JP5321941B2 - 二光子吸収材料とその用途 - Google Patents
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Description
また、三次元(多層)光記録媒体(材料)に関する従来例として、特許文献6〜11開示のものがある。
また、光造形技術に関する従来例として、特許文献12開示のものがある。
また、光機能素子に関する従来例として、特許文献13〜16開示のものがある。
また、二光子特性を利用した光検出に関する従来例として、特許文献17〜21開示のものがある。
また、我々は、別に二光子吸収材料に関する技術を開発し提案(特許文献22〜30)している。
また、河田聡、川田善正、特許文献10:特開平6−28672号公報、河田聡、川田善正他、特許文献11:特開平6−118306号公報には、屈折率変調により三次元的に記録する記録装置、及び再生装置、読み出し方法等が開示されているが、二光子吸収三次元光記録材料を用いた方法についての記載はない。
すなわち、本発明の目的は、二光子吸収断面積の大きな有機材料、即ち、高感度な二光子吸収有機材料を提供することである。
また、二光子吸収断面積が大きい本発明の二光子吸収材料を少なくとも有し、記録を書き換えできない方式で行なう光記録材料を提供することである。
すなわち、上記課題は、以下の本発明によって解決される。
(1)「下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を有することを特徴とする二光子吸収ポリマー;
(2)「前記第(1)項に記載の二光子吸収ポリマーが、特に下記一般式(II)で表わされることを特徴とする二光子吸収ポリマー;
(3)「前記第(2)項に記載の二光子吸収ポリマーが、特に下記一般式(III)で表わされることを特徴とする二光子吸収ポリマー;
(4)「下記一般式(IV)で表わされることを特徴とする二光子吸収材料;
(5)「前記第(4)項に記載の二光子吸収材料が、特に下記一般式(V)で表わされることを特徴とする二光子吸収材料;
(6)「前記第(5)項に記載の二光子吸収材料が、特に下記一般式(VI)で表わされることを特徴とする二光子吸収材料;
(7)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を含むことを特徴とする光記録材料」、
(8)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を含むことを特徴とする光造形材料」、
(9)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を含むことを特徴とする光制限材料」、
(10)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を含むことを特徴とする二光子励起蛍光材料」、
(11)「平面上に形成され、該平面に対し水平、及び垂直方向に記録再生が可能な三次元光記録媒体において、前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料が、光記録が行なわれる記録層の少なくとも一部として含まれていることを特徴とする三次元光記録媒体」、
(12)「光硬化性樹脂に光を照射して造形を行なう光造形装置において、前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料が、前記光硬化性樹脂の少なくとも一部として含まれていることを特徴とする光造形装置」、
(13)「透過光強度を制限する素子を備えた光制限装置において、前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料が、前記素子の少なくとも一部として含まれていることを特徴とする光制限装置」、
(14)「光の進路を制限する素子を備えた光制限装置において、前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料が、前記素子の少なくとも一部として含まれていることを特徴とする光制限装置」、
(15)「試料中の被分析物に前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を選択的に担持させ、前記二光子吸収材料を検出することによって、被分析物を検出することを特徴とする二光子励起蛍光検出装置」。
これらにより、効率良く二光子を吸収する有機材料を得ることができる。
本発明の二光子吸収材料とは、非共鳴領域の波長において分子を励起することが可能な材料であって、このとき励起に用いた光子の2倍のエネルギー準位に、実励起状態が存在する材料のことである。
また、二光子吸収現象とは、三次の非線形光学効果の一種であって、このように分子が二つのフォトンを同時に吸収して、基底状態から励起状態へ遷移する現象のことをいう。
このような二光子同時吸収の遷移効率は、通常の色素材料で見られる一光子吸収の遷移効率と比べると極端に低く、現在汎用されている半導体レーザー程度の弱い光強度では、観測することができない。
二光子吸収が起きるためには、ピーク光強度(最大発光波長における光強度)が極めて大きい、モード同期式超短(フェムト秒程度)パルスレーザーのような、瞬間的に大きな光子密度を有す光を用いる必要がある。
このような現象は古くから知られていたが、近年になってJean-Luc Bredas等が1998年に分子構造とメカニズムの関係を解明して以来(Science,281,1653 (1998):非特許文献1)、二光子遷移効率の高い二光子吸材料の研究が盛んに行なわれるようになった。
すなわち、三次元空間においては、レンズで集光された電界強度の大きい焦点付近にのみ二光子吸収が起こり、電界強度が小さい焦点から外れた領域では二光子吸収が起こらないため、印加された光電場の一乗に比例して吸収が起こる一光子吸収に比べると、二光子吸収材料は極めて高い空間分解能を有するという特徴がある。
ところが無機材料においては、所望の特性を得ることの最適化や、構造や形態の最適化といったいわゆる分子設計が困難なため、実用性には難がある。一方、有機材料は無機材料と比べると、分子設計による構造最適化が可能で、その他の物性のコントロールも容易なため、実用面において優れている。
従来の有機系二光子吸収材料としては、ローダミン、クマリンなどの色素化合物、ジチエノチオフェン誘導体、オリゴフェニレンビニレン誘導体などの化合物が知られている。しかしながら、分子あたりの二光子吸収断面積(二光子遷移効率を表わす一つの指標であり、1GM=1×10-50cm4・s・photon-1である)は、フェムト秒パルスレーザーを用いても200GM未満と小さく、実用性に乏しかった。
以下に本発明のアリールアミン重合体の製造方法について説明する。
本発明のアリールアミン重合体の製造方法は、例えば、アリールハロゲン化物とアリールホウ素化合物を用いたSuzuki coupling(Synthetic Communications 11(7),513-519(1981), Chem. Rev. 95 2457-2483(1995), WO99/20675、前記特許文献1の特開2005−21434号公報記載のポリマー合成法、参照。)、アリールハロゲンとアリールスズ化合物を用いたStille Couplingなどのクロスカップリング反応などが好ましい。
アリールハロゲン化物のハロゲン原子としては、反応性の観点からヨウ素化物または臭素化物が好ましい。
アリールホウ素化合物としては、アリールボロン酸またはアリールボロン酸エステルが用いられるが、アリールボロン酸エステルは、アリールボロン酸のように三無水物(ボロキシン)を生成しないこと、また、結晶性が高く、精製が容易であることからより好ましい。
(i)アリールボロン酸とアルキルジオールを無水有機溶媒中にて加熱反応(Polymer 38(5),1221-1226(1997)、Chem,Mater.13,1540-1544(2001)参照。)、
(ii)アリールハロゲン化物のハロゲン部位をメタル化した後に、アルコキシボロンエステルを加える反応(Macromolecules 30,7686-7691(1997), Macromolecules 32, 3306-3313(1999), Macromolecules 37, 4087-4098 (2004)参照。)、
(iii)アリールハロゲンのグリニャール試薬を調製した後に、アルコキシボロンエステルを加える反応、さらには、
(iv)アリールハロゲン化物とビス(ピナコラト)ジボロンやビス(ネオペンチルグリコラト)ジボロンをパラジウム触媒下にて加熱する反応(J.Org. Chem.60(23),7508-7519(1995)参照。)、
によって得られる。
以上のようにして得られた本発明の重合体は、重合に使用した塩基、未反応モノマー、末端停止剤、又、重合中に発生した無機塩等の不純物を除去して使用される。これら精製操作は再沈澱、抽出、ソックスレー抽出、限外濾過、透析等をはじめとする従来公知の方法を使用できる。
前記一般式(I)及び(VI)における置換又は無置換の芳香族炭化水素基Ar1としては単環基、多環基(縮合多環基、非縮合多環基)の何れでもよく、例えばフェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などが挙げられる。
前記一般式(I)及び(IV)における置換又は無置換の芳香族炭化水素基の二価基Ar2、Ar3としては、一例として上記の置換又は無置換の芳香族炭化水素基の二価基が挙げられる。またこれら環状構造を有する基(Ar1、Ar2およびAr3)は、次の(a)〜(f)に示すような種々の置換基を有していてもよい。
(b)炭素数1〜25の直鎖または分岐鎖の、アルキル基、アルコキシ基。これらはさらにハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルチオ基で置換されていてもよい。
(c)アリールオキシ基。アリール基としてフェニル基、ナフチル基を有するアリールオキシ基が挙げられる。これらは、ハロゲン原子を置換基として含有しても良く、炭素数1〜25の直鎖または分岐鎖の、アルキル基、アルコキシ基、又はアルキルチオ基を含有していても良い。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、6−メチル−2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。
(d)アルキルチオ基又はアリールチオ基。アルキルチオ基又はアリールチオ基としては、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(e)アルキル置換アミノ基。具体的には、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(p−トリル)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる。
(f)アシル基。アシル基としては、具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、マロニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
上記、効率良く二光子を吸収する請求項1及至6のいずれかに記載された本発明のアリールアミンを、(i)平面上に形成され、該平面に対し水平、及び垂直方向に記録再生が可能な三次元光記録媒体、または(ii)光硬化性樹脂に光を照射して造形を行なう光造形装置、または(iii)入射光の透過光強度や進路を変更する光制限装置、または(iv)光照射により試料中の被分析物を検出する光検出方法、のそれぞれにおいて利用することで、高感度でかつ三次元的な高分解能を有する新規デバイスを提供することができる。これらは本発明の請求項7及至15の事項であって、以下にその詳細を記す。
インターネットやイントラネットなどのネットワークの拡大、1920×1080(垂直×水平)ドットの画像情報量をもつハイビジョンTVの普及、更にHDTV(HighDefinition Television)の放映が間近にひかえた今日、データのアーカイブ用途として民生では50GB以上、好ましくは100GB以上の記録媒体が要求されている。また、コンピューターや放送映像等のバックアップ用途としては、1TB程度あるいはそれ以上の大容量の情報を高速でかつ安価に記録可能な記録媒体が求められている。
そのような状況の中、究極の高密度、大容量記録媒体として注目される三次元光記録媒体は、入射光に対し垂直及び水平方向に記録/再生が可能な記録媒体であって、膜厚方向に何十、何百層もの記録層を重ねたり、或いは厚膜とすることで、光入射方向に対し何重にも記録再生が可能なため、CD、DVDのような従来の二次元記録媒体に比べ何十、何百倍もの超高密度、超高容量記録の可能性を秘めた記録媒体であると云われている。
前記のように、二光子吸収材料を用いた3次元光記録媒体としては、記録再生に蛍光性物質を用いて蛍光で読み取る方法(レヴィッチ、ユージーン、ポリス他、特許文献6:特表2001−524245号公報、パベル、ユージエン他、特許文献7:特表2000−512061号公報)、フォトクロミック化合物を用いて吸収または蛍光で読み取る方法(コロティーフ、ニコライ・アイ他、特許文献8:特表2001−522119号公報、アルセノフ、ヴラディミール他、特許文献9:特表2001−508221号公報)等が提案されているが、いずれも具体的な二光子吸収材料の提示はなく、また抽象的に提示されている二光子吸収化合物の例も二光子吸収効率の極めて小さい二光子吸収化合物を用いている。さらに、これらの特許文献に用いているフォトクロミック化合物は可逆材料であるため、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に問題があり、光記録媒体として実用性のある方式であるとは言えない。特に非破壊読出し、記録の長期保存性等の点では、不可逆材料を用いて反射率(屈折率または吸収率)または発光強度の変化で再生するのが好ましいが、このような機能を有する二光子吸収材料を具体的に開示している例はなかった。
また、河田聡、川田善正、特許文献10:特開平6−28672号公報、河田聡、川田善正他、特許文献11:特開平6−118306号公報には、屈折率変調により三次元的に記録する記録装置、及び再生装置、読み出し方法等が開示されているが、二光子吸収三次元光記録材料を用いた方法についての記載はない。
また更には、保護層と記録材料の間および/または基板と記録材料の間に、気密性を高めるための粘着剤または液状物質を存在させることもできる。さらに記録材料間の保護層(中間層)にあらかじめトラッキング用の案内溝やアドレス情報を付与しても良い。
図1(a)は平らな支持体(基板:11a)に、本発明の二光子吸収材料からなる記録層(13a)と、クロストーク防止用の中間層(14a)(保護層)を交互に50層積層させた三次元光記録媒体の例である。記録層の厚さは0.01〜0.5μm、中間層の厚さは0.1〜5μmが好ましく、この構造であれば今日普及しているCDやDVDと同じサイズで、テラバイト級の大容量の光記録媒体を実現することができる。
またここでは図示されていないが、記録媒体(図1a)において中間層の存在しないバルク状の記録媒体を作製し、ホログラム記録のようにページデータを一括記録することで、高転送レートを実現することも可能である。
なお、本発明に従って同様に形成される光記録媒体の形態としては、カード状、プレート状、テープ状、ドラム状等も考えられる。
光造形用二光子光硬化性樹脂とは、光を照射することにより二光子重合反応を起こし、液体から固体へと変化する特性を持った樹脂のことである。主成分はオリゴマーと反応性希釈剤からなる樹脂成分と光重合開始剤(必要に応じ光増感材料を含む)である。オリゴマーは重合度が2〜20程度の重合体であり、末端に多数の反応基を持つ。さらに、粘度、硬化性等を調整するため、反応性希釈剤が加えられている。光を照射すると、重合開始剤または光増感材料が二光子吸収し、重合開始剤から直接または光増感材料を介して反応種が発生し、オリゴマー、反応性希釈剤の反応基に反応して重合が開始される。その後、これらの間で連鎖的重合反応を起し三次元架橋が形成され、短時間のうちに三次元網目構造を持つ固体樹脂へと変化する。
光硬化性樹脂は光硬化インキ、光接着剤、積層式立体造形などの分野で使用されており、様々な特性を持つ樹脂が開発されている。特に、積層式立体造形においては反応性が良好であること、硬化時の堆積収縮が小さいこと、硬化後の機械特性が優れることが重要になっている。
本発明の二光子吸収材料は、このような要求を満たす、二光子吸収重合開始剤または二光子吸収光増感材料として用いることができる。本発明の二光子吸収材料は従来に比べ二光子吸収感度が高いため高速造形が可能となり、また二光子吸収現象を利用するため、微細で三次元的な造形を実現することができる。
図2は、本発明の二光子吸収材料を用いて光造形を行なう場合の光造形装置の一例である。
光源(21)からのパルスレーザー光を可動形式のミラー(22)及び集光レンズ(23)を介し本発明の二光子吸収材料(24)に集光すると、集光点近傍のみに光子密度の高い領域が形成される。このとき、ビームの各断面を通過するフォトンの総数は一定のため、焦点面内でビームを二次元的に走査した場合、各断面における光強度の総和は一定である。しかしながら、二光子吸収の発生確率は光強度の二乗に比例するため、光強度の大きい集光点近傍にのみ二光子吸収の発生の高い領域が形成される。集光点は可動形式のミラー(22)や可動ステージ(25)(ガルバノミラー及びZステージ)を制御することで光硬化樹脂液内において自由に変化させることができるため、任意の位置にナノメートルオーダーの精度で樹脂を局所的に硬化することができ、所望の三次元加工物を容易に形成することができる。
近年、大容量アーカイブ用途の記録媒体が求められる一方で、ユビキタスネットワークの実現に向けた光ファイバ通信の開発による情報伝送の高速化及び大容量化も求められている。その一つに、WDM(波長多重通信)と呼ばれる波長の異なる光の不干渉性を利用した大容量伝送技術が知られているが、そのWDMにおいては、特定の波長の光信号を合波或いは分波する素子が不可欠であり、そのための素子として光導波路が用いられている。光導波路においては、素子内部に、ある特定の屈折率分布などを形成させることで、電気回路中を電子が流れるように光信号をその分布に沿って導くことができる。このような波長による屈折率変化を利用する光導波路構造は、図2に示す光造形装置を用い、本発明の二光子吸収材料を含む薄膜、または本発明の二光子吸収材料を光硬化性樹脂等に分散させた固体物を光造形することで形成することができる。
また光導波路に関する公知文献としては、特開平08−320422号公報に光屈折率材料に光を照射して形成される光導波路をはじめ、特開2004−277416号公報、特開平11−167036号公報、特開2005−257741号公報等で開示されている。
(1)回折限界をこえる加工分解能
二光子吸収の光強度に対する非線形性によって、焦点以外の領域では光硬化性樹脂が硬化しない。このため照射光の回折限界を超えた加工分解能を実現できる。
(2)超高速造形
本発明の二光子吸収材料を用いて加工される造形物においては、従来に比べ、二光子吸収感度が高いため、ビームのスキャン速度を速くすることができる。
(3)三次元加工性
光硬化性樹脂は、二光子吸収を誘起する近赤外光に対して透明である。したがって焦点光を樹脂の内部へ深く集光した場合でも、内部硬化が可能である。従来のSIHでは、ビームを深く集光した場合、光吸収によって集光点の光強度が小さくなり、内部硬化が困難になる問題点が、本発明ではこうした問題点を確実に解決することができる。
(4)高い歩留り
従来法では樹脂の粘性や表面張力によって造形物が破損、変形するという問題があったが、本手法では、樹脂の内部で造形を行なうためこうした問題が解消される。
(5)大量生産への適用
超高速造形を利用することによって、短時間に、連続的に多数個の部品あるいは可動機構の製造が可能である。
光通信や光情報処理では、情報等の信号を光で搬送するためには変調、スイッチング等の光制御が必要になる。この種の光制御には、電気信号を用いた電気−光制御方法が従来採用されている。しかし電気−光制御方法は、電気回路のようなCR時定数による帯域制限、素子自体の応答速度や電気信号と光信号との間の速度の不釣合いで処理速度(>10ps)が制限されることなどの制約があり、光の利点である広帯域性や高速性を十分に生かすためには、光信号によって光信号を制御する光−光制御技術が非常に重要になってくる。この要求に応えるものとして本発明の二光子吸収材料を加工して作製した光学素子は、光を照射することで引き起こされる透過率や屈折率、吸収係数などの光学的変化を利用し、電子回路技術を用いずに光の強度や周波数を直接光で変調することで、光通信、光交換、光コンピューター、光インターコネクション等における高速光スイッチなどに応用することが可能である。
二光子吸収による光学特性変化を利用する本発明の光制限素子は、通常の半導体材料により形成される光制限素子や、一光子励起によるものに比べ、応答速度にはるかに優れた素子(<1ps)を提供することができ、また高感度ゆえに、S/N比の高い信号特性に優れた光制限素子を提供することができる。
一方、二光子吸収の非線形性を利用した光制限素子においては、超高速応答性に優れる、素子作製(組成、構造)が容易、対応波長域が広くは波長選択制が広い、偏波依存性がないといった利点がある。
制御光(41)及び信号光(42)から入射したレーザー光は、集光装置(43)(レンズ、凹面鏡など)により集光され、制御光(41)の強度が極めて強い場合のみ、保護層で挟持された本発明の二光子吸収材料からなる光学フィルター(44)内で吸収され、一光子励起波長の透過率が変化する。制御光(42)の強度がない場合または、弱い場合はそのまま通過し、コリメート装置(45)(レンズ、凹面鏡など)により迷光を除去するカラーフィルター(46)等を通して出射側にある光検出器(47)において検出される。即ち、このように二光子吸収の非線形性に伴う透過率の変化を利用することで、信号光を制御光の強弱で処理する高速応答の光スイッチングが可能となる。
制御光及び信号光は、集光装置により二光子吸収材料を主構成要素とする光制限素子に集光され、制御光がoffの場合は信号光がそのまま出力され、制御光がonの場合は信号光と共に二光子吸収され出力は無くなる。制御光のon/offにより、信号光の光スイッチが可能となる。
制御光及び信号光から入射したレーザー光は、集光装置により二光子吸収材料を主構成要素とする光導波路の分岐路部位に集光され、制御光の強度が極めて強い場合のみ光導波路の分岐路部位により吸収され、その部位の屈折率が変化する。二光子吸収による光導波路の分岐路部位の屈折率変化、信号光の光導波路の屈折率、および出力光の光導波路の屈折率を調整することにより出力光の光路を切り替えることができる。二光子吸収の非線形性に伴う屈折率の変化を利用することにより、例えば光導波路において、光路のスイッチングを行なうことが可能となる。
二光子励起蛍光検出法とは、二光子蛍光材料を結合させて標識した被分析物を含む試料に、近赤外のパルスレーザーを集光しながら走査し、被分析物が二光子励起されたときに発生する蛍光を検出することで三次元的に像を得る検出方法のことである。図7にそのような光検出デバイスの一例として、二光子励起蛍光顕微鏡を示した。
図7の装置は、近赤外域波長のサブピコ秒単色コヒーレントパルスを発生する光源(71)から、レーザー光を発生させ、ダイクロイックミラー(72)を経て、集光装置(73)により集光し、本発明の二光子吸収材料を結合させた被分析物を含む試料(74)中で焦点を結ばせることより、二光子蛍光を発生させる。試料上でレーザー光を操作し、各場所の蛍光強度を光検出器(76)で検出し、蛍光強度と得られた位置情報とをコンピューター上でプロットすることで、三次元蛍光像を得ることができる。この場合、該顕微鏡には所望の集光位置をレーザービームで走査するための走査機構が備えられており、例えばステージ(75)に置かれた試料を移動させても良く、また或いは可動ミラー(ガルバノミラーなど)を用いてレーザービームを走査しても良い。
このような構成をとる二光子励起蛍光顕微鏡は光軸方向に高分解能の像を得ることができるが、共焦点ピンホール板を用いることで、面内、光軸方向共にさらに分解能をあげることができる。
このような構成により、多光子吸収そのものの非線形効果を利用して、光軸方向の高分解能を得ることができる。加えて、共焦点ピンホール板を用いれば、さらなる高分解能(面内、光軸方向共)が得られる。
以下の合成法に従って、本発明のポリ(トリアリールアミン)誘導体を合成した。
50ml三つ口フラスコに、下記構造のジボロンエステル体0.938g(1.5mmol)、下記構造のジブロモ体0.861g(1.5mmol)、相間移動触媒として、Aliquat336(アルドリッチ社製)12.8mg(0.032mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム10.0mg(0.0087mmol)、トルエン9mlを加え、アルゴンガス置換した後、2M−炭酸ナトリウム水溶液を3.5ml加え、6時間還流したのち、停止反応として、まずフェニルボロン酸80mg(0.66mmol)を加え4時間還流し、次いでブロモベンゼン150mg(0.96mmol)を加え4時間還流した。その後、反応溶液を室温に戻した後、有機層をメタノール/水の混合溶媒中に滴下し再沈殿させることにより粗ポリマーを得た。得られたポリマーをクロロホルム溶液とし、イオン交換水でその洗浄液の導電率がイオン交換水と同等になるまで洗浄を繰り返した。洗浄後、ポリマーをテトラヒドロフラン溶液とし、メタノール中に滴下し再沈殿することによりポリマーを精製した。
このときの収量は0.925g、収率は79%であり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は35000、重量平均分子量は94000であった。
また元素分析値(計算値)は、C:76.244%(76.39%)、H:7.73%(7.56%)、N:1.92%(1.78%)、S:11.95%(12.23%)であった。図8に、赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)を示す。
このようにして合成した二光子吸収材料(下記式)のテトラハイドロフラン溶液を作製し、後述する二光子吸収断面積(σ2’)の測定方法に従って作製した溶液の評価を行なった。測定した二光子吸収スペクトルとσ2’の評価結果はそれぞれ図11及び表1に示した。
以下の合成法に従って、本発明のポリ(トリアリールアミン)誘導体を合成した。
50ml三つ口フラスコに、下記構造のジボロンエステル体0.938g(1.5mmol)、下記構造のジブロモ体1.237g(1.5mmol)、相間移動触媒として、Aliquat336(アルドリッチ社製)12.5mg(0.031mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム10.0mg(0.0087mmol)、トルエン9mlを加え、アルゴンガス置換した後、2M−炭酸ナトリウム水溶液を3.5ml加え、4時間還流したのち、停止反応として、まずフェニルボロン酸80mg(0.66mmol)を加え4時間還流し、次いでブロモベンゼン150mg(0.96mmol)を加え4時間還流した。その後、反応溶液を室温に戻した後、有機層をメタノール/水の混合溶媒中に滴下し再沈殿させることにより粗ポリマーを得た。得られたポリマーをクロロホルム溶液とし、イオン交換水でその洗浄液の導電率がイオン交換水と同等になるまで洗浄を繰り返した。洗浄後、ポリマーをテトラヒドロフラン溶液とし、メタノール中に滴下し再沈殿することによりポリマーを精製した。
このときの収量は1.10g、収率71%であり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は41400、重量平均分子量は116400であった。
また元素分析値(計算値)は、C:76.43%(76.47%)、H:8.46%(8.26%)、N:1.51%(1.35%)、S:12.23%(12.37%)であった。図9に赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)を示す。
このようにして合成した二光子吸収材料(下記式)のテトラハイドロフラン溶液を作製し、後述する二光子吸収断面積(σ2’)の測定方法に従って作製した溶液の評価を行なった。測定した二光子吸収スペクトルとσ2’の評価結果はそれぞれ図12及び表1に示した。
以下の合成方法に従って、下記式に示すトリアリールアミン誘導体のテトラハイドロフラン溶液を作製した。作製した溶液を後述する二光子吸収断面積の測定方法に従って評価を行ない、その評価結果を表1に示した。
実施例1の場合と同様に、以下の合成方法に従って、下記式に示すトリアリールアミン誘導体を合成し、そのテトラハイドロフラン溶液(0.0025%濃度)を作製した。作製した溶液を後述する二光子吸収断面積の測定方法に従って評価を行ない、その評価結果を表1に示した。
従来材料の例として、以下に示すジアリルエテン誘導体のテトラハイドロフラン溶液を作製し、同様にして二光子吸収断面積を測定した。評価結果を表1に示した。
大きな二光子吸収断面積を有する材料例として、以下のスチリル誘導体についても同様にして評価を行なった。
測定システム概略図を図10に示す。
測定光源:フェムト秒チタンサファイアレーザ
波長:720〜920nm
パルス幅:100fs
繰り返し周波数:80MHz
測定光パワー:500mW
測定方法:Zスキャン法
キュベット内径:1mm
集光レンズ:f=75mm
集光径:40μm
集光されている光路部分に試料溶液を充填した石英セルを置き、その位置を光路に沿って移動させることによりZ−scan測定を実施した。
透過率を測定し、その結果から理論式(1)により非線形吸収係数を求めた。
T=[ln(1+I0L0β)]/I0L0β・・・・(1)
(上記式中、Tは透過率(%)、I0は励起光密度[GW/cm2]、L0は試料セル長[cm]、βは非線形吸収係数[cm/GW]を示す。)
この非線形吸収係数βから、下記式(2)により二光子吸収断面積σを求めた。
(σの単位は1GM=1×10−50cm4・s・photon−1である。)
σ=1000×hνβ/NACβ・・・・(2)
(上記式中、hはプランク定数[J・s]、νは入射レーザ光の振動数[s−1]、NAはアボガドロ数、Cは溶液濃度[mol/L]を示す。)
いずれの実施例においても、比較例に示した従来材料と比べ、大きな二光子吸収断面積を有す高効率二光子吸収材料であることがわかった。
11a 基板(支持体)
11b 光源
12a 基板(支持体)
12b 光源
13a 記録層
13b 検出器
14a 中間層(保護層)
14b ピンホール
15a 光
(図2について)
21 光源
22 可動形式のミラー
23 集光レンズ
24 二光子吸収材料
25 可動ステージ
(図4について)
41 制御光
42 信号光
43 集光装置
44 光学フィルター
45 コリメート装置
46 カラーフィルター
47 検出器
(図7について)
71 光源
72 ダイクロイックミラー
73 集光装置
74 試料
75 ステージ
76 光検出器
Claims (15)
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料を含むことを特徴とする光記録材料。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料を含むことを特徴とする光造形材料。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料を含むことを特徴とする光制限材料。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料を含むことを特徴とする二光子励起蛍光材料。
- 平面上に形成され、該平面に対し水平、及び垂直方向に記録再生が可能な三次元光記録媒体において、請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料が、光記録が行なわれる記録層の少なくとも一部として含まれていることを特徴とする三次元光記録媒体。
- 光硬化性樹脂に光を照射して造形を行なう光造形装置において、請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料が、前記光硬化性樹脂の少なくとも一部として含まれていることを特徴とする光造形装置。
- 透過光強度を制限する素子を備えた光制限装置において、請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料が、前記素子の少なくとも一部として含まれていることを特徴とする光制限装置。
- 光の進路を制限する素子を備えた光制限装置において、請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料が、前記素子の少なくとも一部として含まれていることを特徴とする光制限装置。
- 試料中の被分析物に請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料を選択的に担持させ、前記二光子吸収材料を検出することによって、被分析物を検出することを特徴とする二光子励起蛍光検出装置。
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