JP5076810B2 - 光配向膜用組成物、光配向膜、及び光学異方体 - Google Patents
光配向膜用組成物、光配向膜、及び光学異方体 Download PDFInfo
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Description
従来液晶配向膜としては、ポリイミド等の高分子の膜を一方向に布等で摩擦したラビング膜が使用される。しかしながら、ラビング法では機械的に擦ることによる高分子膜表面の微細な傷が、液晶配向欠陥の原因となったり、ラビング時の押し付け圧の不均一性などにより、配向ムラが生じたりすることで、液晶素子の精細度が低下するという問題がある。
A1及びA2は各々独立して単結合又はアルコキシ基によって置換されていてもよい二価の炭化水素基を表し、B1及びB2は各々独立して単結合、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−NH−CO−O−又は−O−CO−NH−を表すが、R1及びR2の結合において、−O−O−結合を形成することはなく、
m及びnは各々独立して0〜4の整数を表すが、m又はnが2以上のとき、複数あるA1、B1、A2及びB2は同じであっても異なっていても良く、二つのB1又はB2の間に挟まれたA1又はA2はアルコキシ基によって置換されていてもよい二価の炭化水素基を表し、
また、本発明は、上記記載の光配向膜用組成物からなる層を形成し、その後該層に光照射して液晶配向能を生じさせた光配向膜であって、ヘイズが1以下であることを特徴とする光配向膜を提供する。
また、本発明は、上記記載の光配向膜用組成物からなる層に光照射して液晶配向能を生じさせた層(A)と重合性基を有する液晶化合物を前記層(A)により配向させた状態で重合して得られる重合体層(B)とが積層されていることを特徴とする光学異方体を提供する。
また、本発明は、前記層(A)が、パターン状に2以上の異なった方向に液晶配向能を生じさせた層である、上記記載の光学異方体を提供する。
また、本発明は、前記基材がプラスチック基材である、上記記載の光学異方体を提供する。
また、本発明は、基材上に、上記記載の光配向膜用組成物からなる層を形成し、該層に、偏光照射又は斜め方向からの非偏光照射をすることにより前記層(A)を形成した後、前記層(A)上に重合性液晶化合物を含有する層を積層し、光照射若しくは加熱により、親水性基と(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物及び重合性液晶化合物を重合させることを特徴とする光学異方体の製造方法を提供する。
また、本発明は、上記記載の光配向膜用組成物からなる層を形成し、該層に、偏光照射又は斜め方向からの非偏光照射をすることにより前記層(A)を形成した後、親水性基とアクリロイルオキシ基を有する化合物を光照射若しくは加熱により重合させ、重合した前記層(A)上に重合性液晶化合物を含有する層を積層し、光照射若しくは加熱により、重合性液晶化合物を重合させることを特徴とする光学異方体の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記層(A)が、フォトマスクを通じて偏光照射又は斜め方向からの非偏光照射をすることによりパターン状に2以上の異なった方向に液晶配向能を生じさせた層である、上記記載の光学異方体の製造方法を提供する。
(アゾ化合物)
本発明の光配向膜用組成物は一般式(1)で表されるアゾ化合物を含有する。
一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立して、ヒドロキシ基、又は(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基及びマレイミド基からなる群から選ばれる重合性官能基を表す。R1及びR2は、ヒドロキシ基を表すことが好ましいが、光や熱に対する安定性を重視する場合は、R1及びR2が重合性官能基を表すことが好ましく、重合性官能基の中では、特に(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。またマレイミド基は、重合開始剤が不要となるのでより好ましい。
カルバモイル基としては、アルキル基部分が炭素原子数1〜6のものが挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、1−メチルエチル基等が挙げられる。
一般式(1)で表されるアゾ化合物は、具体的には下記構造のアゾ化合物が好ましい。
(親水性基を有する(メタ)アクリレート)
本発明で使用する親水性基を有する(メタ)アクリレートの親水性基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基等が挙げられるが、水酸基あるいはカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートが、一般式(1)で表される化合物との混和性の面から好ましい。1分子あたりの(メタ)アクリロイル基の数には特に制限はなく、1つでも2つ以上でも良い。
トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリス2―ヒドロキシエチルイソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートなどの、ヒドロキシル残基を有するアルコール性ジ(メタ)アクリレート、
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレートなどの、ヒドロキシル残基を有するアルコール性多官能(メタ)アクリレート、
少なくとも1個の芳香環を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテル等のエポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を付加させて得られた(メタ)アクリレート、芳香族エポキシアクリレートの水添タイプの脂環式エポキシアクリレート等が挙げられる。尚、ここでいう多価フェノールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール化合物又はビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド付加体、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等を用いることができる。
また、前記親水性基を有する(メタ)アクリレートは親水性が高いため、一般式(1)で表されるアゾ化合物との相溶性は良好であるが、まれに結晶化が生じる組み合わせがある。その場合、平滑な塗膜が得られないため配向規制力に影響が生じるおそれがあるので、配合した状態で結晶性が著しく高くならないような前記親水性基を有する(メタ)アクリレートと一般式(1)で表されるアゾ化合物との組み合わせが好ましい。結晶化の有無は、例えば、光学的観察や分光分析、散乱実験等により判断が可能である。
本発明で使用する重合体は、一般式(1)で表されるアゾ化合物と相溶性のあるものであれば公知慣用の重合体を用いることができる。相溶性のあるものとしては、主に極性基を多く有する重合体が挙げられる。極性基としては、例えば、
また、スルホ基を有する重合体としては、ポリ(ビニルスルホン酸)及びそのナトリウム塩、ポリ(p−スチレンスルホン酸)及びそのナトリウム塩等が挙げられる。
また、カルボキシ基を有する重合体としては、ポリアクリル酸若しくはそのナトリウム塩、ポリメタクリル酸若しくはそのナトリウム塩、アクリル酸/アクリルアミド共重合体若しくはそのナトリウム塩、アクリル酸/マレイン酸共重合体若しくはそのナトリウム塩、エチレン/アクリル酸共重合体、アクリロニトリル/アクリル酸共重合体、ポリマレイン酸、スチレン/マレイン酸共重合体若しくはそのナトリウム塩、イソブチレン/マレイン酸共重合体若しくはそのナトリウム塩、スチレンスルホン酸/マレイン酸共重合体若しくはそのナトリウム塩、メチルビニルエーテル/マレイン酸共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体、等が挙げられる。
これらの重合体は、一般式(1)で表されるアゾ化合物と相溶性のあるものであれば、他の置換基を有していても構わない。またこれらの重合体を2種類以上混合して使用することも可能である。中でも、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、又はポリアクリル酸が好ましい。
具体的には、下記式を用いてヘイズとした。
本発明で使用する光配向膜用組成物は、塗布性を良好にする目的で、通常溶媒を使用する。溶媒に使用する溶剤としては特に限定はないが、通常は前記アゾ化合物が溶解するような溶媒を使用する。例えば、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール等のジオール系溶剤、テトラヒドロフラン、2−メトキシエターノール、2−ブトキシエタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のエーテル系溶剤、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン、ジメチルスルホキシド、等が挙げられる。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、公知慣用の添加剤を添加してもよい。
通常、固形分比が0.2質量%以上となるように調製する。中でも0.5〜10質量%となるように調製することが好ましい。
本発明で使用する光配向膜用組成物を均一に塗布し、膜厚の均一な光配向膜を得るために、汎用の添加剤を使用することもできる。例えば、レベリング剤、チキソ剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、表面処理剤、等の添加剤を液晶の配向能を著しく低下させない程度添加することができる。
本発明で使用する基材は、液晶表示素子や光学異方体に通常使用する基材であって、光配向膜用組成物溶液の塗布後の乾燥時、あるいは液晶素子製造時における加熱に耐えうる耐熱性を有する材料であれば、特に制限はない。そのような基材としては、ガラス基材、金属基材、セラミックス基材やプラスチック基材等が挙げられる。プラスチック基材としては、セルロース誘導体、ポリシクロオレフィン誘導体、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ナイロン、ポリスチレン等を使用することができる。光配向膜用組成物の塗布性や接着性向上のために、これらの基板の表面処理を行っても良い。表面処理として、オゾン処理、プラズマ処理などが挙げられる。また、光の透過率や反射率を調節するために、基板表面に有機薄膜、無機酸化物薄膜や金属薄膜等を蒸着など方法によって設けても良い。
本発明の光配向膜用組成物は、プラスチック基材に対する接着性に特に優れることから、PETフィルム、ポリアリレート、セルロース誘導体、ポリシクロオレフィン誘導体、等の基材を使用すると本発明の効果を発揮でき特に好ましい。
前記方法により得た光配向膜用塗膜に、異方性を有する光を照射(以下、光異性化工程と略す)して、光配向膜用組成物からなる層に光照射して液晶配向能を生じさせた層(A)(以下層(A)と略す)を作成する。光異性化工程で使用する、異方性を有する光としては、直線偏光や楕円偏光等の偏光、もしくは基材面に対して斜めの方向から非偏光があげられる。偏光は直線偏光、楕円偏光のいずれでも良いが、効率よく光配向を行うためには、消光比の高い直線偏光を使用することが好ましい。
また、光照射装置において偏光を得るためには偏光フィルタ等を使用する必要があるので、膜面に照射される光強度が減少するといった欠点があるが、膜面に対して斜め方向から非偏光を照射する方法では、照射装置に偏光フィルタ等を必要とせず、大きな照射強度が得られ、光配向のための照射時間を短縮することができるという利点がある。このときの非偏光の入射角は基材法線に対して10°〜80°の範囲が好ましく、照射面における照射エネルギ−の均一性、得られるプレチルト角、配向効率等を考慮すると、20°〜60°の範囲が更に好ましく、45°が最も好ましい。
照射光の光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArF等の紫外光レ−ザ−等が挙げられる。本発明においては光配向性基がアゾベンゼン構造であるので、365nmの紫外線の発光強度が特に大きい超高圧水銀ランプを有効に使用することができる。
前記光源からの光を偏光フィルタやグラントムソン、グランテ−ラ−等の偏光プリズムを通すことで紫外線の直線偏光を得ることができる。
また、偏光を照射する際に、フォトマスクを使用すれば、光配向膜にパターン状に2以上の異なった方向に液晶配向能を生じさせることができる。具体的には、本発明の光配向膜用組成物を塗布乾燥した後に、基材にフォトマスクを被せて全面に偏光もしくは非偏光を照射し、パターン状に露光部分に液晶配向能を与える。必要に応じてこれを複数回繰り返すことで、複数方向に液晶配向能を生じさせることができる。
さらに場合によっては、前記光異性化工程の後に光配向膜を冷却することもできる。冷却方法としては、光異性化した光配向膜用塗膜が冷却されればよく、例えば、コールドプレート、チャンバー、低温恒温器等、公知慣用の冷却装置で基材ごと冷却を行う。
また、結露防止のため、冷却をする際に乾燥空気や窒素、アルゴン雰囲気下で行ってもよいし、乾燥空気や窒素等を基材に吹きかけながら冷却してもよい。
本発明で得られる光配向膜は、一般式(1)で表されるアゾ化合物と重合体が相溶性を有しているので透明である。透明性を示す尺度としては前述の通り、濁度(ヘイズ)が1以下を示す特徴を有している。ヘイズが1を超えると光配向膜が目視においても濁りはじめるとともに、密着性が低下し始める。
本発明者らは、本発明の光配向膜と後述の重合体層(B)を積層した光学異方体の界面の密着性は、光配向膜のヘイズと相関があることを見出した。ヘイズが高くなるほど相溶性は低下し、アゾ化合物と重合体が相分離する。即ち重合体層(B)と接する光配向膜表面の平滑性が失われ、基材と光配向膜との密着性が低下するものと考えられる。
本発明ので得られる光配向膜を予め重合させる場合は、光異性化工程後、親水性基を有する(メタ)アクリレートを重合させる。この場合は、後述の光重合開始剤を添加しておくことが好ましい。重合方法は光照射又は熱でよいが、光照射で行う場合は、光異性化工程で得られた配向状態を乱さないようにするため、アゾベンゼン骨格が持つ吸収帯以外の波長で行われることが好ましいとされる。このような光は、具体的には320nm以下の紫外光であるが、320nm以下の紫外光により光配向膜及び重合性液晶組成物が分解などを引き起こす場合は、320nm以上の紫外光で重合処理を行ったほうが好ましい場合もある。
本発明で使用する光重合開始剤は公知慣用のものが使用できる。
320nm以下の紫外光で使用できる光重合開始剤としては1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア184」)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1173」)などが挙げられる。
本発明の光学異方体は、一般式(1)で表される化合物におけるR1及びR2がヒドロキシ基の場合は、前記方法で得た光配向膜層に重合性基を有する液晶化合物を含有する層を積層し、前記光配向膜により配向させた状態で光照射もしくは加熱により重合させて得られる。
あるいは、一般式(1)で表される化合物におけるR1及びR2が重合性官能基の場合は、前記光配向膜用組成物からなる層に光照射して液晶配向能を生じさせた層(A)(以下、層(A)と略す)に、重合性基を有する液晶化合物を前記層(A)により配向させた状態で重合して得られる重合体層(B)(以下、層(B)と略す)との積層膜を基材上に形成し、層(A)に液晶配向能を生じさせながら、あるいは生じさせて、液晶化合物の配向状態を保ったまま重合性基を反応させることで得ることができる。この場合、各々の層が完全に重合硬化している必要はない。
具体的な方法としては、例えば、下記(方法1)〜(方法4)の方法が挙げられる。
基板上に、前記光配向膜用組成物の塗膜を作成する工程1と、前記光配向膜用組成物塗膜上に重合性液晶組成物塗膜を作成する工程2と、異方性を有する光を照射して、一般式(1)で表されるアゾ化合物及び液晶分子を配向させながら親水性基を有する(メタ)アクリレートと重合性液晶組成物を重合させる工程3を、この順に行う製造方法。
該方法においては、配向膜中に共存する親水性基を有する(メタ)アクリレートと重合性液晶を重合させるので、光配向膜層と液晶重合体層との両層間に結合関係を導入でき、特に界面の密着性及び耐久性に優れた光学異方体が得られる。また、異方性を有する光を1度照射するだけで、光異性化反応と重合とを同時に行うことができるので、効率的である。
基板上に、前記光配向膜用組成物の塗膜を作成する工程1と、前記光配向膜用組成物塗膜に異方性を有する光を照射して一般式(1)で表されるアゾ化合物を配向させる工程2と、前記光配向膜用組成物塗膜上に重合性液晶組成物塗膜を作成する工程3と、熱又は光により親水性基を有する(メタ)アクリレートと重合性液晶組成物を重合させる工程4を、この順に行う製造方法。
該方法においては、前記光配向膜用組成物塗膜に直接光を照射するので、より液晶配向能の高い光配向膜を得ることができ、さらに、配向膜中に共存する親水性基を有する(メタ)アクリレートと重合性液晶を重合させるので、光配向膜層と液晶重合体層との両層間に結合関係を導入でき、特に界面の密着性及び耐久性に優れた光学異方体が得られる。
基板上に、前記光配向膜用組成物の塗膜を作成する工程1と、前記光配向膜用組成物塗膜に異方性を有する光を照射して一般式(1)で表されるアゾ化合物を配向させる工程2と、親水性基を有する(メタ)アクリレートを熱又は光により重合させる工程3と、前記光配向膜用組成物塗膜上に重合性液晶組成物塗膜を作成する工程4と、熱又は光により重合性液晶組成物を重合させる工程5を、この順に行う製造方法。
該方法においては、重合性液晶組成物層を形成する前に親水性を有する(メタ)アクリレートを重合させるので、機械的、あるいは化学的強度に優れた光配向膜が得られ、光配向膜を形成した基板を積み重ねたり巻き取ったりするプロセスが含まれる場合には好適である。また、光配向の工程を光重合の工程とは分けて行うので配向規制力の制御が容易である。
基板上に、前記光配向膜用組成物の塗膜を作成する工程1と、前記光配向膜用組成物塗膜に異方性を有する光を照射して一般式(1)で表されるアゾ化合物を配向させながら親水性基を有する(メタ)アクリレートを重合させる工程2と、前記光配向膜用組成物塗膜上に重合性液晶組成物を塗布し配向させる工程3と、熱又は光により重合性液晶組成物を重合させる工程4を、この順に行う製造方法。
これら方法は光学異方体の製造プロセスに応じて適宜選択すればよい。重合性液晶を塗布する工程の前に光配向膜が他の基板等や装置などの物体に接することがないようなプロセスでは、(方法1)又は(方法2)が、重合操作が一度で済み簡便であり好ましく、(方法2)が、配向に優れた光学異方体が簡便に得られるのでさらに好ましい。一方、重合性液晶を塗布する工程の前に、基板の堆積あるいは巻き取りにより光配向膜が他の基板等や装置などの物体に接する可能性がある場合には光配向膜の構造を固定化するために(方法3)又は(方法4)を選択することが好ましい。
(重合性基を有する液晶化合物)
本発明において、重合体層(B)を構成する重合性基を有する液晶化合物は、単独又は他の液晶化合物との組成物において液晶性を示す。重合性基を有する化合物であれば、特に限定はない。例えば、Handbook of Liquid Crystals(D.Demus,J.W.Goodby,G.W.Gray,H.W.Spiess,V.Vill編集、Wiley−VCH社発行,1998年)、季刊化学総説No.22、液晶の化学(日本化学会編,1994年)、あるいは、特開平7−294735号公報、特開平8−3111号公報、特開平8−29618号公報、特開平11−80090号公報、特開平11−148079号公報、特開2000−178233号公報、特開2002−308831号公報、特開2002−145830号公報に記載されているような、1,4−フェニレン基1,4−シクロヘキレン基等の構造が複数繋がったメソゲンと呼ばれる剛直な部位と、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、エポキシ基といった重合性官能基を有する棒状重合性液晶化合物、あるいは特開2004−2373号公報、特開2004−99446号公報に記載されているようなマレイミド基を有する棒状重合性液晶化合物、 あるいは特開2004−149522号公報に記載されているようなアリルエーテル基を有する棒状重号性液晶化合物、 あるいは、例えば、Handbook of Liquid Crystals(D.Demus,J.W.Goodby,G.W.Gray,H.W.Spiess,V.Vill編集、Wiley−VCH社発行,1998年)、季刊化学総説No.22、液晶の化学(日本化学会編,1994年)や、特開平7−146409号公報に記載されているディスコティク重合性化合物が挙げられる。中でも、重合性基を有する棒状液晶化合物が、液晶温度範囲として室温前後の低温を含むものを作りやすく好ましい。
前記重合性液晶組成物を重合させるには、一般には紫外線等の光照射あるいは加熱により行う。光照射によって行う場合に使用する光重合開始剤としては公知慣用のものが使用でき、例えば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1173」)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア184」)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1116」)、2−メチル−1−[(メチルチオ)フェニル]−2−モリホリノプロパン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア907」)。ベンジルメチルケタ−ル(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア651」)。2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアDETX」)とp−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製「カヤキュアEPA」)との混合物、イソプロピルチオキサントン(ワ−ドプレキンソップ社製「カンタキュア−ITX」)とp−ジメチルアミノ安息香酸エチルとの混合物、アシルフォスフィンオキシド(BASF社製「ルシリンTPO」)、などが挙げられる。光重合開始剤の使用量は重合性液晶化合物に対して10質量%以下が好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
前記重合性液晶組成物に使用する溶剤としては、特に限定はないが、前記化合物が良好な溶解性を示す溶媒が使用できる。例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アニソール等のエーテル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、等のアミド系溶剤、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン等が挙げられる。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。また、添加剤を添加することもできる。
(光配向膜用組成物(1)の調整)
(光配向膜用組成物(2)〜(13)の調整)
光配向膜用組成物(1)と同様にして光配向膜用組成物(2)〜(13)を得た。各組成物の組成は表1に示すとおりである。
重合体は、以下の通りである。
ポリアクリル酸1:アルドリッチ社製(MW:1800)
ポリアクリル酸2:製品名:ジュリマーAC−10P(日本純薬株式会社製)
ポリアクリル酸3:製品名:ジュリマーAC−10SL(日本純薬株式会社)
ポリビニルピロリドン:和光純薬社製(MW:30000)
ポリ(4−ビニルピリジン):シグマアルドリッチ社製(MW:60000)
ポリエチレンイミン:和光純薬社製(MW:600)
ポリビニルスルホン酸ナトリウム:ポリサイエンス社製(MW:17000)
親水性基を有する(メタ)アクリレートの構造は以下のとおりである。
DA−212
式(A)で表される化合物0.5部をN−メチル−2−ピロリドン50部に溶解させ、溶液1を得た。次にポリアクリル酸0.1部を2−ブトキシエタノール25部に溶解させ、溶液2を得た。さらにDA−212 1部を2−ブトキシエタノール25部に溶解させ、溶液3を得た。溶液1に溶液2、及び、溶液3を加え、光配向膜用組成物(14)を得た。
(光配向膜用組成物(15)〜(17)の調整)
光配向膜用組成物(14)と同様にして光配向膜用組成物(15)〜(17)を得た。各組成物の組成は表2に示すとおりである。
(重合性液晶組成物(LC−1)の調整)
式(E)で示される化合物15部、式(F)で示される化合物15部をキシレン70部に溶解させた後、イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)1.2部、式(G)で示されるアクリル共重合体0.3部を加え、溶液を得た。得られた溶液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、重合性液晶組成物(LC−1)を得た。
(重合性液晶組成物(LC−2)の調整)
式(E)で示される化合物15部、式(F)で示される化合物15部をシクロペンタノン70部に溶解させた後、イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)1.2部、式(G)で示されるアクリル共重合体0.3部を加え、溶液を得た。得られた溶液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、重合性液晶組成物(LC−2)を得た。
(光学異方体としての評価)
(実施例1)
光配向膜用組成物(1)をスピンコーターで基材である80μmのプラスチックフィルム上に塗布し、50℃で1分間乾燥した。このときの乾燥膜厚は15nmであった。
次に超高圧水銀ランプに波長カットフィルター、バンドパスフィルター、及び、偏光フィルターを介して、波長365nm付近の可視紫外光(照射強度:20mW/cm2)の直線偏光でかつ平行光を、基材に対して垂直方向から照射し、光配向膜を得た。照射量は100mJ/cm2であった。
(ヘイズ測定)
ヘイズは、JISK7361−1プラスチック透明材料の全光線透過率の試験方法、JISK7105プラスチックの光学的特性試験方法、あるいはJISK7136プラスチック−透明材料に準拠して、日本電色工業株式会社製の濁度計NDH2000を用いて、膜厚20nmの光配向膜の、拡散透過光/全光線透過光で示される濁度をヘイズとした。
具体的には、下記式を用いてヘイズとした。
得られた光配向膜上にスピンコーターで重合性液晶組成物(LC−1)を塗布し、80℃で2分乾燥後、窒素雰囲気下で紫外線を1J/cm2照射することにより均一な光学異方体を得た。リタデーションは270nmであった。得られた光学異方体の膜状態を観察した結果を、外観評価に従い評価した。その結果を表2に示す。
A:目視で欠陥が全くなく、偏光顕微鏡観察でも欠陥が全くない
B:目視では欠陥は全くないが、偏光顕微鏡観察では無配向部分が存在している
C:目視では欠陥はないが、偏光顕微鏡観察で全体的に無配向部分が存在している
D:目視では一部欠陥が生じており、偏光顕微鏡観察でも全体的に無配向部分が存在している
E:目視で光配向膜全体にむらが生じている
(接着性評価)
また、得られた光学異方体の基材/光配向層(A)/重合性液晶層(B)の接着力を評価するため、得られた光学異方体1cm四方にカッターで碁盤目状に切り目を入れ、1mm角の碁盤目にした。次に碁盤目の部分にセロハンテープを貼って、垂直方向に引き上げ、残った碁盤目の数を数えた。以上の操作を5回繰り返し、平均値を求めた。得られた結果を表3に示す。
光配向膜用組成物(14)をスピンコーターで0.7mmのガラス基材上に塗布し、80℃で1分間乾燥した。このときの乾燥膜厚は15nmであった。
次に超高圧水銀ランプに波長カットフィルター、バンドパスフィルター、及び、偏光フィルターを介して、波長365nm付近の可視紫外光(照射強度:20mW/cm2)の直線偏光でかつ平行光を、基材に対して垂直方向から照射し、光配向膜を得た。照射量は100mJ/cm2であった。
基材であるガラス基材のヘイズを測定したところ、0.02であった。次に得られた光配向膜をプラスチックフィルムごと測定したところ、0.14であった。したがって、得られた光配向膜のヘイズは、0.12であった。
得られた光配向膜上にスピンコーターで重合性液晶組成物(LC−2)を塗布し、80℃で2分乾燥後、窒素雰囲気下で紫外線を1J/cm2照射することにより均一な光学異方体を得た。リタデーションは280nmであった。得られた光学異方体の膜状態を観察した結果を、外観評価に従い評価した。その結果を表4に示す。
Claims (13)
- 一般式(1)で表されるアゾ化合物、親水性基と(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、及び、一般式(1)で表されるアゾ化合物と相溶性を有する下記の何れかの構造
A1及びA2は各々独立して単結合又はアルコキシ基によって置換されていてもよい二価の炭化水素基を表し、B1及びB2は各々独立して単結合、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−NH−CO−O−又は−O−CO−NH−を表すが、R1及びR2の結合において、−O−O−結合を形成することはなく、
m及びnは各々独立して0〜4の整数を表すが、m又はnが2以上のとき、複数あるA1、B1、A2及びB2は同じであっても異なっていても良く、二つのB1又はB2の間に挟まれたA1又はA2はアルコキシ基によって置換されていてもよい二価の炭化水素基を表し、
R3〜R6は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アリルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、カルボキシ基若しくはそのアルカリ金属塩、アルコキシカルボニル基、ハロゲン化メトキシ基、ヒドロキシ基、スルホ基若しくはそのアルカリ金属塩、アミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基又は(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニル基、ビニルオキシ基及びマレイミド基からなる群から選ばれる重合性官能基を表す。) - 前記親水性基と(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物において親水性基がヒドロキシル基又はカルボキシル基である、請求項1記載の光配向膜用組成物。
- 前記親水性基と(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を、組成物中の不揮発成分に対して10〜90質量%含む、請求項1に記載の光配向膜用組成物。
- 前記一般式(1)で表されるアゾ化合物と相溶性を有する重合体の重量平均分子量が300〜100000であり、該重合体を光配向膜用組成物全量に対して1〜50質量%の範囲で含有する請求項1記載の光配向膜用組成物。
- 基材上に請求項1に記載の光配向膜用組成物からなる層を形成し、その後該層に光照射して液晶配向能を生じさせた光配向膜であって、ヘイズが1以下であることを特徴とする光配向膜。
- 請求項1に記載の光配向膜用組成物からなる層に光照射して液晶配向能を生じさせた層(A)と重合性基を有する液晶化合物を前記層(A)により配向させた状態で重合して得られる重合体層(B)とが積層されていることを特徴とする光学異方体。
- 請求項1に記載の光配向膜用組成物からなる層に光照射して液晶配向能を生じさせた層(A)と、重合性基を有する液晶化合物を前記層(A)により配向させた状態で重合して得られる重合体層(B)とが、共有結合で結合され積層されていることを特徴とする光学異方体。
- 前記層(A)が、パターン状に2以上の異なった方向に液晶配向能を生じさせた層である、請求項6に記載の光学異方体。
- 前記基材がプラスチック基材である、請求項6に記載の光学異方体。
- 請求項6〜9のいずれかに記載の光学異方体の製造方法であって、基材上に、請求項1に記載の光配向膜用組成物からなる層を形成した後、重合性液晶化合物を含有する層を積層し、該層に偏光照射又は斜め方向からの非偏光照射をすることにより、親水性基と(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と重合性液晶化合物を重合させることを特徴とする光学異方体の製造方法。
- 請求項6〜9のいずれかに記載の光学異方体の製造方法であって、基材上に、請求項1に記載の光配向膜用組成物からなる層を形成し、該層に、偏光照射又は斜め方向からの非偏光照射をすることにより前記層(A)を形成した後、前記層(A)上に重合性液晶化合物を含有する層を積層し、光照射若しくは加熱により、親水性基と(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物及び重合性液晶化合物を重合させることを特徴とする光学異方体の製造方法。
- 請求項6〜9のいずれかに記載の光学異方体の製造方法であって、基材上に、請求項1に記載の光配向膜用組成物からなる層を形成し、該層に、偏光照射又は斜め方向からの非偏光照射をすることにより前記層(A)を形成した後、親水性基とアクリロイルオキシ基を有する化合物を光照射若しくは加熱により重合させ、重合した前記層(A)上に重合性液晶化合物を含有する層を積層し、光照射若しくは加熱により、重合性液晶化合物を重合させることを特徴とする光学異方体の製造方法。
- 前記層(A)が、フォトマスクを通じて偏光照射又は斜め方向からの非偏光照射をすることによりパターン状に2以上の異なった方向に液晶配向能を生じさせた層である、請求項6に記載の光学異方体の製造方法。
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