JP4659326B2 - 複数の半導体インゴットをスライスするワイヤソー及びプロセス - Google Patents
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Description
本発明は、概略、モノクリスタル半導体インゴットを複数ウエファ内にカットすることに関し、特に、少なくとも2つの半導体を同時にスライスしスループットを向上させる装置及び方法に関する。
【0002】
半導体ウエファは、形状が円柱である、シリコンインゴットのような単結晶インゴットから、概略用意される。インゴットは、長手軸に垂直な方向でスライスされ、数百もの、薄いディスク形状ウエファを形成する。スライス操作は、ワイヤソーにより為され得るのであり、その際、インゴットはレシプロワイヤと接触し、研磨用粒子を含む液体スラリがインゴットとワイヤとの間に供給される。スラリ内の研磨用粒子はインゴットに対してワイヤにより摩り込まれると、シリコンクリスタルが除去されつつインゴットが徐々にスライスされる。ワイヤソーは、シリコンクリスタルをカットするのに理想的な、スライスのための穏やかな機械的方法を提供するものである。というのはシリコンクリスタルは砕けやすく、(例えば、従来の内径ソーのような)他のタイプのソー(のこぎり)では損傷を受け得るからである。スライス後、各々のウエファは、厚さを減少し、スライス操作で生じた損傷を除去し、集積回路デバイスの実装に適切な平坦且つ高反射の表面を形成する、という複数の処理操作を受ける。
【0003】
ワイヤソーは、概略、フレーム上に回転自在に装備される3つ又は4つのローラを有し、各々のローラは、ワイヤのセグメントを受けるためのガイド溝を有する。複数の平行長のワイヤは2つのローラ間で伸展し、インゴットを多数ウエファへスライスするためのワイヤウエブを形成する。ウエブ内の隣接するワイヤ間の隙間は、概略、処理前の1枚のウエファの厚さに対応する。1つのシリコンインゴットを装着でき、更にはカット面に対してインゴットの結晶構造の向きを正確に揃えるべく調整可能なインゴット支持体を、装置は含む。該支持体は、並進移動可能であり、よってインゴットをワイヤウエブに接触させる。先行技術のワイヤソーの例が米国特許第5904136号に開示され、ウエファをスライスするシステムが米国特許第4191159号に示される。
【0004】
スラリは、近傍のスラリコンテナから、ポンプと、チューブと、及びワイヤウエブ上にスラリを配布する少なくとも一つのノズルとによってワイヤに移動される。そしてスラリの一部は、ワイヤによって、シリコンクリスタルがカットされるワイヤとインゴットとの間の接触領域の中に移動する。通常、インゴットホルダの対向する側部に2つのノズルが配置され、よってスラリはインゴットの両側にてウエブ上に配布されて、レシプロワイヤのいずれの移動方向に対してもカット領域へのスラリの供給を促進することになる。各々のノズルは、狭い間隔でワイヤウエブの上方に配置され、概略薄い直線状の分布パターンでスラリを分配し拠ってスラリのカーテン若しくはシートを形成するように構成される。スラリカーテンは、スラリがワイヤのあらゆるリーチとインゴットのあらゆるスライスとに供給されるように、ワイヤウエブの全長に渡って伸展する。
【0005】
半導体インゴットをスライスする際の実質的な関心事は、ワイヤソーによりカットされるウエファの平坦さを維持することである。厚さにおける変動やウエファ表面のゆがみを回避する一つの鍵は、接触エリア即ちカット領域での摩擦熱の発達を制御することである。従って、液体スラリは、カット領域を通過する際に熱を除去し得るように、ワイヤウエブ上に分配されるのに先立って、能動的に冷却される。熱交換器が、通常、スラリを冷却するためにコンテナとノズルの間に配置される。
【0006】
半導体インゴットをスライスする処理に対する制約事項は、相当の時間を要することであり、実効的なウエファ生産に対して妨害事となり得る。スループットを向上させ且つコストを下げるためには可及的速やかにインゴットをスライスすることが望ましいが、より速いワイヤソー所英を実装するには困難がつきまとう。ワイヤのカットがカット領域での温度を上昇させウエファの平坦さを損ねるので、ワイヤのカットの速度は実質上増加させることができない。
【0007】
従って現下では、ウエファカットの質において妥協することなく、ワイヤソーのスループットを向上させる必要がある。
【0008】
発明の概要
本発明の複数の目的及び特徴のうちで、以下のものは注目され得る。半導体インゴットをウエファにスライスする際のスループットを向上させる装置及びプロセスを提示する。複数のインゴットを同時にスライスする装置及びプロセスを提示する。平坦で高品質なウエファスライスを製造する装置及びプロセスを提示する。異なる長さの複数のインゴットをスライスする装置及びプロセスを提示する。そして、経済的な装置及びプロセスを提示する。
【0009】
概略、本発明のワイヤソーは、複数の、概略円柱状のモノクリスタルインゴットを同時にウエファにスライスする。ワイヤソーは、カットヘッド及びインゴット支持体を含むフレームを包含する。カットヘッドは、インゴットを貫いて切断するように調整されたカットワイヤと、フレームに装備されワイヤの縦の移動のためワイヤを支持するワイヤガイドローラとを含む。ワイヤは隣接のローラ間のリーチにてローラにより支持される。個々のリーチはインゴットから複数ウエファを切り出すための複数の概略平行状のワイヤ丈を含み、少なくとも一本のリーチはカットウエブを限定する。インゴット支持体は、カットウエブに搭載し且つインゴットの長手軸がカットウエブ内のワイヤの長手方向に略垂直となる、少なくとも2本のインゴットを装着すべく、調整される。ワイヤによりインゴットからウエファを実質上同時にスライスするため、ワイヤが縦方向に駆動されるときにインゴット支持体に装着されたインゴットがカットウエブを貫通するという相対動作をなすべく、上記フレームは、上記カットヘッド及びインゴット支持体を装着する。
【0010】
ガイドローラ間のほぼ平行なリーチに構成された移動自在のカットワイヤを有するワイヤソーを利用して、少なくとも2本の略円柱状の半導体インゴットを、本発明のプロセスは同時にスライスする。そのリーチの少なくとも一つがカットウエブを画定し、ワイヤはインゴットを貫通して切り出すように調整されている。上記プロセスは、インゴットが、カットウエブに搭載し且つインゴットの長手軸がカットウエブ内のワイヤの長手方向に略垂直となって配置されるように、少なくとも2本のインゴットを共通のインゴット支持体に装着するステップを含む。インゴットがワイヤウエブに係合するカット領域にてカットウエブに対して上記の少なくとも2本のインゴットが同時に押圧するように、カットウエブに対してインゴット支持体が動かされる。液体スラリはワイヤウエブの少なくとも3箇所に分配され、それらの箇所には、インゴットカット領域の2つの最外端と個々の対のインゴットの間の位置とが含まれる。
【0011】
本発明の他の目的及び特徴は、一部が明白であり、一部が以下にて示される。
【0012】
対応する符号は、図面全体を通して対応する部位を示す。
【0013】
まず、図面、特に図1を参照すると、複数の半導体インゴットをウエファへ同時にスライスする本発明のワイヤソーが、概略符号10にて示されている。ワイヤソー10は、概略符号12で示されインゴット14を保持するためのインゴット支持体を有する。概略符号16で示されるカットヘッドは、往復動作でインゴットをカットするためのワイヤ18を装着する。インゴット支持体12は、略円柱形状である従来のモノクリスタルシリコンインゴット14を、インゴットの長手方向軸が同一線上にならず概ね平行になるような概略並行構成で、保持するように構成される。インゴット14は、研磨用液体スラリの存在する状態で動作中のカットワイヤ18に係合すると、スライスされる。インゴット支持体12とカットヘッド16とは、インゴット14がカットワイヤ18と係合状態に入るように若しくは係合状態から外れるように、夫々に対して動作可能であり、更にカットを促進するためのカットヘッドとインゴット支持体との間の、他の相互動作は、当業者には公知である。
【0014】
カットヘッド16は、カットワイヤ18がループ状になり回周動作を行なうための回転自在ワイヤガイドローラ22を含む。概略長方形構成内で4つのガイドローラ22があってもよい。もっとも、ソーはより少ないローラを備えてもよく又より多いローラを備えてもよく、かような別の構成であっても本発明の範囲から乖離することはない。インゴット支持体12は、ローラ22の長方形構成の略上方にて配置され、よってインゴット14は、2つの上部ローラ間で伸展する最上部のカットワイヤ18のセクションにのみ係合可能となる。しかしながら、インゴット支持体12は、インゴット14がワイヤ18のどこかのセクションと係合し得るならばローラ22近くのどこかに配置されればよい。インゴット支持体12とカットヘッド16は、共通の支持フレーム24上に装着されるのが好ましい。この際、カットヘッドはフレームに対して固定されることになりインゴット支持体はフレームに対して移動自在ということになる。スライスが為される際には、インゴット14はカットワイヤ18を経由して徐々に移動しワイヤはインゴットに入り込む。インゴット支持体12は、概略カットヘッド16に向かって移動を継続し、インゴット14を個々のスライス内部の接触エリアにてワイヤ18と係合させることを継続する。
【0015】
カットワイヤ18は、インゴット14から多数のウエファを切り出すため、ローラ22間で複数の略並行のリーチにて、ローラにより支持される。各々のリーチは、複数の略平行のワイヤ18丈を含み、各々の丈は個々のインゴットにてスライスを切り出す。ガイドローラ22上のワイヤ18の平行状リーチは、ひとまとめにされて、符号30で概略示されるカットウエブを形成する。ワイヤウエブ30は、対応する数のスライスを切り出すための数百もの平行状のワイヤ18丈を有する。もっとも、ウエブが形成される丈の数がどのようであっても、本発明の範囲から乖離するものではない。少なくともローラ22の一つは、ワイヤソー10の操作のため長手方向にワイヤ18を駆動する動力を供給するモータ若しくは適切な駆動機構(図示せず。)に、接続する。各々のローラ22は、その周囲にて、カットワイヤ18丈を受けるべく適合された複数の環状溝(図示せず。)を有する。ワイヤは、ローラ22で駆動されると、長手方向動作の往復運動を行なう。当業者には公知であるが、ワイヤ18は、第1の所与の期間即ち変位期間では前方向に動作し、第2の所与の期間即ち変位期間では逆方向に動作する。ワイヤ18は、従来技術のやり方で、巻上げリールや解放リール(図示せず。)に伸展し、ガイドローラ22周りで現下ループしていない余分なワイヤ丈を集める。
【0016】
ワイヤソー10は、研磨用液体スラリを、ワイヤ18に沿ってワイヤとインゴット14との間の接触領域に分配するためワイヤウエブ30の一部に供給するスラリシステムを有する。好適な実施形態では、スラリをワイヤ上に分配するために3つのノズル34、36、38が配置される。各々のノズルは、当業者に公知であるように、カーテン若しくはシート40を形成する薄い平面分配パターンでスラリを下方に分配するスリットとして、従来技術により構成される。スラリのカーテン40はワイヤ18に直交する方向であり、ワイヤウエブ30の幅と概ね同じ長さを有する。各々のノズル34、36、38は、適切なスラリコンテナ、ポンプ、及び一定長のチューブ(図示せず。)からスラリを受ける。これら要素の各々は、本質的に従来のものであり、コンテナをコンテナからノズルへ輸送するため操作可能なものである。システムは、個々のノズルの直近に少量のスラリを保持するためのマニホルドを有する。操作の間、スラリの全体流は、ノズル34、36、38の間にてどの様々な割合ででも能動的に分配され得、若しくは、同様の部位にて等しい位置に受動的に分配され得る。
【0017】
熱を制御するため、液体スラリは、ワイヤウエブ30上に分配されるに先立ち、能動的に冷却される。当業者に公知であるように、熱交換器(図示せず。)が、スラリコンテナと各々のノズルとの間に、若しくはコンテナにて配置される。実際上は、1つのインゴットに関して同じカット速度で2つ若しくはそれ以上のインゴット14をスライスする場合は、スラリを25℃まで冷却するのが有用であることが見出されており、一方単一のインゴットをスライスするためには30℃のスラリが通常供給される。本発明ではコンテナ内に第2の熱交換器を含ませることで、このことを実現する。しかしながら、単一のより大きい熱交換器、他の冷却機構及び温度は、本発明の範囲から乖離するものではない。
【0018】
スラリがワイヤの何れの移動方向に対してもワイヤと個々のインゴット14との間の接触領域にワイヤにより担持されるように、ノズル34、36、38は配置される。図1に示すように、第1と第2のノズル34は、スラリがインゴット支持体の両端部にてワイヤウエブに分配されるように、インゴット支持体12の対向する端部で略ワイヤウエブ30上方に配置される。第1と第2のノズル34、36は、カットヘッド16に対して固定された位置で支持体フレームに装着されるのが好ましく、インゴット支持体12がカットヘッドに対して動くときには、それらノズルはインゴット支持体12に関して動かない。第1と第2のノズル34、36は、スラリがウエブ30幅の各々の末端での丈を特に含む、ワイヤ18のあらゆる丈上に降り注ぐように、ワイヤウエブ30上方に適切な狭い間隔(例えば2cm)で配置される。スラリは、従来技術により、回収され再利用されるのが好ましい。
【0019】
本発明は更に、略ワイヤウエブ30上方に配置されインゴット支持体12に装着する第3のノズル38(図1)を含む。単体のインゴットをスライスするため先行技術のワイヤソーは第1と第2のノズル34、36を含んでいるが、本発明においては第3のノズル38が含まれ、2つのインゴット14に対し十分な量及び分布のスラリを供給する。各々のインゴットは、インゴットの両側方端部にて、スラリを受ける。第3のノズル38はインゴット支持体12に取り付けられるので、第3のノズルは、インゴット支持体がカットヘッドに対して移動するときに、インゴット支持体と共に移動する。他の配置や装着のノズルも、本発明の範囲から乖離するものではない。
【0020】
2本のバー46が、第3のノズル38の対向する端部から鉛直下方に伸展し、スラリがかたまりになるのを抑制して良好なスラリの分配を促進する。バー46の一つのみが、図1にて示される。ワイヤウエブ30上方の狭い間隔配置で固定される第1と第2のノズル34、36とは異なり、第3のノズル38は、インゴット支持体12と共に移動するためワイヤから相当の距離(例えば、30cm)となる。このように、第3のノズルから分配されるスラリの薄いカーテンは、ワイヤに到達するまでに更なる距離を降り下りることになる。実際上は、スラリの無拘束のカーテンは、降り下りる際、形状においてより窮屈なプロファイルに向かって自然とかたまりを合着しがちになる。ノズル38から分配されるスラリは、固有の直線パターンがすっかり減退する距離を降り下り得ることになり、そうするとスラリは、ウエブ30の各々の末端近傍のワイヤ丈に振り下りないことになる。
【0021】
表面張力効果、若しくは他の流体力学により、スラリのカーテン40の端部が付着する面を設定することで、バー46はこの問題点を正す。実際には、バー46を設置することで、スラリが合着しがちになる傾向を抑制し、スラリがワイヤウエブ30に達するまでスラリの固有の幅を実質上維持する結果となる。従って、スラリは、ウエブ幅の各々の末端での丈を特に含む、ワイヤ18のあらゆる丈に分配され、よってスラリはインゴットのあらゆるスライスに分配されることになる。バー46は、構造上概ね薄いものであり、第3のノズル38の夫々の端から伸展するように配置される。インゴット支持体12がワイヤウエブ30に向かって移動されているとき、バー46がワイヤウエブ30の動きを妨げることはない。バー46は、様々な断面形状、径、及び長さであってよい。長さは、第3のノズル38とワイヤウエブ30との間の操作時の最大限の距離にほぼ等しいのが好ましい。
【0022】
ワイヤソー10は、図1と図2の各々に示すように、並行状且つ水平状の構成で2つ又は3つのインゴット14を保持してもよく、従来のワイヤソーのように単体のインゴットを保持してもよい。インゴット支持体12は異なる大きさのインゴットと共に利用され得るが、実際上は、2本の150mm直径のインゴット(図1)、3本の100mm直径のインゴット(図2)、若しくは1本の300mm直径のインゴットを保持するのに有用である。スラリを分配するノズルは、並列するインゴット14の数より少なくとも一つ多い個数となる。例えば、2本のインゴット14では、3つのノズル34、36、38がある。3本のインゴット14では、4つのノズルがある。スラリがあらゆるインゴット14の概ね側方端部にて明確な配置にて分配するように、インゴット及びノズルは、相互に位置を互い違いにするように、構成される。
【0023】
インゴットの対が概ね垂直に積み重ねられると、図3と図4の各々に示すように、4本若しくは6本のインゴットまで保持され得る。新しいインゴットをロードする若しくは構成を変更するために操作を停止することが必要になるまでにスライスされるインゴットの数が、積み重ねることにより増加するので、積み重ねることにより、ワイヤソーのダウンタイムが減少する。よって、効率性を向上できることになる。下方のインゴットがスライスされると、操作は情報のインゴットをスライスするために継続し得る。しかしながら、どんな数のインゴットも水平状でない鉛直状でない相対的インゴット配置も含めて、他の構成であっても、本発明の範囲から乖離するものではないことが理解できる。
【0024】
さて図5を参照すると、インゴット4をインゴット支持体12に取り付ける好ましい構成が、概略符号50で示される。各々のインゴットは、インゴット14の凸状の円柱状の外側面に対応する凹状面54を有する装着ビーム52へ、従来のエポキシにより取り付けるられる。当業者に公知であるが、シリコンクリスタル格子の結晶平面は、X線若しくは他の適切な技術を用いて例えば1/4度の範囲内の狭い角度公差にまで、装着ビーム52に対して注意深く方向付けられる。装着ビーム52は、次はあり継ぎ支持体58に接続可能なプレート56に接続するように調整される。
【0025】
インゴット支持体12は、下方端に沿ってスロット60の形態でレセプタクルを有する。傾斜面を備える内部肩部62は、スロットの内部に位置する。あり継ぎ支持体58はスロット60内で受け留め可能であり、支持体58上の第1の傾斜面66は、傾斜面を肩部62上に滑動自在に係合させる。概ね符号68にて示されるクランプは、スロット内の固定位置にて支持体58を固定するのに利用される。クランプは、支持体58の第2の傾斜面72と係合可能な傾斜面を有する係合ブロック70を含む。シャフト74はブロック70を機械式若しくは水圧式アクチュエータ(図示せず。)に接続する。ブロック70及びシャフト74は、ブロックがあり継ぎ支持体58に圧力を与えず支持体がスロット60内で長手方向に移動可能である非ロック位置と、ブロックがあり継ぎ支持体に圧力を与え支持体がスロット内で固定位置にあるロック位置との間で、移動可能である。インゴットをインゴット支持体に取り付ける他の構成も、本発明の範囲から乖離するものではない。
【0026】
図3及び図4の積み重ねられた構成に対しては、インゴットの対はエポキシにより、インゴット14間に差し込まれる中間装着ビーム76に接合される。これら装着ビーム76の各々は、個々のインゴット14の円柱状外側面の凸形状に対応して、凹形状の上方面と下方面とを有する。インゴットの積み重ねられた対は、夫々の結晶平面が正しく並ぶように、注意深く方向付けられる。
【0027】
本発明の第2の実施形態が、図6及び図7にて、概略符号80を付されて示されている。第2の実施形態80は、1本、2本若しくは3本の並列状のインゴット14をスライスするための夫々の構成の間で、ワイヤソーを即座に転換するアダプタ82、84を含む。インゴット支持体12は、下方側面に沿うスロット88の形態のレセプタクルを伴う、共通のロードプラットフォーム若しくはヘッド86を有する。スロット88は、インゴットを取り付けるための様々の形状若しくは構造を備え得るが、スロットは、第1の実施形態のインゴット支持体12上のスロットレセプタクル60に関して上で議論したように、即ち図5に示されるように、構成されるのが好ましい。2重アダプタ82(図6)は、2本のインゴット14を保持するように構成される。但し、1本のみのインゴットも保持し得るし、積み重ねた構成であれば3本もしくは4本のインゴットを保持し得る。2重アダプタ82は、上方面上に、ヘッド86のスロット88内に係合し得る装着リッジ90を有する。リッジ90は図5のあり継ぎ支持体58のような形状であるのが好ましい。3重アダプタ84(図7)は、3本のインゴット14を保持するように構成される。但し、1本若しくは2本のインゴットも保持し得るし、積み重ねた構成であれば4本から6本のインゴットをも保持し得る。3重アダプタ84は、2重アダプタ82上のものと同じ大きさの装着リッジ90も有する。a)単体のインゴットを切るため単体のインゴットを装着する支持体58、b)2本のインゴットを切るための2重アダプタ82のリッジ90、若しくはc)3本のインゴットを切るための3重アダプタ84のリッジ90のうちの、何れをも受け留め且つ固定するように、スロット88が構成されるという点において、本発明は順応性を備える。異なる構成を備える、又は4本若しくはそれ以上の並列状のインゴットを保持する、アダプタを含む他のアダプタも想定可能であり、それらは本発明の範囲から乖離するものではない。
【0028】
本発明に係る第3の実施形態が、図8および図9にて、概ね符号100により示されている。第3の実施形態100は、ワイヤウエブ30が1本又は複数のインゴット14に係合した際のワイヤウエブ30の撓みを限定すべく配置された(概ね符号102が付された)中心支持体を有する。中心支持体102は、ワイヤの鉛直方向の撓みを除去する少なくとも一つの障害物を含み、それはカットヘッド16のローラ22に対して固定されているのが好ましい。中央支持体102は、ワイヤウエブ30で画定される矩形形状の内部の概ね範囲にて、インゴット14から見てワイヤウエブの反対側にてワイヤウエブに隣接して、配置される。中央支持体102は、プラットフォーム106に取り付けられる概略鉛直部材104を含む。プラットフォーム106は、共通の支持体フレーム24に装着されるのが好ましい。
【0029】
中央支持体102は、例えば複数のローラのような、ワイヤ18を係合させて移動させる適切な上方端部103を有し、該上方端部103は、ワイヤウエブ30の全幅に渡って伸展している。2重アダプタ82に対しては、単体の鉛直部材104が設定され(図8)、3重アダプタ84に対しては、2つの鉛直部材104が設定される(図9)。各々の中央支持体102は、2本のインゴット14間の等しい間隔の辺りにくるように、配置される。インゴット支持体12が下方に移動し1本又は複数のインゴットがワイヤウエブ30と係合すると、ウエブは中央支持体に係合するまで撓まされる。ワイヤ18が中央支持体102に係合する位置では、ワイヤ18はもはや撓まない。中央支持体として、特に他の形状の障害物や鉛直部材を伴わない障害物などの、異なる構成が想定し得るが、それらは本発明の範囲から乖離するものではない。
【0030】
第1の実施形態のような中央支持体が存在しない場合の問題点は、同時にスライスされる2本(若しくは3本)のインゴットが異なる長さを備える場合にウエファの生産が不利益に減少するということである。もし、2本のインゴットが並列状の構成で存在しこれらインゴットの長さが実質上等しくないならば、ワイヤ18の少なくとも幾本かの丈分は1本のインゴットに係合し、ワイヤの他の丈分は2本のインゴットに係合する。図10に概略示されるように、110の付されたワイヤの丈は1本のインゴットに係合しており、120の付されたワイヤの丈は2本のインゴットに係合している。近接するワイヤの丈間の隙間は、図10では明瞭さのため誇張されている。丈110、112は、異なる撓みパターンを有し、異なるワイヤ張力を有する。ワイヤ張力が変動する変遷領域にあるワイヤのリーチによってより長いインゴットからスライスされるウエファは、スライスすらも耐え得ず、歪み、即ち不充分なウエファの品質となってしまう。結果として、オペレータは、実質上等しい長さのインゴット同士、若しくは、図11に示すように実質上等しい長さの複数インゴットの対のみを、スライスすることを余儀なくされる。
【0031】
図10の組み合わせは産出量を減じてしまうが、図11乃至図14に示されるインゴット丈の組み合わせは産出量を減じることはない。図10の組み合わせは、短いインゴットが尽きてしまい他のインゴットも配置されていない位置を過ぎても連続して伸展するより長いインゴットを有する。対照的に、図11乃至図14の組み合わせでは、短いインゴットの端部近傍の変遷領域を貫いて伸展するより長いインゴットは、どこにもない。従って、異なるワイヤ張力の影響を受けるより長いインゴットからウエファがスライスされるということは無い。図14では、異なる長さの2本のインゴット14の組み合わせは、破片ロッド114を付加した上でスライスされなければならない。破片ロッド114はスライスされるインゴット14と同じ外径でなければならず、少なくとも長いインゴットの全長まで伸展するものでなければならない。破片ロッド114はシリコンである必要は無く、異なる材料であってもよい。破片ロッドは、長いインゴットの全長に渡って、一様なワイヤの撓みをもたらす。
【0032】
中央支持体102は、ワイヤ張力へのインゴット長さの影響を排除することにより、この問題を回避する。中央支持体102は、ワイヤウエブ30の全幅に渡って伸展するので、全リーチが中央支持体に係合する。そうすると、部分的には一様な撓み及び張力となるため、スライスが維持され、歪みは低く産出量は高く維持される。中央支持体によりオペレータは、図10のような種々の長さのインゴットを同時にスライスすることができる。
【0033】
操作においては、本発明のワイヤソーは、少なくとも2本の概略円柱状の半導体インゴットを同時にスライスする。第1に、各々のインゴットは、適切なエポキシにより装着ビーム52に取り付けられる。インゴットの結晶平面を緻密な公差の範囲内で装着ビームに対して注意深く整列させるX線を利用する独立の装置により、このことは従来のやり方で為される。装着ビームは夫々、あり継ぎ支持体58に取り付けられ、あり継ぎをスロット60の中に挿入しクランプを固定することによりインゴット支持体12に固定される。インゴット14は、カットウエブ30に搭載し、且つインゴットの長手軸がワイヤの長手方向に略垂直となるように、自動的に配置される。第2の実施形態80のアダプタ82、84が利用される場合、2つ若しくは3つの装着ビームがアダプタに固定される。そして、アダプタはリッジ90をスロット88の中に固定することによってヘッド86に取り付けられる。インゴット支持体12は、インゴットがワイヤに係合するカット領域にてインゴットがカットウエブを同時に圧するように、カットウエブに対して移動する。各々のインゴットの2つの側方端を含む位置のワイヤウエブに、液体スラリがノズル34、36、38から分配される。積み重ねられた構成が利用される場合は、インゴット支持体に取り付けるほぼ前に、追加のインゴットと装着ビームが整列させられて第1の装着ビームに取り付けられる。
【0034】
単体の300mm直径のインゴット、1本から4本の150mm直径のインゴット、若しくは1本から6本の100mm直径のインゴットを、スライスするように、装置を即座に構成することができる。並列状の構成の2本のインゴットをスライスすることに対しては、生産性は従来のワイヤソーの2倍であり、然もウエファの平坦さ及び品質は同レベルで維持されている。
【0035】
以上のことから明白なように、本発明の複数の目的が達成され、更に他の有益な結果も得られている。
【0036】
本発明の構成要素、若しくは本発明の好適な実施形態を提示する際には、 “包含する”、“含む”、及び“有する”という用語は、含有することを意図し、列挙の要素以外に付加的な要素が存在し得ることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 2つの半導体インゴットが実装された本発明のワイヤソーの概略斜視図である。
【図2】 3つのインゴットが実装されたワイヤソーの概略斜視図である。
【図3】 積み重ね構成により4つのインゴットが実装されたワイヤソーの概略斜視図である。
【図4】 積み重ね構成により6つのインゴットが実装されたワイヤソーの概略斜視図である。
【図5】 インゴットをインゴット支持体に取り付けるための構造の、拡大概略断面図である。
【図6】 2つのインゴットを保持するための2重のアダプタを有する、本発明の第2の実施の形態の概略の正面図である。
【図7】 3つのインゴットを保持するための3重のアダプタを有する、本発明の第2の実施の形態の概略の正面図である。
【図8】 単体の鉛直部材を伴う中央支持体を有する、本発明の第3の実施の形態の概略の斜視図である。
【図9】 2つの鉛直部材を伴う中央支持体を有する、第3の実施の形態の概略の斜視図である。
【図10】 異なる長さの2つのインゴットに対するカットワイヤウエブの概略の平面図である。
【図11】 中央支持体を必要としないインゴットの対の組み合わせの第1の例の概略平面図である。
【図12】 中央支持体を必要としないインゴットの対の組み合わせの第2の例の概略平面図である。
【図13】 中央支持体を必要としないインゴットの対の組み合わせの第3の例の概略平面図である。
【図14】 中央支持体を必要としないインゴットの対の組み合わせの第4の例の概略平面図である。
【符号の説明】
10・・・ワイヤソー、12・・・インゴット支持体、14・・・インゴット、16・・・カットヘッド、18・・・ワイヤ、22・・・ガイドローラ、30・・・ワイヤウエブ、34、36、38・・・ノズル、46・・・バー。
Claims (12)
- 円柱状のモノクリスタルインゴットをウエファにスライスするワイヤソーであって、
上記ワイヤソーは、カットヘッド及びインゴット支持体を含むフレームを包含し、
上記カットヘッドは、インゴットを貫いて切断するように調整されたカットワイヤと、上記フレームに装備されワイヤの縦の移動のためワイヤを支持するワイヤガイドローラとを含み、上記ワイヤは隣接のローラ間のリーチにてローラにより支持され、個々のリーチはインゴットから複数ウエファを切り出すための複数の平行状のワイヤ丈を含み、少なくとも一本のリーチはカットウエブを限定し、
上記インゴット支持体は、カットウエブに接触し且つ少なくとも1本のインゴットの長手軸がカットウエブ内のワイヤの長手方向に垂直となる、上記の少なくとも1本のインゴットを装着すべく、調整され、
上記インゴット支持体は、
個々が夫々のインゴットを接続するように調整された装着ビームと、
複数インゴットをインゴット支持体に装着するための複数の装着ビームを保持するアダプタと、
一つのレセプタクルを有しており、単体のスライス対象のインゴットを装着するための装着ビームの一つを受けるように、若しくは上記アダプタを受けるように構成されており、これにより、上記アダプタとは無関係に一つのインゴットをスライスする構成と、上記アダプタにより複数のインゴットをスライスする構成との間で、上記一つのレセプタクルが、ワイヤソーを、切り替えることができるロードプラットフォームと
を含み、
上記フレームは、ワイヤによりインゴットからウエファを同時にスライスするため、ワイヤが縦方向に駆動されるときにインゴット支持体に装着されたインゴットがカットウエブを貫通するという相対動作をなすべく、上記カットヘッド及びインゴット支持体を装着する
ワイヤソー。 - アダプタが並列状の構成で2つの装着ビームを保持するように構成された2重アダプタであり、第1のインゴットはアダプタに装着される第1の装着ビームに取り付けられ、第2のインゴットはアダプタに装着される第2の装着ビームに取り付けられ、第3のインゴットは上記第1のインゴットに装着される第3の装着ビームに結合し、第4のインゴットは上記第2のインゴットに装着される第4の装着ビームに取り付けられる、
4本のインゴットと組み合わさる、請求項1に記載のワイヤソー。 - アダプタが並列状の構成で3つの装着ビームを保持するように構成された3重アダプタであり、第1のインゴットはアダプタに装着される第1の装着ビームに取り付けられ、第2のインゴットはアダプタに装着される第2の装着ビームに取り付けられ、第3のインゴットはアダプタに装着される第3の装着ビームに取り付けられ、第4のインゴットは上記第1のインゴットに装着される第4の装着ビーム取り付けられ、第5のインゴットは上記第2のインゴットに装着される第5の装着ビームに結合し、第6のインゴットは上記第3のインゴットに装着される第6の装着ビーム取り付けられる、
6本のインゴットと組み合わさる、請求項1に記載のワイヤソー。 - 更に、ノズルを含むスラリ分配システムを包含し、各々のノズルは、ワイヤウエブ沿いの別個の位置にて、各々の装着ビームの側面にて、スラリを分配するように配置される、
請求項1に記載のワイヤソー。 - 上記ノズルの少なくとも一つからから伸展する2つのバーを包含し、各々のバーは上記の少なくとも一つのノズルの端の位置から伸展し、上記バーは分配されたスラリのカーテンの端部を限定する、
請求項4に記載のワイヤソー。 - 上記カットウエブと係合し、よって、インゴットに係合したときに上記カットウエブの撓みを制限するように構成された中央支持体を、更に含む、
請求項1に記載のワイヤソー。 - ガイドローラ間の平行なリーチに構成された移動自在のカットワイヤを有し、そのリーチの少なくとも一つがカットウエブを画定し、ワイヤはインゴットを貫通して切り出すように調整された、ワイヤソーを利用して、
少なくとも2本の円柱状の半導体インゴットを同時にスライスするプロセスであって、
インゴットが、カットウエブに接触し、複数のインゴットの長手軸が平行状であるが非同軸上にあり且つカットウエブ内のワイヤの長手方向に垂直となって配置されるように、上記の少なくとも2本のインゴットを共通のインゴット支持体に装着するステップであって、上記インゴット支持体が少なくとも2つの装着ビームを含み、個々の装着ビームは夫々のインゴットを接続するように調整され、ロードプラットフォーム及びアダプタはその装着ビームを保持するように調整され、一つのレセプタクルを有する上記プラットフォームは、上記アダプタを受けるように構成され、且つ単体のスライス対象のインゴットを装着するための、上記アダプタとは無関係の装着ビームの一つを受けるように構成されるステップと、
上記のインゴットが上記のワイヤウエブに係合するカット領域にてカットウエブに対して上記の少なくとも2本のインゴットが同時に押圧するように、カットウエブに対してインゴット支持体を動かすステップと、
液体スラリを上記ワイヤウエブの少なくとも3箇所に分配するステップであって、上記の箇所は上記インゴットのカット領域の2つの最外端と個々の対のインゴットの間の位置とを含む、ステップと、
インゴット支持体の上記レセプタクルから上記アダプタを取り外し、少なくとも一つの更なるインゴットをスライスするため、上記レセプタクル内に第2のアダプタ、若しくは、上記アダプタとは無関係の一つの装着ビームを導入するステップと
を含むプロセス。 - 分配に先立ち、25℃若しくはそれ以下の一様な温度にまで上記スラリを冷却するステップを、更に含む、請求項7に記載のプロセス。
- 第1のインゴットが第2の積み重ねられるインゴットよりもカットウエブにより近く配置され、よって少なくとも2本のインゴットが平行状であるような、積み重ねられた構成で少なくとも2本のインゴットを搭載するステップを、更に含む、請求項7に記載のプロセス。
- 上記の少なくとも2本のインゴットが異なる長さであり、
更に、
破片ロッドをインゴット支持体に装着するステップであって、破片ロッドは短いほうのインゴットと整列されており、短いインゴットと破片ロッドとの組み合わせた長さが少なくとも長いほうのインゴットと同じ長さであるような長さを有する、ステップを含む、請求項7に記載のプロセス。 - カットウエブの撓みを限定するため、カットウエブに対して上記のインゴットを押圧するようにインゴット支持体を動かす上記ステップにより発生する、カットウエブの動きを妨げるステップを、更に含む
請求項7に記載のプロセス。 - 上記インゴット支持体が少なくとも2本のインゴットを搭載し、それらインゴットの長手軸が平行であり且つ非同軸上にあることを特徴とする請求項1に記載のワイヤソー。
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