従来、上述のような小型高効率のスイッチング電源として、複合共振型の直列コンバータ回路が知られ、特許文献1など多くの公知技術が示されている。図7にその従来技術による主回路構成を、図8に主な部位の波形を示す。
このスイッチング電源装置では、直流入力電源Eの両端子間に、スイッチング素子Q1とQ2(以下、パワーMOSFETで記述)との直列回路が接続されるとともに、コンデンサC0が接続される。そして、前記パワーMOSFETQ1,Q2の接続点と前記直流入力電源Eの一端との間に、インダクタLと出力トランスTの1次巻線L11とコンデンサC1との直列共振回路を形成し、前記パワーMOSFETQ1またはQ2の何れかと並列にコンデンサC2が接続される(図7では、直流入力電源Eの一端は低圧側に、コンデンサC2はパワーMOSFETQ2に並列に接続した例を示している)。また、パワーMOSFETQ1,Q2には、それぞれ逆並列にダイオードD1,D2が接続される(パワーMOSFETQ1,Q2のボデイダイオードで兼用される場合が多い)。
さらに前記出力トランスTの出力巻線に中間タップを設けて2分割(L21,L22)し、それらの出力を整流するダイオードD3,D4で全波整流回路を形成し、前記中間タップとの間に平滑コンデンサC3および直流負荷Loadが接続される。前記のパワーMOSFETQ1,Q2は、ブロックで示した制御部1によって、複合共振条件を加味して予め設定された周波数で交互にON/OFFされる。したがって、制御部1には、高周波発振機能、2つのパワーMOSFETQ1,Q2を交互に駆動する機能、および2つのパワーMOSFETQ1,Q2を共にOFFするデットタイム期間を設定する機能、必要に応じて入出力電圧や電流、電力を制御する為のフィードフォワードやフィードバック制御機能ならびに出力可変機能などが備えられる。
図8を参照して、Vg1,Vg2は制御部1によって予め設定されたパワーMOSFETQ1,Q2の駆動信号を示す。交互にON/OFFさせるとともに、両方共にOFFするデットタイム期間が設定されている。VQ1,IQ1およびVQ2,IQ2は、パワーMOSFETQ1,Q2のドレイン−ソース間電圧およびドレイン電流を示す。駆動信号Vg1がHighの時、パワーMOSFETQ1にはドレイン電流IQ1が流れ、Lowの時は略直流入力電源Eに等しい電圧VQ1が印加される(パワーMOSFETQ2の場合も同様)。なお、デットタイム期間においては、コンデンサC2とインダクタLおよび出力トランスTの励磁インダクタンスとによる効果から、ドレイン−ソース間電圧VQ1,VQ2は任意の傾斜を持った立上がり、立下り波形となる。また、ドレイン電流IQ1,IQ2は、略インダクタLとコンデンサC1とで設定される直列共振電流波形となり、これらの合成電流がインダクタLと出力トランスTの1次巻線L11とコンデンサC1との直列共振回路の電流となる。VC1はコンデンサC1の電圧波形を表しており、前記の直列共振回路の電流より位相の遅れた波形となる。ID3,ID4は出力整流のダイオードD3,D4の電流波形を示すもので、前記のパワーMOSFETQ1,Q2の駆動周波数と、インダクタLおよびコンデンサC1の直列共振周波数との関係を、「共振周波数>駆動周波数」の条件を満足させることによって、ダイオードD3,D4の一方の電流が流れ終わった後に他方の電流が流れ始めるように設定が可能で、両方のダイオード電流が流れない期間は出力側へ電力が伝達されない。すなわち、前記ダイオードD3,D4の電流が流れない期間では、出力トランスTの2次側は無負荷と考えられ、1次側の直列共振回路にトランスTの1次側励磁インダクタンスLが直列に挿入されて直列共振条件が切り替わる結果、ドレイン電流IQ1およびIQ2の波形にも変曲点が見られる。
このような複合共振型直列コンバータでは、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)、すなわちスイッチング素子Q1,Q2の印加電圧が低下した後に電流が流れ始めるような条件設定が可能とされ、スイッチング損失が極めて少ないこと、および2次側整流ダイオードD3,D4のリカバリ損失を回避できることから、高効率で高周波化が可能となる。また、スイッチング時の電圧・電流波形が安定しているとともに、2次側整流ダイオードD3,D4のリンギングも抑制できることから、雑音面でも優れている。
上述の従来技術は、このような数々の特徴を有しながらも、周波数を予め発振器で設定し、2つのスイッチング素子Q1,Q2を駆動する所謂他励式のスイッチング電源装置であり、その場合、高電位側のスイッチング素子Q1,Q2へのレベルシフタが必要で、その周波数追従性や損失の観点から、高周波化に対する技術課題を有し、またコスト面での課題などから、たとえば特許文献2〜4で示すような自励式の検討もなされている。
図9は、電流帰還型の自励式複合共振直列コンバータの公知例を示す電気回路図であり、前記特許文献2に示されたものである。主回路構成は概ね図7と同様であるが、入力電源は商用電源を全波整流にて用いるとともに、出力トランスT02の2次側は整流ブリッジDBによる全波整流回路としている。スイッチング素子TR1,TR2はバイポーラトランジスタで構成し、その駆動は電流帰還トランスT01の2次巻線LB1およびLB2を利用し、逆バイアス手段によるデットタイムの確保や駆動条件の改善がなされている。
一方、図10は、電圧帰還型の自励式複合共振直列コンバータの公知例を示す電気回路図であり、前記特許文献3に示されたものである。スイッチング素子であるバイポーラトランジスタTR1,TR2への帰還信号を出力トランスPITに帰還巻線NB2を設けて得るものとし、負荷変動対策や出力安定化の為のフィードバック制御を付加している。
これら図8および図9で示す自励式複合共振直列コンバータの従来例は、駆動回路の簡易化の可能性を示唆するものであるが、図4を基に説明した他励式複合共振直列コンバータの数々の特徴を同様に実現するのは、下記の点から難しいと考えられる。先ず、駆動周波数を決定するのは帰還回路の時定数や遅延要素であり、負荷変動など外部要因の変動に対して、前記ZVSなど最適なスイッチング条件の維持が難しいと思われる。次に、スイッチング素子としてバイポーラトランジスタが想定され、高周波化には適しないと思われる。
そこで、図11はパワーMOSFETを用いた電圧帰還型の自励他励式複合共振直列コンバータの公知例を示すブロック図であり、前記特許文献4に示されたものである。この従来技術では、スイッチング素子としてパワーMOSFETQ1,Q2を使用し、出力トランスT’の補助巻線L12から主制御回路4および副制御回路5の電源を確保するとともに、この巻線電圧を信号源として、負荷Loadへの供給電圧が一定になるように主制御回路4は低圧側のパワーMOSFETQ2のON/OFFを制御し、副制御回路5は高圧側のパワーMOSFETQ1の端子間電圧が基準電圧より低下したときにONさせ、該高圧側パワーMOSFETQ1のZVSを維持するものである。
特許第2734296号公報
特許第3371595号公報
特開2002−262568号公報
特開2006−129548号公報
上述の従来技術では、副制御回路5には、図12に示すような具体例が示され、前記パワーMOSFETQ1のドレイン−ソース間電圧を抵抗r01とr02とで分圧し、コンパレータ7にて基準電圧8と比較して、積分回路のコンデンサc1の充放電によってパワーMOSFETQ1をONさせている。このような構成では、高圧側のパワーMOSFETQ1のドレイン−ソース間電圧を直接判別しながらONのタイミングを決定するので、前記ZVSが実現される可能性はあるが、下記のような課題を有すると考えられる。先ず、パワーMOSFETQ1のドレイン−ソース間電圧を分圧する必要があり、前記抵抗r01,r02による損失が懸念される。一方、これらの抵抗r01,r02を高抵抗で構成する場合は、コンパレータ7の入力容量による遅延時間が想定され、高周波化が難しいと思われる。次に、駆動制御回路4,5が複雑化し、他励方式に対する優位性が認められない。
本発明の目的は、電圧帰還型の自励式複合共振直列コンバータにおいて、本来の特徴である低損失・低雑音化を維持しながら、他励式に比べて大幅な回路の簡素化、低コスト化を実現することができるスイッチング電源装置を提供することである。
本発明のスイッチング電源装置は、直流入力電源の両端子間に第1および第2のスイッチング素子から成る直列回路が接続され、前記第1および第2のスイッチング素子の接続点と前記直流入力電源の一方の端子との間に、インダクタ、コンデンサおよびトランスの1次巻線から成る直列回路が接続され、前記第1および第2のスイッチング素子のスイッチングにより得られたトランスの2次側誘起電流をダイオードおよび平滑コンデンサによって整流・平滑化して出力し、第1および第2の制御回路が前記トランスの第1および第2の補助巻線に誘起された電圧で前記第1および第2のスイッチング素子をそれぞれON/OFFすることでスイッチングを継続するようにした電圧帰還型の自励式複合共振直列コンバータから成るスイッチング電源装置において、前記第1の制御回路は、前記第1のスイッチング素子をOFFさせるための第3のスイッチング素子と、前記第1の補助巻線に生じる誘起電圧をピークホールドするピークホールド回路と、前記誘起電圧が前記ピークホールド回路によるホールド電圧より予め定めるレベル以上低下したときに前記第3のスイッチング素子をONさせて前記第1のスイッチング素子をOFFさせる第1の比較器とを備えて構成され、前記第2の制御回路は、前記第2のスイッチング素子をOFFさせるための第4のスイッチング素子と、前記第2の補助巻線に誘起された電圧が対応する第2のスイッチング素子を順バイアスする方向に発生した時点を起点として三角波を発生する三角波発生回路と、可変の基準電圧を発生する基準電圧源と、前記三角波の電圧と基準電圧とを比較し、前記三角波の電圧が基準電圧より高くなると対応する前記第4のスイッチング素子をONさせる第2の比較器とを備えて構成される出力調整回路から成ることを特徴とする。
上記の構成によれば、直流入力電源の両端子間に第1および第2のスイッチング素子から成る直列回路が接続され、前記第1および第2のスイッチング素子の接続点と前記直流入力電源の一方の端子との間に、インダクタ、コンデンサおよびトランスの1次巻線から成る直列回路が接続され、第1および第2の補助巻線の誘起電圧を前記スイッチング素子のON/OFF駆動に用いる電圧帰還型の自励式複合共振直列コンバータから成るスイッチング電源装置において、その補助巻線の誘起電圧からスイッチング素子のON/OFF駆動を行う第1および第2の制御回路の内、第1の制御回路を、前記第1のスイッチング素子をOFFさせるための第3のスイッチング素子と、前記第1の補助巻線に生じる誘起電圧をピークホールドするピークホールド回路と、前記誘起電圧が前記ピークホールド回路によるホールド電圧より予め定めるレベル以上低下したときに前記第3のスイッチング素子をONさせて前記第1のスイッチング素子をOFFさせる第1の比較器とを備えて構成し、前記第2の制御回路を、前記第2のスイッチング素子をOFFさせるための第4のスイッチング素子と、前記第2の補助巻線に誘起された電圧が対応する第2のスイッチング素子を順バイアスする方向に発生した時点を起点として三角波を発生する三角波発生回路と、可変の基準電圧を発生する基準電圧源と、前記三角波の電圧と基準電圧とを比較し、前記三角波の電圧が基準電圧より高くなると対応する前記第4のスイッチング素子をONさせる第2の比較器とを備えて成る出力調整回路によって構成する。
したがって、前記第1の制御回路は、2次側平滑コンデンサの充電完了によって2次側誘起電流が流れなくなったことを第1の補助巻線の電圧低下から検知して前記第3のスイッチング素子をONさせ、ONしていた前記第1のスイッチング素子をOFFさせるとともに、第2の補助巻線に生じる順方向の誘起電圧によって、OFFしていた前記第2のスイッチング素子をONさせる(ZVS動作)。一方、前記第2の制御回路は、前記基準電源を変えることによって出力の可変機能或いは出力の安定化機能を付加することができる。そして、前記出力調整回路によって第4のスイッチング素子をONさせて、ONしていた第2のスイッチング素子をOFFすると、前記第1の補助巻線に順方向の誘起電圧が発生して、前記第1のスイッチング素子をONさせ、これらの動作の繰り返しによって安定したスイッチング動作が継続される。
このような構成によって、電圧帰還型の自励式複合共振直列コンバータにおいて、適切なスイッチング条件(ZVS動作)を簡易な構成で実現でき、本来の特徴である低損失・低雑音化を維持しながら、他励式に比べて大幅な回路の簡素化、低コスト化を実現することができるとともに、出力の可変機能或いは出力の安定化機能を付加することができる。また、より高周波化し、小型・高効率化にも適応できる。
また、本発明のスイッチング電源装置は、2次側負荷電流または電圧を検出する負荷検出回路と、前記負荷検出回路の検出結果を1次側へフィードバックし、前記基準電圧源の基準電圧を変化するフィードバック回路とをさらに備えることを特徴とする。
上記の構成によれば、2次側の負荷電流または出力電圧が定電流または定電圧となるようにフィードバック制御を行うことができる。
さらにまた、本発明のスイッチング電源装置では、前記ピークホールド回路は、前記第1の補助巻線に生じる前記第1のスイッチング素子をONする方向の誘起電圧をピークホールドするダイオードとコンデンサとの直列回路から成り、前記ダイオードは、複数個直列に接続され、またはツェナダイオードが直列に接続されることを特徴とする。
上記の構成によれば、前記ダイオードの段数やツェナダイオードの閾値電圧によって、前記第1の比較器の閾値設定の自由度を高めることができる。
また、本発明のスイッチング電源装置は、前記第2の比較器の出力側に、逆バイアス回路を有することを特徴とする。
上記の構成によれば、第4のスイッチング素子の誤動作や半導通状態を回避させ、動作を安定化させることができる。
さらにまた、本発明のスイッチング電源装置では、前記平滑コンデンサの端子間に接続される負荷が、LEDであることを特徴とする。
上記の構成によれば、LEDの順方向電圧以上の電圧が印加されるまでは電流が流れず、起動時はいわゆる無負荷状態にあるため、電圧帰還型の自励式複合共振直列コンバータの起動性を改善するとともに、LED負荷着脱時などに発生するLEDへのラッシュ電流を抑制する効果がある。
好ましくは、前記基準電圧源は、調光器を備え、調光量に応じて前記基準電圧を変化することを特徴とする。
本発明のスイッチング電源装置は、以上のように、補助巻線の誘起電圧をスイッチング素子のON/OFF駆動に用いる電圧帰還型の自励式複合共振直列コンバータから成るスイッチング電源装置において、第1および第2の補助巻線の誘起電圧からスイッチング素子のON/OFF駆動を行う第1および第2の制御回路の内、第1の制御回路を、前記第1のスイッチング素子をOFFさせるための第3のスイッチング素子と、前記第1の補助巻線に生じる誘起電圧をピークホールドするピークホールド回路と、前記誘起電圧が前記ピークホールド回路によるホールド電圧より予め定めるレベル以上低下したときに前記第3のスイッチング素子をONさせて前記第1のスイッチング素子をOFFさせる第1の比較器とを備えて構成し、前記第2の制御回路を、前記第2のスイッチング素子をOFFさせるための第4のスイッチング素子と、前記第2の補助巻線に誘起された電圧が対応する第2のスイッチング素子を順バイアスする方向に発生した時点を起点として三角波を発生する三角波発生回路と、可変の基準電圧を発生する基準電圧源と、前記三角波の電圧と基準電圧とを比較し、前記三角波の電圧が基準電圧より高くなると対応する前記第4のスイッチング素子をONさせる第2の比較器とを備えて成る出力調整回路によって構成する。
それゆえ、電圧帰還型の自励式複合共振直列コンバータにおいて、適切なスイッチング条件(ZVS動作)を簡易な構成で実現でき、本来の特徴である低損失・低雑音化を維持しながら、他励式に比べて大幅な回路の簡素化、低コスト化を実現することができるとともに、出力の可変機能或いは出力の安定化機能を付加することができる。また、より高周波化し、小型・高効率化にも適応できる。
また、本発明のスイッチング電源装置は、以上のように、2次側負荷電流または電圧を検出する負荷検出回路と、前記負荷検出回路の検出結果を1次側へフィードバックし、前記基準電圧源の基準電圧を変化するフィードバック回路とをさらに備える。
それゆえ、2次側の負荷電流または出力電圧が定電流または定電圧となるようにフィードバック制御を行うことができる。
さらにまた、本発明のスイッチング電源装置は、以上のように、前記ピークホールド回路を前記第1の補助巻線に生じる前記第1のスイッチング素子をONする方向の誘起電圧をピークホールドするダイオードとコンデンサとの直列回路から構成し、前記ダイオードを複数個直列に接続するか、または該ダイオードにツェナダイオードを直列に接続する。
それゆえ、前記ダイオードの段数やツェナダイオード閾値電圧によって、前記第1の比較器の閾値設定の自由度を高めることができる。
また、本発明のスイッチング電源装置は、以上のように、前記第2の比較器の出力側に、逆バイアス回路を設ける。
それゆえ、第4のスイッチング素子の誤動作や半導通状態を回避させ、動作を安定化させることができる。
さらにまた、本発明のスイッチング電源装置は、以上のように、負荷をLEDとする。
それゆえ、LEDの順方向電圧以上の電圧が印加されるまでは電流が流れず、起動時はいわゆる無負荷状態にあるため、電圧帰還型の自励式複合共振直列コンバータの起動性を改善するとともに、LED負荷着脱時などに発生するLEDへのラッシュ電流を抑制する効果がある。
図1は、本発明の実施の一の形態のスイッチング電源装置11の電気的構成を示すブロック図である。このスイッチング電源装置11は、改良された電圧帰還型の自励式複合共振直列コンバータであり、本来の特徴であるスイッチング素子Q1,Q2の低損失・低雑音化を維持しながら、他励式に比べて大幅な回路の簡素化、低コスト化を図り、さらに動作の高周波化を可能とするものである。
図1において、直流入力電源Eの両端子間に、第1および第2の前記スイッチング素子Q1とQ2(以下、パワーMOSFETで記述)との直列回路が接続されるとともに、コンデンサC0が接続される。そして、前記パワーMOSFETQ1,Q2の接続点と前記直流入力電源Eの一端との間に、インダクタLと出力トランスT1の1次巻線L11とコンデンサC1との直列共振回路を形成し、前記パワーMOSFETQ1,Q2の何れかと並列にコンデンサC2が接続される(図1では、直流入力電源Eの一端は低圧側に、コンデンサC2はパワーMOSFETQ2に並列に接続した例を示している)。また、パワーMOSFETQ1,Q2には、それぞれ逆並列にダイオードD1,D2が接続される。なお、コンデンサC2は、パワーMOSFETQ1,Q2の接合容量で代用される場合もあり、ダイオードD1,D2も、前記パワーMOSFETQ1,Q2のボデイダイオードで兼用される場合もある。
さらに前記出力トランスT1の出力巻線に中間タップを設けて2分割(L21,L22)し、それらの出力を整流するダイオードD3,D4で全波整流回路を形成し、前記中間タップとの間に平滑コンデンサC3および直流負荷Loadが接続される。また、前記出力トランスT1に補助巻線L12を設け、1次の主巻線L11と逆極性側をゲート抵抗R2を介してパワーMOSFETQ2のゲートに接続し、補助巻線L12に生じる電圧でパワーMOSFETQ2を駆動できるように構成する。高圧側のパワーMOSFETQ1のゲート駆動についても同様に、出力トランスT1に第2の補助巻線L13を設け、1次の主巻線L11と同一極性側を、ゲート抵抗R1と、コンデンサC4およびツェナダイオードZDから成る並列回路とを介して前記パワーMOSFETQ1のゲートに接続し、第2の補助巻線L13に生じる電圧でパワーMOSFETQ1を駆動できるように構成する。また、前記パワーMOSFETQ1のゲートと直流入力電源Eの他端(高圧側)との間には、起動用の抵抗R4が接続される。こうして、2つの補助巻線L13,L12からの帰還電圧によって、パワーMOSFETQ1,Q2が交互にON/OFFして自励発振する。
ここで、注目すべきは、本構成では、各パワーMOSFETQ1,Q2には、そのOFFタイミングを設定するための制御回路Cont1,Cont2が設けられることである。先ず、制御回路Cont1は、前記パワーMOSFETQ1のゲート−ソース間を短絡し、該パワーMOSFETQ1をOFFさせるための第3のスイッチング素子であるスイッチ素子q1およびダイオードd1と、分圧抵抗r1,r2,ダイオードd5、ツェナダイオードzdおよびコンデンサc2から成るピークホールド回路と、前記ダイオードd5およびツェナダイオードzdの逆電圧を検出し、前記スイッチ素子q1をONさせるための第1の比較器Comp1と、次のサイクルに備えてコンデンサc2の電荷を放電するためのダイオードd3,d4および抵抗r3と、制御用電源を作成するダイオードd2およびコンデンサc1とを備えて構成される。
一方、制御回路Cont2は、補助巻線L12に誘起された電圧が、対応するスイッチング素子Q2を順バイアスする方向に発生した時点を起点として三角波を発生する三角波発生回路23と、可変の基準電圧VTHを発生する基準電圧源24と、前記三角波の電圧と基準電圧VTHとを比較し、前記三角波の電圧が基準電圧VTHより高くなると対応する前記スイッチング素子Q2のゲート−ソース間を短絡する比較回路25とを備える出力調整回路から構成される。この出力調整回路22内では、出力トランスT1の補助巻線L12の非グランド側端子からダイオードDc1およびコンデンサCc3によって制御用電源Vcを作成している。これらの制御回路Cont1,Cont2は、以下のような自励動作を行う。
図2および図3に基づいて、制御回路Cont1の回路動作を説明する。図中VQ1,VQ2はパワーMOSFETQ1,Q2のドレイン−ソース間電圧、IQ1,IQ2はパワーMOSFETQ1,Q2のドレイン電流、VC1はコンデンサC1の電圧、ID3,ID4は出力整流ダイオードD3,D4のダイオード電流、VL11は出力トランスT1の1次巻線L11の電圧、VL12,VL13は出力トランスT1の補助巻線L12,L13の電圧、cont1,cont2は制御回路Cont1,Cont2内で前記スイッチ素子q1,Qc5を駆動するための信号をそれぞれ表している。ただし、図2は、図1で示す本実施の形態の自励式複合共振直列コンバータの動作波形図ではなく、前述の図7で示す他励式複合共振直列コンバータの図8で示す動作波形図に、前記巻線L11,L12の電圧VL11,VL12を詳しく示すものである。
図2を参照して、出力トランスT1の1次巻線L11に印加される電圧波形は、VL11のような波形となり、その相似した波形が補助巻線L12,L13に発生する。電流帰還の場合は正弦波状の共振電流が帰還されるのに対して、出力トランスT1からの電圧帰還においては前記VL11のような矩形波の電圧が帰還されるので、パワーMOSFETQ1,Q2の駆動に適することが理解される。しかしながら、VL11には2次側ダイオードD3,D4の電流ID3,ID4が途切れる区間に対応して、参照符号Pで示すような段差が存在する。本構成はこの段差Pに着目したものであり、スイッチング素子Q1をOFFさせるタイミングをこの段差Pの発生時とすることによって、下記の効果を狙ったものである。
すなわち、段差Pの発生までの期間はインダクタLとコンデンサC1との直列共振周波数に依存し、安定した動作周波数設計が可能である。また、段差Pの発生は、出力側のダイオード電流ID4が途切れた結果であり、まさに他励式において理想とされるスイッチングOFFの動作ポイントで、出力ダイオードD4のリカバリを抑制するとともに、スイッチング素子Q1のZVS動作が可能である。さらにまた、段差Pを検出する検出手段として用いる整流平滑回路によって、適度のデットオフタイムが生成可能で、ZVS動作実現に利用できる。これらの効果を以下に詳しく説明する。
図3は、本構成に係る電圧帰還型の自励式複合共振直列コンバータの動作波形図である。図3を参照して、VL13は補助巻線L13に生じる帰還電圧波形を示し、Vc2はピークホールド用のコンデンサc2の電圧を示しており、帰還電圧VL13が正の間にコンデンサc2はダイオードd5のON電圧およびツェナダイオードzdのツェナ電圧だけ低い電圧まで充電・保持される。VL13に段差が発生した瞬間、Vc2>VL13の状態が発生してダイオードd5およびツェナダイオードzdに逆電圧が印加される。時刻t1において、比較器Comp1でこの逆電圧をある閾値δで検出し、該比較器Comp1の出力cont1でパワーMOSFETQ1のゲート−ソース間に接続されたスイッチ素子q1をONさせることで、前記パワーMOSFETQ1がOFFする。その後、次のONサイクルに備えて、帰還電圧VL13が負となる時間t3だけ遅延した後、コンデンサc2の電荷をダイオードd4ならびに抵抗r3およびダイオードd3によって放電させる結果、Vc2はゼロにリセットされる。なお、抵抗r3は放電抵抗であり、ダイオードd3はコンデンサc2の逆充電防止用のダイオードである。
こうして、補助巻線電圧VL13に段差が発生した時点(前記時刻t1)でパワーMOSFETQ1のゲート−ソース間に設けたスイッチ素子q1をONさせて該パワーMOSFETQ1をOFFさせる結果、補助巻線電圧VL13は、時刻t2から速やかに低下し、適度なデットオフタイムを経て補助巻線L12の電圧VL12が立上がり、ゲート抵抗R2を介してパワーMOSFETQ2をONさせる。前記パワーMOSFETQ2は、後述の出力調整回路である第2の制御回路Cont2によって任意のON時間後にOFFされると、補助巻線L13に順方向の誘起電圧が発生し、パワーMOSFETQ1をONさせ、以下同様なスイッチング動作が継続する。この結果、パワーMOSFETQ1側は最適なタイミングでスイッチング動作が行われて低損失化を維持しながら、パワーMOSFETQ2側のON時間を任意に設定可能なPWM制御を行うことによって、自励式であっても、パワーMOSFETQ1のドレイン−ソース間電圧VQ1、ドレイン電流IQ1およびダイオード電流ID4は、前記図8で示す他励式と極めて近似した波形が得られることが理解される。これによって、スイッチング素子Q1の低損失・低雑音化を維持しながら、他励式に比べて大幅な回路の簡素化、低コスト化を図り、さらに動作の高周波化(たとえば500kHz)を可能とすることができる。
これに対して、図4および図5は、前記第2の制御回路Cont2の動作を説明するための波形図である。前記三角波発生回路23では、出力トランスT1の補助巻線L12の非グランド側端子から抵抗Rc1,Rc2で分圧回路を形成し、その接続点をFETQc1のゲート端子に接続する。この抵抗Rc1に並列のコンデンサCc2は極性反転時のスピードアップ用である。したがって、図4で示すように、補助巻線L12の電圧VL12がパワーMOSFETQ2のゲートを順バイアスする方向に発生しているとき、参照符号VQC1で示すように(ドレイン−ソース間電圧)前記FETQc1はONとなり、その反転回路を形成するトランジスタQc2は参照符号VQC2で示すようにOFFとなっている。
一方、前記制御用電源VcからトランジスタQc3,Qc4をミラー構成として、ダイオード構造のトランジスタQc3に接続される抵抗Rc4に基準電流を流し、反対のトランジスタQc4に接続されるコンデンサCc1を充電する回路を設けるとともに、そのコンデンサCc1の端子間に放電回路として前記トランジスタQc2を接続する。したがって、補助巻線L12の電圧VL12がパワーMOSFETQ2のゲートを逆バイアスする方向に発生しているとき、すなわち前記トランジスタQc2がONしているときは、カレントミラー回路による充電は行われず、補助巻線L12の電圧VL12がパワーMOSFETQ2のゲートを順バイアスする方向に発生する、すなわち前記トランジスタQc2がOFFしたときには、充電が行われ、コンデンサCc1の端子電圧は、参照符号VCC1で示すように、三角波状に上昇する。
一方、前記基準電圧源24は、前記制御電源Vcから抵抗Rc5を介して、可変抵抗VRとフォトカプラPCのフォトトランジスタTR10との並列回路に接続され、この並列回路の分圧値VTHと前記コンデンサCc1の三角波電圧とを比較するためのコンパレータcomp2が設けられる。なお、Cc4は雑防あるいは遅延用のコンデンサである。
前記コンパレータcomp2は、その−入力端子の分圧電圧VTHに対して、+入力端子に接続された前記コンデンサCc1の三角波電圧が上回った時点で、参照符号VCPで示すように、その出力をハイレベルとして第4のスイッチング素子である前記FETQc5をONさせ、ダイオードDc2を介して前記パワーMOSFETQ2のゲート−ソース間を短絡して該パワーMOSFETQ2をターンOFFさせる。前記可変抵抗VRの抵抗値を変化して比較器Comp2の基準電圧VTHをΔVTHの範囲で変化することで、パワーMOSFETQ2のターンOFFのタイミングを、図4で示す(VTH=VTH1)前記制御回路Cont2のハイレベルタイミング(フルデューティ)以降から、図5で示す(VTH=VTH2)ように速めることができる。
このような第2の制御回路Cont2に対応して、前述のフィードバック信号作成用に、2次側には負荷検出回路33が設けられる。この負荷検出回路33では、抵抗R21,R22の直列回路および抵抗R23,R24の直列回路が出力の平滑コンデンサC3と並列に接続され、2つの直列回路間に電流検知抵抗R25が設けられる。前記抵抗R21,R22の分圧電圧をコンパレータComp3の−入力端子に入力するとともに、抵抗R23,R24の接続点の電圧を+入力端子に入力することで、前記電流検出抵抗R25による電圧降下が増幅され、コンパレータComp3の出力に設けたトタンジスタQ5を介してフォトカプラPCを駆動し、負荷電流が大きくなる程、フォトカプラPCの発光ダイオードD10の輝度が大きくなる。また、前記抵抗R23,R24の接続点の電位は、コンデンサC3の出力電圧によっても変化し、出力電圧が上昇する程、フォトカプラPCの発光ダイオードD10の輝度が大きくなる。
したがって、前記発光ダイオードD10の輝度が大きくなる、すなわち負荷電流が大きい程、また無負荷時などで出力電圧が上昇する程、前記基準電圧VTHが低くなり、前記コンデンサCc1に発生する三角波電圧の低い時点でコンパレータComp2の出力がハイレベルとなり、FETQc5がONして、その結果パワーMOSFETQ2のONデューテイが小さくなって出力を低減させることができる。こうして、電流検出抵抗R25の電圧降下が一定値になるように、また出力電圧も略一定範囲になるように、フォトカプラPCを介してフィードバック制御が行われる結果、簡単な構成で、パワーMOSFETQ2のON幅を変化させて出力調整を行うことができるようになっている。
このように構成することで、前記第1の制御回路Cont1は、2次側平滑コンデンサC3の充電完了によって2次側誘起電流が流れなくなったことを対応する第1の補助巻線L13の電圧低下から検知して、第3のスイッチング素子をONさせ、ONしていた第1のスイッチング素子Q1をOFFさせるとともに、第2の補助巻線L12に生じる順方向の誘起電圧によって、OFFしていた第2のスイッチング素子Q2をONさせることで前記スイッチングを継続させるので、電圧帰還型の自励式複合共振直列コンバータにおいて、適切なスイッチング条件(ZVS動作)を簡易な構成で実現でき、本来の特徴である低損失・低雑音化を維持しながら、他励式に比べて大幅な回路の簡素化、低コスト化を実現することができる。また、より高周波化し、小型・高効率化にも適応できる。
さらに、前記第2の制御回路Cont2を、前記第2の補助巻線L12に誘起された電圧が対応する第2のスイッチング素子Q2を順バイアスする方向に発生した時点を起点として三角波を発生する三角波発生回路23と、可変の基準電圧VTHを発生する基準電圧源24と、前記三角波の電圧と基準電圧VTHとを比較して三角波の電圧が基準電圧VTHより高くなった時点で前記スイッチング素子Q2のゲート−ソース間を短絡する比較回路25とを備えて成る出力調整回路で構成するので、前記基準電圧VTHを変えることで出力の可変機能或いは出力の安定化機能を付加することができる。こうして、電圧帰還型のコンバータにおいて、簡単な構成で適切なスイッチング条件を維持しながら、出力の可変機能或いは出力の安定化機能を実現することができる。
また、2次側負荷電流を検出する負荷検出回路33に、その検出結果を1次側へフィードバックし、前記基準電圧源24の基準電圧VTHを変化するフィードバック回路であるフォトカプラPCをさらに設けるので、2次側の負荷電流が定電流となるようにフィードバック制御を行うことができる。
さらにまた、前記第1の制御回路Cont1のピークホールド回路において、コンデンサc2に充電電流を供給するダイオードd5と直列にツェナダイオードzdを設けるので、該ツェナダイオードzdの閾値電圧によって、第1の比較器comp1の閾値設定の自由度を高めることができる。なお、ダイオードd5を直列に複数段接続しても同様の効果を得ることができ、その場合にはダイオードd5の段数によって前記閾値電圧を調整することができる。
また、前記第2の制御回路Cont2の比較回路25において、第2の比較器comp2の出力側に、コンデンサCc6、抵抗Rc6,Rc7、ダイオードDc3およびツェナダイオードZD1から成る逆バイアス回路が設けられている。これによって、コンデンサCc6にはFETQc5のゲートに対して逆バイアス電圧がえられ、コンパレータcomp2の出力がローレベルの状態で、ノイズ等によるFETQc5の半導通などの誤動作を回避でき、スイッチング動作を安定化させることができる。前記コンデンサCc6に生じる逆バイアス電圧は、並列に設けたツエナダイオードZD1のツエナ電圧によって調整が可能である。
さらにまた、パワーMOSFETQ1には、補助巻線L13の誘起電圧が、抵抗R1と、コンデンサC4およびツェナダイオードZDの並列回路とから成る起動補償回路を介して与えられる。この場合、コンデンサC4の容量値を共振用コンデンサC1の容量値に対してして充分に大きく設定することによって、起動にあたって共振用コンデンサC1を充電するための起動抵抗が別途不要となるとともに、起動の際に補助巻線L13に発生する微弱な帰還信号をコンデンサC4の充電電圧分だけ持ち上げることができ、起動し易くすることができる。
なお、ツエナダイオードZDは、起動時にパワーMOSFETQ1への過電圧を抑制するとともに、起動後のスイッチング動作においては、コンデンサC4の交流インピーダンスによるスイッチング動作への影響を防ぐ効果がある。また、起動後はコンデンサC4の直流電位はスイッチング素子q1の動作によって毎サイクル放電されるので、スイッチング動作に影響することはない。
ここで、フィードバックするのは、上述のような負荷電流・電圧に限らず、図6(a)の負荷電圧検出回路33aや、図6(b)の負荷電流検出回路33bのように、それらのいずれかでもよい。フィードバックによって、図6(a)の負荷電圧検出回路33aでは定電圧制御を行うことができ、図6(b)の負荷電流検出回路33bでは定電流制御を行うことができる。
以上の説明において入力電源を直流電源Eとして説明したが、商用電源を整流・平滑化して用いてもよい。また出力トランスT1の2次側はセンタータップを設けて整流回路を構成する例で説明したが、整流ブリッジによる方法でも動作などは同じである。さらに、複合共振回路を形成するキャパシタC2については、第1および第2のスイッチング素子Q1,Q2の少なくとも一方に設けるものとするが、動作周波数が高い場合は、パワーMOSFETQ1,Q2の寄生容量(Crss)で代用することが可能である。