JP5439993B2 - 定着部材及びその製造方法、並びに定着装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
また、フルカラーの複写機やレーザプリンタでは、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の4色のカラートナーが用いられる。カラー画像の熱定着時には、これらのカラートナーを溶融状態で混合する必要があり、トナーを低融点化して溶融しやすくするとともに、加熱定着ローラの表面で、複数種のカラートナーを包み込むようにして溶融状態で、均一に混合させることが必要になる。
しかし、トナー中の多量のワックスは表面に露出している割合が多く、これがローラフィルミングやキャリアスペントを発生させる原因となり、更に低粘度ワックスが多量に配合されているために、トナー本体の凝集力の低下によるオフセットが発生するなど、大きな副作用があるという問題点が指摘されている。また、ローラフィルミングやキャリアスペントなどの問題点は、重合トナーなどを多層構造にすることにより緩和されるが、凝集力の低下の問題点は防止できない。
更に、多量のオイル塗布はオイルにより用紙がベトベトになるなどの汚染の問題を有する。この問題は、塗布量を絞るよう調節することにより解決可能であるが、このように量を絞るような調整をすると定着の離型面でオイルがはじかれ、該はじかれたオイルが玉状になって定着面を均一に被覆できず、離型効果がなくなってしまうという問題がある。
前記強制的な剥離部材としては、通常、分離爪と呼ばれる部材を定着部材に当接し、定着部材への用紙の巻きつきを防止する方法が採用されている。
しかし、このように分離爪を定着部材に当接させると、分離爪の当接部が定着部材を傷を付け、定着工程で傷が転写され、異常画像が生じることがある。そのため、分離爪に摺動性のよいフッ素系樹脂の表層を設けたり、当接部付近の角を丸めるなどして、定着部材への攻撃性を抑える工夫が施されているが、印刷動作の際に発生する紙粉が分離爪と定着部材の間に挟まると、紙粉が分離爪によって定着部材へ押し付けられ、やはり傷発生の原因となり、異常画像が生じることがある。
前記問題点を解決するため、例えば分離時に用紙を定着面とは反対の方向へ排紙する技術と、定着部材に非接触状態で紙等の記録媒体の分離を促進する部材(分離板)を組み合わせた方式(分離板方式)が提案されている(特許文献1参照)。このような分離板を用いることで、定着部材を傷つけることなく、記録媒体と定着部材の分離を促進することが可能となる。
しかし、前記分離板方式は、初期分離の機能が紙の腰強さに依存しているため、線速が早くなると初期分離が遅れがちになる。即ち、紙等の記録媒体が静電的、化学的に定着部材と付着していると分離機能が大幅に低下し、特に高線速での分離性能が不十分となる傾向にある。また、粘着トナーの多いコピーパターンの場合、初期分離が遅れ、分離板に画像部が接触してしまい、スジなどの画像不良が発生する。その結果、線速が上がると分離板に紙詰まり(ジャム)が生じてしまう。そのため、前記分離板方式は、低線速及び中線速の複写機に選択的に用いられている。
また、特許文献3には、トナーの離型剤であるワックス成分を保持できるような凹部を設けることが記載されているが、同一部材(硬度)による表層加工による形状効果のため、濡れ性の変化はなくワックス保持力は低い。また、固定化された表面加工が出力画像に転写され、画像の光沢度が低下し、画像品質を低下させてしまうことがある。
<1> 現像剤で形成された未定着現像剤像を記録媒体に定着させる定着部材であって、
前記定着部材が、基材と、該基材の外周に設けられ弾性変形特性を有する弾性層と、該弾性層の外周に設けられ前記記録媒体の分離を促進する離型層とを有し、
前記離型層が、該離型層の表面部位より反対側の面に向けて複数の貫通孔を有し、前記未定着現像剤像を前記記録媒体に定着させる圧力付与により、前記離型層に接する前記弾性層の一部が前記貫通孔を埋設可能であることを特徴とする定着部材である。
該<1>に記載の定着部材においては、弾性層と離型層とを有し、該離型層の表面部位より反対側の面に向けて複数の貫通孔を有し、前記未定着現像剤像を前記記録媒体に定着させる圧力付与により、前記離型層に接する前記弾性層の一部が前記貫通孔を埋設する。該定着部材を画像形成装置の定着装置に用いると、記録媒体の巻きつきのない安定した定着分離プロセスを実現でき、定着加圧ニップ時に画像表面の粗さを増加させることなく、高光沢な高画質画像が得られる。
<2> 未定着現像剤像を記録媒体に定着させる圧力付与により、離型層に接する弾性層の一部が貫通孔を埋設すると共に、定着加圧時に前記離型層の表面が平滑面を形成する前記<1>に記載の定着部材である。
<3> 定着部材における基材が、円筒形状からなる中空構造を有し、該中空構造に加熱媒体を備えている前記<1>から<2>のいずれかに記載の定着部材である。
<4> 離型層を構成する材料が、フッ素系ポリマーを含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の定着部材である。
<5> 弾性層を構成する材料が、ゴム材料である前記<1>から<4>のいずれかに記載の定着部材である。
<6> ゴム材料が、シロキサン結合を分子配列の主鎖成分に有する前記<5>に記載の定着部材である。
<7> ゴム材料が、フロロシリコーンゴムである前記<5>から<6>のいずれかに記載の定着部材である。
<8> 弾性層のユニバーサル硬度が、離型層のユニバーサル硬度と同等であるか、又は離型層のユニバーサル硬度よりも低い前記<1>から<7>のいずれかに記載の定着部材である。
該<8>に記載の定着部材においては、弾性層のユニバーサル硬度が、離型層のユニバーサル硬度と同等であるか、又は離型層のユニバーサル硬度よりも低いので、該定着部材を画像形成装置の定着手段に用いると、記録媒体の巻きつきのない安定した定着分離プロセスを実現でき、定着加圧ニップ時に画像表面の粗さを増加させることなく、高光沢な高画質画像が得られる。
<9> 弾性層表面の純水に対する後退接触角が、離型層表面の純水に対する後退接触角よりも低い前記<1>から<8>のいずれかに記載の定着部材である。
<10> 基材上に弾性層を形成する弾性層形成工程と、
前記弾性層上に粉体を付着させる粉体付着工程と、
前記粉体上に離型層を形成する離型層形成工程と、
前記離型層表面から粉体を除去して、該離型層に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と
を含むことを特徴とする定着部材の製造方法である。
<11> 粉体の除去が離型層表面を乾燥した布で擦ることにより行われる前記<10>に記載の定着部材の製造方法である。
<12> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の定着部材を有することを特徴とする定着装置である。
該<12>に記載の定着装置においては、本発明の前記定着部材を備えているので、耐久性及び信頼性が向上する。
<13> 現像剤で形成された未定着現像剤像を記録媒体に定着させる際に、前記<1>から<9>のいずれかに記載の定着部材における離型層を、前記未定着現像剤像と当接する向きで配設することを特徴とする定着方法である。
<14> 静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
前記定着手段が、前記<12>に記載の定着手段であることを特徴とする画像形成装置である。
該<14>に記載の画像形成装置においては、本発明の前記定着手段を有しているので、高耐久、高信頼を有する電子写真方式の複写機、ファクシミリ、レーザビームプリンタなどに利用可能であり、「環境負荷低減」や「顧客満足の向上」に寄与することができる。
本発明の定着部材は、現像剤で形成された未定着現像剤像を記録媒体に定着させる部材であり、基材と、該基材の外周に設けられ弾性変形特性を有する弾性層と、該弾性層の外周に設けられ前記記録媒体の分離を促進する離型層とを有してなり、更に必要に応じてその他の層、例えば定着部材の各層の間にプライマー層を設けてもよく、離型層表面には該離型層の表面を改質するための改質層を有していてもよい。
ここで、前記未定着現像剤像を前記記録媒体に定着させる圧力付与とは、前記定着部材とその対に配される加圧部材との間でニップ形成されている部位の圧力を意味しており、圧力範囲は、その構成により適宜設定されるが、面圧5N/cm2〜50N/cm2が好ましい。
前記最表層である離型層がその下層である弾性層まで達する多数の貫通孔を有する。即ち、前記離型層は、貫通孔の底面が露出した弾性層からなり、断面で見ると、離型層は弾性層にまで達する複数の凹部を有する。
ここで、定着加圧時に前記離型層の表面が平滑面であることは、定着部材の離型層表面に石英板(厚み2mm)を、圧力(10N/cm2)を加えて接触させ、定着部材表面の凹凸高低差(10点平均値)を測定した結果が、0.5μm以下であることを意味する。
未定着現像剤像を記録媒体に定着させる際に、離型層が未定着現像剤像と当接する向きで配置されることが、離型層表面へのトナーの付着を防止し、高画質が得られる点で好ましい。
前記弾性層のユニバーサル硬度が前記離型層のユニバーサル硬度よりも同等を超えて高いと、前記離型層の厚みによっては定着加圧時に平滑面を得られず、定着画像の表面粗さを増加させ、画像不良となることがある。
ここで、前記弾性層及び前記離型層のユニバーサル硬度は、市販の硬度測定装置を用いて行うことができ、例えば、超微小硬度計(WIN−HUD、フィッシャー社製)などを用いて測定することができる。前記超微小硬度計を用いてユニバーサル硬度を測定する場合、例えば下記条件で所定の押し込み深さまで徐々に圧子を定着部材に押し込んでいき、押し込み深さが所望の深さに達した時点での荷重と圧子の接触面積とからユニバーサル硬度を求める。
−測定条件−
・圧子:対面角度136度の四角錐ダイヤモンド圧子
・初期荷重:0.02mN
・最大荷重:5mN〜400mN
・初期荷重から最大荷重までの荷重増加時間:10秒〜60秒
前記離型層のユニバーサル硬度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、0.8N/mm2〜4.0N/mm2(5μm押し込み時)が好ましい。
前記離型層のユニバーサル硬度Aと前記弾性層のユニバーサル硬度Bとの差(A−B)は、0N/mm2〜3.75N/mm2であることが好ましい。
前記離型層表面の純水に対する後退接触角Cと、前記弾性層表面の純水に対する後退接触角Dとの差(C−D)が0.1°〜70°であることが好ましい。
前記弾性層表面の純水に対する後退接触角は、30°以上80°未満が好ましい。
前記離型層表面の純水に対する後退接触角は、80°以上100°以下が好ましい。
ここで、前記後退接触角は、例えば協和界面科学株式会社製DropMasterDM700を用いて測定することができる。なお、前記純水による後退接触角は溶融トナーによる接触角と比例関係を持っている。
前記基材としては、その形状、構造、厚み、材質、大きさ等としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。
前記形状としては、特に制限はなく、目的に応じて選択することができるが、例えば、平板状、ベルト状、円筒状、などが挙げられる。
前記構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐熱性を有するものが好ましく、例えば、樹脂、金属、などが挙げられる。
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES、PPS、フッ素樹脂、などが挙げられる。
また、前記樹脂に磁性導電性粒子を分散したものを用いることもできる。その場合、樹脂に対して磁性導電性粒子を20質量%〜90質量%の範囲内で添加することが好ましい。具体的には、ワニス状態の樹脂材料中に、ロールミル、サンドミル、遠心脱泡装置等の分散装置を用いて磁性導電性粒子を分散する。これを溶剤により適当な粘度に調整して、金型により所望の厚みに成形する。
前記金属としては、例えばニッケル、鉄、クロム、又はこれらの合金であって、それ自体が発熱してもよい。
これらの中でも、前記基材が円筒形状からなる中空構造を有し、該中空構造に加熱媒体を備えていることが、加熱効率の点で特に好ましい。
前記加熱媒体としては、例えばハロゲンヒータ、セラミックヒータ、誘導加熱可能な金属ローラなどが挙げられる。
前記金属材料の場合には、各材料の添加量と加工条件とを調整することで所望のキューリー点を得ることができ、キューリー点が定着ベルトの定着温度近傍となる磁性導電性材料にて発熱層を形成することで、発熱層は電磁誘導によって過昇温されることなく加熱できる。
前記弾性層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐熱性のある弾性体であり、離型層よりも離型剤に対する濡れが高い材質が好ましく、例えば天然ゴム、SBR、ブチルゴム、クロロプレンゴム、二トリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、フッ素ゴム、液状フッ素エラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、耐熱性の点からシロキサン結合を分子配列の主鎖成分に有する弾性ゴムが好ましく、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロカーボンシロキサンゴム、液状フッ素エラストマーがより好ましく、耐熱性、離型剤濡れ性の点からフロロシリコーンゴムが特に好ましい。
前記弾性層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、100μm〜250μmが好ましい。
最表層である離型層としては、例えば四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系ポリマー;これらのポリマーの混合物、又はこれらのポリマーを耐熱性樹脂・ゴムに分散させたもの、またシリコーン架橋反応基中にフッ素化ポリエーテルを持つフッ素系エラストマーなどが適用できる。これらの中でも、強度、平滑性を両立する点からフッ素系ポリマーを有するものが特に好ましい。
前記非晶質樹脂としては、例えば主鎖にパーフルオロポリエーテルを有する樹脂などが挙げられる。
前記加水分解可能な基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;メトキシシラン基、エトキシシラン基等のアルコキシシラン基などが挙げられる。
前記離型層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばチューブ状にしたものを弾性層に被せてもよく、湿式スプレー塗装法、粉体塗装後に焼き付ける方法、などが挙げられる。
ここで、前記離型層の厚みは、例えばXPSにてSiO2換算の膜厚として計測することができる。XPSはQuantera SXM(アルバックファイ社製、イメージングXPS)を用いた。XPS測定条件は、X線として単色化AlKα線(1486.6eV、X線スポット100μm)を用い、また、測定時の帯電補正のために、中和電子銃1eV、アルゴンイオン銃7eVを使用した。更に、測定は、試料法線方向より25°方向からX線を入射し、試料法線方向より20°方向で光電子を検出することにより行った。C60スパッタリングは、C60イオン銃(PHI06−C60、アルバックファイ社製)を用い、試料法線方向に対して70°の方向から行った。加速電圧は10kV、スパッタリング速度はSiO2をスパッタリングする場合で1nm/分であった。更に、スペクトルの解析はMultiPakV6.1A(アルバックファイ社製)を用いて行った。最表層からスパッタリングを行い、スペクトルC1sのCF2結合のケミカルシフトがなくなった時点を膜厚としている。
本発明の定着部材の製造方法は、基材上に弾性層を形成する弾性層形成工程と、
前記弾性層上に粉体を付着させる粉体付着工程と、
前記粉体上に離型層を形成する離型層形成工程と、
前記離型層表面から粉体を除去して、該離型層に貫通孔を形成する貫通孔形成工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
前記粉体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばPFA粒子、PTFE粒子、あるいは表面をフッ素化した無機粉体粒子(シリカビーズ等)などが挙げられる。
前記粉体の平均粒径は、0.2μm〜50μmであることが好ましい。
前記粉体は、粉体塗装にて弾性層に付着させることが好ましい。粉体の付着量は対象となる部材の表面積により適宜調整可能であるが、83g/m2〜166g/m2であることが好ましい。
本発明の定着装置は、本発明の前記定着部材を有し、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
前記定着部材としては、例えば定着ベルト、定着ローラなどが挙げられる。前記定着ベルトは支持ローラと定着補助ローラとの間を張架され、支持されている。
本発明の定着方法は、現像剤で形成された未定着現像剤像を記録媒体に定着させる際に、本発明の前記定着部材における離型層を、前記未定着現像剤像と当接する向きで配設するものである。
埋められた凹部の深さは、2μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。前記凹部の深さが、2μmを超えると、画像に転写された凹部により、光沢ムラによる画像不良が生じることがある。
また、離間時には定着時に圧着されていた定着部材の凹部が定着圧力解除される際に、弾性層が戻り、定着部材表面に凹部が再形成され、溶融トナーと定着部材との間にキャビテーションを発生させることで記録媒体と定着部材との接触面積を強制的に低減して記録媒体を剥離することが可能となり、結果として紙詰まりのない、安定した定着装置が得られる。
従来のように離型層がフッ素樹脂のみの平滑面である場合は、溶融した離型剤もはじかれてしまうため部分的に離型剤が少ない部分が発生し、この離型剤が少ない部分が、溶融トナーと定着部材を融着して溶融トナー樹脂との剥離を不安定にし、結果として紙つまりや画像不良を発生させる。
しかし、本発明においては、離型剤207が均等に形成された凹部204に入り込むことにより、トナー206との離型を確保するとともに、定着部材上に離型剤を均等に保持することが可能となり、結果として記録媒体上に形成された溶融トナーと定着部材との離型が担保され、画像不良や紙つまり不良の発生を低減させることができる。
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
前記定着手段が、本発明の前記定着装置である。
前記静電潜像担持体(以下、「電子写真感光体」、「感光体」、「像担持体」と称することがある)としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体、などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコン等が好ましい。
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。
前記露光器としては、前記帯電器により帯電された前記静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
前記現像手段は、前記静電潜像を、トナー乃至現像剤を用いて現像して可視像を形成する手段である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を収容し、前記静電潜像に該トナー乃至該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
前記転写手段は、前記可視像を記録媒体に転写する手段であるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、前記トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを含む態様がより好ましい。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、前記記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
前記定着手段としては、本発明の前記定着装置が用いられる。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサ、コンピュータ等の機器が挙げられる。
このような定着装置5においては、本発明の前記定着部材を備えた加熱定着ローラ110を使用している。このような加熱定着ローラ110は、芯金の中空部に回転中心線に沿ってハロゲンランプ等のヒータを配置し、その輻射熱によって加熱定着ローラ110を内側から加熱するようになっており、熱効率を高める効果がある。
円筒状の長さ320mm、直径60mm、厚み50μmの基材(ポリイミド樹脂製)上にシリコーン用プライマー層を下地として乾燥した後、その上にフロロシリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、X36−420U)をブレード塗装にて塗布し、150℃で10分間加熱して、厚み200μmの弾性層を形成した。
次に、弾性層上に0.1μm〜50μmの粒径に分級(中心粒径10μm)されたPFA粒子(粉体化フッ素樹脂、MP102、三井デュポンフロロケミカル株式会社製)を粉体塗装にて10g付着させた。
次に、PFA粒子層上に、フッ素系エラストマー(信越化学工業株式会社製、SIFEL615C)を塗布し、150℃で60分間の乾燥を実施して、厚み5.0μmの離型層を形成した。
次に、離型層上に、該離型層のフッ素表面改質としてフッ素系炭素化合物であるオプツールHD(ダイキン工業株式会社製)の0.1質量%希釈溶液をディッピング工法で塗布し、湿度90%RH、温度80℃の環境下で30分間保持後、150℃で10分間の乾燥を実施して、厚み0.01μm以下の改質層を形成した。
最後に、離型層表面(改質層を含む)を乾燥した布(旭化成株式会社製、BEMCOT M−1)で擦ることでPFA粒子を除去して、離型層に貫通孔を形成した。以上により、実施例1の定着部材を作製した。
−測定条件−
・圧子:対面角度136度の四角錐ダイヤモンド圧子
・初期荷重:0.02mN
・最大荷重:5〜400mN
・初期荷重から最大荷重までの荷重増加時間:10〜60秒
また、定着部材の表面に、石英板(厚みt=2mm)を圧力(10N/cm2)を加えて接触させ、定着部材表面の凹凸高低差(10点平均値)を測定したところ、平均値で0.5μm以下であった。ここで、凹凸高低差(段差)はレーザ変位計(キーエンス社製、LT−9010M(レーザ出力部)及びLT−9500(レーザ制御部)、ステージKS−1100)を用い、測定ピッチ:2μmにて計測した。
実施例1の弾性層におけるフロロシリコーンゴムの代わりにシリコーンゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、DY35−2083)をブレード塗装にて200μmの厚みに塗装し、150℃にて30分間加熱後、200℃にて4時間二次加硫した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の定着部材を作製した。
得られた実施例2の定着部材の離型層のユニバーサル硬度は0.8N/mm2(5μm押し込み時)、弾性層のユニバーサル硬度は0.4N/mm2(5μm押し込み時)であった。
また、得られた実施例2の定着部材の純水に対する後退接触角は離型層表面が91°、弾性層表面が76°であった。また、得られた実施例2の定着部材の石英板を圧接時の表面凹凸差は平均値で0.5μm以下であった。得られた実施例2の定着部材について、実施例1と同様にして、巻きつき及び画像不良(光沢度)の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1の離型層におけるフッ素系エラストマーの代わりに、フッ素系炭素化合物(ダイキン工業株式会社製、オプツールHD;1.0質量%希釈溶液)をディッピング工法のみ塗布し、湿度90%RH、温度80℃の環境下で30分間保持後、150℃で10分間の乾燥を実施して、厚み0.02μmの離型層を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の定着部材を作製した。
得られた実施例3の定着部材の離型層のユニバーサル硬度は0.2N/mm2(5μm押し込み時)、弾性層のユニバーサル硬度は0.2N/mm2(5μm押し込み時)であった。
また、得られた実施例3の定着部材の純水に対する後退接触角は離型層表面が90°、弾性層表面が60°であった。また、得られた実施例3の定着部材の石英板を圧接時の表面凹凸差は平均値で0.5μm以下であった。
得られた実施例3の定着部材について、実施例1と同様にして、巻きつき及び画像不良(光沢度)の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1の弾性層のフロロシリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、X36−420U)の代わりにシリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、X−34−2396)を厚み200μmに形成し、離型層のフッ素系エラストマー(信越化学工業株式会社製、SIFEL615C)の代わりにフロロシリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、X36−420U)を厚み5μmに形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の定着部材を作製した。
得られた実施例4の定着部材の離型層のユニバーサル硬度は0.2N/mm2(5μm押し込み時)、弾性層のユニバーサル硬度は0.7N/mm2(5μm押し込み時)であった。
また、得られた実施例4の定着部材の純水に対する後退接触角は、離型層表面が60°、弾性層表面が75°であった。
また、得られた実施例4の定着部材の石英板を圧接時の表面凹凸差は平均値で2.0μmであった。
得られた実施例4の定着部材について、実施例1と同様にして、巻きつき及び画像不良(光沢度)の評価を行った。結果を表2に示す。
円筒状の長さ320mm、厚み50μmの基材(ポリイミド樹脂製)上にシリコーン用プライマー層を下地として乾燥後、その上にシリコーンゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、DY35−2083)をブレード塗装にて200μmの厚みに塗装し、150℃にて30分間加熱後、200℃にて4時間二次加硫することにより、比較例1の定着部材を作製した。
得られた比較例1の定着部材について、実施例1と同様にして、巻きつき及び画像不良(光沢度)の評価を行った。結果を表2に示す。
比較例1において、シリコーンゴム層(弾性層)上にカーボンが添加された導電性フッ素樹脂用プライマー(三井デュポンフロロケミカル株式会社製)を塗布し、その上に、PFA粒子(粉体化フッ素樹脂、MP102、三井デュポンフロロケミカル株式会社製)を粉体塗装し、340℃にて30分間焼成後、炉から取り出し、放冷を行い、厚み10μmの離型層を形成した以外は、比較例1と同様にして、比較例2の定着部材を作製した。
得られた比較例2の定着部材について、実施例1と同様にして、巻きつき及び画像不良(光沢度)の評価を行った。結果を表2に示す。
また、比較例2では、「画像不良」は比較例1よりも改善したが、合格ランクには達しなかった。また、「巻きつき」は合格ランクに達しなかった。これは、「画像不良」に関してはフッ素樹脂の非粘着性に起因して、溶融トナーの離型がある程度確保されたため、比較例1よりは改善したが、合格ランクに達するためには不十分であると考えられる。「巻きつき」は、記録媒体が静電的に付着し、分離性能が不安定になったことが要因と考えられる。
これに対して、実施例1〜4においては、「巻きつき」及び「画像不良」とも発生せず、合格ランクに達した。
また、定着加圧ニップ時には記録媒体により離型層が圧迫され、該離型層に形成された凹部に下地に形成された弾性層が入り込む形で、凹部を埋め、平滑な圧着面を得ることができ、結果として光沢に優れる高画質画像を得ることができる。
101 感光体ドラム
102 帯電ローラ
103 露光
104 現像ローラ
105 パワーパック
106 転写ローラ
107 記録紙
108 クリーニング装置
109 表面電位計
110 加熱定着ローラ
111 加圧ローラ
112 ベルト方式定着器
113 定着ベルト
114 定着ローラ
115 加圧ローラ
116 加熱ローラ
201 離型層
202 弾性層
203 基材
204 凹部
205 記録媒体
206 トナー
207 離型剤
Claims (13)
- 現像剤で形成された未定着現像剤像を記録媒体に定着させる定着部材であって、
前記定着部材が、基材と、該基材の外周に設けられ弾性変形特性を有する弾性層と、該弾性層の外周に設けられ前記記録媒体の分離を促進する離型層とを有し、
前記離型層が、該離型層の表面部位より反対側の面に向けて複数の貫通孔を有し、前記未定着現像剤像を前記記録媒体に定着させる圧力付与により、前記離型層に接する前記弾性層の一部が前記貫通孔を埋設することにより、定着加圧時に、前記離型層の表面における前記貫通孔が形成されている部分と前記離型層の表面における前記貫通孔が形成されていない部分とが略同一面となり前記離型層の表面が平滑面を形成することを特徴とする定着部材。 - 定着部材における基材が、円筒形状からなる中空構造を有し、該中空構造に加熱媒体を備えている請求項1に記載の定着部材。
- 離型層を構成する材料が、フッ素系ポリマーを含む請求項1から2のいずれかに記載の定着部材。
- 弾性層を構成する材料が、ゴム材料である請求項1から3のいずれかに記載の定着部材。
- ゴム材料が、シロキサン結合を分子配列の主鎖成分に有する請求項4に記載の定着部材。
- ゴム材料が、フロロシリコーンゴムである請求項4から5のいずれかに記載の定着部材。
- 弾性層のユニバーサル硬度が、離型層のユニバーサル硬度と同等であるか、又は離型層のユニバーサル硬度よりも低い請求項1から6のいずれかに記載の定着部材。
- 弾性層表面の純水に対する後退接触角が、離型層表面の純水に対する後退接触角よりも低い請求項1から7のいずれかに記載の定着部材。
- 基材上に弾性層を形成する弾性層形成工程と、
前記弾性層上に粉体を付着させる粉体付着工程と、
前記粉体上に離型層を形成する離型層形成工程と、
前記離型層表面から粉体を除去して、該離型層に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と
を含むことを特徴とする定着部材の製造方法。 - 粉体の除去が離型層表面を乾燥した布で擦ることにより行われる請求項9に記載の定着部材の製造方法。
- 請求項1から8のいずれかに記載の定着部材を有することを特徴とする定着装置。
- 現像剤で形成された未定着現像剤像を記録媒体に定着させる際に、請求項1から8のいずれかに記載の定着部材における離型層を、前記未定着現像剤像と当接する向きで配設することを特徴とする定着方法。
- 静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
前記定着手段が、請求項11に記載の定着手段であることを特徴とする画像形成装置。
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