JP4620306B2 - セルロースアシレートフイルムの製造方法 - Google Patents

セルロースアシレートフイルムの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀写真感光材料または液晶画像表示装置に有用なセルロースアシレートフイルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ハロゲン化銀写真感光材料や液晶画像表示装置に使用されるセルロースアシレートを製造する際に使用されるセルロースアシレート溶液の有機溶媒は、メチレンクロリドのような塩素含有炭化水素が使用されている。メチレンクロリド(沸点35℃)は、従来からセルロースアシレートの良溶媒として用いられ、製造工程の製膜及び乾燥工程において沸点が低いことから乾燥させ易いという利点により好ましく使用されている。近年環境保全の観点で低沸点である塩素系有機溶媒は、密閉設備でも取り扱い工程での漏れを著しく低減されるようになった。例えば徹底的なクローズドシステムによる系からの漏れ防止、万が一漏れても外気に出す前にガス吸収塔を設置し有機溶媒を吸着させて、処理する方法が進められた。さらに、排出する前に火力による燃焼あるいは電子線ビームによる塩素系有機溶媒の分解などで、殆ど有機溶媒を排出することはなくなった。
一方、塩素系有機溶媒として好ましく使用されてきたメチレンクロリド以外のセルロースアシレートの溶媒の探索がなされてきた。セルロースアシレート、特にセルローストリエステルに対する溶解性を示す有機溶媒として知られているものには、アセトン(沸点56℃)、酢酸メチル(沸点56℃)、テトラヒドロフラン(沸点65℃)、1,3−ジオキソラン(沸点75℃)、1,4−ジオキサン(沸点101℃)などがある。しかしながら、これらの有機溶媒は、従来の溶解方法では実際に実用できるに十分な溶解性は得られていない。
【0003】
この解決として、J.M.G.Cowie等は、研究論文(Makromol.chem.143巻、105頁(1971))において、酢化度が60.1乃至61.3%の範囲にあるセルローストリアセテートを、アセトン中で−80℃から−70℃に冷却した後、加温することによって、0.5から5質量%の希薄溶液が得られることを報告している。このような低温でセルロースアシレートを溶解する方法を冷却溶解法という。また、上出健二等は繊維機械学会誌、34巻、57−61頁(1981)の「三酢酸セルロースのアセトン溶液からの乾式紡糸」の中で冷却溶解法を用いての紡糸技術について述べている。
また、特開平9−95538号、特開平9−95544号、および特開平9−95557号の各公報では、上記技術を背景に、非塩素系有機溶媒を用いて冷却溶解法によってセルロースアシレートを溶解することが開示されている。その際に用いられる非塩素系有機溶剤としては、エーテル類、ケトン類あるいはエステルから選ばれる有機溶媒であり、特に冷却溶解法によりセルロースアシレートを溶解してフイルムを作製している。これらの具体的な有機溶媒としては、アセトン、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキサノン、エチルホルメート、及びメチルアセテートなどが好ましいとしている。しかしながら、これらの溶媒を用いても十分なセルロースアシレートの溶解を実現し、高速流延してセルロースアシレートフイルムを得るにはまだ不十分である。
【0004】
一方、セルロースアシレートフイルムは、一般にソルベントキャスト法またはメルトキャスト法により製造される。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを溶媒中に溶解した溶液(ドープ)を金属支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成するものである。メルトキャスト法では、セルロースアシレートを加熱により溶融したものを金属支持体上に流延し、冷却してフイルムを形成する。ソルベントキャスト法の方が、メルトキャスト法よりも平面性の高い良好なフイルムを製造することができる。このため、実用的にはソルベントキャスト法が普通に採用されている。最近のソルベントキャスト法では、ドープを金属支持体上へ流延してから、金属支持体上の成形フイルムを剥離するまでに要する時間を短縮して、製膜工程の生産性を向上させることが課題になっている。特に、ソルベントキャスト法によってセルロースアシレートフイルムを得るに際して、前述の非塩素系有機溶媒を用いて室温、高温あるいは冷却溶解したセルロースアシレート溶液の場合に、その金属支持体からのセルロースアシレートフイルムの剥離がし難くいことが問題になっている。また更に、近年のセルロースアシレートフイルムの需要増大に対して生産性を高めることが求められており、そのために高速度流延が切望されている。この観点でも、非塩素系有機溶媒による溶液で生産されるセルロースアシレートフイルムには、高速流延性の劣るものであった。
【0005】
これは、セルロースアシレートを金属支持体であるバンド或いはドラム上に流延し、乾燥或いは冷却して強度の強いゲル状フイルムとし、有機溶媒を含んだ状態で金属支持体から剥離され、しかる後に十分乾燥される工程の際に、金属支持体からセルロースアシレート膜の剥離が困難であること、および剥離した膜の自己支持性が弱いことが原因である。この改良の一方法として、特開平10−316701号公報では、酸解離指数pKaが1.93〜4.50[好ましくは2.0〜4.4、さらに好ましくは2.2〜4.3(例えば、2.5〜4.0)、特に2.6〜4.3(例えば、2.6〜4.0)程度]の範囲にある酸またはその塩を剥離剤として用いることが記載されている。また、剥離した膜の自己支持性を高めるためにセルロースアシレート溶液のゲル化適性を高めることが有効であることが明らかになってきた。しかし、この欠点として、セルロースアシレ−ト溶液でセルロースアシレ−トが含有しているアルカリ土類金属と微小な塩を作製し、長時間の流延工程において系に付着する問題を引き起こすことがわかってきた。また、ゲル化適性を高めると溶液の35℃静的非ニュートン粘度n*が上昇し、フイルムの面状が悪化するという問題があり、その改良が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、セルロースアシレートを塩素系有機溶媒で溶液を調製する場合、流延した後、乾燥のために金属支持体から剥離が困難な点を解決し、剥ぎ取りに優れるだけでなく良好な面状のセルロースアシレ−トフイルムを作製することである。特に流延速度を高速にしても剥ぎ取りや面状の良好なセルロースアシレート溶液を形成し、優れたセルロースアシレートフイルムを作製することにある。
本発明の目的は、塩素系有機溶剤系において、金属支持体からの剥離性および高速製造適性に優れたセルロースアシレート溶液を提供することにある。さらにまた本発明の目的は、塩素系有機溶剤系において金属支持体からの剥離性および高速製造適性に優れ、かつ面状の優れたセルロースアシレートフイルムの製造方法を提供し、製造することにもある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記(1)〜(7)のセルロースアシレートフイルムの製造方法により達成できる。
(1)共流延法により内部層と外部層との少なくとも二層を流延製膜するセルロースアシレートフイルムの製造方法であって、内部層と外部層とに用いるセルロースアシレート溶液の溶媒が、いずれも塩素系溶剤を60質量%以上含み、さらに、下記(II)または(IV)を満足することを特徴とするセルロースアシレートフイルムの製造方法:
(II)溶液の−5℃貯蔵弾性率が、内部層用より外部層用の方が低い;
IV)溶液中の静的光散乱法で測定したセルロースアシレートの会合分子量が、外部層用に比べて内部層用の方が大きい。
【0008】
(2)内部層と外部層とに用いるセルロースアシレート溶液の溶媒が、いずれもアルコールを2乃至30質量%含む(1)に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(3)溶媒とセルロースアシレートとの混合物を、−80乃至−10℃、または80乃至220℃の温度に曝して溶解する(1)に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(4)外部層が内部層よりも乾燥膜厚が小さい(1)に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(5)上記(II)を満足することを特徴とする(1)に記のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
【0009】
(6)上記(IV)を満足することを特徴とする(1)に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(7)上記(II)および(IV)を満足することを特徴とする(1)に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、セルロースアシレート溶液に用いる溶媒は、塩素系溶剤の割合が60質量%以上である。塩素系溶剤の割合は80質量%以上であることが好ましい。
セルロースアシレート原料綿については、発明協会公開技報2001−1745、7頁右段の26行目以降に記載の「4.セルロースアシレート原料綿」に関する記載事項を用いることができる。
【0011】
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、無水酢酸−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。具体的には、木材パルプ等のセルロース原料を適当量の有機酸で前処理した後、予め冷却したアシル化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記アシル化混液は、一般に、溶媒としての有機酸、エステル化剤としての無水有機酸および触媒としての硫酸を含む。無水有機酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水有機酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことにより、ケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは、中和することなく、水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理によりセルロースアシレートを得る。
【0012】
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフイルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートドープを用いてフイルムは製造される。
塩素系溶媒は、塩素系有機溶媒が好ましく、塩素置換炭化水素(例、メチレンクロリド、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン)がさらに好ましい。メチレンクロリドが特に好ましい。
二種類以上の塩素系溶剤を併用してもよい。塩素系溶剤と他の有機溶剤とを併用してもよい。他の有機溶剤としては、アルコールが好ましい。アルコール以外にも、ケトンやエステルを併用することができる。アルコール、ケトンおよびエステルは、それぞれの官能基(−OH、−CO−および−CO−O−)以外の官能基を有していてもよい。
【00013】
アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールおよびシクロヘキサノール、2−フルオロエタノールおよび2,2,2−トリフルオロエタノールが含まれる。メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールおよび1−ブタノールが好ましい。
【0014】
塩素系溶剤と併用可能な非塩素系溶剤については、発明協会公開技報2001−1745、12頁左段の30行目から15頁左段の13行目に記載がある。
【0015】
溶剤の組み合わせ例を以下に示す。
S−01:メチレンクロリド/メタノール(95/5、質量部)
S−02:メチレンクロリド/メタノール(90/10、質量部)
S−03:メチレンクロリド/メタノール/n−ブタノール(80/15/5、質量部)
S−04:メチレンクロリド/クロロホルム/メタノール(80/10/10、質量部)
S−05:メチレンクロリド/1,2−ジクロロエタン/エタノール(70/20/10、質量部)
S−06:メチレンクロリド/アセトン/メタノール(80/10/10、質量部)
S−07:メチレンクロリド/酢酸メチル/n−プロパノール(85/10/5、質量部)
S−08:クロロホルム/酢酸メチル/n−プロパノール(80/15/5、質量部)
S−09:クロロホルム/1,2−ジクロロエチレン/メチルエチルケトン/n−ブタノール(40/35/15/10、質量部)
S−10:メチレンクロリド/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/10/5、質量部)
S−11:メチレンクロリド/シクロペンタノン/メタノール/n−ヘキサン(80/10/5/5、質量部)
S−12:1,2―ジクロロエタン/シクロペンタノン/メタノール/n−ヘキサン(65/20/5/10、質量部)
【0016】
セルロースアシレート溶液を作製するには、室温下でタンク中の溶剤を撹拌しながら上記セルロースアシレートを添加することでまず溶剤への膨潤を行う。膨潤時間は最低10分以上が必要であり、10分以下では不溶解物が残存する。また、セルロースアシレートを十分膨潤させるためには溶剤の温度は0乃至35℃が好ましい。0℃以下では膨潤速度が低下し不溶解物が残存する傾向にある、35℃以上では膨潤が急激に起こるために中心部分が十分膨潤しない。また、複数の溶媒を用いる場合は、その添加順は特に限定されない。例えば、主溶媒中にセルロースアシレートを添加した後に、他の溶媒(例えばアルコールなど)を添加してもよいし、逆に他の溶媒を予めセルロースアシレートに湿らせた後の主溶媒を加えてもよく、不均一溶解の防止に有効である。セルロースアシレートの量は、この混合物中に5〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0017】
膨潤工程の後にセルロースアシレートを溶解するには、冷却溶解法、高温溶解法のいずれか、あるいは両方を用いることが好ましい。具体的には、溶媒とセルロースアシレートとの混合物を、−80乃至−10℃(冷却溶解法)、または80乃至220℃(高温溶解法)の温度に曝して溶解する。冷却溶解法、高温溶解法に関する具体的な方法としては、発明協会公開技報2001−1745、24頁左段の15行目から25頁左段の9行目の(冷却溶解法)、(高温溶解法)に記載のものを挙げることができる。
【0018】
なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。冷却溶解方法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。以上の冷却溶解方法については、特開平9−95544号、同10−95854号、同10−95854号の各公報に詳細に記載されている。
【0019】
上記で得られたドープのセルロースアシレートは、場合により、更に溶解し易くするために低い濃度で溶解してから、しかる後に濃縮手段を用いて濃縮してもよい。具体的な方法としては、発明協会公開技報2001−1745、25頁左段の10行目から同28行目の(溶液濃縮)に記載のものを挙げることができる。
【0020】
溶液は流延に先だって金網、紙やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくことが好ましい。具体的な方法としては、発明協会公開技報2001−1745、25頁左段の29行目から右段の33行目の(ろ過)に記載のものを挙げることができる。
【0021】
セルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)、光学異方性コントロール剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば、20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開平2001−151901号公報などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては、例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期は、ドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は、機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフイルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば、特開平2001−151902号公報などに記載されている。具体的には、発明協会公開技報2001−1745、16頁左段の28行目から22頁右段の下から5行目までに記載のものを挙げることができる。
【0022】
次に、特に重要な添加剤である剥離剤について述べる。剥離剤としては水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である多塩基酸の部分エステル、そのアルカリ金属塩およびそのアルカリ土類金属塩から選ばれる化合物であることが必要である。「部分エステル」とは多塩基酸の酸の一部がエステル化されたものを意味し、例えばクエン酸の場合、クエン酸モノエステル体およびクエン酸ジエステル体を表す。本発明者は、剥離剤として種々の酸(例えば、シュウ酸、コハク酸、クエン酸等)を用いてきたが、これらの酸はアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を形成すると溶液中での析出が起こることがあり、本発明に至ったものである。
【0023】
以下に、用いられる剥離剤の種類をそのpKaとともに示すが、使用可能な剥離剤はこれに限定されない。例えば、脂肪族多価カルボン酸[マロン酸モノエチル(2.65)およびモノメチル(2.65)、コハク酸モノプロピル(4.00)、グルタル酸モノメチル(4.13)、アジピン酸モノメチル(4.26)、ピメリン酸モノエチル(4.31)、アゼライン酸モノメチル(4.39)、フマル酸モノブチル(2.85)など]、オキシカルボン酸[酒石酸モノエチル(2.89)およびジエチル(2.82−2.99)、クエン酸モノエチル(2.87)、クエン酸メチルエチルエステル(2.87)など]、芳香族多価カルボン酸[フタル酸モノエチル(2.75)、イソフタル酸モノプロピル(3.50)、テレフタル酸モノブチル(3.54)など]、複素環式多価カルボン酸[2,6−ピリジンジカルボン酸モノエチル(2.09)など]、アミノ酸類[グルタミン酸モノエチル(2.18)など]を挙げることができる。
【0024】
また、上記の剥離剤に、スルホン酸、リン酸系素材を併用することにより剥離性の改良が期待できる。これらはその溶解性の観点から界面活性剤の形であることが好ましい。具体的には、特開昭61−243837号公報に記載された素材を好適に用いることができる。具体例としては、C1225O−P(=O)−(OK)2 、C1225OCH2 CH2 O−P(=O)−(OK)2 、(iso−C9 192 −C6 3 −O−(CH2 CH2 O)3 −(CH2 4 SO3 Naがある。
【0025】
酸は遊離酸として用いてもよく、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩として用いてもよい。アルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウムなどが例示でき、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウムなどが例示できる。好ましいアルカリ金属には、ナトリウムが含まれ、好ましいアルカリ土類金属には、カルシウム、マグネシウムが含まれる。但し、アルカリ金属の方が、アルカリ土類金属よりもより好ましい。これらのアルカリ金属,アルカリ土類金属はそれぞれ単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、アルカリ金属とアルカリ土類金属とを併用してもよい。
【0026】
前記剥離剤、酸およびその金属塩の総含有量は、剥離性、透明性などを損なわない範囲、例えば、セルロースアシレート1g当たり、1×10-9〜3×10-5モル、好ましくは1×10-8〜2×10-5モル(例えば、5×10-7〜1.5×10-5モル)、さらに好ましくは1×10-7〜1×10-5モル(例えば、5×10-6〜8×10-6モル)程度の範囲から選択でき、通常、5×10-7〜5×10-6モル(例えば、6×10-7〜3×10-6モル)程度である。
【0027】
セルロースアシレート溶液を用いたフイルムの製造方法について述べる。セルロースアシレートフイルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフイルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解タンク(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)をストックタンクで一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡したり最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフイルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。
【0028】
本発明では、得られたセルロースアシレート溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に、2層以上の複数のセルロースアシレート液を共流延する。層数としては好ましくは2または3層である。各層は同時に流延製膜することが好ましい。
複数のセルロースアシレート溶液を流延するには、例えば、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフイルムを作製してもよく、例えば特開平11−198285号公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってフイルム化する方法が挙げられ、特開平6−134933号公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフイルム流延方法でもよい。このような共流延を行なうことにより、前述の様に表面の乾燥における平滑化が進行するため面状の大幅な改良が期待できる。共流延の場合、各層の乾燥膜厚は特に限定されないが、外部層が内部層より薄いことが好ましい。その際の外部層の乾燥膜厚は、1〜50μmが好ましく、より好ましくは1〜30μmであり、特に好ましくは1〜20μmである。ここで、外部層とは、2層の場合はバンド面(ドラム面)ではない面、3層以上の場合は完成したフイルムの両表面側の層を示す。内部層とは、2層の場合はバンド面(ドラム面)。3層以上の場合は外部層より内側に有る層を示す。
さらに本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することもできる。
【0029】
本発明においては、(I)溶液濃度が、内部層用より外部層用の方が低いか、(II)溶液の−5℃貯蔵弾性率が、内部層用より外部層用の方が低いか、(III)溶液のアルコール含有率が、内部層用より外部層用の方が低いか、あるいは(IV)溶液中の静的光散乱法で測定したセルロースアシレートの会合分子量が、外部層用に比べて内部層用の方が大きいことにより、金属支持体からの剥離性が良好で、乾燥途中のフイルムの自己支持性に優れ、かつ面状のよいフイルムを得ることができる。
【0030】
(I)溶液濃度が、内部層用より外部層用の方が低くなることで、表面の凹凸が減少し表面性のよいフイルムを得ることが可能である。
(II)溶液の−5℃貯蔵弾性率が、内部層用より外部層用の方が低くなることにより、冷却時のフイルムの面状を悪化させることなくフイルムの自己支持性を高め、高速製造適性を付与することが可能である。−5℃貯蔵弾性率を高めるためには、濃度を上げる方法と、貧溶剤であるアルコール類を添加する方法がある。後者の方法では、(III)溶液のアルコール含有率が、内部層用より外部層用の方が低くなる。また、(IV)溶液中の静的光散乱法で測定したセルロースアシレートの会合分子量が、外部層用に比べて内部層用の方が大きくなるように調整する方法も有効である。会合分子量を大きくする方法としてはいくつかのshだんがあるが、溶解時間を短縮する、冷却溶解温度を上げる、貧溶剤を添加する手段がある。
【0031】
静的光散乱法による会合分子量の測定方法について述べる。なおこれらの測定は、装置の都合上希薄領域で測定するが、これらの測定値は高濃度域のドープの挙動を反映するものである。まず、セルロースアシレートをドープに使用する溶剤に溶かし、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%の溶液を調製した。なお、秤量は、吸湿を防ぐためセルロースアシレートは120℃で2時間乾燥したものを用い、25℃、10%RHの環境において行った。溶解方法は、ドープ溶解時に採用した方法(常温溶解法、冷却溶解法、高温溶解法)に従って実施した。続いてこれらの溶液、および溶剤を0.2μmのテフロン製フィルターで濾過した。そして、濾過した溶液を静的光散乱を、光散乱測定装置(大塚電子(株)製、DLS−700)を用い、25℃に於いて30度から140度まで10度間隔で測定した。得られたデータをZIMMプロット法にて解析した。なお、この解析に必要な屈折率は、アッベ屈折系で求めた溶剤の値を用い、屈折率の濃度勾配(dn/dc)は、示差屈折計(大塚電子(株)製、DRM−1021)を用い、光散乱測定に用いた溶剤、溶液を用いて測定した。
【0032】
また更に、上記のドープは、各層の塩素系溶媒の組成が同一であるか異なる組成のどちらか一方であること、各層の添加剤が一種類であるかあるいは2種類以上の混合物のどちらか一方であること、各層への添加剤の添加位置が同一層であるか異なる層のどちらか一方であること、添加剤の溶液中の濃度が各層とも同一濃度であるかあるいは異なる濃度のどちらか一方であること、各層の会合体分子量が同一であるかあるいは異なる会合体分子量のどちらか一方であること、各層の溶液の温度が同一であるか異なる温度のどちらか一方であること、また各層の塗布量が同一か異なる塗布量のどちらか一方であること、各層の35℃静的非ニュートン粘度n*が同一であるか異なるかのどちらか一方であること、各層の乾燥後の膜厚が同一であるか異なる厚さのどちらか一方であること、さらに各層に存在する素材が同一状態あるいは分布であるか異なる状態あるいは分布であること、各層の物性が同一であるかあるいは異なる物性のどちらか一方であること、各層の物性が均一であるか異なる物性の分布のどちらか一方であることを特徴とするセルロースアシレート溶液であることも好ましい。但し、外部層の濃度が内部層よりも低いか、及び/または外部層の−5℃貯蔵弾性率が内部層よりも低いか、および/又は外部層のアルコール含有量が内部層に対して少ないか、及び/または静的光散乱法で測定した会合分子量が外部層に比べて内部層の方が大きいことが必要である。ここで、物性とは、発明協会公開技報(公技番号、2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の6頁〜7頁に詳細に記載されている物性を含むものであり、例えばヘイズ、透過率、分光特性、レターゼーションRe、同Rth、分子配向軸、軸ズレ、引裂強度、耐折強度、引張強度、巻き内外Rt差、キシミ、動摩擦、アルカリ加水分解、カール値、含水率、残留溶剤量、熱収縮率、高湿寸度評価、透湿度、ベースの平面性、寸法安定性、熱収縮開始温度、弾性率、及び輝点異物などであり、さらにはベースの評価に用いられるインピーダンス、面状も含まれるものである。
【0033】
セルロースアシレートフイルムの製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、乾燥工程における乾燥温度は30〜250℃、特に40〜180℃が好ましく、特公平5−17844号公報に記載がある。更には、積極的に幅方向に延伸する方法もあり、本発明では、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、および同11−48271号の各公報に記載の方法を用いることができる。フイルムの延伸は、一軸延伸でもよく二軸延伸でもよい。フイルムの延伸倍率(元の長さに対する延伸による増加分の比率)は、10〜30%であることが好ましい。
【0034】
乾燥後のセルロースアシレートフイルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常5〜500μmの範囲であり、更に20〜250μmの範囲が好ましく、特に30〜180μmの範囲が最も好ましい。なお、光学用途としては30〜110μmの範囲が特に好ましい。フイルム厚さの調製は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
【0035】
セルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤を加えることができる。それらの添加剤は、可塑剤、紫外線防止剤や劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)、更には剥離剤、微粒子等である。具体的には、セルロースアシレート溶液が、25℃において、少なくとも一種の液体又は固体の可塑剤をセルロースアシレートに対して0.1〜20質量%含有していること、及び/又は少なくとも一種の液体又は固体の紫外線吸収剤をセルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有していること、及び/又は少なくとも一種の微粒子粉体をセルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有していること、及び/又は少なくとも一種のフッ素系界面活性剤をセルロースアシレートに対して0.001〜2質量%含有していること、及び/又は少なくとも一種の離型剤をセルロースアシレートに対して0.0001〜2質量%含有していること、及び/又は少なくとも一種の劣化防止剤をセルロースアシレートに対して0.0001〜2質量%含有していること、及び/又は少なくとも一種の光学異方性コントロール剤をセルロースアシレートに対して0.1〜15質量%含有していること、及び/又は少なくとも一種の赤外吸収剤をセルロースアシレートに対して0.1〜5質量%含有していること、及び/又は少なくとも一種の固体でその平均粒径が5〜3000nmである固体の微粒子マット剤をセルロースアシレートに対して0.001〜1質量%含有していることが好ましい。添加剤についての詳細は、発明協会公開技報2001−1745号、16頁左段の28行目から22頁右段の下から5行目までに記載がある。
【0036】
ここで場合により、セルロースアシレートフイルムの表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフイルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。具体的には、発明協会公開技報2001−1745、32頁左段の16行目から32頁右段の42行目に記載のものをあげることができる。
【0037】
用途によっては、セルロースアシレートフイルムの少なくとも一層に帯電防止層を設けたり、偏光子と接着するための親水性バインダー層が設けられることが好ましい。具体的には、発明協会公開技報2001−1745、32頁右段の下から12行目から45頁左段の下から3行目に記載の層を設けることができる。
【0038】
セルロースアシレート溶液からなるセルロースアシレートフイルムは、様々な用途で用いることができる。具体的には、発明協会公開技報2001−1745、45頁右段の下から5行目以降に記載されている「14.用途」の項目を挙げることができる。
【0039】
【実施例】
各実施例において、セルロースアシレート、溶液およびフイルムの化学的性質および物理的性質は、以下のように測定および算出した。
なお、実施例1および3は、参考例である。
【0040】
(1)セルロースアシレートの置換度(%)
酢化度はケン化法により測定した。乾燥したセルロースアシレートを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシドとの混合溶媒(容量比4:1)に溶解した後、所定量の1N−水酸化ナトリウム水溶液を添加し、25℃で2時間ケン化した。
フェノールフタレインを指示薬として添加し、1N−硫酸(濃度ファクター:F)で過剰の水酸化ナトリウムを滴定した。また、上記と同様の方法により、ブランクテストを行った。そして、下記式に従って酢化度(%)を算出した。
酢化度(%)=(6.005×(B−A)×F)/W
式中、Aは試料の滴定に要した1N−硫酸量(ml)、Bはブランクテストに要した1N−硫酸量(ml)、Fは1N−硫酸のファクター、Wは試料質量を示す。
尚、複数のアシル基を含有する系では、そのpKaの差を使って、各アシル基の量を求めた。また、公知文献(T.Sei,K.Ishitani,R.Suzuki,K.Ikematsu Polymer Journal 17 1065(1985))に記載の方法によっても同様に求めた。
さらに、これらにより求められた酢化度、その他のアシル基の量からモル分子量を考慮して置換度に換算した。
さらに、セルロースアシレートの2位、3位および6位のアシル置換度は、セルロースアセテートをアシル化に用いていないアシル基でアシル化処理した後、手塚他の文献(Carbohydr. Res. 273(1995)83-91)に記載の方法で13C−NMRにより求めた。
【0041】
(2)セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)
絶乾したセルロースアシレート約0.2gを精秤し、メチレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)の混合溶剤100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式により求めた。
Figure 0004620306
【0042】
(3)フイルムの剥げ残り
得られたフイルムを金属支持体から剥ぎ取る際の支持体表面を目視で観察し、セルロースアシレートフイルムの剥げ残りを以下の如く評価した。
A:金属支持体に剥げ残りは認められない。
B:金属支持体に剥げ残りがわずかに認められた。
C:金属支持体に剥げ残りがかなり認められた。
D:金属支持体に剥げ残りが多量認められた。
【0043】
(4)フイルムの横段ムラ(ムラと略称)
得られたフイルムを目視で観察し、その横段状ムラの欠陥を以下の如く評価した。
A:フイルムに横段ムラは認められない。
B:フイルムに横段ムラがわずかに認められた。
C:フイルムに横段ムラがかなり認められた。
D:フイルムに横段ムラが多量認められた。
【0044】
(5)フイルムのブツ(ブツと略称)
得られたフイルムを目視で観察し、その表面上のブツを以下の如く評価した。
A:フイルム表面にブツは認められなかった。
B:フイルム表面にブツがわずかに認められた。
C:フイルム表面にかなりのブツが認められた。
D:フイルム表面に凹凸が見られ、ブツが多数認められた。
【0045】
(6)フイルムのヘイズ
ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
【0046】
(7)セルロースアシレート溶液の35℃静的非ニュートン粘度n*(Pa・s)および−5℃貯蔵弾性率G’(Pa)
試料溶液1mLをレオメーター(CLS500)に、直径4cm/2°のsteel cone(共に、TA Instruments社製)を用いて測定した。測定条件は、Oscillation Step/temperature rampで35℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、35℃の静的非ニュートン粘度n*(Pa・s)および−5℃の貯蔵弾性率G’(Pa)を求めた。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。
【0047】
[実施例1]
(1−1)セルロースアシレート溶液の作製
下記の2種の溶解方法にてセルロースアシレート溶液を作製した。各本発明および比較例の詳細な溶剤組成については、表1に記載した。なお、可塑剤A(ジトリメチロールプロパンテトラアセテート)、可塑剤B(トリフェニルフォスフェート)、UV剤a(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン)、UV剤b(2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール)、UV剤c(2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール)、微粒子(二酸化ケイ素(粒径20nm)、モース硬度:約7)を、それぞれセルロースアシレートの6質量%、6質量%、0.5質量%、0.5質量%、0.5質量%、0.5質量%添加した。また、水準によっては剥離剤としてクエン酸モノメチルエステルをセルロースアシレートに対して質量で2000ppmの割合で添加した(但し、重層の場合には外部層にのみクエン酸モノメチルエステルを添加した)。尚、本発明における共流延の内部層、外部層を形成する液としては、上記セルロースアシレート溶液を、濃度および溶剤を変えて用いた。詳細は表1に併せて示した。
【0048】
(1−1a)バッチ式冷却溶解(表1に「バッチ冷却」と記載)
溶剤中に、よく攪拌しつつ、表1に記載のセルロースアシレートを徐々に添加し、室温(25℃)にて3時間放置し膨潤させた。得られた膨潤混合物をゆっくり撹拌しながら、−8℃/分で−30℃まで冷却、その後表1に記載の温度まで冷却し4時間経過した後、+8℃/分で昇温し内容物のゾル化がある程度進んだ段階で、内容物の撹拌を開始した。50℃まで加温しドープを得た。
【0049】
(1−1b)連続式冷却溶解(表1に「連続冷却」と記載)
1−1aと同様にしてセルロースアシレートを膨潤させたあと、−80℃に冷却にした冷却管を移送し、液を連続で冷却した。冷却管中では溶液は15秒以内に−70℃以下に冷却されていた。冷却管中の滞留時間については表1に記載した。冷却した液を50℃に加温しドープを得た。
【0050】
(1−1c)室温溶解(表1に「室温」と記載)
1−1aと同様にしてセルロースアシレートを膨潤させたあと、室温で膨潤混合物を4時間撹拌した。溶解後、液を50℃まで加温しドープを得た。
【0051】
(1−2)セルロースアシレート溶液の濾過
次に、得られたドープを50℃にて、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で濾過し、さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。濾過後、ドープを35℃にて30日間保温して流延に用いた。
【0052】
(1−3)セルロースアシレートフイルムの作製
濾過済みの35℃の(1−2)の溶液を、特開昭56−162617号公報に記載の流延機を用いて流延した。、金属支持体温度は−10℃であり、流延スピードは80m/分でその塗布幅は80cmとした。乾燥は45℃の乾燥風を送風した。8.5秒後にドラム式鏡面ステンレス支持体から剥ぎ取り(この時の剥ぎ取り直後の固形分濃度は、約20〜70質量%であった)、しかる後に110℃、5分、更に130℃で10分乾燥(フイルム温度は約130℃)して、セルローストリアセテートフイルム(膜厚80μm)を得た。得られた試料は、両端を3cm裁断し、さらに端から2〜10mmの部分に高さ100μmのナーリングを実施し、ロール状に巻き取った。層構成は、本発明においては二層または三層であり、二層ではバンド面から内部層/外部層の構成、三層では外部層/内部層/外部層のサンドイッチ型構成であった。詳細は表1に示した。
【0053】
【表1】
Figure 0004620306
【0054】
(1−3)結果
表2に、得られた試料の評価結果を示した。本発明の試料1−2は、剥げ残りもなくムラ、ブツもなく又ヘイズも小さくて面状の優れるものであった。一方、比較例の試料は剥げ残りが認められ、面状も劣るものであった。
【0055】
【表2】
Figure 0004620306
【0056】
また、これらのフイルムを、製膜工程中の乾燥工程中にオンラインで、あるいはその後オフラインで130℃にて10%〜30%MD、TD延伸延伸した。これらは、延伸倍率に比例し、40nm〜160nmにレターデーションを増加させることができた。
このようにして得たセルロースアシレートフイルムを、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置に用いたところ良好な性能が得られた。さらに、特開昭54−016575号公報に記載の偏光板として用いたところ、良好な性能が得られた。
【0057】
[実施例2]
実施例1と同様にして、下記の2種の溶解方法にてセルロースアシレート溶液を作製した。各本発明および比較例の詳細な溶剤組成については、表3に記載した。なお、シリカ粒子(粒径20nm)、トリフェニルフォスフェート/ビフェニルジフェニルフォスフェート(1/2)、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジンをそれぞれ、セルロースアシレートの0.5質量%、10質量%、1.0質量%添加した。また、水準によっては剥離剤として酒石酸モノエチルエステルをセルロースアシレートに対して質量で2000ppmの割合で添加した(但し、重層の場合には外部層にのみ酒石酸モノエチルエステルを添加した)。尚、本発明における共流延の内部層、外部層を形成する液としては、上記セルロースアシレート溶液を濃度および溶剤を変えて用いた。詳細は表3に合わせて示した。
【0058】
【表3】
Figure 0004620306
【0059】
(2−1)結果
表4に、得られた試料の評価結果を示した。本発明の試料は、剥げ残りもなくムラ、ブツもなく又ヘイズも小さくて面状の優れるものであった。一方、比較例の試料はブツ、ムラが認められ面状も劣るものであった。
【0060】
【表4】
Figure 0004620306
【0061】
[実施例3]
剥離剤の種類と量を、表5の様に変更した以外は実施例1と同様にして、セルロースアシレート溶液を作製した。
【0062】
【表5】
Figure 0004620306
【0063】
(3−1)結果
表6に、得られた試料の評価結果を示した。本発明の試料は、剥げ残りもなくムラ、ブツもなく又ヘイズも小さくて面状の優れるものであった。一方、比較例の試料はブツ、ムラが認められ面状も劣るものであった。
【0064】
【表6】
Figure 0004620306
【0065】
【発明の効果】
本発明により、金属支持体からの剥離性および高速製造適性に優れたセルロースアシレート溶液提供し、また金属支持体からの剥離性および高速製造適性に優れ、かつ面状の優れたセルロースアシレートフイルムの製造方法を達成した。

Claims (7)

  1. 共流延法により内部層と外部層との少なくとも二層を流延製膜するセルロースアシレートフイルムの製造方法であって、内部層と外部層とに用いるセルロースアシレート溶液の溶媒が、いずれも塩素系溶剤を60質量%以上含み、さらに、下記(II)または(IV)を満足することを特徴とするセルロースアシレートフイルムの製造方法:
    (II)溶液の−5℃貯蔵弾性率が、内部層用より外部層用の方が低い;
    IV)溶液中の静的光散乱法で測定したセルロースアシレートの会合分子量が、外部層用に比べて内部層用の方が大きい。
  2. 内部層と外部層とに用いるセルロースアシレート溶液の溶媒が、いずれもアルコールを2乃至30質量%含む請求項1に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  3. 溶媒とセルロースアシレートとの混合物を、−80乃至−10℃、または80乃至220℃の温度に曝して溶解する請求項1に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  4. 外部層が内部層よりも乾燥膜厚が小さい請求項1に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  5. 上記(II)を満足することを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  6. 上記(IV)を満足することを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  7. 上記(II)および(IV)を満足することを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
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