JP4963367B2 - 二光子吸収材料 - Google Patents

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Description

本発明は二光子吸収材料に関し、高い二光子吸収断面積を有する二光子吸収単分子材料もしくは高分子材料に関する。
二光子吸収材料とは、非共鳴領域の波長において分子を励起する事が可能な材料で、この時、励起に用いた光子の2倍のエネルギー準位に、実励起状態が存在する材料のことである。
ところで、二光子吸収現象とは、三次の非線形光学効果の一種で、分子が二つのフォトンを同時に吸収して、基底状態から励起状態へ遷移する現象であり、古くから知られていたがJean−Luc Bredas等が1998年に分子構造とメカニズムの関係を解明して以来(Science,281,1653(1998))、近年になって二光子吸収能を有する材料に関する研究が進むようになった。
しかしながらこのような二光子同時吸収の遷移効率は、一光子吸収に較べて極めて低くく、極めて大きなパワー密度の光子を必要とするため、通常に使用されるレーザー光強度では殆ど無視され、ピーク光強度(最大発光波長における光強度)が高いモード同期レーザーのようなフェムト秒程度の極超短パルスレーザーを用いると、観察されることが確認されている。
二光子吸収の遷移効率は印加する光電場の二乗に比例する(二光子吸収の二乗特性)。このため、レーザーを照射した場合、レーザースポット中心部の電界強度の高い位置でのみ二光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では二光子の吸収は全く起こらない。三次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ二光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために二光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる一光子の線形吸収に比べて、二光子吸収は、この二乗特性に由来して空間内部のピンポイントのみでしか励起が起こらないため、空間分解能が著しく向上する。
この特性を利用して、記録媒体の所定の位置に二光子吸収によりスペクトル変化、屈折率変化または偏光変化を生じさせ、ビットデータを記録する三次元メモリの研究が進められている。二光子吸収は、光の強度の二乗に比例して生じるため、二光子吸収を利用したメモリは、一光子吸収を利用したメモリに比べて、スポットサイズを小さくすることができ、超解像記録が可能となる。その他この二乗特性に由来する高い空間分解能の特性から、光制限材料、光造形用光硬化樹脂の硬化材料、二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料などの用途への開発も進められている。
さらに、二光子吸収を誘起する場合には、化合物の線形吸収帯が存在する波長領域よりも長波長でかつ吸収の存在しない、近赤外領域の短パルスレーザーを用いることが可能である。化合物の線形吸収帯が存在しない、いわゆる透明領域の近赤外光を用いるため、励起光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、かつ二光子吸収の二乗特性のために試料内部のピンポイントを高い空間分解能で励起できるため、二光子吸収及び二光子発光は生体組織の二光子造影や二光子フォトダイナミックセラピー(PDT)などの光化学療法応用面でも期待されている。また、二光子吸収、二光子発光を用いると、入射した光子のエネルギーよりも高いエネルギーの光子を取り出せるため、波長変換デバイスという観点からアップコンバージョンレージングに関する研究も報告されている。
二光子吸収材料としてはこれまでに多数の無機材料が見出されてきた。ところが無機物においては、所望の二光子吸収特性や、素子製造のために必要な諸物性を最適化するためのいわゆる分子設計が困難であることから実用するのは非常に困難であった。一方、有機化合物は分子設計により所望の二光子吸収の最適化が可能であるのみならず、その他の諸物性のコントロールも可能であるため、実用の可能性が高く、有望な二光子吸収材料として注目を集めている。
従来の有機系二光子吸収材料としては、ローダミン、クマリンなどの色素化合物、ジチエノチオフェン誘導体、オリゴフェニレンビニレン誘導体などの化合物が知られている。しかしながら、分子あたりの二光子吸収能を示す二光子吸収断面積が小さく、特にフェムト秒パルスレーザーを用いた場合の二光子吸収断面積は、200(GM:×10−50cm・s・molecule−1・photon−1)未満のものが殆どで工業的な実用化には至っていない。
最近、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映も間近にひかえて、民生用途においても50GB以上、好ましくは100GB以上の画像情報を安価簡便に記録するための大容量記録媒体の要求が高まっている。さらにコンピューターバックアップ用途、放送バックアップ用途等、業務用途においては、1TB程度あるいはそれ以上の大容量の情報を高速かつ安価に記録できる光記録媒体が求められている。そのような中、DVD±Rのような従来の2次元光記録媒体は物理原理上、たとえ記録再生波長を短波長化したとしてもせいぜい25GB程度で、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量が期待できるとは言えない状況である。
そのような状況の中、究極の高密度、高容量記録媒体として、三次元光記録媒体が俄然、注目されてきている。三次元光記録媒体は、三次元(膜厚)方向に何十、何百層もの記録を重ねることで、従来の二次元記録媒体の何十、何百倍もの超高密度、超高容量記録を達成しようとするものである。三次元光記録媒体を提供するためには、三次元(膜厚)方向の任意の場所にアクセスして書き込みできなければならないが、その手段として、二光子吸収材料を用いる方法とホログラフィ(干渉)を用いる方法とある。二光子吸収材料を用いる三次元光記録媒体では、上記で説明した物理原理に基づいて何十、何百倍にもわたっていわゆるビット記録が可能であって、より高密度記録が可能であり、まさに究極の高密度、高容量光記録媒体であると言える。
二光子吸収材料を用いた3次元光記録媒体としては、記録再生に蛍光性物質を用いて蛍光で読み取る方法(特許文献1、特許文献2参照)、フォトクロミック化合物を用いて吸収または蛍光で読み取る方法(特許文献3、特許文献4参照)等が提案されているが、いずれも具体的な2光子吸収材料の提示はなく、また抽象的に提示されている二光子吸収化合物の例も2光子吸収効率の極めて小さい二光子吸収化合物を用いている。
さらに、これらの特許文献に用いているフォトクロミック化合物は可逆材料であるため、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に問題があり、光記録媒体として実用性のある方式であるとは言えない。特に非破壊読出し、記録の長期保存性等の点では、不可逆材料を用いて反射率(屈折率または吸収率)または発光強度の変化で再生するのが好ましいが、このような機能を有する2光子吸収材料を具体的に開示している例はなかった。
また、特許文献5、特許文献6には、屈折率変調により三次元的に記録する記録装置、及び再生装置、読み出し方法等が開示されているが、二光子吸収三次元光記録材料を用いた方法についての記載はない。
しかしながら、従来技術においては次のような問題点があった。
1)二光子吸収現象を利用すると、極めて高い空間分解能を特徴とする種々の応用が可能となるが、現時点で利用可能な二光子吸収化合物では二光子吸収能が低いため、二光子吸収を誘起する励起光源としては高価な非常に高出力のレーザが必要である。従って、小型で安価なレーザを使って、二光子吸収を利用した実用用途を実現するためには、高効率の二光子吸収材料の開発が必須である。
2)二光子吸収材料を固体として用いる場合、これまでは高分子中に分散させて使用していた。しかしながら長期保存時に二光子吸収材料の結晶化やマイグレーションによる偏析等による塗膜欠陥が発生し、品質が変化する不具合があった。
上に述べたように、非共鳴2光子吸収により得た励起エネルギーを用いて反応を起こし、その結果レーザー焦点(記録)部と非焦点(非記録)部で光を照射した際の発光強度を書き換えできない方式で変調することができれば、三次元空間の任意の場所に極めて高い空間分解能で発光強度変調を起こすことができ、究極の高密度記録媒体と考えられる3次元光記録媒体への応用が可能となる。さらに、非破壊読み出しが可能で、かつ不可逆材料であるため良好な保存性も期待でき実用的である。
しかし、現時点で利用可能な二光子吸収化合物では、二光子吸収能が低いため、光源としては非常に高出力のレーザーが必要で、かつ記録時間も長くかかる。特に三次元光記録媒体に使用するためには、速い転送レート達成のために、高感度にて発光能の違いによる記録を二光子吸収により行うことができる二光子吸収三次元光記録材料の構築が必須である。そのためには、高効率に二光子を吸収し励起状態を生成することができる二光子吸収化合物と、二光子吸収化合物励起状態を用いて何らかの方法にて二光子吸収光記録材料の発光能の違いを効率的に形成できる記録成分を含む材料が有力であるが、そのような材料は今までほとんど開示されておらず、そのような材料の構築が望まれていた。
特表2001−524245号公報(レヴィッチ、ユージーン、ポリス他) 特表2000−512061号公報(パベル、ユージエン他) 特表2001−522119号公報(コロティーフ、ニコライ・アイ他) 特表2001−508221号公報(アルセノフ、ヴラディミール他) 特開平6−28672号公報(河田聡、川田善正) 特開平6−118306号公報(河田聡、川田善正他)
本発明の目的は、
1)スペクトル、屈折率または偏光状態の変化を、高感度に実現する、効率良く二光子を吸収する有機材料、すなわち二光子吸収断面積の大きな有機材料を提供する。
2)長期保存時にも塗膜欠陥(結晶化、マイグレーション)が発生しない品質の安定した二光子吸収断面積の大きな有機材料を提供する。
本発明の目的は、二光子吸収断面積が大きい二光子吸収化合物を少なくとも有し、二光子吸収化合物の二光子吸収を利用して書き換えできない方式で記録を行った後、光を記録材料に照射してその発光強度の違いを検出することにより再生することを特徴とする二光子吸収光記録材料を用いた二光子吸収三次元光記録材料を提供するものである。
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構成単位を含有するアリールアミン化合物及びその重合体により上記課題が解決されることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下に記載するとおりの二光子吸収材料である。
)下記一般式(III)で表される二光子吸収材料。
Figure 0004963367
(上記式中、
Arは置換若しくは無置換の、チオフェン、ビフェニル、フルオレン又はアントラセンの二価基であり、
Ar及びArはそれぞれ独立に置換又は無置換の芳香族炭化水素基であり、
x及びyは1以上4以下の整数であり、zは1以上5以下の整数であり、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基又は置換若しくは無置換のアルキルチオ基であり、
は水素基、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基又は置換若しくは無置換のアリール基であり、
かつ、前記x、前記y及び前記zが2以上である場合、複数個の前記R、前記R及び前記Rはそれぞれ独立している
)下記一般式(IV)で表される二光子吸収材料。
Figure 0004963367
(上記式中、
Arは置換若しくは無置換の、ベンゼン、チオフェン、ビフェニル、フルオレン又はアントラセンの二価基であり、
Ar及びArはそれぞれ独立に置換又は無置換の芳香族炭化水素基であり、
vは1以上3以下の整数であり、w、x及びyは1以上4以下の整数であり、
、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基又は置換若しくは無置換のアルキルチオ基であり、
かつ、前記v、前記w、前記x及び前記yが2以上である場合、複数個の前記R、前記R、前記R及び前記Rがそれぞれ独立している二光子吸収材料。
)下記一般式(V)で表される二光子吸収材料。
Figure 0004963367
(上記式中、
Arは置換若しくは無置換の、ベンゼン、チオフェン、ビフェニル、フルオレン又はアントラセンの二価基であり、
Ar及びArはそれぞれ独立に置換又は無置換の芳香族炭化水素基であり、
vは1以上3以下の整数であり、w、x及びyは1以上4以下の整数であり、
、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基又は置換若しくは無置換のアルキルチオ基であり、
かつ、前記v、前記w、前記x及び前記yが2以上である場合、複数個の前記R、前記R、前記R及び前記Rがそれぞれ独立している二光子吸収材料。
)下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位を有する重合体からなる二光子吸収材料。
Figure 0004963367
(上記式中、
Arは置換若しくは無置換の、ベンゼン、チオフェン、ビフェニル、フルオレン又はアントラセンの二価基であり、
x及びyは1以上4以下の整数であり、zは1以上5以下の整数であり、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基又は置換若しくは無置換のアルキルチオ基であり、
は水素基、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基又は置換若しくは無置換のアリール基であり、
かつ、前記x、前記y及び前記zが2以上である場合、複数個の前記R、前記R及び前記Rはそれぞれ独立している。)
)下記一般式(IX)で表される繰り返し単位を有する重合体からなる二光子吸収材料。
Figure 0004963367
(上記式中、
Arは置換若しくは無置換の、ベンゼン、チオフェン、ビフェニル、フルオレン又はアントラセンの二価基であり、
vは1以上3以下の整数であり、w、x及びyは1以上4以下の整数であり、
、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基又は置換若しくは無置換のアルキルチオ基であり、
かつ、前記v、前記w、前記x及び前記yが2以上である場合、複数個の前記R、前記R、前記R及び前記Rがそれぞれ独立している。)
)下記一般式(X)で表される繰り返し単位を有する重合体からなる二光子吸収材料。
Figure 0004963367
(上記式中、
Arは置換若しくは無置換の、ベンゼン、チオフェン、ビフェニル、フルオレン又はアントラセンの二価基であり、
vは1以上3以下の整数であり、w、x及びyは1以上4以下の整数であり、
、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基又は置換若しくは無置換のアルキルチオ基であり、
かつ、前記v、前記w、前記x及び前記yが2以上である場合、複数個の前記R、前 記R、前記R 及び前記Rがそれぞれ独立している二光子吸収材料。
)上記(1)〜()のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む三次元メモリ材料。
)上記(1)〜()のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む光制限材料。
)上記(1)〜()のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む光造形用光硬化樹脂の硬化材料。
10)上記(1)〜()のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料。
1)光子吸収の遷移効率が高い二光子吸収化合物が実現でき、小型で安価なレーザを使った実用用途(三次元メモリ材料、光制限材料、光造形用光硬化樹脂の硬化材料、光化学療法用材料、二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料など)が実現可能となる。
2)二光子吸収能を有する部位を連結した二光子吸収重合体とすることで、長期保存でも塗膜欠陥が発生せず、安定した品質が得られる。
まず、本発明の二光子吸収材料について説明する。
本発明の二光子吸収材料は上記一般式(I)〜(V)で表されるアリールアミン化合物の構造を基本構造としており、この構造により、効率良く二光子を吸収することができる。
また、本発明の二光子吸収材料は、上記一般式(V)〜(X)で表される繰り返し単位を有する重合体の形態で好ましく使用することができる。
そこで、以下ではアリールアミン系二光子吸収重合体の製造法について説明する。
本発明の二光子吸収重合体の製造方法は、例えばアルデヒドとホスホネートを用いたWittig−Horner反応、アルデヒドとホスホニウム塩を用いたWittig反応、ビニル置換体とハロゲン化物を用いたHeck反応、アミンとハロゲン化物を用いたUllmann反応などを用いることができ、公知の方法により製造可能である。特にWittig−Horner反応およびWittig反応は反応操作の簡便さから有効である。
一例としてWittig−Horner反応を用いた本発明における重合体の製造方法について説明する。
本発明における重合体は、下記の反応式で示されるように、ホスホン酸エステル化合物およびアルデヒド化合物が化学量論的に等しく存在する溶液と、その2倍モル量以上の塩基を混合させることにより重合反応が進行し、得ることができる。
本発明の二光子吸収重合体を製造する場合には、例えば、Aとしてアリールアミン部位、BとしてArの組み合わせのモノマーを用いるか、またはAとしてAr、Bとしてアリールアミン部位の組み合わせのモノマーを用いればよい。
Figure 0004963367
上記ジアルデヒド化合物は、公知の種々の反応により合成することが可能である。例として下記Vilsmeier反応、
Figure 0004963367
あるいは、アリールリチウム化合物と、DMF 、N −ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン等をはじめとするホルミル化剤との反応、
Figure 0004963367
あるいは、下記Gatterman 反応、
Figure 0004963367
あるいは、ヒドロキシメチル化合物の各種酸化反応、
Figure 0004963367
等を挙げることができ、これら反応を用いてジアルデヒド化合物を合成することができる。
また、上記ホスホン酸ジエステル化合物についても、公知の種々の反応により合成することが可能であるが、下記Michaelis−Arbuzov 反応が特に容易である。
Figure 0004963367
上記反応に使用する塩基はホスホネートカルボアニオンが形成されるものであれば特に限定されず、金属アルコシド、金属ヒドリド、有機リチウム化合物等が挙げられ、例えばカリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、リチウムt−ブトキシド、カリウム2−メチル−2−ブトキシド、ナトリウム2−メチル−2−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウムメトキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、フェニルリチウム、リチウムナフチリド、リチウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド等を挙げることができる。
反応に用いる塩基の量は、通常ホスホン酸エステル化合物の重合活性点に対して同量使用するだけでよいが、さらに過剰量用いても支障ない。
上記の塩基は固形状態や懸濁溶液の状態で反応系内に添加してもよいが、得られる重合体の均質性が良好になる為に、特に均一溶液として添加する事が好ましい。塩基を溶解する溶媒としては、使用する塩基と安定な溶液を形成する溶媒を選択しなければならないが、その他の要因として塩基の溶解度が高いものがよく、また反応系で生成する高分子量体の反応溶媒に対する溶解性を損ねないものがよく、さらに生成する高分子量体が良好に溶解する溶媒がよく、用いる塩基と製造する高分子量体の特性に応じて、一般に知られているアルコール系、エーテル系、アミン系、炭化水素系溶媒等から任意に選択することができる。
塩基とそれを均一に溶解する溶媒の組み合わせとしては、例えばナトリウムメトキシドのメタノール溶液、ナトリウムエトキシドのエタノール溶液、カリウムt−ブトキシドの2−プロパノール溶液、カリウムt−ブトキシドの2−メチル−2−プロパノール溶液、カリウムt−ブトキシドのテトラヒドロフラン溶液、カリウムt−ブトキシドのジオキサン溶液、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液、メチルリチウムのエーテル溶液、リチウムt−ブトキシドのテトラヒドロフラン溶液、リチウムジイソプロピルアミドのシクロヘキサン溶液、カリウムビストリメチルシリルアミドのトルエン溶液等をはじめとして、種々の組み合わせの溶液が挙げられ、幾つかの溶液は市販品として容易に入手することができる。温和な反応条件、取り扱いの容易さの観点から好ましくは金属アルコキシド系の溶液が用いられ、生成する重合体の溶解性、取り扱いの容易さ、反応の効率性、生成する重合体の溶解性等の観点からより、好ましくは金属t−ブトキシドのエーテル系溶液が用いられ、さらに好ましくはカリウムt−ブトキシドのテトラヒドロフラン溶液が用いられる。
上記重合反応はホスホン酸エステル化合物およびアルデヒド化合物の溶液に塩基溶液を添加してもよく、塩基溶液にホスホン酸エステル化合物およびアルデヒド化合物の溶液を加えてもよく、同時に反応系に加えてもよく、添加の順序に制約はない。
上記重合反応における重合時間は、用いられるモノマーの反応性、または望まれる重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよいが、0.2時間〜30時間が好適である。
上記重合反応における反応温度は特に制御する必要なく室温において良好に重合反応が進行するが、反応効率をより上げるために加熱したり、または冷却してより温和な条件にすることも可能である。
また、以上の重合操作において分子量を調節するために分子量調節剤、または末端修飾基として重合体の末端を封止するための封止剤を反応途中で反応系に添加することも可能であり、反応開始時に添加しておくことも可能である。従って、本発明におけるアリールアミン重合体の末端には停止剤に基づく置換基が結合してもよい。
分子量調節剤、末端封止剤としては、ベンジルホスホン酸ジエチル、ベンズアルデヒド等、反応活性基を1個有する化合物が挙げられる。
本発明の重合体の好ましい分子量はポリスチレン換算数平均分子量で1000〜1000000であり、より好ましくは2000〜500000である。分子量が小さすぎる場合にはクラックの発生等成膜性が悪化し実用性に乏しくなる。また分子量が大きすぎる場合には、一般の有機溶媒への溶解性が悪くなり、溶液の粘度が高くなって塗工が困難になり、やはり実用性上問題になる。
また、機械的特性を改良するために重合時に分岐化剤を少量加えることもできる。使用される分岐化剤は、重合反応活性基を3つ以上(同種でも異種でもよい)有する化合物である。これらの分岐化剤は単独で使用してもよく、また複数併用してもよい。
以上のようにして得られたアリールアミン重合体は、重合に使用した塩基、未反応モノマー、末端停止剤、又、重合中に発生した無機塩等の不純物を除去して使用される。これら精製操作は再沈澱、抽出、ソックスレー抽出、限外濾過、透析等をはじめとする従来公知の方法を使用できる。
次に本発明の二光子吸収性化合物(I)〜(V)及び重合体の繰り返し単位(VI)〜(X)について詳細に説明する。
本発明において、「芳香族炭化水素基」とは、ベンゼン核を有する化合物群の総称として参照している。
前記一般式(I)及び(VI)における置換又は無置換の芳香族炭化水素基Arとしては単環基、多環基(縮合多環基、非縮合多環基)の何れでもよく、一例として以下のものを挙げることができる。
例えばフェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などが挙げられる。前記一般式(VI)における置換又は無置換の芳香族炭化水素基の二価基Ar、Arとしては、一例として上記の置換又は無置換の芳香族炭化水素基の二価基が挙げられる。
また、これら環状構造を有する基(Ar、Ar、Ar及びAr)は、以下の通り、種々の置換基を有していてもよい。
(1)ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基。
(2)炭素数1〜25 の直鎖または分岐鎖の、アルキル基、アルコキシ基。これらはさらにハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルチオ基で置換されていてもよい。
(3)アリールオキシ基。(アリール基としてフェニル基、ナフチル基を有するアリールオキシ基が挙げられる。これらは、ハロゲン原子を置換基として含有しても良く、炭素数1〜25の直鎖または分岐鎖の、アルキル基、アルコキシ基、又はアルキルチオ基を含有していても良い。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、6−メチル−2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。)
(4)アルキルチオ基又はアリールチオ基。(アルキルチオ基又はアリールチオ基としては、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。)
(5)アルキル置換アミノ基。(具体的には、ジエチルアミノ基、N −メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(p−トリル)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる。)
(6)アシル基。(アシル基としては、具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリ
ル基、マロニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。)
本発明の二光子吸収性化合物(I)〜(V)及び重合体(VI)〜(X)は芳香環上にハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基を置換基として有していてもよく、溶媒への溶解性向上の観点からは、置換基もしくは無置換の、アルキル基やアルコキシ基、アルキルチオ基を有する事が好ましい。これら置換基の炭素数が増加すれば溶解性はより向上するが、その反面、電荷輸送性等の特性は低下してしまうため、溶解性が損なわれない範囲で所望の特性が得られるような置換基を選択することが好ましい。その場合の好適な置換基の例としては炭素数が1〜25の、アルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基が挙げられる。これら置換基は同一のものを複数導入してもよいし、異なるものを複数導入してもよい。また、これらのアルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基はさらにハロゲン原子、シアノ基、アリール基、ヒドロキシル基、カルボキシル基または、炭素数1〜12 の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、アルコキシ基あるいはアルキルチオ基で置換されたアリール基を含有していてもよい。
アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、2 −シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を一例として挙げることができ、アルコキシ基、アルキルチオ基としては上記アルキル基の結合位に酸素原子または硫黄原子を挿入してアルコキシ基、アルキルチオ基としたものが一例として挙げられる。
本発明の二光子吸収材料はそれそのもの単独もしくは各種の樹脂との混合の薄膜、あるいはバルクで種々のデバイスへの応用が可能である。
例えば、光ディスクでは上記薄膜が基板と接しており、その基板材料はポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラス等である。また、積層する場合であれば、中間層(仕切層)に該薄膜表面が接している。中間層の具体例としてはポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートまたはセロファンフィルムなどのプラスチック製のフィルムまたは種々の光硬化樹脂等が挙げられる。
次に、各種光学デバイス、光造形デバイスに応用するにしても、各種樹脂に混合されているか、光硬化樹脂に混合され用いる。
従って、本発明の二光子吸収材料の使用要件としては、該材料が各種樹脂、またはガラスに混合されているか、二光子吸収材料層界面が各種樹脂、またはガラスに接していることである。
言い換えれば、本発明の二光子吸収材料はミクロレベル、又はマクロレベルで各種樹脂、又はガラスに接している構成となっている。
(二光子吸収材料を用いた三次元多層光メモリへの応用)
本発明の二光子吸収材料は、スピンコーター、ロールコーターまたはバーコーターなどを用いることによって基板上に直接塗布することも、あるいはフィルムとしてキャストしついで通常の方法により基板にラミネートすることもでき、それらにより2光子吸収光記録材料とすることができる。
ここで、「基板」とは、任意の天然又は合成支持体、好適には柔軟性又は剛性フィルム、シートまたは板の形態で存在することができるものを意味する。
基板として好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、樹脂下塗り型ポリエチレンテレフタレート、火炎又は静電気放電処理されたポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラス等である。また、この基板にはあらかじめ、トラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであっても良い。
使用した溶媒は乾燥時に蒸発除去することができる。蒸発除去には加熱や減圧を用いても良い。
さらに、二光子吸収光記録材料の上に、酸素遮断や層間クロストーク防止のための保護層(中間層)を形成してもよい。保護層(中間層)は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートまたはセロファンフィルムなどのプラスチック製のフィルムまたは板を静電的な密着、押し出し機を使った積層等により貼合わせるか、前記ポリマーの溶液を塗布してもよい。また、ガラス板を貼合わせてもよい。また、保護層と感光膜の間および/または、基材と感光膜の間に、気密性を高めるために粘着剤または液状物質を存在させてもよい。さらに感光膜間の保護層(中間層)にもあらかじめ、トラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであっても良い。
上述した三次元多層光記録媒体の任意の層に焦点を合わせ、記録再生を実施することで、本発明の三次元メモリ材料として機能する。また、層間を保護層(中間層)で区切っていなくとも、二光子吸収色素特性から深さ方向の三次元記録が可能である。
以下、三次元多層光メモリの好ましい実施形態(具体例)を示すが、本発明はこれらの実施形態により何ら限定されず、三次元記録(平面及び膜厚方向に記録)が可能な構造であれば、他にどのような構造であっても構わない。三次元多層光メモリの記録/再生のシステム概略図を図1−(a)に、記録媒体の概略断面図を図1−(b)に示す。
図中(b)の記録媒体においては、平らな支持体(基板1)に本発明の二光子吸収化合物を用いた記録層と、クロストーク防止用の中間層(保護層)が交互に50層ずつ積層され、各層はスピンコート法により成膜されている。記録層の厚さは0.01〜0.5μ、中間層の厚さは0.1μ〜5μが好ましく、この構造であれば、現在普及しているCD/DVDと同じディスクサイズで、テラバイト級の超高密度光記録が実現できる。更にデータの再生方法(透過/或いは反射型)により、基板1と同様の基板2(保護層)、或いは高反射率材料からなる反射層が構成される。
記録時は単一ビームが使用され、この場合フェムト秒オーダーの超短パルス光を利用することができる。また再生時は、データ記録に使用するビームとは異なる波長、或いは低出力の同波長の光を用いることもできる。記録及び再生は、ビット単位/ページ単位のいずれにおいても実行可能であり、面光源や二次元検出器等を利用する並行記録/再生は、転送レートの高速化に有効である。
なお、本発明に従い同様に形成される三次元多層光メモリの形態としては、カード状、プレート状、テープ状、ドラム状等が考えられる。
(二光子吸収材料を用いた光制限素子への応用)
光通信や光情報処理では、情報等の信号を光で搬送するためには変調、スイッチング等の光制御が必要になる。この種の光制御には、電気信号を用いた電気−光制御方法が従来採用されている。しかし電気−光制御方法は、電気回路のようなCR時定数による帯域制限、素子自体の応答速度や電気信号と光信号との間の速度の不釣合いで処理速度が制限されることなどの制約があり、光の利点である広帯域性や高速性を十分に生かすためには、光信号によって光信号を制御する光−光制御技術が非常に重要になってくる。この要求に応えるものとして本発明の二光子吸収材料を加工して作製した光学素子は、光を照射する事で引き起こされる透過率や屈折率、吸収係数などの光学的変化を利用し、電子回路技術を用いずに光の強度や周波数を変調することで、光通信、光交換、光コンピューター、光インターコネクション等における光スイッチなどに応用する事が可能である。
二光子吸収による光学特性変化を利用する本発明の二光子吸収材料の光学特性変化を利用する光制限素子は、通常の半導体材料により形成される光制限素子や、一光子励起によるものに比べ、応答速度にはるかに優れた素子を提供することができる。また高感度ゆえに、S/N比の高い信号特性に優れた光制限素子を提供することができる。
図2は、本発明の二光子吸収材料を、二光子励起し得る波長の制御光により二光子励起させることによって、一光子励起し得る波長の信号光を光スイッチングする光制御素子の一例である。保護層で狭持された二光子吸収材料の形態を示すが、この構成が本発明を限定するものではない。
本発明における光制限素子の公知文献として特開平8−320422号公報が挙げられる。これによると光照射により屈折率が変化する光屈折率材料に、その屈折率が変化する波長の光を照射してフォーカシングを行い、屈折率分布を形成する光導波路として開示されている。すなわち、本発明の高い二光子吸収能を有した材料、薄膜、もしくは光硬化性樹脂等に分散させた固体物を光学素子として配置し、ひとつの波長(λ1)の光で励起状態に励起され、さらにその状態から他の波長(λ2)の光で他の状態に励起されるこにより波長による屈折率変化分布を利用した光導波路の設計が可能となる。また、二光子吸収材料はその多くが蛍光を有するものが多く、光デバイスの一方の出射端またはその近傍に蛍光物質を配置し、他方から励起光(λ1)を出射させ、励起光と蛍光(λ2)で屈折率分布を形成することもできる。この場合、通常蛍光の方が励起光より弱いので、感度は蛍光の波長において大きくすることが望ましい。蛍光物質としては、蛍光色素を光硬化性物質に分散させたものなどが例示される。
(光造形用材料への応用)
二光子光造形法の装置の概略図を図3に示し、以下に説明する。
近赤外パルスレーザ光源1からの光をミラースキャナー5を通した後、レンズを用いて光硬化性樹脂9中に集光させレーザスポットを走査し、二光子吸収を誘起することによって焦点近傍のみにおいて樹脂を硬化させて任意の三次元構造を形成する二光子マイクロ光造形方法である。
パルスレーザ光をレンズで集光して、集光点近傍にフォトンの密度の高い領域を形成する。このときビームの各断面を通過するフォトンの総数は一定なので、焦点面内でビームを二次元的に走査した場合、各断面における光強度の総和は一定である。しかしながら、二光子吸収の発生確率は、光強度の二乗に比例するため、光強度の大きい集光点近傍にのみ、二光子吸収の発生の高い領域が形成される。このように、パルスレーザ光をレンズによって集光させ二光子吸収を誘起することで、集光点近傍に光吸収を限定し、ピンポイント的に樹脂を硬化させることが可能となる。集光点はZステージ6とガルバノミラーによって光硬化樹脂液内を自由に移動させることができるため、光硬化性樹脂液内において目的とする三次元加工物を自在に形成することができる。
二光子光造形法の特徴としては、以下の項目が挙げられる。
1)回折限界をこえる加工分解能:二光子吸収の光強度に対する非線形性によって、光の回折限界を超えた加工分解能を実現できる。
2)超高速造形:二光子吸収を利用した場合、焦点以外の領域では、光硬化性樹脂が原理的にも硬化しない。このため照射させる光強度を大きくし、ビームのスキャン速度を速くすることができる。このため、造形速度を約10倍向上することができる。
3)三次元加工:光硬化性樹脂は、二光子吸収を誘起する近赤外光に対して透明である。したがって焦点光を樹脂の内部へ深く集光した場合でも、内部硬化が可能である。従来のSIHでは、ビームを深く集光した場合、光吸収によって集光点の光強度が小さくなり、内部硬化が困難になる問題点が、本発明ではこうした問題点を確実に解決することができる。
4)高い歩留り:従来法では樹脂の粘性や表面張力によって造形物が破損、変形するという問題があったが、本手法では、樹脂の内部で造形を行うのでこうした問題は解消される。
5)大量生産への適用:超高速造形を利用することによって、短時間に、連続的に多数個の部品あるいは可動機構の製造が可能である。
二光子光造形用光硬化性樹脂とは、光を照射することにより二光子重合反応を起こし、液体から固体へと変化するという特性を持った樹脂である。主成分はオリゴマーと反応性希釈剤からなる樹脂成分と光重合開始剤(必要に応じ光増感材料を含む)である。オリゴマーは重合度が2〜20程度の重合体であり、末端に多数の反応基を持つ。さらに、粘度、硬化性等を調整するため、反応性希釈剤が加えられている。光を照射すると、重合開始剤または光増感材料がこれを二光子吸収し、重合開始剤から直接または光増感材料を介して反応種が発生し、オリゴマー、反応性希釈剤の反応基に反応し、重合を開始させる。その後これらの間で連鎖的重合反応を起こし三次元架橋が形成され、短時間のうちに三次元網目構造を持つ固体樹脂へと変化する。
光硬化性樹脂は光硬化インキ、光接着剤、積層式立体造形などの分野で使用されており、様々な特性を持つ樹脂が開発されている。特に、積層式立体造形においては(1)反応性が良好であること、(2)硬化時の堆積収縮が小さいこと、(3)硬化後の機械特性が優れていること、等が重要である。これらの特性は本手法においても同様に重要であり、そのため、積層式立体造形用に開発された樹脂で二光子吸収特性を有するものは本手法の二光子光造形用光硬化性樹脂としても使用できる。その具体的な例としては、アクリレート系及びエポキシ系の光硬化性樹脂が良く用いられ、特にウレタンアクリレート系の光硬化性樹脂が好ましい。
本発明における光造形に関する公知文献として特開2005−134873号公報が挙げられる。これによると感光性高分子膜の表面に、パルスレーザー光を、マスクを介さずに干渉露光させている。前記パルスレーザー光としては、前記感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域のパルスレーザー光であることが重要である。従って、パルスレーザー光としては、感光性高分子の種類、または、感光性高分子における感光性機能を発揮する基又は部位の種類などに応じて、その波長領域を適宜選択することができる。特に、光源から発光されるパルスレーザー光の波長が、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域でなくても、パルスレーザー光の照射に際して、多光子吸収過程を利用することにより、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させることが可能となる。
具体的には、光源から発光されるパルスレーザー光を集光して、集光されたパルスレーザー光を照射すると、多光子の吸収(例えば、二光子の吸収、三光子の吸収、四光子の吸収、五光子の吸収など)が生じ、これにより、光源から発光されるパルスレーザー光の波長が、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域でなくても、感光性高分子膜には、実質的に、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域のパルスレーザー光が照射されたことになる。このように、干渉露光するパルスレーザー光は、実質的に、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域となるパルスレーザー光であればよく、照射条件などにより、その波長を適宜選択することができる。たとえば、本発明の高効率二光子吸収材料を光増感材料とし、紫外線硬化樹脂等に分散し、感光物固体としこの感光物固体の二光子吸収能を利用して焦点スポットのみが硬化する特性を利用した超精密三次元造形物を得ることが可能となる。
本発明の二光子吸収材料は、二光子吸収重合開始剤または二光子吸収光増感材料として用いることが出来る。従来の二光子吸収材料(二光子吸収重合開始剤または二光子吸収光増感材料)に比較し、二光子吸収感度が高いため、高速造形が可能で、励起光源としても小型で安価なレーザ光源が使用できるため、大量生産可能な実用用途への展開が可能となる。
(二光子吸収材料を用いた二光子蛍光顕微鏡への応用)
二(多)光子励起レーザ走査顕微鏡とは、近赤外パルスレーザを標本面上に集光し走査させて、そこでの二(多)光子吸収により励起されて発生する蛍光を検出することにより像を得る顕微鏡である。
二光子励起レーザ走査顕微鏡の基本構成の概略図を図4に示す。
近赤外域波長のサブピコ秒の単色コヒーレント光パルスを発するレーザ光源1と、レーザ光源からの光束を所望の大きさに変える光束変換光学系2と、光束変換光学系で変換された光束を対物レンズの像面に集光し走査させる走査光学系3と、集光された上記変換光束を標本面5上に投影する対物レンズ系4と、光検出器7を備えている。
パルスレーザー光をダイクロイックミラー6を経て、光束変換光学系、対物レンズ系により集光して、標本面で焦点を結ばせることにより、標本内にある二光子吸収蛍光材料に二光子吸収により誘起された蛍光を生じさせる。標本面をレーザービームで走査し、各場所での蛍光強度を光検出器7などの光検出装置で検出して、得られた位置情報に基づいて、コンピュータでプロットすることにより、三次元蛍光像が得られる。走査機構としては、例えば、ガルバノミラーなどの可動ミラーを用いてレーザービームを走査しても良く、或いはステージ上に置かれた二光子吸収材料を含む標本を移動させても良い。
このような構成により、二光子吸収そのものの非線形効果を利用して、光軸方向の高分解能を得ることができる。加えて、共焦点ピンホール板を用いれば、さらなる高分解能(面内、光軸方向共)が得られる。
二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素は、標本を染色、又は標本に分散させることにより使用され、工業用途のみならず、生体系の細胞等の三次元画像マイクロイメージングにも用いることができ、高い二光子吸収断面積を持つ化合物が望まれている
本発明における二光子蛍光顕微鏡の公知文献として特開平9−230246号公報が挙げられる。たとえば走査型蛍光顕微鏡は、所望の大きさに拡大されたコリメート光を発するレーザ照射光学系と、複数の集光素子が形成された基板とを備え、該集光素子の集光位置が対物レンズ系の像位置に一致するように配され、かつ、前記の集光素子が形成された基板と対物レンズ系との間に、長波長を透過し短波長を反射するビームスプリッタが配され、標本面で多光子吸収による蛍光を発生させることを特徴とするものである。このような構成により、多光子吸収そのものの非線形効果を利用して、光軸方向の高分解能を得ることができる。加えて、共焦点ピンホール板を用いれば、さらなる高分解能(面内、光軸方向共)が得られる。このような二光子光学素子は上述の光制御素子と全く同様に本発明の高い二光子吸収能を有した材料、薄膜、もしくは光硬化性樹脂等に分散させた固体物を光学素子として用いる事が可能である。
本発明の二光子吸収材料は二光子励起レーザ走査顕微鏡用の二光子吸収蛍光材料として用いることが出来る。従来の二光子吸収蛍光材料に比較し、大きな二光子吸収断面積を有しているので、低濃度で高い二光子吸収特性を発揮する。従って、本発明によれば、高感度な二光子吸収材料が得られるだけでなく、材料に照射する光の強度を強くする必要がなくなり、材料の劣化、破壊を抑制することができ、材料中の他成分の特性に対する悪影響も低下させることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これら実施例によって制限されるものではない。
合成例1
重合体1の合成
Figure 0004963367
100ml四つ口フラスコに、上記反応式中で示されているジアルデヒド0.852g(2.70mmol)及びジホスホネート1.525g(2.70mmol)を入れ、窒素置換してテトラヒドロフラン75mlを加えた。この溶液にカリウムt−ブトキシドの1.0moldm−3テトラヒドロフラン溶液6.75ml(6.75mmol)を滴下し室温で2時間撹拌した後、ベンジルホスホン酸ジエチル及びベンズアルデヒドを順次加え、さらに2時間撹拌した。酢酸およそ1mlを加えて反応を終了し、溶液を水洗した。溶媒を減圧留去した後テトラヒドロフラン及びメタノールを用いて再沈澱による精製を行ない、重合体1を1.07g得た。収率は73%であり、元素分析値は次の通りであった。
元素分析値(計算値);C:84.25%(84.02%)、H:8.20%(7.93%)、N:2.33%(2.45%)。
示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は116.9℃であった。
ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は8500、重量平均分子量は20000であった。
合成例2
重合体2の合成
Figure 0004963367
合成例1と同様の操作を行ない、上記ジアルデヒド419.5mg(1.00mmol)及びジホスホネート564.5mg(1.00mmol)から重合体2を518.3mg得た。収率62%であり、元素分析値は次の通りであった。
元素分析値(計算値);C:85.18%(85.55%)、H:8.03%(7.63%)、N:2.10%(2.08%)。
示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は133℃であった。
GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は39200、重量平均分子量は116000であった。
合成例3
重合体3の合成
Figure 0004963367
合成例1と同様の操作を行ない、上記ジアルデヒド1.00g(2.40mmol)及びジホスホネート1.35g(2.40mmol)から重合体3を1.32g得た。収率は82%であり、元素分析値は次の通りであった。
元素分析値(計算値);C:85.33%(85.55%)、H:7.86%(7.63%)、N:2.30%(2.08%)。
示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は151.9℃であった。
GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は44400、重量平均分子量は118000であった。
合成例4
重合体4の合成
Figure 0004963367
200ml四つ口フラスコに、上記のジアルデヒド0.872g(2.648mmol)及びジホスホネート1.495g(2.648mmol)を入れ、窒素置換してテトラヒドロフラン80mlおよび、ベンズアルデヒド14.1mg(0.132mmol)を加えた。この溶液にカリウムt−ブトキシドの1.0moldm−3テトラヒドロフラン溶液8.00ml(8.00mmol)を滴下し室温で2時間撹拌した後、ベンジルホスホン酸ジエチル60.5mg(0.265mmol)を加え、さらに1時間撹拌した。酢酸およそ1mlを加えて反応を終了し、反応溶液を水洗した。溶媒を減圧留去した後テトラヒドロフラン及びメタノールを用いて再沈澱による精製を行ない、重合体5を1.328g得た。収率は86%であり、元素分析値は次の通りであった。
元素分析値(計算値);C:83.80%(84.06%)、H:8.60%(8.90%)、N:2 .15%(2.39%)。
示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は122.1℃であった。
GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は13200、重量平均分子量は32500であった。
合成例5
重合体5の合成
Figure 0004963367
合成例4と同様の操作を行ない、上記ジアルデヒド1.00g(2.48mmol)及びジホスホネート1.40g(2.48mmol)から重合体7を0.74g得た。収率は45%であり、元素分析値は次の通りであった。
元素分析値(計算値);C:85.56(85.27%)、H:8.02%(7.78%)、N:2.01%(2.12%)。
GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は22700、重量平均分子量は51900であった。
合成例6
重合体6の合成
Figure 0004963367
合成例4と同様の操作を行ない、上記ジアルデヒド0.872g(2.648mmol)及びジホスホネート1.495g(2.648mmol)から重合体8を1.473g得た。収率は95%であり、元素分析値は次の通りであった。
元素分析値(計算値);C:84.25%(84.06%)、H:8.75%(8.90%)、N:2.23%(2.39%)。
示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は135.8℃であった。
GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は15400、重量平均分子量は39900であった。
合成例7
重合体7の合成
Figure 0004963367
合成例4と同様の操作を行ない、上記ジアルデヒド2.12g(5.50mmol)及びジホスホネート2.63g(5.50mmol)から重合体11を2.72g得た。収率は89%であり、元素分析値は次の通りであった。
元素分析値(計算値);C:90.89%(90.77%)、H:6.50%(6.71%)、N:2.22%(2.52%)。
GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は3700、重量平均分子量は8000であった。
合成例8
重合体8の合成
Figure 0004963367
合成例4と同様の操作を行ない、上記ジアルデヒド2.12g(5.50mmol)及びジホスホネート2.50g(5.50mmol)から重合体12を2.34g得た。収率は80%であり、元素分析値は次の通りであった。
元素分析値(計算値);C:90.64%(90.35%)、H:6.82%(7.01%)、N:2.55%(2.63%)。
GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は5500、重量平均分子量は13300であった。
合成例9
重合体9の合成
Figure 0004963367
200ml四つ口フラスコに、上記のジアルデヒド0.835g(2.648mmol)及びジホスホネート1.241g(2.648mmol)を入れ、窒素置換してテトラヒドロフラン80mlおよび、ベンズアルデヒド14.1mg(0.132mmol)を加えた。この溶液にカリウムt−ブトキシドの1.0moldm−3テトラヒドロフラン溶液8.00ml(8.00mmol)を滴下し室温で0.5時間撹拌した後、3時間還流した。ベンジルホスホン酸ジエチル60.5mg(0.265mmol)を加え、さらに1時間還流した。放冷した後、酢酸およそ数滴を加えて反応を終了し、反応溶液を水に滴下した。析出した固体を濾別した後、この固体をテトラヒドロフラン及びメタノールを用いて再沈澱により精製し、重合体13を0.83g得た。収率は66%であり、元素分析値は次の通りであった。
元素分析値(計算値);C:83.01%(83.32%)、H:7.01%(6.99%)、N:2.89%(2.94%)、S:6.80%(6.76%)。
示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は163.4℃であった。
GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は7900 、重量平均分子量は17200であった。
合成例10
重合体10の合成
Figure 0004963367
合成例9と同様の操作を行ない、上記ジアルデヒド1.021g(2.648mmol)及びジホスホネート1.241g(2.648mmol)から重合体14を0.918g得た。収率は62%であり、元素分析値は次の通りであった。
元素分析値(計算値);C:83.55%(83.62%)、H:7.74%(7.94%)、N:2.63%(2.57%)、S:6.02%(5.87%)。
示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は125.9℃であった。
GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は15500、重量平均分子量は48700であった。
合成例11
重合体11の合成
Figure 0004963367
合成例9と同様の操作を行ない、上記ジアルデヒド1.106g(2.648mmol)及びジホスホネート1.241g(2.648mmol)から重合体15を0.817g得た。収率は53%であり、元素分析値は次の通りであった。
元素分析値(計算値);C:85.52%(85.22%)、H:7.00%(6.80%)、N:2.15%(2.42%)、S:5.50%(5.55%)。
示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は186.9℃であった。
GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は11800、重量平均分子量は28400であった。
合成例12
重合体12の合成
Figure 0004963367
合成例4と同様の操作を行ない、上記ジアルデヒド0.837g(2.655mmol)及びジホスホネート1.685g(2.655mmol)から重合体12を1.386g得た。収率は81%であり、元素分析値は次の通りであった。
元素分析値(計算値);C:90.11(89.81%)、H:7.92%(8.01%)、N:2.01%(2.18%)。
示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は182.9℃であった。
GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は14400、重量平均分子量は42600であった。
ジホスホネート1.681g(2.648mmol)から重合体18を1.682g得た。収率85%。
[実施例1]
上記の合成例12において,繰り返し数nを1とした化合物を、合成例12に準じた合成条件により以下の反応スキームで合成した。その化合物の濃度0.01(mol/l) テトラヒドロフラン溶液を作成し、下記の二光子吸収断面積の評価方法により、その二光子吸収断面積を測定した。
Figure 0004963367
[実施例2〜4]
同様にして上記の合成例5、合成例8及び合成例10において,繰り返し数nを1とした化合物を合成した。その化合物の濃度0.01(mol/l)テトラヒドロフラン溶液を作成し、下記の二光子吸収断面積の評価方法により、その二光子吸収断面積を測定した。
その化合物の濃度0.01(mol/l)テトラヒドロフラン溶液を作成し、下記の二光子吸収断面積の評価方法により、その二光子吸収断面積を測定した。
[実施例5〜10]
上記の合成例1、合成例3、合成例5、合成例6、合成例10、及び合成例12で得た重合体を、その繰り返し単位を分子量と換算し、濃度0.01(mol/l)テトラヒドロフラン溶液を作成し、下記の二光子吸収断面積の評価方法により、その二光子吸収断面積を測定した。
その化合物の濃度0.01(mol/l) テトラヒドロフラン溶液を作成し、下記の二光子吸収断面積の評価方法により、その二光子吸収断面積を測定した。
[比較例1]
以下の化合物(20)で示した化合物を用い、その濃度が0.01(mol/l)となるようにテトラヒドロフラン溶液を作成し、下記の二光子吸収断面積の評価方法により、その二光子吸収断面積を測定した。
その化合物の濃度0.01(mol/l) テトラヒドロフラン溶液を作成し、下記の二光子吸収断面積の評価方法により、その二光子吸収断面積を測定した。
Figure 0004963367
[二光子吸収断面積の評価方法]
測定システム概略図を図5示す。
測定光源:フェムト秒チタンサファイアレーザ
波長 :800nm パルス幅:100fs
繰り返し:80MHz 光パワー:800mW
測定方法:Zスキャン法
光源波長 :800nm キュベット内径:10mm
測定光パワー :約500mW 繰り返し周波数:80MHz
集光レンズ :f=75mm 集光径 :40〜50μm
集光されている光路部分に試料溶液を充填した石英セルを置き、その位置を光路に沿って移動させることによりZ−scan測定を実施した。
透過率を測定し、その結果から理論式(I)により非線形吸収係数を求めた。
T=[ln(1+Iβ)]/Iβ ・・・・ (I)
(上記式中、Tは透過率(%)、Iは励起光密度[GW/cm]、
は試料セル長[cm]、βは非線形吸収係数[cm/GW]を示す。)
この非線形吸収係数から、下記式(II)により二光子吸収断面積δを求めた。(δの単位は1GM=1×10−50cm・s・molecule−1・photon−1である。)
δ=1000×hνβ/NACβ ・・・・ (II)
(上記式中、hはプランク定数[J・s]、
νは入射レーザ光の振動数[s−1]、NAはアボガドロ数、
Cは溶液濃度[mol/L]を示す。)
<評価結果>
評価結果を表1に示す。
Figure 0004963367
上記の表に示されるとおり、本発明の二光子吸収化合物(低分子化合物及びその重合体)は遷移効率が従来材料の4〜8倍高いものであった。
このことから、本発明の優れた二光子吸収特性を有する化合物を適用すれば、より高品位の三次元メモリ材料、光制限材料、光造形用光硬化樹脂の硬化材料、光化学療法用材料、二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料が実現できる。
本発明の二光子吸収材料は、三次元メモリ材料、光制限材料、光造形用光硬化樹脂の硬化材料、光化学療法用材料、二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料として好適に使用できる。
三次元多層光メモリの記録/再生のシステム概略図(a)及びその記録媒体の概略断面図(b)である。 二光子吸収材料を用いた光制御素子を示す図である。 二光子光造形法の装置の概略図である。 二光子励起レーザ走査顕微鏡の基本構成の概略図である。 二光子吸収断面積の測定システムを示す概略図である。
符号の説明
(図3について)
1 光硬化樹脂液に対して透明性を有する近赤外パルスレーザ光の光源
2 過光量を時間的にコントロールするシャッター
3 Dフィルター
4ミラースキャナー
5 Zステージ
6 集光手段としてのレンズ
7 コンピュータ
8 光硬化性樹脂液
9 光造形物
(図4について)
1 レーザ光源
2 光束変換光学系
3 走査光学系
4 対物レンズ系
5 標本面
6 ダイクロイックミラー
7 光検出器

Claims (10)

  1. 下記一般式(III)で表される二光子吸収材料。
    Figure 0004963367
    (上記式中、
    Arは置換若しくは無置換の、チオフェン、ビフェニル、フルオレン又はアントラセンの二価基であり、
    Ar及びArはそれぞれ独立に置換又は無置換の芳香族炭化水素基であり、
    x及びyは1以上4以下の整数であり、zは1以上5以下の整数であり、
    及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、 置換若しくは無置換のアルコキシ基又は置換若しくは無置換のアルキルチオ基であり、
    は水素基、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換の
    アルコキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基又は置換若しくは無置換のアリール基であり、
    かつ、前記x、前記y及び前記zが2以上である場合、複数個の前記R、前記R及び前記Rはそれぞれ独立している
  2. 下記一般式(IV)で表される二光子吸収材料。
    Figure 0004963367
    (上記式中、
    Arは置換若しくは無置換の、ベンゼン、チオフェン、ビフェニル、フルオレン又はアントラセンの二価基であり、
    Ar及びArはそれぞれ独立に置換又は無置換の芳香族炭化水素基であり、
    vは1以上3以下の整数であり、w、x及びyは1以上4以下の整数であり、
    、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基又は置換若しくは無置換のアルキルチオ基であり、
    かつ、前記v、前記w、前記x及び前記yが2以上である場合、複数個の前記R、前記R、前記R及び前記Rがそれぞれ独立している二光子吸収材料。
  3. 下記一般式(V)で表される二光子吸収材料。
    Figure 0004963367
    (上記式中、
    Arは置換若しくは無置換の、ベンゼン、チオフェン、ビフェニル、フルオレン又はアントラセンの二価基であり、
    Ar及びArはそれぞれ独立に置換又は無置換の芳香族炭化水素基であり、
    vは1以上3以下の整数であり、w、x及びyは1以上4以下の整数であり、
    、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基又は置換若しくは無置換のアルキルチオ基であり、
    かつ、前記v、前記w、前記x及び前記yが2以上である場合、複数個の前記R、前記R、前記R及び前記Rがそれぞれ独立している二光子吸収材料。
  4. 下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位を有する重合体からなる二光子吸収材料。
    Figure 0004963367
    (上記式中、
    Arは置換若しくは無置換の、ベンゼン、チオフェン、ビフェニル、フルオレン又はアントラセンの二価基であり、
    x及びyは1以上4以下の整数であり、zは1以上5以下の整数であり、
    及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基又は置換若しくは無置換のアルキルチオ基であり、
    は水素基、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基又は置換若しくは無置換のアリール基であり、
    かつ、前記x、前記y及び前記zが2以上である場合、複数個の前記R、前記R及び前記Rはそれぞれ独立している。)
  5. 下記一般式(IX)で表される繰り返し単位を有する重合体からなる二光子吸収材料。
    Figure 0004963367
    (上記式中、
    Arは置換若しくは無置換の、ベンゼン、チオフェン、ビフェニル、フルオレン又はアントラセンの二価基であり、
    vは1以上3以下の整数であり、w、x及びyは1以上4以下の整数であり、
    、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基又は置換若しくは無置換のアルキルチオ基であり、
    かつ、前記v、前記w、前記x及び前記yが2以上である場合、複数個の前記R、前 記R、前記R及び前記Rがそれぞれ独立している。)
  6. 下記一般式(X)で表される繰り返し単位を有する重合体からなる二光子吸収材料。
    Figure 0004963367
    (上記式中、
    Arは置換若しくは無置換の、ベンゼン、チオフェン、ビフェニル、フルオレン又はアントラセンの二価基であり、
    vは1以上3以下の整数であり、w、x及びyは1以上4以下の整数であり、
    、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基又は置換若しくは無置換のアルキルチオ基であり、
    かつ、前記v、前記w、前記x及び前記yが2以上である場合、複数個の前記R、前 記R、前記R 及び前記Rがそれぞれ独立している二光子吸収材料。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む三次元メモリ材料。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む光制限材料。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む光造形用光硬化樹脂の硬化材料。
  10. 請求項1〜のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料。
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