(商品名)をメチルイソブチルケトン(MIBK)で10質量%に希釈した光カチオン重合開始剤溶液2gを添加した。さらにエタノールで希釈して、固形分1質量%の表面層用塗布液を調製した。
・表面層の形成
次に、上記で作製した表面研磨後の導電性弾性ローラの導電性弾性層上に表面層用塗布液をリング塗布(吐出量:0.020ml/s、リング部のスピード:85mm/s、総吐出量:0.065ml)した。そして、リング塗布した表面層用塗布液に254nmの波長の紫外線を積算光量が11000mJ/cm2になるように照射して、表面層用塗布液を硬化(架橋反応による硬化)した。この硬化したものを数秒間(2秒乃至3秒間)放置して乾燥して表面層を形成した。紫外線の照射には、ハリソン東芝ライティング株式会社製の低圧水銀ランプを用いた。紫外線の照射によってグリシドキシプロピルトリエトキシシランからのグリシドキシ基が開裂し、縮合物の架橋反応が生じていると考えられる。
以上のようにして、支持体、該支持体上に形成された導電性弾性層、及び、該導電性弾性層上に形成された表面層を有する帯電ローラ(帯電部材1)を作製した。
(帯電ローラの物性の測定)
得られた帯電ローラの物性は、以下に示す方法で測定した。
表面層の接触角:上述の方法で測定した。
表面層のフッ素原子個数%:上述の方法で測定した。
・表面層の弾性率
帯電ローラの表面層の弾性率は、23℃/50%RH環境下において、表面皮膜物性試験機「フィッシャースコープH100V」(商品名、フィッシャーインストルメンツ社製)を用いて測定した。圧子を測定対象の表面から1μm/sの速度で進入させたときの値を弾性率とした。なお、弾性率測定用のサンプルには、アルミシート上に上記表面層用塗布液を、硬化後の膜厚が10μm以上になるように塗布し、帯電ローラ作製時と同条件でUV硬化又は熱硬化させたものを使用した。
・表面層の層厚
膜厚測定はESCAにて深さ方向分析にて行った。ESCAは、装置として「QUANTUM2000」(商品名、アルバックファイ株式会社製)を用い、下記条件で測定した。
x線発生条件:モノクロAl・kα線・25W・15kV
測定方法:Φ100μmの領域について、tilt45°にて、Si2pピークをパスエネルギー23.5eV、ステップ幅0.1eV、スキャン回数5回で取り込み、スパッタ時間6秒の繰り返しスパッタにてSi2pピーク強度が一定になるまで測定した。
スパッタは、Arイオンを用い、スパッタ条件は加速電圧4kV、スパッタ領域は2×2mmとした。ここでSi2pピーク強度が一定になるまでに要した合計スパッタ時間を、予め求めておいたスパッタ率にて膜厚に換算した。この時のスパッタ率は30nm/minであった。スパッタ率は膜厚をSEMやTEM等で測定したものと同等の試料をESCAにて深さ方向分析を行うことで決定した。
なお、ESCAの測定サンプルは、ローラの表面から表面層が5×5mmの大きさになるように切り出したものである。また、平均膜厚はローラ上の任意の点を5箇所測定したものを平均して求めた。
・表面層の十点平均粗さ
帯電ローラの表面層の十点平均粗さ(Rzjis)は、JIS B0601:2001に準拠して測定した。
・表面層の動摩擦係数
本発明において動摩擦係数の測定に用いる測定機の概略図を図8に示す。図8において、201は測定対象である帯電ロール(帯電部材)であり、202は帯電ロールに所定の角度θで接触させたベルト(厚さ100μm、幅30mm、長さ180mm、ポリエチレンテレフタレート(PET)製(商品名:ルミラーS10 #100、東レ株式会社製))である。また、203はベルト202の一端に繋がれた重りであり、204はベルト202の他端に繋がれた荷重計であり、205は荷重計204に接続された記録計である。図8に示す状態で、帯電ロール201を所定の方向及び所定の速度で回転させたとき、荷重計204で測定された力をF[g重]、重りの重さとベルトの重さとの和をW[g重]とすると、摩擦係数は以下の式で求められる。なお、この測定方法は、オイラーのベルト式に準拠している。
摩擦係数=(1/θ)ln(F/W)
この測定方法により得られるチャートの一例を図9に示す。図おいて、帯電部材を回転させた直後の値が回転を開始するのに必要な力であり、それ以降が回転を継続するのに必要な力であるから、回転開始点(すなわちt=0[秒]の時点)の摩擦係数が静摩擦係数である。t>0[秒]の任意の時間における摩擦係数が任意の時間における動摩擦係数である。本発明では、回転開始点から10秒後に得られる摩擦係数をもって、上記の動摩擦係数(μ)とした。なお、本発明においては、W=100g重、帯電部材の回転速度を115rpm、測定環境を23℃/50%RHとした。
・ポリシロキサン中の官能基の含有量
10倍乃至1000倍の光学顕微鏡下、光学顕微鏡に設置した3次元粗微動マイクロマニピュレーター(株式会社ナリシゲ製)を用い、帯電ローラの表面層から1mg程度の試料を採取した。採取した試料を、TG−MS法(TG装置にMS装置を直結)により、加熱時に発生する気体の質量数ごとの濃度変化を、重量変化と同時に、温度の関数として追跡した。測定の条件を表6に示す。
上記条件で測定して得られたTG−DTG(Derivative thrmogravimetry)曲線によると、400℃乃至500℃付近及び500℃乃至650℃付近に、2段階の顕著な重量減少が認められた。
ここで、400℃乃至500℃で発生する気体について、質量数(m/z)16、31、41、43、58、59、78、91などピークが観察された。これらのピークについてについて、質量数(m/z)31、43、58、59はオキシアルキレン基由来、質量数(m/z)78(ベンゼン)、91(トルエン)などはアリール基由来、及び質量数(m/z)16、41などはアルキル基由来と同定された。なお、オキシアルキレン基はグリシドキシプロピルトリエトキシシランからのグリシドキシ基由来である。これらのピークから、上記400℃乃至500℃で分解されポリシロキサンから発生した上記の各基に由来する気体成分の量を求めた。また、これらの各基に由来する気体成分の量と測定された重量減少率から、各温度で発生した上記の各基に由来する気体成分による重量減少率を求めた。これを上記400℃乃至500℃にわたって積算し、ポリシロキサン中のオキシアルキレン基、アリール基及びアルキル基の含有量を求めた。
また、500℃乃至650℃で発生する気体について、質量数(m/z)51、69、119、131のフッ化アルキル基(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシランのフッ化アルキル基由来)由来のピークが確認された。これらのピークから、上記500℃乃至650℃の各温度で分解されたポリシロキサンから発生したフッ化アルキル基に由来する気体成分の量を求めた。また、フッ化アルキル基に由来する気体成分の量と測定された重量減少率から、各温度で発生したフッ化アルキル基に由来する気体成分による重量減少率を求めた。これを上記500℃乃至600℃の温度範囲にわたって積算し、ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量を求めた。
なお、残渣はポリシロキサン中のシロキサン部であると考えられる。
〈製造例16 帯電部材2〉
表面層用塗布液の調製の加水分解性シラン化合物の配合を以下のように変更した以外は、製造例15と同様にして帯電部材2を作製した。
・PhTES 42.12g(0.175mol)
(加水分解性シラン化合物総量に対して54.75mol%相当)
・GPTES 16.26g(0.058mol)
・HETMS 13.18g(0.064mol)
・FTS(パーフルオロアルキル基の炭素数6)11.42g(0.022mol)
・水 25.93g
・エタノール 67.21g
〈製造例17 帯電部材3〉
表面層用塗布液の調製の加水分解性シラン化合物の配合を以下のように変更した以外は、製造例15と同様にして帯電部材3を作製した。
・PhTES 43.08g(0.179mol)
(加水分解性シラン化合物総量に対して56.00mol%相当)
・GPTES 12.47g(0.045mol)
・HETMS 13.18g(0.064mol)
・FTS(パーフルオロアルキル基の炭素数6)16.32g(0.032mol)
・水 25.93g
・エタノール 72.54g
〈製造例18 帯電部材4〉
表面層用塗布液の調製の加水分解性シラン化合物の配合を以下のように変更した以外は、製造例15と同様にして帯電部材4を作製した。
・PhTES 53.54g(0.223mol)
(加水分解性シラン化合物総量に対して69.60mol%相当))
・GPTES 15.50g(0.056mol)
・HETMS 6.59g(0.032mol)
・FTS(パーフルオロアルキル基の炭素数6) 4.90g(0.010mol)
・水 25.93g
・エタノール 57.40g
〈製造例19 帯電部材5〉
表面層用塗布液の調製の加水分解性シラン化合物の配合を以下のように変更した以外は、製造例15と同様にして帯電部材5を作製した。
・PhTES 40.62g(0.169mol)
(加水分解性シラン化合物総量に対して52.80mol%相当)
・GPTES 11.76g(0.042mol)
・HETMS 13.18g(0.064mol)
・FTS(パーフルオロアルキル基の炭素数6)22.85g(0.045mol)
・水 25.93g
・エタノール 81.18g
〈製造例20 帯電部材6〉
表面層用塗布液の調製の加水分解性シラン化合物の配合を以下のように変更した以外は、製造例15と同様にして帯電部材6を作製した。
・PhTES 48.62g(0.202mol)
(加水分解性シラン化合物総量に対して63.20mol%相当)
・GPTES 14.08g(0.051mol)
・HETMS 13.18g(0.064mol)
・FTS(パーフルオロアルキル基の炭素数6) 1.63g(0.003mol)
・水 25.93g
・エタノール 53.11g
〈製造例21 帯電部材7〉
表面層用塗布液の調製の加水分解性シラン化合物の配合を以下のように変更した以外は、製造例15と同様にして帯電部材7を作製した。
・PhTES 42.46g(0.177mol)
(加水分解性シラン化合物総量に対して55.20mol%相当)
・GPTES 12.29g(0.044mol)
・HETMS 6.59g(0.032mol)
・FTS(パーフルオロアルキル基の炭素数6)34.27g(0.067mol)
・水 25.93g
・エタノール 96.26g
〈製造例22 帯電部材8〉
加水分解性シラン化合物の配合を以下のように変更した以外は、製造例15と同様にして表面層用塗布液を調製した。
・PhTES 44.47g(0.185mol)
(加水分解性シラン化合物総量に対して59.49mol%相当)
・HETMS 25.96g(0.126mol)
・水 24.77g
・エタノール 45.07g
次に、製造例15と同様にして作製した表面研磨後の導電性弾性ローラの導電性弾性層上に表面層用塗布液をリング塗布(吐出量:0.020ml/s、リング部のスピード:85mm/s、総吐出量:0.065ml)した。その後、160℃に温調した熱風循環炉に2時間放置して、表面層用塗布液を硬化させた。この硬化させたものを室温で1時間放置して冷却させて表面層を形成して、支持体、該支持体上に形成された導電性弾性層及び該導電性弾性層上に形成された表面層を有する帯電ローラ(帯電部材8)を作製した。
〈製造例23 帯電部材9〉
製造例15と同様にして作製した表面研磨後の導電性弾性ローラの導電性弾性層上に、以下のようにして作成したテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)の表面層用塗布液をスプレー塗布した。その後、250℃に温調した熱風循環炉に5分間放置して、表面層用塗布液を硬化させた。この硬化させたものを冷水にて急冷させた後に、室温で1時間放置して冷却して表面層を形成して、支持体、該支持体上に形成された導電性弾性層及び該導電性弾性層上に形成された表面層を有する帯電ローラ(帯電部材9)
PFAの水分散液(商品名;AD2−CR水性ディスパージョン、固形分濃度=45質量%乃至50質量%、比重=1.4、粘度(25℃・mPa・s)=250乃至500、ダイキン工業株式会社製)を水で10倍希釈したものを表面層用塗布液とした。
製造例15〜23の帯電部材の表面層を形成するための原材料の配合量、帯電部材の物性ならびに帯電部材の表面層に含まれるオキシアルキレン基、アリール基、アルキル基、フッ化アルキル基及びシロキサン部分の含有量を表7に示す。
実施例1〜16及び比較例1〜4
製造例1〜12に示した感光体及び製造例13〜21に示した帯電部材を用いて、表8に示す組合せで、プロセスカートリッジに感光体、帯電部材として組み込んだ。なお、該プロセスカートリッジは、レーザービームプリンタ「Color Laser Printer3500」(商品名、日本ヒューレットパッカード社製)用のものである。このプロセスカートリッジで、繰り返し通紙した際の摺動性の評価を行った。
上記プロセスカートリッジをレーザービームプリンタ「Color Laser Printer3500」に組み込んで、94mm/sのプロセススピードで10000枚、2枚毎に4秒間の空回転を入れる間欠出力モードで出力した。間欠出力モードでの画像出力は、連続通紙に比べて、同じ通紙枚数でも帯電部材と感光体との摺擦回数が多くなるため、耐摩耗性の評価に対しては、より厳しい評価である。画像出力は、30℃/80%RH環境下で行い、A4紙に印字率1%のE文字パターンを形成した。なお、評価に使用したトナーは、ワックス、荷電制御剤、色素、スチレン、ブチルアクリレート及びエステルモノマーを含む重合性単量体系を水系媒体中で懸濁重合して得られた粒子を含む、いわゆる、重合トナーである。このトナーは上記粒子にシリカ微粒子及び酸化チタン微粒子を外添したものである。なお、該重合トナーのガラス転移温度は63℃であり、体積平均粒子径は6μmである。
なお、画像出力に用いたプロセスカートリッジは、感光体や帯電部材を組み込んだ状態で、30℃/80%RH環境に24時間置き、安定化したものを使用するようにした。
(画像評価)
画像評価は、摺動性について、帯電部材と感光体との摺動性の悪化に起因するものとして、縦スジと横スジの発生状況を観察した。縦スジは、A4紙の長辺と平行方向にトナーの濃度差として現れるスジ状の画像不良である。一方、横スジは、縦スジとは垂直方向に現れるスジ状の画像不良で、帯電部材の周期と感光体周期の場合がある。縦スジは主に、摺動性の悪化に伴う帯電部材又は感光体の摩耗によるものと考えられる。一方、横スジは、摺動性の悪化に伴う帯電不良によるものと考えられる。観察に使用した画像として、A4紙に、電子写真感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像(ハーフトーン画像)を用いた。この画像の1枚目出力時(初期)、5000枚目出力時、及び10000枚目出力時に得られた出力画像を目視により、下記基準で評価した。
◎:スジが全く観察されない。
○:スジがごく僅かに観察された。
△:スジが僅か観察されたものた。
×:スジがかなり観察された。
得られた結果を、表9に示した。
以上の通り、本発明のプロセスカートリッジは、繰り返し使用しても優れた摺動性を発揮し、高耐久・高画質を維持することができる。