成形型の形状、強度、ワークピースの形状などの条件により、成形型の厚みが変化することは多い。したがって、成形装置のスペース効率を高めるためには、複数の成形型を、それぞれの厚みに対応した高さ、すなわち、均等ではない間隔で上下に配置することが望ましい。しかしながら、一定の間隔を保ったまま一斉に昇降駆動するアームを備えた搬送手段では、不均等な間隔で上下に並んだ成形型の間でワークピースを搬送することは困難である。一方、厚みの異なる成形型をあえて等間隔で並べると、成形装置(プレス)が大きくなり、さらに、不要な部材を含むことになるので経済的でもなく、好ましくない。
そこで、本発明は、不等間隔で配置された成形型の間であっても、ワークピースを良好に搬送することができる搬送装置を提供することを目的としている。本発明においては、均等な間隔には配置されていない成形型の間で、それぞれの成形型とワークピースや、それを搬送するアームなどが成形型と干渉することなく、また、ワークピースが搬送中に脱落しないように、安全に、そして確実に搬送することができる搬送装置を提供することを目的としている。
そこで、本発明においては、ワークピースを搬送するための複数のキャリッジと、これらキャリッジの上下方向の動きをガイドする第1のガイドおよび第2のガイドとを有する搬送装置を提供する。これら第1のガイドと第2のガイドは並列に延び、複数のキャリッジは第1および第2のガイドに沿ってスライド可能であり、第1のガイドは、複数のキャリッジが第1のガイドに沿って下側に移動したときの第1の停止位置をそれぞれ決める複数の第1のストッパを備え、第2のガイドは、複数のキャリッジが第2のガイドに沿って下側に移動したときの第2の停止位置をそれぞれ決める複数の第2のストッパを備えている。さらに、この搬送装置は、第1のガイドを上下に動かす第1の駆動装置と、第1のガイドに対して第2のガイドを上下に動かす第2の駆動装置とを有する。
この搬送装置において、「上下方向」とは、垂直方向に沿った上下方向だけでなく、斜めに傾いた上下方向を含む。また、「キャリッジが上下方向に動く」とは、直線状に上下するものだけでなく、スパイラル状に上下するようなもの、あるいは、斜めに上下移動するようなものを含む。
また、キャリッジは、第1および第2のガイドに沿ってスライド可能であればよく、キャリッジには、搬送するワークピースの形態によってワークピースを保持するための種々の保持手段を搭載することができる。保持手段の1つの例は、先端にワークピースを圧力あるいは磁力などにより着脱できる吸着機構を備えたアームである。第1および第2のガイドは、シャフトのほか、凸状あるいは溝状のレール(スライドレール)などを含む。
この搬送装置においては、第2の駆動装置により第1のガイドに対して第2のガイドを下げて、該当するキャリッジの第2のストッパが第1のガイドの第1のストッパより下になれば、キャリッジは第1のストッパにより停止し、そのキャリッジは、第1のガイドに第1のストッパにより設定された間隔で保持される。したがって、第1の駆動装置により第1のガイドの位置が決まると、それぞれのキャリッジは、第1のストッパにより所望の第1の停止位置において停止する。その第1の停止位置では、それぞれのキャリッジの間隔は、第1のストッパにより設定された間隔(第1の間隔)となる。
逆に、第2の駆動装置により第1のガイドに対して第2のガイドを上げて、該当するキャリッジの第2のストッパが第1のストッパより上になれば、キャリッジは第2のストッパにより支持され、第2のガイドに第2のストッパにより設定された間隔で保持される。したがって、第2の駆動装置により、第2のガイドを、所定位置まで上げることにより、上側の所定の停止位置である第2の停止位置にそれぞれのキャリッジを停止させることができる。そして、キャリッジが第2のストッパにより停止する第2の停止位置では、第2のストッパにより設定された間隔(第2の間隔)でキャリッジの間隔が決まる。したがって、本発明の搬送装置においては、第1の停止位置と、第2の停止位置とで、キャリッジの停止位置と共に、それぞれのキャリッジが停止する間隔を変えることが可能となる。
すなわち、この搬送装置によれば、各キャリッジの第1の停止位置および第2の停止位置を独立して決定することができる。このため、不均等な間隔に配置された成形型に対してもワークピースを良好に搬送できる。
さらに、本発明の搬送装置においては、第1の駆動装置によって第1のガイドを上下動させるとともに、第2の駆動装置によって第1のガイドに対して第2のガイドを上下動させることが好ましい。すなわち、第1の駆動装置および第2の駆動装置が共に動いている時間があるように、この搬送装置を制御することが望ましい。これにより、キャリッジは、第1のガイドおよび第2のガイドの移動中に、第1のストッパと第2のストッパとが同じレベル(高さ)になった時点で、第1のストッパから第2のストッパ、または、第2のストッパから第1のストッパに、より小さな速度差で乗り移る。このため、停止している状態のストッパに、移動中のキャリッジが衝突して停止する事態を防止でき、その衝撃によってワークピースが脱落するような事態も防止できる。したがって、第1の駆動装置と第2の駆動装置を同時に動かすことにより、キャリッジを第1のストッパと第2のストッパの間でスムーズに乗り移らせることができる。そして、第1および第2の停止位置においては、第1および第2の駆動装置の能力により、ワークピースの移動開始および/または停止状態を制御できる。
すなわち、本発明における、ワークピースを搬送するための複数のキャリッジの上下方向の動きを第1のガイドおよび第2のガイドによりガイドする搬送装置の制御方法は、上昇工程と下降工程とを有する。上昇工程においては、複数のキャリッジが、第1のガイドに沿って下側に移動したときの第1の停止位置を決める複数の第1のストッパによりそれぞれ停止した状態から、第1のガイドおよび第2のガイドをそれぞれ上側に駆動し、複数のキャリッジが第2のガイドに沿って下側に移動したときの第2の停止位置を決める複数の第2のストッパによりそれぞれ停止した状態に移行する。下降工程においては、複数のキャリッジが、複数の第2のストッパによりそれぞれ停止した状態から、第1のガイドおよび第2のガイドをそれぞれ下側に駆動し、複数のキャリッジが複数の第1のストッパによりそれぞれ停止した状態に移行する。この制御により、キャリッジは、上昇工程および下降工程において、第1のストッパと第2のストッパとが同じレベルになった時点で、第1のストッパから第2のストッパ、または、第2のストッパから第1のストッパに、乗り移る。
本発明の搬送装置において、キャリッジの停止位置の間隔を変えるというメリットを享受するためには、第1の駆動装置が停止したもの、すなわち、第1の駆動装置を含まない搬送装置であっても良い。しかしながら、第2の駆動装置に加えて、第1のガイドを上下に動かす第1の駆動装置を有することが望ましい。上記のような制御が可能になる効果に加えて、第1の駆動装置により、第1のガイドを所定の位置まで下げることにより、下側の所定の停止位置である第1の停止位置を調整することができる。また、第2の駆動装置のストロークに、第1の駆動装置のストロークを加えて、第1の停止位置と第2の停止位置との移動距離を制御することが可能となり、ワークピースを搬送可能な距離が広がり、対応可能な成形型の間隔のバリエーションも広がる。
さらに、本発明の搬送装置においては、第2のストッパは、第1の停止位置において、第1のストッパよりも下側に位置するように、その位置を決定する必要がある。第1の駆動装置を設けることにより、そのような状態で、第1の停止位置をバリアブルに調整できる。
本発明の搬送装置においては、第1の駆動装置および第2の駆動装置に加えて、第1のガイドおよび第2のガイドを同期して上下に動かす第3の駆動装置を有することがさらに好ましい。第3の駆動装置の一形態は、第1のガイド、第2のガイド、第1の駆動装置および第2の駆動装置を共に上下に動かすものである。
この第3の駆動装置により、第1の停止位置および第2の停止位置において共通する動作を制御することが可能となり、第1および第2の駆動装置の制御を簡易にできる。共通する動作の1つは、それぞれの停止位置において、成形型からワークピースを取り出し(ロードし)、また、成形型にワークピースを載せる(アンロードする)ために、ワークピースの微少距離だけ上下に移動する動作である。
また、本発明においては、本発明の搬送装置と、キャリッジの移動方向に配置された複数の成形型を備えたプレス装置とを有する加工装置を提供する。第1のストッパにより決まる位置は、第1の成形型にワークピースをロードまたはアンロードするための位置であり、第2のストッパにより決まる位置は、第1の成形型よりも上側に位置する第2の成形型にワークピースをロードまたはアンロードするための位置である。
この加工装置においては、搬送装置によりワークピースを掴む位置と、放出する位置の間隔を独立に設定できる。したがって、プレス装置に複数の成形型を不均等な間隔で配置することが可能となる。あるいは、第2の成形型の位置が、第1の成形型の直上でなく、第1の成形型の複数段上側である場合であっても、それらの成形型の間で、搬送装置によりワークピースをスムーズに搬送できる。
本発明の加工装置においては、搬送装置のキャリッジに搭載されたアームが、ワークピースをロードした位置から旋回したり伸び縮みして成形型から離れて上下に移動し、再び旋回したり伸び縮みして成形型にワークピースをアンロードすることも可能である。しかしながら、上下移動に加えて、搬送中にワークピースを異なる方向に動かすことはワークピースが脱落する要因になりやすい。したがって、成形型の内、ワークピースを出し入れするための下型が、キャリッジの移動範囲と重なる第1の位置と、キャリッジの移動範囲から外れる第2の位置との間で移動可能であることが好ましい。
図1に、本発明の搬送装置およびこの搬送装置を有する加工装置の一例を示してある。この加工装置4は、複数の成形型41、42、および43を備えたプレス装置2と、ワークピースWをプレス装置2に供給するための台車3と、複数の成形型41〜43および台車3との間でワークピースWを搬送するための搬送装置1とを有している。
搬送装置1は、ワークピースWを搬送するための複数のキャリッジ10a、10bおよび10cと、これらキャリッジ10a、10bおよび10cの上下方向の動きをガイドする第1のガイド14および第2のガイド15とを有している。この搬送装置1は、第1および第2のガイド14、15としては、シャフトを用いており、これらのシャフト14および15は、垂直方向に、並列に延びている。
これらキャリッジ10a〜10cは、独立した状態で、個別に、シャフト14および15に沿って上下にスライドする。さらに、各々のキャリッジ10a〜10cは、先端にワークピースWを保持する機構13を備えたアーム11を搭載している。本例の保持機構13は、バキュームによりワークピースWを吸引支持する機能を備えている。ワークピースWが磁性体であれば、保持機構13として電磁石などを用いることも可能である。
第1のシャフト14には、キャリッジ10a、10bおよび10cの下側に当たって下側の停止位置(第1の停止位置)をそれぞれ決める第1のストッパ(カラー)16a、16bおよび16cが取り付けられている。また、第2のシャフト15には、キャリッジ10a、10bおよび10cの下側に当たって、下側の停止位置に対して上側の停止位置(第2の停止位置)をそれぞれ決める第2のストッパ(カラー)17a、17bおよび17cが取り付けられている。これらのストッパ16a〜16cおよび17a〜17cは、それぞれのシャフトに沿ってユーザーがマニュアルあるいは適当な治具で移動して、ユーザーが希望する適当な位置に固定することができる。
この搬送装置1は、第1のシャフト14を上下に動かす第1の駆動装置18と、第1のシャフト14に対して第2のシャフト15を上下に動かす第2の駆動装置19と、第1のシャフト14および第2のシャフト15を同期して上下に動かす第3の駆動装置20とを有している。これらの駆動装置18、19および20としては、それぞれ、アクチュエータとしてエアー駆動のシリンダを備えたシリンダタイプの駆動装置を用いている。
第2のシリンダ19は、このシリンダ19のピストンロッド19aの先端部が第2のシャフト15の基端部と連結されている。一方、第2のシリンダ19の基端部は、第1の支持部材21を介して第1のシリンダ18によって支持されている。したがって、第2のシリンダ19を駆動させると、第2のシャフト15を第1のシャフト14に対して上下方向に移動できる。
第1のシリンダ18は、このシリンダ18のピストンロッド18aの先端部が第1のシャフト14の基端部および第1の支持部材21と連結されている。一方、第1のシリンダ18の基端部は、第2の支持部材22を介して第3のシリンダ20によって支持されている。したがって、第1のシリンダ18を駆動させると、第1のシャフト14が上下に移動するとともに、第2のシャフト15および第2のシリンダ19も上下に移動する。
第3のシリンダ20は、このシリンダ20のピストンロッド20aの先端部が第2の支持部材22と連結されている。したがって、第3のシリンダ20を駆動させると、第1のシャフト14、第2のシャフト15、第1のシリンダ18および第2のシリンダ19を共に、上下に移動できる。
この搬送装置1によりワークピースWが搬送されるプレス装置2は、下側から、第1の成形型41、第2の成形型42、および、第3の成形型43を備えており、これらの成形型41〜43は、キャリッジ10a〜10cの移動方向、すなわち、本例においては上下に配置されている。さらに、プレス装置2は、成形型41〜43の下型41a〜43aに対して上型41b〜43bをそれぞれ上下方向に移動して下型41a〜43aに受け入れられたワークピースWをプレスする加圧機構45と、下型41a〜43aを前後方向(水平方向)に動かす移動機構44とを備えている。この移動機構44により、下型41a〜43aは、キャリッジ10a、10bおよび10cの移動範囲と重なる第1の位置と、キャリッジ10a、10bおよび10cの移動範囲から外れる第2の位置との間で水平方向に動き、第1の位置でワークWを搬送し、第2の位置でワークWを出し入れするとともにワークWを加圧成形する。
台車3は、ワークピースWを搭載する積載部3aを備えている。この台車3は、キャリッジ10aの移動範囲の第1の成形型41よりも下側において、ワークピースWを払い出す位置と、キャリッジ10aの移動範囲から外れて、新しいワークピースWを受け入れる位置との間を往復動する。加工装置4は、さらに、制御ユニット50を備えており、この制御ユニット50を介して、第1、第2および第3のシリンダ18、19および20と、台車3と、プレス装置2の移動機構44および加圧機構45とが制御される。
この加工装置4においては、台車3に積載されたワークピースWの上面と第1の成形型41の下型41aに支持されたワークピースWの上面とが間隔L1、第1の成形型41の下型41aに支持されたワークピースWの上面と第2の成形型42の下型42aに支持されたワークピースWの上面とが間隔L2、第2の成形型42の下型42aに支持されたワークピースWの上面と第3の成形型43の下型43aに支持されたワークピースWの上面とが間隔L3となるように、台車3とプレス装置2とが水平面Fに対して調整されている。したがって、台車3から第1の成形型41の下型41aまでのワークピースWの移動距離は間隔L1となり、第1の成形型41の下型41aから第2の成形型42の下型42aまでのワークピースWの移動距離は間隔L2となり、第2の成形型42の下型42aから第3の成形型43の下型43aまでのワークピースWの移動距離が間隔L3となる。そして、これらの間隔L1、間隔L2、間隔L3は、L1<L2<L3となっている。本例の加工装置4においては、これらの間隔L1、間隔L2、間隔L3の関係を、成形型の形状、大きさなどによって任意に決めることが可能であり、ワークピースを移動する距離を一律に揃える必要はない。
搬送装置1の各々のシャフト14および15に取り付けられたストッパ16a〜16cおよびストッパ17a〜17cの位置は、プレス装置2の成形型41〜43にワークピースWをロード(配給)し、アンロード(取得)する位置との関係により決まる。下から上に向かってワークピースWを搬送する場合、第1のシャフト14の一番下の第1のストッパ16aにより決まるキャリッジ10aの第1の停止位置は、台車3からワークピースWをアンロードするための位置である。第2のシャフト15の一番下の第2のストッパ17aにより決まるキャリッジ10aの第2の停止位置は、第1の成形型41にワークピースWをロードするための位置である。第1のシャフト14の真中の第1のストッパ16bにより決まるキャリッジ10bの第1の停止位置は、第1の成形型41からワークピースWをアンロードするための位置である。第2のシャフト15の真中の第2のストッパ17bにより決まるキャリッジ10bの第2の停止位置は、第1の成形型41よりも上側に位置する第2の成形型42にワークピースWをロードするための位置である。
第1のシャフト14の一番上の第1のストッパ16cにより決まるキャリッジ10cの第1の停止位置は、第2の成形型42からワークピースWをアンロードするための位置である。第2のシャフト15の一番上の第2のストッパ17cにより決まるキャリッジ10cの第2の停止位置は、第2の成形型42よりも上側に位置する第3の成形型43にワークピースWをロードするための位置である。ワークピースWを上から下に搬送する場合は、ロードとアンロードが逆転する。
このため、第1のシャフト14においては、第1のストッパ16aと第1のストッパ16bは間隔L1となるように、第1のストッパ16bと第1のストッパ16cは間隔L2となるようにセットされている。また、第2のシャフト15においては、第2のストッパ17aと第2のストッパ17bは間隔L2となるように、第2のストッパ17bと第2のストッパ17cは間隔L3となるように設定されている。それぞれのキャリッジ10a〜10cの停止位置における間隔は、これらのストッパ16a〜16cおよび17a〜17cにより決まるが、それぞれのキャリッジ10a〜10cのプレス装置2に対する第1および第2の停止位置は、これらのストッパ16a〜16cおよび17a〜17cの位置だけでは決まらず、第1のシリンダ18および第2のシリンダ19のストロークも加味される。すなわち、それぞれのキャリッジ10a〜10cの下方の第1の停止位置は、第1のシリンダ18がストロークの設定範囲で最も下側に動いた位置により決まる。また、それぞれのキャリッジ10a〜10cの上側の第2の停止位置は、第1のシリンダ18がストロークの設定範囲で最も上側に動き、さらに、第2のシリンダ19がストロークの設定範囲で最も上側に動いた位置により決まる。
さらに、第3のシリンダ20は、第1のシャフト14および第2のシャフト15を共に動かして第1および第2の停止位置における共通の動きを制御する。それは、下型に対してワークピースをロードおよびアンロードする際にワークピースWを僅かに上下に動かす動作であり、成形型41〜43が前後に動く際にワークピースWと干渉しないようにするための動作である。このため、第3のシリンダ20のストロークL4は、各成形型の下型41a〜43aの上面に対して干渉しない程度に十分な距離が確保できるように設定されている。
図2に、制御ユニット50による、搬送装置1の制御を含めた加工装置4の制御の概要をフローチャートにより示してある。ステップS1において、プレス装置2の第1ないし第3の成形型41〜43でプレスが行われたことを判断する。プレスが終了すると、ステップS2において、図1に示すように、搬送装置1は、第3のシリンダ20を伸ばし、第1のシリンダ18および第2のシリンダ19を縮めた状態になっている。したがって、キャリッジ10a〜10cは、それぞれのキャリッジの第1の停止位置(下側の停止位置)で停止している。この状態で、新しいワークピースWを積載させた台車3をキャリッジ10aの下側に向けて前方に移動させる。それとともに、プレス装置2においては、それぞれの下型41a〜43aを、第2の位置からキャリッジ10a、10bおよび10cの移動範囲と重なる第1の位置に向けて移動させる。
次に、ステップS3において、図3に示すように、第3のシリンダ20をL4だけ下方に駆動させ、第1のキャリッジ10aに搭載された保持機構13により、台車3に積載された新しいワークピースWを吸着する。それとともに、第2および第3のキャリッジ10bおよび10cに搭載された保持機構13により、第1および第2の成形型41、42の下型41a、42aからワークピースWをそれぞれ吸着保持する。
ステップS4において、第3のシリンダ20をストロークL4だけ上昇させる。その後、ステップS5において、図4に示すように、台車3を退去させるとともに、第1ないし第3の成形型41〜43の下型41a〜43aを、第1の位置から、キャリッジ10a〜10cの移動範囲から外れて、これらのキャリッジ10a〜10cにより把持されたワークピースWと干渉しない第2の位置に向けてそれぞれ後方に移動させる。このプレス装置2において第2の位置は、それぞれの下型41a〜43aが、上型41b〜43bと対峙し、成形型41〜43として機能する位置に相当する。
この段階で、各キャリッジ10a〜10cは、第1のシャフト14のストッパ16a〜16cによって支持された下側の第1の停止位置においてワークピースWを吸着保持した状態となる。したがって、ステップS6において、第1および第2のシリンダ18および19を駆動させてピストン18aおよび19aを上方へ伸ばすと、ワークピースWの上方への搬送が開始される。
このとき、第2のシリンダ19は第1のシリンダ18に搭載されているので、第2のガイドの移動速度V2は、第1のガイドの移動速度V1よりも大きくなる。したがって、各キャリッジ10a〜10cが第1の停止位置に停止していたときには、第1のシャフト14のストッパ16a〜16cより下側に位置していた第2のシャフト15のストッパ17a〜17cが、ストッパ16a〜16cよりも速い速度で上方へ移動する。このため、第1のシャフト14および第2のシャフト15が上方へ移動中に、第2のストッパ17a、17bおよび17cは、第1のストッパ16a、16bおよび16cを追い越す。したがって、図5に示すように、キャリッジ10a、10bおよび10cは、上方へ移動中に、第1のストッパ16a、16bおよび16cと第2のストッパ17a、17bおよび17cとがそれぞれ同じレベル(高さ)になったタイミングで、キャリッジが動いている状態で、それぞれのキャリッジ10a、10bおよび10cが、第1のストッパ16a、16bおよび16cから、第2のストッパ17a、17bおよび17cに速度差(V2−V1)で乗り移る。したがって、移動速度V2でワークピースWを上方へ搬送するときに、スタート時の速度を低くでき、上方への加速度が急激に加わるスタートのときの衝撃を小さくできる。また、同様に上方への加速度が急激に加わる乗り移るときの速度差を小さくできるので、ワークピースWに対し搬送中に加わる衝撃を小さくできる。したがって、搬送装置1により、高い信頼性でワークピースWを搬送できる。
すなわち、この上昇工程S6においては、キャリッジ10a〜10cは、ワークWを把持して上方へスタートするときは第1のストッパ16a〜16cを介して第1のシャフト14により制御され、第2のシャフト15に対してはスライドする。途中から、キャリッジ10a〜10cは、第2のストッパ17a〜17cを介して第2のシャフト15により制御され、第1のシャフト14に対してはスライドする。そして、第2のシャフト15が停止したときにキャリッジ10a〜10cはストップする。したがって、キャリッジ10a〜10cの間隔は、下側の停止位置では、第1のシャフト14により決まり、上側の停止位置では第2のシャフト15により決まる。
図5では、移動距離がL1の第1のキャリッジ10aは、第1のストッパ16aから第2のストッパ17aに乗り移る前、移動距離がL2の第2のキャリッジ10bは、第1のストッパ16bから第2のストッパ17bに乗り移る直前、移動距離がL3の第3のキャリッジ10cは、第1のストッパ16cから第2のストッパ17cに乗り移った後の状態を示している。この例では、移動距離の長いキャリッジから順に、移動速度の遅い第1のストッパから移動速度の速い第2のストッパに移動する。
図6は、ステップS6において、第1および第2のシリンダ18および19がそれぞれのピストン18aおよび19aを所定のストロークだけ押し出して、上方への駆動が終了した状態を示している。各々のキャリッジ10a、10bおよび10cは、第2のシャフト15のストッパ17a、17bおよび17cにより支持された第2の停止位置で停止する。台車3への新しいワークピースWの補充は、キャリッジ10a、10bおよび10cの上昇中などに並列に行うことが好ましい。
ステップS7において、図7に示すように、成形型41〜43の下型41a〜43aを、プレスする第2の位置から搬送用の第1の位置に向けてそれぞれ前方に移動させる。そして、ステップS8において、第3のシリンダ20をストロークL4だけ下方へ駆動させ、キャリッジ10a、10bおよび10cがアーム11の先端の保持機構13により吸着保持していたワークピースWを下型41a、42aおよび43aにそれぞれリリース(アンロード)する。これにより、ワークピースWが下側の成形型から上側の成形型に順番に移動されたことになる。
ステップS9において、第3のシリンダ20をL4だけ上昇させてクリアランスを確保する。その後、ステップS10において、下型41a〜43aを、搬送用の第1の位置からプレス用の第2に向けてそれぞれ後方に移動させる。この段階で、プレス装置2は、各々の成形型41〜43によりプレスを開始できる。
さらに、ステップS11において、第1および第2のシリンダ18および19の下方へ駆動させ、キャリッジ10a、10bおよび10cを、上方の第2の停止位置から、元の下方の第1の停止位置に戻す。この下降工程S11における、各キャリッジ10a〜10cの動きは、上述した上昇工程S6と反対であり、第1のシャフト14および第2のシャフト15をそれぞれ下側に駆動することで、キャリッジ10a〜10cは、まず、第2のシャフト15の第2のストッパ17a〜17cによりそれぞれ支持された状態で第1のシャフト14をスライドする。随時、キャリッジ10a〜10cは、第1のシャフト14の第1のストッパ16a〜16cに乗り移り、第2のシャフト15に対してはスライドする。そしてキャリッジ10a〜10cは、第1のシャフト14により停止した状態に移行する。
本例の搬送装置1において上から下にワークピースWを搬送する場合は、このステップS11においてワークWを把持してキャリッジ10a〜10cが下方に動く。したがって、この場合も、ワークWが外れやすい上方への加速度が働く、下方で停止するときの速度を小さくでき、確実にワークWを把持して搬送できる。
以上のように、搬送装置1は第1のシャフト14と第2のシャフト15とを備えており、それぞれに第1のストッパ16a〜16cと、第2のストッパ17a〜17cとを所望の位置に設定でき、それぞれのストッパにより3つのキャリッジ10a、10bおよび10cの下側の停止位置および上側の停止位置を独立して決定できる。したがって、成形型の高さ方向の間隔が均等ではないプレス装置2に対しても、ワークピースWを下側と上側とでは異なる間隔で保持し、上下に搬送できる。
また、搬送装置1は、ワークピースWを上下に動かすときに、第1のシャフト14と第2のシャフト15とを第1および第2のシリンダ18および19を用いて共に動くように制御している。このため、ワークを搬送するキャリッジ10a、10bおよび10cは、上下の移動中に、第1のストッパ16a〜16cと、第2のストッパ17a〜17cとの間を小さな速度差でスムーズに乗り移る。さらに、ワークを把持したキャリッジのスタートおよびストップは、下側では第1のシャフト14を介し、上側では第2のシャフト15を介して、シリンダなどのアクチュエータを備えた駆動装置により制御することができる。このため、スタートおよびストップ時の速度を徐々に変化させて加速度を低くするような制御も容易である。したがって、ワークピースWを搬送する際にワークピースWに加わる衝撃を小さくすることができ、ワークピースWの脱落などの搬送中のトラブルを未然に防止することができる。
さらに、上記搬送装置1および加工装置4によれば、第3のシリンダ20を備えているため、成形型41、42および43に対してワークピースWを着脱するための微少上下の動作を、第3のシリンダ20によって行わせることができる。
なお、本実施形態では、3つのキャリッジ10a、10bおよび10cを備えた搬送装置を示しているが、キャリッジの数はこれに限定されるものでない。また、1つのワークピースを搬送するために複数のキャリッジを消費するような構成も可能である。さらに、キャリッジのガイドとしてシャフトを採用した例を示しているが、レールなどの他のキャリッジをスライド支持できるガイド構造を採用することも可能である。また、上記では、上下方向に成形型が並んだプレス装置に対して、本発明の搬送装置によりワークを搬送する加工装置を示しているが、搬送装置は他の種々の加工機能を備えた装置に対してもワークピースを搬送できる。