JP4816003B2 - 光配向膜用組成物、光配向膜の製造方法、及びこれを用いた光学異方体、光学素子、その製造方法 - Google Patents
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Description
また最近では、液晶セルと偏光板との間に使用する光学異方体の一種である光学補償シート(位相差板)として、重合性液晶材料を配向させた状態で硬化させて得た光学異方体の需要が伸びており、これにも液晶配向膜が使用される。
また、光学補償シート(位相差板)は、広波長帯域化や視野角安定性を高精度化させる目的で使用する場合も多く、その場合は、例えば1/4波長板と1/2波長板との積層体、あるいは、A−PlateとC−Plateとの積層体が使用される。しかし、該積層体を製造する方法、即ち液晶配向膜層を作製後、重合性液晶層を硬化させる工程を繰り返す場合、ラビング法を利用した製造方法では装置が非常に大がかりとなり、連続的に作製することは事実上不可能である。従って、液晶配向膜、及び液晶層の全ての積層工程を連続的に行うことができるような、液晶配向膜を得る方法が求められてきた。
このような光配向膜となり得るものとしてはアゾベンゼン誘導体のように光異性化反応をする二色性化合物、シンナメート、クマリン、カルコン等の光二量化反応を生じる部位を有する化合物やポリイミドなど異方的な光分解を生じる化合物がある(例えば非特許文献1参照)。この中で、現在、最も感度が高く配向性の良いとされる光配向材料は、アゾベンゼン誘導体のように光異性化反応をする低分子の二色性化合物であり、数々の研究がなされている。(例えば、特許文献1、非特許文献2参照)
なおここでいう感度とは、十分な配向規制力が得られるのに必要な光照射エネルギーが小さいことを意味する。
例えば、液晶表示素子の作製工程では、光配向膜を有する2枚の基板を、直径数ミクロンのスペーサーを介して貼り合わせる工程がある。このとき使用する接着剤(一般にはシール剤という)の多くは熱硬化型であるため、貼り合わせ工程において基板が高温に曝される。即ち、光配向膜に再度外部エネルギーが与えられることになり、二色性化合物の再配向が誘起され、配向規制力が失われてしまうことがある。
また、光学異方体の作製工程では、光配向処理を施した光配向膜上に重合性液晶あるいは高分子液晶等の液晶材料を塗布してから、液晶相をモノドメインに生長させるために、等方相−液晶相転移温度の直下の温度でエージング処理を要する場合がある。重合性液晶や高分子液晶は、通常の液晶表示素子の駆動用液晶として使われる非重合性の低分子液晶と比べて、液晶相−等方相の転移温度が高いため、必然的にエージング温度を高く、或いはエージング時間を長くしなければならない。このようなエージング処理工程においても、光配向膜は熱暴露されることになり、二色性化合物の再配向が誘起され、配向規制力が失われてしまうことがある。
また、液晶配向膜及び液晶層の積層を繰り返すような積層された光学異方体を得る場合では、液晶層の上に液晶配向膜を塗布作成する工程において、該配向膜材料の希釈溶媒に二色性化合物が溶けだし、同様の問題が起きることがある。
二色性化合物の感度を下げないためには、配向時の二色性化合物の光異性化の構造変化に要する自由体積を小さいまま維持させるのが好ましい。一方、熱や溶剤により配向規制力が低下しない、即ち配向が乱れない光配向膜とするには、二色性分子の自由度を配向処理後に奪うことが好ましい。
このような思想のもと鋭意研究した結果、低分子の二色性化合物と、熱硬化後にアミノ樹脂となる比較的分子量の小さい反応性化合物との組成物が、光配向工程においては感度が高く、光配向処理後には二色性分子と混合した前記反応性化合物を熱硬化させることにより、二色性色素の周りに剛性の高いアミノ樹脂を生成させることによって、課題を解決できることを見いだした。
アミノ樹脂となる反応性化合物は、反応前は分子容が小さいので二色性化合物の自由体積を妨げない。二色性化合物は、光異性化の構造変化に要する自由体積を小さいまま維持できるので、感度を保つことができる。且つ、反応性化合物の熱硬化後は、剛性の高いアミノ樹脂で二色性化合物の周りが囲まれることになる。二色性化合物は光異性化反応に必要な自由体積を奪われてしまうので、熱や溶剤により配向が乱れることや、溶剤に溶けだすことがない。
本発明で用いる二色性化合物としては、1分子中に少なくとも1個の光異性化反応により液晶配向機能を発現する光配向性基(以下、光配向性基と略す)を有する化合物が好ましい。特に分子の発色団による光吸収スペクトルが直線偏光の偏波面の方向によって異なる性質(以下、二色性と称す)を示すアゾベンゼン骨格、アントラキノン骨格、キノフタロン骨格、ペリレン骨格、スチルベン骨格を有する化合物が好ましく、アゾベンゼン骨格、又はアントラキノン骨格、スチルベン骨格を有する化合物は、偏光照射により良好な光配向性を示す点で特に好ましく、アゾベンゼン骨格を有する化合物(以下、アゾ化合物と略す)が光に対する感度が最も高いので最も好ましい。
重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基、マレイミド基、アジド基、クロロメチル基、エポキシ基、などが挙げられ、重合性基を有する誘導体としてケイ皮酸誘導体、チミン誘導体等が挙げられる。これらの中でも、光重合や熱重合が比較的容易なことから、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基が好ましく、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、マレイミド基、又は(メタ)アクリルアミド基がより好ましい。また、これらの重合性基は、アルキレン基及び/又はフェニレン基の如き連結基を介して、アゾベンゼン誘導体と結合していてもよく、該連結基は、エステル結合、エーテル結合、イミド結合又はアミド結合を有していてもよい。
光配向性基を有する化合物が重合性基を有する場合は、光配向後、冷却工程を経て、配向性を上昇させた後、その配向状態を重合性基を用いて重合を行い配向を固定化することが好ましい。
二価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基の如き炭素数1〜18の直鎖状アルキレン基;1−メチルエチレン基、1−メチルトリエチレン基、2-メチルトリエチレン基、1-メチルテトラエチレン基、2−メチルテトラエチレン基、1−メチルペンタメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3−メチルペンタメチレン基の如き炭素数1〜18の分枝状アルキレン基;p−フェニレン基の如きフェニレン基;2−メトキシ−1,4−フェニレン基、3−メトキシ-1,4−フェニレン基、2−エトキシ−1,4−フェニレン基、3−エトキシ−1,4−フェニレン基、2,3,5−トリメトキシ−1,4−フェニレン基の如き炭素数1〜18の直鎖状又は分枝上アルコキシ基を有するフェニレン基;2,6−ナフタレンジイル基の如きアリーレン基が挙げられる。
m又はnが2以上のとき、複数あるA1、B1,A2及びB2は同じであっても異なっていても良い。但し、二つのB1又はB2の間に挟まれたA1又はA2は、単結合ではないものとする。
ハロゲン原子としては、フッ素原子や塩素原子が挙げられる。ハロゲン化メチル基としては、トリクロロメチル基やトリフルオロメチル基が挙げられる。ハロゲン化メトキシ基としては、クロロメトキシ基やトリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
R7で表される炭素原子数1〜6の低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、1−メチルエチル基等が挙げられる。R7で表される炭素原子数1〜6の低級アルコキシ基で置換された炭素原子数1〜6の低級アルキル気としては、メトキシメチル基、1−エトキシエチル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜4のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
R8、及び、R9で表される炭素原子数1〜6のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、1−メチルエチル基等が挙げられる。
これらの中でも、ハロゲン原子、カルボキシル基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシメチル基、カルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、シアノ基が好ましく、カルボキシル基、ヒドロキシメチル基、またはトリフルオロメチル基は良好な配向性が得られる点で特に好ましい。
Yは単結合、−C=C−、―C≡C=を表す。光異性化反応の感度がよいことから単結合及び−C=C−が好ましく、単結合がさらに好ましい。
本発明においてアミノ樹脂とは、アミノ基、あるいは、メチロール基、アルコキシメチル基を有するものなど、架橋剤・硬化剤として広く一般的に用いられ、硬化後はアミノ樹脂となるものを指す。このようなアミノ樹脂として、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などが挙げられる。これらのアミノ樹脂は、メラミン、ベンゾグアナミンなどに、ホルムアルデヒド、又必要に応じてアルコールを公知の方法にて縮合させて得られるが、アミノ基あるいはメチロール基が少なく、高度にアセタール化(アルキルエーテル化)されたものを使用すると、本発明の光配向膜用組成物が経時的に反応することが少なく、経時安定性に優れるために、また、加熱硬化時のメラミンの自己縮合を抑制できるために好ましい。より具体的には、トリアジン環1個当たりの、メタノール、n−ブタノール、イソブタノール等でエーテル化されたメチロール基は、平均2.5個以上であることが好ましい。また、分子容が大きすぎると、光配向処理時、二色性化合物の配向性を妨げることがあるので、平均縮合度は6以下であることが好ましく、3以下、さらに好ましくは1.0〜2.5が好ましい。同様の理由から、重量平均分子量は3000以下が好ましく、300〜2500であることが好ましい。
本発明においては、光配向処理段階では、前記二色性化合物の自由体積を奪うような添加物を大量に配合することは好ましくないので、前記アミノ樹脂と反応しうる基を有する樹脂を使用する場合は、添加量は少量にとどめておくことが好ましい。具体的には、アミノ樹脂のアルコキシ基及びメチロール基、イミノ基等の反応性官能基と反応する極性官能基の総量が、アミノ樹脂の反応性官能基総量の2倍〜1/10倍量であることが好ましく、等倍〜1/10倍量であることが好ましく、さらには等倍〜1/5倍量であることが好ましい。これを、光配向膜用組成物全量に対して規定すると、前記アミノ樹脂と反応しうる基を有する樹脂は25質量%以下が好ましく、20質量%以下が好ましく、さらには10質量%以下が好ましい。
前記二色性化合物と前記アミノ樹脂との配合比は特に限定はないが、二色性化合物の添加量があまりに少なすぎると十分な配向規制力が得られない可能性があり、アミノ樹脂の添加量があまりに少なすぎると溶剤に対する耐性が十分得られないことがある。通常は二色性化合物:アミノ樹脂が 100:120 〜100:5となるように配合するのが好ましい。なお好ましくは100:100〜100:5であり、100:40〜100:10が最も好ましい。本発明においては、アミノ樹脂量が二色性化合物と同量近くであっても、光配向処理に要する照射エネルギーが多くならず、感度が良いまま維持される。この点は、二色性化合物と他の高分子材料との混合物からなる光配向膜用組成物と大きく異なる特長である。
本発明で使用するアミノ樹脂の硬化温度は、100〜300℃の範囲が好ましい。二色性色素が塩基性化合物であれば硬化温度は高いことが好ましく、具体的には150〜300℃、好ましくは150℃〜250℃、さらに好ましくは170℃〜240℃である。
二色性化合物が酸性物質である、あるいは酸触媒を添加した場合には、硬化温度を低下させることができる。具体的には100〜250℃の範囲が好ましく、120〜220℃がさらに好ましく、120℃〜180℃がさらに好ましい。
本発明で使用する光配向膜用組成物は、塗布性を良好にする目的で、通常溶媒を使用する。溶媒に使用する溶剤としては、特に限定はないが、前記化合物が良好な溶解性を示す溶媒が使用する。例えば、水等の無機溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、2−ブタノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール等のジオール系溶剤、テトラヒドロフラン、2−メトキシエターノール、2−ブトキシエタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のエーテル系溶剤、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン、ジメチルスルホキシド、等が挙げられる。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、公知慣用の添加剤を添加してもよい。
通常、固形分比が0.2質量%以上となるように調製する。中でも0.5〜10質量%となるように調製することが好ましい。
本発明で使用する光配向膜用組成物を均一に塗布し、膜厚の均一な光配向膜を得るために、汎用の添加剤を使用することもできる。例えば、レベリング剤、チキソ剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、表面処理剤、PH調製剤等の添加剤を液晶の配向能を著しく低下させない程度添加することができる。
本発明の光配向膜用組成物を使用して光配向膜を得るには、該光配向膜用組成物を基板上に塗布乾燥した後に、紫外線、あるいは、可視光線等の異方性を有する光を照射し、光配向性を有する化合物を配向させる。その後、アミノ樹脂を硬化させることで、光配向膜を得ることができる。これにより、液晶表示セル等のシール部材の熱硬化工程時の高温にも耐え、シール部材が使用している原料、例えば硬化性化合物(エポキシ系接着剤であればエポキシ化合物、アクリル系接着剤であればアクリレート等)や、希釈目的で使用する有機溶剤等に侵されなくなるので、表示部分の配向が一様な液晶表示セルを得ることができる。
また、光配向膜用組成物を基板上に塗布した後に加熱して溶剤乾燥を行い、アミノ樹脂の半硬化状態を生成し、その後に、紫外線、あるいは、可視光線等の異方性を有する光を照射し、光配向性を有する化合物を配向させてもよい。半硬化状態では光配向膜材料中の二色性色素の光異性化に必要な自由体積の確保と、シール部材の成分である有機溶剤に対する低溶解性が両立しているため、光配向処理した基板へのシール部材塗布によって、光配向膜組成物がシール部材へ溶け出すこと低く抑えることができるので好ましい。アミノ樹脂の本硬化はシール部材の硬化と同時に行うか、アミノ樹脂の熱硬化を別工程としても良い。
アミノ樹脂を硬化させる工程は特に限定はなく、前記工程1の後から前記工程3の後までの間に入れれば良いが、重合性液晶組成物を塗布、重合させる工程3の後にいれると、光配向膜の配向規制力が保持されたまま、光学異方体の耐溶剤性等が向上することが判っている。反応機構等の詳しい理由は定かではないが、該方法は、加熱工程を塗布工程、配向工程、重合工程の一番最後に設けることができ、製造方法を簡略化することができるので好ましい方法である。
場合によっては、光学異方体を数層にわたり積層することもできる。その場合は前記工程を複数繰り返せばよく、光学異方体の積層体を形成することができる。
重合性液晶組成物を塗布する工程3と前記光学異方体を設置した光学素子を得る工程4の間に入れる方法が、製造方法を簡略化することができるので好ましい方法である。
例えば液晶表示セルは、2枚の配向膜付き基板をシール剤で熱接着する工程があるが、該熱を利用してアミノ樹脂を硬化させることが可能である。この場合は、光配向膜用組成物に、メラミン硬化反応時の反応温度をコントロールできる硬化触媒や添加剤を適宜添加し、メラミン硬化反応の温度と、シール剤の硬化温度とを合わせておくと尚好ましい。該方法は、液晶表示セルの作製工程を短縮することができ好ましい。
また、光学異方体の場合はエージング工程があるが、該熱を利用してもよい。例えば光学異方体の積層体を作成する場合には、光配向膜用組成物を基板上に塗布する工程1と、光配向膜用組成物の溶剤乾燥とアミノ樹脂の半硬化を同時に行うための加熱工程2と、該塗膜に異方性を有する光を照射する工程3と、重合性液晶組成物を塗布し配向させた状態で重合させて光学異方体を得る工程4と、アミノ樹脂の本硬化と光学異方体のエージングを同時に行うための加熱を行う工程5とをこの順に行う方法が、加熱工程を共通化できるメリットがあるので好ましい。
上記の場合のいずれも、加熱温度は、光配向膜用組成物の再配列が誘起される温度を超えない範囲が好ましい。
本発明で使用する光配向膜用組成物を、基板上にスピンコーティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法、ダイコーティング法、キャップコーティング法、ディッピング法等、公知慣用の方法によって塗布し、乾燥させることにより光配向膜用塗膜を得る。使用する基板は、液晶表示素子や光学異方体に通常用いられる基板であって、光配向膜用組成物溶液の塗布後の乾燥時、あるいは液晶素子製造時における加熱に耐えうる耐溶剤性と耐熱性を有する材料であれば、特に制限はない。そのような基板としては、ガラス基板、セラミックス基板、金属基板や高分子材料基板、等が挙げられる。高分子材料基板としては、セルロース誘導体、ポリシクロオレフィン誘導体、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアリレート、ナイロン、ポリスチレン、ポリエーテルスルフォン、ポリビニルアルコール等を用いることができる。光配向膜用組成物の塗布性や接着性向上のために、これらの基板の表面処理を行っても良い。表面処理として、オゾン処理、プラズマ処理などが挙げられる。また、光の透過率や反射率を調節するために、基板表面に有機薄膜、無機酸化物薄膜や金属薄膜等を蒸着など方法によって設けても良い。
通常は、有機溶剤で希釈した溶液を塗布するので、塗布後は乾燥させ、光配向膜用塗膜を得る。
前記方法により得た光配向膜用塗膜に、異方性を有する光を照射して液晶配向機能を付与(以下、光異性化工程と略す)して、光異性化した光配向膜用塗膜を作成する。
光異性化工程で使用する、異方性を有する光としては、直線偏光や楕円偏光等の偏光、もしくは基板面に対して斜めの方向から非偏光があげられる。偏光は直線偏光、楕円偏光のいずれでも良いが、効率よく光配向を行うためには、消光比の高い直線偏光を用いることが好ましい。
照射する光は、使用する化合物の光配向性基が吸収を有する波長領域の光であれば良い。例えば光配向性基がアゾベンゼン構造を有する場合は、アゾベンゼンのπ→π*遷移による強い吸収がある、波長330〜550nmの範囲の紫外線が特に好ましい。
前記光源からの光を偏光フィルタやグラントムソン、グランテ−ラ−等の偏光プリズムを通すことで紫外線の直線偏光を得ることができる。
また、偏光、非偏光のいずれを使用する場合でも、照射する光は、ほぼ平行光であることが特に好ましい。
冷却条件としては、冷却温度が20℃で1分以上であるが、冷却温度が20℃よりも低い場合は、その限りではない。冷却温度としては、用いる溶剤の融点以上であればよいが、通常−40℃〜20℃の範囲が好ましい。液晶配向機能が向上した、より安定な光配向膜を得るには10℃以下が好ましく、冷却時間としては5分以上が好ましい。さらに冷却時間を短縮させるには冷却温度は5℃以下が好ましい。
また、結露防止のため、冷却をする際に乾燥空気や窒素、アルゴン雰囲気下で行ってもよいし、乾燥空気や窒素等を基板に吹きかけながら冷却してもよい。
次にアミノ樹脂を硬化させる。該硬化を熱によって行う場合は、前記光異性化工程後に行う。加熱方法は公知の方法でよく、通常は基板ごと加熱する。加熱温度は、使用するアミノ樹脂、硬化剤、硬化促進剤の反応速度にもよるが、通常は100〜300℃の範囲が好ましく、120〜250℃の範囲が特に好ましく、140〜230℃の範囲が更に好ましい。
加熱工程は、前述の通り、光異性化工程後であるならば、目的とする光配向膜や光学異方体、あるいは該光学素子を作成する工程のうち、どの工程に組み入れても構わないが、光学異方体を得る場合は、重合性液晶の塗膜を作成後に加熱工程を組み入れるのが好ましい。この場合、理由は定かではないが、光配向膜と重合性液晶との積層体としての光学異方体の耐溶剤性をなお向上させることができる。この方法は、複数の層からなる光学異方体の積層体を得る場合等に有効である。
本発明の光配向膜を使用した光学異方体を得る場合は重合性液晶組成物を重合させる工程があるが、該重合方法として熱を利用すると、光配向膜中のアミノ樹脂も同時に硬化させることができる。
本発明で得られた光配向膜を使用して光学異方体を得る際に使用する重合性液晶組成物は、単独又は他の液晶化合物との組成物において液晶性を示す、重合性基を有する化合物を含む液晶組成物である。例えば、Handbook of Liquid Crystals (D. Demus, J. W. Goodby, G. W. Gray, H. W. Spiess, V. Vill編集、Wiley−VCH 社発行、1998年)、季刊化学総説No.22、液晶の化学(日本化学会編、1994年)、あるいは、特開平7−294735号公報、特開平8−3111号公報、特開平8−29618号公報、特開平11−80090号公報、特開平11−148079号公報、特開2000−178233号公報、特開2002−308831号公報、特開2002−145830号公報に記載されているような、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基等の構造が複数繋がったメソゲンと呼ばれる剛直な部位と、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、エポキシ基といった重合性官能基とを有する棒状重合性液晶化合物、 あるいは特開2004−2373号公報、特開2004−99446号公報に記載されているようなマレイミド基を有する棒状重合性液晶化合物、 あるいは特開2004−149522号公報に記載されているようなアリルエーテル基を有する棒状重号性液晶化合物、あるいは、例えば、Handbook of Liquid Crystals (D. Demus, J. W. Goodby, G. W. Gray, H. W. Spiess, V. Vill編集、Wiley−VCH 社発行、1998年)、季刊化学総説No.22、液晶の化学(日本化学会編、1994年)や、特開平07−146409号公報に記載されているディスコティック重合性化合物があげられる。
前記重合性液晶組成物を重合させるには、一般には紫外線等の光照射あるいは加熱により行う。光照射によって行う場合に使用する光重合開始剤としては公知慣用のものが使用でき、例えば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1173」)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア184」)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1116」)、2−メチル−1−[(メチルチオ)フェニル]−2−モリホリノプロパン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア907」)。ベンジルメチルケタ−ル(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア651」)。2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアDETX」)とp−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製「カヤキュアEPA」)との混合物、イソプロピルチオキサントン(ワ−ドプレキンソップ社製「カンタキュア−ITX」)とp−ジメチルアミノ安息香酸エチルとの混合物、アシルフォスフィンオキシド(BASF社製「ルシリンTPO」)、などが挙げられる。光重合開始剤の使用量は重合性液晶化合物に対して10質量%以下が好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
前記重合性液晶組成物に使用する溶剤としては、特に限定はないが、前記化合物が良好な溶解性を示す溶媒が使用する。例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アニソール等のエーテル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、等のアミド系溶剤、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン等が挙げられる。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。また、添加剤を添加することもできる。
前記重合性液晶組成物の重合操作については、一般に紫外線等の光照射あるいは加熱によって行われる。 重合を光照射で行う場合は、本発明の光配向膜用組成物からなる光配向膜の配向状態を乱さないようにするため、一般には、二色性化合物が有する光の吸収帯、例えば、アゾベンゼン骨格やアントラキノン骨格が持つ吸収帯以外の波長で行われることが好ましいとされる。このような光は、具体的には320nm以下の紫外光であるが、320nm以下の紫外光により光配向膜及び重合性液晶組成物が分解などを引き起こす場合は、320nm以上の紫外光で重合処理を行った方が好ましい場合もある。
320nm以上の紫外光によって、既に得られた光配向性基の配向が乱されないようにするためには、通常は、二色性化合物が有する光の吸収帯とは異なる光吸収波長帯域を持つ光重合開始剤を使用するのが好ましい。また、通常の光重合開始剤の吸収帯よりも長波長の光を吸収し、重合開始剤へのエネルギー移動を起こすことによって重合反応を誘起する化合物を混合しても良い。これらにより、光配向操作で固定されている光配向膜用組成物の配向状態を乱さずに、重合させることができる。一方、重合のための光を光配向操作と同じ方向から照射する場合や、光配向膜分子の吸収遷移モーメントと直交する偏波面を有する偏光照射を行えば、光配向材料の配向状態を乱す恐れがないので、任意の波長を使用することができる。
また該熱重合開始剤と光重合開始剤とを併用する場合には上記の温度域の制限と共に光配向膜と重合性液晶膜の両層の重合速度が大きく異なることの無い様に重合温度と各々の開始剤を選択することが好ましい。加熱温度は、重合性液晶組成物の液晶相から等方相への転移温度にもよるが、熱による不均質な重合が誘起されてしまう温度よりも低い温度で行うことが好ましく、20℃〜300℃が好ましく、30℃〜200℃がさらに好ましく、30℃〜120℃が特に好ましい。また例えば、重合性基が(メタ)アクリロイル基である場合は、90℃よりも低い温度で行うことが好ましい。
また、重合性液晶組成物を加熱重合で行う場合は、光配向膜層に添加するアミノ樹脂及び硬化剤の組み合わせを、重合性液晶組成物の加熱温度が適用できるように調製しておくと、一度に両層を硬化させることができ好ましい
2,2’−ベンジジンジスルホン酸8.6g(25mmol)に2%塩酸230mlを加え、0〜5℃に保ちながら亜硝酸ナトリウム3.5g(51mmol)の水溶液を少しずつ滴下し、2時間反応させてジアゾニウム塩を調製した。次にサリチル酸6.9g(50mmol)を300mlの5%炭酸ナトリウム水溶液に溶かし、これに前記ジアゾニウム塩混合物を徐々に滴下した。1時間反応後、20%食塩水を加えて沈殿物を得た。この沈殿物を、エタノールと水の混合溶媒で再結晶させて、4.8gの式(a)で表されるアゾ化合物を得た。
2,2’−ベンジジンジスルホン酸8.6g(25mmol)に2%塩酸230mlを加え、0〜5℃に保ちながら亜硝酸ナトリウム3.5g(51mmol)の水溶液を少しずつ滴下し、2時間反応させてジアゾニウム塩を調製した。次にo−トリフルオロメチルフェノール8.2g(50mmol)を300mlの5%炭酸ナトリウム水溶液に溶かし、これに前記ジアゾニウム塩混合物を徐々に滴下した。4時間反応後、20%食塩水を加えて沈殿物を得た。得られた沈殿物をアセトンで洗浄し、エタノールと酢酸エチルの混合溶媒で再結晶させて、7.9gの式(b)で表されるアゾ化合物を得た。
4,4'−ビス(4−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチルフェニル−1−アゾ)ビフェニル−2, 2'−ジスルホン酸ジナトリウム塩(化合物(b))2.2g(0.003モル)をピリジン100mlに加え、撹拌した。これに、p−(アクリロイル−n−ヘキシルオキ シ)安息香酸クロライド1.9g(0.006モル)とハイドロキノン0.05gを加え、60℃で5時間撹拌しながら反応を続けた。反応生成物を冷却 し、沈殿物を濾別した後、エタノール300mlで洗浄し、空気中で乾燥させることによって、式(c)で表されるアゾ化合物を2.2g(収率58%)を得た。
式(a)で示される化合物2部をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)98部に溶解させた(溶液A)。メチル化メラミン スミマールM-100C(以下M-100C)(長春人造樹脂製。ヘキサメトキシメチル化メラミン単量体として、分子量=390。平均重合度は1.3〜1.7である。)2部に2−ブトキシエタノール(BC)98部を加えて均一溶液とした(溶液B)。溶液A100部、溶液B23部及びBC77部を混合し、固形分比1.0%の溶液を調製した。得られた溶液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、光配向膜用組成物(1)を得た。
式(a)で示される化合物2部をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)98部に溶解させた(溶液A)。溶液A100部、BC100部を混合し、固形分比1.0%の溶液を調製した。得られた溶液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、光配向膜用組成物(2)を得た。
表1の光配向膜用組成物組成表に記載の組成に従い、光配向膜用組成物(1)の調製と同様にして、光配向膜用組成物(3)〜(22)を調製した。なお、光配向膜用組成物(2)、(17)、(18)、(19)、及び(20)は比較用である。
BL−1:ポリビニルブチラール樹脂エスレック(積水化学製)
KS−3Z:ポリビニルアセタール樹脂エスレック(積水化学製)
BX−L:ポリビニルアセタール樹脂エスレック(積水化学製)
BM−1:ポリビニルブチラール樹脂エスレック(積水化学製)
DA−212:エポキシアクリレート(ナガセケムテックス製)
(液晶シール剤組成物(1)の調製)
エピクロン1055(大日本インキ化学工業(株)社製)40部、エピクロン850(大日本インキ化学工業(株)社製)20部、フェノライトTD−2090(大日本インキ化学工業(株)社製)20部、シランカップリング剤KBM−403(信越化学工業(株)社製)5部、アミキュアVDH(味の素ファインテクノ(株)社製)2部、N,N−ジメチルアミノピリジン1部を2−(2−メトキシエトキシ)エタノール20部に溶解させ、さらにレオロシール(トクヤマ(株)社製)10部を加えて、3本ロールミルで練錬することにより液晶シール剤組成物(1)を得た。
エピクロンN−665−EXP(大日本インキ化学工業(株)社製)50部、エピクロン830−LVP(大日本インキ化学工業(株)社製)15部、ラッカマイドTD−971(大日本インキ化学工業(株)社製)20部(キシレン25%、1−ブタノール25%含有)、シランカップリング剤、KBM−403(信越化学工業(株)社製)5部、アミキュアVDH(味の素ファインテクノ(株)社製)1部、レオシール(トクヤマ(株)社製)10部を3本ロールミルで練錬することにより液晶シール剤組成物(2)を得た。
エピクロンHP−7200L(大日本インキ化学工業(株)社製)45部、エピクロンN−740(大日本インキ化学工業(株)社製)15部、フェノライトKA−7052−L2(大日本インキ化学工業(株)社製)20部、シランカップリング剤KBM−4038信越化学工業(株)社製)5部、アミキュアVDH(味の素ファインテクノ(株)社製)2部、ジシアンジアジド2部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20部に溶解させ、さらにレオシール(トクヤマ(株)社製)10部を加えて、3本ロールミルで練錬することにより液晶シール剤組成物(3)を得た。
(重合性液晶組成物(LC−1)の調製
式(f)で示される化合物15部、式(g)で示される化合物15部をキシレン70部に溶解させた後、イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)1.2部、式(h)で示されるアクリル共重合体0.3部を加え、溶液を得た。得られた溶液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、重合性液晶組成物(LC−1)を得た。(LC−1)の液晶相−等方相転移温度は80℃である。
式(f)で示される化合物11部、式(g)で示される化合物9部、式(i)で示される化合物16.5部、式(j)で示される化合物11部、式(k)で示される化合物2.5部をキシレン50部に溶解させた後、イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)1.2部、式(h)で示されるアクリル共重合体0.3部を加え、溶液を得た。得られた溶液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、重合性液晶組成物(LC−2)を得た。(LC−2)の液晶相−等方相転移温度は50℃である。
式(l)で示される化合物39部をキシレン50部に溶解させた後、イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)1.2部、式(h)で示されるアクリル共重合体0.3部を加え、溶液を得た。得られた溶液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、重合性液晶組成物(LC−3)を得た。(LC−3)の液晶相−等方相転移温度は111℃である。
(実施例1)
光配向膜用組成物(1)をスピンコーターでガラス基板上に塗布し、100℃で1分間乾燥した。得られた塗膜表面に、超高圧水銀ランプに波長カットフィルター、及び、偏光フィルターを介して、波長365nm付近の紫外光(照射強度:10mW/cm2)の直線偏光でかつ平行光を、ガラス基板に対して垂直方向から照射エネルギー100mJ/cm2で光照射を行い、光配向膜を得た。
次に、得られた光配向膜付きガラス基板の光配向膜面の周囲に、直径5μmのシリカビーズを含んだ液晶シール剤組成物(1)をディスペンサーによって塗布した。これを80℃で30分間予備硬化した後、接着剤が塗布されていないガラス基板と配向面が上下で直交するように重ね合わせて圧着し、200℃で20分加熱して接着剤を硬化させることでTN液晶セルを得た。真空下でTFT駆動用液晶組成物(商品名「11−3323」:大日本インキ化学工業(株)社製)を適量注入した。得られたTN液晶セルの上下に偏光板を置き、クロスニコル状態、及び、パラレルニコル状態でTN液晶セルを外観目視(以下参照)することにより液晶配向性の評価を行った。
△:液晶材料の配向はやや配向欠陥が観察され、部分的に外観上のむらがある。シール剤付近の配向乱れが特に大きい。
○:液晶材料の配向は均一であるが、部分的に外観上のむらがある。
◎:液晶材料の配向が均一で欠陥が全く存在しない。
液晶シール剤組成物を変化させた以外は実施例1と同様にしてTN液晶セルを作成し、評価を行った。得られた結果を表2に示す。
光配向膜用組成物(2)を使用する以外は実施例1と同様にしてTN液晶セルを作成し、評価を行った。得られた結果を表2に示す。
液晶シール剤組成物を変化させた以外は比較例1と同様にしてTN液晶セルを作成し、評価を行った。得られた結果を表2に示す。
これより、アミノ樹脂を添加した光配向膜用組成物を使用することで、液晶セル作製時の高温工程及びシール部材の組成物に対する耐久性が向上したことが確認された。
(配向性の評価方法)
光学異方体の配向性は、外観目視、及び、偏光顕微鏡観察することにより、5段階で評価した。
A:目視で均一な配向が得られており、偏光顕微鏡観察でも欠陥が全くない
B:目視では均一な配向が得られているが、偏光顕微鏡観察での配向面積は90〜100%
C:目視ではA、B程の配向は得られていないが、偏光顕微鏡観察での配向面積は60〜90%
D:目視では無配向に近いが、偏光顕微鏡観察での配向面積は40〜60%
E:目視では無配向で、偏光顕微鏡観察での配向面積も40%以下
光学異方体の耐溶剤・耐薬品性は、試験用溶剤としてNMP/2−ブトキシエタノール(BC)(評価2)をスピンコーターで得られた光学異方体上に塗布し、80℃で1分間乾燥したときの膜状態を観察した結果を、外観目視、及び、偏光顕微鏡観察することにより5段階で評価した。
尚、ここで使用した試験用溶剤は、配向膜用組成物の希釈目的に汎用に使用される溶剤の組み合わせである。
A:目視で膜の変化が全くなく、偏光顕微鏡観察でも欠陥が全くない
B:目視では膜の変化が全くないが、偏光顕微鏡観察ではクラックが発生している
C:目視では一部膜が剥がれているが、偏光顕微鏡観察でのクラック発生はBと同レベル
D:目視では膜の大半が剥がれている
E:目視で膜全体が剥がれている
光配向膜用組成物(1)をスピンコーターでガラス基板上に塗布し、100℃で1分間乾燥した。次に超高圧水銀ランプに波長カットフィルター、バンドパスフィルター、及び、偏光フィルターを介して、波長365nm付近の可視紫外光(照射強度:10mW/cm2)の直線偏光でかつ平行光を、ガラス基板に対して垂直方向から照射して光配向膜を作製した。照射量は100mJ/cm2であった。220℃で20分加熱後、得られた光配向膜上に、スピンコーターで重合性液晶組成物(LC−3)を塗布し、110℃で10分加熱してエージング処理を行った後、窒素雰囲気下で紫外線を1J/cm2照射した。光学異方体を得た。この結果、配向性はAであった。
光配向膜用組成物(1)の代わりに光配向膜用組成物(2)を使用し、220℃で20分加熱しなかった以外は実施例4と同様にして光学異方体を得た。この結果、配向性はDであり、配向性が乱れてしまったことが確認された。
光配向膜用組成物(1)をスピンコーターでガラス基板上に塗布し、100℃で1分間乾燥した。次に超高圧水銀ランプに波長カットフィルター、バンドパスフィルター、及び、偏光フィルターを介して、波長365nm付近の可視紫外光(照射強度:10mW/cm2)の直線偏光でかつ平行光を、ガラス基板に対して垂直方向から照射して光配向膜を作製した。照射量は100mJ/cm2であった。得られた光配向膜上に、スピンコーターで重合性液晶組成物(LC−1)を塗布し、80℃で1分乾燥後、窒素雰囲気下で紫外線を1J/cm2照射した。これを220℃で20分加熱して光学異方体を得た。リタデーションは180nmであった。結果を表3に示す。
光配向膜用組成物(1)を光配向膜用組成物(2)〜(22)に変え、重合性液晶組成物(1)の他に(2)を使用した以外は実施例1と同様にして、光学異方体の作製を行った。照射エネルギーは光配向処理に要した照射エネルギーであり、値が大きいほど感度が下がることを示す。照射エネルギーが2000mJ/cm2は、十分実用に耐える範囲である。結果を表3に示す。
一方、比較例5〜17では配向性(感度)と外観(耐溶剤性、耐薬品性)とを両立できるものはなかった。
以上の実施例と比較例より、本発明の光配向膜用組成物は、高耐熱性の光配向膜を作製できるばかりでなく、液晶シール剤や重合性液晶の希釈液、光配向剤の希釈液に対して優れた耐溶剤性と耐薬品性を発揮することも明らかとなった。従って、本発明の材料は、液晶表示素子や光学異方体を用いた光学素子の作製のために非常に有用である。
(実施例31)
光配向膜用組成物(1)をスピンコーターでガラス基板上に塗布し、100℃で1分間乾燥した。次に超高圧水銀ランプに波長カットフィルター、バンドパスフィルター、及び、偏光フィルターを介して、波長365nm付近の可視紫外光(照射強度:10mW/cm2)の直線偏光でかつ平行光を、ガラス基板に対して垂直方向から照射した。照射量は100mJ/cm2であった。得られた光配向膜を220℃のホットプレート上で20分保った後、光配向膜上にスピンコーターで重合性液晶組成物(1)を塗布して、80℃で1分間溶剤を乾燥した。その後、窒素雰囲気下で紫外線を1J/cm2照射し、均一な光学異方体を得た。配向性の結果はAであった。リタデーションは185nmであった。
光配向膜用組成物(2)をスピンコーターでガラス基板上に塗布し、100℃で1分間乾燥した。次に超高圧水銀ランプに波長カットフィルター、バンドパスフィルター、及び、偏光フィルターを介して、波長365nm付近の可視紫外光(照射強度:10mW/cm2)の直線偏光でかつ平行光を、ガラス基板に対して垂直方向から照射した。照射量は100mJ/cm2であった。得られた光配向膜を220℃のホットプレート上で20分保った後、光配向膜上にスピンコーターで重合性液晶組成物(1)を塗布し、80℃で1分間溶剤を乾燥した。その後、窒素雰囲気下で紫外線を1J/cm2照射したが、均一な光学異方体を得ることはできなかった。配向性の結果はEであった。
この結果より、光配向膜の耐熱性が向上したと判断できる。
Claims (10)
- 二色性化合物、及び、アミノ樹脂を含有することを特徴とする光配向膜用組成物。
- 二色性化合物とアミノ樹脂との混合比率が100:120〜100:5である、請求項1に記載の光配向膜用組成物。
- 前記二色性化合物が、一般式(1)で表されるアゾ化合物である、請求項1又は2に記載の光配向膜用組成物。
X1は、R1がヒドロキシ基またはアミノ基、カルボキシル基の場合、単結合を表し、R1が重合性官能基の場合、−(A1−B1)m−で表される連結基を表し、
X2は、R2がヒドロキシ基またはアミノ基、カルボキシル基の場合、単結合を表し、R2が重合性官能基の場合、−(A2−B2)n−で表される連結基を表す。ここで、A1及びA2は各々独立して単結合、又は二価の炭化水素基を表し、B1及びB2は各々独立して単結合、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−NH−CO−O−、又は−O−CO−NH−を表す。m及びnは各々独立して0〜4の整数を表す。但しA1はR1と結合し、A2はR2と結合する。
m又はnが2以上のとき、複数あるA1、B1,A2及びB2は同じであっても異なっていても良い。但し、二つのB1又はB2の間に挟まれたA1又はA2は、単結合ではないものとする。R3およびR4は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基又は水酸基、−OR7(但し、R7は、炭素原子数2〜6のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、または炭素原子数1〜6の低級アルコキシ基で置換された炭素原子数1〜6のアルキル基を表す)を表す。但し、カルボキシ基はアルカリ金属と塩を形成していても良い。
R5およびR6は各々独立して、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、又はヒドロキシ基を表す。但し、カルボキシ基、スルホ基はアルカリ金属と塩を形成していても良い。Yは単結合、−C=C−、又は−C≡C−を表す。 - 前記アミノ樹脂が、メラミン樹脂である請求項1から3の何れか一項に記載の光配向膜用組成物。
- 前記メラミン樹脂が、1核体の割合が50重量%以上であり、平均縮合度が6以下であり、重量平均分子量が3000以下であり、メタノールまたはn−ブタノール、イソブタノールでエーテル化されたメチロール基の数がトリアジン環1個当たり平均2.5個以上である低分子量メラミン樹脂である、請求項4に記載の光配向膜用組成物。
- 請求項1から5の何れか一項に記載の光配向膜用組成物を基板上に塗布した後、該塗膜に異方性を有する光を照射する光配向膜の製造方法において、光を照射した後、加熱することを特徴とする光配向膜の製造方法。
- 請求項1から5の何れか一項に記載の光配向膜用組成物を使用した光配向膜上に、重合性液晶組成物を塗布し、配向させた状態で重合させて得られることを特徴とする光学異方体。
- 請求項1から5の何れか一項に記載の光配向膜用組成物を基板上に塗布する工程1と、該塗膜に異方性を有する光を照射する工程2と、重合性液晶組成物を塗布し配向させた状態で重合させる工程3をこの順に行う、請求項7に記載の光学異方体の製造方法であって、前記工程1の後から前記工程3の後までの間に、アミノ樹脂を硬化させる工程を有することを特徴とする光学異方体の製造方法。
- 請求項7に記載の光学異方体を使用することを特徴とする光学素子。
- 請求項1から5の何れか一項に記載の光配向膜用組成物を基板上に塗布する工程1と、該塗膜に異方性を有する光を照射する工程2と、重合性液晶組成物を塗布し配向させた状態で重合させる光学異方体を得る工程3と、前記光学異方体を設置した光学素子を得る工程4をこの順に行う、請求項9に記載の光学素子の製造方法であって、前記工程1の後から前記工程4の間にアミノ樹脂を硬化させる工程を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
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