JP5168749B2 - 油脂の製造法 - Google Patents
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Description
本発明は、油脂の製造法に関し、特に加熱臭や加熱劣化臭の改善されたフライ用油脂及びレシチン臭の改善された炒め用油脂に関する。
背景技術
フライ用油脂を長期間使用していると、高温下で酸素との接触により熱酸化分解物が発生し劣化臭が発現する。特に大豆油や菜種油といった液体油は構成脂肪酸として、多価不飽和酸を多く含有しているので熱酸化されやすい。熱酸化されたフライ用油脂を使用したフライ品は油脂の風味が原因で劣化臭が激しい。特開平4−66052号公報ではエステル交換により油脂の風味の改善を試みているが、加熱臭を改善するものではなく、また実質的にパーム油や水添脂の独特の風味を少なくしようとしたものである。さらに特開平7−135972号公報では過酸化脂質を分解することにより、加熱劣化を遅くし、油脂の嗜好性の改善を図っているが、加熱により生成する加熱臭には言及がなく、調理場の雰囲気の改善についても記載がない。このように従来の技術では加熱臭の低減に効果が十分と言えるものがなかった。この様にフライ品の劣化臭改善に関しては有効な手段がなく、劣化臭が発現したフライ油は酸価が低くても新油と交換するしかなかった。
アスコルビン酸がシナージストとして抗酸化性に優れたものであるということは、一般に認識されている。しかしながら、″New Food Industry″Vol.27,No.11(1985)P.68にアスコルビン酸について次のように記載されている。すなわち、「アスコルビン酸は以上述べたように油に対する溶解性の悪い点、熱分解を起こしやすい点、また、金属に対するキレート効果がほとんど期待できない点よりみても、液体植物油等にフライ油の酸化防止には適さない。また、ある場合には酸化促進剤として作用する場合もあるので充分注意する必要がある」。
以上のようにアスコルビン酸を油脂に含有させることは難しいものと認識され、アスコルビン酸パルミテートとすることによって油溶性に改善され、油脂の抗酸化剤として使用されるようになった。従って、アスコルビン酸自体がフライ油の抗酸化剤として使用されることはなく現在に至っている。
また、食品を炒める際、風味・食感の改善と共に焦げ付きを防止するため炒め用油脂を使用するが、サラダ油そのものでは離型性が十分でなく、レシチンだけが特異的に有効である。しかしながら、レシチンには特有の風味があり、加熱時にかかる風味が強くなり製品の風味に悪影響を与えるため、使用量が制限されてしまう。これを改善するためにレシチンを酵素処理したり、高純度にしたり分画したりする等の提案がされているが、いずれもクルードレシチンに比べ大幅なコストアップとなる。
発明の開示
本発明の目的は、アスコルビン酸のように油脂難溶性の有機酸を簡易に油脂に含有させること及びフライ用油脂の加熱臭を改善し、フライ品の加熱劣化臭を改善したフライ用油脂、並びにレシチン臭を改善した炒め用油脂を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、アスコルビン酸、エリソルビン酸及びリンゴ酸の中から選ばれた少なくとも1種の有機酸を水溶液の状態で油脂中に添加し、高温・高減圧下に脱水処理することで、油脂中に含有させることに成功した。熱分解を起こし易い点に関してはアスコルビン酸は水中では容易に酸化・熱分解されるが、意外にも非水系である油脂中では安定的に存在しうるという知見を得、油脂特に調理油の抗酸化剤として使用可能であるという確証を得た。従来の抗酸化剤では酸価・過酸化物価上昇を抑制するに止まり油脂の加熱劣化臭の抑制に関しては、有効な抗酸化剤は存在しなかったが、本発明者らはアスコルビン酸、エリソルビン酸及びリンゴ酸の中から選ばれた少なくとも1種の有機酸を含有させた油脂は特異的に油脂の加熱劣化臭を抑制し得ることを見出した。また、アスコルビン酸を添加した油脂に、クルードレシチンを追加添加したものは、当該クルードレシチン特有の風味が感じ難いという知見を得、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、アスコルビン酸、エリソルビン酸及びリンゴ酸の中から選ばれた少なくとも1種の有機酸を水溶液の状態で油脂中に添加し、50〜180℃、0.5〜100Torrの減圧条件下で、脱水処理することを特徴とする油脂の製造法、及び当該方法によって製造されたフライ用油脂、並びに当該油脂にさらにレシチンを添加する油脂の製造法、及び当該方法によって製造された炒め用油脂、である。
発明を実施するための最良の形態
本発明で使用する有機酸は、アスコルビン酸、エリソルビン酸又はリンゴ酸が良く、これらの有機酸は食品や医薬品用として一般に用いられているもので良く単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いても良い。有機酸の添加量は、油脂中に2〜28ppm含まれるように添加するのが良く、有機酸が2ppm未満では、期待する効果は得られない。また、有機酸の含有量を28ppm超える量を油脂に添加させようとすると、有機酸の結晶が析出し油脂中に含有させることが難しくなる。
本発明で使用する油脂としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、落花生油、ひまわり油、こめ油、ベニバナ油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、パーム油、ヤシ油、パーム核油等の植物油脂並びに牛脂、豚脂等の動物脂、並びにこれらを分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂の単品又は、これらの組み合わせでも良いが、特に大豆油又は菜種油の場合に劣化臭の抑制効果が大きい。
本発明の有機酸を含有してなる油脂の製造法としては、例えば、アスコルビン酸を含有してなる油脂を得ようとすれば、70℃に加熱した油脂中に1%アスコルビン酸水溶液を規定量加え、50〜180℃、0.5〜100Torrの減圧条件下で攪拌しながら15分間〜1時間処理して十分に脱水を行うことにより、アスコルビン酸を含有してなる油脂を得ることができる。アスコルビン酸水溶液の濃度は、0.1〜22%で行うことができ、1〜10%が好ましい。下限未満の場合は、油脂に対する水の量が多くなり効率の悪いものになってしまう。上限を超えると、アスコルビン酸の結晶が析出して油脂への含有が難しくなる。温度は50〜180℃で行うことができ、下限未満の場合は、脱水に要する時間が長くかかり効率の悪いものになってしまう。また、上限を超えるとアスコルビン酸が分解してその効果が乏しくなる。減圧条件は0.5〜100Torrの条件下で行うことができ、可及的に低い方が好ましい。
アスコルビン酸、エリソルビン酸又はリンゴ酸の中から選ばれた少なくとも1種の有機酸を含有してなる油脂の加熱臭の改善効果は、抽出トコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、カテキン等の他の酸化防止剤と併用することによりより高められる。これらの酸化防止剤は単純に油脂に添加するだけで容易に油脂中に含有させることができる。即ち有機酸を2〜28ppm及び抽出トコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、カテキン、のうち少なくとも1種以上を10〜2000ppm含有させるのが良い。
本発明の製造法で得られた油脂は、用途としては高温下で酸素と接触する機会の高いフライ用に適している。有機酸が2〜28ppmの微量でフライ用油脂の加熱臭の改善効果及びフライ品の加熱劣化臭を改善できるのは、有機酸が油脂中に均一に溶解分散しておりその酸化防止効果の効率が高められているものと推察される。
また、以上の油脂、特にアスコルビン酸を添加した油脂にクルードレシチンを追加添加したものは、当該クルードレシチン特有の風味が感じ難いという効果を有するので、有機酸の添加による優れた酸化安定性に加え、焦げ付きがなく離型性に優れた炒め用油脂としての用途に適している。
レシチンは酵素処理、水素添加処理、分画処理等いずれの処理を施したレシチンであっても構わないが、特にクルードレシチンを使用するのが安価であるので有利である。これらのレシチンの添加量はリン脂質に換算して、油脂に対して0.05〜5重量%、好ましくは0.2〜3重量%添加するのが適当である。本発明においては、これらのレシチン以外に他の乳化剤を併用することができる。
実施例
以下に本発明の実施例を示し本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は重量基準を意味する。
以下において、アスコルビン酸定量法、フライテスト方法及び風味評価方法は次のように行った。
(アスコルビン酸定量法)
密閉可能な容器中に油脂を加え油脂と等量の5%メタリン酸水溶液と油脂2倍量のヘキサンを加え、振とう攪拌を行う。静置後水相部の246nmの吸光度を測定する。別途既知量のアスコルビン酸水溶液により246nmの吸光度を測定し検量線を作製し濃度未知試料の定量に使用する。
(フライテスト方法)
フライ鍋に、フライ用油脂を2kg計量。油温を180±5℃に保つ。冷凍コロッケを20分に1回1個4分揚げる。18時間連続してこの操作を繰り返し、18時間後のコロッケの風味評価を行った。
(風味評価方法)
風味パネラーに下記基準により各サンプル毎、評価してもらう。
5点:劣化臭を全く感じない
4点:劣化臭が抑制されており良好
3点:劣化臭が抑制されているが若干感じる
2点:劣化臭を強く感じる
1点:劣化臭を非常に強く感じる
各サンプル毎得点集計し風味パネラー人数nで割り平均点算出、平均点を下記基準により総合判定を行った。
◎:4<平均点≦5,
○:3<平均点≦4,
△:2<平均点≦3,
×:平均点≦2
以下実施例及び比較例において下記の抗酸化剤を使用した。
アスコルビン酸(和光純薬工業(株)製、商品名:L−アスコルビン酸、純度:99.5%)
エリソルビン酸(和光純薬工業(株)製、商品名:エリソルビン酸、純度:97.0%)
リンゴ酸(和光純薬工業(株)製、商品名:リンゴ酸、純度97.0%)
抽出トコフェロール(理研ビタミン(株)製、商品名:Eオイル805D、抽出トコフェロール70%、植物油脂30%)
アスコルビン酸パルミテート(理研ビタミン(株)製、商品名:EC−100、アスコルビン酸パルミテート10%、抽出トコフェロール10%、グリセリン脂肪酸エステル51%、食品素材29%)
カテキン(太陽化学(株)製、商品名:サンカトール、カテキン10%、抽出トコフェロール9%、グリセリン脂肪酸エステル64%、食品素材17%)
クルードレシチン(ツルレシチン工業(株)製、レシチンSLPベースト(リン脂質60%〜65%))
高純度レシチン(ツルレシチン工業(株)製、レシチンSLPホワイト(リン脂質95%以上))
実施例1
70℃に加温した大豆油100重量部に対し1%アスコルビン酸水溶液を0.2重量部加えて混合し、70℃、40Torrの減圧条件下で、攪拌しながら20分間脱水処理を行った。しかる後、TOYONo.5C濾紙(1μm相当)にて濾過し、アスコルビン酸含有油脂を得た。アスコルビン酸定量法により測定すると10.4ppmであった。この油脂のフライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は4.2で風味は良好であった。
実施例2
70℃に加温した大豆油100重量部に対し1%アスコルビン酸水溶液を0.03重量部加えて混合し、70℃、40Torrの減圧条件下で、攪拌しながら20分間脱水処理を行った。しかる後、TOYONo.5C濾紙(1μm相当)にて濾過し、アスコルビン酸含有油脂を得た。アスコルビン酸定量法により測定すると2.9ppmであった。この油脂のフライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は3.1で風味は良好であった。
実施例3
70℃に加温した大豆油100重量部に対し1%アスコルビン酸水溶液を0.1重量部加えて混合し、70℃、40Torrの減圧条件下で、攪拌しながら20分間脱水処理を行った。しかる後、TOYONo.5C濾紙(1μm相当)にて濾過し、アスコルビン酸含有油脂を得た。アスコルビン酸定量法により測定すると7.6ppmであった。この油脂のフライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は3.4で風味は良好であった。
実施例4
70℃に加温した大豆油100重量部に対し1%アスコルビン酸水溶液を0.25重量部加えて混合し、70℃、40Torrの減圧条件下で、攪拌しながら20分間脱水処理を行った。しかる後、TOYONo.5C濾紙(1μm相当)にて濾過し、アスコルビン酸含有油脂を得た。アスコルビン酸定量法により測定すると14.5ppmであった。この油脂のフライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は4.3で風味は良好であった。
実施例1〜実施例4のフライ用油脂の風味評価を表1に纏めた。
比較例1
大豆油100重量部のみで何も添加しないで、実施例1と同様なフライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は1.2で風味は劣化臭を非常に強く感じた。
比較例2
大豆油100重量部に対し、抽出トコフェロール(理研ビタミン(株)製、商品名:Eオイル805D)を0.1重量部添加して抽出トコフェロール含有油脂を作製し、フライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は1.3で風味は劣化臭を非常に強く感じた。
比較例3
大豆油100重量部に対し、アスコルビン酸パルミテート・抽出トコフェロール(理研ビタミン(株)製、商品名:EC−100)を0.1重量部添加してアスコルビン酸パルミテート・抽出トコフェロール含有油脂を作製し、フライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は1.3で風味は劣化臭を非常に強く感じた。
比較例4
大豆油100重量部に対し、カテキン・抽出トコフェロール(太陽化学(株)製、商品名:サンカトール)を0.1重量部添加してカテキン・抽出トコフェロール含有油脂を作製し、フライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は1.5で風味は劣化臭を非常に強く感じた。
比較例1〜比較例4のフライ用油脂の風味評価を表2に纏めた。
実施例5
70℃に加温した大豆油100重量部に対し1%アスコルビン酸水溶液を0.1重量部加えて混合し、70℃、40Torrの減圧条件下で、攪拌しながら20分間脱水処理を行った。しかる後、TOYONo.5C濾紙(1μm相当)にて濾過し、アスコルビン酸含有油脂を得た。この油脂に、さらにアスコルビン酸・抽出トコフェロール(理研ビタミン(株)製、商品名:Eオイル805D)を0.015重量部添加してアスコルビン酸・抽出トコフェロール含有油脂を作製し、フライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は3.6で風味は良好であった。
実施例6
70℃に加温した大豆油100重量部に対し1%アスコルビン酸水溶液を0.1重量部加えて混合し、70℃、40Torrの減圧条件下で、攪拌しながら20分間脱水処理を行った。しかる後、TOYONo.5C濾紙(1μm相当)にて濾過し、アスコルビン酸含有油脂を得た。この油脂に、さらにアスコルビン酸・抽出トコフェロール(理研ビタミン(株)製、商品名:Eオイル805D)を0.15重量部添加してアスコルビン酸・抽出トコフェロール含有油脂を作製し、フライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は4.7で風味は良好であった。
実施例7
70℃に加温した大豆油100重量部に対し1%アスコルビン酸水溶液を0.1重量部加えて混合し、70℃、40Torrの減圧条件下で、攪拌しながら20分間脱水処理を行った。しかる後、TOYONo.5C濾紙(1μm相当)にて濾過し、アスコルビン酸含有油脂を得た。この油脂に、さらにアスコルビン酸・アスコルビン酸パルミテート・抽出トコフェロール(理研ビタミン(株)製、商品名:EC−100)を0.015重量部添加してアスコルビン酸・アスコルビン酸パルミテート・抽出トコフェロール含有油脂を作製し、フライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は3.7で風味は良好であった。
実施例8
70℃に加温した大豆油100重量部に対し1%アスコルビン酸水溶液を0.1重量部加えて混合し、70℃、40Torrの減圧条件下で、攪拌しながら20分間脱水処理を行った。しかる後、TOYONo.5C濾紙(1μm相当)にて濾過し、アスコルビン酸含有油脂を得た。この油脂に、さらにアスコルビン酸・アスコルビン酸パルミテート・抽出トコフェロール(理研ビタミン(株)製、商品名:EC−100)を0.15重量部添加してアスコルビン酸・アスコルビン酸パルミテート・抽出トコフェロール含有油脂を作製し、フライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は4.4で風味は良好であった。
実施例9
70℃に加温した大豆油100重量部に対し1%アスコルビン酸水溶液を0.1重量部加えて混合し、70℃、40Torrの減圧条件下で、攪拌しながら20分間脱水処理を行った。しかる後、TOYONo.5C濾紙(1μm相当)にて濾過し、アスコルビン酸含有油脂を得た。この油脂に、さらにアスコルビン酸・カテキン・抽出トコフェロール(太陽化学(株)製、商品名:サンカトール)を0.015重量部添加してアスコルビン酸・カテキン・抽出トコフェロール含有油脂を作製し、フライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は3.8で風味は良好であった。
実施例10
70℃に加温した大豆油100重量部に対し1%アスコルビン酸水溶液を0.1重量部加えて混合し、70℃、40Torrの減圧条件下で、攪拌しながら20分間脱水処理を行った。しかる後、TOYONo.5C濾紙(1μm相当)にて濾過し、アスコルビン酸含有油脂を得た。この油脂に、さらにアスコルビン酸・カテキン・抽出トコフェロール(太陽化学(株)製、商品名:サンカトール)を0.15重量部添加してアスコルビン酸・カテキン・抽出トコフェロール含有油脂を作製し、フライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は4.2で風味は良好であった。
実施例5〜実施例10のフライ用油脂の風味評価を表3に纏めた。
実施例11
70℃に加温した大豆油100重量部に対し1%エリソルビン酸水溶液を0.2重量部加えて混合し、70℃、40Torrの減圧条件下で、攪拌しながら20分間脱水処理を行った。しかる後、TOYONo.5C濾紙(1μm相当)にて濾過し、エリソルビン酸含有油脂を得た。この油脂に、さらにエリソルビン酸・抽出トコフェロール(理研ビタミン(株)製、商品名:Eオイル805D)を0.1重量部添加してエリソルビン酸・抽出トコフェロール含有油脂を作製し、フライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は3.1で風味は良好であった。
実施例12
70℃に加温した大豆油100重量部に対し1%リンゴ酸水溶液を0.2重量部加えて混合し、70℃、40Torrの減圧条件下で、攪拌しながら20分間脱水処理を行った。しかる後、TOYONo.5C濾紙(1μm相当)にて濾過し、リンゴ酸含有油脂を得た。この油脂に、さらにリンゴ酸・抽出トコフェロール(理研ビタミン(株)製、商品名:Eオイル805D)を0.1重量部添加してリンゴ酸・抽出トコフェロール含有油脂を作製し、フライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は3.2で風味は良好であった。
実施例13
70℃に加温した菜種油100重量部に対し1%アスコルビン酸水溶液を0.1重量部加えて混合し、70℃、40Torrの減圧条件下で、攪拌しながら20分間脱水処理を行った。しかる後、TOYONo.5C濾紙(1μm相当)にて濾過し、アスコルビン酸含有油脂を得た。この油脂に、さらにアスコルビン酸・抽出トコフェロール(理研ビタミン(株)製、商品名:Eオイル805D)を0.015重量部添加してアスコルビン酸・抽出トコフェロール含有油脂を作製し、フライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は3.4で風味は良好であった。
実施例14
70℃に加温した菜種油100重量部に対し1%アスコルビン酸水溶液を0.1重量部加えて混合し、70℃、40Torrの減圧条件下で、攪拌しながら20分間脱水処理を行った。しかる後、TOYONo.5C濾紙(1μm相当)にて濾過し、アスコルビン酸含有油脂を得た。この油脂に、さらにアスコルビン酸・抽出トコフェロール(理研ビタミン(株)製、商品名:Eオイル805D)を0.15重量部添加してアスコルビン酸・抽出トコフェロール含有油脂を作製し、フライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は4.7で風味は良好であった。
比較例5
菜種油100重量部のみで何も添加しないで、実施例11と同様なフライテストを実施した。フライ品のコロッケの風味評価を行ったところ、評価平均点は1.2で風味は劣化臭を非常に強く感じた。
実施例11〜実施例14及び比較例5のフライ用油脂の風味評価を表4に纏めた。
○炒め用油脂(実施例15〜実施例17、比較例6〜比較例9)
鉄製のフライパンにテスト油脂を5g入れて、電磁調理器で加熱し、40gの溶き卵を流し込み焦げ付かずに連続して何枚の薄焼き卵が焼けるかを比較した。同時に油脂加熱時の風味評価も行った。
テスト油脂の内容は表5に示したが、アスコルビン酸含有油脂は実施例1及び実施例2の方法で得た。アスコルビン酸の有無及びレシチン添加の有無を検討した。
風味評価:◎:レシチン臭なし、○:レシチン臭ほとんど感じない、△:レシチン臭を感じる、×:レシチン臭を強く感じる、
実施例15〜実施例17、比較例6〜比較例9の結果を表5に纏めた。
以上の結果、レシチンの添加量を増やすと離型効果が向上するが、レシチン臭が強くなり風味が悪化する傾向にあった(比較例6〜9)。これに対し、アスコルビン酸を添加したものは、レシチンを添加しても風味が悪化することがなかった(実施例15〜17)。
○炒め用油脂(実施例18〜実施例20、比較例10〜比較例13)
実施例15〜17及び比較例6〜9にて使用したのと同様な油脂を使用して炒めテストを実施した。
鉄製のフライパンにテスト油脂を7.5g入れて、電磁調理器で加熱し、炊飯米250gを加えて3分間炒めた。米のほぐれ性評価:◎:極めて良好、○:良好、△:やや不良、×:不良
実施例18〜実施例20、比較例10〜比較例13の結果を表6に纏めた。
以上の結果、各比較例においては風味が悪いか炒め飯の食感が悪かったのに対し、各実施例においては風味も良好で食感も良好であった。
産業上の利用可能性
本発明により、フライ用油脂の加熱臭を改善し、フライ品の加熱劣化臭を改善するフライ用油脂、並びに焦げつきがなく離型性に優れた風味の良好な炒め用油脂を提供できるようになった。
Claims (6)
- アスコルビン酸、エリソルビン酸及びリンゴ酸の中から選ばれた少なくとも1種の有機酸を水溶液の状態で油脂中に添加し、50〜180℃、0.5〜100Torrの減圧条件下で脱水処理し、有機酸の添加量が、油脂中に7.3〜28ppm含まれるように添加する、フライ又は炒めに使用される油脂であって、加熱に際し生じる加熱臭及び/又は加熱劣化臭を抑制した、油脂の製造法。
- さらに、抽出トコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、カテキンの中から選ばれた1種又は二種以上を油脂中に10〜2000ppm含まれるように添加する、請求項1記載の製造法。
- さらに、レシチンを添加する、請求項1又は請求項2記載の製造法。
- アスコルビン酸とレシチンとを併用する、請求項3に記載の製造法。
- 請求項1又は請求項2記載の製造法で得られたフライ用油脂。
- 請求項3又は請求項4に記載の製造法で得られた炒め用油脂。
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