JP4824857B2 - フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の排気系部材などに好適に適用することのできるフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェライト系ステンレス鋼板は、耐応力腐食割れ性などに優れた材料であり、その特性を生かして各種厨房器具および自動車部品などの分野で幅広く使用されている。
【0003】
フェライト系ステンレス冷間圧延鋼板は、通常フェライト系ステンレス鋼のスラブを熱間圧延し、その後、熱延板焼鈍、酸洗、冷間圧延、さらに仕上焼鈍の各工程を経て製造される。このうち、熱延板焼鈍および酸洗は焼鈍酸洗設備において連続して行われる。すなわち、熱延板焼鈍は焼鈍酸洗設備のカテナリ形連続焼鈍炉において行われ、酸洗はカテナリ形連続焼鈍炉の出側に配置される酸洗槽において行われる。熱延板焼鈍工程では、熱間圧延鋼板は、たとえば900℃以上の温度に急速加熱され、短時間均熱後、急速冷却される。熱延板焼鈍は、熱間圧延の加工歪を除去するために行われる。このようにして製造されるフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板には、オーステナイト系ステンレス冷間圧延鋼板に比べるとプレス成形性が劣るという問題がある。この問題を解消するために多数の先行技術が開示されている。
【0004】
特開平8−253818には、フェライト系ステンレス鋼の化学成分から算出される指標値γpを予め定める範囲の値に設定し、熱間圧延工程の粗圧延の少なくとも1パスの圧延を予め定める圧延条件で行い、さらに熱延板焼鈍工程において、コイル状の熱間圧延鋼板に750〜950℃で1時間以上保持し、かつその降温過程において600〜750℃で1時間以上保持する熱延板焼鈍を行うフェライト系ステンレス鋼帯の製造方法が開示されている。これによって、日本工業規格Z2254に規定されるr値が優れ、しかもr値の面内異方性が小さく、強度−伸びバランスに優れるフェライト系ステンレス鋼帯を製造することができる。
【0005】
特開平8−199235には、Nbを0.1〜1.0%含むフェライト鋼素材を熱間圧延した後、コイル状の熱間圧延鋼板に650〜900℃の温度範囲で1〜30時間保持する時効処理を行い、その後、冷間圧延し、続いて800〜930℃の温度範囲で10分以下保持する仕上焼鈍を行うNb含有フェライト鋼板の製造方法が開示されている。これによって、加工性、高温耐力および耐食性については、従来の良好なレベルを維持したまま再結晶温度を低下させることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らの調査によれば、前記先行技術には厳しい加工が行われる場合、プレス加工性が不安定であり、プレス加工時に加工割れが発生しやすいという問題がある。たとえば、厳しい張出し加工および深絞り加工が行われる自動車の排気系部材に適用するとき、加工割れが発生しやすいという問題がある。本発明者らは、この加工割れの発生原因について種々検討を重ねた結果、次のような知見を得た。
【0007】
(1)前記先行技術では、熱延板焼鈍あるいは時効処理の加熱温度が比較的高温(実施例では800〜860℃)に設定されているので、熱間圧延鋼板中に析出する析出物の大きさが大きくなるとともに、析出物の分散状態が不均一になる。
【0008】
(2)この不均一な析出物の分散によって薄鋼板のプレス成形性に関連する特性値のコイル内変動が大きくなる。すなわち、前記r値の平均値およびr値の面内異方性Δrなどの特性値がコイルの幅方向および長さ方向位置によって大きく変動する。したがって、これらの特性値の低下したコイル内位置においてプレス加工時に加工割れが発生しやすくなる。
【0009】
本発明はこのような知見に基づいて成されたものであり、本発明の目的は、厳しい加工が行われる場合でもコイル全域にわたって加工割れを発生させることなく、安定して加工することができるプレス成形性の優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供することである。また本発明の他の目的は、プレス成形性の優れたフェライト系ステンレス鋼板を容易に、かつ確実に製造することのできる製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、重量%で、C:0.001〜0.03%、Si:0.05〜1.5%、Mn:0.10〜1.5%、Cr:11〜16%、Nb:0.2〜1.0%、Ti:0.1〜0.5%を含み、残部がFeおよび不可避不純物から成る鋼板のスラブを熱間圧延して巻き取ったコイル状の熱間圧延鋼板を400〜600℃の温度範囲で8〜50時間保持する時効処理によって該鋼板中に析出する平均粒径が1.0μm以下である析出物を有するフェライト系ステンレス鋼板であって、さらに
rm=(r0+2r45+r90)/4
Δr=(r0−2r45+r90)/2
ここで、r0:圧延方向における日本工業規格Z2254に規定されたr値
r45:圧延方向に対して45°の方向のr値
r90:圧延方向に対して90°の方向のr値で定義されるr値
の平均値rmおよびr値の面内異方性Δrが、rm≧1.0、Δr≦0.5であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板である。
【0011】
本発明に従えば、Cr、Si、Mn、Nb、Tiが充分に含まれているので、Crによる耐食性の向上に加えて、Si、Mnによる耐酸化性の向上、Nbによる高温強度の向上およびTiによる張出し性および深絞り性の向上を図ることができる。また析出物が平均粒径:1.0μm以下の微細析出物であるので、析出物の平均粒径が大きい場合に比べて析出物の分散状態を均一化させることが容易であり、プレス成形性に関連する特性値のコイル内変動を小さくすることができる。また、析出物の平均粒径が1.0μm以下であり、r値の平均値rmが1.0以上であり、r値の面内異方性Δrが0.5以下であるので、後述の図1および図2に示すようにプレス成形性が良好であり、厳しい加工が行われる場合でも、コイル全域にわたって加工割れを発生させることなく安定してプレス加工を行うことができる。
【0012】
また本発明は、重量%で、C:0.001〜0.03%、Si:0.05〜1.5%、Mn:0.10〜1.5%、Cr:11〜16%、Nb:0.2〜1.0%、Ti:0.1〜0.5%を含み、残部がFeおよび不可避不純物から成る鋼のスラブを熱間圧延してコイル状に巻取り、コイル状の熱間圧延鋼板に400〜600℃の温度範囲で8〜50時間保持する時効処理を行い、その後、脱スケール、冷間圧延を経て、900〜1100℃の温度範囲で、30秒〜1分間保持する仕上焼鈍を行うことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板の製造方法である。
【0013】
本発明に従えば、コイル状の熱間圧延鋼板の時効処理が従来よりも低温の温度範囲で長時間行われるので、熱間圧延鋼板中に微細な析出物を均一に分散させることができる。これによって、後続する冷間圧延後の仕上焼鈍時に、プレス成形性の良好な再結晶集合組織をコイル内に均一に形成することができる。したがって、コイル内全域にわたって良好なr値の平均値およびr値の面内異方性Δrを有するフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板、すなわちプレス成形性の優れたフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板を容易に、かつ確実に製造することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板は、自動車の排気系部材などに用いられる。自動車の排気系部材には、複雑な形状に加工するための優れた加工性、高温の排気ガスとの接触に耐えるための優れた耐酸化性および高い高温強度などの特性が要求される。
【0015】
本発明の実施の一形態であるフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板は、重量%で、C:0.03%以下、Si:1.5%以下、Mn:1.5%以下、Cr:11〜16%、Nb:1.0%以下、Ti:0.5%以下を含み、残部がFeおよび不可避不純物から成り、平均粒径:1.0μm以下の析出物を有し、さらにr値の平均値rmが1.0以上であり、r値の面内異方性Δrが0.5以下である。
【0016】
フェライト系ステンレス鋼の成分がこのように限定されるのは次の理由による。Cは、鋼を強化する元素である。C含有量が0.03%以下に限定されるのは、上限値を超えるC%では、張出し加工性および深絞り加工性が低下するからであり、さらにマルテンサイト相などの好ましくない組織が出現しやすくなるからである。望ましいCの上限値は、0.02%である。Cの下限値は、後述する真空脱ガス設備における仕上精練での脱炭精練時間の過度な増加を回避するために、0.001%に限定することが好ましい。
【0017】
Siは、耐酸化性を向上させる元素である。Si含有量が1.5%以下に限定されるのは、上限値を超えるSi%では、靭性が低下するからである。Siは、耐酸化性向上元素として、かつ脱酸剤として0.05%以上含まれることが好ましい。Mnは、Siと同様に耐酸化性を向上させる元素である。Mn含有量が1.5%以下に限定されるのは、上限値を超えるMn%では、加工性が低下するからである。Mnは耐酸化性向上元素として、かつ脱酸剤として0.10%以上含まれることが好ましい。
【0018】
Crは、ステンレス鋼の耐食性を担う元素である。Cr含有量が11〜16%に限定されるのは、下限値未満のCr%では、充分な耐食性を確保することができないからであり、上限値を超えるCr%では加工性が低下するからである。Nbは、高温強度を向上させる元素である。Nb含有量が1.0%以下に限定されるのは、上限値を超えるNbでは、靭性が低下するからである。Nbは、高温強度向上元素として0.2%以上含まれることが好ましい。Tiは、張出し性および深絞り性を向上させる元素である。Ti含有量が0.5%以下に限定されるのは、上限値を超えるTi%では、表面性状および製造性が低下するからである。Tiは張出し性および深絞り性向上元素として0.1%以上含まれることが好ましい。
【0019】
このようにフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板の鋼成分にはCr、Si、Mn、Nb、Tiが充分含まれているので、Crによる耐食性の向上に加えて、Si、Mnによる耐酸化性の向上、Nbによる高温強度の向上およびTiによる張出し性および深絞り性の向上を図ることができる。したがって、本発明のフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板を自動車の排気系部材として好適に用いることができる。
【0020】
本発明のフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板は、前述のように平均粒径:1.0μm以下の析出物を有し、さらにr値の平均値rmが1.0以上であり、r値の面内異方性Δrが0.5以下である。r値はランクフォード値と呼ばれる塑性歪比であり、薄鋼板のプレス成形性に関連する特性値として用いられる。r値は、日本工業規格Z2254に規定されているように、板状引張試験片を一様に変形させたときの幅方向真歪εwと板厚方向真歪εtとの比で表される。引張試験片の幅、厚さおよび標点距離をそれぞれW0、t0およびd0とし、引張試験片にε%の伸びを与えた後の引張試験片の幅、厚さおよび標点間の長さをW、t、dとすると、r値は(1)式によって求められる。伸びεは、通常15%または20%である。
Figure 0004824857
【0021】
このr値は、引張試験片の方向、すなわち引張試験片の長手方向と圧延方向との成す角度によって異なる値を示す。通常r値は圧延方向、圧延方向に対して45°の方向、圧延方向に対して90°の方向の3方向について求められる。圧延方向、圧延方向に対して45°の方向、圧延方向に対して90°の方向のr値をそれぞれr0、r45、r90とすると、r値の平均値rmおよびr値の面内異方性Δrは(2)および(3)式によって求められる。
rm =(r0+2r45+r90)/4 …(2)
Δr =(r0−2r45+r90)/2 …(3)
【0022】
析出物の平均粒径、r値の平均値rmおよびr値の面内異方性Δrが前述のようにそれぞれ1.0μm以下、1.0以上および0.5以下に限定されるのは、次の試験結果によるものである。
【0023】
図1は析出物の平均粒径とr値の平均値rmとプレス成形性との関係を示すグラフであり、図2は析出物の平均粒径とr値の面内異方性Δrとプレス成形性との関係を示すグラフである。図1および図2に示す試験データの測定に用いた供試材は板厚2.0mmのフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板である。また図1および図2中の○印、△印、×印はプレス成形性の評価結果を表す記号であり、○印はプレス成形加工時に加工割れの発生が全く認められないことを表し、△印はプレス成形加工時に微少な加工割れの発生が認められることを表し、×印はプレス成形加工時に明瞭な加工割れの発生が認められることを表す。プレス成形加工は、厳しい張出し加工および深絞り加工が行われる排気系部材を対象に実施した。
【0024】
図1および図2から次のことが判る。
(a)析出物の平均粒径が小さくなるにつれてr値の平均値rmが大きくなる。
(b)析出物の平均粒径が1.0μm以下で、かつr値の平均値rmが1.0以上の領域においてプレス成形性が良好である。
(c)析出物の平均粒径が小さくなるにつれてr値の面内異方性Δrが小さくなる。
(d)析出物の平均粒径が1.0μm以下で、かつr値の面内異方性Δrが0.5以下の領域においてプレス成形性が良好である。
【0025】
前記(a)および(c)の結果は、析出物の平均粒径が小さくなるにつれてプレス成形性の良好な再結晶集合組織が形成されやすくなることによるものと考えられる。また、析出物の平均粒径、r値の平均値、r値の面内異方性およびプレス成形性のコイル内変動を調査した結果、析出物の平均粒径が小さくなるにつれて析出物の分散状態が均一になり、r値の平均値、r値の面内異方性およびプレス成形性のコイル内変動が小さくなること、析出物の平均粒径が大きくなるにつれて析出物の分散状態が不均一になり、r値の平均値、r値の面内異方性およびプレス成形性のコイル内変動が大きくなることが判明した。
【0026】
このように、本実施の形態のフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板は、平均粒径:1.0μm以下の微細析出物を有するので、析出物の粒径が大きい場合に比べて析出物を均一に分散させることが容易であり、プレス成形性に関連する特性値のコイル内変動を小さくすることができる。またr値の平均値rmが1.0以上であり、かつr値の面内異方性Δrが0.5以下であるので、プレス成形性が良好であり、厳しい加工が行われる場合でも、コイル全域にわたって加工割れを発生させることなく安定してプレス加工を行うことができる。したがって、本実施の形態のフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板を、自動車の排気系部材として好適に用いることができる。
【0027】
次にフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板の製造方法について説明する。図3は本発明の実施の一形態であるフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板の製造工程を簡略化して示す図である。ステップs1の製鋼工程では、電気炉で溶解されたフェライト系ステンレス溶銑が転炉で粗精錬され、粗精錬された溶鋼が真空脱ガス設備で仕上精練され、前述のような成分を有するフェライト系ステンレス溶鋼が溶製される。
【0028】
ステップs2では、連続鋳造が行われ、スラブが鋳造される。ステップs3では、スラブの疵取りが研削といしによって行われる。ステップs4では、スラブの熱間圧延が行われる。この熱間圧延工程では、スラブが加熱炉で加熱された後、粗圧延機で粗圧延され、さらにタンデム式熱間圧延機で仕上圧延される。熱間圧延工程における製造条件は、たとえばスラブの加熱温度:1230℃、仕上圧延の仕上温度:830℃、仕上圧延後の冷却:水冷である。
【0029】
ステップs5では、熱間圧延鋼板の時効処理が行われる。熱間圧延鋼板は、コイル状に巻取られた状態で箱形焼鈍炉に装入されて時効処理される。時効処理は、熱間圧延鋼板中に析出物を析出させるために行われる。時効処理条件は、時効温度:400〜600℃、時効時間8〜50時間に設定される。
【0030】
時効処理条件の時効温度の下限値が400℃に限定されるのは、下限値未満の時効温度では、析出物を析出させるためのエネルギが不足し、析出物を析出させることができないからである。時効温度の上限値が600℃に限定されるのは、上限値を超える時効温度では析出物の平均粒径が1.0μmよりも大きくなり、前述のようにプレス成形性、r値の平均値rmおよびr値の面内異方性Δrが悪化するとともに、各特性値のコイル内変動が大きくなるからである。時効処理条件の時効時間が8〜50時間に限定されるのは、下限値未満の時効時間では、析出物を析出させるための時間が不足し、析出物を析出させることができないからであり、上限値を超える時効時間では析出物の平均粒径が1.0μmよりも大きくなるからである。
【0031】
ステップs6では、脱スケールが焼鈍酸洗設備で行われる。脱スケールは焼鈍酸洗設備のカテナリ形連続焼鈍炉を消火し、中性塩電解槽および硝弗酸溶液槽などの酸洗槽を用いて行われる。ステップs7では、冷間圧延がセンジミアミルによって行われる。冷間圧延の冷間圧下率は、40%以上に設定することが好ましい。
【0032】
ステップs8では、仕上焼鈍が焼鈍酸洗設備で行われる。仕上焼鈍は、加工硬化した冷間圧延鋼板を再結晶させるとともに、プレス成形性の良好な再結晶集合組織を形成するために行われる。仕上焼鈍条件は、均熱温度:900〜1100℃、均熱時間〜1分間に設定される。均熱温度の下限値が900℃に限定されるのは、下限値未満の均熱温度では、冷間圧延鋼板の再結晶が充分に生じないからである。均熱温度および均熱時間の上限値が1100℃および1分間に限定されるのは、上限値を超える均熱温度および均熱時間では、冷間圧延鋼板の結晶粒度が粗大化する恐れがあるからである。仕上焼鈍後、焼鈍酸洗設備で引続いて酸洗が行われ、さらに調質圧延機で形状修正が行われてフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板の製造が終了する。
【0033】
このように、熱間圧延鋼板の時効処理が従来よりも低温の時効温度で、かつ長時間の時効時間で行われるので、熱間圧延鋼板中に1.0μm以下の微細な析出物を均一な分散状態で析出させることができる。これによって、後続する冷間圧延後の仕上焼鈍時にプレス成形性の良好な再結晶集合組織をコイル内に均一に形成することができるので、r値の平均値rmが1.0以上であり、かつr値の面内異方性Δrが0.5以下であるプレス成形性の良好なフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板を容易に、かつ確実に製造することができる。また熱間圧延鋼板全域に1.0μm以下の微細な析出物が析出しているので、フェライト系ステンレス冷間圧延鋼板のr値の平均値rmおよびr値の面内異方性Δrのコイル内変動を小さくすることができる。
【0034】
(実施例)
本発明の製造条件を全て満たす実施例1〜7のフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板と、本発明の製造条件から少なくとも1つの条件が外れている比較例1〜7のフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板とを製造し、析出物の平均粒径を測定して比較した。実施例1〜7および比較例1〜7の化学成分は、全てC:0.012%、Si:1.0%、Mn:1.2%、Cr:15.5%、Nb:0.4%、Ti:0.3%、残部Feおよび不可避不純物であり、冷間圧延の圧下率は50%であり、冷間圧延後の板厚は2.0mmであり、仕上焼鈍の均熱温度は970℃であり、均熱時間は30秒であった。
【0035】
実施例1〜7および比較例1〜7の時効処理条件および析出物の平均粒径の測定結果を表1に示す。また、r値の平均値rmおよびr値の面内異方性Δrの測定結果を測定値の範囲として表1の脚注に示す。比較例1は時効処理に相当する熱処理として従来の熱延板焼鈍を焼鈍酸洗設備のカテナリ形連続焼鈍炉で行った。実施例1〜7および比較例2〜7の時効処理は箱形焼鈍炉で行った。また本発明者らの調査によれば、時効処理後の析出物の平均粒径と仕上焼鈍後の析出物の平均粒径とはほぼ同一であるので、析出物の平均粒径は仕上焼鈍後に測定した。
【0036】
【表1】
Figure 0004824857
【0037】
表1から次のことが判る。
(e)実施例1〜7の析出物の平均粒径は、全て1.0μm以下である。
(f)時効処理の時効温度が下限値未満である比較例2、6は、時効時間にかかわらず析出物の析出が認められない。
(g)時効処理の時効温度が上限値を超える比較例4、5、7における析出物の平均粒径は時効時間にかかわらず1.0μm超である。
(h)時効処理の時効温度が上限値で、時効時間が下限値未満である比較例3は析出物の析出が認められない。
(i)時効処理に相当する熱処理として従来の熱延板焼鈍が行われた比較例1の析出物の平均粒径は1.0μm超である。
【0038】
このように、比較例1〜7の析出物の平均粒径は1.0μm以上の大きな粒径であるか、析出しないかのいずれかであるので、表1、図1および図2に示すように1.0以上のr値の平均値rmおよび0.5以下のr値の面内異方性Δrを確保することはできない。またこれらの特性値のコイル内変動も大きい。したがって、フェライト系ステンレス冷間圧延鋼板全域にわたって良好なプレス成形性を得ることができない。
【0039】
これに対して、実施例1〜7の析出物の平均粒径は、全て1.0μm以下の微細粒径であるので図1および図2に示すように1.0以上のr値の平均値rmおよび0.5以下のr値の面内異方性Δrを確保することが可能である。またこれらの特性値のコイル内変動も小さい。これによって、本発明によれば厳しい加工が行われる場合でもコイル全域にわたって加工割れを発生させることなく安定してプレス成形加工を行うことが可能であり、成形性がコイル全域にわたって良好なフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板を製造できることが確認された。したがって、本発明のフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板は自動車の排気系部材として好適に適用可能である。
【0040】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載の本発明によれば、析出物が平均粒径:1.0μm以下の微細析出物であるので、析出物の平均粒径が大きい場合に比べて析出物の分散状態を容易に均一化させることが可能であり、プレス成形性に関連する特性値のコイル内変動を小さくすることができる。またr値の平均値rmが1.0以上であり、r値の面内異方性Δrが0.5以下であるので、プレス成形性が良好であり、厳しい加工が行われる場合でもコイル全域にわたって加工割れを発生させることなく安定してプレス加工を行うことができる。
【0041】
また請求項2記載の本発明によれば、コイル状の熱間圧延鋼板の時効処理が従来よりも低温の温度範囲で長時間行われるので、熱間圧延鋼板中に微細な析出物を均一に分散させることができる。これによって、後続する冷間圧延後の仕上焼鈍時にプレス成形性の良好な再結晶集合組織をコイル内に均一に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】析出物の平均粒径とr値の平均値rmとプレス成形性との関係を示すグラフである。
【図2】析出物の平均粒径とr値の面内異方性Δrとプレス成形性との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の実施の一形態であるフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板の製造工程を簡略化して示す図である。

Claims (2)

  1. 重量%で、C:0.001〜0.03%、Si:0.05〜1.5%、Mn:0.10〜1.5%、Cr:11〜16%、Nb:0.2〜1.0%、Ti:0.1〜0.5%を含み、残部がFeおよび不可避不純物から成る鋼板のスラブを熱間圧延して巻き取ったコイル状の熱間圧延鋼板を400〜600℃の温度範囲で8〜50時間保持する時効処理によって該鋼板中に析出する平均粒径が1.0μm以下である析出物を有するフェライト系ステンレス鋼板であって、さらに
    rm=(r0+2r45+r90)/4
    Δr=(r0−2r45+r90)/2
    ここで、r0:圧延方向における日本工業規格Z2254に規定されたr値
    r45:圧延方向に対して45°の方向のr値
    r90:圧延方向に対して90°の方向のr値で定義されるr値
    の平均値rmおよびr値の面内異方性Δrが、rm≧1.0、Δr≦0.5であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。
  2. 重量%で、C:0.001〜0.03%、Si:0.05〜1.5%、Mn:0.10〜1.5%、Cr:11〜16%、Nb:0.2〜1.0%、Ti:0.1〜0.5%を含み、残部がFeおよび不可避不純物から成る鋼のスラブを熱間圧延してコイル状に巻取り、コイル状の熱間圧延鋼板に400〜600℃の温度範囲で8〜50時間保持する時効処理を行い、その後、脱スケール、冷間圧延を経て、900〜1100℃の温度範囲で、30秒〜1分間保持する仕上焼鈍を行うことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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