JP4905844B2 - アンテナ及びこれを用いた電波時計、キーレスエントリーシステム、rfidシステム - Google Patents
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Description
電波時計は、所定周波数の搬送波によって送られる時刻情報を受信し、その時刻情報を基に自身の時刻を修正する時計を指し、現在置時計、掛け時計、腕時計等さまざまな形態で実用化されている。
電波時計等に用いられている電波は40kHz〜200kHz以下と、長波帯を使用しており、その電波の一波長は数kmという長さになる。この電波を、電界として効率よく受信するには数百mを越す長さのアンテナ長が必要となり、小型化が必要な腕時計、キーレスエントリーシステム、RFIDシステム等に使用することは事実上困難であり、磁心を用いて磁界成分を受信することが必要である。
具体的には上記搬送波は、日本においては40kHz及び60kHzの2種類の電波を使用している。海外においても主に100kHz以下の周波数を用いて時刻情報を提供しているため、これらの周波数の電波を受信するには電磁波の磁界成分を効率良く収束させるために磁性体を磁心とし、これにコイルを巻き回した磁気センサ型のアンテナが主に使用されている。
特許文献2には、フェライトからなる磁心にコイルを巻回してなる小型アンテナが開示されている。
また、特許文献3には、金属ケースとアンテナとの間に導電性を有するシール部材を設けたアンテナが開示されている。
さらに、特許文献4には、磁芯にコイルが巻回された主磁路部材と、磁芯にコイルが巻回されていない副磁路部材とを有し、磁芯に沿った閉ループ磁路の一部にエアギャップを設け、共振時には内部で発生した磁束が外部に漏れ難いようになしたアンテナが開示されている。
上記した特許文献1、2のアンテナは、それぞれ磁心として比透磁率の高いアモルファス箔体やフェライトを用いて電磁波の磁界成分を収束させ、この収束させた磁束を磁心の外側に巻き回したコイルによって時間的に磁束が変化する成分を電圧として検知するアンテナである。従って、この点では筐体としては電磁波の磁界成分を阻害しない樹脂材とすることが望ましい。しかし、その反面一部を樹脂製にすると設計、デザイン面での制約がある。一般に腕時計は意匠性がセールスポイントとなり、例えば金属製の筐体が高級感や審美性の面で好まれる。そこで中高級時計や自動車に代表される機器類には筐体が金属ケースで作られることが多くなっている。この場合、従来のアンテナ構造、また配置によっては金属ケース等が電磁波に対するシールドとして働き、受信感度が大幅に低下すると言う問題があった。そこで、特許文献3では、アンテナを金属ケースの外部でかつシールド部材を介して配置することによりQ値の維持を図っている。しかし、大型化とデザインの制約は免れ得ないものであった。
前記副磁路部材は、前記磁心との一端部または両端部にギャップを設けたり、副磁路部材の中央部にギャップを設け、このギャップを0.025〜3mmとしたものである。ギャップが0.025mm未満では副磁路部材の抵抗が小さくなりすぎ外部から入射する磁束を受け入れ難くなる。3mmを超えると副磁路部材の抵抗が大きくなりすぎてその効果が薄れ好ましくない。ギャップは0.1〜2mm程度がさらに望ましい。また、ギャップの位置が副磁路部材の中央付近(図1のアンテナ10a、10f、10g、10i参照)または片方の端部など(図1のアンテナ10e参照)一箇所に設けた場合は0.2〜2mmが望ましい。他方、ギャップを副磁路部材の両端など二箇所に設けた場合(図1のアンテナ10b、10c、10d、10h参照)は、一箇所のギャップとして0.1〜1mm程度が望ましい。
これにより、上記アンテナと同様、外から内へ入る磁界の磁束は主磁路部材の両端を通過し、内から外に向かう磁束はエアギャップがない分、閉磁路側に流れ易いが、ここでは第1の副磁路部材の比透磁率が比較的高く設定されているので、より低比透磁率である第2の副磁路部材を介していても磁束を通し易く、ほとんどが閉磁路を回帰する。よって、渦電流損が少なく、磁心に入射した磁束のコイルに対する通過量が実効的に増加し高感度なアンテナとなる。この例もエアギャップがない分極めて作業性に優れている。
例えば、図10のように主磁路部材の積層された金属製薄帯4の板面を通過する方向に磁束が流れると、金属製薄帯4内部に大きな渦電流9が生じ、損失が大きくなり、Q値が減少する。渦電流9が生じると、ケース内部に設置することで落ちたアンテナ特性がさらに低下することになりアンテナ効率が下がる結果となる。これに対して図9のように金属製薄帯4の端部積層断面から磁束8が通るように副磁路部材を設置することで磁心内部で発生する渦電流を最小にすることが可能となり、損失の少ないアンテナとすることができる。
また、副磁路部材についても軟磁性金属薄帯を積層した積層体あるいは軟磁性フェライトから構成する場合、積層断面が対抗するように両者を配置することで、渦電流が低下し、損失を抑制し、よりアンテナ特性を向上させることができる。上記磁心を構成する軟磁性材料は、珪素鋼、パーマロイ、アモルファス金属、ナノ結晶金属、フェライト等5000〜100000程度の高比透磁率材料が望ましく、第1の副磁路部材は主磁路部材のそれよりも小さいことが好ましく、具体的には300〜5000程度が好ましい。
以上により、本発明のアンテナは、時刻情報を含む電波を受信して時刻を合わせる小型の電波腕時計に用いることに適している。また、乗用車や住居等の鍵の開閉を遠隔操作するキーレスエントリーシステムに用いることに適している。さらに、情報を記憶したタグを用いて情報を授受するRFIDシステムに用いることに適している。
また、副磁路部材と主磁路部材をエアギャップを介さずに磁気的に直接連結することでフリンジング磁束が少なく渦電流がさらに小さくすることができる。また、副磁路部材の主磁路部材との接触部を低比透磁率材料で構成し、この低比透磁率材料を介して副磁路部材と主磁路部材の間を磁束が通るように構成することで、磁気回路として閉磁路並に特性が近く、フリンジングによって面内を通過しようとする磁束を押さえ込むことができ、渦電流がさらに小さくなる。さらにこの場合、エアギャップを設ける場合に比べ、低比透磁率材料の断面積や主磁路部材との対向面積によって微妙なインダクタンス調整(磁気回路定数調整)が可能であり、主磁路部材と副磁路部材を互いに位置調整してエアギャップによるインダクタンス調整を行うよりも遥かに容易であり、作業性に優れた構造となる。
また、積層された金属製薄帯によって構成された主磁路部材を用い、主磁路部材と副磁路部材の間を流れる磁束を実質的に主磁路部材の金属製薄帯の端部を通るようにする事で、主磁路部材の帯面で発生する渦電流損失を少なくすることができ、損失の少ないアンテナを得ることができる。
以上により、電波時計内の設置面積は同じでありながら金属部を避けて配置したのと同等の感度及びQ値が得られる。また共振電流による磁束の流出を抑えて実効的な感度を高く得られる。そして作業性、組立て性が良好である。以上の相乗効果により、設置面積は小さいが、配置自由度は高くデザイン的な制約も比較的小さい高感度のアンテナとなる。
この様なアンテナは、小型高性能の電波時計、電波腕時計、キーレスエントリーシステム、RFIDシステム等で好適に使用できる。
図1に、本発明によるアンテナの一実施例を示す。図1(a)のアンテナ10aは、棒状のフェライトからなる磁心14aにコイル8を巻回して形成したもので、これにより主たる磁気回路を構成する。さらに、コイル8の両端部から延びる副磁路部材15aにより中央部にギャップGを設けたものである。副磁路部材15aは磁性体であればよいが、例えばマンガン系フェライト、ニッケル系フェライト、コバルト基アモルファスなどが好ましい。また、ギャップGの距離は0.1〜2mmが好ましいが、本例のように一箇所のギャップであれば現実的には1mm程度、二箇所のギャップに分かれれば0.5mm程度である。このことは以下の実施例でも同様である。
図1(b)のアンテナ10bは、棒状のフェライト材の両端が垂直に立ち上がって曲がる端部11bを有したものである。中央部にコイル8を巻回して形成した主たる磁気回路を有し、コイル8の両端に位置する端部11bの部分に段差を設け、ここにフェライト等の副磁路部材15bを架けて両側のギャップGを介して磁心14bに並行なギャップ付副磁路部材としている。本例の場合、二箇所のギャップの例であるので上記した通りギャップGは0.5mm程度としている。
図1(c)のアンテナ10cは、アンテナ10bとほぼ同様のものであるが、磁心となるフェライトを四角形状としたものである。四角の場合、金属ケース等の筐体に設置するときに配置しやすく組立て性において望ましい。
図1(e)のアンテナ10eは、同じくアモルファス金属箔から打ち抜いた薄帯を積層したものである。この例は積層方向が異なるもので、薄帯の端部11eは長方形状に打ち抜いた薄帯の両端を別途折り曲げて形成している。ギャップ付副磁路部材は積層した薄帯の一部を副磁路部材15eとして利用し、片側のみにギャップGを形成している。
図1(f)のアンテナ10fは、前記アンテナ10eと共通するアモルファス金属箔を用いたものであるが、ギャップ付副磁路部材が左右の金属箔の副磁路部材15fを利用したもので、中央部にギャップGを形成している。よって、この例は中央一箇所に磁気ギャップ結合にて構成したものである。
アンテナ10d〜10fのように積層型は強度的に強いものが得られる。また図1(d)の積層タイプは、打ち抜きにより一体成形できるので難しい方向にも曲げることも可能で、板形状の自由度が増すので望ましい。また、積層型や図1(j)に示す複数の細線を束ねた細線型では、各薄帯の間あるいは個々の細線に絶縁膜を被膜し絶縁層を介して積層あるいは束ねることが望ましい。
図1(h)のアンテナ10hは、アンテナ10gと同じ構造の磁心14hを用いており、この磁心1hの両端部に樹脂製の介在部材(図示せず)を挟んで両端にギャップGを設け、ギャップ付副磁路部材を形成したものである。本例では前記樹脂部材によりギャップGの距離を調整するようにしている。
アンテナ10g、10hは板状の磁心を用いて、かつ板状の副磁路部材を載せる構成であるので製造が容易で狭小な場所でも比較的配設がし易い。また、副磁路部材を樹脂等と磁性体の粉類を混ぜた複合材で形成した場合、その材料自身で既にギャップを所有している磁気特性となるので機械的なギャップが0mmであっても磁気的にはギャップを所有していると見なせる。このような複合材で副磁路部材を形成し、上記したようなアンテナを構成することも可能である。
図1(i)のアンテナ10iは、図1(e),(f)などと同じく、アモルファス金属箔から打ち抜いた薄帯を積層したものである。薄帯の端部11iは長方形状に打ち抜いた薄帯の両端を斜め上方向に折り曲げて形成している。ギャップ付副磁路部材は積層した薄帯の一部を副磁路部材15iとして利用し、中央にギャップGを形成している。
図1(j)のアンテナ10jは、複数の細線を束ねたものを磁心14jとし、両端部をギャップ付き副磁路部材15jから遠ざかるように曲げたものである。ギャップ付副磁路部材はフェライト材を用い、コイル8に隣接するよう固着させ、ほぼコイルの厚み分のギャップGを副磁路部材15jの両端部に形成している。
以上の実施例によれば、入射した磁束はコイルを巻いた磁心の主たる磁気回路を通過するだけでなく、一部がこのギャップ付副磁路部材を介して帰還し主たる磁気回路内を回ることになり、流入した磁束を主たる磁気回路と別の閉磁路で効率よく回し、結果的に高い出力電圧が得られる。
図2(b)のアンテナ30bは、図1(d)のアンテナ10dと同様に金属箔の帯体から図のような端部31bと32bを一体に打ち抜いた薄帯を複数枚積層したもので、その中央部にコイル8を巻回し、ギャップGを形成するように副磁路部材35bを設けたものである。
図2(c)のアンテナ30cは、同じく図1(e)と同様のものであるが、端部31cをさらに曲げた先端部32cを形成し、また中央部にギャップGを形成したギャップ付副磁路部材となしたものである。
図2(d)のアンテナ30dは、図示する通りアンテナ30bと同様のものであるが、副磁路部材35dを磁心34dの側面に設け、中央のギャップGを介して設けたものである。
図2(e)のアンテナ30eは、同じく副磁路部材35eを磁心34eの側面に設けたものであるが、ギャップGを磁心34eの側面との間に設けたものである。
図2(f)のアンテナ30fは、図2(c)の端部を斜め上方向に曲げたものである。磁心34fの両端部を繋いで連絡する副磁路部材35fを設け、中央にギャップGを介している。
図17において、Lがアンテナの磁心1と巻線8で構成されるコイルである。Rがコイルの直流抵抗と交流抵抗の総和である。このコイルに磁束の時間変化による電圧Vが検出される。ここでアンテナと並列にコンデンサCが接続され、このコンデンサCと先に述べたコイルLが電気的に共振し、コンデンサの両端にはQ倍の電圧が発生し、アンテナとして動作する。比較試験は図16に示す電波腕時計に模した厚さ1mmの金属製(ステンレスSUS403)の筐体70の中に評価アンテナを配置し、上記等価回路による電圧Vを測定した。
実施例1として、図1(c)のアンテナ10cを製造した。磁心としてMn−Zn系フェライト(日立金属製フェライトMT80D)、断面部が1.5mm角、長さ16mm、曲がり部高さ7.5mmを使用し、巻線8はフェライトコアの表面を絶縁した線径0.07mmのエナメル被膜銅線1200ターンを、長さ12mmの範囲で巻き付けた。次に、副磁路部材15cは板厚0.5mm、幅1.5mmの上記と同じフェライトを用いて、プラスチック(PET)製の介在部材を置いて両端共にギャップG=0.2mmのギャップ付副磁路部材を形成した。このアンテナの設置面積は幅1.5mm、長さ16mmと同じに収まっている。尚、巻線コイルの形状は特に限定するものではないが、製造上は円形が望ましい。
従来例は、直線の磁心(副磁路部材なし)に巻線を巻いたアンテナを用いて行った。実施例1の磁心と同じフェライトを用いて、幅1.5mm、長さ16mm、巻線ストッパとしての立ち上がりを含めて高さ2.5mmとし、巻線8も実施例1と同じ細線を同じ条件で巻回したものである。
また、実施例2として、図1(d)のアンテナ10dを製造した。磁心としてコバルト基アモルファス(日立金属製ACO−5SF)製の金属箔(板厚15μm)から幅1mm、長さ16mm、曲がり部の高さ7.5mmの薄帯に打ち抜き、この薄帯を30枚積層して、磁心としての厚み0.45mmの積層体とした。そして、巻線8は積層体コアの表面を絶縁した後に線径0.07mmのエナメル被膜銅線1200ターンを、長さ12mmの範囲で巻き付けた。ギャップ付副磁路部材は、上記と同じアモルファス金属箔を用いて幅1.5mmの部材15dを1枚用意し、これとプラスチック(PET)製の介在部材により、両端共にギャップG=0.2mmに形成した。
以上のアンテナを図16に示す金属ケース70の中に設置し、外部より電磁波の磁界成分に相当する交流磁界の実効値として周波数40kHz、磁界強度14pTの磁界を印加して出力電圧を測定した。結果を表1に示す。
次に、アンテナを金属ケースの中に収容しない状況で、ギャップ付副磁路部材を設けたアンテナの効果について比較検討した。
実施例3として、図1(g)のアンテナ10gを製造した。磁心14gとしては図19に示す従来例と同じ構造のものを用いて、これに板厚0.5mm、幅1.5mmの同じフェライト製部材15gを設置した。そして、中央のギャップGをプラスチック(PET)製の部材により調整し変化させた。
実施例4は図1(h)のアンテナ10hである。磁心14hとしては図19に示す従来例と同じ構造のものを用いて、これに板厚0.5mm、幅1.5mm、長さ16mmの同じフェライト製部材15hを設けた。そして、両側のギャップGをプラスチック(PET)製の部材により調整し変化させた。
比較例として、図1(h)と同じアンテナ構造であるが、副磁路部材を磁性体ではなく、電気的な良導電体である銅板としたものを用いた。銅板は板厚0.25mm、幅10mm、長さ20mmを用いて、両側のギャップGをプラスチック(PET)製の部材により調整し変化させた。
従来例は、上記した図19のアンテナを用いた。
出力電圧の測定は外部より電磁波の磁界成分に相当する交流磁界の実効値として周波数40kHz、磁界強度14pTの磁界を印加して出力電圧を測定した。Q値の測定はインピーダンスメータを用い駆動電圧0.05Vでの値を求めた。結果を表2に示す。
実施例4において、出力電圧とQ値が共に高くバランスがとれたギャップGは0.5mmであった。ギャップが小さくなるとQ値は未だしも出力電圧は低くなる傾向にある。しかし、0.025mmでも従来例よりは高い値を得られた。
比較例は、前記特許文献3の導電性のシールド部材を設けた構造と類似であると考えられるが、出力電圧は上記実施例とは桁違いに小さくなるので測定はしていない。ギャップGが0mmでは磁束を捕らえる働きが抑制され出力電圧は急減する。また、ギャップGが8.0mm以上になるとQ値が高まるのは銅板の影響がなくなったからと考える。
以上のように本発明によれば、磁心の一部に磁気抵抗の高いギャップ付副磁路部材を設けたことにより、磁心の内部に流入した磁束の一部を内部に留め、高いQ値と高い出力電圧を得ることができる。また、ギャップGの距離はアンテナ構造の違いにより差はあるが、0.025〜3mmの間に調整することが有効である。尚、ギャップ付副磁路部材を用いたアンテナは共振電流による外部へ流出する磁束が減少するので、上記実施例3、4のアンテナを金属製筐体に収めた場合も有利な結果が得られた。
また、上述した通り、磁心を筐体底部に設置しつつその一部を曲げたことにより多くの磁束を収束しつつ、設置自由度を持つ高感度なアンテナが可能となった。磁心は実施例で述べたフェライト、アモルファス、微結晶材料の棒状、板状、線状のいずれでも可能である。また、文字盤を切り抜きコイル部や磁心端部を意匠的に外部に見せることも可能である。尚、磁心の端部を曲げるのは両端に限るものではなく片端だけを曲げても、また曲げる角度も任意で実施できる。また、複数本の細線を束ねてコイルで巻回したワイヤ型のアンテナでも本発明として実施できる。
実施例5として、図4(a)のアンテナ70を製造した。磁心71としてアモルファス合金、Fe−Cu−Nb−Si−B系等のナノ結晶磁性合金、Fe−Si系磁性合金等の軟磁性金属箔帯(板厚20μm以下)を長さ23mm、幅2.5mmとして20〜30層積層した。また、その積層した磁心の片側に、長さ40mm、幅2.5mmの軟磁性金属箔帯をおのおの絶縁被膜した後、4〜10層を積層した。巻線8はこの磁心71の周囲に線径0.07mmのエナメル被膜銅線1200ターンを、長さ12mmの範囲で巻き付けた。その後、後から積層した長い軟磁性金属箔帯の端部同士を対向させ、その中間部をプラスチック(PET)製の介在部材90により固定し、ギャップGを設けた副磁路部材7を形成した。この副磁路部材7により共振時の磁束の回帰ルートを作るが、この回帰量はアンテナの置かれた筐体金属の材質、形状、寸法によって最適値が異なるため、部材の比透磁率、断面積、主磁路部材との接触面積等を適宜増減させて最適値を決定するものである。また、アンテナ自体が小さかったり構造が複雑である場合、副磁路部材の組み付けは実質的に困難を伴い、またコストが増大する。一例として図4(b)のように磁性粉末を含んだ粘性を有する塗料を、コイル外径部を覆い、かつ磁心に連なるように塗布することで副磁路部材とすることも可能である。
次に、ギャップ介さずに副磁路部材を設置した場合の本発明の具体的なアンテナの実施態様を図面と共に説明する。
図5は第6の実施例を示すアンテナの正面図(a)と側面図(b)であり、ボビン等のケースは省略した説明用の概略図である(以下の実施例も同様)。アンテナの磁心1aは、アモルファス合金、Fe−Cu−Nb−Si−B系等のナノ結晶磁性合金、Fe−Si系磁性合金等の軟磁性金属箔帯(板厚20μm以下)を図示のようなバーベル状に打ち抜いたもので、この薄帯を30枚〜40枚を絶縁体を介して積層し一体化している。この磁心の中央部に800〜1400ターン程度のコイル8aを巻回して主磁路部材4aとしている。磁心1aの両端の下端面5aには、エアギャップを設けることなく比透磁率が100以下の副磁路部材3aを接続して閉磁路を構成している。この副磁路部材により共振時の磁束の回帰ルートを作るのであるが、この回帰量はアンテナの置かれた筐体金属の材質、形状、寸法によって最適値が異なるため、部材の比透磁率、断面積、主磁路部材との接触面積等を適宜増減させて最適値を決定する。これについては下述する。
図6は第7の実施例を示すアンテナの正面図(a)と側面図(b)の概略図である。このアンテナは、上記磁心1aと同様に軟磁性金属薄帯の積層体からなる磁心1bと、これに同様に巻回したコイル8bとから主磁路部材4bを構成し、さらに磁心1bと同等あるいはそれ以下の比透磁率を有する第1の副磁路部材7bと前記主磁路部材の両端下端面5bと第1の副磁路部材7bとの間をエアギャップが生じないように比透磁率が100以下の第2の副磁路部材3bを介在させて接続し閉磁路を構成している。第1の副磁路部材7bは、軟磁性フェライト又はアモルファス合金、Fe−Cu−Nb−Si−B系等のナノ結晶磁性合金、Fe−Si系磁性合金等の軟磁性金属箔帯(板厚20μm以下)を積層したものでも良く、磁心1bと同様の積層体あるいはバルク材で良い。但し、その比透磁率としては磁心1bと同等あるいはそれ以下のものを用いる。例えば、磁心1bの比透磁率が100000〜80000であるとき、第1の副磁路部材7bのそれは100000〜300程度とする。その上で両者の間にさらに比透磁率の小さな第2の副磁路部材3bを介在させる。この比透磁率は100以下とし、さらに直交する断面積や主磁路部材との接触面積等を調節して共振時の磁束の回帰ルートを調整するのである。また、本例では主磁路部材4bと第1の副磁路部材7bの積層方向が同じになるようになし、つまり薄帯同士が交差しないようにして共振時の磁束の流れによる渦電流を生じ難くしている。
図7は第8の実施例を示すアンテナの正面図(a)と側面図(b)の概略図である。このアンテナは、磁心1cとコイル8cからなる主磁路部材4cは上記した実施例と同じ構成である。ここでは、第1の副磁路部材7cは磁心1cと同等あるいはそれ以下の比透磁率を有する薄帯を複数枚積層した積層体から構成している。このことは上記第2の実施例と同様である。そして第1の副磁路部材7cと主磁路部材4cの下端面5cとの間にはエアギャップが生じないように第2の副磁路部材3cを接続し、この第2の副磁路部材3cの他面に第1の副磁路部材7cを接続し閉磁路を構成している。また、本例では主磁路部材4cと第1の副磁路部材7cの積層方向が交差しており第2の実施例よりも渦電流を生じ易い構成ではあるが、主磁路部材4cと第1の副磁路部材7cの軸線をずらすことにより磁束の流れが出きるだけ平行に流れるように導き渦電流の抑制を図っている。そして、共振時の磁束の回帰ルートを調整は上記実施例と同様に行うことができる。
尚、主磁路部材の磁心、第1の副磁路部材は金属薄帯の他に、フェライト、アモルファス、ナノ結晶材料等の棒状、板状、線状のいずれの形態でも可能である。
図8は第9の実施例であり、第7の副磁路部材3bを取り除き、エアギャップで構成したアンテナの正面図(a)と側面図(b)の概略図である。副磁路部材7dは磁心4cと同等あるいはそれ以下の比透磁率を有する薄帯を複数枚積層した積層体から構成している。この副磁路部材は主磁路部材の端面5dとエアギャップを介して磁束が通り抜けるようボビン(図示せず)により固定され、閉磁路を構成している。また、本例では主磁路部材と副磁路部材7dの積層方向が交差しておらず第2の実施例と同様に渦電流の発生が生じ難い構成である。
実施例10は、第1の副磁路部材と第2の副磁路部材は図6に示すアンテナ構造のもので、磁心としてMn−Zn系フェライト(日立金属製フェライトMT80D)、断面部が1.5mm角、長さ16mmを使用し、巻線8はフェライトコアの表面を絶縁した線径0.07mmのエナメル被膜銅線1200ターンを、長さ12mmの範囲で巻き付けた。次に、第1の副磁路部材は、板厚0.5mm、幅1.5mm、比透磁率500のフェライト板を用い、第2の副磁路部材は、比透磁率約50の柔軟性複合材を密着して介在させたもので、磁心との接触断面積を一定とし、柔軟性複合材の厚さtを変化させたときのQ値及び感度(出力電圧)を測定した。
このアンテナを図16に示す金属ケース70の中に設置し、外部より電磁波の磁界成分に相当する交流磁界の実効値として周波数40kHz、磁界強度14pTの磁界を印加して出力電圧を測定した。結果を表3に示す。
実施例11は、副磁路部材は図5に示すアンテナ構造のもので、磁心としてMn−Zn系フェライト(日立金属製フェライトMT80D)、断面部が1.5mm角、長さ16mmを使用し、巻線8はフェライトコアの表面を絶縁した線径0.07mmのエナメル被膜銅線1200ターンを、長さ12mmの範囲で巻き付けた。副磁路部材は、板厚0.5mm、幅1.5mm、比透磁率50の柔軟性複合材を用いて主磁路部材(磁心)に密着して接続したものである。このとき、柔軟性複合材の厚さtを変化させたときのQ値及び感度(出力電圧)を測定した。
このアンテナを図16に示す金属ケース70の中に設置し、外部より電磁波の磁界成分に相当する交流磁界の実効値として周波数40kHz、磁界強度14pTの磁界を印加して出力電圧を測定した。結果を表4に示す。
次に、アンテナを内蔵した電波腕時計の正面図および側面図を図11に示す。正面図のアンテナの図示は配置などが分かりやすいようにあえて実線で示している。電波腕時計は金属製(例えばステンレス製)の筐体ケース21と、ムーブメント22と周辺部品、ガラス製の蓋23と、金属製(例えばステンレス製)の裏蓋24とからなり、アンテナ10をムーブメント22と裏蓋24との間に配置している。図1に示すアンテナ10では磁心の端部11を底面から立ち上がるようにガラス蓋23の方向に曲げて配置している。よって、磁心の中央部は裏蓋側に隣接しているものの磁束の出入り口となる磁心端部11は電磁波の入射方向に向いた構造となっている。また、図12に示すように端部31の先端部32は端部とはさらに別の方向に曲げている構造としてもよい。これにより、磁束をさらに捉え易い電波腕時計とすることができる。
時計は駆動機能を集約したムーブメントが大部分の容積を占有し、また人間に対する表示面(文字盤)も必須である。このためアンテナは裏蓋近くに配置することを余儀なくされる。この場合アンテナは周囲を金属部品により囲まれることになるが、この実施例によれば、アンテナの共振電流による磁束が最も多く流出する磁心端部を磁気シールドされた筐体底部周辺の金属から離すように非金属部(ガラス製の蓋等)に向けて曲げて立設している。これにより、外部からの磁束の流入量が多く、筐体底部金属から遠いガラス面近くの磁束をより多く捕らえ、かつ筐体底部の金属接近の影響を最小限にできる。
尚、上記電波腕時計において、立ち上がった磁心の端部を時計文字盤のデザインの一部として表面に現われるようにしても良い。例えば、磁心端部が文字盤を貫き、表示面に現われるようにして、これをひとつのデザインとして利用することである。このとき磁心端部は表示部まで出ているのでより高感度となる。逆に、端部は垂直に立設している必要もない。周囲の状況によって磁束を受けとめやすい方向や角度を有していれば良い。
また、アンテナ1eの配置は、主磁路部材4e側が筐体内の内部(中央)側に向かい、第1、第2の副磁路部材を含む副磁路部材7e,3eが筐体の周縁部側に沿って配置している。この様な配置は、比較的自由度があり感度調整や組立て性に優れた配置である。
他のアンテナを内蔵した電波腕時計の正面図を図13に示す。アンテナの形状が異なる以外は実施例12に示した電波腕時計と構成は同じである。アンテナ1は、電波腕時計の金属製(例えばステンレス製)の筐体ケース21の内周面にほぼ沿うように外形が形成されている。また、副磁路部材7は主磁路と外部の金属製筐体との間に形成した。このように副磁路部材を主磁路の外部の金属製筐体側に形成することで、副磁路部材を主磁路の筐体内部側に設けるよりも、主磁路に流れる磁束が筐体に逃げにくくなり、結果アンテナ特性が向上する。ムーブメントの機構により適宜形状は定められるが、副磁路部材を主磁路の外部の金属製筐体側に形成するように設計することが好ましい。
本発明のアンテナを内蔵したRFIDタグの一種であるキーレスエントリーシステム用のキー本体の正面図を図14に示す。正面図のアンテナの図示は配置などが分かりやすいようにあえて実線で示している。キー本体は金属製の筐体ケース74と、キーの開閉ボタン73と、受発信のための回路基板71と、アンテナ1から主に構成されている。また、図示するように筐体ケースの内面形状に合わせるように、両端の外周が略円弧形状に形成され、キー本体内のスペースを有効活用できるようにしている。副磁路部材7は、キー本体内のスペースを有効活用するために周縁部側に沿って設けている。
また、別のアンテナの配置として、図15に示すように、副磁路部材3,7をプリント配線基板200側として接着し、磁心の端部をプリント配線基板から離れるように曲げて設置することもできる。なお、図15における磁心はMn−Zn系フェライト(日立金属製フェライトMT80D)、副磁路部材3は品名:日立金属製K−E050のアブソシールド材、副磁路部材7は品名:日立金属製K−E025のアブソシールド材を用いた。サイズはアンテナ全体の長さが11mm、高さが2.9mm、幅3mmである。また、副磁路部材3の厚みは0.5mm、副磁路部材7の厚みは0.25mmとして製造した。なお、プリント配線基板は多種多様な配線および回路部品が組み込まれるため、今回の試験においてはプリント配線基板のアンテナ設置面の裏側に鉄板201を一面に貼り付け、周波数は125KHz感度測定(出力電圧測定)の磁界強度を45nTとして試験を行った。出力電圧とQ値を表5に示す。また、比較として副磁路部材を設けなかったアンテナで測定した出力電圧とQ値も併記する。
3、7:副磁路部材
4a〜4d:主磁路部材
8:コイル、巻線
9:渦電流
10,30,50,70:アンテナ
21:金属製筐体
22:ムーブメント
23:ガラス製蓋
24:裏蓋
25:樹脂製筐体
26:周辺部品
70:金属製筐体
G:ギャップ、エアギャップ
Claims (12)
- 磁性体からなる磁心にコイルを巻回した主磁路部材を有し、電磁波の磁界成分を前記主磁路部材で受信する磁気センサ型のアンテナにおいて、
前記主磁路部材と、前記主磁路部材とは別体の副磁路部材を設け、前記副磁路部材はその両端部が前記主磁路部材とギャップを介して隣接するように配置され、かつ前記主磁路部材と副磁路部材は互いの隣接する側の面の少なくとも一部が平面状に形成されていることを特徴とするアンテナ。 - 前記主磁路部材の磁心は薄帯の単体又は薄帯の積層体であることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
- 前記副磁路部材が前記主磁路部材の薄帯に対して薄帯の同一面における側面方向に配置されたことを特徴とする請求項2に記載のアンテナ。
- 前記副磁路部材は薄帯の単体又は薄帯の積層体であり、前記主磁路部材の磁心の薄帯と副磁路部材の薄帯が平行に配置されたことを特徴とする請求項3に記載のアンテナ。
- 前記磁心は板状のフェライトからなることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
- 当該ギャップは0.025〜3mmとしたことを特徴とする請求項1乃至5に記載のアンテナ。
- 前記副磁路部材が前記主磁路部材より小さい比透磁率を有する材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載のアンテナ。
- 前記アンテナは金属製筐体、もしくは金属製部材が内部に備えられた筐体内に設置され、前記筐体内に設置された場合、前記金属製筐体もしくは金属製部材に対して、前記磁心の端部を遠ざかる方向に曲げたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のアンテナ。
- 前記磁心端部の先端部をさらに異なる方向に曲げたことを特徴とする請求項8に記載のアンテナ。
- 金属製筐体、ムーブメント(周辺部品含む)、非金属製蓋、金属製裏蓋を有する腕時計に磁気センサ型のアンテナを内蔵した電波時計において、前記磁気センサ型のアンテナは、請求項1乃至9の何れかに記載のアンテナを用い、前記主磁路部材が前記金属製筐体の内部側に、前記副磁路部材が金属製筐体の周縁部側に配置されていることを特徴とする電波時計。
- 請求項1乃至9の何れかに記載のアンテナを当該アンテナを内蔵する送受信器の何れかに用いたことを特徴とするキーレスエントリーシステム。
- 請求項1乃至9の何れかに記載のアンテナをRFIDタグに内蔵して用いたことを特徴とするRFIDシステム。
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