以下、図1〜図12を用いて、本発明の第1の実施形態によるコンデンサモジュール,電力変換装置及び車載用電機システムについて説明する。
以下に説明する実施形態では、本発明のコンデンサモジュールが用いられる電力変換装置として、車載用電力変換装置を例にあげる。
なお、以下に説明する構成は、DC/DCコンバータや直流チョッパなどの直流−直流電力変換装置にも適用可能である。また、以下に説明する構成は、産業用や家庭用などの電力変換装置にも適用可能である。
図1は、本発明の第1の実施形態によるコンデンサモジュールを使用した電力変換装置INVを用いて構成した車載用電機システムと、内燃機関のエンジンシステムを組み合わせたハイブリッド電気自動車(以下、「HEV」と称する)のブロック図である。
本実施形態のHEVは、前輪FRW、FLW、後輪RPW、RLW、前輪車軸FDS、後輪車軸RDS、デファレンシャルギアDEF、変速機T/M、エンジンENG、電動機MG1、MG2、電力変換装置INV、バッテリBAT、エンジン制御装置ECU,変速機制御装置TCU,電動機制御装置MCU、バッテリ制御装置BCU、車載用ローカルエリアネットワークLANを備える。
本実施例では、駆動力は、エンジンENGと2つの電動機MG1,MG2で発生し、変速機T/M、デファレンシャルギアDEF、前輪車軸FDSを通じて前輪FRW、FLWに伝わる。
変速機T/Mは、複数のギアから構成され、速度等の運転状態に応じてギア比を変えることができる装置である。
デファレンシャルギアDEFは、カーブなどで左右の車輪FRW、FLWに速度差があるときに、適切に左右に動力を分配する装置である。
エンジンENGは、インジェクタ,スロットバルブ,点火装置,吸排気バルブ(いずれも図示省略)などの複数のコンポーネントで構成される。インジェクタは、エンジンENGの気筒内に噴射する燃料を制御する燃料噴射弁である。スロットバルブは、エンジンENGの気筒内に供給される空気の量を制御する絞り弁である。点火装置は、エンジンENGの気筒内の混合気を燃焼させる火源である。吸排気バルブは、エンジンENGの気筒の吸気及び排気に設けられた開閉弁である。
電動機MG1,MG2は、三相交流同期式、つまり永久磁石回転電機である。
尚、電動機MG1,MG2としては、三相交流誘導式回転電機やリラクタンス式回転電機などのものを用いてもよい。
電動機MG1,MG2は、回転する回転子と、回転磁界を発生する固定子からなる。回転子は、鉄心の内部に複数の永久磁石を埋め込んだもの、もしくは、鉄心の外周表面に複数の永久磁石を配置して構成する。固定子は、電磁鋼板に銅線を巻回して構成する。固定子の巻線に三相交流電流を流すことにより、回転磁界が発生し、回転子生じるトルクにより電動機MG1,MG2を回転させることができる。
電力変換装置INVは、パワー半導体のスイッチングにより、電動機MG1,MG2の電力を制御するものである。簡単に言えば、高圧バッテリBATの直流源を、電動機MG1,MG2に繋いだり(オン)、切ったり(オフ)することで、電動機MG1,MG2を制御する。本実施例では、電動機MG1、MG2が三相交流モータであるので、スイッチング(オン、オフ)の時間幅の粗密により、三相交流電圧発生させ、電動機MG1、MG2の駆動力を制御する。
電力変換装置INVは、スイッチング時に瞬時に電力を供給するコンデンサモジュールCM,スイッチングするパワーモジュールPMU,パワーモジュールのスイッチングを駆動回路装置DCU及び、スイッチングの時間幅の粗密を決める電動機制御装置MCUから構成する。
尚、コンデンサモジュールCM、パワーモジュールPMUは、図3以降に詳しく説明する。
電動機制御装置MCUは、総合制御装置GCUからの回転数指令n*、トルク指令値τ*を電動機MG1,MG2で実現するため、パワーモジュールPMUのスイッチングを決定する。このため演算するためのマイコン、データマップなどのメモリを搭載している。
駆動回路装置DCUは、電動機制御装置MCUで決定されたパワーモジュールPMUのスイッチングに従い、パワーモジュールPMUを駆動する。このため、パワーモジュールPMUを駆動に必要な、数A、数十Vの駆動能力を持つ回路を搭載する。また、高電位側のパワー半導体素子を駆動するために、制御信号を絶縁分離する回路を搭載している。
バッテリBATは、直流電源で、ニッケル水素電池や、リチウムイオン電池などの電力密度の高い2次電池で構成する。電力変換装置INVを介して、電動機MG1,MG2に電力を供給し、または、逆に、電動機MG1,MG2の発電力を電力変換装置INVで変換して貯蔵する。
変速機T/M、エンジンENG、電力変換装置INV,バッテリーBATは、各々、変速機制御装置TCU、エンジン制御装置ECU、電動機制御装置MCU、バッテリ制御装置BCUで制御する。これらの制御装置は、車載用ローカルエリアネットワークLANにより、総合制御装置GCUに接続し、総合制御装置からの指令値に基づき統括するとともに、双方向の通信も可能である。各制御装置は、総合制御装置GCUの指令信号(指令値)、各種センサ、他の制御装置の出力信号(各種パラメータ値)、予め記憶装置に記憶されているデータやマップなどをもとに、機器を制御する。
例えば、総合制御装置GCUは、運転者の加速要求に基づいたアクセルの踏み込み量に応じて車両の必要トルク値を算出し、この必要トルク値を、エンジンENGの運転効率が良くなるように、エンジンENG側の出力トルク値と第1の電動機MG1側の出力トルク値とに分配する。分配されたエンジンENG側の出力トルク値はエンジントルク指令信号としてエンジン制御装置ECUに、分配された第1の電動機MG1側の出力トルク値はモータトルク指令信号として電動機制御装置MCUに伝達され、各々、エンジンENG、電動機MG1を制御する。
次に、ハイブリッド自動車の運転モードを説明する。
まず、車両の発進時や低速走行時においては、主に電動機MG1を電動機として動作させ、電動機MG1で発生した回転駆動力を、変速機T/M及びデファレンシャルギアDEFを介して前輪車軸FDSに伝達する。これにより、前輪車軸FDSが電動機MG1の回転駆動力によって回転駆動されて前輪FRW、FLWが回転駆動し、車両が走行する、この時、電動機MG1には、バッテリBATからの出力電力(直流電力)が電力変換装置INVによって三相交流電力に変換し供給する。
次に、車両の通常走行時(中速,高速走行時)においては、エンジンENGと電動機MG1を併用し、エンジンENGで発生した回転駆動力と、電動機MG1で発生した回転駆動力とを、変速機T/M及びデファレンシャルギアDFFを介して前輪車軸FDSに伝達する。これにより、前輪車軸FDSがエンジンENGと電動機MG1の回転駆動力によって回転駆動されて前輪FRW、FLWが回転駆動し、車両が走行する。また、エンジンENGで発生した回転駆動力の一部は、電動機MG2に供給する。この動力の分配により、電動機MG2は、エンジンENGで発生した回転駆動力の一部によって回転駆動され、発電機として動作し、発電する。電動機MG2によって発電された三相交流電力は電力変換装置INVに供給され、一旦直流電力に整流された後、再び三相交流電力に変換し、電動機MG1に供給する。これにより、電動機MG11は回転駆動力を発生する、
次に、車両の加速時、特にエンジンENGに供給される空気量を制御するスロットル弁の開度が全開になる急加速時(例えば急勾配坂の登坂時で、アクセルの踏み込み量が大きい時)においては、前述した通常走行時の動作に加え、バッテリBATからの出力電力を電力変換装置INVによって三相交流電力に変換して電動機MG1に供給し、電動機MG1によって発生する回転駆動力を増加する。
次に、車両の減速・制動時においては、前輪FRW、FLWの回動による駆動車軸DSFの回絵駆動力をデファレンシャルギアDFF、変速機T/Mを介して電動機MG1に供給して、電動機MG1を発電機として動作させ、発電させる、発電によって得られた三相交流電力(回生エネルギー)は、電力変換装置INVによって直流電力に整流され、バッテリBATに供給する。これにより、バッテリBATを充電する。車両の停止時は、基本的にはエンジンENG及び電動機MG1,MG2の駆動は停止するが、バッテリBATの残量が少ない場合には、エンジンENGを駆動して電動機MG2を発電機として動作させ、得られた発電電力を電力変換装置INVを介してバッテリBATを充電する。
なお、MG1,MG2の発電、駆動の役割は、特に限定されず、効率によっては、上述と逆の役割で動作する。
本発明の第1の実施形態による車載用電機システムの電力変換装置INVの大電流が流れる主回路の回路図を図2に示す。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
本実施形態の電力変換装置INVは、スイッチング時に瞬時に電力を供給するコンデンサモジュールCM、スイッチングするパワーモジュールPMU,パワーモジュールPMUのスイッチング電力を供給する駆動回路装置DCU、電動機を制御するためにスイッチング波形を制御する電動機制御装置MCUから構成する。なお、図2では、第1の電動機MG1に対する電力変換装置INVの構成のみを示しているが、図1の電力変換装置INVは、第2の電動機MG2に対するパワーモジュールPMU,駆動回路装置DCUも備えており、それらの構成は、図2に示すものと同様である。
パワーモジュールPMUは、スイッチング(オン、オフ)するパワー半導体素子Mpu,Mnu、Mpv,Mnv、Mpw,Mnwを用いて、3相交流出力のため3個(Au、Av、Aw)のブリッジ回路を構成する。
ブリッジ回路の両端は、接続する接続部3a、4aを通じて、コンデンサモジュールCMの接続部3b、4bと接続する。
ブリッジ回路の中点は、接続部24U、24V、24Wを通じて、電動機MG1の3相入力接続部(U接続部、V接続部、W接続部)に接続する。
ブリッジ回路は、各相毎に2つのパワー半導体素子を電気的に直列に接続した直列回路から構成されたものであり、アームともよばれ、高電位を出力するパワー半導体素子を上アーム、低電位を出力するパワー半導体素子を下アームと呼ぶ。
3個のブリッジ回路(Au、Av、Aw)のパワー半導体素子は、3相交流電圧を発生するように120°の位相差を持たせてスイッチング(オン、オフ)し、高電位側(上アーム)、低電位側(下アーム)の接続を切り替える。これにより、時間幅に粗密のあるパルス電圧波形の3相交流電圧を発生する。
パワー半導体素子(Mpu,Mnu、Mpv,Mnv、Mpw,Mnw)は、大電流をスイッチングするために、外部からスイッチングを駆動電源が必要となる。このため、パワー半導体モジュールPMUに、スイッチングを駆動する駆動回路DCUを接続する。
また、駆動回路DCUには、電動機制御装置MCUを接続し、電動機制御装置MCUから、電動機の回転数、トルク応じたスイッチング時間幅、タイミング(パルス電圧の粗密幅)の信号を受ける。
本実施例の回路図では、パワー半導体素子(Mpu,Mnu、Mpv,Mnv、Mpw,Mnw)として、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を用いている。このため、スイッチング時に電流が還流するパワー半導体素子のダイオードDpu,Dnu、Dpv,Dnv、Dpw,DnwをIGBTのコレクタ・エミッタ間に逆並列(エミッタからコレクタに向かう方向が順方向になるように)接続する。
また、本実施例の回路図では、各相の上(下)アームのパワー半導体素子は、1つで構成している(ダイオード入れると2つ)が、電流容量にあわせて、パワー半導体素子を並列接続する。
本実施例の回路図では、パワー半導体素子としてIGBTを用いたが、MOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いてもよい。この場合は、MOSFETの場合、還流用のダイオートが内臓されているため、特にダイオードは必要としない。
パワーモジュールPMUは、ケースによって囲われ、ベースと呼ばれる金属板上に絶縁基板を介してパワー半導体素子を実装し、三相ブリッジ回路を形成するように、半導体チップ間、半導体チップと入力端子との間、半導体チップと出力端子との間をアルミワイヤや板状導体などの接続導体によって電気的に接続して構成する。ベースは、銅やアルミニウムなどの熱伝導性部材で構成し、スイッチングによるパワー半導体素子の発熱の冷却する。ベースの下面は空気或いは冷却水などの冷却媒体によって冷却する。冷却効率を向上させるために、冷媒との接触面積を増やすフィンなどを設ける。絶縁基板は、窒化アルミニウムなどの高熱伝導の絶縁部材を用いる。ベースと絶縁基板の間、絶縁基板とパワー半導体素子の間は、はんだなどの接合部材によって接合する。
パワーモジュールPMUは、大電流をスイッチングする。このため、スイッチング時に、瞬時に電流が変化できる低インピーダンス回路が必要となる。高圧バッテリーBATは、内部インピーダンスや、接続ケーブルのインダクタンスがあるため、インピーダンスが高く、パワーモジュールPMUと低インピーダンスの回路を構成することはできない。
そこで、コンデンサモジュールCMは、電力変換装置INV内のパワーモジュールPMU近傍に設置、接続し、パワーモジュールPMUのスイッチング時に低インピーダンスの回路を構成する。つまり高周波では、コンデンサ自体は、コンデンサ容量C、周波数fとするとインピーダンスZ=1/(2×π×f×C)により、低インピーダンスとなる。しかし、コンデンサモジュール内部やパワーモジュール内部の配線の寄生インダクタンス、コンデンサモジュールとパワーモジュールの接続部の寄生インダクタンスは、瞬時に電流変化する高周波では、寄生インダクタンスL、周波数fでは、インピーダンスZ=2×π×f×Lで大きくなる。また、電流変化dI/dtが大きくなると、この寄生インダクタンスLで発生する跳ね上がり電圧V=L×dI/dtで大きくなる。
本実施例のコンデンサモジュールCMは、内部の配線が低インダクタンスで、かつ、パワーモジュールPMUとの接続部も、応力緩和構造をもつ低インダクタンス接続を実現している。このため、パワー半導体モジュールのスイッチングを早く(dI/dtを大きく)することができ、スイッチング時間が短い。つまり、大電流Iと大電圧Vがクロスする時間tが短く、発熱Q=I×V×tが小さい。この発熱Qが小さくなることで、パワー半導体素子の温度を下げることができ、パワー半導体素子の数を少なくすることができ、電力変換装置の小型化、低コスト化を実現できる。
本発明の第1の実施形態によるコンデンサモジュールCMについて図3〜図12を用いて説明する。
本発明の第1の実施形態によるコンデンサモジュールCMの外観斜視図を図3に示す。コンデンサモジュールCMは、ナットが埋め込んだ固定用穴17がある樹脂モールド用のケース12で覆い、高圧バッテリBATからの接続部3c、4c、パワーモジュールPMUとの接続部3b、4bを備える。また、コンデンサセルCDSを載置し、絶縁シート10を介して積層した幅広導体8,9の積層体(後述)を、樹脂モールドケース12から、そのまま、樹脂モールド外へ引き出し、パワーモジュールPMUの接続部3b、4bを形成する。
本発明の第1の実施形態によるコンデンサモジュールの断面図、及び、一部拡大図を図4(a)、(b)に示す。
コンデンサセルCDSは、絶縁シート10を介して積層した幅広導体8,9の積層体の上に載置し、幅広導体8,9の端部に形成した接続部で電気的に接続する。このコンデンサセルCDSと積層体の一部を開口部のあるケース12で覆い、樹脂13でモールドする。樹脂モールドしない積層体(8,9,10)に応力緩和用のベンド構造を設け、端部にパワーモジュールPMU接続部3b(4b)を形成する。
モールド13に用いる樹脂13は、熱伝導がよく、耐湿性のある絶縁材料であればよい。積層幅広導体に、穴や、凹凸を設けることで、モールド樹脂との密着がよくなり、コンデンサの発熱が幅広導体に伝わり放熱性がよくなる。
モールド用のケース12は、PPS等の耐湿性、耐熱性のあるものが好ましい。積層幅広導体8,9を樹脂モールドすることで、モールド用ケース12によって蓋を被せる形となり、コンデンサセルCDSの耐湿性を高めることができる。
このように、樹脂モールドすることで、コンデンサCDSと積層幅広導体の接続箇所の信頼性、コンデンサCDSと積層幅広導体の密着によるコンデンサの冷却性、耐湿性の向上することができる。
積層体のベンド部の拡大図を図4(b)を用いて、ベンド構造、これによるインダクタンス低減、応力緩和の効果を説明する。
幅広導体8と幅広導体9が絶縁シート10を介して積層した積層体をU字にベンドした構造で、紙面上の方向で上下、左右の応力が加わっても、応力緩和できる。この幅広導体8、幅広導体を流れる電流方向、経路は80、81となる。この積層体のベンド構造により、ベンド部で幅広導体の長さが増すにもかかわらず、電流80、81が打ち消しあい、低インダクタンスが実現できる。このため、ベンド部の幅広導体8,9のインダクタンス67−N、67−Pに、インダクタンスの結合が起こり、電流80,81が同時に流れる場合に、インダクタンスを小さくすることができる。
本発明の第1の実施形態によるコンデンサモジュールCMの分解図を図5に示す。
図5に示すように、樹脂モールド用のケース12の内部には、複数のコンデンサからなるコンデンサセルCDSを配置する。ここで、本実施形態では、コンデンサセルCDSとして、金属を蒸着したフィルムを積層巻きし、金属吹き付けにより巻き軸方向の両面に電極11を形成したフィルムコンデンサを用いている。つまり、本実施形態のコンデンサでは、電極11が両側面に対向するようなコンデンサである。
コンデンサセルCDSの下部には、幅広導体8、絶縁シート10、幅広導体9の積層体が配置する。
幅広導体8は、複数のコンデンサセルCDSを全て載置できる面積を有している。すなわち、幅広導体8は、円筒形状の複数のコンデンサを並置した場合は、その長手方向の幅、以上の幅広の導体となる。幅広導体8の上面には、コンデンサセルCDSの電極11と接続するための立ち上がり部14が設ける。例えば、図示のように、6個のコンデンサセルCDSから構成する場合、立ち上がり部14は、6個形成する。また、その配置は、図示のように、一番手前のコンデンサセルCDS-Aに接続される立ち上がり部14-Aは、コンデンサセルCDS-Aの紙面の左側の電極11に接続する位置に設け、手前から2番目のコンデンサセルCDS-Bに接続される立ち上がり部14Bは、コンデンサセルCDS-Bの紙面の右側の電極11に接続する位置に設ける。このように、立ち上がり部14を千鳥状とする。
幅広導体9も、幅広導体8と同様に、複数のコンデンサセルCDSを全て載置できる面積を有している。すなわち、幅広導体9は、円筒形状の複数のコンデンサセルCDSを並置した場合のその長手方向の幅以上の幅広の導体とする。幅広導体9の上面にも同様に、コンデンサセルCDSの電極11と接続するための立ち上がり部15を設ける。幅広導体8と幅広導体9を積層した状態では、立ち上がり部15は、幅広導体8に形成された貫通穴16を貫通して、幅広導体8の上部に突出する。図示のように、6個のコンデンサセルCDSでは、立ち上がり部15は、立ち上がり部14と同様に6個形成する。また、その配置は、図示のように、一番手前のコンデンサセルCDS-Aに接続する立ち上がり部15Aは、コンデンサセルCDSの右側電極11に接続する位置に設け、手前から2番目のコンデンサCDS-Bに接続する立ち上がり部15-Bは、コンデンサセルCDSの左側電極11に接続する位置に設けられ、立ち上がり部15を千鳥状に設ける。したがって、1個のコンデンサセルCDSについてみると、一方の端面の電極11に幅広導体8の立ち上がり部14を接続し、他方の端面の電極11には幅広導体9の立ち上がり部15を接続する。コンデンサモジュールCMを構成する複数のコンデンサCDSは、幅広導体8と幅広導体9に対して並列接続する。積層幅広導体8,9とコンデンサセルCDSの側面電極11は、はんだ等により電気的に固着する。
コンデンサセルCDSの接続用端子である立ち上がり部14,15は、積層幅広導体8,9の一部を切り抜き、幅広導体面から立体的に立ち上げて形成する。これにより、接続部材を新たに用いることなく、コンデンサセルCDSと幅広積層導体8,9の接続ができ、はんだ付け箇所を減らし、工数低減、コスト低減になるほか、接続部の信頼性向上、電気抵抗低減、放熱性向上になる。
積層幅広導体8,9は、抵抗が低く、熱伝導が低い銅材を用いる。なお、軽量化が要求される場合は、アルミ材を用い、その表面にニッケル等をメッキすれば、はんだ接続が可能となる。積層幅広導体8,9の厚さは1mmとしている。
絶縁シート10としては、可能な限り薄いものが望ましく、電力変換装置内の環境温度が最大120℃であれば、ポリプロピレン(PP)や、ポリエチレン(PET)の1mm以下の0.2mm、0.4mm程度で、容易に形状が変形でき、モールド樹脂と密着性がいいものを用いる。絶縁シート10が薄いほど幅広導体8,9を近接して積層することができるため、インダクタンスを小さくすることができる。電流容量が低い電力変換装置INVであれば、積層幅広導体8,9の代わりに、絶縁シート10の両面に金属をプリントしたものを用いることで、プリントした金属を幅広導体としてもよい。この場合は、接続導体を別途用意し接続する。
幅広導体8及び幅広導体9は、コンデンサセルCDSを載置する第1の平面部と、この第1の平面部に対して、直角に折り曲げられた第2の平面部とを備えている。幅広導体8及び幅広導体9の第2の平面部の中央付近には、図4に示すように、平面部の長手方向に延在するU字状のベント部8c,9cが設けられている。ベント部8c,9cは、接続部の応力を緩和する。ベンド部の構造としては、U字ベンド以外にも、V字ベンドなど、接続部への応力を緩和する構造であればよい。
本発明の第1の実施形態によるコンデンサモジュールの主要部の斜視図および電流経路の説明図を図6に示す。
幅広導体8の端部には、1個の接続部4cと、3個の接続部4bが形成されている。また、幅広導体9の端部には、1個の接続部3cと、3個の接続部3bが形成されている。接続部3c,4cは、高圧バッテリーBATからのバスバー、ケーブル接続するために用いる。接続部3b,4bは、それぞれ、パワーモジュールのU相アーム,V相アーム,W相アームと接続するために用いる。
接続部3b,4bは、上方向からネジを挿入し締め付ける必要がある。そこで、ベント部8c,9cは、第2の平面部に対して、接続部3b,4bが突出している方向とは反対方向に設ける。
幅広導体8、絶縁シート10、幅広導体9の積層体の上に、コンデンサCDSを接続固定した状態を示している。コンデンサセルCDS-Aの右側面の電極11-Aには、幅広導体9の立ち上がり部15-Aが接続され、コンデンサセルCDS-Bの右側面の電極11-Bには、幅広導体8の立ち上がり部14-Bが接続される。
このように、コンデンサセルCDSを配置接続することにより、積層体に電流が打ち消しあうように流れ低インダクタンスを実現することができる。
例えば、コンデンサセルCDS−A、CDS−Bに流れる電流を考える。
コンデンサセルCDS−Aに流れる電流は68−A、同じくコンデンサセルCDS−Bに流れる電流は68−Bとなる。この2つの電流は、紙面に対して、反時計回り、時計回りと逆になる。
本発明の第1の実施形態によるコンデンサモジュールの主要部の側面図及び電流経路の説明図を図7に示す。
先ほどの図6の電流68−A、電流68−Bは、幅広導体8,9で逆方向となる。つまり、コンデンサセルCDS直下の、幅広導体8のインダクタンス61−A、幅広導体9のインダクタンス61−Bに対して、電流68−A、電流68−Bが逆方向に流れ、インダクタンスが結合により、低インダクタンスとなる。
また、電流68−A、電流68−Bが作る磁束は、それぞれ、69−A、電流69−Bとなり、紙面から飛び出す方向、紙面に突き刺さる方向となり打ち消しあい、低インダクタンスとなる。
次に、本発明の第1の実施形態による電力変換装置INVのコンデンサモジュールCMとパワーモジュールPMUの接続を示す分解図を図8に示す。
図8の上側に示すコンデンサモジュールCMは、図3〜図7にて説明したものである。コンデンサモジュールCMの下側に、パワーモジュールPMUを配置する。パワーモジュールPMUは、U相アーム,V相アーム,W相アームがあり、それぞれに両端電極(4a-U、3a-U、4a-V、3a-V、4a-W、3a-W)をもつ構成である。このため、本実施例のコンデンサモジュールCMの接続部は、3対の4b、3bの接続部をもつ。
コンデンサモジュールCMの接続部3b,4bは、ネジを挿入可能な貫通穴を設け、この穴位置をパワーモジュールPMUの接続部3a,4aと同じにし、ネジで電気的、機械的に接続する。なお、コンデンサモジュールCMの接続部数は、パワーモジュールPMUの接続部数に合わせて変更ができ、特に3対にこだわらないことは、言うまでもない。
本発明の第1の実施形態による電力変換装置INVのコンデンサモジュールCMとパワーモジュールPMUの接続断面図を図9に示す。
本発明の第1の実施形態による電力変換装置INVに用いるパワーモジュールPMUの上面図を図10に示す。
図9及び図10に示すように、パワーモジュールPMUは、冷却用の銅ベース20と、その上面の外周に接着したケース21と、銅ベース20の上面の中央部付近にはんだ付けした絶縁基板19、その絶縁基板の回路パターンの上にはんだ付けしたIGBT(M)、ダイオードと、ケース21の内部から外部に向けて引き出された外部接続導体22とを有している。外部接続導体22−Cは、U相アーム,V相アーム,W相アームの各6個の両端電極を構成し、端部がコンデンサモジュールとの接続部(4a-U、3a-U、4a-V、3a-V、4a-W、3a-W)となる。また、外部接続導体22−Mは、U相アーム,V相アーム,W相アームの中点で、3相電圧を出力する電極を構成し、端部が電動機MG1へ3相交流を出力する接続部(24U、24V、24W)となる。IGBT(M)やダイオードと外部接続導体22−Cの接続、三相出力の外部接続導体22−Mと絶縁基板上の回路パターンの接続、絶縁基板上のパターン間の接続は、複数本のアルミワイヤ18により電気的に接続する。
本実施例のパワーモジュールPMUでは、各相の上アーム、下アームには、パワー半導体素子IGBT、ダイオードを3並列接続しているが、特に、これにとらわれる必要はなく、電流容量に合わせて、素子寸法、素子数を変更できることは言うまでもない。また、本実施例では1つのモジュールで3相出力する6イン1モジュールを用いているが、1つのモジュールで1相出力する2イン1モジュールを3個並べて用いてもよい。なお、本実施例では、コンデンサモジュールCMとパワーモジュールPMUの大電流が流れる接続部について説明するため、パワー半導体素子のスイッチングする配線(ゲート配線)や、外部に取り出せる端子、配線パターンは図示していない。
ここで、本実施例のコンデンサモジュールCMとパワーモジュールPMUの接続構造を説明する。
図9に示すように、パワーモジュールPMUの接続部3a,4aがその手前の折り曲げ部から延在する方向(図示のE方向)と、コンデンサモジュールCMの接続部3b,4bがその手前の折り曲げ部から延在する方向(図示のF方向)とは同一方向としている。
本発明の第1の実施形態によるコンデンサモジュールCMとパワーモジュールPMUとの接続部の拡大断面図と電流経路を図11にて説明する。
ここで、図11に示すように、幅広導体8を流れる電流は、接続部4b、4aを通り、矢印22のように流れる。このとき、接続部4b、4a上の電流をみると、電流方向が逆方向となり、打ち消しあっていることがわかる。つまり、コンデンサモジュールCMの接続部4bのインダクタンス62−Pと、パワーモジュールPMUの接続部のインダクタンス57−Nに、上述の互いに逆方向に電流が流れることで、インダクタンスが結合し、低インダクタンスとなる。
上記の3つのインダクタンス低減効果を、回路図でまとめて説明する。
本発明の第1の実施形態による電力変換装置INVのインダクタンス回路図を図12に示す。
ここでは、急激に変化する電流、それにより発生する電圧を説明するため、抵抗成分は省略し、インダクタンス成分を主に記述する。また、パワーモジュールPMUは、U相の1アーム(Au)のみを記述し、上アーム、下アームのパワー半導体スイッチング素子Mpu、Dpuは、代表して1素子とする。
寄生インダクタンスの同一符号は、図4、図7、図11と同一部分を示している。
寄生インダクタンス53は、高圧バッテリBATと電力変換装置INVの間を接続するケーブルやバスバーのインダクタンスを示している。
寄生インダクタンス55は、電力変換装置INVとMG1の間の接続するケーブルとバスバーの寄生インダクタンスを示している。
インダクタンス54は、電動機MG1の界磁巻き線の一部のインダクタンスを示している。
パワーモジュールPMUには、内部の寄生インダクタンス56の他に、高電位側と低電位側の電源の接続部に、絶縁距離のために生じる寄生インダクタンス57−P、57−Nがある。
コンデンサモジュールCMには、瞬時に電力を供給、吸収する複数のコンデンサセルCDS-A、CDS-B、各々のコンデンサセルCDSが載置された幅広導体の寄生インダクタンス61−A、61−B、樹脂モールド外の積層された幅広導体の寄生インダクタンス67−P、67−Nがあり、接続部には寄生インダクタンス62―P、62―Nがある。なお、ここでは、コンデンサはCDS-A、CDS-Bの2つのみを記載する。
今、パワーモジュールPMUの上アームのパワー半導体素子Mpuがオンからオフになるときの電流変化を考える。上アームのパワー半導体素子Mpuがオンのときに流れる電流経路は、電流経路64となる。インダクタンス54、55は大きいため、ここを流れる電流は、スイッチング時に急激に変化できない。そのため、オフ時は下アームのパワー半導体素子(Dnu)を通る電流経路65となる。ここで、急激に電流変化した回路を考えると、電流経路66で電流が流れたことと同じになる。この電流経路66の閉回路に存在する寄生インダクタンスを低くすることで、スイッチング時の跳ね上がり電圧低減、スイッチングスピードアップによるパワー半導体素子の発熱低減することができる。なお、本説明のスイッチングは、上アームのパワー半導体素子(Mpu)がオンからオフとなる場合を説明したが、上アームのパワー半導体素子(Mpu)がオフからオンの場合でも、下アームのパワー半導体素子(Dnu)は逆にオンからオフになるため、電流方向は逆となるが電流経路66で電流が流れる。また、下アームのパワー半導体素子(Mnu)のスイッチング時でも、同様に、電流方向は逆になるときもあるが電流経路66が流れることがわかる。
まず、第1の低インダクタンスの効果は、図4(b)に示した積層体のベンド部による。
ベンド構造により接続部の応力緩和し、ベンド部の積層体の幅広導体8,9に逆に電流が流れることにより、インダクタンス67−N、67−Pに、インダクタンスの結合が起こり、インダクタンスを小さくすることができる。つまり、図12の寄生インダクタンス67−P、67−Nを結合させ、インダクタンスを小さくすることができる。
第2の低インダクタンスの効果は、図7に示したコンデンサセルCDSと積層幅広導体8,9の千鳥接続による。
図7のように、コンデンサセルCDS-A、CDS-Bが載置された、幅広導体8、9の電流68−A、電流68−Bは、互いに逆方向となる。このことで、コンデンサセルCDS-A、CDS-B直下の幅広導体8のインダクタンス61−A、幅広導体9のインダクタンス61−Bに対して、電流68−A、電流68−Bが逆方向に流れ、インダクタンスが結合により、低インダクタンスとなる。つまり、図12の寄生インダクタンス61−A、61−Bが結合し低インダクタンスとなる。
第3の低インダクタンスの効果は、図11に示したコンデンサモジュールCMとパワーモジュールPMUの接続構造による。
図11に示すように、コンデンサモジュールCMの接続部4b、パワーモジュールPMUの接続部4aに、電流方向が逆方向に打ち消しあい、コンデンサモジュールCMの接続部4bのインダクタンス62−Pと、パワーモジュールPMUの接続部4aのインダクタンス57−Nのインダクタンスが結合し、低インダクタンスとなる。
以上、本実施例のコンデンサモジュールCMを用いて、接続部の応力緩和に加え、上記3つの低インダクタンスの効果により、図12の電流経路66上の低インダクタンスが実現できる。
また、従来HEV用インバータの温度差が激しい環境、段差乗り越え時の厳しい振動環境のため、従来の重いコンデンサを近接接続することができず、電気接続部の破断を防ぐため、コンデンサモジュールとパワー半導体モジュールとの間に、第3の接続導体、つまり、コンデンサモジュールCMとパワーモジュールPMUの間に、応力を緩和する別の低インダクタンスの接続導体が用いる場合があった。その場合、接続箇所が、コンデンサモジュールと接続導体、接続導体とパワーモジュールの2箇所の接続となる。接続箇所が増えると、外部からネジ止め等のアクセスが必要で、剥き出し状態となるため、絶縁距離が必要となり、インダクタンスが増加する。
本実施例では、コンデンサモジュールCMに積層体のベンド構造を設け、パワーモジュールPMUと直接接続を実現しているため、応力を緩和し、接続箇所の低減によるインダクタンスを低減している。例えば仮に、耐圧600Vの電源接続部の絶縁距離が沿面距離で8mm必要であった場合、1mmは約1nHのインダクタンス増加となるため、1箇所の接続をなくすことで、8nHのインダクタンスを低減することができる。
次に、図13〜図20を用いて、本発明の第2の実施形態によるコンデンサモジュールCM及び電力変換装置INVの構成について説明する。
本実施例により、図1の電動機システムにおいて、2つの電動機MG1、MG2を制御する電力変換装置INVを、低インダクタンスかつ応力緩和構造で小型に実現できる。
図13は、本発明の第2の実施形態によるコンデンサモジュールの構成を示す斜視図である。図16は、本発明の第2の実施形態によるパワーモジュールの構成を示す平面図である。図17は、本発明の第2の実施形態による電力変換装置の構成を示す断面図である。図18は、本発明の第2の実施形態による電力変換装置の全体構成を示す断面図である。なお、図4〜図14と同一符号は、同一部分を示している。
コンデンサモジュールCM1、CM2の基本的な構成は、図4〜図12に示したコンデンサモジュールCMと同様である。本実施例の特徴は、コンデンサモジュールCM1に2つのパワーモジュールPMU1、PMU2が取り付けることができる接続穴を設け、これと対になるコンデンサモジュールCM2にも同様に図13に示すように、2つのパワーモジュールPMU1、PMU2が取り付けることができる接続穴を設け、さらに、コンデンサモジュールCM1とコンデンサモジュールCM2と2つのパワーモジュールPMU1、PMU2の接続部の穴位置を合わせ、すべて共締め接続できるところにある。このため、コンデンサモジュールCM1、CM2は、図4に示したコンデンサモジュールCMの接続の穴の2倍の数を備えている。
本発明の第2の実施形態による電力変換装置INVのパワーモジュールPMUの配置図を図14に示す。2つのパワーモジュールPMU1,PMU2は、図10と同一の構成をとる。パワーモジュールPMU1,PMU2を、同極のコンデンサモジュール用の接続部が近接するように平面配置を示している。すなわち、パワーモジュールPMU1のW相の負極接続部PMU1-3a-WとパワーモジュールPMU2のU相の負極接続部PMU2-3a-U、パワーモジュールPMU1のW相の正極接続部PMU1-4a-WとパワーモジュールPMU2のV相の負極接続部PMU2-4a-Vというように、正極、負極が近接するように配置する。パワーモジュールPMU1、PMU2は同一構成のため、コンデンサモジュール用の接続部を同極が近接するように対向配置すると、パワーモジュールPMU2のU相の正極接続部PMU2-4a-U、パワーモジュールPMU1のU相の正極接続部PMU1-4a-Uは、対向するパワーモジュールの電極がない。このため、図13のコンデンサモジュールCM1のパワーモジュール接続部数は、正極が負極の数より1つ多い。
本発明の第2の実施形態による電力変換装置INVのコンデンサモジュールCMとパワーモジュールPMUの接続を示す分解図を図15に示す。
図15に示すように、コンデンサモジュールとの接続部を対向配置した2つのパワーモジュールPMU1、PMU2の上に、コンデンサモジュールCM1、コンデンサモジュールCM2を上から友締め接続する。つまり、コンデンサモジュールCM2の接続部CM2-4b-2U、コンデンサモジュールCM1の接続部CM1-4b-2U、パワーモジュールPMU2の接続部PMU2-4a-Uが1つのネジ等で接続する。また、同様に、CM2-3b-2U、CM1-3b-2U、PMU2-3a-Uが1つのネジで、CM2-3b-1W、CM1-3b-1W、PMU1-3a-Wが1つのネジで、CM2-4b-1W、CM1-4b-1W、PMU1-4a-Wが1つのネジで、CM2-4b-2V、CM1-4b-2V、PMU2-4b-Vが1つのネジで、というように接続する。
本発明の第2の実施形態による電力変換装置INVのコンデンサモジュールCMとパワーモジュールPMUと駆動制御回路DCUとDCバスバーの組図を図16に示す。
2つのパワーモジュールPMU1、PMU2の上に、それぞれ、駆動回路DCU1、DCU2を配置し、その上部に上述のコンデンサモジュールCM1、CM2を接続する。2つのコンデンサモジュールCM1、CM2は、DCバスバーDC−Busにより接続し、高圧バッテリBATの電圧を加える。DCバスバーDC-Busは、高電位側(正極)、低電位側(負極)の2種類の導体を絶縁シート(図示せず)を介して部分的に積層したもので、高圧バッテリBATからの接続部DC-Bus-P、DC-Bus-Nを備える。また、外部へのノイズ防止のため、コモンモードチョークフィルタCFをコンデンサモジュールCM1,CM2と接続部DC-Bus-P、DC-Bus-N間に搭載している。また、HEV動作停止時のコンデンサモジュールCM1,CM2の緊急放電用抵抗、自然放電抵抗を接続する接続部DC-Bus-PR1、DC-Bus-NR1、DC-Bus-PR2、DC-Bus-NR2を備える。
本発明の第2の実施形態による電力変換装置INVのコンデンサモジュールCMとパワーモジュールPMUの接続断面図を図17(a)に、拡大図を(b)に示す。図17は、パワーモジュールPMU1、PMU2の接続部PMU1-4a-W、PMU2-4a−Vが近接した場所の断面である。
2つのネジ23により、2つのコンデンサモジュールCM1、CM2と2つのパワーモジュールPMU1、PMU2が電気的に接続している。この接続により、パワーモジュールPMU1とコンデンサモジュールCM1、パワーモジュールPMU2とコンデンサモジュールCM2というように1つのパワーモジュール上に1つのコンデンサモジュールが必ず低インダクタンスで接続される。
つまり、拡大図(b)に示すように、パワーモジュールPMU1のスイッチング時のオンからオフへの過渡的な電流66-Aは、コンデンサモジュールCM1の接続部CM1-4b-1W、パワーモジュールPMU1の接続部PMU1-4a-Wを互いに逆方向に流れ、これらの接続部の寄生インダクタンスCM1-62-P、PMU1-57-Pが結合し、低インダクタンスな配線が実現できる。また、パワーモジュールPMU2のスイッチング時のオンからオフへの過渡的な電流66-Bは、コンデンサモジュールCM2の接続部CM2-4b-2V、パワーモジュールPMU2の接続部PMU2-4a-Vを互いに逆方向に流れ、これらの接続部の寄生インダクタンスCM2-62-P、PMU 2-57-Pが結合し、低インダクタンスな配線が実現できる。
さらに、本実施例の接続構造では、パワーモジュールPMU1のスイッチング時のオンからオフの過渡的な電流がコンデンサモジュールCM2の接続部CM1-4b-2VからパワーモジュールPMU1-4a-Wに流れようとしても、各接続部での電流が互いに逆方向にならないため、各接続部の寄生インダクタンスCM2-62-P、PMU 1-57-Pに磁気的に結合せず、低インダクタンスな配線とならない。つまり、パワーモジュールPMU1に対し、コンデンサモジュールCM2は、コンデンサモジュールCM1よりも大きな寄生インダクタンスをもち、スイッチング時の瞬時に変化する高周波の電流に対しては、高インピーダンスとなる。このため、パワーモジュールPMU1のスイッチング時のオンからオフへの過渡的な電流が、パワーモジュールPMU2とコンデンサモジュールCM2の低インダクタンスの経路に流れ込むことは少ない。
また、パワーモジュールPMU2のスイッチング時のオンからオフへの過渡的な電流も、上記と同様に、パワーモジュールPMU1とコンデンサモジュールCM1の低インダクタンスの経路に流れ込むことは少ない。
よって、パワーモジュールPMU1、PMU2の同時にスイッチングしたときでも、相互に跳ね上がり電圧が2重加わり、パワー半導体素子の耐圧を超えるような悪影響がなくなる。
一方、パワーモジュールPMU1にとって、コンデンサモジュールCM2は、スイッチング後のオン状態の低周波電流に対しては、並列接続と同じになり、電流を供給することができる。つまり、拡大図(b)でオン状態では、低周波電流はコンデンサモジュールCM1から電流64-A、コンデンサモジュールCM2から電流64-Bを供給する。
また、パワーモジュールPMU2にとっても、低周波電流は、同様にコンデンサモジュールCM1,CM2から供給できる。
このように、各コンデンサモジュールは、直下のパワーモジュールに対して、跳ね上がり電圧を低減する低インダクタンス配線の直近コンデンサとして働き、斜め隣下のパワーモジュールに対しては、容量を増やすコンデンサとなる。2つのパワーモジュールをもつ電力変換装置に対して、跳ね上がり電圧低減などの余分なコンデンサが必要ない。つまり、図1の電動機システムにおいて、2つの電動機MG1、MG2を制御する電力変換装置INVを、低インダクタンスで応力緩和構造をもつコンデンサモジュールを用いて、小型に実現することができる。
本発明の第2の実施形態による電力変換装置INVの回路図を図18に示す。
2つの電動機MG1、MG2を制御するため2つのパワーモジュールPMU1、PMU2、2つのコンデンサモジュールCM1、CM2で構成した図15〜図17の電力変換装置INVの回路図を示している。
なお、コンデンサモジュールCM1,CM2とパワーモジュールPMU1、PMU2の共締め接続部の寄生インダクタンスを主に記述し、その他の寄生インダクタンスは省略する。パワーモジュール内のパワー半導体素子のブリッジ回路で構成した3相アームAu、Av、Awは、ボックスで表示する。また、駆動回路DCUなどの制御回路は省略する。その他の同一符号は、同一部分を示している。
コンデンサモジュールCM1、CM2には、高圧バッテリBATから、図16に示したDCバスバーDC-busにより、電圧を加える。回路図上の寄生インダクタンスDC-bus-LP 、DC-bus-LNは、DCバスバーDC-busの高電位側(正極)、低電位側(負極)のバスバーの寄生インダクタンスを示している。ノイズ防止用のコモンモードチョークフィルタCFは、DCバスバーのコンデンサモジュールCM1、CM2と入力接続部DC-bus-P、DC-bus-Nの間にある。また、放電抵抗DRは、DCバスバーのコンデンサモジュールCM1、CM2とコモンモードチョークフィルタCFの間にある。
コンデンサモジュールCM1とパワーモジュールPMU1の接続部には、高電位側の寄生インダクタンスCM1-62P、PMU1-57P、低電位側の寄生インダクタンスCM1-62N、PMU1-57Nがあり、スイッチング時に流れる電流66-Aに対して、高電位側、低電位側で各々が磁気的に結合し、低インダクタンス配線を実現している。
また、コンデンサモジュールCM2とパワーモジュールPMU2の接続部には、高電位側の寄生インダクタンスCM2-62P、PMU2-57P、低電位側の寄生インダクタンスCM2-62N、PMU2-57Nがあり、スイッチング時に流れる電流66-Bに対して、高電位側、低電位側で各々が磁気的に結合し、低インダクタンス配線を実現している。
2つのコンデンサモジュールCM1,CM2とパワーモジュールPMU1,2の共締め接続部を渡る電流経路64Bに対しては、高電位側の接続部の寄生インダクタンスCM2-62P、PMU1-57Pがこの電流方向に対しては磁気的に結合せず低インダクタンスとならない。同様に、低電位側の接続部に対しても、同様となる。このため、パワーモジュールPMU1、PMU2のスイッチング時の過渡的な電流66-A、66-Bは互いに影響を与えない。ちなみに、1つの接続部の長さを15mmとすると、高電位側の2つの接続部では30mmとなり、1mmあたりインダクタンス1nHとすると、高電位側(正極)でインダクタンス30nHとなる。高電位側(正極)、低電位側(負極)の両方を合わせるとインダクタンス60nHとなる。
この渡り接続部のインダクタンスに比べて、本実施例のコンデンサモジュールCM1、CM2は、寄生インダクタンスが1桁小さくすることができる。このため、渡り接続部を、スイッチング時の過渡的な電流(数ギガA/s)は、ほとんど流れない。このため、パワーモジュールPMU1のスイッチング時の電流経路66-A、パワーモジュールPMU2の電流経路66-Bが互いに干渉することない。これにより、互いの跳ね上がり電圧が重なりパワー半導体素子の耐圧を超えることはなくなる。
一方、スイッチング後のオン状態、つまり、電動機MG1に流れる数百Hz程度の低周波fの電流に対しては、渡り接続部のインダクタンスL(例えば60nH)は、インピーダンスZ=2×π×f×Lで数μΩとなり、ほとんど抵抗がない。このため、パワーモジュールPMU1にとって、コンデンサモジュールCM2は、コンデンサモジュールCM1と同様に低インピーダンスで並列接続した状態となり、電流を供給することができる。つまり、オン状態では、この低周波電流はコンデンサモジュールCM1から電流64-A、コンデンサモジュールCM2から電流64-Bを供給する。
また、パワーモジュールPMU2にとっても、低周波電流は、同様にコンデンサモジュールCM1,CM2から供給できる。
本発明の第2の実施形態による電力変換装置INVのパワー半導体素子IGBTに流れる電流、電圧の概略波形を図19に示す。
図19のように、電流波形はオンスイッチングで急激に(数ギガA/s)立ち上がり、数十マイクロ秒のほぼ平坦な電流(数100Hz)が流れ、オフスイッチングで急激に(数ギガA/s)立下る。
図19で平坦に見える電流は、数100Hzの低周波であるが、数十マイクロ秒を拡大して見ているため、平坦に見える。
図19の波形を、図18のパワーモジュールPMU1の上アームのIGBTの波形とする。
上アームのオンスイッチング(TR)の期間は、パワーモジュールPMU1の下アームのダイオードがオフするため、ダイオードのオフ時に発生する高周波のリカバリー電流が、図18の回路図の電流経路66-Aで流れる。このリカバリー電流により、通電した電流以上の貫通電流がIGBTに流れる。上アームのIGBTの電圧は、このオンスイッチング(TR)に、ほぼゼロ(実際は導通損失があるため数V)となる。一方、下アームのダイオード、はオフするため、このダイオードのオフ時のリカバリー電流による跳ね上がり電圧が下アームのダイオード、IGBTに生じる(ダイオードの波形は図示せず)。本実施例の構造では、電流経路66-Aは、低インダクタンス回路であるため、このダイオードのリカバリー電流による下アームの跳ね上がり電圧も低減できる。
上アームが完全にオン状態(TP)の期間は、コンデンサモジュールCM1,CM2から低周波の電流が、図18の回路図の電流経路64-A、64-Bで流れる。この電流は、数百Hz程度の低周波のため、コンデンサモジュール、パワーモジュールの接続部の寄生インダクタンス(30nH)は、この低周波では影響しない。このため、2つのコンデンサモジュールCM1、CM2は、ほぼ間にインピーダンスを挟まない並列回路となり、2つのコンデンサモジュールCM1、CM2から、ほぼ均等に電流が流れ込む。スイッチング時間(TR,TS)の1μs未満に比べ、オン期間(TP)は数10usと長いため、コンデンサモジュールCM1、CM2の発熱は、このオン期間(TP)に流れる電流量により決まる。このため、このオン期間(TP)の電流が、ほぼ均等に2つのコンデンサモジュールCM1、CM2から供給することで、2つのコンデンサモジュールCM1,CM2の発熱が均等に分担され、コンデンサモジュールCM1、CM2の寿命が向上する。
上アームがオフスイッチング(TS)の期間は、パワーモジュールPMU1の電流が急激にゼロになる。これまで、説明してきたように、図18の回路図の電流経路66-Aで高周波の電流がながれる。このため、図19の波形のように、上アームには、この電流変化により、電源電圧以上の跳ね上がり電圧が生じる。本実施例の構造では、電流経路66-Aは、低インダクタンス回路を実現しているため、ほとんど電圧は跳ね上がらない。
次に、本実施形態による電力変換装置の全体構成について説明する。
本発明の第2の実施形態による電力変換装置INVの断面構成図を図20に示す。
電力変換装置INVの筐体27は、熱伝導がよく、軽いアルミニウム等の材料で構成し、底面に冷却水流路28を設けて、筐体全体と冷却し、外部雰囲気の温度から内部を断熱する。冷却流路28に最も近い場所に、大電流の通電、スイッチングで最も発熱するパワーモジュールPMU1,PMU2を配置し、冷却する。コンデンサモジュールCM1,CM2は、図3に示した固定穴17を用いて、ネジ等により上面を電力変換装置の内部の筐体27-Inの下面に接触するように、筐体27-Inに固定する。これにより、コンデンサモジュールCM1,CM2の熱は筐体27-Inに伝達され、筐体27を介して冷却媒体に放熱或いは筐体27を介して外気に放熱される。放電抵抗DRはコンデンサモジュールCM1,CM2に蓄えられた電荷を放電するためのものであり、コンデンサモジュールCM1,CM2の間に配置され、電力変換装置INVの内部の筐体27−Inの下面に接触するように、筐体27−Inに固定されている。これにより、放電時、放電抵抗DRの熱は筐体27-Inに伝達され、筐体27を介して冷却媒体に放熱或いは筐体27を介して外気に放熱される。
駆動回路装置DCU1,DCU2は、パワーモジュールPMU1,PMU2とコンデンサモジュールCM1,CM2との間で、かつパワーモジュールPMU1,PMU2の上部に配置し、電動機制御装置MCUは筐体27−Inの上面に配置する。
なお、コンデンサモジュールCM1、CM2の固定方法は、穴にネジ山を設けてもよいし、ネジを樹脂に埋め込み出っ張りを設けてもよい。このように、樹脂モールドしたコンデンサモジュールCM1の1面を冷却することで、リップル電流によるコンデンサセルCDSの温度の上昇を防ぎ、長寿命化できる。
また、本実施形態では、コンデンサモジュールCM1,CM2の冷却面を上面としたが、筐体27に接続する面を変更することで、側面や、複数箇所にしてもよい。この場合、本実施形態では、固定箇所が増えても、ベンド構造のため接続部への応力が緩和できる。
以上説明したように、本実施形態によれば、2つの電動機MG1、MG2を制御する電力変換装置INVを用いた車載電機システムにおいて、2つのパワーモジュールPMU1,PMU2用いるコンデンサを、2つの低インダクタンスのコンデンサモジュールCM1,CM2で構成し、パワーモジュール1つに必ず低インダクタンスなコンデンサモジュール1つを組み合わせることで、跳ね上がり電圧の低減と干渉を防ぐことができ、かつ、低インダクタンスで接続されていない残りの1つコンデンサモジュールも電流供給するためのコンデンサ容量を増やす役割をし、電力変換装置INVを小型で実現することができる。
次に、本発明の第3の実施形態によるコンデンサモジュールの構成を図21に示す。
図21は、本発明の第3の実施形態によるコンデンサモジュールの構成を示す分解斜視図である。なお、図4と同一符号は、同一部分を示している。
本実施形態では、コンデンサモジュールCMの基本的な構成は、図4〜図10に示したコンデンサモジュールCMと同様である。ただし、積層幅広導体8,9の第2の平面部には、図4に示したようなU字状のベント部は設けていない。
本実施形態によれば、ベント部をほどの接続部の応力緩和は期待できないものの、引き出し部が積層幅広導体の積層体となっていることで、応力緩和と低インダクタンスを実現できる。
次に、本発明の第4の実施形態によるコンデンサモジュールの断面図を図22に示す。
本実施形態では、コンデンサモジュールCMの基本的な構成は、図4〜図10に示したコンデンサモジュールCMと同様である。本実施例の特徴は、図4に比べ、コンデンサセルCDSの載置方向を変えた点である。コンデンサセルCDSは、蒸着したフィルムを巻回して製作しているため、熱伝導に異方性がある。つまり、巻回する軸方向CDS-Axが、径方向CDS-Radより熱伝導がよい。このため本実施例では、ケース12の上面が、コンデンサセルCDS軸方向CDS-Axとなり、上面で伝熱のよい接続ができる。このため、コンデンサセルCDSの寿命を向上することができる。
次に、本発明の第5の実施形態によるコンデンサモジュールの構成を図5に示す。
本実施形態では、コンデンサモジュールCMの基本的な構成は、図4〜図10に示したコンデンサモジュールCMと同様である。本実施例の特徴は、2つの電動機を制御する車載電機システムの電力変換装置のコンデンサモジュールCMにおいて、パワーモジュール1つに必ず低インダクタンスなコンデンサモジュール1つを接続できる配置で、かつ、低インダクタンスで接続していない残りの1つコンデンサモジュールも電流供給するためのコンデンサ容量を増やす役割を維持しつつ、コンデンサモジュールを1つにまとめた点である。コンデンサモジュールCMは、絶縁シートを介して2枚の幅広導体を積層した積層体の両端に、複数個のコンデンサセルCDSを載置配置し、中心位置でパワーモジュールと接続する構造である。これにより、2つのコンデンサモジュールのときに生じた組み立て時にコンデンサモジュールのネジ止めの位置あわせ不要になる。また、本実施例では、2つのパワーモジュールと接続する構造のため接続穴が複数あるが、2つのパワーモジュールが1つになったパワーモジュールを用いる場合は、接続部の穴を減らすことができ、底面積をさらに小さくできる。
以上説明したように、本実施例によれば、低インダクタンスでかつ接続部の応力を緩和したコンデンサモジュールが得られる。
さらに、本実施例によれば、小型な電力変換装置INVを実現することができる。
さらに、本実施例によれば、2つの電動機MG1、MG2を制御する電力変換装置INVを小型で実現することができる。
さらに、本実施例によれば、2つの電動機MG1、MG2を制御する電力変換装置を備えた車載電機システムを小型に提供できる。