JP4901343B2 - 定着ローラ、定着装置、及び、画像形成装置 - Google Patents
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Description
ここで、定着補助ローラは、芯金上に弾性を有する断熱層(断熱弾性層)が形成されたものである。定着補助ローラの外周面に断熱弾性層を設けることによって、定着ニップ部におけるニップ量が確保されるとともに、定着スリーブの熱が定着補助ローラ側に伝わる熱損失が軽減される。
一般的な画像形成装置は、幅方向のサイズが異なる数種類の記録媒体に対して、画像形成ができるように構成されている。ここで、幅方向サイズの異なる記録媒体とは、JIS寸法のA列やB列における種々の定形サイズの記録媒体の他に、不定形サイズの記録媒体も含まれる。また、同一サイズ(例えば、A4サイズである。)の記録媒体であっても、長手方向を搬送方向にした場合と、短手方向(長手方向に直交する方向である。)を搬送方向にした場合とでは、幅方向サイズの異なる記録媒体を扱っていることになる。
しかし、その場合であっても、定着ニップ部におけるニップ量を充分に確保して良好な定着性を維持するとともに、立ち上げ時間(昇温時間)を充分に短くする必要がある。特に、高速の画像形成装置では、記録媒体の搬送速度が速いために、定着ニップ部におけるニップ量を充分に確保する必要がある。
また、上述の特許文献4、特許文献5等の技術は、加圧ローラ(又は断熱ローラ)の断熱性を向上させるために、加圧ローラ(又は断熱ローラ)の断熱層の表面を凹凸状に形成するものであって、上述した定着ローラの過昇温等の不具合を抑止する効果は期待できない。
すなわち、定着スリーブの発熱層を所定のキューリー点を有する材料にて形成するとともに、定着補助ローラにおいて断熱弾性層の下層に低抵抗層を設けることで、定着ローラの自己温度制御性がさらに高まる。すなわち、定着ローラの内部から外周面側に向けて低抵抗層、断熱弾性層、発熱層を順次設けることによって、定着ローラの過昇温が制限されてホットオフセット等の不具合が抑止される。しかし、その場合であっても、断熱弾性層の層厚が厚すぎると、定着ニップ部のニップ量は確保できるものの、定着ローラの自己温度制御性が低下してしまう。これに対して、断熱弾性層の層厚が薄すぎると、定着ローラの自己温度制御性は向上するものの、定着ニップ部のニップ量が確保できなくなってしまう。
ところが、断熱弾性層の外周面の周方向に沿って凹部と凸部とを交互に連続的に形成すると、断熱弾性層の層厚がある程度薄くても、加圧部材の加圧力により断熱弾性層がつぶれやすくなって、充分なニップ量を確保することができる。さらに、断熱弾性層に凹部を設けることで断熱弾性層と定着スリーブとの接触面積が低下するために、断熱弾性層の外周面全域が定着スリーブに接触しているものに比べて、定着スリーブの熱が定着補助ローラ側に伝わる熱損失が軽減されて、定着ローラ全体の昇温効率が向上する。
図1〜図7にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのタンデム型カラー複写機の装置本体、2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部、3は原稿Dを原稿読込部4に搬送する原稿搬送部、4は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、7は転写紙等の記録媒体Pが収容される給紙部、9は記録媒体Pの搬送タイミングを調整するレジストローラ、11Y、11M、11C、11BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される感光体ドラム、12は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上を帯電する帯電部、13は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成される静電潜像を現像する現像部、14は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成されたトナー像を記録媒体P上に重ねて転写する転写バイアスローラ、15は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の未転写トナーを回収するクリーニング部、を示す。
まず、原稿Dは、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス5上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス5上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
書込み部2において、4つの光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応してそれぞれ射出される。各レーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれ、転写ベルト17との対向部に達する。ここで、それぞれの対向部には、転写ベルト17の内周面に当接するように転写バイアスローラ14が設置されている。そして、転写バイアスローラ14の位置で、転写ベルト17上の記録媒体Pに、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(転写工程である。)。
その後、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、不図示の除電部を通過して、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKにおける一連の作像プロセスが終了する。
その後、転写ベルト17表面は、転写ベルトクリーニング部16の位置に達する。そして、転写ベルト17上に付着した付着物が転写ベルトクリーニング部16に回収される。
詳しくは、記録媒体Pを収納する給紙部7から、給紙ローラ8により給送された記録媒体Pが、不図示の搬送ガイドを通過した後に、レジストローラ9に導かれる。レジストローラ9に達した記録媒体Pは、タイミングを合わせて、転写ベルト17の位置に向けて搬送される。
そして、定着工程後の記録媒体Pは、不図示の排紙ローラによって、装置本体1外に出力画像として排出されて、一連の画像形成プロセスが完了する。
図2は定着装置を示す断面図であって、図3は定着ローラ20の構成を示す断面図である。なお、図3は定着ローラ20における一方の幅方向端部を示すが、他方の幅方向端部も同様に構成されている。
図2に示すように、定着装置19は、磁束発生手段としての誘導加熱部25、誘導加熱部25に対向する定着ローラ20、定着ローラ20に圧接する加圧部材としての加圧ローラ30、等で構成される。定着ローラ20は、主として、定着スリーブ21と定着補助ローラ22とで構成されている。
定着スリーブ21の発熱層21dは、所定のキューリー点を有していて、ニッケル、鉄、クロム、コバルト、銅、又は、それらの合金等の磁性導電性材料で形成することができる。本実施の形態1では、発熱層21dの材料として、層厚が50μm程度であってキューリー点が定着可能温度以上であって300℃以下となる整磁合金を用いている。具体的には、ニッケル、鉄、クロムの合金であって、各材料の添加量と加工条件とが調整されてキューリー点が250℃程度に設定されている。このように、発熱層21dを整磁合金層とすることで、定着ローラ20の自己温度制御性が担保されることになる。
定着スリーブ21の離型層21aは、層厚が30μm程度であって、PFA等のフッ素化合物で形成される。離型層21aは、トナー像(トナー)Tが直接的に接する定着スリーブ21表面のトナー離型性を高めるためのものであって、チューブ材を用いることができる。
なお、定着スリーブ21の構成は、本実施の形態1のものに限定されることなく、例えば、銅からなる第2発熱層21cの防錆性を高めるためにニッケル層等を設けることもできる。
発熱層21d(断熱弾性層23)の下層に体積抵抗率が5.0×10-8Ω・m以下となるように形成された低抵抗層としての芯金24を設けることで、定着ローラ20の自己温度制御性がさらに高められる。すなわち、発熱層21dの温度がキューリー点に達したときに、発熱層21dが磁性を失うとともに磁束が発熱層21dを突き抜けて低抵抗層24に達するために、発熱層21dにおける渦電流負荷dが低下して発熱しにくくなる。これについては、後で図7を用いて説明する。
なお、本実施の形態1では、低抵抗層24(芯金)を断熱弾性層23の直下に形成したが、低抵抗層24(芯金)と断熱弾性層23との間に別の層を設けることもできる。また、低抵抗層24の材料としては、体積抵抗率が5.0×10-8Ω・cm以下となる良導体であれば、アルミニウムの他に、銅等を用いることもできる。
ここで、図4を参照して、定着補助ローラ22の断熱弾性層23は、外周面の周方向に沿って凹部23bと凸部23aとが交互に連続的に形成されている。具体的には、凹部23bが幅方向にわって溝状に形成されている。断熱弾性層23は、定着ニップ部におけるニップ量を確保するとともに、定着スリーブ21の熱が定着補助ローラ22側に伝わる熱損失を軽減するためのものである。
詳しくは、断熱弾性層23の外周面を凹凸状に形成しない場合(従来の形状である。)には、図5(B)に示すように、断熱弾性層23の層厚が薄いと断熱弾性層23(定着補助ローラ22)の変形が規制されて、定着ニップ部のニップ量N2が充分に確保できなくなってしまう。
これに対して、本実施の形態1では、断熱弾性層23の外周面を凹凸状に形成しているために、図5(A)に示すように、断熱弾性層23の層厚が薄くても断熱弾性層23(定着補助ローラ22)が変形しやすい。これにより、ニップ量N1が充分に確保できることになる(N1>N2である。)。
図6中のグラフQ1は、本実施の形態1における定着ローラを用いた場合の、発熱層21d−低抵抗層24間の距離Mと発熱低下率との関係を示すグラフである。ここで、発熱低下率(発熱抑制率)Wは、自己温度制御性を示す値であって、発熱層21dの温度がキューリー点に達する前の発熱量をW1として、発熱層21dの温度がキューリー点に達したときの発熱量をW2としたときに、
W=|(W2−W1)/W1|
なる式で求められる。
不図示の駆動モータによって定着ローラ20が図2の時計方向に回転駆動され、それにともない加圧ローラ30が反時計方向に回転する。そして、定着スリーブ21は、誘導加熱部25との対向位置(対向面)で、誘導加熱部25から発生される磁束によって加熱される。
詳しくは、先に説明した作像プロセスを経てトナー像Tを担持した記録媒体Pが、不図示のガイド板に案内されながら定着ローラ20と加圧ローラ30との間に送入される(矢印Y1の搬送方向の移動である。)。そして、定着ローラ20から受ける熱と加圧ローラ30から受ける圧力とによってトナー像Tが記録媒体Pに定着されて、記録媒体Pは定着ローラ20と加圧ローラ30との間から送出される。
このような一連の動作が連続的に繰り返されて、画像形成プロセスにおける定着工程が完了する。
d=ρ/δ
ただし、発熱層の層厚tが浸透深さ以下である場合には、上式は、
d=ρ/t
となる。なお、浸透深さδは次式で求まる。
δ(m)=503・〔ρ/(μf)〕1/2
上式において、ρは発熱層の体積抵抗率(Ω・m)であり、μは発熱層の比透磁率であり、fは発熱層を励磁する交番電流の周波数(Hz)である。
図8にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図8は、実施の形態2における定着ローラの定着補助ローラを示す断面図である。本実施の形態2における定着補助ローラは、凹部23b上に第2低抵抗層40が設けられている点が、前記実施の形態1のものとは相違する。
図6のグラフQ2は、本実施の形態2における定着ローラを用いた場合の、発熱層21d−低抵抗層24間の距離Mと発熱低下率との関係を示すグラフである。図6中のグラフQ1と比較して、第2低抵抗層40を設けることで、発熱低下率(自己温度制御性)が向上していることがわかる。
第2低抵抗層40の層厚が50μmよりも薄いと、第2低抵抗層40の発熱量が大きくなり過ぎてしまう可能性がある。ただし、第2低抵抗層40は定着スリーブ21に接触していないために、第2低抵抗層40の発熱が大きな問題になることはない。
これに対して、第2低抵抗層40の層厚が150μmよりも厚いと、断熱弾性層23の変形に影響して定着ニップ部におけるニップ量を確保できなくなる可能性がある。
図9及び図10にて、この発明の実施の形態3について詳細に説明する。
図9は、実施の形態3における定着ローラの定着補助ローラを示す斜視図であって、前記実施の形態1における図4に相当する。また、図10は、図9の定着補助ローラに形成される第2低抵抗層の展開図である。本実施の形態3における定着補助ローラは、断熱弾性層の幅方向両端部が周方向にわたって凹部のみで形成されている点が、前記実施の形態1のものとは相違する。
具体的に、図10に示すように、定着補助ローラ22に組み付ける前の第2低抵抗層40は、概矩形の薄膜状アルミニウムに複数の矩形の穴部40aが形成されたものである。そして、第2低抵抗層40の穴部40aを断熱弾性層23の凸部23aにはめ込んで第2低抵抗層40を接着することで、定着補助ローラ22の組み付けが完了する。このように、第2低抵抗層40が一体化されることで、定着補助ローラ22の組み付け性が向上するとともに、第2低抵抗層40の接着面積が大きくなって定着補助ローラ22からの第2低抵抗層40の剥離が抑止される。
図11及び図12にて、この発明の実施の形態4について詳細に説明する。
図11は、実施の形態4における定着ローラの定着補助ローラを示す斜視図であって、前記実施の形態1における図4に相当する。また、図12は、図11の定着補助ローラに形成される第2低抵抗層の展開図である。本実施の形態4における定着補助ローラは、断熱弾性層の凹部と凸部とが格子状に形成されている点が、凹部が幅方向にわたって溝状に形成されている前記実施の形態1のものとは相違する。
ただし、本実施の形態4における断熱弾性層23は、凹部23bと凸部23aとが外周面全域にわたって格子状に形成されている。すなわち、外周面の周方向に加えて幅方向に沿っても凹部23bと凸部23aとが交互に連続的に形成されている。さらに換言すると、断熱弾性層23は、幅方向の複数箇所が周方向にわたって凹部23bのみで形成されていて、外周面全域の凹部23bが同一面上に形成されるように構成されている。
具体的に、図12に示すように、定着補助ローラ22に組み付ける前の第2低抵抗層40は、概矩形の薄膜状アルミニウムに複数の穴部40aが網目状に形成されたものである。そして、第2低抵抗層40の穴部40aを断熱弾性層23の凸部23aにはめ込んで第2低抵抗層40を接着することで、定着補助ローラ22の組み付けが完了する。このように、第2低抵抗層40が一体化されることで、定着補助ローラ22の組み付け性が向上するとともに、第2低抵抗層40の接着面積が大きくなって定着補助ローラ22からの第2低抵抗層40の剥離が抑止される。
さらに、第2低抵抗層40を網目状に形成することで、一体化された第2低抵抗層40の曲げ変形が容易になって、定着補助ローラ22への組み付け性がさらに向上する。
19 定着装置、
20 定着ローラ、
21 定着スリーブ、
21a 離型層、 21b 弾性層、 21c 第2発熱層(銅層)、
21d 発熱層(整磁合金層)、
22 定着補助ローラ、
23 断熱弾性層、
23a 凸部、 23b 凹部、
24 芯金(低抵抗層)、
25 誘導加熱部(磁束発生手段)、
26 コイル部、 27 コア部、
28 コイルガイド、 29 カバー部材、
30 加圧ローラ(加圧部材)、
40 第2低抵抗層、 40a 穴部。
Claims (14)
- 磁束発生手段により発生される磁束によって加熱されるとともに所定のキューリー点を有する発熱層を具備し、トナー像を溶融して記録媒体に定着する定着スリーブと、
外周面に断熱弾性層を具備するとともに当該断熱弾性層の下層に体積抵抗率が5.0×10-8Ω・m以下となるように形成された低抵抗層を具備し、前記定着スリーブに内挿された定着補助ローラと、を備え、
前記定着補助ローラの前記断熱弾性層は、外周面の周方向に沿って凹部と凸部とが交互に連続的に形成され、
前記断熱弾性層の前記凹部上に体積抵抗率が5.0×10 -8 Ω・m以下となるように形成された第2低抵抗層を具備したことを特徴とする定着ローラ。 - 前記第2低抵抗層は、その層厚が50〜150μmになるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の定着ローラ。
- 前記断熱弾性層は、幅方向両端部が周方向にわたって凹部のみで形成されて外周面全域の凹部が同一面上に形成されるように構成され、
前記第2低抵抗層は、前記外周面全域の凹部上に一体的に形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着ローラ。 - 前記断熱弾性層は、幅方向の複数箇所が周方向にわたって凹部のみで形成されて外周面全域の凹部が同一面上に形成されるように構成され、
前記第2低抵抗層は、前記外周面全域の凹部上に一体的に形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着ローラ。 - 前記第2低抵抗層は、アルミニウムからなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の定着ローラ。
- 前記凹部は、幅方向にわって溝状に形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の定着ローラ。
- 前記凹部と前記凸部とは、外周面全域にわたって格子状に形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の定着ローラ。
- 前記低抵抗層は、アルミニウムからなることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の定着ローラ。
- 前記低抵抗層は、前記定着補助ローラの芯金であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の定着ローラ。
- 前記発熱層は、整磁合金で形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の定着ローラ。
- 前記定着スリーブは、前記発熱層よりも体積抵抗率の低い第2発熱層を具備したことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の定着ローラ。
- 前記第2発熱層は、銅からなることを特徴とする請求項11に記載の定着ローラ。
- 請求項1〜請求項12のいずれかに記載の定着ローラと、前記定着ローラに圧接する加圧部材と、前記磁束発生手段と、を備えたことを特徴とする定着装置。
- 請求項13に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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