JP5042513B2 - 二光子吸収材料とその用途 - Google Patents
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Description
また、三次元メモリ媒体(材料)に関する従来例として、特許文献4〜6開示のものがある。
また、光制限素子(材料)に関する従来例として特許文献7開示のものがある。
また、光造形技術に関する従来例として、特許文献8開示のものがある。
また、二光子特性を利用した(蛍光)顕微鏡に関する従来例として、特許文献9〜11開示のものがある。
特許文献1〜11の従来例に従って光メモリ、光学素子、機器等に本発明の優れた二光子吸収特性を有する二光子吸収材料を適用すれば、本発明の請求項7〜10の三次元メモリ材料、光制限材料、及び光造形用光硬化樹脂の硬化材料、二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料を達成できる。
最近、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映も間近にひかえて、民生用途においても50GB以上、好ましくは100GB以上の画像情報を安価簡便に記録するための大容量記録媒体の要求が高まっている。さらにコンピューターバックアップ用途、放送バックアップ用途等、業務用途においては、1TB程度あるいはそれ以上の大容量の情報を高速かつ安価に記録できる光記録媒体が求められている。そのような中、DVD±Rのような従来の二次元光記録媒体は原理上、たとえ記録再生波長を短波長化したとしてもせいぜい25GB程度で、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量が期待できるとは言えない状況である。
そのような状況の中、究極の高密度、高容量記録媒体として、三次元光記録媒体が俄然、注目されてきている。三次元光記録媒体は、三次元(膜厚)方向に何十、何百層もの記録を重ねることで、従来の二次元記録媒体の何十、何百倍もの超高密度、超高容量記録を達成しようとするものである。三次元光記録媒体を提供するためには、三次元(膜厚)方向の任意の場所にアクセスして書き込みできなければならないが、その手段として、二光子吸収材料を用いる方法とホログラフィ(干渉)を用いる方法とある。二光子吸収材料を用いる三次元光記録媒体では、上記で説明した原理に基づいて何十、何百倍にもわたって、いわゆるビット記録が可能であって、より高密度の記録が可能であり、まさに究極の高密度、高容量光記録媒体であると言える。
二光子吸収材料を用いた三次元光記録媒体としては、記録再生に蛍光性物質を用いて蛍光で読み取る方法(レウ"ィッチ、ユージーン、ポリス他、特表2001−524245号公報[特許文献1]、パベル、ユージエン他、特表2000−512061号公報[特許文献2])、フォトクロミック化合物を用いて吸収または蛍光で読み取る方法(コロティーフ、ニコライ・アイ他、特表2001−522119号公報[特許文献3]、アルセノフ、ウ"ラディミール他、特表2001−508221号公報[特許文献4])等が提案されているが、いずれも具体的な二光子吸収材料の提示はなく、また抽象的に提示されている二光子吸収化合物の例も二光子吸収効率の極めて小さい二光子吸収化合物を用いている。さらに、これらの特許文献に用いているフォトクロミック化合物は可逆材料であるため、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に問題があり、光記録媒体として実用性のある方式であるとは言えない。特に非破壊読出し、記録の長期保存性等の点では、不可逆材料を用いて光を照射した時の光学特性の変化、例えば反射率変化、透過率変化、発光強度の変化などを検出して再生するのが好ましいが、このような機能を有する二光子吸収材料を具体的に開示している例はなかった。
また、河田聡、川田善正、特開平6−28672号公報[特許文献5]、河田聡、川田善正他、特開平6−118306号公報[特許文献6]には、屈折率変調により三次元的に記録する記録装置、及び再生装置、読み出し方法等が開示されているが、二光子吸収三次元光記録材料を用いた方法についての記載はない。
しかし、現時点で利用可能な二光子吸収化合物では、二光子吸収能が低いため、光源として非常に高出力のレーザーが必要であり、かつ記録時間も長くかかる。特に三次元光記録媒体に使用するためには、速い転送レート達成のために、高感度にて光学特性の違いによる記録を二光子吸収により行うことができる二光子吸収三次元光記録材料の構築が必須である。そのためには、高効率に二光子を吸収し励起状態を生成することができる二光子吸収化合物が有力であるが、そのような材料は今までほとんど開示されておらず、そのような材料の構築が望まれていた。
また、本発明の目的は、二光子吸収断面積が大きい二光子吸収化合物を少なくとも有し、二光子吸収化合物の二光子吸収を利用して書き換えできない方式で記録を行った後、光を記録材料に照射してその光学特性の違いを検出することにより再生することが可能な二光子吸収光記録材料を提供することにある。
さらに、それらを用い優れた二光子吸収三次元光記録材料を提供することにある。
またさらに、それらを用いた二光子吸収三次元光記録材料、光制限材料、光造形用光硬化樹脂の硬化材料、二光子顕微鏡用の蛍光色素材料を提供することにある。
即ち、本発明の上記目的は、(1)「下記一般式(I)で表される二光子吸収材料;
式中、Ar1、Ar3及びAr4は、置換または無置換の芳香族炭化水素基の二価基であって、
Ar2は、置換または無置換の芳香族炭化水素基であって、
R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
nは、0または1である。」、
(2)「下記一般式(II)で表されることを特徴とする前記第(1)項に記載の二光子吸収材料;
Ar2は、置換または無置換の芳香族炭化水素基であって、
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
z及びuは、それぞれ独立に、0から4までの整数であって、
nは、0または1である。」、
(3)「下記一般式(III)で表されることを特徴とする前記第(2)項に記載の二光子吸収材料;
R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
z及びuは、それぞれ独立に、0から4までの整数であって、
vは、0から5までの整数であって、
nは、0または1である。」、
(4)「一般式(IV)で表される繰り返し単位を有する二光子吸収材料;
Ar2は、置換または無置換の芳香族炭化水素基であって、
R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
nは、0または1である。」、
(5)「前記繰り返し単位が、下記一般式(V)で表されることを特徴とする前記第(4)項に記載の二光子吸収材料;
式中、Ar1は、置換または無置換の芳香族炭化水素基の二価基であって、
Ar2は、置換または無置換の芳香族炭化水素基であって、
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
z及びuは、それぞれ独立に、0から4までの整数であって、
nは、0または1である。」、
(6)「前記繰り返し単位が、下記一般式(VI)で表されることを特徴とする前記第(5)項に記載の二光子吸収材料;
式中、Ar1は、置換または無置換の芳香族炭化水素基の二価基であって、
R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
z及びuは、それぞれ独立に、0から4までの整数であって、
vは、0から5までの整数であって、
nは、0または1である。」、
(7)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む平面及び膜厚方向に記録が可能な三次元メモリ材料」、
(8)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む光制限材料」、
(9)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む光造形用光硬化樹脂の硬化材料」、
(10)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料」によって達成される。
また、以前は低分子化合物(単分子化合物)の二光子吸収材料を用いる場合、これまでは高分子材料中に分散させて使用していた。しかしながら長期保存性に関しては、二光子吸収材料の結晶化やマイグレーションによる偏析等による塗膜欠陥が発生するため、品質が変化する不具合があった。
二光子吸収能を有する部位を連結した二光子吸収重合体とすることで、長期保存でも塗膜欠陥が発生せず、安定した品質が得られるという極めて優れた効果を奏するものである。
本発明の二光子吸収材料とは、非共鳴領域の波長において分子を励起することが可能な材料で、このとき励起に用いた光子の約2倍のエネルギー準位に、実励起状態が存在する材料のことである。
ところで二光子吸収現象とは、三次の非線形光学効果の一種であって、分子が二つのフォトンを同時に吸収して、基底状態から励起状態へ遷移する現象であり、古くから知られていたがJean−Luc Bredas等が1998年に分子構造とメカニズムの関係を解明して以来(Science,281,1653 (1998))、近年になって二光子吸収能を有する材料に関する研究が進むようになった。
二光子吸収の遷移効率は、印加する光電場の二乗に比例する(二光子吸収の二乗特性)。このため、レーザーを照射した場合、レーザースポット中心部、即ち電界強度の高い位置でのみ二光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では二光子の吸収は全く起こらない。三次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ二光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために二光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる一光子の線形吸収に比べて、二光子吸収は、この二乗特性に由来して空間内部の一点のみしか励起が起こらないため、空間分解能が著しく向上する。
ここで、「基板」とは、任意の天然又は合成支持体、好適には柔軟性又は剛性フィルム、シートまたは板の形態で存在することができるものを意味する。
基板として好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、樹脂下塗り型ポリエチレンテレフタレート、火炎又は静電気放電処理されたポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラス等である。また、この基板にはあらかじめ、トラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであっても良い。
さらに、二光子吸収光記録材料の上に、酸素遮断や層間クロストーク防止のための保護層(中間層)を形成してもよい。保護層(中間層)は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートまたはセロファンフィルムなどのプラスチック製のフィルムまたは板を静電的な密着、押し出し機を使った積層等により貼合わせるか、前記ポリマーの溶液を塗布してもよい。また、ガラス板を貼合わせてもよい。また、保護層と感光膜の間および/または、基材と感光膜の間に、気密性を高めるために粘着剤または液状物質を存在させてもよい。さらに感光膜間の保護層(中間層)にもあらかじめ、トラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであっても良い。
図中(b)の記録媒体においては、平らな支持体(基板(1))に本発明の二光子吸収化合物を用いた記録層と、クロストーク防止用の中間層(保護層)が交互に50層ずつ積層され、各層はスピンコート法により成膜されている。記録層の厚さは0.01〜0.5μ、中間層の厚さは0.1μ〜5μが好ましく、この構造であれば、現在普及しているCD/DVDと同じディスクサイズで、テラバイト級の超高密度光記録が実現できる。更にデータの再生方法(透過/或いは反射型)により、基板(1)と同様の基板(2)(保護層)、或いは高反射率材料からなる反射層が構成される。
記録時は単一ビームが使用され、この場合フェムト秒オーダーの超短パルス光を利用することができる。また再生時は、データ記録に使用するビームとは異なる波長、或いは低出力の同波長の光を用いることもできる。記録及び再生は、ビット単位/ページ単位のいずれにおいても実行可能であり、面光源や二次元検出器等を利用する並行記録/再生は、転送レートの高速化に有効である。
なお、本発明に従い同様に形成される三次元多層光メモリの形態としては、カード状、プレート状、テープ状、ドラム状等が考えられる。
光通信や光情報処理では、情報等の信号を光で搬送するために変調、スイッチング等の光制御が必要になる。この種の光制御には、電気信号を用いた電気−光制御方法が従来採用されている。しかし電気−光制御方法は、電気回路のようなCR時定数による帯域制限、素子自体の応答速度や電気信号と光信号との間の速度の不釣合いで処理速度が制限されることなどの制約があり、光の利点である広帯域性や高速性を十分に生かすためには、光信号によって光信号を制御する光−光制御技術が非常に重要になってくる。
この要求に応えるものとして本発明の二光子吸収材料を加工して作製した光学素子は、光を照射することで引き起こされる透過率や屈折率、吸収係数などの光学的変化を利用し、電子回路技術を用いずに光の強度や周波数を変調することで、光通信、光交換、光コンピューター、光インターコネクション等における光スイッチなどに応用することが可能である。
二光子吸収による光学特性変化を利用する本発明の光制限素子は、通常の半導体材料により形成される光制限素子や、一光子励起によるものに比べ、応答速度にはるかに優れた素子を提供することができる。また本発明の二光子吸収材料は高感度ゆえに、S/N比の高い信号特性に優れた光制限素子を提供することができる。
二光子光造形法の装置の概略図を図3に示し、以下に説明する。
近赤外パルスレーザー光源(31)からの光を、ミラースキャナー(34)に通した後、レンズを用いて光硬化性樹脂(39)中に集光させレーザースポットを走査し、二光子吸収を誘起することによって焦点近傍のみにおいて樹脂を硬化させて任意の三次元構造を形成する二光子マイクロ光造形方法である。
パルスレーザー光をレンズで集光して、集光点近傍にフォトンの密度の高い領域を形成する。このときビームの各断面を通過するフォトンの総数は一定なので、焦点面内でビームを二次元的に走査した場合、各断面における光強度の総和は一定である。しかしながら、二光子吸収の発生確率は、光強度の二乗に比例するため、光強度の大きい集光点近傍にのみ、二光子吸収の発生の高い領域が形成される。このように、パルスレーザー光をレンズによって集光させ二光子吸収を誘起することで、集光点近傍に光吸収を限定し、ピンポイントで樹脂を硬化させることが可能となる。集光点はZステージ(36)とガルバノミラーによって光硬化樹脂液内を自由に移動させることができるため、光硬化性樹脂液内において目的とする三次元加工物を自在に形成することができる。
1)回折限界を超える加工分解能
二光子吸収の光強度に対する非線形性によって、光の回折限界を超えた加工分解能を実現できる。
2)超高速造形
二光子吸収を利用した場合、焦点以外の領域では、光硬化性樹脂が原理的にも硬化しない。このため照射させる光強度を大きくし、ビームのスキャン速度を速くすることができる。このため、造形速度を約10倍向上することができる。
3)三次元加工
光硬化性樹脂は、二光子吸収を誘起する近赤外光に対して透明である。したがって焦点光を樹脂の内部へ深く集光した場合でも、内部硬化が可能である。従来のSIHでは、ビームを深く集光した場合、光吸収によって集光点の光強度が小さくなり、内部硬化が困難になる問題点が、本発明ではこうした問題点を確実に解決することができる。
4)生産性の向上
従来法では樹脂の粘性や表面張力によって造形物が破損、変形するという問題があったが、本手法では、樹脂の内部で造形を行うのでこうした問題は解消される。
5)大量生産への適用
超高速造形を利用することによって、短時間に、連続的に多数個の部品あるいは可動機構の製造が可能である。
(1)反応性が良好であること、
(2)硬化時の堆積収縮が小さいこと、
(3)硬化後の機械特性が優れていること、等が重要である。
これらの特性は本手法においても同様に重要であり、そのため、積層式立体造形用に開発された樹脂で二光子吸収特性を有するものは本手法の二光子光造形用光硬化性樹脂としても使用できる。その具体的な例としては、アクリレート系及びエポキシ系の光硬化性樹脂が良く用いられ、特にウレタンアクリレート系の光硬化性樹脂が好ましい。
二(多)光子励起レーザー走査顕微鏡とは、近赤外パルスレーザーを標本面上に集光し走査させて、そこでの二(多)光子吸収により励起されて発生する蛍光を検出することにより像を得る顕微鏡である。
近赤外域波長のサブピコ秒の単色コヒーレント光パルスを発するレーザー光源(41)と、レーザー光源からの光束を所望の大きさに変える光束変換光学系(42)と、光束変換光学系で変換された光束を対物レンズの像面に集光し走査させる走査光学系(43)と、集光された上記変換光束を標本面(45)上に投影する対物レンズ系(44)と、光検出器(47)を備えている。
パルスレーザー光を、ダイクロイックミラー(46)を経て、光束変換光学系、対物レンズ系により集光し、標本面で焦点を結ばせることにより、標本内にある二光子吸収蛍光材料に二光子吸収により誘起された蛍光を生じさせる。標本面をレーザービームで走査し、各場所での蛍光強度を光検出器(47)などの光検出装置で検出して、得られた位置情報に基づいて、コンピューターでプロットすることにより、三次元蛍光像が得られる。走査機構としては、例えば、ガルバノミラーなどの可動ミラーを用いてレーザービームを走査しても良く、或いはステージ上に置かれた二光子吸収材料を含む標本を移動させても良い。
このような構成により、二光子吸収そのものの非線形効果を利用して、光軸方向の高分解能を得ることができる。加えて、共焦点ピンホール板を用いれば、さらなる高分解能(面内、光軸方向共)が得られる。
本発明における光子蛍光顕微鏡の公知文献として特開平9−230246号公報が挙げられる。たとえば走査型蛍光顕微鏡は、所望の大きさに拡大されたコリメート光を発するレーザー照射光学系と、複数の集光素子が形成された基板とを備え、該集光素子の集光位置が対物レンズ系の像位置に一致するように配置され、かつ、前記の集光素子が形成された基板と対物レンズ系との間に、長波長を透過し短波長を反射するビームスプリッタが配置され、標本面で多光子吸収による蛍光を発生させることを特徴とするものである。
このような構成により、多光子吸収そのものの非線形効果を利用して、光軸方向の高分解能を得ることができる。加えて、共焦点ピンホール板を用いれば、さらなる高分解能(面内、光軸方向共)が得られる。このような二光子光学素子は上述の光制御素子と全く同様に本発明の高い二光子吸収能を有した材料、薄膜、もしくは光硬化性樹脂等に分散させた固体物を光学素子として用いることが可能である。
従って、本発明の二光子吸収材料の使用要件としては、該材料が各種樹脂、またはガラスに混合されているか、二光子吸収材料層界面が各種樹脂、またはガラスに接していることである。言い換えれば、本発明の二光子吸収材料はミクロレベル、又はマクロレベルで各種樹脂、又はガラスに接している構成となっている。
本発明のアリールアミン重合体の製造方法は、例えば、アリールジハロゲン化物とアリールジホウ素化合物を用いたSuzuki coupling、アリールジハロゲンとアリールジスズ化合物を用いたStille Couplingなどのクロスカップリング反応などが好ましい。
上記Suzuki couplingは、Synthetic Communications 11(7), 513-519 (1981)、Chem. Rev. 95, 2457-2483 (1995)、WO99/20675 (特許文献1及び実施例(ポリマー合成)の製法の参考にもなる)に記載されており、この合成方法に準じて合成することができる。
また、Suzuki couplingで用いる「アリールハロゲン化物」、「アリールホウ素化合物」の具体例を下記式に示す。
アリールホウ素化合物としては、アリールジボロン酸またはアリールジボロン酸エステルが用いられるが、アリールジボロン酸エステルは、アリールジボロン酸のように三無水物(ボロキシン)を生成しない、また、結晶性が高く、精製が容易であることからより好ましい。アリールジボロン酸エステルの合成方法としては、(i)アリールジボロン酸とアルキルジオールを無水有機溶媒中にて加熱反応させる(Polymer 38(5), 1221-1226 (1997)、Chem. Mater. 13, 1540-1544 (2001)に記載の合成方法)、(ii)アリールジハロゲン化物のハロゲン部位をメタル化した後に、アルコキシボロンエステルを加える反応(Macromolecules 30, 7686-7691 (1997)、Macromolecules 32, 3306-3313 (1999)、Macromolecules 37, 4087-4098 (2004)に記載の合成方法)、(iii)アリールハロゲンのグリニャール試薬を調製した後に、アルコキシボロンエステルを加える反応、さらには、(iv)アリールハロゲン化物とビス(ピナコラト)ジボロンやビス(ネオペンチル グリコラト)ジボロンをパラジウム触媒下にて加熱反応(J. Org. Chem. 60(23), 7508-7510 (1995)に記載の合成方法)することによって得られる。
パラジウム触媒としてはPd(PPh3)4、PdCl2(PPh3)2、Pd(OAc)2、PdCl2または、パラジウムカーボンに配位子として別途トリフェニルホスフィンを加える、など種々の触媒をもちいることができるが、最も汎用的にはPd(PPh3)4が用いられる。
反応溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル等のアルコールおよびエーテル系、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系の他、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができる。
上記重合反応における反応時間は、用いるモノマーの反応性、または、望まれる重合体の分子量などにおいて適宜設定することができ、2〜50時間が好適であり、さらには、5〜24時間がより好ましい。
また、以上の重合操作において分子量を調節するために分子量調節剤、または末端修飾基として重合体の末端を封止するための封止剤を反応系に添加することも可能であり、反応開始時に添加しておくことも可能である。従って、本発明における重合体の末端には停止剤に基づく基が結合してもよい。
分子量調節剤、末端封止剤としては、フェニルボロン酸、ブロモベンゼン、ヨウ化ベンゼン等、反応活性基を1個有する化合物が挙げられる。
また、機械的特性を改良するために重合時に分岐化剤を少量加えることもできる。使用される分岐化剤は、重合反応活性基を3つ以上(同種でも異種でもよい)有する化合物である。これらの分岐化剤は単独で使用してもよく、また複数併用してもよい。
以上のようにして得られた本発明の重合体は、重合に使用した塩基、未反応モノマー、末端停止剤、又、重合中に発生した無機塩等の不純物を除去して使用される。これら精製操作は再沈澱、カラムクロマト法、吸着法、抽出、ソックスレー抽出、限外濾過、透析等をはじめとする従来公知の方法を使用できる。
前記一般式(I)または一般式(IV)における置換又は無置換の芳香族炭化水素基Ar2としては単環基、多環基(縮合多環基、非縮合多環基)の何れでもよく、一例として以下のものを挙げることができる。例えばフェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などが挙げられる。前記一般式(I)における置換又は無置換の芳香族炭化水素基の二価基Ar1 、Ar4 、一価基Ar 3 としては、一例として上記の置換又は無置換の芳香族炭化水素基の二価基または一価基が挙げられる。
また、これら環状構造を有する基(Ar1、Ar2、Ar3およびAr4)は、以下のとおり、種々の置換基を有していてもよい。
(2)炭素数1〜25の直鎖または分岐鎖の、アルキル基、アルコキシ基。これらはさらにハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルチオ基で置換されていてもよい。
(3)アリールオキシ基(アリール基としてフェニル基、ナフチル基を有するアリールオキシ基が挙げられる。これらは、ハロゲン原子を置換基として含有しても良く、炭素数1〜25の直鎖または分岐鎖の、アルキル基、アルコキシ基、又はアルキルチオ基を含有していても良い。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、6−メチル−2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。)。
(4)アルキルチオ基又はアリールチオ基(アルキルチオ基又はアリールチオ基としては、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p −メチルフェニルチオ基等が挙げられる。)。
(5)アルキル置換アミノ基(具体的には、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(p−トリル)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる。)
(6)アシル基(アシル基としては、具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、マロニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。)。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は48200、重量平均分子量は134600であった。
示差操作熱量測定から求めたガラス転移温度は、122.1℃であった。
元素分析値(計算値);C:83.04%(83.23%)、H:8.05%(7.90%)、N:1.53%(1.59%)、S:7.49%(7.28%)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は5900、重量平均分子量は11800であった。
示差操作熱量測定から求めたガラス転移温度は、108.3℃であった。
元素分析値(計算値);C:77.46%(77.75%)、H:7.12%(7.08%)、N:1.79%(1.93%)、S:8.69%(8.83%)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は8500、重量平均分子量は19400であった。
示差操作熱量測定から求めたガラス転移温度は、84.1℃であった。
元素分析値(計算値); C:81.30%(81.58%)、H:7.94%(7.80%)、N:1.84%(1.90%)、S:8.48%(8.71%)
元素分析値(計算値); C:77.90%(78.17%)、H:5.87%(5.94%)、N:2.73%(2.85%)、S:13.02%(13.04%)
測定システム概略図を図5に示す。
測定光源 フェムト秒チタンサファイアレーザー
波長 800nm
パルス幅 100fs
繰り返し 80MHz
光パワー 800mW
測定方法 Zスキャン法
光源波長 800nm
キュベット内径 10mm
測定光パワー 約 500mW
繰返し周波数 80MHz
集光レンズ f=75mm
集光径 40〜50μm
集光されている光路部分に試料溶液を充填した石英セルを置き、その位置を光路に沿って移動させることによりZ-scan測定を実施した。
透過率を測定し、その結果から下記理論式(I)により非線形吸収係数を求めた。
(δの単位は1GM=1×10−50cm4・s・photon−1である。)
実施例1〜9及び比較例1の評価結果を表1に示す。
また本発明の二光子吸収材料は、従来知られている二光子吸収能を発現する化合物の二光子吸収断面積と比較すると、1桁以上の特性改善効果があり、高出力レーザーを必要としない安価なレーザーで、三次元メモリ、光制限素子、光造形用材料、二光子蛍光顕微鏡用色素材料等の応用が期待できる材料であることが明確となった。
31 光硬化樹脂液に対して透明性を有する近赤外パルスレーザー光の光源
32 過光量を時間的にコントロールするシャッター
33 NDフィルター
34 ミラースキャナー
35 集光手段としてのレンズ
36 Zステージ
37 モニター
38 コンピューター
39 光硬化性樹脂液
41 レーザ光源
42 光束変換光学系
43 走査光学系
44 対物レンズ系
45 標本面
46 ダイクロイックミラー
47 光検出器
Claims (6)
- 下記一般式(IV)で表される繰り返し単位を有する二光子吸収材料。
R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基もしくはアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
nは、0または1である。 - 請求項1または2に記載の二光子吸収材料を含む平面及び膜厚方向に記録が可能な三次元メモリ材料。
- 請求項1または2に記載の二光子吸収材料を含む光制限材料。
- 請求項1または2に記載の二光子吸収材料を含む光造形用光硬化樹脂の硬化材料。
- 請求項1または2に記載の二光子吸収材料を含む二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料。
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