以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施の形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成を示す回路図である。図1において、本実施の形態に係る誘導加熱調理器は、商用電源90からの交流電圧を直流電圧に変換する直流電源回路である整流回路41と、互いに直列に接続された加熱コイル51及び共振コンデンサ61を備えた直列共振回路101と、互いに直列に接続された加熱コイル52及び共振コンデンサ62を備えた直列共振回路102と、互いに直列に接続された加熱コイル53及び共振コンデンサ63を備えた直列共振回路103と、パワーモジュール1及びパワーモジュール2と、制御回路70と、操作部93と、表示部94と、冷却ファン96とを備えて構成される。
本実施の形態に係る誘導加熱調理器は、
(a)整流回路41の正極45と負極46との間に直列に接続された1対のスイッチング素子11−1,11−2と、スイッチング素子11−1に並列に接続されたダイオード12−1と、スイッチング素子11−2に並列に接続されたダイオード12−2とを備えたアームA1−1と、整流回路41の正極45と負極46との間に直列に接続された1対のスイッチング素子11−3,11−4と、スイッチング素子11−3に並列に接続されたダイオード12−3と、スイッチング素子11−4に並列に接続されたダイオード12−4とを備えたアームA1−2と、整流回路41の正極45と負極46との間に直列に接続された1対のスイッチング素子11−5,11−6と、スイッチング素子11−5に並列に接続されたダイオード12−5と、スイッチング素子11−6に並列に接続されたダイオード12−6とを備えたアームA1−3とを備えたパワーモジュール1と、
(b)整流回路41の正極45と負極46との間に直列に接続された1対のスイッチング素子21−1,21−2と、スイッチング素子21−1に並列に接続されたダイオード22−1と、スイッチング素子21−2に並列に接続されたダイオード22−2とを備えたアームA2−1と、整流回路41の正極45と負極46との間に直列に接続された1対のスイッチング素子21−3,21−4と、スイッチング素子21−3に並列に接続されたダイオード22−3と、スイッチング素子21−4に並列に接続されたダイオード22−4とを備えたアームA2−2と、整流回路41の正極45と負極46との間に直列に接続された1対のスイッチング素子21−5,21−6と、スイッチング素子21−5に並列に接続されたダイオード22−5と、スイッチング素子21−6に並列に接続されたダイオード22−6とを備えたアームA2−3とを備えたパワーモジュール2と、
(c)アームA1−1のスイッチング素子11−1,11−2の接続点とアームA2−1のスイッチング素子21−1,21−2の接続点との間に接続された直列共振回路101と、
(d)アームA1−2のスイッチング素子11−3,11−4の接続点とアームA2−2のスイッチング素子21−3,21−4の接続点との間に接続された直列共振回路102と、
(e)アームA1−3のスイッチング素子11−5,11−6の接続点とアームA2−3のスイッチング素子21−5,21−6の接続点との間に接続された直列共振回路103と、
(f)直列共振回路101,102,103のそれぞれに投入する電力の和が、直列共振回路101,102,103のそれぞれに投入可能な最大の電力の和よりも小さくなるように、スイッチング素子11−1,11−2を交互にオンオフ駆動するとともにスイッチング素子21−1,21−2を交互にオンオフ駆動して加熱コイル51に高周波電流を流し、スイッチング素子11−3,11−4を交互にオンオフ駆動するとともにスイッチング素子21−3,21−4を交互にオンオフ駆動して加熱コイル52に高周波電流を流し、スイッチング素子11−5,11−6を交互にオンオフ駆動するとともにスイッチング素子21−5,21−6を交互にオンオフ駆動して加熱コイル53に高周波電流を流す制御回路70とを備えたことを特徴とする。
図1において、パワーモジュール1は、3組のアームA1−1、A1−2、及びA1−3と、スイッチング素子駆動回路13−1、13−2、及び13−3とを備えて構成される。ここで、アームA1−1は、整流回路41の正極45と負極46との間に直列に接続されたスイッチング素子11−1及び11−2と、スイッチング素子11−1及び11−2にそれぞれ並列に接続された電力回生用のダイオード12−1及び12−2とを備えて構成され、スイッチング素子11−1及び11−2は、スイッチング素子駆動回路13−1によってオンオフ駆動される。また、アームA1−2は、整流回路41の正極45と負極46との間に直列に接続されたスイッチング素子11−3及び11−4と、スイッチング素子11−3及び11−4にそれぞれ並列に接続された電力回生用のダイオード12−3及び12−4とを備えて構成され、スイッチング素子11−3及び11−4は、スイッチング素子駆動回路13−2によってオンオフ駆動される。さらに、アームA1−3は、整流回路41の正極45と負極46との間に直列に接続されたスイッチング素子11−5及び11−6と、スイッチング素子11−5及び11−6にそれぞれ並列に接続された電力回生用のダイオード12−5及び12−6とを備えて構成され、スイッチング素子11−5及び11−6は、スイッチング素子駆動回路13−3によってオンオフ駆動される。
また、図1において、パワーモジュール2は、3組のアームA2−1、A2−2、及びA2−3と、スイッチング素子駆動回路23−1、23−2、及び23−3とを備えて構成される。ここで、アームA2−1は、整流回路41の正極45と負極46との間に直列に接続されたスイッチング素子21−1及び21−2と、スイッチング素子21−1及び21−2にそれぞれ並列に接続された電力回生用のダイオード22−1及び22−2とを備えて構成され、スイッチング素子21−1及び21−2は、スイッチング素子駆動回路23−1によってオンオフ駆動される。また、アームA2−2は、整流回路41の正極45と負極46との間に直列に接続されたスイッチング素子21−3及び21−4と、スイッチング素子21−3及び21−4にそれぞれ並列に接続された電力回生用のダイオード22−3及び22−4とを備えて構成され、スイッチング素子21−3及び21−4は、スイッチング素子駆動回路23−2によってオンオフ駆動される。さらに、アームA2−3は、整流回路41の正極45と負極46との間に直列に接続されたスイッチング素子21−5及び21−6と、スイッチング素子21−5及び21−6にそれぞれ並列に接続された電力回生用のダイオード22−5及び22−6とを備えて構成され、スイッチング素子21−5及び21−6は、スイッチング素子駆動回路23−3によってオンオフ駆動される。なお、スイッチング素子11−1〜11−6及び21−1〜21−6はそれぞれ、例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタにてなる。
さらに、図1において、スイッチング素子11−1及び11−2の接続点とスイッチング素子21−1及び21−2の接続点との間に直列共振回路101が接続され、アームA1−1とアームA2−1とはフルブリッジ型のインバータ回路を構成している。また、スイッチング素子11−3及び11−4の接続点とスイッチング素子21−3及び21−4の接続点との間に直列共振回路102が接続され、アームA1−2とアームA2−2とはフルブリッジ型のインバータ回路を構成している。さらに、スイッチング素子11−5及び11−6の接続点とスイッチング素子21−5及び21−6の接続点との間に直列共振回路103が接続され、アームA1−3とアームA2−3とはフルブリッジ型のインバータ回路を構成している。
またさらに、図1において、駆動電圧源91はスイッチング素子駆動回路13−1,13−2,13−3,23−1,23−2,23−3に所定の駆動電圧を供給する。スイッチング素子駆動回路13−1,13−2,13−3,23−1,23−2,23−3は、スイッチング素子駆動回路等電位配線Gdを備え、制御回路70は制御回路等電位配線Gcを備え、スイッチング素子11−2,11−4,11−6,21−2,21−4,21−6は、スイッチング素子等電位配線Geを備え、これらの等電位配線は、等電位となるように接続される。
図1において、操作部93は、例えばボタンなどを備えて構成され、誘導加熱調理器のユーザは、操作部93を操作し、加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入する電力及び調理プログラムなどを指定する。制御回路70は、ユーザによって指定された電力、調理プログラム、及び後述する電力決定方法にしたがって、加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入する電力を決定する。その後、制御回路70は決定した各加熱コイルに投入する電力に基づいて、スイッチング素子11−1〜11−6、及び21−1〜21−6をオンオフ駆動するための制御信号を発生して、スイッチング素子駆動回路13−1,13−2,13−3,23−1,23−2,23−3に出力する。スイッチング素子駆動回路13−1,13−2,13−3,23−1,23−2,23−3はそれぞれ、制御回路70からの制御信号に応答して、スイッチング素子11−1〜11−6、及び21−1〜21−6をオンオフ駆動する。
表示部94は、例えば液晶ディスプレイなどを備えて構成され、制御回路70からの制御信号に基づいて、各加熱コイルに投入された電力などの誘導加熱調理器に関する情報を表示する。冷却ファン96は、制御回路70からの制御信号に基づいて、パワーモジュール1及びパワーモジュール2に取り付けられた放熱フィン(図示せず。)に送風して、パワーモジュール1及びパワーモジュール2を冷却する。
図2は、図1の加熱コイル51,52,53の上にそれぞれ設けられた調理口51A,52A,53Aと、図1の操作部93と、図1の表示部94とを備えた誘導加熱調理器のトッププレート57の平面図である。大径の調理口51A及び52Aは、トッププレート57の前側の左右に配置され、小径の調理口53Aはトッププレート57の後側の中央に配置される。高火力を必要とする湯沸かし及び炒め物に使われる頻度が高い加熱コイル51及び52の投入可能電力(例えば、定格値)は3kWであり、低火力の煮込み及び保温に使われる頻度が高い加熱コイル53の投入可能電力は1.5kWである。また、操作部93は、トッププレート57の前側に3つ配置され、ユーザによって操作される。また、表示部94は、トッププレート57の前側に3つ配置され、誘導加熱調理器についての情報を表示する。
なお、調理口51A,52A,53Aの径の大きさ、並びに配置、及び加熱コイル51,52,53のそれぞれの投入可能電力は上述したものに限らず、任意の径、配置、及び投入可能電力でよい。例えば、調理口51A,52A,53Aの順に径を小さくし、加熱コイル51,52,53の順に投入可能電力を小さくしてもよい。また、前側の中央に調理口53Aを配置し、かつ後側の左右に調理口51A及び52Aを配置してもよい。さらに、操作部93及び表示部94の数及び配置は、図2に示したものに限らず、任意の数、及び任意の配置であってもよい。
上述したように、ユーザは、操作部93を用いて加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入する電力及び調理プログラムなどを指定するが、制御回路70は、加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入する電力の和を5.8kW以下に制限する。制御回路70は、加熱コイルに投入する電力を制限した場合、表示部94に加熱コイルに投入する電力が制限されたことを表示して、ユーザに知らせる。
各加熱コイルに投入する電力は、先に使用している加熱コイルを優先して決定する。例えば、加熱コイル51及び52に2.5kWの電力を投入し、加熱コイル53に0.5kWの電力を投入していると仮定する。このとき、加熱コイル51に投入する電力を加熱コイル51の投入可能電力である3kWまで増加させるようにユーザが操作しても、加熱コイル51に投入する電力は2.8kWで制限される。これは、加熱コイル51に投入する電力が2.8kWとなった時点で、加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入された電力の和が制限値5.8kWに達するからである。
なお、実施の形態1では、先に使用している加熱コイルを優先して各加熱コイルに投入する電力を決定したが、本発明はこれに限らず、特定の加熱コイルに投入する電力を制限することにより各加熱コイルに投入する電力を決定してもよく、新しく使用を開始した加熱コイルを優先して各加熱コイルに投入する電力を決定してもよい。
次に、図3及び図4を参照して、加熱コイル51に流れる電流I51の制御方法を説明する。図3は、図1の加熱コイル51に流れる電流I51と、図1の各スイッチング素子11−1,11−2,21−1,21−2のオンオフタイミングとを示すタイミングチャートである。また、図4(a)〜図4(f)はそれぞれ、図3の各期間M1〜M6における電流の経路を示す回路図である。
図3において、スイッチング素子11−1及び11−2は、同一の周波数で交互にオンオフ駆動され、スイッチング素子21−1及び21−2は、スイッチング素子11−1及び11−2と同一の周波数で交互にオンオフ駆動される。ここで、複数の加熱コイルを互いに異なる周波数でそれぞれ駆動すると、周波数の差分の値が可聴域の周波数である場合には誘導加熱調理器のユーザにとって不快な干渉音が発生する。したがって、本実施の形態において、スイッチング素子11−3,11−4,11−5,11−6,21−3,21−4,21−5,21−6は、スイッチング素子11−1,11−2,21−1,21−2と同一の周波数で交互にオンオフ駆動される。
図3において、期間M1においてスイッチング素子11−1及び21−2はオンされ、スイッチング素子11−2及び21−1はオフされる。したがって、加熱コイルに流れる電流I51は、整流回路41の正極45→スイッチング素子11−1→加熱コイル51→共振コンデンサ61→スイッチング素子21−2→整流回路41の負極46の経路を通って流れる。このとき、加熱コイル51に流れる電流I51の電流値は大きくなっていく。
次に、期間M2においてスイッチング素子11−1はオフされる。したがって、加熱コイル51に流れる電流I51は、スイッチング素子21−2→ダイオード12−2→加熱コイル51→共振コンデンサ61→スイッチング素子21−2の経路を通って流れる。このとき、加熱コイル51に流れる電流I51の電流値は小さくなっていく。
次に、期間M3においてスイッチング素子21−2はオフされる。したがって、加熱コイル51に流れる電流I51は、整流回路41の負極46→ダイオード12−2→加熱コイル51→共振コンデンサ61→ダイオード22−1→整流回路41の正極45の経路を通って流れる。このとき、加熱コイル51に流れる電流I51の電流値は小さくなっていく。
次に、期間M4において、スイッチング素子11−2及び21−1はオンされ、スイッチング素子11−1及び21−2はオフされる。したがって、加熱コイル51に流れる電流I51は、整流回路41の正極45→スイッチング素子21−1→共振コンデンサ61→加熱コイル51→スイッチング素子11−2→整流回路41の負極46の経路を通って流れる。このとき、期間M3から期間M4に切り換えたときに電流I51の向きは反転し、電流I51の電流値の絶対値は大きくなっていく。
次に、期間M5において、スイッチング素子11−2はオフされる。したがって、加熱コイル51に流れる電流I51は、スイッチング素子21−1→共振コンデンサ61→加熱コイル51→ダイオード12−1→スイッチング素子21−1の経路を通って流れる。このとき、加熱コイル51に流れる電流I51の絶対値は小さくなっていく。
最後に、期間M6において、スイッチング素子21−1はオフされる。したがって、加熱コイル51に流れる電流I51は、整流回路41の負極46→ダイオード22−2→共振コンデンサ61→加熱コイル51→ダイオード12−1→整流回路41の正極45の経路を通って流れる。このとき、加熱コイルに流れる電流の絶対値は小さくなっていく。
上述した加熱コイル51に流れる電流I51の制御方法において、期間M1及びM4を長くすると、電流I51のピーク値が増大し、期間M1及びM4を短くすると、電流I51のピーク値が減少する。また、加熱コイル51に流れる電流I51のピーク値が大きいほど、加熱コイル51に投入される電力が大きくなる。期間M1は、スイッチング素子11−1がオンである期間(すなわち領域Z1)と、スイッチング素子21−2がオンである期間(すなわち領域Z5)とが重なる期間であり、期間M4は、スイッチング素子11−2がオンである期間(すなわち領域Z3)と、スイッチング素子21−1がオンである期間(すなわち領域Z4)とが重なる期間である。期間M1及び期間M4の長さの変更は、スイッチング素子11−1,11−2がオンである期間と、スイッチング素子21−1,21−2がオンである期間とを前後に移動させて、各スイッチング素子がオンである期間が重なる長さを変更することによって実行する。ここで、スイッチング素子11−1,11−2,21−1,21−2がオンである期間及びオフである期間の長さは変化させない。例えば、スイッチング素子21−1をオンするタイミングを、図3の場合よりも遅らせると、領域Z4と領域Z3とが重なる期間が短くなり、その結果、期間M4が短くなる。一方、スイッチング素子21−1をオンするタイミングを、図3の場合よりも早めると、期間M4が長くなる。また、スイッチング素子21−1とスイッチング素子21−2とは、交互にオンオフ駆動されているため、スイッチング素子21−1のオンオフタイミングを変化させると、スイッチング素子21−2のオンオフタイミングも同様に変化して、領域Z5と領域Z1とが重なる期間、すなわち期間M1の長さが変化する。なお、上述した例では、スイッチング素子21−1をオンするタイミングを変化させたが、他のスイッチング素子をオンするタイミングを変化させても、同様に制御することができる。上述したように、制御回路70は、期間M1及びM4の長さを変化させることにより、加熱コイル51に投入する電力を制御することができる。また、加熱コイル52,53に投入する電力も同様に制御することができる。
以上詳述したように、制御回路70は、1対のスイッチング素子11−1,11−2を交互にオンオフ駆動するとともに、1対のスイッチング素子21−1,21−2を交互にオンオフ駆動して加熱コイル51に高周波電流を供給するように制御する。また、制御回路70は、1対のスイッチング素子11−3,11−4を交互にオンオフ駆動するとともに、1対のスイッチング素子21−3,21−4を交互にオンオフ駆動して加熱コイル52に高周波電流を供給するように制御する。さらに、制御回路70は、1対のスイッチング素子11−5,11−6を交互にオンオフ駆動するとともに、1対のスイッチング素子21−5,21−6を交互にオンオフ駆動して加熱コイル53に高周波電流を供給するように制御する。またさらに、制御回路70は、加熱コイル51,52,53に投入する電力の和が、5.8kW以下になるように加熱コイル51,52,53に投入する電力を制御する。
加熱コイル51に流れる電流I51の電流値が増加すると、各スイッチング素子11−1,11−2,22−1,22−2に流れる電流の電流値が増加する。その結果、加熱コイル51に投入する電力の増加に伴って、各スイッチング素子11−1,11−2,22−1,22−2からの発熱量が増加する。しかしながら、本実施の形態によれば、図4に示すように、期間M1〜M6の全体において、スイッチング素子11−1及びダイオード12−1に流れる電流の電流値と、スイッチング素子21−2及びダイオード22−2に流れる電流の電流値とは実質的に等しくなり、スイッチング素子11−2及びダイオード12−2に流れる電流の電流値とスイッチング素子21−1及びダイオード22−1に流れる電流の電流値とは実質的に等しくなる。したがって、アームA1−1を構成するスイッチング素子11−1、11−2及びダイオード12−1、11−2からの単位時間あたりの各発熱量(以下、発熱量という。)の和と、アームA2−1を構成するスイッチング素子21−1、21−2及びダイオード22−1、21−2からの発熱量の和とは実質的に等しくなる。同様に、アームA1−2からの発熱量とアームA2−2からの発熱量とは実質的に等しくなり、アームA1−3からの発熱量とアームA2−3からの発熱量とは実質的に等しくなる。したがって、誘導加熱調理器全体からの発熱量は、パワーモジュール1とパワーモジュール2とに等分配される。
図5は、鍋A及び鍋Bにおける、加熱コイルへの投入電力と、当該加熱コイルに接続されたスイッチング素子及びダイオードからの発熱量の和との関係を示すグラフである。図5に示すように、加熱コイルへの投入電力と、当該加熱コイルに接続されたスイッチング素子及びダイオードからの発熱量の和との関係は、鍋によって異なる。例えば、鍋Aの場合、加熱コイルへの投入電力に対して、当該加熱コイルに接続されたスイッチング素子及びダイオードからの発熱量は正比例する。一方、鍋Bの場合、加熱コイルへの投入電力がWbのとき、加熱コイルに接続されたスイッチング素子及びダイオードからの発熱量は最小値Hbを有する。
図6〜図9は、図5の鍋A又は鍋Bを加熱する場合の図1の加熱コイル51、52、及び53に投入する電力と、図1のパワーモジュール1及び2からの発熱量との関係を示す表である。鍋の種類及び組み合わせは多数存在するが、ここでは簡単のために、(1)図1の加熱コイル51,52,53でそれぞれ図5の鍋Aを加熱する場合、(2)図1の加熱コイル51,52,53でそれぞれ図5の鍋Bを加熱する場合、(3)図1の加熱コイル51で図5の鍋Aを加熱し、図1の加熱コイル52,53でそれぞれ図5の鍋Bを加熱する場合、(4)図1の加熱コイル51で図5の鍋Bを加熱し、図1の加熱コイル52,53でそれぞれ図5の鍋Aを加熱する場合の4種類のみを考える。
図6は、図1の加熱コイル51,52,53でそれぞれ図5の鍋Aを加熱する場合の、各加熱コイルに投入する電力と、図1のパワーモジュール1及び2からの発熱量との関係を示す表であり、図7は、図1の加熱コイル51,52,53でそれぞれ図5の鍋Bを加熱する場合の、各加熱コイルに投入する電力と、図1のパワーモジュール1及び2からの発熱量との関係を示す表であり、図8は、図1の加熱コイル51で図5の鍋Aを加熱し、図1の加熱コイル52,53でそれぞれ図5の鍋Bを加熱する場合の、各加熱コイルに投入する電力と、図1のパワーモジュール1及び2からの発熱量との関係を示す表であり、図9は、図1の加熱コイル51で図5の鍋Bを加熱し、図1の加熱コイル52,53でそれぞれ図5の鍋Aを加熱する場合の、各加熱コイルに投入する電力と、図1のパワーモジュール1及び2からの発熱量との関係を示す表である。
例えば、図6の表の1行目は、加熱コイル51で鍋Aを3kWで加熱し、加熱コイル52で鍋Aを2.5kWで加熱し、加熱コイル53で鍋Aを0.3kWで加熱する場合を示している。この場合、加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入された電力の和は5.8kWである。また、アームA1−1の発熱量は30Wであり、アームA1−2の発熱量は25Wであり、アームA1−3の発熱量は3Wであり、したがってパワーモジュール1の発熱量は58Wである。さらに、アームA2−1の発熱量は30Wであり、アームA2−2の発熱量は25Wであり、アームA2−3の発熱量は3Wであり、したがってパワーモジュール2の発熱量は58Wである。よって、パワーモジュール1及びパワーモジュール2の発熱量の和は116Wである。上述したように、図6〜図9に示したいずれの場合にも、加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入される電力の和は5.8kW以下であり、パワーモジュール1の発熱量とパワーモジュール2の発熱量とが等しい。
従来技術に係る誘導加熱調理器は、加熱コイルごとに2つのアームを備えたパワーモジュールを備えており、それぞれのパワーモジュールを冷却するために、パワーモジュールごとに放熱フィン及び冷却ファンを備えている。したがって、各パワーモジュールを冷却するためには、各パワーモジュールの最大発熱量に合わせた冷却能力が必要である。従来技術に係る誘導加熱調理器において、上述した鍋A、鍋B、及び加熱コイルを用いた場合、各パワーモジュールの最大発熱量は、加熱コイル51,52,53がそれぞれの投入可能電力である3kW,3kW,1.5kWで鍋Aを加熱する場合に発生する。このとき、加熱コイル51に対するパワーモジュールの各アームの発熱量は30Wであり、当該パワーモジュールの発熱量は30W+30W=60Wであるので、当該パワーモジュールを冷却するために60Wの冷却能力が必要となる。また、加熱コイル52に対するパワーモジュールの各アームの発熱量は30Wであり、当該パワーモジュールの発熱量は30W+30W=60Wであるので、当該パワーモジュールを冷却するために60Wの冷却能力が必要となる。さらに、加熱コイル53に対するパワーモジュールの各アームの発熱量は15Wであり、当該パワーモジュールの発熱量は15W+15W=30Wであるので、当該パワーモジュールを冷却するために30Wの冷却能力が必要となる。この結果、従来技術に係る誘導加熱調理器では、3つのパワーモジュールの発熱量の和、すなわち60W+60W+30W=150Wの冷却能力が必要となる。なお、従来技術に係る誘導加熱調理器では、各加熱コイルに投入する電力の和を制限しても、各パワーモジュールは上述した最大発熱量を発生する場合があるので、各パワーモジュールを冷却するために必要な冷却能力は変化せず、誘導加熱調理器に必要な冷却能力も変化しない。
一方、本実施の形態では、図6〜図9に示すとおり、鍋A及び鍋Bを加熱する場合のパワーモジュール1の発熱量とパワーモジュール2の発熱量との和の最大値は、130W(加熱コイル51が鍋Aを3kWで加熱し、加熱コイル52が鍋Bを2.5kWで加熱し、加熱コイル53が鍋Bを0.3kWで加熱する場合(図8の表の1行目)。)である。したがって、本実施の形態の誘導加熱調理器に必要な冷却能力は130Wであり、従来技術に係る誘導加熱調理器に必要な冷却能力150Wよりも小さいことから、パワーモジュール1及びパワーモジュール2を冷却するための放熱フィン及び冷却ファンを従来技術に比較して小型化することができる。
図10は、図1の整流回路41を示す回路図である。整流回路41は、整流ブリッジダイオード42と、チョークコイル43と、平滑コンデンサ44とを備えて構成される。整流ブリッジダイオード42は、入力端子T1及びT2と、正側出力端子T3と、負側出力端子T4とを備えて構成される。整流ブリッジダイオード42において、ダイオードD1のアノード及びダイオードD3のカソードが入力端子T1に接続され、ダイオードD2のアノード及びダイオードD4のカソードが入力端子T2に接続され、ダイオードD1のカソード及びダイオードD2のカソードが正側出力端子T3に接続され、ダイオードD3のアノード及びダイオードD4のアノードが負側出力端子T4に接続される。整流ブリッジダイオード42の入力端子T1及びT2には、商用電源90が接続される。整流ブリッジダイオード42の正側出力端子T3には、チョークコイル43が接続され、チョークコイル43は、整流回路41の正極45に接続される。また、整流ブリッジダイオード42の負側出力端子T4は、整流回路41の負極46に接続される。さらに、平滑コンデンサ44の正側端子が整流回路41の正極45に接続され、平滑コンデンサ44の負側端子が整流回路41の負極46に接続される。整流回路41では、商用電源90から入力される交流電圧が整流されて、平滑コンデンサ44の両端に発生する直流電圧がパワーモジュール1及びパワーモジュール2に供給される。
図11は、加熱コイルへの投入電力と図1の整流回路41の発熱量との関係を示すグラフである。図11に示すように、加熱コイルへの投入電力が大きくなるほど、商用電源90から整流回路41に供給される電流が大きくなるため、整流回路41の発熱量が大きくなる。整流ブリッジダイオード42は、放熱フィンを取り付けられ、冷却ファンで送風して冷却される。本実施の形態では、制御回路70が加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入する電力の和を5.8kWに制限するため、整流回路41を冷却するための放熱フィン及び冷却ファンの冷却能力は、加熱コイルへの投入電力の和が5.8kWである場合に対応できればよく、加熱コイルへの投入電力が加熱コイル51,52,53のそれぞれの投入可能電力の和である7.5kWである場合に対応する必要はない。したがって、本実施の形態では、各加熱コイルへの投入電力を制御しない場合と比較して、整流回路41の冷却装置を小型化することができる。
図12は、図1のパワーモジュール1及びパワーモジュール2を放熱フィン95及び冷却ファン96で冷却するための構成を示す斜視図である。パワーモジュール1及びパワーモジュール2は、基板97上に取り付けられる。また、パワーモジュール1及びパワーモジュール2には、放熱フィン95が取り付けられ、冷却ファン96の送風によって冷却される。基板97及び冷却ファン96は、誘導加熱調理器の筐体(図示せず。)に取り付けられる。一般に、複数のパワーモジュールを1つの放熱フィンで冷却する場合、複数のパワーモジュールの間で発熱量が異なると、発熱集中が発生し効率のよい冷却が困難となる。しかし、本実施の形態では、上述したように、加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入する電力がどのような条件であってもパワーモジュール1の発熱量とパワーモジュール2の発熱量とが等しくなり、発熱集中が発生しないことから、効率のよく冷却することができる。また、従来技術に係る誘導加熱調理器では、パワーモジュールごとに放熱フィン及び冷却ファンを設けていたが、本実施の形態では、発熱集中が発生しないので、複数のパワーモジュールを1組の放熱フィン95及び冷却ファン96で冷却することができ、冷却装置を従来技術と比較して小型化することができる。
以上説明したように、実施の形態1によれば、制御回路70が、加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入する電力の和を、各加熱コイル51,52,53の投入可能電力の和よりも小さくなるように制御するので、パワーモジュール1及びパワーモジュール2の発熱量が、加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入する電力を制御しない場合と比較して小さくなり、パワーモジュール1及びパワーモジュール2を冷却するための放熱フィン95及び冷却ファン96を小型化することができる。また、3つのアームA1−1〜A1−3を備えたパワーモジュール1、及び3つのアームA2−1〜A2−3を備えたパワーモジュール2を用いて加熱コイル51,52,53のそれぞれに流れる電流を制御するように構成したので、加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入する電力がどのような条件であってもパワーモジュール1の発熱量とパワーモジュール2の発熱量とが等しくなり、発熱集中が発生しない。したがって、パワーモジュール1及びパワーモジュール2を1つの放熱フィン95と冷却ファン96で冷却することができるため、冷却装置を小型化することができる。さらに、加熱コイル51,52,53に対して、パワーモジュール1及びパワーモジュール2を備え、制御回路70が、加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入する電力の和を制限するので、パワーモジュール1及びパワーモジュール2を冷却するために必要な冷却能力は、加熱コイル51,52,53に投入する電力の和の最大値に対応することができればよく、加熱コイルごとにパワーモジュールを備え、かつパワーモジュールごとに冷却装置を備える場合と比較して、冷却装置を小型化することができる。
実施の形態1の変形例.
図13は、本発明の実施の形態1の変形例に係る図1のパワーモジュール1を放熱フィン95A及び冷却ファン96Aで冷却し、パワーモジュール2を放熱フィン95B及び冷却ファン96Bで冷却するための構成を示す斜視図である。実施の形態1の変形例は、実施の形態1と比較して、パワーモジュール1及びパワーモジュール2のそれぞれに、別々の放熱フィン95A及び95Bが取り付けられ、別々の冷却ファン96A及び96Bの送風によって冷却される点が異なる。その他の構成要素については、実施の形態1と同様であってその説明を省略する。
各パワーモジュールに対して別々の放熱フィン及び冷却ファンを設ける場合、加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入する電力によって各パワーモジュールの発熱量が異なると、各パワーモジュールの発熱量の最大値に合わせて放熱フィン及び冷却ファンを選択する必要がある。しかしながら、本実施の形態ではパワーモジュール1及びパワーモジュール2の発熱量は、加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入する電力がどのような条件であっても等しいため、パワーモジュールごとに放熱フィン及び冷却ファンを選択する必要はなく、同一の放熱フィン及び冷却ファンを利用することができ、冷却装置のコストを低減することができる。
以上説明したように、実施の形態1の変形例によれば、制御回路70が、加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入する電力の和を、各加熱コイル51,52,53の投入可能電力の和よりも小さくなるように制御するので、パワーモジュール1及びパワーモジュール2の発熱量が、加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入する電力を制御しない場合と比較して小さくなり、パワーモジュール1を冷却するための放熱フィン95A並びに冷却ファン96A、及びパワーモジュール2を冷却するための放熱フィン95B並びに冷却ファン96Bを小型化することができる。また、3つのアームA1−1〜A1−3を備えたパワーモジュール1、及び3つのアームA2−1〜A2−3を備えたパワーモジュール2を用いて加熱コイル51,52,53のそれぞれに流れる電流を制御するように構成したので、加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入する電力がどのような条件であってもパワーモジュール1の発熱量とパワーモジュール2の発熱量とが等しくなり、発熱集中が発生しない。したがって、パワーモジュール1及びパワーモジュール2に同一の冷却装置を用いることができるので、冷却装置のコストを低減することができる。さらに、加熱コイル51,52,53に対して、パワーモジュール1及びパワーモジュール2を備え、制御回路70が、加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入する電力の和を制限するので、パワーモジュール1及びパワーモジュール2を冷却するために必要な冷却能力は、加熱コイル51,52,53に投入する電力の和の最大値に対応することができればよく、加熱コイルごとにパワーモジュールを備え、かつパワーモジュールごとに冷却装置を備える場合と比較して、冷却装置を小型化することができる。
なお、パワーモジュール1及びパワーモジュール2の冷却方法は、実施の形態1及び実施の形態1の変形例に限らず、パワーモジュール1の発熱量とパワーモジュール2の発熱量とが加熱コイル51,52,53のそれぞれに投入する電力がどのような条件であっても等しい効果を利用して、自由に設定することができる。
実施の形態2.
図14は、本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の構成を示す回路図である。実施の形態2は、実施の形態1と比較して、制御回路70と、パワーモジュール2との間に電気的な絶縁のための絶縁回路71−1〜71−6、及び絶縁回路71−1〜71−6に所定の電圧を供給する制御電圧源92をさらに備えたことを特徴とする。その他の構成要素については、実施の形態1と同様であってその説明を省略する。実施の形態2では、制御回路70からスイッチング素子駆動回路23−1〜23−3に送信される制御信号が絶縁回路71−1〜71−6を介して送信される。
図15は、本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の構成の一部、及び図14の絶縁回路71−2の構成を示す回路図であり、図16は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成の一部を示す回路図である。図15及び図16では、制御回路70、絶縁回路71−1,71−2、スイッチング素子駆動回路13−1,23−1、アームA1−1,A2−1、直列共振回路101、及びそれらの間の配線のみを示しているが、絶縁回路71−3〜71−6、スイッチング素子駆動回路13−2,13−3,23−2,23−3、アームA1−2,A1−3,A2−2,A2−3、直列共振回路102,103、及びそれらの間の配線に関しても、同様の構成であり、かつ同様に動作する。図15及び図16を参照して、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の動作について説明する。
上述したように、スイッチング素子駆動回路等電位配線Gd、制御回路等電位配線Gc、及びスイッチング素子等電位配線Geは、等電位となるように接続されている。図16を参照すると、制御回路70の制御回路等電位配線Gcとスイッチング素子駆動回路13−1のスイッチング素子駆動回路等電位配線Gdとは経路P1で接続されており、制御回路70の制御回路等電位配線Gcとスイッチング素子駆動回路23−1のスイッチング素子駆動回路等電位配線Gdとは経路P7で接続されており、スイッチング素子駆動回路13−1のスイッチング素子駆動回路等電位配線Gdとスイッチング素子11−2のスイッチング素子等電位配線Geとは経路P6で接続されており、スイッチング素子駆動回路23−1のスイッチング素子駆動回路等電位配線Gdとスイッチング素子21−2のスイッチング素子等電位配線Geとは経路P4で接続されており、スイッチング素子11−2のスイッチング素子等電位配線Geとスイッチング素子21−2のスイッチング素子等電位配線Geとは経路P5で接続される。以上の接続により、制御回路70の基準電位Vc、スイッチング素子駆動回路13−1の基準電位Vd1、スイッチング素子駆動回路23−1の基準電位Vd2、スイッチング素子11−2の基準電位Ve1、及びスイッチング素子21−2の基準電位Ve2は等しい電位を有する。
制御回路70は、基準電位Vcを基準にして、Hレベル又はLレベルの制御信号Sc21及びSc22をスイッチング素子駆動回路23−1に出力する。スイッチング素子駆動回路23−1は、制御回路70から入力される制御信号Sc21が基準電位Vd2を基準にしてHレベルとなった場合、スイッチング素子21−1に対して基準電位Vd2を基準にしてHレベルの信号Sd21を出力する。一方、スイッチング素子駆動回路23−1は、制御回路70から入力される制御信号Sc21が基準電位Vd2を基準にしてLレベルとなった場合、スイッチング素子21−1に対して基準電位Vd2を基準にしてLレベルの信号Sd21を出力する。スイッチング素子21−1は、スイッチング素子駆動回路23−1からの信号Sd21が基準電位Ve2を基準にしてHレベルとなった場合にオンし、Lレベルとなった場合にオフする。なお、制御信号Sc22、制御信号Sd22、並びにスイッチング素子21−2の組み合わせ、制御信号Sc11、制御信号Sd11、並びにスイッチング素子11−1の組み合わせ、及び制御信号Sc12、制御信号Sd12、並びにスイッチング素子11−2の組み合わせも同様に動作する。
ここで、経路P1及び経路P4〜経路P7は閉路を構成しているため、加熱コイル51に流れる高周波大電流が、スイッチング素子11−2→経路P6→経路P1→経路P7→経路P4→経路P5、又はこの逆の経路で流れる場合がある。このとき、経路P1及び経路P4〜経路P7の配線インピーダンスによる電圧降下により、基準電位Vc,Vd1,Vd2,Ve1,Ve2がそれぞれ変動して、スイッチング素子駆動回路13−1及び23−1が誤動作する可能性がある。例として、制御回路70がスイッチング素子駆動回路23−1へLレベルの信号Sc21を出力している場合を考える。この場合、スイッチング素子11−2→経路P6→経路P1→経路P7→経路P4→経路P5の順に高周波大電流が流れると、経路P7の配線インピーダンスによる電圧降下によって、制御回路70の基準電位Vcに対して、スイッチング素子駆動回路23−1の基準電位Vd2が低くなり、制御回路70がLレベルの信号Sc21を出力しても、スイッチング素子駆動回路23−1は、Hレベルの信号Sc21が入力されたと判定する場合がある。高周波大電流が、経路P1,P4,P6,P7に流れないようにするには、経路P5の配線インピーダンスを経路P1,P4,P6,P7の配線インピーダンスよりも低くしなければならず、パワーモジュール1及びパワーモジュール2の配置に制約が生じる。
そこで、本実施の形態では、図15のように制御回路70とスイッチング素子駆動回路23−1の間に絶縁回路71−1,71−2を備えている。以下では、絶縁回路71−2について説明するが、絶縁回路71−1も同じ構成である。図15において、図16の経路P7に代えて、制御回路70の制御回路等電位配線Gcと、絶縁回路71−2の絶縁回路1次側等電位配線Gi1とが経路P2で接続されており、絶縁回路71−2の絶縁回路2次側等電位配線Gi2と、スイッチング素子駆動回路23−1のスイッチング素子駆動回路等電位配線Gdが経路P3で接続されている。
また、絶縁回路71−2は、1次側ダイオード75、2次側上段FET76、及び2次側下段FET77を備えたフォトカプラ72と、npnトランジスタ73と、電流制限抵抗74と、抵抗78と、抵抗79を備えて構成される。電流制限抵抗74は、制御電圧源92と1次側ダイオード74のアノードとの間に接続され、1次側ダイオード74のカソードは、npnトランジスタ73のコレクタと接続される。npnトランジスタ73のベースは、抵抗78を介して制御回路70に接続され、かつ抵抗79を介して絶縁回路1次側等電位配線Gi1に接続される。また、npnトランジスタ73のエミッタは、絶縁回路1次側等電位配線Gi1に接続される。2次側上段FET76のドレインは駆動電圧源91に接続され、2次側上段FET76のソースは2次側下段FET77のドレインに接続される。2次側下段FET77のソースは、絶縁回路2次側等電位配線Gi2に接続される。2次側上段FET76と2次側下段FET77との接続点は、スイッチング素子駆動回路23−1に接続される。
次に、絶縁回路71−2の動作について説明する。なお、絶縁回路71−1も同様に動作する。制御回路70がスイッチング素子駆動回路23−1にHレベルの制御信号を出力する場合、制御回路70はまず、絶縁回路71−2にHレベルの制御信号Sc221を出力する。その結果、絶縁回路71−2のnpnトランジスタ73がオンし、1次側ダイオード75に電流制限抵抗74を介して電流が流れる。フォトカプラ72の1次側ダイオード75に電流が流れると、2次側上段FET76がオンし(2次側下段FET77はオフ)、スイッチング素子駆動回路23−1にHレベルの制御信号Sc222が出力される。一方、制御回路70がスイッチング素子駆動回路23−1にLレベルの制御信号を出力する場合、制御回路70はまず、絶縁回路71−2にLレベルの制御信号Sc221を出力する。その結果、絶縁回路71−2のnpnトランジスタ73がオフし、1次側ダイオード75には電流が流れない。1次側ダイオード75に電流が流れない場合、2次側下段FET77がオンし(2次側上段FET76はオフ)、スイッチング素子駆動回路23−1にLレベルの制御信号Sc222が出力される。
図15では、絶縁回路71−1,71−2が存在するので、図16で示したような閉路が存在しない。したがって、高周波大電流による基準電位Vc,Vd1,Vd2,Ve1,Ve2の変動に起因する誤動作が発生しない。よって、経路P5に対する配線インピーダンスの制約がなくなり、パワーモジュール1及びパワーモジュール2を自由に配置することができる。
以上説明したように、実施の形態2によれば、制御回路70とパワーモジュール2に内蔵されるスイッチング素子駆動回路23−1,23−2,23−3との間に電気的な絶縁のための絶縁回路71−1,71−2,71−3,71−4,71−5,71−6を備えたことを特徴とする。このため、加熱コイル51,52,53に流れる高周波大電流が制御回路70及びスイッチング素子駆動回路13−1,13−2,13−3,23−1,23−2,23−3に流れることによる誤動作を防止することができ、さらに、パワーモジュール1及びパワーモジュール2を自由に配置することができる。
なお、実施の形態2では、制御回路70とパワーモジュール2との間に絶縁回路71−1,71−2,71−3,71−4,71−5,71−6を接続したが、本発明はこれに限らず、制御回路70とパワーモジュール1との間に絶縁回路を接続してもよく、制御回路70とパワーモジュール1及びパワーモジュール2との両方の間に絶縁回路を接続してもよい。
実施の形態3.
図17は、本発明の実施の形態3に係る誘導加熱調理器の構成を示す回路図である。また、図18は、図17の加熱コイル54,55,56の配置を示す平面図である。実施の形態1及び実施の形態2に係る誘導加熱調理器では、加熱コイル51,52,53がそれぞれ独立した調理口51A,52A,53Aに配置されるが、本実施形態に係る誘導加熱調理器では、加熱コイル54,55,56が1つの調理口50に配置される。その他の構成要素については、実施の形態1と同様であってその説明を省略する。
実施の形態3に係る誘導加熱調理器では、加熱コイル54,55,56の投入可能電力はいずれも3kWであり、制御回路70は、加熱コイル54,55,56のそれぞれに投入する電力の和が3kW以下になるように、各加熱コイルに投入する電力を決定する。
図18に示すように、加熱コイル54,55,56は、1つの調理口50に同心円状に配置され、同心円の中心から外側に向かって巻かれている。また、加熱コイル55の直径は加熱コイル54の直径よりも大きく、加熱コイル56の直径よりも小さい。なお、加熱コイル54,55,56の配置は、図18の配置に限らない。
制御回路70は、加熱コイル54,55,56のそれぞれに投入する電力を、例えば以下のように制御するが、本発明はこれらの制御方法に限らない。
(1)加熱コイル54の直径より小さい直径を有する鍋を加熱するときには、加熱コイル54にのみ電力を投入し、加熱コイル55の直径より小さい直径を有する鍋を加熱するときには、加熱コイル54,55に電力を投入し、加熱コイル55の直径より大きい直径を有する鍋を加熱するときには、すべての加熱コイル54,55,56に電力を投入する。これにより、鍋に大きさに合わせて効率よく鍋を加熱することができる。
(2)加熱コイル54,55,56のそれぞれに投入する電力に所定の差を設けることにより、鍋底の加熱分布を変化させる。
(3)所定の期間の間だけ加熱コイル54のみに電力を投入し、その後、加熱コイル55のみに電力を投入し、その後、加熱コイル56のみに電力を投入することにより、鍋内の液体を内側から外側へ、中側から内側及び外側へ、外側から内側へと対流させる制御を行う。
図19は、図17の加熱コイル54,55,56で図5の鍋Aを加熱する場合の、各加熱コイルに投入する電力と、図17のパワーモジュール1及び2からの発熱量との関係を示す表であり、図20は、図17の加熱コイル54,55,56で図5の鍋Bを加熱する場合の、各加熱コイルに投入する電力と、図17のパワーモジュール1及び2からの発熱量との関係を示す表である。
例えば、図19の表の1行目は、加熱コイル54,55に0kWを投入しかつ加熱コイル56に3kWを投入して鍋Aを加熱する場合を示している。この場合、加熱コイル54,55,56のそれぞれに投入された電力の和は3kWである。また、アームA1−1の発熱量及びアームA1−2の発熱量は0Wであり、アームA1−3の発熱量は30Wであり、したがってパワーモジュール1の発熱量は30Wである。さらに、アームA2−1の発熱量及びアームA2−2の発熱量は0Wであり、アームA2−3の発熱量は30Wであり、したがってパワーモジュール2の発熱量は30Wである。よって、パワーモジュール1及びパワーモジュール2の発熱量の和は60Wである。
図19及び図20に示したいずれの場合にも、加熱コイル54,55,56のそれぞれに投入される電力の和は3kW以下であり、パワーモジュール1の発熱量とパワーモジュール2の発熱量とが等しい。したがって、本実施の形態の誘導加熱調理器に必要な冷却能力は、加熱コイルへの投入電力の和が3kWである場合に対応できればよく、加熱コイルへの投入電力が加熱コイル54,55,56のそれぞれの投入可能電力の和である9kWである場合に対応する必要はない。したがって、制御回路70が各加熱コイルへ投入する電力を制御しない場合と比較して、冷却装置を小型化することができる。
以上説明したように、実施の形態3によれば、実施の形態1及び実施の形態1の変形例と同様の効果を有する。さらに、実施の形態3によれば、1つの調理口50に、内側から順に加熱コイル54,55,56の3つの加熱コイルを備えたので、実施の形態1と比較して、鍋の形状及び大きさに合わせてより効率のよい加熱を行い、鍋底の加熱分布の種類を増加し、かつ様々な調理制御を行うことができる。
実施の形態3の変形例.
図21は、本発明の実施の形態3の変形例に係る誘導加熱調理器の加熱コイル54,55,56の配置を示す平面図である。本実施の形態は、実施の形態3と比較して、加熱コイルの配置が異なる。加熱コイル54,55,56は、各加熱コイル54,55,56の中心が調理口50内の1辺の長さがLである正三角形の各頂点に配置されるように設けられる。加熱コイル54,55,56はそれぞれ、中心から外側に向かって巻かれており、互いに同一の直径Rを有する。なお、加熱コイル54,55,56の配置は、図21の配置に限らない。
実施の形態3の変形例に係る誘導加熱調理器では、加熱コイル54,55,56の投入可能電力はいずれも3kWであり、制御回路70は、加熱コイル54,55,56のそれぞれに投入する電力の和が3kW以下になるように、各加熱コイルに投入する電力を決定する。制御回路70は、加熱コイル54,55,56のそれぞれに投入する電力を、例えば以下のように制御するが、本発明はこれらの制御方法に限らない。
(1)各加熱コイル54,55,56の直径R以下の直径を有する小径の鍋を加熱する場合、鍋は加熱コイル54,55,56のうちの1つの加熱コイル上に置かれる。このとき、制御回路70は、鍋の下の加熱コイルのみに電力を投入するように制御する。
(2)楕円形状を有する鍋を加熱する場合、鍋は2つの加熱コイル上に置かれる。このとき、制御回路70は、鍋の下の2つの加熱コイルに電力を投入するように制御する。
(3)加熱コイル54,55,56に対する各投入電力間に差を設けるように制御する。例えば、加熱コイル54,55,56に対して、順次電力を投入するように制御することにより鍋内の液体を所定の方向に回転させ、逆順に電力を投入するように制御することにより鍋内の液体を反対方向に回転させるという対流制御を行う。
以上説明したように、実施の形態3の変形例によれば、実施の形態1及び実施の形態1の変形例と同様の効果を有する。さらに、実施の形態3の変形例によれば、図21に示すように加熱コイル54,55,56を配置するので、実施の形態3と比較して、鍋の形状に応じてより効率のよい加熱を行うことができ、様々な調理制御を行うことができる。
なお、実施の形態3及び実施の形態3の変形例では、実施の形態2で述べた絶縁回路を備えていないが、本発明はこれに限らず、実施の形態2と同様に絶縁回路を備えて構成されてもよい。