JP4631847B2 - 車両用サスペンションシステム - Google Patents
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Description
その流体スプリングと並列的に設けられ、動力源としての電磁モータを有してばね上部とばね下部とにそれらを接近・離間させる方向の力であるアクチュエータ力を作用させる電磁式のアクチュエータと、
前記流体スプリングに対する流体の流入・流出と前記アクチュエータが発生させるアクチュエータ力との少なくとも一方を制御することで、上下方向におけるばね上部とばね下部との距離であるばね上ばね下間距離を変更可能な制御装置と
を備えた車両用サスペンションシステムであって、
前記制御装置が、ばね上ばね下間距離を目標距離に変更する際に、前記流体スプリングに対して、実際のばね上ばね下間距離が前記目標距離となるまで流体を流入あるいは流出させるとともに、前記アクチュエータに対して、実際のばね上ばね下間距離の前記目標距離に対する偏差に基づくフィードバック制御によって、少なくともその偏差に基づく比例項成分を含み、かつ、積分項成分を含まない前記アクチュエータ力を発生させる協働変更制御を実行する車両用サスペンションシステム。
図1に、請求可能発明の実施例である車両用サスペンションシステム10を模式的に示す。本サスペンションシステム10は、前後左右の車輪12の各々に対応する独立懸架式の4つのサスペンション装置を備えており、それらサスペンション装置の各々は、サスペンションスプリングとショックアブソーバとが一体化されたスプリング・アブソーバAssy20を有している。車輪12,スプリング・アブソーバAssy20は総称であり、4つの車輪のいずれに対応するものであるかを明確にする必要のある場合には、図に示すように、車輪位置を示す添え字として、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪の各々に対応するものにFL,FR,RL,RRを付す場合がある。
本サスペンションシステム10では、4つのスプリング・アブソーバAssy20の各々を独立して制御することが可能となっている。それらスプリング・アブソーバAssy20の各々において、アクチュエータ26のアクチュエータ力が独立して制御されて、車体および車輪12の振動、つまり、ばね上振動およびばね下振動を減衰するための制御(以下、「振動減衰制御」という場合がある)が実行される。また、車両の旋回に起因する車体のロールを抑制するための制御(以下、「ロール抑制制御」という場合がある),車両の加減速に起因する車体のピッチを抑制するための制御(以下、「ピッチ抑制制御」という場合がある)が実行される。上記振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御は、各制御ごとのアクチュエータ力の成分である振動減衰成分,ロール抑制成分,ピッチ抑制成分を合計して目標アクチュエータ力が決定され、アクチュエータ26がその目標アクチュエータ力を発生させるように制御されることで、総合的に実行される。さらに、アクチュエータ26とエアスプリング28とが協働させられて、あるいは、エアスプリング28のみによって、ばね上ばね下間距離を調整する制御(以下、「車高調整制御」という場合がある)が実行される。その車高調整制御のうち運転者の操作等によって目標車高が変更された場合において車体車輪間距離を変更する制御(以下、「車高変更制御」という場合がある)は、エアスプリング28のエア量を調整するエア給排装置80を制御するとともに、車高を変更させるアクチュエータ力成分である車高変更成分を加えて目標アクチュエータ力を決定し、その目標アクチュエータ力を発生させるようにアクチュエータ26を制御することで実行される。以下に、振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御の各々を、それら各々におけるアクチュエータ力成分の決定方法を中心に説明し、さらに、車高調整制御を、エア給出装置80の作動、および、車高変更成分の決定方法を中心に、詳しく説明する。なお、以下の説明において、アクチュエータ力およびそれの成分は、車体と車輪12とを離間させる方向(リバウンド方向)のものが正の値,車体と車輪12とを接近させる方向(バウンド方向)のものが負の値となるものとして扱うこととする。
振動減衰制御では、車体および車輪12の振動を減衰するためにその振動の速度に応じた大きさのアクチュエータ力を発生させるべく、アクチュエータ力の振動減衰成分FVが決定される。つまり、いわゆるスカイフック理論に基づいた制御と、いわゆるグランドフック理論に基づいて制御との両者を行う制御である。具体的には、車体のマウント部24に設けられた縦加速度センサ176によって検出される縦加速度から計算される車体のマウント部24の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね上速度Vsと、ロアアーム22に設けられた縦加速度センサ178によって検出される縦加速度から計算される車輪12の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね下速度Vgとに基づいて、次式に従って、振動減衰成分FVが演算される。
FV=Cs・Vs−Cg・Vg
ここで、Csは、車体のマウント部24の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインであり、Cgは、車輪12の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインである。つまり、Cs,Cgは、いわゆるばね上,ばね下絶対振動に対する減衰係数と考えることができる。
車両の旋回時においては、その旋回に起因するロールモーメントによって、旋回内輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、旋回外輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ロール抑制制御では、その旋回内輪側の離間および旋回外輪側の接近を抑制すべく、旋回内輪側のアクチュエータ26にバウンド方向のアクチュエータ力を、旋回外輪側のアクチュエータ26にリバウンド方向のアクチュエータ力を、それぞれ、ロール抑制力として発生させる。具体的に言えば、まず、車体が受けるロールモーメントを指標する横加速度として、ステアリングホイールの操舵角δと車速vとに基づいて推定された推定横加速度Gycと、横加速度センサ174によって実測された実横加速度Gyrとに基づいて、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、次式に従って決定される。
Gy*=K1・Gyc+K2・Gyr (K1,K2:ゲイン)
そのように決定された制御横加速度Gy*に基づいて、ロール抑制力成分FRが、次式に従って決定される。
FR=K3・Gy* (K3:ゲイン)
車体の制動時等、減速時に発生する車体のノーズダイブに対しては、そのノーズダイブを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが接近させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが離間させられる。また、車体の加速時に発生する車体のスクワットに対しては、そのスクワットを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ピッチ抑制制御では、それらの場合の接近・離間距離を抑制すべく、アクチュエータ力をピッチ抑制力として発生させる。具体的には、車体が受けるピッチモーメントを指標する前後加速度として、前後加速度センサ172によって実測された実前後加速度Gxが採用され、その実前後加速度Gxに基づいて、ピッチ抑制力成分FPが、次式に従って決定される。
FP=K4・Gx (K4:ゲイン)
なお、ピッチ抑制制御は、スロットルセンサ180によって検出されるスロットルの開度、あるいは、ブレーキ圧センサ182によって検出されるマスタシリンダ圧が、設定された閾値を超えることをトリガとして実行される。
(a)一定車高維持制御
本サスペンションシステム10おける車高調整制御では、基本となる制御として、車高を一定に維持する制御(以下、「一定車高維持制御」という場合がある)が行われる。この制御は、いわゆるオートレベリングと呼ばれる制御であり、原則として、例えば、乗員の車両への乗り降り,荷物の積載量の変化等による車高の変動に対処することを目的としている。この一定車高維持制御は、専ら、エアスプリング28が制御されることによって行われ、現時点での目標車高、具体的には、現時点において目標とされているばね上ばね下間距離L*(以下、「目標距離L*」という場合がある)と、ストロークセンサ156により検出される実ばね上ばね下間距離Lrとが比較され、エアスプリング28の圧力室44のエア量が調整されることで、車高が調整される。
本サスペンションシステム10による車高調整制御では、上述した目標車高、つまり、目標距離L*が変更された場合において車高を変更するための制御(以下、「車高変更制御」という場合がある)も実行される。この車高変更制御は、悪路走行等への対処を目的とする運転者の意思に基づく車高変更、乗員の車両への乗降の容易性を考慮したイグニッションスイッチ連動型の車高変更、高速走行時の走行安定性の向上を目的とした車速連動型の車高変更等の際に実行され、目標距離L*が変更されたことをトリガとして、あたかも、上述した一定車高維持制御に割り込むようにして行われる。この車高変更制御は、一定車高維持制御と異なり、エアスプリング28とアクチュエータ26とが協働して車高変更を行う制御、つまり、協働変更制御とされている。
FH=KP・ΔL+KD・ΔL’
ここで、第1項,第2項は、それぞれ、車高変更成分FHにおける比例項成分(P項成分),微分項成分(D項成分)を意味し、KP,KDは、それぞれ、比例ゲイン,微分ゲインを意味する。つまり、車高変更成分は、ばね上ばね下間距離偏差ΔLに比例する成分と、その偏差ΔLの変化速度に比例する成分とを含むものとなっている。
アクチュエータ26の制御は、それが発生させるべきアクチュエータ力である目標アクチュエータ力に基づいて行われる。詳しく言えば、上述のようにして、アクチュエータ力の振動減衰成分FV,ロール抑制成分FR,ピッチ抑制成分FP,車高調整成分FHが決定されると、それらに基づき、次式に従って目標となるアクチュエータ力F*が決定される。
F*=FV+FR+FP+FH
その決定された目標アクチュエータ力F*を発生させるようにアクチュエータ26が制御される。つまり、上記振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御、および、車高調整制御におけるアクチュエータ26の制御は、その目標アクチュエータ力F*を発生させるように制御されることで、総合的に実行されるのである。そして、目標アクチュエータ力F*を発生させるためのモータ54の作動制御は、インバータ146によって行われる。詳しく言えば、上述のように決定された目標アクチュエータ力F*に基づいて、目標となるデューティ比が決定され、そのデューティ比に基づいた指令がインバータ146に送信される。インバータ146は、その適切なデューティ比の下、インバータ146の備えるスイッチング素子の開閉が制御されて、目標アクチュエータ力F*を発生させるようにモータ54を駆動する。
上述のようなエアスプリング28の制御、および、アクチュエータ26の制御は、それぞれ、図4にフローチャートを示すエアスプリング制御プログラム,図5にフローチャートを示すアクチュエータ制御プログラムが、短い時間間隔(例えば、数msec〜数十msec)をおいてコントローラ142により繰り返し実行されることによって行われる。本サスペンションシステム10が配備されている車両は、電子キーを採用しており、車両に設けられたセンサ(図示省略)は、その電子キーが車両から所定範囲内に存在する場合にその電子キーを検知可能とされている。上記2つのプログラムは、そのセンサによって電子キーが検知されてから、電子キーが検知されなくなった後に一定時間(例えば、60sec)が経過するまでの間実行される。なお、それら2つの制御プログラムに従う処理のうち車高を変更する処理は、目標車高に基づいて行われるのであり、その目標車高の決定、つまり、目標となるばね上ばね下間距離の決定は、図6にフローチャートを示す目標車高決定プログラムが実行されることによって行われる。また、その目標車高決定プログラムは、先の2つの制御プログラムと同じ期間、互いに並行して実行される。以下に、それぞれの制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。
目標車高決定プログラムでは、目標となる車高を示すフラグである目標車高フラグfHが用いられ、そのフラグfHに基づいて目標設定車高が決定される。本サスペンションシステム10では、基本となる車高として、「標準車高」(以下、「N車高」という場合がある)と、N車高より低い「Low車高」、N車高より高い「Hi車高」との3つの車高が設定されており、目標車高フラグfHのフラグ値[1],[2],[3]は、それぞれ、Low車高,N車高,Hi車高に対応するものとされている。基本的には、車高変更スイッチ166の操作に基づく指令が車高増加指令あるいは車高減少指令であるかに応じて、高車高側あるいは低車高側のいずれかに目標車高フラグfHのフラグ値が変更される。
エアスプリング制御プログラムは、各車輪12に対して個別に実行される。この制御プログラムでは、まず、S1において、前述した車高変更禁止条件を充足しているか否かが判断される。車高変更禁止条件を充足していないと判断された場合には、S2,3において、各車輪12に対応する現時点での実ばね上ばね下間距離Lrと、目標車高フラグfHのフラグ値に応じた目標ばね上ばね下間距離となる目標距離L*とがそれぞれ比較判定される。ばね上ばね下間距離を増加させる必要があると判定された場合には、S4において、エアスプリング28の圧力室44にエアを供給し、逆に、ばね上ばね下間距離を減少させる必要があると判定された場合には、S5において、エアスプリング28の圧力室44からエアを排出させる。また、車高変更禁止条件を充足している場合,ばね上ばね下間距離を変化させる必要がないと判定された場合には、S6において、先に述べたようにエア量が維持される。以上の一連の処理の後、本プログラムの1回の実行が終了する。
アクチュエータ制御プログラムは、4つの車輪12にそれぞれ設けられたスプリング・アブソーバAssy20のアクチュエータ26の各々に対して実行される。以降の説明においては、説明の簡略化に配慮して、1つのアクチュエータ26に対しての本プログラムによる処理について説明する。
FH=KP・ΔL+KD・ΔL’
なお、S14において、車高調整禁止条件を充足している場合には、車高調整中に禁止された場合を考慮して、その時点での車高を維持するように、車高変更成分FHが1回前のプログラム実行時における車高変更成分FHとされるようになっている。
図7に、協働変更制御におけるばね上ばね下間距離の変化、および、エアスプリング28内のエアの変化量,アクチュエータ26の車高変更成分FHの発生の様子を概略的に示す。図7(a)は、アクチュエータ26が、目標距離L*に対する実ばね上ばね下間距離Lrの偏差ΔLに基づく比例項成分,微分項成分に加えて、積分項成分をも含むアクチュエータ力を発生させるように制御された場合、つまり、PID制御則に従って車高変更成分FHが決定された場合のものである。また、図は、車高を上昇させる場合のものである。この場合、ばね上ばね下間距離がアクチュエータ26によって目標距離とされると、その時点でエアスプリング28へのエアの流入は停止してしまうことになり、その車高を維持するために、アクチュエータ26がその時点でのアクチュエータ力を発生し続けることとなる。そのため、システムが無駄な電力を消費し続けることになる。
なお、上記実施例においては、車高調整制御におけるエアスプリング28の制御は、複数のエアスプリング28に対してエアを流入あるいは流出する場合、すべての個別制御弁104が開弁されて、同時に複数のエアスプリング28に対するエアの調整が行われるような制御とされていたが、その制御に代えて、複数のエアスプリング28に対するエアの調整が1つずつ順番に行われるような制御としてもよい。詳しくは、現在の車高から目標車高までの距離を複数に分割し、複数のエアスプリング28のばね上ばね下間距離Lrの各々が、その分割された車高の各々のうち現在の位置から1段階先の車高に対応するばね上ばね下間距離となるように、複数のエアスプリング28の各々に対する個別制御弁104の開閉が1つずつ順番に行われることで、それら複数のエアスプリング28に対するエアの調整が順番に行われる。そして、エアスプリングの28の目標となる車高を1段階ずつ目標車高に向かって変更していくことで、複数のエアスプリング28のばね上ばね下間距離Lrの各々が、目標距離L*まで変更されるようにするのである。
Claims (3)
- ばね上部とばね下部とを相互に流体の圧力によって弾性的に支持するとともに、流体を流入・流出可能な流体スプリングと、
その流体スプリングと並列的に設けられ、動力源としての電磁モータを有してばね上部とばね下部とにそれらを接近・離間させる方向の力であるアクチュエータ力を作用させる電磁式のアクチュエータと、
前記流体スプリングに対する流体の流入・流出と前記アクチュエータが発生させるアクチュエータ力との少なくとも一方を制御することで、上下方向におけるばね上部とばね下部との距離であるばね上ばね下間距離を変更可能な制御装置と
を備えた車両用サスペンションシステムであって、
前記制御装置が、ばね上ばね下間距離を目標距離に変更する際に、前記流体スプリングに対して、実際のばね上ばね下間距離が前記目標距離となるまで流体を流入あるいは流出させるとともに、前記アクチュエータに対して、実際のばね上ばね下間距離の前記目標距離に対する偏差に基づくフィードバック制御によって、少なくともその偏差に基づく比例項成分を含み、かつ、積分項成分を含まない前記アクチュエータ力を発生させる協働変更制御を実行する車両用サスペンションシステム。 - 前記制御装置が、前記協働変更制御において、さらに、実際のばね上ばね下間距離の前記目標距離に対する偏差に基づく微分項成分を含む前記アクチュエータ力を発生させる請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
- 前記制御装置が、前記協働変更制御の実行中において、ばね上ばね下間距離の前記目標距離への変更を禁止する特定の禁止条件を充足する状態となった場合に、前記流体スプリングに対する流体の流入あるいは流出を停止するとともに、前記アクチュエータに対して、その禁止条件を充足した時点でのアクチュエータ力を維持させる請求項1または請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
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