JP5182652B2 - ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子 - Google Patents
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Description
本願は、2007年4月13日に、日本に出願された特願2007−105734号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、軟磁性金属粒子は、これを有機バインダーに磁性顔料として分散して塗料を調製し、さらにこの塗料を基材などに塗布して塗膜を形成したり、あるいは金属粒子を樹脂中に磁性フィラーとして分散して軟磁性金属/樹脂複合体を形成するなど、様々な分野で用いられている。
軟磁性金属粒子を用いた塗膜の例としては、磁気シールド膜が挙げられる。この磁気シールド膜は、電気機器の電子回路や電子部品を外部磁界から保護したり、電気機器から生じる磁界が外部へ漏洩するのを防止するために用いられている。また、この磁気シールド膜は、クレジットカードなどの磁気カードにおいても、データの偽造や変造を防止する目的で用いられている。さらに、このような軟磁性金属を用いた塗膜は、ICタグ(RFIDシステム)においても、軟磁性金属の高透磁率による磁界収束効果を応用し、感度向上のための磁性シートとして用いられている。
一方、軟磁性金属を用いた軟磁性金属/樹脂複合体は、電子回路の消費電力の低下が可能であることから、高周波電子回路基板に用いられている。
また、軟磁性金属粒子は、一般に厚みが1μm以下の平板状形であることが求められており、具体的には、扁平状、鱗片状、フレーク状など、様々な形状のものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
また、平板状の軟磁性金属粒子は、厚みが1μm以下であるから、表皮効果により交流電流を透過させることができるので、渦電流による損失を低減することができる。
これらの平板状の軟磁性金属粒子は、一般的にアトマイズ法により作製した不定形状粒子を機械的に粉砕あるいは塑性変形することにより作製されている。
上記本発明のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子は、前記平板面で測定したX線回折パターンにおいて、(200)面のピーク強度をI(200)、(220)面のピーク強度をI(220)とすると、I(220)/[I(220)+I(200)]>0.5なる関係式を満たすことが好ましい。
(a)ニッケル塩と鉄塩と亜鉛塩とを含む水溶液に還元剤を添加し、この水溶液に含まれるニッケルイオン、鉄イオンおよび亜鉛イオンを同時に還元して粒子を生成する工程と、前記粒子に機械的応力を加えて塑性変形させることによりナノ粒子を生成する工程とを含む方法、
(b)アトマイズ法により粒子を生成する工程と、前記粒子に機械的応力を加えて塑性変形させることにより前記ナノ粒子を生成する工程を含む方法、及び
(c)気相合成法により粒子を生成する工程と、前記粒子に機械的応力を加えて塑性変形させることにより前記ナノ粒子を生成する工程を含む方法。
さらに、平板面で測定したX線回折パターンにおいて、(200)面のピーク強度I(200)および(220)面のピーク強度I(220)が、I(220)/[I(220)+I(200)]>0.5なる関係式を満たすことによって飽和磁化を大きくすることができる。
以下に、本発明のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
さらに、本発明のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子は、平板面で測定したX線回折パターンにおいて、回折角2θが52°付近の(200)面のピーク強度I(200)と、回折角2θが76°付近の(220)面のピーク強度I(220)が、I(220)/[I(220)+I(200)]>0.5なる関係式を満たすという、特定の関係にあればよく、製造方法に限定されない。より明確には本発明では、1>I(220)/[I(220)+I(200)]>0.5という関係を満たす事が好ましい。
一般に、ニッケルを母体とした面心立方構造においては、I(220)<I(200)であることが報告されている(例えば、非特許文献1、2参照)。
本発明の平板状ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子は、平板面上に(220)面が配向しているために、平板面で測定したX線回折パターンの強度は従来報告されているものと異なり、I(220)>I(200)となる。この関係をさらに詳しく式で表すと、下記の式(1)で表される。
I(220)/[I(220)+I(200)]>0.5 (1)
上記式は、1>I(220)/[I(220)+I(200)]>0.5の式で表されることがより好ましい。
次に、本発明のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の製造方法として、水溶液に還元剤を添加する方法(a)を一例にして以下に示す。
本発明のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子に用いられるニッケル塩としては、水溶性のものであれば特に限定されない。例えば、塩化ニッケル(NiCl2)、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)、酢酸ニッケル(Ni(CH3COO)2)、硫酸ニッケル(NiSO4)などが挙げられる。
ニッケル塩、鉄塩および亜鉛イオンを溶解する純水の量を、金属イオン(ニッケルイオン(Ni2+)、鉄イオン(Fe2+、Fe3+)および亜鉛イオン(Zn2+))0.1molに対して、0.1L以上かつ2L以下とすることが好ましい理由は、純水の量が0.1L未満では、ニッケル―鉄―亜鉛合金の結晶核の量が多くなり過ぎて、ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子同士が近付き過ぎる状態で成長するため、凝集が起こり易くなるからであり、一方、純水の量が2Lを超えると、還元剤によりこのニッケル塩―鉄塩―亜鉛塩水溶液に含まれるニッケルイオン、鉄イオンおよび亜鉛イオンを還元した際、ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の結晶核の生成する量が少なく、粗大粒子化し易くなるからである。
鉄塩の添加量が10重量%以上かつ60重量%以下の範囲であることが好ましい理由は、鉄塩の添加量が10重量%未満では、特定結晶面で塑性変形しても大きな飽和磁化が得られない傾向があるからであり、一方、鉄塩の添加量が60重量%を超えると、結晶構造が体心立方構造になってしまい、本発明の結晶面配向が起こらないからである。
亜鉛塩の添加量が2重量%以上かつ10重量%以下の範囲であることが好ましい理由は、亜鉛塩の添加量が2重量%未満では、ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子が特定の結晶面における塑性変形能が十分に得られない傾向があるからであり、一方、亜鉛塩の添加量が10重量%を超えると、亜鉛原子自体の磁気モーメントが小さいので、塑性変形前の飽和磁化が小さくなってしまうため、特定の結晶面で塑性変形しても大きな飽和磁化が得られない傾向があるからである。
本発明のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子を製造するには、比較的強い還元力を得られることから、還元剤として、水酸化アルカリとヒドラジンを併用してなるものを用いることが好ましい。
水酸化アルカリの添加量を、ニッケル塩―鉄塩―亜鉛塩水溶液中のニッケルイオン、鉄イオンおよび亜鉛イオンのモル量に対して5倍量以上かつ10倍量以下が好ましい理由は、水酸化アルカリの添加量が5倍量未満では、ヒドラジンが十分に還元性を発揮するpH12以上の強アルカリ性に達しないからであり、一方、水酸化アルカリの添加量が10倍量を超えても、pHがあまり変わらないからである。
ヒドラジンの添加量が、ニッケル塩―鉄塩―亜鉛塩水溶液中のニッケルイオン、鉄イオンおよび亜鉛イオンのモル量に対して2倍量以上かつ50倍量以下であることが好ましい理由は、ヒドラジンの添加量が2倍量未満では、ニッケルイオン、鉄イオンおよび亜鉛イオンの還元反応が十分に進行しないからであり、一方、ヒドラジンの添加量が50倍量を超えても、未反応のヒドラジンが残るだけで生成するニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子に変化がないからである。
還元剤を添加した後のニッケル塩―鉄塩―亜鉛塩水溶液を加熱する温度が50℃未満では、ニッケルイオン、鉄イオンおよび亜鉛イオンの還元反応の進行が緩慢となるため、ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の生成効率が悪くなる傾向がある。一方、還元剤を添加した後のニッケル塩―鉄塩―亜鉛塩水溶液を加熱する温度が80℃を超えると、生成したニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子が酸化するおそれがある。
また、ボールの材質は、ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子を汚染するおそれがなく、このナノ粒子に機械的応力を効果的に加えることができるものであり、比重の大きなものであればよく、特に、耐食性などの点からジルコニアが好ましい。
ボールミルに充填するニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の量が、ボールの重量に対して、1/100未満では、ボールに対するニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の量が少な過ぎて、このナノ粒子は過剰に機械的応力が加えられて粉砕され、所定の平板状ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子を生成できない傾向がある。一方、ボールミルに充填するニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の量が、ボールの重量に対して、1/10を超えると、ボールに対するニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の量が多過ぎて、このナノ粒子に機械的応力が効果的に加えられないため、平板状ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の生成効率が悪くなる傾向がある。
また、アルコールや有機溶剤の添加量は必要に応じて選択されるが、ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の重量の2倍以上かつ5倍以下とすることが好ましい。
アルコールや有機溶剤の添加量が、ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の重量の2倍未満では、ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の微細粒子化の抑制、ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の凝集の防止、ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の表面の酸化被膜の除去などの効果が十分に得られない傾向がある。一方、アルコール哉有機溶剤の添加量が、ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の重量の5倍を超えても、処理時間が長くなるだけで、得られる平板状ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子に変化がない。
本発明のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子は、厚みが1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.2μm以下がさらに好ましい。
本発明のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の厚みが1μm以下であることが好ましい理由は、厚みが1μmを超えると、渦電流による損失を十分に低減できないからである。
また、本発明のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子は、アスペクト比が2以上であることが好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましい。
本発明のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子のアスペクト比が2以上であることが好ましい理由は、アスペクト比が2を超えると、十分に配向方向の透磁率を十分に高めることができないからである。
また、本発明のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子を、非極性の溶媒中に分散させることにより、塗料やペーストが得られる。このような塗料やペーストは、電気機器やICタグ(RFIDシステム)などに塗布して磁気シールド膜を形成することにより、これら電気機器やICタグ(RFIDシステム)などに磁気シールド性を付与することができる。
さらに、本発明のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子は、大きな飽和磁化を有することから、塗料やペーストに対する添加量を多くすることができる。
なお本発明のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の各条件は、必要に応じて選択してよい。好ましい例を挙げれば、例えば本発明のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の平面での長軸方向の平均長さは、0.2〜5μmであることが好ましく、短軸方向の平均長さは0.1〜0.5μmであることが好ましい。さらに、ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子は、飽和磁化が70〜110emu/gであることが好ましく、80〜105emu/gであることがより好ましい。
また、樹脂中に本発明のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子をフィラーとして35体積%添加した軟磁性金属/樹脂複合体において、1GHzにおける交流透磁率の実数部は5〜30であることが好ましく、8〜15であることがより好ましい。交流透磁率の実数部と虚数部の比である磁気損失は0.01〜0.2であることが好ましく、シート抵抗は1000Ω/□以上であることが好ましい。
さらに、本発明のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子は、平板状であるから、隠蔽性にも優れているので、各種装飾品、あるいは表面処理などにも適用可能である。
塩化ニッケル六水和物(NiCl2・6H2O、特級試薬、関東化学社製)35.5gと、塩化第一鉄四水和物(FeCl2・4H2O、特級試薬、関東化学社製)7.9gと、硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO3)2・6H2O)3.2gとを、純水300mLとメタノール200mLの混合溶液に溶解し、塩化ニッケル、塩化第一鉄および硝酸亜鉛の水溶液を調製した。
次いで、この水溶液に、濃度が6mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液200mLを攪拌しながら添加した。
次いで、この水溶液を攪拌しながら60℃に加熱し、さらに、ヒドラジン一水和物(N2H4・H2O、特級試薬、関東化学社製)300gを添加して、これらの水溶液を攪拌しながら60℃にて3時間、加熱して、黒色の粒子を得た。
次いで、この黒色の粒子を純水とエタノールで洗浄した後、真空中で乾燥して微粒子を得た。
この球形の微粒子をX線回折装置(PANalytical社製)で分析した結果、図1に示すX線回折パターン(XRD)を得た。
このX線回折パターンから、(200)面のピーク強度I(200)と、(220)面のピーク強度I(220)とは、以下の式(2)の関係を満たすことが分かった。
I(220)/[I(220)+I(200)]=0.35 (2)
次いで、このニッケル、鉄および亜鉛の合金粒子1gと、直径が0.4mmのジルコニア製のボール12gと、エタノール10gとを、容積が75mLの樹脂製容器内に充填し、この樹脂製容器をボールミルにて30分回転させて、このニッケル、鉄および亜鉛の合金粒子に機械的応力を加えた。
走査型電子顕微鏡(SEM)により、得られたニッケル、鉄および亜鉛の合金粒子の電子顕微鏡像を得たところ、厚みが1μm以下でアスペクト比が2以上の平板状の微粒子であった。
この平板状の微粒子に磁場を印加することで平面上に並べて、その上面からX線回折(XRD)により分析した結果、図3に示すX線回折パターンを得た。
このX線回折パターンから、(200)面のピーク強度I(200)と、(220)面のピーク強度I(220)とは、以下の式(3)の関係を満たすことが分かった。
I(220)/[I(220)+I(200)]=0.8 (3)
この結果、図1のX線回折パターンと比べて、ピーク強度比が異なることから、特定の結晶面で配向が生じていることが分かった。
また、振動試料型磁力計(VSM)測定により、この平面上で配向させた平板状のニッケル、鉄および亜鉛の合金粒子の平面と、平行方向に磁場をかけた場合の飽和磁化を測定した。この測定の結果、図4に示すヒステリシス曲線を得た。このヒステリシス曲線から、飽和磁化に達する磁場が小さくなることから、透磁率が大きくなっていることが分かった。また、飽和磁化は101emu/gであり、図2のヒステリシス曲線の値よりも大きくなっていた。
ボールミルの回転時間を50分とした以外は実施例1と同様にして、ニッケル、鉄および亜鉛の合金粒子を得た。
走査型電子顕微鏡(SEM)により、得られたニッケル、鉄および亜鉛の合金粒子の電子顕微鏡像を得たところ、厚みが1μm以下でアスペクト比が2以上の平板状の微粒子であった。
この平板状の微粒子に磁場を印加することで平面上に並べて、その上面からX線回折(XRD)により分析した結果、図5に示すX線回折パターンを得た。
このX線回折パターンから、(200)面のピーク強度I(200)と、(220)面のピーク強度I(220)とは、以下の式(4)の関係を満たすことが分かった。
I(220)/[I(220)+I(200)]=0.54 (4)
この結果、図1のX線回折パターンと比べて、ピーク強度比が異なることから、特定の結晶面で配向が生じていることが分かった。
また、振動試料型磁力計(VSM)測定により、この平面上で配向させた平板状のニッケル、鉄および亜鉛の合金粒子の平面と平行方向に磁場をかけた場合の飽和磁化を測定した。この測定の結果、図6に示すヒステリシス曲線を得た。このヒステリシス曲線から、飽和磁化に達する磁場が小さくなることから、透磁率が大きくなっていることが分かった。また、飽和磁化は85emu/gであり、図2のヒステリシス曲線の値よりも大きくなっていた。
塩化ニッケル六水和物(NiCl2・6H2O、特級試薬、関東化学社製)35.5gと、塩化第一鉄四水和物(FeCl2・4H2O、特級試薬、関東化学社製)7.9gとを、純水480mLとメタノール200mLの混合溶液に溶解し、塩化ニッケルおよび塩化第一鉄の水溶液を調製した。
次いで、この水溶液に、濃度が6mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液200mLを攪拌しながら添加した。
次いで、この水溶液を攪拌しながら60℃に加熱し、さらに、ヒドラジン一水和物(N2H4・H2O、特級試薬、関東化学社製)120gを添加して、これらの水溶液を攪拌しながら60℃にて3時間、加熱して、黒色の粒子を得た。
次いで、この黒色の粒子を純水とエタノールで洗浄した後、真空中で乾燥して微粒子を得た。
この球形の微粒子をX線回折(XRD)により分析した結果、図7に示すX線回折パターンを得た。
このX線回折パターンから、(200)面のピーク強度I(200)と、(220)面のピーク強度I(220)とは、以下の式(5)の関係を満たすことが分かった。
I(220)/[I(220)+I(200)]=0.37 (5)
次いで、このニッケルおよび鉄の合金粒子1gと、直径が0.4mmのジルコニア製のボール12gと、エタノール10gとを、容積が75mLの樹脂製容器内に充填し、この樹脂製容器をボールミルにて50時間回転させて、このニッケルおよび鉄の合金粒子に機械的応力を加えた。
走査型電子顕微鏡(SEM)により、得られたニッケルおよび鉄の合金粒子の電子顕微鏡像を得たところ、厚みが1μm以下でアスペクト比が2以下の平板状の微粒子であった。
この平板状の微粒子に磁場を印加することで平面上に並べて、その上面からX線回折(XRD)により分析した結果、図9に示すX線回折パターンを得た。
このX線回折パターンから、(200)面のピーク強度I(200)と、(220)面のピーク強度I(220)とは、以下の式(6)の関係を満たすことが分かった。
I(220)/[I(220)+I(200)]=0.40 (6)
この結果、図7のX線回折パターンとほぼ同じであった。
また、振動試料型磁力計(VSM)測定により、この平面上に配向させた平板状のニッケル、鉄および亜鉛の合金粒子の平面と平行方向に磁場をかけた場合の飽和磁化を測定した。この測定の結果、図10に示すヒステリシス曲線を得た。このヒステリシス曲線から、飽和磁化に達する磁場が小さくなることから、透磁率が大きくなっていることが分かった。しかしながら、飽和磁化は58emu/gであり、図8のヒステリシス曲線の値とほぼ同じであった。
Claims (9)
- 厚みが1μm以下かつアスペクト比が2以上の平板状であり、かつ面心立方格子上の結晶面の(220)面が平板面上に配向していることを特徴とするニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子。
- 前記平板面で測定したX線回折パターンにおいて、(200)面のピーク強度をI(200)、(220)面のピーク強度をI(220)とすると、I(220)/[I(220)+I(200)]>0.5なる関係式を満たすことを特徴とする請求項1に記載のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子。
- ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の厚みが0.5μm以下である、請求項1に記載のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子。
- ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の厚みが0.2μm以下である、請求項1に記載のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子。
- アスペクト比が5以上である、請求項1に記載のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子。
- アスペクト比が10以上である、請求項1に記載のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子。
- さらに、モリブデン、クロム、コバルト、マンガン、バナジウム、ニオブ及び銅から選択される少なくとも一つを含む、請求項1に記載のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子。
- 厚みが1μm以下かつアスペクト比が2以上の平板状であり、かつ面心立方格子上の結晶面の(220)面が平板面上に配向していることを特徴とするニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の製造方法であって、以下の(a)、(b)及び(c)から選択される方法である:
(a)ニッケル塩と鉄塩と亜鉛塩とを含む水溶液に還元剤を添加し、この水溶液に含まれるニッケルイオン、鉄イオンおよび亜鉛イオンを同時に還元して粒子を生成する工程と、前記粒子に機械的応力を加えて塑性変形させることによりナノ粒子を生成する工程とを含む方法;
(b)アトマイズ法により粒子を生成する工程と、前記粒子に機械的応力を加えて塑性変形させることにより前記ナノ粒子を生成する工程を含む方法;及び
(c)気相合成法により粒子を生成する工程と、前記粒子に機械的応力を加えて塑性変形させることにより前記ナノ粒子を生成する工程を含む方法。 - 請求項8に記載のニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子の製造方法であって、前記ニッケル―鉄―亜鉛合金ナノ粒子が、平板面で測定したX線回折パターンにおいて、回折角2θが52°付近の(200)面のピーク強度をI(200)、回折角2θが76°付近の(220)面のピーク強度をI(220)としたとき、I(220)/[I(220)+I(200)]>0.5なる関係式を満たしている。
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