本発明は、ステアリングホイールの操舵を補助する電動パワーステアリング装置に関する。
従来、ステアリングホイールの操舵を補助する電動パワーステアリング装置として、例えば、特開2005−225411号公報や特開2006−280167号公報に開示されている電動パワーステアリング装置がある。
特開2005−225411号公報に開示されている電動パワーステアリング装置は、モータと、トルクセンサと、車速センサと、操舵角センサと、電流センサと、回転角センサと、操舵制御部とを備えている。操舵制御部は、これらのセンサの出力に基づいて、操舵ハンドルの操作をアシストするようにモータを制御する。
また、特開2006−280167号公報に開示されている電動パワーステアリング装置は、モータと、トルクセンサと、車速センサと、コントローラとを備えている。コントローラは、トルクセンサ及び車速センサの出力に基づいて、操舵アシストトルクを発生するようにモータを制御する。
特開2005−225411号公報
特開2006−280167号公報
しかし、前述した電動パワーステアリング装置は、操舵時の負荷の軽減を図るものであって、操舵に伴う運転者の腕の疲労回復を図るものではない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ステアリングホイールの操舵を補助するとともに、運転者の腕の疲労回復を図ることができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段及び発明の効果
そこで、本発明者は、この課題を解決すべく鋭意研究し試行錯誤を重ねた結果、外部からマッサージの要求があったとき、ステアリングホイールを揺動することで、運転者の腕の疲労回復を図ることができることを思いつき、本発明を完成するに至った。
すなわち、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールの操舵を補助するためのトルクを発生するモータと、モータのトルクを制御する制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置において、制御手段は、外部からマッサージの要求があったとき、ステアリングホイールを揺動するためのトルクを発生するようにモータを制御することを特徴とする。
この構成によれば、ステアリングホイールの操舵を補助することができる。また、マッサージの要求があったとき、ステアリングホイールを揺動させることで、運転者の腕の疲労回復を図ることができる。
請求項2に記載の電動パワーステアリング装置は、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、さらに、ステアリングホイールの操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車両の速度を検出する車速検出手段と、マッサージの要求を検出するマッサージ要求検出手段とを有し、制御手段は、操舵トルク検出手段及び車速検出手段の検出結果に基づいて、ステアリングホイールの操舵を補助するためのトルクを発生するようにモータを制御するとともに、マッサージ要求検出手段及び車速検出手段の検出結果に基づいて、ステアリングホイールを揺動するためのトルクを発生するようにモータを制御することを特徴とする。
この構成によれば、操舵トルク検出手段の検出結果に基づいてモータを制御することで、ステアリングホイールの操舵を補助する充分なトルクを発生させることができる。しかも、車速検出手段の検出結果に基づいて制御することで、車両の速度に応じたトルクを発生させることができるため、安全性を確保することができる。また、マッサージ要求検出手段の検出手段結果に基づいてモータを制御することで、マッサージの要求に応じてステアリングホイールを揺動させることができる。しかも、車速検出手段の検出結果に基づいて制御することで、車両の速度に応じて揺動させることができるため、安全性を確保することができる。
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置は、請求項2に記載の電動パワーステアリング装置において、さらに、制御手段は、マッサージ要求検出手段がマッサージの要求を検出し、かつ、車速検出手段の検出結果が所定速度以下のとき、ステアリングホイールを揺動するためのトルクを発生するようにモータを制御することを特徴とする。
この構成によれば、マッサージの要求に応じてステアリングホイールを確実に揺動させることができる。しかも、車両の速度が所定速度以下のときに揺動させるため、安全性を充分に確保することができる。
請求項4に記載の電動パワーステアリング装置は、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、さらに、ステアリングホイールの操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車両の速度を検出する車速検出手段と、マッサージの要求を検出するマッサージ要求検出手段とを有し、制御手段は、操舵トルク検出手段及び車速検出手段の検出結果に基づいて、ステアリングホイールの操舵を補助するためのトルクを発生するようにモータを制御するとともに、マッサージ要求検出手段、車速検出手段及び操舵トルク検出手段の検出結果に基づいて、ステアリングホイールを揺動するためのトルクを発生するようにモータを制御することを特徴とする。
この構成によれば、操舵トルク検出手段の検出結果に基づいてモータを制御することで、ステアリングホイールの操舵を補助する充分なトルクを発生させることができる。しかも、車速検出手段の検出結果に基づいて制御することで、車両の速度に応じたトルクを発生させることができるため、安全性を確保することができる。また、マッサージ要求検出手段の検出手段結果に基づいてモータを制御することで、マッサージの要求に応じてステアリングホイールを揺動させることができる。しかも、車速検出手段及び操舵トルク検出手段の検出結果に基づいて制御することで、車両の速度及び操舵トルクに応じてステアリングホイールを揺動させることができる。そのため、安全性を確保するとともに、車両の挙動に与える影響を抑えることができる。
請求項5に記載の電動パワーステアリング装置は、請求項4に記載の電動パワーステアリング装置において、さらに、制御手段は、マッサージ要求検出手段がマッサージの要求を検出し、かつ、車速検出手段の検出結果が所定速度以下、かつ、操舵トルク検出手段の検出結果が所定トルク以下のとき、ステアリングホイールを揺動するためのトルクを発生するようにモータを制御することを特徴とする。
この構成によれば、マッサージの要求に応じてステアリングホイールを確実に揺動させることができる。しかも、車両の速度が所定速度以下のときに揺動させるため、安全性を充分に確保することができる。また、操舵トルクが所定トルク以下ときに揺動させるため、車両の挙動に与える影響を確実に抑えることができる。
請求項6に記載の電動パワーステアリング装置は、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、さらに、ステアリングホイールの操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車両の速度を検出する車速検出手段と、マッサージの要求を検出するマッサージ要求検出手段と、ステアリングホイールの操舵角度を検出する操舵角度検出手段とを有し、制御手段は、操舵トルク検出手段及び車速検出手段の検出結果に基づいて、ステアリングホイールの操舵を補助するためのトルクを発生するようにモータを制御するとともに、マッサージ要求検出手段、車速検出手段及び操舵角度検出手段の検出結果に基づいて、ステアリングホイールを揺動するためのトルクを発生するようにモータを制御することを特徴とする。
この構成によれば、操舵トルク検出手段の検出結果に基づいてモータを制御することで、ステアリングホイールの操舵を補助する充分なトルクを発生させることができる。しかも、車速検出手段の検出結果に基づいて制御することで、車両の速度に応じたトルクを発生させることができるため、安全性を確保することができる。また、マッサージ要求検出手段の検出手段結果に基づいてモータを制御することで、マッサージの要求に応じてステアリングホイールを揺動させることができる。しかも、車速検出手段の検出結果に基づいて制御することで、車両の速度に応じてステアリングホイールを揺動させることができるため、安全性を確保することができる。操舵角度検出手段の検出結果に基づいて制御することで、ステアリングホイールの揺動に伴う構成部材同士の衝突を防止することができる。
請求項7に記載の電動パワーステアリング装置は、請求項6に記載の電動パワーステアリング装置において、さらに、制御手段は、マッサージ要求検出手段がマッサージの要求を検出し、かつ、車速検出手段の検出結果が所定速度以下、かつ、操舵角度検出手段の検出結果が所定角度範囲以内のとき、ステアリングホイールを揺動するためのトルクを発生するようにモータを制御することを特徴とする。
この構成によれば、マッサージの要求に応じてステアリングホイールを確実に揺動させることができる。しかも、車両の速度が所定速度以下のときに揺動させるため、安全性を充分に確保することができる。また、操舵角度が所定角度範囲以内ときに揺動させるため、構成部材同士の衝突を確実に抑えることができる。
請求項8に記載の電動パワーステアリング装置は、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、さらに、ステアリングホイールの操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車両の速度を検出する車速検出手段と、マッサージの要求を検出するマッサージ要求検出手段と、ステアリングホイールの操舵角度を検出する操舵角度検出手段とを有し、制御手段は、操舵トルク検出手段及び車速検出手段の検出結果に基づいて、ステアリングホイールの操舵を補助するためのトルクを発生するようにモータを制御するとともに、マッサージ要求検出手段、車速検出手段、操舵トルク検出手段及び操舵角度検出手段の検出結果に基づいて、ステアリングホイールを揺動するためのトルクを発生するようにモータを制御することを特徴とする。
この構成によれば、操舵トルク検出手段の検出結果に基づいてモータを制御することで、ステアリングホイールの操舵を補助する充分なトルクを発生させることができる。しかも、車速検出手段の検出結果に基づいて制御することで、車両の速度に応じたトルクを発生させることができるため、安全性を確保することができる。また、マッサージ要求検出手段の検出手段結果に基づいてモータを制御することで、マッサージの要求に応じてステアリングホイールを揺動させることができる。しかも、車速検出手段及び操舵トルク検出手段の検出結果に基づいて制御することで、車両の速度及び操舵トルクに応じてステアリングホイールを揺動させることができる。そのため、安全性を確保するとともに、車両の挙動に与える影響を抑えることができる。また、操舵角度検出手段の検出結果に基づいて制御することで、ステアリングホイールの揺動に伴う構成部材同士の衝突を防止することができる。
請求項9に記載の電動パワーステアリング装置は、請求項8に記載の電動パワーステアリング装置において、さらに、制御手段は、マッサージ要求検出手段がマッサージの要求を検出し、かつ、車速検出手段の検出結果が所定速度以下、かつ、操舵トルク検出手段の検出結果が所定トルク以下、かつ、操舵角度検出手段の検出結果が所定角度範囲以内のとき、ステアリングホイールを揺動するためのトルクを発生するようにモータを制御することを特徴とする。
この構成によれば、マッサージの要求に応じてステアリングホイールを確実に揺動させることができる。しかも、車両の速度が所定速度以下のときに揺動させるため、安全性を充分に確保することができる。また、操舵トルクが所定トルク以下ときに揺動させるため、車両の挙動に与える影響を確実に抑えることができる。さらに、操舵角度が所定角度範囲以内ときに揺動させるため、構成部材同士の衝突を確実に抑えることができる。
請求項10に記載の電動パワーステアリング装置は、請求項4、5、8又は9のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置において、さらに、制御手段は、操舵トルク検出手段の検出結果が所定トルクを超えると、以降ステアリングホイールを揺動するためのトルクを発生しないようにモータを制御することを特徴とする。
この構成によれば、ステアリングホイールから手を離すことなく揺動を停止させることができる。そのため、使い勝手を向上させることができる。
次に実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図3を参照して電動パワーステアリング装置の構成について説明する。ここで、図1は、本実施形態における電動パワーステアリング装置の構成図である。図2は、電動パワーステアリング装置のブロック図である。図3は、マッサージ用電流指令を示すグラフである。
図1に示すように、電動パワーステアリング装置1は、トルクセンサ2(操舵トルク検出手段)と、車速センサ3(車速検出手段)と、マッサージ要求スイッチ4(マッサージ要求検出手段)と、操舵角センサ5(操舵角度検出手段)と、モータ6と、減速装置7と、制御装置8(制御手段)とから構成されている。ステアリングホイール9は、ステアリングシャフト10の一端部に固定されている。ステアリングシャフト10の他端部には、ピニオンギア(図略)が形成されている。ピニオンギアは、ステアリングギアボックス11内に収容されるラック12と噛合している。ラック12の両端部には、タイロッド13及びナックルアーム14を介して、タイヤ15の装着された車輪16が固定されている。
トルクセンサ2は、ステアリングホイール9の操舵トルクを検出するセンサである。トルクセンサ2は、ステアリングシャフト10に設置されている。 車速センサ3は、車両の速度を検出するセンサである。車速センサ3は、車輪16の近傍に設置されている。マッサージ要求スイッチ4は、マッサージの実施を要求するためのスイッチである。マッサージ要求スイッチ4は、インスツルメントパネルに設置されている。なお、マッサージ要求スイッチ4は、タッチパネルスイッチとして、ナビゲーションシステムのモニタ画面に設けてもよい。操舵角センサ5は、ステアリングホイール9の操舵角を検出するセンサである。操舵角センサ5は、トルクセンサ2よりもステアリングホイール9側のステアリングシャフト10に設置されている。なお、操舵角センサ5は、後述するモータ6が回転角センサを備えている場合、この回転角センサによって代用してもよい。
モータ6は、ステアリングホイール9の操舵を補助するトルクを発生するとともに、所定条件を満足した場合、ステアリングホイール9を揺動するためのトルクを発生する装置である。減速装置7は、モータ6の回転を減速し、発生したトルクをステアリングシャフト10に伝達する装置である。モータ6は、トルクセンサ2よりも反ステアリングホイール9側の設置された減速装置7を介して、ステアリングシャフト10に噛合されている
制御装置8は、トルクセンサ2、車速センサ3、マッサージ要求スイッチ4及び操舵角センサ5の出力に基づいてモータ6を制御する装置である。制御装置8は、トルクセンサ2及び車速センサ3の出力に基づいて、ステアリングホイール9の操舵を補助するためのトルクを発生するようにモータ6を制御する。また、マッサージ要求スイッチ4、車速センサ3、トルクセンサ2及び操舵角センサ5の出力に基づいて、ステアリングホイール9を揺動するためのトルクを発生するようにモータ6を制御する。図2に示すように、制御装置8は、操舵補助用電流指令演算部8aと、マッサージ許可判定部8bと、マッサージ用電流指令演算部8cと、電流指令調整部8dと、電流制御部8eとから構成されている。操舵補助用電流指令演算部8a、マッサージ許可判定部8b、マッサージ用電流指令演算部8c及び電流指令調整部8dは、マイクロコンピュータ上のプログラムによって構成されている。電流制御部8eは、複数のスイッチ素子(図略)によって構成されている。
操舵補助用電流指令演算部8aは、トルクセンサ2及び車速センサ3の出力に基づいて、ステアリングホイール9の操舵を補助するためのトルクに相当する操舵補助用電流指令を演算し出力するブロックである。
マッサージ許可判定部8bは、トルクセンサ2、車速センサ3、マッサージ要求スイッチ4及び操舵角センサ5の出力に基づいて、マッサージの実施を許可するか否かを判定するブロックである。マッサージ許可判定部8bは、マッサージ要求スイッチ4がオンし、マッサージの実施が要求され、かつ、車速センサ3の出力が所定速度以下の低速であり、かつ、トルクセンサ2の出力が所定トルク以下であり、かつ、操舵角センサ5の出力が所定角度範囲以内であるとき、マッサージの実施を許可するマッサージ許可フラグを有効にする。ここで、所定速度及び所定トルクは、ステアリングホイール9を揺動させても車両の挙動に悪影響を与えない速度及びトルクに設定されている。また、所定角度範囲は、ステアリングホイール9を揺動させてもラック12が移動限界に達することのない角度範囲に設定されている。
マッサージ用電流指令演算部8cは、マッサージ許可判定部8bの出力に基づいて、ステアリングホイール9を揺動するためのトルクに相当するマッサージ用電流指令を演算し出力するブロックである。マッサージ用電流指令演算部8cは、マッサージ許可フラグが有効になると、図3に示すように、一定振幅、かつ、一定周波数のマッサージ用電流指令を演算し出力する。ここで、マッサージ用電流指令の振幅は、車両の挙動に悪影響を与えない大きさに設定されている。なお、マッサージ用電流指令の振幅は、タイヤ15の異常摩耗を発生させない大きさに設定してもよい。また、マッサージ用電流指令は、振幅を時間の経過とともに可変させてもよい。周波数を時間の経過とともに可変させてもよい。さらには、振幅及び周波数を時間の経過とともに可変させてもよい。
図2に示すように、電流指令調整部8dは、操舵補助用電流指令演算部8a及びマッサージ用電流指令演算部8cの出力を調整し、最終的な電流指令として出力するブロックである。電流指令調整部8dは、操舵補助用電流指令にマッサージ用電流指令を加算し、最終的な電流指令とする。さらに、この電流指令に相当するPWM信号に変換して出力する。なお、電流指令調整部8dは、マッサージ許可フラグが無効であるときは操舵補助用電流指令を、マッサージ許可信号が有効であるときはマッサージ用電流信号を、それぞれ最終的な電流指令として選択的に出力させてもよい。
電流制御部8eは、電流指令調整部8dの出力に基づいて、モータ6に流れる電流を制御するブロックである。電流制御部8eは、モータ6に流れる電流が電流指令と一致するようにモータ6に印加する電圧を制御する。
次に、図1〜図5を参照して電動パワーステアリング装置の動作について説明する。まず、図4を参照してマッサージ許可判定部の動作について説明する。ここで、図4は、マッサージ許可判定部の動作を説明するためのフローチャートである。
図4に示すように、マッサージ許可判定部8bは、動作を開始すると、マッサージ許可フラグを無効にする(S100)。その後、マッサージ要求スイッチ4の出力を読込む(S101)。そして、マッサージ要求スイッチ4がオンし、マッサージの実施が要求されているか否かを判定する(S102)。
ステップS102において、マッサージ要求スイッチ4がオフしているときには、ステップS100に戻る。これに対し、ステップS102において、マッサージ要求スイッチ4がオンしているとき、マッサージ許可判定部8bは、車速センサ3の出力を読込む(S103)。そして、車速センサ3の出力が所定速度以下で、車両速度が低速であるか否かを判定する(S104)。
ステップS104において、車速センサ3の出力が所定速度を超えているときには、ステップS100に戻る。これに対し、ステップS104において、車速センサ3の出力が所定速度以下であるとき、マッサージ許可判定部8bは、トルクセンサ2の出力を読込む(S105)。そして、トルクセンサ2の出力が所定トルク以下であるか否かを判定する(S106)。
ステップS106において、トルクセンサ2の出力が所定トルクを超えているときには、ステップS100に戻る。これに対し、ステップS106において、トルクセンサ2の出力が所定トルク以下であるとき、マッサージ許可判定部8bは、操舵角センサ5の出力を読込む(S107)。そして、操舵角センサ5の出力が所定角度範囲以内であるか否かを判定する(S108)。
ステップS108において、操舵角センサ5の出力が所定角度範囲以外であるときには、ステップS100に戻る。これに対し、ステップS108において、操舵角センサ5の出力が所定角度範囲以内であるとき、マッサージ許可判定部8bは、マッサージ許可フラグを有効にする(S109)。以降、ステップ101に戻り同様のステップを繰り返す。
次に、電動パワーステアリング装置の動作について説明する。ここで、図5は、電動パワーステアリング装置の動作を説明するためのタイムチャートである。
図1において、ステアリングホイール9が操舵されると、図2に示す操舵補助用電流指令演算部8aは、トルクセンサ2及び車速センサ3の出力に基づいて、ステアリングホイール9の操舵を補助するためのトルクに相当する操舵補助用電流指令を演算し出力する。マッサージ要求スイッチ4がオフの場合、図5に示すように、マッサージ許可判定部8bは、マッサージ許可フラグを無効にする。そのため、図2において、マッサージ用電流指令演算部8cは、マッサージ用電流指令を出力しない。従って、電流指令調整部8dは、操舵補助用電流指令をそのまま出力することとなる。操舵補助用電流指令は、最終的な電流指令として電流制御部8eに入力される。電流制御部8eは、モータ6に流れる電流が操舵補助用電流指令と一致するようにモータ6に印加する電圧を制御する。これにより、ステアリングホイールの操舵が適切に補助され、操舵時の負荷が軽減される。
これに対し、マッサージ要求スイッチ4がオンすると、図4で説明したように、マッサージ許可判定部8bは、車両センサ3の出力が所定速度以下であるか否かを判定する。また、トルクセンサ2の出力が所定トルク以下であるか否かを判定する。さらに、操舵角センサ5の出力が所定角度範囲以内であるか否かを判定する。そして、車速センサ3の出力が所定速度以下、かつ、トルクセンサ2の出力が所定トルク以下、かつ、操舵角センサ5の出力が所定角度範囲以内である判定されると、図5に示すように、マッサージ許可判定部8bは、マッサージ許可フラグを有効にする(t0)。マッサージ許可フラグが有効になると、マッサージ用電流指令演算部8cは、マッサージ用電流指令を演算し出力する。電流指令調整部8dは、操舵補助用電流指令にマッサージ用電流指令を加算し、最終的な電流指令として出力する。電流制御部8eは、モータ6に流れる電流が電流指令と一致するようにモータ6に印加する電圧を制御する。これにより、ステアリングホイール9の操舵が適切に補助され、操舵時の負荷が軽減されるとともに、ステアリングホイール9が揺動して運転者の腕の疲労回復を図ることができる。
その後、ステアリングホイール9が操舵され、トルクセンサ2の出力が所定トルクを超えると、マッサージ許可判定部8bは、マッサージ許可フラグを無効にする(t1)。そのため、マッサージ用電流指令演算部8cは、マッサージ用電流指令の出力を停止する。従って、電流指令調整部8dは、操舵補助用電流指令をそのまま出力することとなる。これにより、ステアリングホイール9の揺動が停止し、操舵の補助のみが行われる。
その後、ステアリングホイール9の操舵が終了し、トルクセンサ2の出力が所定トルク以下になると、マッサージ許可判定部8bは、マッサージ許可フラグを有効にする(t2)。そのため、マッサージ用電流指令演算部8cは、マッサージ用電流指令を出力する。これにより、ステアリングホイール9の揺動が再開される。
マッサージの必要がなくなり、マッサージ要求スイッチ4がオフすると、マッサージ許可判定部8bは、マッサージ許可フラグを無効にする(t3)。これにより、ステアリングホイール9の揺動が停止し、マッサージが終了する。
最後に、効果について説明する。第1実施形態によれば、トルクセンサ2の出力に基づいてモータ6を制御することで、ステアリングホイール9の操舵を補助する充分なトルクを発生させることができる。これにより、ステアリングホイール9の操舵を補助することができる。しかも、車速センサ3の出力に基づいて制御することで、車両の速度に応じたトルクを発生させることができるため、安全性を確保することができる。また、マッサージ要求スイッチ4の出力に基づいてモータ6を制御することで、マッサージの要求に応じてステアリングホイール9を揺動させることができる。これにより、運転者の腕の疲労回復を図ることができる。しかも、車両の速度が所定速度以下のときに揺動させるため、安全性を確保することができる。また、操舵トルクが所定トルク以下ときに揺動させるため、車両の挙動に与える影響を抑えることができる。さらに、操舵角度が所定角度範囲以内ときに揺動させるため、他の構成部材へのラック12の衝突を抑えることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の電動パワーステアリング装置について説明する。第2実施形態の電動パワーステアリング装置は、第1実施形態の電動パワーステアリング装置に対して、マッサージ許可判定部を変更したものである。
まず、図6を参照して電動パワーステアリング装置の構成について説明する。ここで、図6は、第2実施形態における電動パワーステアリング装置のブロック図である。ここでは、第1実施形態の電動パワーステアリング装置との相違部分であるマッサージ許可判定部についてのみ説明し、共通する部分については必要とされる箇所以外説明を省略する。なお、前述した実施形態と同一の要素には同一の符号を付して説明する。
図6に示すように、電動パワーステアリング装置17は、トルクセンサ2(操舵トルク検出手段)と、車速センサ3(車速検出手段)と、マッサージ要求スイッチ4(マッサージ要求検出手段)と、操舵角センサ5(操舵角度検出手段)と、モータ6と、制御装置18(制御手段)とを備えている。制御装置18は、操舵補助用電流指令演算部18aと、マッサージ許可判定部18bと、マッサージ用電流指令演算部18cと、電流指令調整部18dと、電流制御部18eとから構成されている。操舵補助用電流指令演算部18aと、マッサージ用電流指令演算部18cと、電流指令調整部18dと、電流制御部18eは、第1実施形態における操舵補助用電流指令演算部8aと、マッサージ用電流指令演算部8cと、電流指令調整部8dと、電流制御部8eと同一であるので説明を省略する。
マッサージ許可判定部18bは、車速センサ3、マッサージ要求スイッチ4及び操舵角センサ5の出力に基づいて、マッサージの実施を許可するか否かを判定するブロックである。マッサージ許可判定部18bは、マッサージ要求スイッチ4がオンし、マッサージの実施が要求され、かつ、車速センサ3の出力が所定速度以下の低速であり、かつ、操舵角センサ5の出力が所定角度範囲以内であるとき、マッサージの実施を許可するマッサージ許可フラグを有効にする。ここで、所定速度は、ステアリングホイール9を揺動させても車両の挙動に悪影響を与えない速度に設定されている。また、所定角度範囲は、ステアリングホイール9を揺動させてもラック12が移動限界に達することのない角度範囲に設定されている。
電動パワーステアリング装置17の動作は、マッサージ許可フラグを有効する条件が異なるのみであり、他は、第1実施形態の電動パワーステアリング装置1の動作と同一である。そのため、説明を省略する。
最後に、効果について説明する。第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、安全性を確保し、ステアリングホイール9の操舵を補助することができる。また、ステアリングホイール9を揺動させることで、運転者の腕の疲労回復を図ることができる。しかも、車両の速度が所定速度以下のときに揺動させるため、安全性を確保することができる。また、操舵角度が所定角度範囲以内ときに揺動させるため、他の構成部材へのラック12の衝突を抑えることができる
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の電動パワーステアリング装置について説明する。第3実施形態の電動パワーステアリング装置は、第1実施形態の電動パワーステアリング装置に対して、操舵角センサを廃止するとともに、マッサージ許可判定部を変更したものである。
まず、図7を参照して電動パワーステアリング装置の構成について説明する。ここで、図7は、第3実施形態における電動パワーステアリング装置のブロック図である。ここでは、第1実施形態の電動パワーステアリング装置との相違部分であるマッサージ許可判定部についてのみ説明し、共通する部分については必要とされる箇所以外説明を省略する。なお、前述した実施形態と同一の要素には同一の符号を付して説明する。
図7に示すように、電動パワーステアリング装置19は、トルクセンサ2(操舵トルク検出手段)と、車速センサ3(車速検出手段)と、マッサージ要求スイッチ4(マッサージ要求検出手段)と、モータ6と、制御装置20(制御手段)とを備えている。制御装置20は、操舵補助用電流指令演算部20aと、マッサージ許可判定部20bと、マッサージ用電流指令演算部20cと、電流指令調整部20dと、電流制御部20eとから構成されている。操舵補助用電流指令演算部20aと、マッサージ用電流指令演算部20cと、電流指令調整部20dと、電流制御部20eは、第1実施形態における操舵補助用電流指令演算部8aと、マッサージ用電流指令演算部8cと、電流指令調整部8dと、電流制御部8eと同一であるので説明を省略する。
マッサージ許可判定部20bは、トルクセンサ2、車速センサ3及びマッサージ要求スイッチ4の出力に基づいて、マッサージの実施を許可するか否かを判定するブロックである。マッサージ許可判定部20bは、マッサージ要求スイッチ4がオンし、マッサージの実施が要求され、かつ、車速センサ3の出力が所定速度以下の低速であり、かつ、トルクセンサ2の出力が所定トルク以下であるとき、マッサージの実施を許可するマッサージ許可フラグを有効にする。ここで、所定速度及び所定トルクは、ステアリングホイール9を揺動させても車両の挙動に悪影響を与えない速度及びトルクに設定されている。
電動パワーステアリング装置19の動作は、マッサージ許可フラグを有効する条件が異なるのみであり、他は、第1実施形態の電動パワーステアリング装置1の動作と同一である。そのため、説明を省略する。
最後に、効果について説明する。第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、安全性を確保し、ステアリングホイール9の操舵を補助することができる。また、ステアリングホイール9を揺動させることで、運転者の腕の疲労回復を図ることができる。しかも、車両の速度が所定速度以下のときに揺動させるため、安全性を確保することができる。また、操舵トルクが所定トルク以下ときに揺動させるため、車両の挙動に与える影響を抑えることができる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の電動パワーステアリング装置について説明する。第4実施形態の電動パワーステアリング装置は、第1実施形態の電動パワーステアリング装置に対して、操舵角センサを廃止するとともに、マッサージ許可判定部を変更したものである。
まず、図8を参照して電動パワーステアリング装置の構成について説明する。ここで、図8は、第4実施形態における電動パワーステアリング装置のブロック図である。ここでは、第1実施形態の電動パワーステアリング装置との相違部分であるマッサージ許可判定部についてのみ説明し、共通する部分については必要とされる箇所以外説明を省略する。なお、前述した実施形態と同一の要素には同一の符号を付して説明する。
図8に示すように、電動パワーステアリング装置21は、トルクセンサ2(操舵トルク検出手段)と、車速センサ3(車速検出手段)と、マッサージ要求スイッチ4(マッサージ要求検出手段)と、モータ6と、制御装置22(制御手段)とを備えている。制御装置22は、操舵補助用電流指令演算部22aと、マッサージ許可判定部22bと、マッサージ用電流指令演算部22cと、電流指令調整部22dと、電流制御部22eとから構成されている。操舵補助用電流指令演算部22aと、マッサージ用電流指令演算部22cと、電流指令調整部22dと、電流制御部22eは、第1実施形態における操舵補助用電流指令演算部8aと、マッサージ用電流指令演算部8cと、電流指令調整部8dと、電流制御部8eと同一であるので説明を省略する。
マッサージ許可判定部22bは、車速センサ3及びマッサージ要求スイッチ4の出力に基づいて、マッサージの実施を許可するか否かを判定するブロックである。マッサージ許可判定部22bは、マッサージ要求スイッチ4がオンし、マッサージの実施が要求され、かつ、車速センサ3の出力が所定速度以下の低速であるとき、マッサージの実施を許可するマッサージ許可フラグを有効にする。ここで、所定速度は、ステアリングホイール9を揺動させても車両の挙動に悪影響を与えない速度に設定されている。
電動パワーステアリング装置21の動作は、マッサージ許可フラグを有効する条件が異なるのみであり、他は、第1実施形態の電動パワーステアリング装置1の動作と同一である。そのため、説明を省略する。
最後に、効果について説明する。第4実施形態によれば、第1実施形態と同様に、安全性を確保し、ステアリングホイール9の操舵を補助することができる。また、ステアリングホイール9を揺動させることで、運転者の腕の疲労回復を図ることができる。しかも、車両の速度が所定速度以下のときに揺動させるため、安全性を確保することができる。
なお、第1実施形態では、図5に示すように、トルクセンサ2の出力が、所定トルクを超えたあとに所定トルク以下に戻った場合、マッサージ許可フラグを再度有効にしている例を挙げているが、これに限られるものではない。例えば、図9に示すように、所定トルクを超えると、それ以降マッサージ許可フラグを無効にしてもよい。これにより、ステアリングホイール9の操舵によってマッサージを終了でき、使い勝手を向上させることができる。第3実施形態においても同様である。
第1実施形態における電動パワーステアリング装置の構成図である。
電動パワーステアリング装置のブロック図である。
マッサージ用電流指令を示すグラフである。
電動パワーステアリング装置の動作を説明するためのフローチャートである。
電動パワーステアリング装置の動作を説明するためのタイムチャートである。
第2実施形態における電動パワーステアリング装置のブロック図である。
第3実施形態における電動パワーステアリング装置のブロック図である。
第4実施形態における電動パワーステアリング装置のブロック図である。
他の実施形態における電動パワーステアリング装置の動作を説明するためのタイムチャートである。
符号の説明
1、17、19、21・・・電動パワーステアリング装置、2・・・トルクセンサ(操舵トルク検出手段)、3・・・車速センサ(車速検出手段)、4・・・マッサージ要求スイッチ(マッサージ要求検出手段)、5・・・操舵角センサ(操舵角度検出手段)、6・・・モータ、7・・・減速装置、8、18、20、22・・・制御装置(制御手段)、8a、18a、20a、22a・・・操舵補助用電流指令演算部、8b、18b、20b、22b・・・マッサージ許可判定部、8c、18c、20c、22c・・・マッサージ用電流指令演算部、8d、18d、20d、22d・・・電流指令調整部、8e、18e、20e、22e・・・電流制御部、9・・・ステアリングホイール、10・・・ステアリングシャフト、11・・・ステアリングギアボックス、12・・・ラック、13・・・タイロッド、14・・・ナックルアーム、15・・・タイヤ、16・・・車輪