以下、本発明に係る駆動ベルトの異常検知装置につき、これを搭載した工作機械システムとの関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る駆動ベルトの異常検知装置100を搭載した工作機械システム10の一部切欠斜視図である。図2は、図1に示す工作機械システム10の正面図である。図3は、図1に示す工作機械システム10の側面図である。この工作機械システム10は、ワークWに対してドリル加工、中ぐり加工及びホーニング加工等を行うものである。以下、工作機械システム10の向きを特定するために、図2での左右方向をX方向(X1、X2方向)、高さ方向をY方向(Y1、Y2方向)とし、X方向及びY方向に直交する奥行き方向をZ方向(Z1、Z2方向)(図3参照)とする。X方向及びY方向は、水平面内の所定の一方向であって直交している。
工作機械システム10は、図2に示す正面視で左側(矢印X1側)の第1工作機械10aと、右側(X2側)の第2工作機械10bと、これらの第1工作機械10a及び第2工作機械10bを統合的に且つ協調的に制御する制御部であるコントローラ12とを有する。第1工作機械10a及び第2工作機械10bの上方(Y2側)には、着脱可能な工具Tを両機械にそれぞれ対応して複数保持する2台の工具ストッカ(工具ストッカ)80a、80bが設けられている。さらに、工作機械システム10には、コントローラ12の制御下に、第1工作機械10a及び第2工作機械10bを構成する加工主軸36の駆動ベルト49(図4参照)の異常、例えば、切れ(切断)や過度の伸張による撓み等を検知する駆動ベルトの異常検知装置100(以下、単に異常検知装置100ともいう)が搭載されている。なお、駆動ベルト49の切れとは、完全に切れた状態だけでなく、一部に切れを生じているような状態も含む。
図1及び図2に示すように、着脱可能な工具が装着されてワークWを加工する工作ユニットを構成する第1工作機械10aと第2工作機械10bとは隣接して平行に設けられており、定盤13、ワーク移動装置14及びフレーム15は共用となっている。これらの定盤13、ワーク移動装置14及びフレーム15は、第1工作機械10a及び第2工作機械10bに専用のものを用いてもよい。なお、本実施形態の場合、第1工作機械10aと第2工作機械10bは同構造であり、以下では第1工作機械10aを代表的に説明する。
第1工作機械10aは、床に固定された定盤13をベースとして構成されている。定盤13はX方向に幅狭で、Y方向に低い形状である。定盤13の上面には、ワーク移動装置14及びフレーム15が取り付けられている。
ワーク移動装置14は、定盤13の上面の正面側(矢印Z1側)に設けられたワークテーブル19a〜19cを備える。該ワーク移動装置14の上方には、ワークテーブル19a〜19c上に載置されたワークWを上部から押圧固定するワーク押圧固定装置17a、17b(図3参照)が設けられている。本実施形態の場合、ワークテーブル19a〜19cは、120°間隔で配置された回転テーブルとして構成される。なお、図1、図2及び図5では、後述する支持体22、回転アーム32等を視認できるように、ワーク押圧固定装置17a、17bを省略して図示している。
フレーム15は、工具Tを複数貯留(保持)する工具ストッカ80a、80bと、加工主軸36に装着された工具Tに対し、その折損等を検査する工具長検査装置101a、101b及びその装着不良等による振れ(扁心)を検知する振れセンサ102とが支持されている。なお、振れセンサ102は異常検知装置100にも利用されるが、詳細は後述する。
このようなフレーム15は、定盤13の矢印Z方向の両端から上方に延在する4本の支柱15aと、これら支柱15a上部で支えられたプレート15bとを有する。また、Z方向の2本の支柱15aが2組、その2本の支柱15aの間にはシャッター107が設けられ、それぞれの組でシャッター107が設けられる。当該シャッター107はワークWの加工の際、切削屑や切削油が左右に装置外へと飛散することを防止している。シャッター107は、工具TによりワークWへの加工を行う加工主軸36のメンテナンス時等に開放される。
第1工作機械10aは、定盤13の上面に設けられたZ方向に延在する一対のZレール16、16と、Zレール16に案内されてZ方向にスライドするコラム18と、コラム18の正面においてY方向に延在する一対のYレール20、20と、Yレール20に案内されてY方向にスライドする支持体22とを有する(図2参照)。Zレール16上でのコラム18のZ方向位置はZ位置センサ16aによって検出され、Yレール20上での支持体22のY方向位置はY位置センサ20a(図2参照)によって検出され、それぞれコントローラ12に供給される。
コラム18は、定盤13の後方に設けられたZモータ24の作用下にボールねじ機構26を介してZ方向に往復移動する(図3参照)。また、Zモータ24には図示しないロータリエンコーダが取り付けられ、ボールねじ機構26のボールねじの回転角度を該ロータリエンコーダが検出し、コラム18のZ方向位置として前記検出されたボールねじの回転角度が、それぞれのコントローラ12に送信されるように構成してもよい。
支持体22は、定盤13の内部に配置されたYモータ28の作用下にボールねじ機構30を介してY方向に往復移動する(図2参照)。また、Yモータ28には図示しないロータリエンコーダが取り付けられ、ボールねじ機構30のボールねじの回転角度を該ロータリエンコーダが検出し、支持体22のY方向位置として前記検出されたボールねじの回転角度が、それぞれのコントローラ12に送信されるように構成してもよい。なお、コラム18及びYレール20は、Y方向に適度に長い形状であり、支持体22を比較的長距離移動させることができる。
図4に示すように、支持体22は、Z1方向に向いたワークWに臨む鉛直平面(XY平面)内で回転(旋回)する回転アーム32と、該回転アーム32を回転させるアームモータ34と、回転アーム32の遠心方向端部近傍に設けられ、回転アーム32に対して回転自在に支承されてZ1方向を指向する加工主軸36と、該加工主軸36を回転させるスピンドルモータ(回転駆動源)38とを有する。アームモータ34は、例えば、ダイレクトモータである。支持体22は、枠体40をベースに構成されており、該枠体40の内部にアームモータ34が設けられている。アームモータ34は、枠体40に固定されたステータ34aと、該ステータ34aの内側に設けられた中空のロータ34bとを有する。
回転アーム32は、ロータ34bの矢印Z1側端部に固定されており、アームモータ34の作用下に回転する。支持体22に対する回転アーム32の角度は、角度センサ41(図1参照)によって計測されコントローラ12に供給される。
なお、図4から諒解されるように、回転アーム32はエンドレスに回転が可能であるが、最低限1回転(360度)の回転が可能であればよい。加工主軸36の回転中心C2、つまりワークWを加工する工具の回転中心C2は、回転アーム32の回転中心C1から距離Rだけ離れた箇所に設けられている。
回転アーム32において、加工主軸36が設けられた側と反対側(図4では上側)にはバランサ42が設けられている。バランサ42は、クーラント等の液体が入った液体タンクであり、加工主軸36に取り付けられる工具に応じて、内部の液量を変化させてバランスをとることができる。バランサ42は金属製の錘であってもよい。該バランサ42が設けられている箇所以外の回転アーム32の内部は中空構造となっている。回転アーム32は、支持体22と比較すると相当に軽量であり、回転させたときにも支持体22や第1工作機械10aに対する安定性を損なうことがない。
スピンドルモータ38は矢印Z2方向に突出しており、アームモータ34と同軸となるように、支持体22における枠体40の後面に固定されている。このようにスピンドルモータ38とアームモータ34とを同軸上に配置することで、支持体22をコンパクトなユニットとして構成することができる。すなわち、加工主軸36の軸線上にスピンドルモータ38が存在せず、回転アーム32の中心に近い箇所にスピンドルモータ38があると、前記のバランサ42の質量及び大きさが小さくてすみ、支持体22を全体的にコンパクトにすることができる。
ドライブ軸44は、ロータ34bの中空部を貫通して設けられ、一端がスピンドルモータ38の回転軸に固定され、他端が枠体40から突出して回転アーム32の矢印Z1側の側板まで達している。ドライブ軸44は、回転アーム32の矢印Z1側端部及び矢印Z2側端部、並びに枠体40の矢印Z2側端部の3箇所で、順にベアリング45a、45b及び45cによって軸支されている。
回転アーム32内の中空部にはプーリ機構46が設けられている。プーリ機構46は、ベアリング45aとベアリング45bとの間でドライブ軸44に固定された駆動プーリ46aと、加工主軸36内に配置されて工具を回転させるスピンドル軸47に固定された従動プーリ46bと、これら駆動プーリ46aと従動プーリ46bとの間に張架された駆動ベルト49とから構成される。このように、回転アーム32の基端側にスピンドルモータ38を設けると共に、ベルト・プーリによる駆動機構を用いたことにより、回転アーム32が大幅に軽量化されている。なお、駆動ベルト49としては、ゴム材料や樹脂材料、金属材料のもの等、当該工作機械システム10の使用条件等に応じて用いればよく、要は、ドライブ軸44側からスピンドル軸47側へとスピンドルモータ38の回転駆動力を確実に伝達できるものであればよい。
さらに、スピンドルモータ38の回転をドライブ軸44からスピンドル軸47へと確実に伝達するため、駆動ベルト49は、テンション機構101(図9参照)によって張り調整がなされている。
加工主軸36は、回転アーム32と一体的に設けられた主軸カバー48内に収納されており、矢印Z1方向の先端部には工具Tが装着されるツールヘッド50が設けられると共に、その内部でスピンドル軸47がベアリング51a、51b、51c及び51dによって軸支されている。また、矢印Z2方向端部には、ツールヘッド50に対する工具Tのクランプ状態を解除して、工具Tを離脱可能にするアンクランプレバー52が設けられている。アンクランプレバー52は、回転中心C1から見て外向きにやや突出する形状であり、アンクランプブロック53(図6参照)によって回転中心C1の方向に押圧されることにより操作され、工具Tをアンクランプすることができる。また、アンクランプレバー52は、前記アンクランプブロック53が離れることにより図示しない弾性体によって元の位置に戻され、ツールヘッド50内の工具Tをクランプすることができる。当然、ツールヘッド50での工具Tのクランプ及びアンクランプは、電動で工具Tをクランプする機構とすることもできる。
回転アーム32の背面側(Z2側)には、ねじ60によって板ばね等からなるディスク62を挟持して回転アーム32を所定位置に固定する固定装置64が設けられている。固定装置64はディスク62の背面側と当接する受け座66と、該受け座66との間でディスク62を挟持する押圧片68とから構成される。前記押圧片68は皿ばね70によって挟持方向に付勢されるロッド72先端部に設けられ、皿ばね70に抗してロッド72を前方に押すことでディスク62の挟持状態を解除し、回転アーム32の回転が可能となる。本実施形態の場合、ディスク62を板ばねにて構成したため、ディスク62を挟持した状態で回転アーム32が倒れることがなく、回転アーム32の回転を確実に阻止することができる。
図1に戻り、プレート15bの上面やや左側(X1側)には、第1工作機械10aに対応し、加工主軸36に着脱自在な複数の工具Tを収納した前記工具ストッカ80aが設けられている。なお、フレーム15において、プレート15bの上面やや右側(X2側)には、第2工作機械10bに対応し、工具ストッカ80aと同機構の工具ストッカ80bが設けられている。以下、工具ストッカ80aを代表的に説明する。
図1〜図3に示すように、工具ストッカ80aは、矢印Z方向に延在する回転軸82と、該回転軸82を駆動するマガジンモータ83と、回転軸82を中心として正面視(図2参照)で約270度の範囲で放射状に設けられた複数の保持アーム84とを有する回転マガジンである。各保持アーム84の先端には工具Tを挟持する略C字状のグリップ(保持器)85が設けられている。グリップ85は弾性体であって、C字の開口部から工具Tを押し込むことにより弾性的に拡開して工具Tが挿入可能となり、挿入された後には閉じて工具Tを挟持・保持することができる。また、保持された工具Tは、C字の開口部から引き抜きが可能である。保持アーム84の数は、例えば16本程度とするとよい。
工具ストッカ80aは、通常時(加工時や非使用時)、保持アーム84のない約90度(保持アーム84が設けられた前記270度の範囲以外)の部分が下向きとされ(図2参照)、全体がプレート15bよりも上方にあるため、コラム18及び支持体22の動作の支障とならない。一方、加工主軸36の工具Tを交換する際には、工具ストッカ80aを回転させて、プレート15bの端から所定の保持アーム84を下方に指向させる(図5参照)。
具体的には、工具Tを保持していない空の保持アーム84を下方に指向させておき、コラム18のZ方向位置を調整した後に、支持体22を上昇させる。これにより、図6に示すように、工具Tが保持アーム84に保持されると共に、アンクランプレバー52がコラム18上部から垂下されたアンクランプブロック53に当接して操作され、工具Tはツールヘッド50に対してアンクランプされる。従って、コラム18を矢印Z2方向に後退させることで、工具Tはツールヘッド50から抜き取られる。
次いで、工具ストッカ80aを回転させて、これから使用する予定の工具Tが保持されている保持アーム84を下方に指向させ、コラム18を矢印Z1方向に進出させる。これにより目的の工具Tがツールヘッド50に挿入されるので、支持体22を下降させることにより、アンクランプレバー52がアンクランプブロック53から離間して工具Tをクランプすることができる。この後、工具ストッカ80aを回転させて、図2に示すように、全ての保持アーム84がプレート15bよりも上方に配置されるように設定する。
工具ストッカ80aと加工主軸36との間では、上記のように途中で工具Tを受け渡すために介在する機構がなく、また保持アーム84は工具Tを直接把持するため、コラム18、支持体22及び回転アーム32の動作作用下に工具Tの着脱操作を直接的に行うことができる。従って、専用の着脱機構等が不要であることから構造が簡素化され、しかも工具の脱着に要する時間が短縮される。
次に、工具長検査装置101a、101bについて説明する。図1等に示すように、プレート15bのX1側下面には、第1工作機械10aに対応し、加工主軸36に装着された工具Tの長さを検査する工具長検査装置101aが設けられている。なお、プレート15bのX2側下面には、第2工作機械10bに対応し、工具長検査装置101aと同機構の工具長検査装置101bが設けられている。以下、工具長検査装置101aを例に説明する。
図7に示すように、工具長検査装置101aは、Z方向に延在するボールねじ104と、ボールねじ104の一端に接続されたモータ106と、ボールねじ104の他端に設けられた軸受体108と、ボールねじ104に螺合しながらモータ106の回転作用下にZ方向に進退するナット体110と、ナット体110をZ方向に案内するレール113と、ナット体110に接続されて下方を指向する非接触センサ112とを有する。レール113には図示しないリニア変位センサが設けられており、非接触センサ112のZ方向位置を検出してコントローラ12に供給する。
非接触センサ112は第1工作機械10aのコラム18、支持体22及び回転アーム32が所定の基準計測位置に移動したときに、加工主軸36に装着された工具Tの上方近傍となる位置に配置可能である。該基準計測位置は、例えば、加工主軸36の先端が軸受体108の端面とZ方向位置が一致し、支持体22が最上位位置で、且つ、回転アーム32が正面視で左斜め45°となる位置に設定しておくとよい。また、非接触センサ112は、回転アーム32の動作範囲外にあり、回転アーム32、加工主軸36及び工具Tに対する干渉のおそれがない。
コントローラ12では、リニア変位センサの信号を参照しながら非接触センサ112を所定の位置に移動させることができ、該位置において非接触センサ112の直下に工具Tが存在するか否かを検査する。なお、図7に示すように、本実施形態の場合、加工主軸36に装着される工具Tは、実際にワークWを加工する刃部T1と、該刃部T1の基端側に固定され、ツールヘッド50への着脱等に用いられるホルダT2とから構成されている。従って、非接触センサ112で検査される工具Tとは、基本的には刃部T1を示すものである。
また、コントローラ12は、工程に応じて加工主軸36に装着されている工具T(刃部T1)の基準長さTLを記録しており、非接触センサ112が該基準長さTLよりもZ1方向に微小変位αだけ移動した位置114aで工具Tを検出せず、且つ、該基準長さTLよりもZ2方向に微小変位αだけ移動した位置114bで工具Tを検出したときに工具Tが正常長さであることを認識できる。非接触センサ112が、位置114aで工具Tを検出し、又は位置114bで工具Tを検出できなかった場合には、間違った別の工具Tが装着されているか、又は、折損していると判断できる。
工具Tの長さを検査する手段としては、工具長検査装置101aの作用下に、非接触センサ112を基準長さTLに対して±αの範囲でZ方向に移動しながらリアルタイムに計測を行い、工具T(刃部T1)の一層精確な長さを調べるようにしてもよい。また、1つの非接触センサ112で工具Tの長さTLを検査するためには、これらの非接触センサ112と工具TがZ方向に相対的に移動をすればよいことから、非接触センサ112をプレート15bの下面に固定しておき、Zモータ24及びボールねじ機構26の作用下にコラム18を動かすようにしてもよい。コラム18がZ方向に移動することにより加工主軸36及び工具Tも一体的にZ方向に移動をすることから、非接触センサ112に対して相対移動をして、工具Tの長さTLを検査することができる。
さらに、図1及び図7に示すように、このような工具長検査装置101a、101bの近傍(Z2側)のプレート15bの下面には、加工主軸36(ツールヘッド50)に装着された工具Tの振れ(扁心回転)を測定して当該工具Tの装着不良等を検査するための振れセンサ(振れ測定器)102が設けられている。
振れセンサ102は、例えば、非接触式の近接センサであり、加工主軸36で回転されている工具TのホルダT2に形成されたキー溝116を検出し、その検出パルスをコントローラ12へと供給する。
すなわち、工具Tが加工主軸36に正常に装着された状態では、当該工具Tはその回転中心C2周りに正確に回転し、振れセンサ102で検出されるパルスは一定周期で測定される。一方、例えば、工具Tが加工主軸36にやや斜めに装着されているような状態では、当該工具Tはその回転中心C2から扁心しながら回転することになり(図7中の2点鎖線参照)、振れセンサ102で検出されるパルスの周期が不安定となる。そこで、コントローラ12では、例えば、正常時のセンサ102からのパルス周期範囲を記憶しておき、それと検出データを比較することで、工具Tの加工主軸36への装着不良を判定する。
また、図7から諒解されるように、本実施形態では、振れセンサ102による工具Tの振れ測定位置と、上記した工具長検査装置101a、101bによる基準計測位置とをZ方向に近接して設けている。これにより、例えば、工具ストッカ80a、80bから加工主軸36へと工具Tを交換した直後、加工主軸36を前記の基準計測位置に移動させることにより、工具Tの工具長を検査しつつ、同時に工具Tの振れ測定も実施することができ、さらには、後述する駆動ベルト49の異常検知も実施することができる。
振れセンサ102は非接触式以外でも当然よく、例えば、図8中の2点鎖線で示すような接触式の振れセンサ118であってもよい。該振れセンサ118としては、例えば、ホルダT2の外周面に当接(摺接)し、その扁心を測定する差動トランス式のものが挙げられる。なお、図7及び図8に示すように、キー溝116は、通常2箇所180度方向にあるが、当然、これ以上の箇所にあっても構わない。
次に、テンション機構101について説明する。図9に示すように、テンション機構101は、駆動プーリ46aと従動プーリ46bとの間に設けられたポール120と、ポール120の略中央部に同軸で固定されたギア122と、ギア122に噛み合うピニオン124と、ピニオン124を回転駆動するステッピングモータ等のテンションモータ126とを有する。テンション機構101は、さらに、ポール120の一端に順ねじで螺合する第1回転支持体128aと、該第1回転支持体128aに軸支され、駆動ベルト49の一方を張る第1テンションプーリ130aと、ポール120の他端に逆ねじで螺合する第2回転支持体128bと、該第2回転支持体128bに軸支され、駆動ベルト49の他方を張る第2テンションプーリ130bとを有する。
このようなテンション機構101によれば、コントローラ12の制御下に、テンションモータ126を駆動し、ピニオン124及びギア122を介してポール120を順方向に回転させることにより、第1回転支持体128a及び第2回転支持体128bの双方が外方に突出して、駆動ベルト49の張力を高めることができる。一方、テンションモータ126を逆回転してポール120を逆方向に回転させることにより、第1回転支持体128a及び第2回転支持体128bの双方が内方に縮退して、駆動ベルト49の張力を弛めることができる。
従って、テンション機構101では、テンションモータ126を駆動制御するだけで、左右のバランスを保ちながら駆動ベルト49の張力調整が可能であり、左右の張力を容易に安定化させることができる。これにより、スピンドルモータ38の駆動力をドライブ軸44から駆動ベルト49を介して、スピンドル軸47へと一層確実に伝達することができる。
さらに、当該テンション機構101では、図9に示すように、ギア122の直径(歯数)をピニオン124のものより大きく設定している。これにより、テンションモータ126の回転が、減速機構として機能するピニオン124及びギア122によって減速されてポール120等に伝達されるため、当該テンションモータ126をより低出力で小型のモータにすることができる。
図10は、本実施形態に係る駆動ベルトの異常検知装置100の構成を示すブロック説明図である。
図10に示すように、異常検知装置100は、加工主軸36を回転駆動するスピンドルモータ38の負荷を監視する第1監視部(第1検知部、負荷監視部)140と、第1監視部140の監視結果が入力される第1判定部142と、第1判定部142の判定結果が入力されると共に、テンションモータ126の負荷及び振れセンサ102の検出パルスを監視する第2監視部(第2検知部、負荷監視部、振れ監視部)144と、第2監視部144の監視結果が入力される第2判定部146とを有する。さらに、異常検知装置100は、第1判定部142及び第2判定部146へと供給する所定の情報を記憶したメモリ148と、第2判定部146での判定結果を受けて、必要に応じて警報を発生する警報発生部150とを有する。警報発生部150は、図示しないディスプレイに駆動ベルト49の異常を表示するように構成することもできる。
本実施形態の場合、このような異常検知装置100を構成する第1監視部140、第1判定部142、第2監視部144、第2判定部146、メモリ148及び警報発生部150は、図10に示すようにコントローラ12が有する機能として構成されているが、勿論、各部をコントローラ12とは別体に構成してもよい。また、第1工作機械10a及び第2工作機械10bのそれぞれに対応して個別に各部を設けた装置として構成することもできる。
前記第1監視部140は、スピンドルモータ38の負荷、例えば、駆動電流値を監視することにより、当該スピンドルモータ38のトルク変動を検知するものである。勿論、図示しないトルク計等を用いてもよい。
前記第1判定部142は、第1監視部140によって検知されたスピンドルモータ38の負荷が、予め設定されメモリ148に記憶された所定の基準範囲内にあるか否かを判定するものである。
ここで、上記第1監視部140で監視されるスピンドルモータ38の負荷について、図4を参照しながら具体的に説明する。スピンドルモータ38の負荷(電流値、トルク)について、ワークWの非加工時である工具Tの空転時、正常に加工主軸36が回転されている状態(駆動ベルト49に異常がない状態)において考える。
なお、空転時を換言すると、ワークWに対する加工が終了し、工具Tが今なお回転しておりワークに接触していないとき、すなわち工具Tに加工負荷が掛かっていないときである。この後、使用された工具Tをツールヘッド50から抜き取るために、工具Tの回転を停止した後、工具ストッカ80aの、工具を保持していない空の保持アーム84の下方にコラム18は向かう。工具を保持していない空の保持アーム84の下方に位置したところで、矢印Z2方向にコラム18を後退させることで、工具Tはアンクランプされて抜き取られる。この後、工具ストッカ80aを回転させて、これから使用する予定の工具Tが保持されている保持アーム84を下方に指向させ、矢印Z1方向にコラム18を進出させることで、工具Tがツールヘッド50に挿入される。支持体22が工具ストッカ80aから離間しワークに向かうことで、ツールヘッド50に工具Tはクランプされる。支持体22がワークに向かって移動しつつ、ツールヘッド50にクランプされた工具Tは、回転を始める。
また、空転時の他の場合としては、ワークWに対する加工を開始しようとしており、工具Tが未だにワークに接触していなくて、回転しているとき等、すなわち工具Tに加工負荷が掛かっていないときである。
上述のワークWの非加工時である工具Tの空転時、駆動ベルト49に異常がない状態では、スピンドルモータ38の負荷(電流値、トルク)は、当該スピンドルモータ38自体の負荷を除くと、実質的に次の5種類(第1〜第5)の負荷(空転トルク)による影響を受けていると考えられる。
第1及び第2は、ドライブ軸44の空転トルクである。ドライブ軸44の空転トルクとしては、第1に、ドライブ軸44を支承するベアリング45a〜45cの負荷トルクTA(転がり抵抗)が挙げられる。第2に、駆動プーリ46aを介して巻き掛けられた駆動ベルト49のテンションによる負荷トルクTB(転がり抵抗増加分)、つまり駆動ベルト49が所定の張力を持つために突っ張っているための抵抗が挙げられる。
第3は、駆動ベルト49の駆動トルクであり、つまり駆動ベルト49の僅かなすべりや回転に起因した抵抗(負荷トルクTC)が挙げられる。
第4及び第5は、スピンドル軸47の空転トルクである。スピンドル軸47の空転トルクとしては、第1に、スピンドル軸47を支承するベアリング51a〜51dの負荷トルクTD(転がり抵抗)が挙げられる。第2に、従動プーリ46bを介して巻き掛けられた駆動ベルト49のテンションによる負荷トルクTE(転がり抵抗増加分)が挙げられる。
以上より、駆動ベルト49に異常がなく、正常に加工主軸36が空転されている状態では、スピンドルモータ38自体の負荷を除くと、上記の負荷トルクTA〜TEの5種類を合計した負荷がスピンドルモータ38に生じている。すなわち、ワークWに対する加工が終了し、工具Tが今なお回転しておりワークに接触していないときや、ワークWに対する加工を開始しようとしており、工具Tが未だにワークに接触していなくて、回転しているとき等、さらに換言すると、回転しているときで工具Tに加工負荷が掛かっていないときに、当該負荷を検出するということである。
一方、駆動ベルト49が完全に切れた状態では、上記の空転トルクのうち、負荷トルクTB〜TEが作用しなくなり、実質的にドライブ軸44を支承するベアリング45a〜45cの負荷トルクTAのみが作用した状態となる。なお、駆動ベルト49が一部切れた状態(切れつつある状態)や過度に伸びきってしまった状態等では、負荷トルクTB等が変化(時間変化)することから、負荷トルクTA〜TEを合計した負荷が正常時の負荷と大きく異なる値となる。
そこで、先ず、正常時の負荷範囲(基準正常範囲)D0として、上記した空転時の負荷トルクTA〜TEの各値及び各値の合計値に、想定される変動範囲(誤差)を付与した範囲を予め設定し、メモリ148に記憶しておく。さらに、駆動ベルト49の異常時の負荷範囲(基準異常範囲)D1として、負荷トルクTAの値に、想定される変動範囲(誤差)を付与し、必要に応じて、上記負荷トルクTB等の時間変化を考慮した範囲を予め設定し、メモリ148に記憶しておく。
なお、異常時の負荷範囲D1は、仮に駆動ベルト49の一部切れ等を考慮せず、完全に駆動ベルト49が切れた状態のみを検知すればよいときには、負荷トルクTAの値のみを考慮して設定するとよい。また、駆動ベルト49が一部切断から進行してゆくような状態を検知する場合には、異常時の負荷範囲D1として、例えば、負荷トルクTA〜TEの各値の合計値の時間変化率を設定しておくとよい。ベルト切れが進行すると、駆動ベルト49の張力が次第に低下し、負荷トルクTB、TC、TE等の値が次第に低下すると考えられるからである。勿論、駆動ベルト49が一部切断から進行してゆくような状態を検知する場合において、上記した負荷範囲D0を外れた所定の閾値等を設定しておくこともできる。
前記第2監視部144は、振れセンサ102(図7参照)の出力(工具Tの回転パルス)と、テンション機構101を構成するテンションモータ126(図9参照)の負荷(電流値、トルク)とを監視するものであり、第1判定部142の判定結果に基づき動作する。なお、後述するように、当該異常検知装置100において、振れセンサ102の出力のみ、又は、テンションモータ126の負荷のみを用いる場合には、当該第2監視部144は、いずれか一方の状態のみを監視すればよい。
前記第2判定部146は、第2監視部144によって検知されたテンションモータ126の負荷又は振れセンサ102の出力が、予め設定されメモリ148に記憶された基準正常範囲外(基準正常値外)にあるか否かを判定するものである。
すなわち、駆動ベルト49に切れ等の異常がない状態において、工具Tが空転された場合、振れセンサ102の出力は、工具Tが加工主軸36に正常に装着されていれば所定周期のパルスを示す。一方、駆動ベルト49に切れ等の異常が生じている場合には、振れセンサ102が工具Tの回転を全く測定できないか、又は、測定できたとしても不安定な変動した周期となる。
また、駆動ベルト49に切れ等の異常がない状態において、テンションモータ126を駆動した場合、駆動ベルト49を第1テンションプーリ130a及び第2テンションプーリ130bが弾性的に押圧することにより、当該テンションモータ126の負荷は駆動ベルト49の弾性的な反発を受けた所定範囲となる。一方、駆動ベルト49に切れ等の異常が生じている場合には、第1テンションプーリ130a等が弾性的に駆動ベルト49を押圧することができないため、テンションモータ126の負荷は駆動ベルト49からの反発の影響を受けない小さい(軽い)値となる。
そこで、振れセンサ102が正常なパルスを出力しているときの周期範囲D2を予め設定し、メモリ148に記憶しておく。換言すると、例えば、振れセンサ102の出力が全くなく工具Tが回転していないか、又は不安定で異常な周期であり、駆動ベルト49の切れ等を想定できるとき、当該振れセンサ102の出力パルスは、前記周期範囲D2外となる。なお、周期範囲D2外の値としては、駆動ベルト49が完全に切れた状態を想定し、周期ゼロ(回転なし)のみを設定することも当然可能である。さらに、テンションモータ126の負荷が、駆動ベルト49の切れ等を想定できる値にあるときの負荷範囲D3を予め設定し、メモリ148に記憶しておく。すなわち、メモリ148には、上記した負荷範囲D0、D1、D3と、周期範囲D2とを記憶されるとよい。
次に、基本的には以上のように構成される工作機械システム10において、駆動ベルトの異常検知装置100による異常検知動作につき、図11及び図12のフローチャートを参照して説明する。図11は、異常検知装置100による第1の異常検知動作を示すフローチャートであり、図12は、異常検知装置100による第2の異常検知動作を示すフローチャートである。なお、第1の異常検知動作とは、第2監視部144で振れセンサ102の検出パルスを検知する動作であり、第2の異常検知動作とは、第2監視部144でテンションモータ126の負荷を検知する動作である。
先ず、図11を参照して、異常検知装置100による駆動ベルト49の第1の異常検知動作について説明する。
例えば、コントローラ12の制御下に、工具ストッカ80a(80b)との間で工具Tが交換され、新たな工具Tが加工主軸36に装着されると、先ず、図11のステップS1において、加工主軸36が前記所定の振れ測定位置に移動され(図7参照)、工具Tが空転される。
ステップS2では、先ず、第1監視部140によりスピンドルモータ38の負荷を検知する。次に、検知したスピンドルモータ38の負荷が、上記した基準異常範囲である負荷範囲D1内にあるか否かを第1判定部142により判定する。
なお、第1判定部142では、スピンドルモータ38の負荷が、上記した基準正常範囲である負荷範囲D0外にあるか否かを判定してもよい。また、第1判定部142では、上記した第1〜第5までの各負荷トルクTA〜TEの各値及びその合計値と、検知した負荷とを比較することにより、当該検知した負荷が所定のベルト異常判定基準(閾値)に合致するか否か、又は前記負荷範囲D1内にあるか否かを判定してもよい。
上記ステップS2でスピンドルモータ38の負荷が負荷範囲D1内にないと判定されると、ステップS3で、駆動ベルト49の切れ判定基準に合致せず、ベルト切れの可能性はない(極めて低い)と判定し、次に、ステップS4によりワークWへの加工を開始又は加工開始の準備を実施する。加工開始の準備とは、振れセンサ102により振れを測定すること等である。許容範囲を超えていれば、振れNGとして、例えば異常警報等を出す。これを実施せずに加工を開始してもよい。
一方、上記ステップS2でスピンドルモータ38の負荷が負荷範囲D1内にあると判定されると、ステップS5で、駆動ベルト49の切れ判定基準に合致し、ベルト切れの可能性がある(極めて高い)ものと判定し、予め決められた動作を実施してさらにベルトが切れたと判定されるべき現象を検知するため、次に、ステップS6を実行する。
ステップS6では、先ず、第2監視部144により振れセンサ102の出力を測定する。次に、測定した振れセンサ102の出力(検出パルス)が、上記した駆動ベルト49の正常を示す周期範囲D2内にあるか否かを第2判定部146により判定する。
上記ステップS6で振れセンサ102の出力が周期範囲D2内にあると判定されると(ステップS6のNO)、ステップS7では、振れセンサ102からパルス出力がなく駆動ベルト49が完全に切れている状態にある、又は、工具Tの回転周期が時間経過と共に変化し、駆動ベルト49が次第に切れつつある状態にある等の判定がなされる。すなわち、駆動ベルト49の切れ故障モードか否かを確認する。さらに換言すると、振れセンサ102からのパルス出力がないと駆動ベルト49は完全に切れている状態にある、又は、工具Tの回転周期が時間経過と共に変化しており駆動ベルト49が次第に切れつつある状態にあると判定する。次第に切れつつある状態にあるとは、具体的に、回転周期が時間経過と共に徐々に長くなることが含まれる。こういう判定論理でもって駆動ベルト49が切れ故障モードにあると判定し(ステップS7のYES)、そうでないなら(ステップS7のNO)、ステップS9に分岐する。つまり、当該ステップS7で駆動ベルト49について、ベルト切れ等の異常状態にあると判定すると(ステップS7のYES)、ステップS8では、第2判定部146による判定結果を受けて、警報発生部150を駆動し、ベルト切れ等の異常を操作者に通知する。
一方、上記ステップS6で振れセンサ102の出力が周期範囲D2外にあると判定されると(ステップS6のYES)、次に、ステップS9に進み、駆動ベルト49の切れ等の異常以外の要因、例えば、スピンドルモータ38自体の異常等によってステップS5の判定がなされたものと判定し、必要に応じて警報発生部150を駆動し、その異常を操作者に通知する(ステップS10)。勿論、ステップS9において、振れセンサ102が正常に動作している場合のものを含め、駆動ベルト49の異常はないと判定し、ステップS4による加工開始動作を行うこともできる。
なお、上記ステップS10での警報は、上記ステップS8による警報と異なる種類のものに設定しておくと、操作者は容易にベルト切れ等の異常を確認することができ、その後のメンテナンスを容易に実施できる。
以上、異常検知装置100による駆動ベルト49の第1の異常検知動作では、先ず、ステップS2、S3、S5においてスピンドルモータ38の負荷によるベルト切れ(異常)の判定を行い、その後、ステップS6、S7、S9において振れセンサ102の出力により工具Tの回転状態を検知してベルト切れの判定を行う。つまり、異常検知装置100では、駆動ベルト49の切れ等の異常判定を2段階で実行する。これにより、駆動ベルト49の異常判定(切れ判定)を極めて正確に行うことができ、誤った判定によるシステム停止及びこれによる作業工程の遅延等を有効に回避することができる。また、駆動ベルト49が次第に切れつつあるような状態であっても、スピンドルモータ38の負荷と、振れセンサ102の出力とによる2段階の判定により、その負荷や出力の不安定な変動等を検知し易く、加工時に駆動ベルト49が切れてしまうような事態を予め回避することができる。
次に、図12を参照して、異常検知装置100による駆動ベルト49の第2の異常検知動作について説明する。
この第2の異常検知動作は、上記した第1の異常検知動作のステップS5より後の工程(ステップS6をステップS6a、S6bに置換)が異なるものであり、ステップS1〜S5、及びステップS7〜S10は図11と略同様である。
すなわち、図12のステップS5で、第1判定部142によりスピンドルモータ38の負荷が駆動ベルト49の切れ判定基準に合致し、ベルト切れ等の可能性がある(極めて高い)ものと判定されると、予め決められた動作を実施してさらにベルトが切れたと判定されるべき現象を検知するため、次に、ステップS6aを実行する。
ステップS6aでは、テンション機構101を駆動する。すなわち、コントローラ12の制御下に、駆動ベルト49の張力を高める方向にテンションモータ126を駆動する。
すなわち、駆動ベルト49が正常な状態にある場合には、駆動ベルト49を第1テンションプーリ130a及び第2テンションプーリ130bが弾性的に押圧することによるテンションモータ126の負荷が第2監視部144で検出される。一方、駆動ベルト49に切れや伸び等の異常が生じている場合には、テンションモータ126の負荷は駆動ベルト49からの反発の影響を受けずに軽い値となり、所定の負荷範囲D3内となる。
そこで、ステップS6bでは、検出したテンションモータ126の負荷が、上記した駆動ベルト49の異常を示す負荷範囲D3内にあるか否かを第2判定部146により判定する。
上記ステップS6bでテンションモータ126の負荷が負荷範囲D3内にあると判定されると、ステップS7において、駆動ベルト49が切れているか又は切れつつあるか又は過度に伸びきってしまっている等の異常を生じているとの判定がなされる。
つまり、当該ステップS7では、駆動ベルト49について、ベルト異常(ベルト切れ)の状態にあると判定する。このため、ステップS8では、第2判定部146による判定結果を受けて、警報発生部150を駆動し、ベルト切れを操作者に通知する。
一方、上記ステップS6bでテンションモータ126の負荷が負荷範囲D3外にあると判定されると、次に、ステップS9に進み、駆動ベルト49の切れ等の異常以外の要因、例えば、スピンドルモータ38自体の異常等によってステップS5の判定がなされたものと判定し、必要に応じて警報発生部150を駆動し、その異常を操作者に通知する(ステップS10)。勿論、ステップS9において、テンションモータ126の負荷が正常な範囲(負荷範囲D3外)にあることから、駆動ベルト49の異常はないと判定し、ステップS4による加工開始動作を行うこともできる。
以上、異常検知装置100による駆動ベルト49の第2の異常検知動作では、先ず、ステップS2、S3、S5においてスピンドルモータ38の負荷によるベルト異常(切れ)の判定を行い、その後、ステップS6a、S6b、S7、S9においてテンションモータ126の負荷によるベルト異常の判定を行う。つまり、この場合にも、異常検知装置100では、駆動ベルト49の切れ等の異常判定を2段階で実行する。これにより、駆動ベルト49の異常判定を極めて正確に行うことができ、誤った判定によるシステム停止及びこれによる作業工程の遅延等を有効に回避することができる。また、駆動ベルト49が次第に切れつつあるような状態であっても、スピンドルモータ38の負荷と、テンションモータ126の負荷とによる2段階の判定により、その負荷の不安定な変動等を検知し易く、加工時に駆動ベルト49が切れてしまうような事態を予め回避することができる。特に、当該第2の異常検知動作では、ステップS6a、S6bにより、テンションモータ126の負荷を判定するため、駆動ベルト49が切れつつある状態や伸びきった状態にある場合の異常検知を一層確実に判定することができる。
以上のように、本実施形態に係る駆動ベルトの異常検知装置100によれば、第1監視部140及び第1判定部142でベルト切れ等の異常を生じている可能性あり(可能性が高い)と判定されると、次に、予め決められた動作(第2監視部144及び第2判定部146による判定)を実行し、ベルト異常の最終判定を実施する。つまり、異常検知装置100では、第1判定部142で駆動ベルト49に異常を生じている可能性があると判定された場合に動作され、第1監視部140とは異なる部位の状態を検知する第2監視部144を備えている。
このように異常検知装置100では、駆動ベルト49の異常判定を2段階に実行することにより、当該異常判定を一層高い精度で行うことができ、誤判定等を有効に回避することができる。また、加工主軸36への工具Tの装着直後、空転状態で、異常検知装置100による駆動ベルト49の異常検知動作を実行すれば、工具Tが適切に回転されない状態で工具TをワークWに突き当ててしまうことを有効に回避することができる。
以上、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
例えば、上記実施形態では、第2監視部144及び第2判定部146による検知対象は、振れセンサ102又はテンションモータ126のどちらか一方でよいとしたが、使用されない他方(例えば、テンションモータ126)については、異常検知装置100から省略することもできる。すなわち、テンションモータ126の負荷検知を行わない場合には、テンション機構101をテンションモータ126による自動装置から、手動装置に交換することもできる。通常、テンション調整は頻繁に行うものではないからである。一方、振れセンサ102も使用しない場合には省略可能であるが、当該振れセンサ102は、工具Tの芯出しにも用いられるため、搭載されることが好ましい。
また、上記では、第1の異常検知動作と第2の異常検知動作とを別に説明したが、両方を連続的に実施することもでき、すなわち、例えば、図11中のステップS6(S7、S9)に続いて、図12中のステップS6a、S6b(S7、S9)を実施し、3段階で駆動ベルト49の異常検知を行うこともできる。
さらに、工作機械は1台であってもよい。さらにまた、加工主軸と工具Tを受け渡すメインストッカは3台以上であってもよく、当然、工作機械が3台以上並んだもの、例えばトランスファマシンのようなものであってもよい。