JP3987344B2 - セルロースアシレートフイルムの製造方法 - Google Patents

セルロースアシレートフイルムの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化銀写真感光材料または液晶画像表示装置の偏光板保護膜に有用なセルロースアシレートフイルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ハロゲン化銀写真感光材料や液晶画像表示装置の偏光板保護膜に使用されるセルロースアシレートフイルムを製造する際に使用されるセルロースアシレート溶液(ドープ)の有機溶媒としては、メチレンクロリドのような塩素含有炭化水素が使用されている。メチレンクロリド(沸点35℃)は、従来からセルロースアシレートの良溶媒として用いられ、製造工程の製膜及び乾燥工程において沸点が低いことから乾燥させ易いという利点により好ましく使用されている。近年環境保全の観点で、低沸点である塩素系有機溶媒は、密閉設備でも取り扱い工程での漏れを著しく低減されるようになった。例えば、徹底的なクローズドシステムによる系からの漏れ防止、万が一漏れても外気に出す前にガス吸収塔を設置し有機溶媒を吸着させて、処理する方法が進めれた。さらに、排出する前に火力による燃焼あるいは電子線ビームによる塩素系有機溶媒の分解などで、殆ど有機溶媒を排出することはなくなった。
一方、塩素系有機溶媒として好ましく使用されてきたメチレンクロリド以外のセルロースアシレートの溶媒の探索がなされてきた。セルロースアシレート、特にセルローストリエステルに対する溶解性を示す有機溶媒として知られているものには、アセトン(沸点56℃)、酢酸メチル(沸点56℃)、テトラヒドロフラン(沸点65℃)、1,3−ジオキソラン(沸点75℃)、1,4−ジオキサン(沸点101℃)などがある。しかしながら、これらの有機溶媒は、従来の溶解方法では実際に実用できるに十分な溶解性は得られていない。
【0003】
この解決として、J.M.G.Cowie等は、Makromol.chem.143巻、105頁(1971)において、セルローストリアセテート(酢化度60.1%から61.3%)をアセトン中で−80℃から−70℃に冷却した後、加温することによって、0.5から5質量%の希薄溶液が得られることを報告している。このような低温でセルロースアシレートを溶解する方法を冷却溶解法という。また、上出健二等は繊維機械学会誌、34巻、57−61頁(1981)の「三酢酸セルロースのアセトン溶液からの乾式紡糸」の中で冷却溶解法を用いての紡糸技術について述べている。
また、特開平9−95538号、特開平9−95544号及び特開平9−95557号の各公報では、上記技術を背景に、非塩素系有機溶媒を用いて冷却溶解法によってセルロースアシレートを溶解することが開示されている。その際に用いられる非塩素系有機溶剤としては、エーテル類、ケトン類あるいはエステルから選ばれる有機溶媒であり、特に冷却溶解法によりセルロースアシレートを溶解してフイルムを作製している。これらの具体的な有機溶媒としては、アセトン、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキサノン、エチルホルメート、及びメチルアセテートなどが好ましいとしている。しかしながら、これらの溶媒を用いても十分なセルロースアシレートの溶解を実現し、高速流延してセルロースアシレートフイルムを得るにはまだ不十分である。
【0004】
一方、セルロースアシレートフイルムは、一般にソルベントキャスト法またはメルトキャスト法により製造される。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを溶媒中に溶解した溶液(ドープ)を金属支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成するものである。メルトキャスト法では、セルロースアシレートを加熱により溶融したものを金属支持体上に流延し、冷却してフイルムを形成する。ソルベントキャスト法の方が、メルトキャスト法よりも平面性の高い良好なフイルムを製造することができる。このため、実用的にはソルベントキャスト法の方が普通に採用されている。最近のソルベントキャスト法では、ドープを金属支持体上へ流延してから、金属支持体上の成形フイルムを剥離するまでに要する時間を短縮して、製膜工程の生産性を向上させることが課題になっている。特に、ソルベントキャスト法によってセルロースアシレートフイルムを得るに際して、前述の非塩素系有機溶媒を用いて室温、高温あるいは冷却溶解したセルロースアシレート溶液の場合に、その金属支持体からのセルロースアシレートフイルムの剥離がし難くいことが問題になっている。また更に、近年のセルロースアシレートフイルムの需要増大に対して生産性を高めることが求められており、そのために高速度流延が切望されている。この観点でも、非塩素系有機溶媒による溶液で生産されるセルロースアシレートフイルムは、高速流延性の劣るものであった。
【0005】
これは、セルロースアシレートを金属支持体であるバンド或いはドラム上に流延し、乾燥或いは冷却して強度の強いゲル状フイルムとし、有機溶媒を含んだ状態で金属支持体から剥離され、しかる後に十分乾燥される工程の際に、金属支持体からセルロースアシレート膜の剥離が困難であること、および剥離した膜の自己支持性弱いことが原因である。この改良の一方法として、特開平10−316701号公報では、酸解離指数pKa1.93〜4.50[好ましくは2.0〜4.4、さらに好ましくは2.2〜4.3(例えば、2.5〜4.0)、特に2.6〜4.3(例えば、2.6〜4.0)程度]の酸またはその塩を剥離剤として用いることが記載されている。しかし、この欠点として、セルロースアシレート溶液でセルロースアシレートが含有しているアルカリ土類金属と微小な塩を作製し、長時間の流延工程において系に付着する問題を引き起こすことがわかってきた。一方、剥離した膜の自己支持性を高めるために、セルロースアシレート溶液のゲル化適性を高めることが有効であることが明らかになってきた。ゲル化適性を高める一法としてアルコールの溶液への添加が有効であるものの、同時に溶液の安定性が低下するという問題が発生することがわかった。さらにはアルコール添加後の溶液の35℃静的非ニュートン粘度n*が徐々に上昇し、フイルムの面状が悪化するという問題があり、その改良が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、セルロースアシレートを塩素系有機溶媒に溶解して溶液を調製する場合、流延した後乾燥のために金属支持体から剥離が困難な点を解決し、剥ぎ取りに優れるだけでなく良好な面状のセルロースアシレートフイルムを作製することである。特に流延速度を高速にしても剥ぎ取りや面状の良好なセルロースアシレート溶液を形成し、優れたセルロースアシレートフイルムを作製することにある。
本発明の目的は、塩素系有機溶剤系において、金属支持体からの剥離性および高速製造適性に優れたセルロースアシレート溶液を提供することである。さらにまた本発明の目的は、塩素系有機溶剤系において金属支持体から剥離されたフイルムの自己支持性を高めて高速製造適性を付与し、かつ面状の優れたセルロースアシレートフイルムの製造方法を提供することでもある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記の(1)〜(15)の製造方法により達成された。
(1)少なくとも1つ以上のセルロースアシレート溶液を調製後、流延製膜するセルロースアシレートフイルムの製造方法であって、セルロースアシレート溶液が実質的に塩素系溶剤から構成される溶剤にセルロースアシレートを溶解したものであり、流延されるセルロースアシレート溶液のうち少なくとも一つ以上の溶液が塩素系溶剤の他に少なくともアルコールを含有し、少なくとも1つのセルロースアシレート溶液へのアルコールの添加が流延前の24時間以内に行なわれ、アルコールの添加量が、その溶液の全溶剤に対して5乃至40質量%の範囲にあることを特徴とするセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(2)アルコール以外の溶剤で溶液を調製してからアルコールを添加することを特徴とする(1)に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(3)アルコールが、炭素原子数6以下の脂肪族系アルコールであることを特徴とする(1)もしくは(2)に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
【0008】
(4)アルコールの添加をインライン添加で行うことを特徴とする(1)乃至(3)のうちのいずれかに記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(5)溶液を構成するアルコールが複数のアルコールからなり流延前の24時間以内に添加されるアルコールの炭素数の方が、調液時に添加されるアルコールの炭素数よりも小さいことを特徴とする(1)乃至(4)のうちのいずれかに記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(6)セルロースアシレート溶液の溶剤が実質的にメチレンクロリドまたは/およびクロロホルムからなることを特徴とする(1)乃至(5)のうちのいずれかに記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
【0009】
(7)流延が、共流延法により行われ、内部層の溶液及び外部層の溶液の両方にアルコールを添加することを特徴とする(1)乃至(6)のうちのいずれかに記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(8)流延が、共流延法により行われ、内部層のみにアルコールを流延前添加するか、または外部層に対して内部層へのアルコール添加量が1.05倍乃至6.0倍であることを特徴とする(1)乃至(7)のうちのいずれかに記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
【0010】
(9)セルロースアシレートフイルムが二層以上の多層構造を有し、該セルロースアシレートフイルムの少なくとも一方の側の外部層の乾燥膜厚が1〜50μmの範囲にあることを特徴とする(1)乃至(8)のうちのいずれかに記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(10)流延が共流延法により行われ、各層を同時に流延製膜することを特徴とする(1)乃至(9)のうちのいずれかに記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
【0011】
(11)セルロースアシレート溶液が、可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子粉体、離型剤、中和剤、劣化防止剤および光学異方性コントロール剤から選択される少なくとも一つの添加剤を含有する(1)乃至(10)のうちのいずれかに記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(12)酸中和剤が、pKaが4.50以上のアミン化合物、または、実質的に揮散性を持たず、塩基性基1個当たりの分子量が200以下のアミン化合物であることを特徴とする(11)に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(13)金属支持体と接する外部層のみに剥離剤を含有することを特徴とする(1)乃至(12)のうちのいずれかに記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
【0012】
(14)該セルロースアシレートのアシル置換度が2.75乃至2.95の範囲にあり、6位アシル置換度が0.92以上であることを特徴とする(1)乃至(13)のうちのいずれかに記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(15)セルロースアシレート溶液へアルコールのみを添加することを特徴とする(1)乃至(14)のうちのいずれかに記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレート原料綿については、発明協会公開技報2001−1745、7頁右段の26行目以降に記載の「4.セルロースアシレート原料綿」に関する記載事項を用いることができる。
【0014】
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、無水酢酸−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。具体的には、木材パルプ等のセルロース原料を適当量の有機酸で前処理した後、予め冷却したアシル化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記アシル化混液は、一般に、溶媒としての有機酸、エステル化剤としての無水有機酸および触媒としての硫酸を含む。無水有機酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水有機酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。
【0015】
次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことにより、ケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは、中和することなく、水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理によりセルロースアシレートを得る。
【0016】
次に、本発明で好ましく用いられるアシル置換度が2.75乃至2.95の範囲にあり、6位アシル置換度が0.92以上のセルロースアシレートについて記載する。通常のセルロースアシレートの合成方法では、2位または3位のアシル置換度の方が、6位のアシル置換度よりも高い値になる。該セルロースアシレートは6位酢化度を特異的に高めたものであり、2位、3位に対して6位のアシル置換度が高いものである。該セルロースアシレートの具体的な合成条件としては、通常のセルロースアシレートのアシル化の工程において硫酸等の酸触媒の量を減らし、アシル化反応の時間を長くすることが好ましい。硫酸触媒が多いと、アシル化反応の進行が速くなるが、触媒量に応じてセルロースとの間に硫酸エステルが生成し、反応終了時に遊離して残存水酸基を生じる。硫酸エステルは、反応性が高い6位により多く生成する。そのため、硫酸触媒が多いと6位のアシル置換度が小さくなる。従って、その合成には、可能な限り硫酸触媒の量を削減し、それにより低下した反応速度を補うため、反応時間を延長する必要がある。
該セルロースアシレートは溶液の粘度が低い特徴があり、フイルムの面状を良化させるために有効である。
【0017】
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフイルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートドープを用いてフイルムは製造される。次に、セルロースアシレートの溶液を作製するに際して用いられる塩素系有機溶媒について記載するが、セルロースアシレートが溶解し流延、製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは、その塩素系有機溶媒は特に限定されない。本発明で用いる塩素系有機溶媒は、好ましくはメチレンクロリド、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンである。特にメチレンクロリドが好ましい。本発明においては、これらの塩素系溶剤の混合溶剤を用いることもでき、更には塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することもできる。
用いる有機溶媒は実質的に塩素系溶剤であるが、少なくとも1以上の溶液においてアルコール類の併用が必須である。好ましくは全溶液がアルコールを含有する。添加するアルコールの量は全容剤に対して2乃至40質量%の範囲にあることが好ましい。特に単層流延で用いる場合には2乃至30質量%が好ましいが、アルコール量を添加しすぎると溶液の粘度が上昇して製膜後の平面性が悪化するため、必要なゲル化適性を付与できる範囲で少ない方がより好ましいからである。直前添加によるゲル化適性を十分に付与するためには、8乃至30質量%の範囲にあることがより好ましく、15乃至30質量%の範囲にあることが更に好ましい。共流延においては、添加するアルコールの量は、全容剤に対して2から40質量%の範囲であることが好ましい。ただし、アルコール量を添加しすぎると溶液の粘度が上昇して製膜後の平面性が悪化するため、外部層を構成する液と内部層を構成する液とでより好ましい範囲が異なることになる。すなわち内部層を構成する溶液のアルコールの添加量は全溶剤に対して5乃至40質量%の範囲にあることがより好ましく、外部層を構成する溶液のアルコール添加量は全溶剤に対して2乃至15質量%の範囲にあることがより好ましい。さらには内部層を構成する溶液のアルコール添加量が外部層を構成する溶液のアルコール添加量に対して1.05倍乃至20.0倍の範囲にあることが好ましい。
【0018】
外部層に添加するアルコールはできる限り低炭素数のアルコールであることが好ましい。これは炭素数の大きなアルコールはゲル化性能を大きく向上させるため、平面性が悪化するためである。ただし内部層は製膜後にはフイルムの内部を形成するものであるため平面性の悪化はあまり問題とならず、剥離後の自己支持性付与の観点からはむしろ炭素数の大きなアルコールを添加した方が好ましい。
【0019】
アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールおよびシクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノールなどが挙げられる。またエチレングリコール等の2官能アルコールも好ましく用いることができる。これらのアルコールのうち特に好ましいのはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。
用いる有機溶媒としては、少量であればケトン類、エステル類を混合することにより、液特性を調整することができる。これらのエステル類、ケトン類は環状構造を有していてもよく、2種類以上の官能基を有するものでもよい。
【0020】
また、単層流延の場合、アルコールの一部を調液時に同時に添加しておくことは何ら問題はない。炭素数1から3程度のアルコールは全容剤に対して2から10質量%の添加では溶液の粘度を大きく上昇させることはないので、この範囲であれば同時に調液しておいても何ら問題はない。ただし、流延直前の添加であっても何ら問題はない。これに対して炭素数4以上のアルコールはゲル化性能を大きく向上させる一方、溶液の粘度を経時で上昇させ、フイルムの平面性を悪化させるため、同時ではなくできるだけ流延直前に添加することが好ましい。
【0021】
塩素系溶剤と併用可能な非塩素系溶剤については、発明協会公開技報2001−1745、12頁左段の30行目から15頁左段の13行目に記載のものを挙げることができるが、特にこれに限定されない。
【0022】
ところで、本発明でのセルロースアシレートの溶剤は実質的に塩素系溶剤から構成される。「実質的に構成される」とは、有機溶媒中の塩素系溶剤の割合が60質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であることを意味する。
【0023】
本発明で好ましいこれらの溶媒の組み合わせの具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
S−01:メチレンクロリド/メタノール(75/25、質量部)
S−02:メチレンクロリド/メタノール(70/30、質量部)
S−03:メチレンクロリド/メタノール/n−ブタノール(80/15/5、質量部)
S−04:メチレンクロリド/クロロホルム/メタノール(80/10/10、質量部)
S−05:メチレンクロリド/1,2−ジクロロエタン/エタノール(70/15/15、質量部)
S−06:メチレンクロリド/アセトン/メタノール(80/5/15、質量部)
S−07:メチレンクロリド/酢酸メチル/n−プロパノール(65/15/20、質量部)
S−08:クロロホルム/酢酸メチル/n−プロパノール(80/5/15、質量部)
S−09:クロロホルム/1,2−ジクロロエチレン/メチルエチルケトン/n−ブタノール(40/35/15/10、質量部)
S−10:メチレンクロリド/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/10/5、質量部)
S−11:メチレンクロリド/シクロペンタノン/メタノール/n−ヘキサン(80/5/5/10、質量部)
S−12:1,2―ジクロロエタン/シクロペンタノン/メタノール/n−ヘキサン(65/20/5/10、質量部)
【0024】
本発明で単層流延にて好ましいこれらの溶媒の組み合わせの具体例をさらに示すが、これらに限定されない。同時調液、流延前添加溶剤の組み合わせとして以下を挙げることができる。
Figure 0003987344
Figure 0003987344
【0025】
本発明で共流延法にて好ましいこれらの溶媒の組み合わせの具体例をさらに示すが、これらに限定されない。まず、内部層を構成する溶剤の組み合わせとして以下を挙げることができる。
I−01:メチレンクロリド/n−プロパノール(75/25、質量部)
I−02:メチレンクロリド/エタノール(70/30、質量部)
I−03:メチレンクロリド/メタノール/n−ブタノール(80/15/5、質量部)
I−04:メチレンクロリド/クロロホルム/メタノール(75/10/15、質量部)
I−05:メチレンクロリド/1,2−ジクロロエタン/エタノール(70/15/15、質量部)
I−06:メチレンクロリド/アセトン/n−ブタノール(80/5/15、質量部)
I−07:メチレンクロリド/酢酸メチル/n−プロパノール(65/15/20、質量部)
I−08:クロロホルム/酢酸メチル/n−プロパノール(80/5/15、質量部)
I−09:クロロホルム/1,2−ジクロロエチレン/メチルエチルケトン/n−ブタノール(40/35/15/10、質量部)
I−10:メチレンクロリド/メタノール/n−ブタノール/シクロヘキサン(75/10/10/5、質量部)
I−11:メチレンクロリド/シクロペンタノン/メタノール/n−ヘキサン(80/5/10/5、質量部)
I−12:1,2―ジクロロエタン/シクロペンタノン/メタノール/n−ヘキサン(65/20/5/10、質量部)
【0026】
また、外部層を構成する溶剤組み合わせとして、以下を挙げることができる。O−01:メチレンクロリド/メタノール(95/5、質量部)
O−02:メチレンクロリド/メタノール(90/10、質量部)
O−03:メチレンクロリド/メタノール/n−ブタノール(85/10/5、質量部)
O−04:メチレンクロリド/クロロホルム/メタノール(80/10/10、質量部)
O−05:メチレンクロリド/1,2−ジクロロエタン/エタノール(70/20/10、質量部)
O−06:メチレンクロリド/アセトン/メタノール(80/10/10、質量部)
O−07:メチレンクロリド/酢酸メチル/n−プロパノール(70/25/5、質量部)
O−08:クロロホルム/酢酸メチル/メタノール(80/5/15、質量部)O−09:クロロホルム/1,2−ジクロロエチレン/メチルエチルケトン/n−ブタノール(40/35/20/5、質量部)
O−10:メチレンクロリド/メタノール/n−ブタノール/シクロヘキサン(85/5/5/5、質量部)
O−11:メチレンクロリド/シクロペンタノン/メタノール/n−ヘキサン(80/5/5/10、質量部)
O−12:1,2―ジクロロエタン/シクロペンタノン/メタノール/n−ヘキサン(68/20/2/10、質量部)
ただし、上記の例は外部層、内部層としてより好ましい範囲を示したものであるため、外部層の組成の液を内部層に用いても大きな問題はない。逆に内部層の液を外部層に用いることもできる。
【0027】
セルロースアシレート溶液を作製するには、室温下でタンク中の溶剤を撹拌しながら、上記セルロースアシレートを添加することでまず溶剤への膨潤を行う。膨潤時間は最低10分以上が必要であり、10分以下では不溶解物が残存する。また、セルロースアシレートを十分膨潤させるためには溶剤の温度は0乃至35℃が好ましい。0℃以下では膨潤速度が低下し不溶解物が残存する傾向にある。35℃以上では膨潤が急激に起こるために中心部分が十分膨潤しない。本発明ではアルコール類を含む混合溶剤系で溶液を作製することが必要であるが、基本的にはアルコール以外の溶剤で膨潤、溶解をさせておき流延直前にアルコールを添加することが好ましい。これは、上述のように内部層にアルコール類を多量に添加することにより全体のゲル化が進行しやすくなり、未乾燥状態での搬送性が向上することに起因するものである。しかしながらアルコール添加により液安定性が低下するため、アルコール添加から直ちに流延することにより、液が白濁、析出する前に製膜を行うことができる。塩素系溶剤では溶液の安定性に優れるため、実際にはアルコール添加から一日以内に流延を行うことが好ましいが、添加から流延までの時間としては5時間以内がより好ましく、30分以内が更に好ましく、更には10分以内が好ましい。また、流延中にインラインで添加することにより添加1分以内に流延が行えるため、インライン添加が最も好ましい。また、複数の溶媒を用いる場合は、アルコール類の添加を流延の一日以内に行う以外は特に限定されない。その添加順は特に限定されない。例えば、主溶媒中にセルロースアシレートを添加した後に、他の溶媒(例えばアルコールなど)を添加してもよいし、逆に他の溶媒を予めセルロースアシレートに湿らせた後の主溶媒を加えてもよく、不均一溶解の防止に有効である。セルロースアシレートの量は、この混合物中に5〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。液の安定性や粘度等を考慮すると、セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0028】
ただし、共流延法において外部層を構成する溶剤に限り、アルコールが多く含まれない場合には、アルコールを綿の膨潤時に他の溶剤と同時に添加しておくことも問題ない。その添加方法は特に限定されず、例えば、主溶媒中にセルロースアシレートを添加した後に、アルコールを添加してもよいし、逆にアルコールを予めセルロースアシレートに湿らせた後の主溶媒を加えてもよく、不均一溶解の防止に有効である。セルロースアシレートの量は、この混合物中に5〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0029】
膨潤工程の後にセルロースアシレートを溶解するには、冷却溶解法、高温溶解法のいずれか、あるいは両方を用いることが好ましい。冷却溶解法、高温溶解法に関する具体的な方法としては、発明協会公開技報2001−1745、24頁左段の15行目から25頁左段の9行目の(冷却溶解法)、(高温溶解法)に記載のものを挙げることができる。
【0030】
なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。冷却溶解方法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。以上の冷却溶解方法については、特開平9−95544号、同10−95854号、および同10−95854号の各公報に詳細に記載されている。
【0031】
上記で得られたドープのセルロースアシレートは場合により、更に溶解し易くするために低い濃度で溶解してから、しかる後に濃縮手段を用いて濃縮してもよい。具体的な方法としては、発明協会公開技報2001−1745、25頁左段の10行目から同28行目の(溶液濃縮)に記載がある。
【0032】
溶液は流延に先だって金網、紙やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくことが好ましい。具体的な方法としては、発明協会公開技報2001−1745、25頁左段の29行目から右段の33行目の(ろ過)に記載がある。
【0033】
セルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)、光学異方性コントロール剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開平2001−151901号公報などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては、例えば、特開平2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は、機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフイルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば、特開平2001−151902号公報などに記載されている。
具体的には、発明協会公開技報2001−1745、16頁左段の28行目から22頁右段の下から5行目までに記載のものを挙げることができる。
【0034】
次に、特に重要な添加剤である剥離剤について述べる。剥離剤としては水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である多塩基酸の部分エステル体、そのアルカリ金属塩およびそのアルカリ土類金属塩から選ばれる化合物であることが必要である。「部分エステル」とは多塩基酸の酸の一部がエステル化されたものを意味し、例えばクエン酸の場合、クエン酸モノエステル体およびクエン酸ジエステル体を表す。
本発明者は、剥離剤として種々の酸(例えば、シュウ酸、コハク酸、クエン酸等)を用いてきたが、これらの酸はアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を形成すると溶液中での析出が起こる。
【0035】
以下に、用いられる剥離剤の種類をそのpKaとともに示すが、使用可能な剥離剤はこれに限定されない。例えば、脂肪族多価カルボン酸[マロン酸モノエチル(2.65)およびモノメチル(2.65)、コハク酸モノプロピル(4.00)、グルタル酸モノメチル(4.13)、アジピン酸モノメチル(4.26)、ピメリン酸モノエチル(4.31)、アゼライン酸モノメチル(4.39)、フマル酸モノブチル(2.85)など]、オキシカルボン酸[酒石酸モノエチル(2.89)およびジエチル(2.82−2.99)、クエン酸モノエチル(2.87)、クエン酸メチルエチルエステル(2.87)など]、芳香族多価カルボン酸[フタル酸モノエチル(2.75)、イソフタル酸モノプロピル(3.50)、テレフタル酸モノブチル(3.54)など]、複素環式多価カルボン酸[2,6−ピリジンジカルボン酸モノエチル(2.09)など]、アミノ酸類[グルタミン酸モノエチル(2.18)など]を挙げることができる。
【0036】
また、上記の剥離剤に、スルホン酸、リン酸系素材を併用することにより剥離性の改良が期待できる。これらはその溶解性の観点から界面活性剤の形であることが好ましい。具体的には、特開昭61−243837号公報に記載された素材を好適に用いることができる。具体例としては、C1225O−P(=O)−(OK)2 、C1225OCH2 CH2 O−P(=O)−(OK)2 、(iso−C9 192 −C6 3 −O−(CH2 CH2 O)3 −(CH2 4 SO3 Naが挙げられる。
【0037】
酸は遊離酸として用いてもよく、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩として用いてもよい。アルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウムなどが例示でき、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウムなどが例示できる。好ましいアルカリ金属には、ナトリウムが含まれ、好ましいアルカリ土類金属には、カルシウム、マグネシウムが含まれる。但し、アルカリ金属の方が、アルカリ土類金属よりもより好ましい。これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属はそれぞれ単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、アルカリ金属とアルカリ土類金属とを併用してもよい。
【0038】
前記酸およびその金属塩の総含有量は、剥離性、透明性などを損なわない範囲、例えば、セルロースアシレート1g当たり、1×10-9〜3×10-5モル、好ましくは1×10-8〜2×10-5モル(例えば、5×10-7〜1.5×10-5モル)、さらに好ましくは1×10-7〜1×10-5モル(例えば、5×10-6〜8×10-6モル)程度の範囲から選択でき、通常、5×10-7〜5×10-6モル(例えば、6×10-7〜3×10-6モル)程度である。
【0039】
次に、酸中和剤について記載する。酸中和剤として用いられるものとしては、pKaが4.50以上のアミン化合物、または実質的に揮散性を持たず、塩基性基1個当たりの分子量が200以下のアミン化合物が特に有効でることが明らかになった。
【0040】
本発明で用いるアミン化合物について更に詳細に説明する。本発明で用いるアミン化合物はpKa4.50以上であるが、本発明の効果の点でpKaが4.50以上でかつ9.00以下が好ましく、さらに好ましくは5.00以上でかつ8.00以下である。最も好ましくはpKaが5.00以上かつ7.00以下のアミン化合物である。
【0041】
本発明で用いるアミン化合物は親油性の化合物が好ましく、炭素原子数の総和が8以上が好ましく、さらに好ましくは15以上である。
【0042】
本発明で用いるアミン化合物のうち、好ましいものは下記一般式(I)で表される3級アミンであり、親油性で、かつpKaが4.50以上の化合物である。
【0043】
【化1】
Figure 0003987344
【0044】
式中、R1 、R2 およびR3 は同一でも異なってもよく、水素原子、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、またはアミノ基を表す。R1 、R2 およびR3 のうちの少なくとも2個の基が互いに結合して5〜8員環を形成してもよい、またR1 とR2 が互いに共同して不飽和基となり、これとR3 が結合して5〜8員環を形成してもよい。ただし、R1 、R2 およびR3 が同時に水素原子であることはない。
【0045】
本発明でいう脂肪族基とは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、t−ヘキシル、t−オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ベンジル)、アルケニル基(例えばビニル、アリル、2−ペンテニル、シクロヘキセニル、ヘキセニル、ドデセニル、オクタデセニル)、アルキニル基(例えばフロピニル、ヘキサデシニル)を表し、これらの基は置換基で置換されていてもよい。本発明でいう芳香族基とは、ベンゼン単環、縮合多環のアリール基(例えばフェニル、ナフチル、アントラニル)を表す。これらの環には置換基を有してもよい。本発明でいうヘテロ環とは環構成原子として窒素原子、イオウ原子、酸素原子から選ばれる原子を少なくとも一つ含む5〜7員環状の基(例えばフリル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、プリニル、クロマニル、ピロリジル、モルホリニル)を表す。本発明でいうアミノ基とは単なるアミノ基であっても、置換基を有するN−置換アミノ基であってもよい。アミノ基の置換基としては脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、アシル基、スルホニル基、スルファモイル基およびカルバモイル基等がある。R1 、R2 およびR3 のうちの少くとも2個の基が互いに結合して5〜8員環(例えば、ピロリジン環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、ピペラジン環、ピペリジン環、モルホリン環、インドリン環、キヌクリジン環)を形成してもよい。R1 とR2 が互いに共同して不飽和基となり、これとR3 が結合して5〜8員環(例えばピリジン環、キノリン環、プテリジン環、フェナントロリン環)を形成してもよい。
【0046】
一般式(I)で表される親油性化合物のうち、より好ましい化合物はpKaが4.50以上でかつ9.00以下、さらに好ましくは5.00以上かつ8.00以下、最も好ましくはpKaが5.00以上でかつ7.00以下の化合物である。さらに一般式(I)で表される化合物のうち、さらに好ましいものは一般式(II)で表されるpKa4.50以上の親油性化合物である。本発明の一般式(II)で表されるアミン化合物において、最も好ましい化合物は分子量300以上の実質的に揮散性を有しないものである。
【0047】
【化2】
Figure 0003987344
【0048】
式中、R1 およびR2 は一般式(I)と同じ基を表す。R21〜R25は同一でも異なってもよく、それぞれ水素原子、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、脂肪族オキシ基、ヘテロ環オキシ基、芳香族オキシ基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、ヘテロ環チオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有してよいアミノ基、スルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、エステル基を表す。R1 とR2 、R1 とR25、R2 とR21またはR21〜R25のうちの互いにオルト位にある基が結合して、5〜8員環を形成してもよい。
【0049】
一般式(II)で表される化合物のうち、より好ましくはpKaが4.50以上でかつ9.00以下、さらに好ましくは5.00以上でかつ8.00以下、最も好ましくはpKaが5.00以上でかつ7.00以下の化合物である。
【0050】
好ましいアミン化合物の具体例としては特開平5−194789号公報の段落番号0022以降に示されているA−1〜A−73のうち、pKaが4.50以上でかつ9.00以下の値にはいるものが好ましい。但し、これによって本発明が制限されることはない。
【0051】
酸中和剤の添加量としては、溶液の安定性、フイルムの透明性などを損なわない範囲、例えば、セルロースアシレート1g当たり、1×10-9〜3×10-5モル、好ましくは1×10-8〜2×10-5モル(例えば、5×10-7〜1.5×10-5モル)、さらに好ましくは1×10-7〜1×10-5モル(例えば、5×10-6〜8×10-6モル)程度の範囲から選択でき、通常、5×10-7〜5×10-6モル(例えば、6×10-7〜3×10-6モル)程度である。
【0052】
上述の剥離剤、および酸中和剤は溶液中で徐々に結合し、析出を起こすことがある。また、剥離剤は溶液中に含まれるアルカリ土類金属と結合して単独でも徐々に析出することがある。
本発明者らは、剥離剤を流延前に添加する溶剤中に添加することで、この析出を防止できることを見いだした。すなわち、第一には、溶剤中にアルカリ土類金属がないため結合して塩を形成しない点、第二に流延前添加溶剤中にはアルコールが多く含まれるために剥離剤が良好に溶解する点、第三には酸中和剤と混合されてからの時間が短いために析出が十分進行しない点が挙げられる。
【0053】
セルロースアシレート溶液を用いたフイルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフイルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフイルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解タンク(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)をストックタンクで一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡したり最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフイルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。
【0054】
本発明では、得られたセルロースアシレート溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上にセルロースアシレート液を流延する。流延方法として、▲1▼ドープを加圧ダイから支持体上に均一に押し出す方法、▲2▼一旦支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、▲3▼或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、▲1▼の加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができ、支持体の上方設置される。
【0055】
溶剤の流延前添加の方法は特に規定されないが、流延前のドープの貯蔵タンクに直接添加して攪拌することで問題なく実施できる。また、インライン添加の方法も全く規定されないが、例えば、特開平6−134933号公報に記載の方法の一方の流延口から溶剤のみを吐出させることにより実現可能である。
流延前に添加する溶剤中に剥離剤を熔解することで、剥離剤の安定性、ドープ中での析出、ドープの経時による増粘を防止することが可能であり、できる限り後添加する溶剤中に剥離剤を添加することが好ましい。
【0056】
本発明では、得られたセルロースアシレート溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層あるいは2層以上の複数のセルロースアシレート液を共流延する。例えば、複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフイルムを作製してもよく、例えば特開平11−198285号公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってフイルム化する方法が挙げられ、特開平6−134933号公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフイルム流延方法でもよい。このような共流延を行なうことにより、前述の様に表面の乾燥における平滑化が進行するため面状の大幅な改良が期待できる。共流延の場合、各層の厚さは特に限定されないが、好ましくは外部層が内部層より薄いことが好ましい。その際の外部層の膜厚は、1〜50μmが好ましく、特に好ましくは1〜30μmである。ここで、外部層とは、2層の場合はバンド面(ドラム面)ではない面、3層以上の場合は完成したフイルムの両表面側の層を示す。内部層とは、2層の場合はバンド面(ドラム面)、3層以上の場合は外部層より内側に有る層を示す。
さらにセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施できる。
【0057】
本発明における、外部層、内部層を構成する溶液について記載する。単層流延の場合には外部層、内部層の区別はないが、共流延の場合には前記のように層を区別して考える。流延によって得られた未乾のフイルムは、金属支持体からの剥離が必要であり、実際には、未乾フイルムを冷却してゲル化させ、剥離することになる。本発明者の鋭意検討の結果、内部層にアルコール類を多量に添加することにより全体のゲル化が進行しやすくなり、未乾燥状態での搬送性が向上することが明らかとなった。しかしながらアルコール添加により液安定性が低下するため、アルコール添加から直ちに流延することにより、液が白濁、析出する前に製膜を行うことができる。塩素系溶剤では、溶液の安定性に優れるため、実際にはアルコール添加から一日以内に流延を行うことが好ましいが、添加から流延までの時間としては5時間以内がより好ましく、30分以内が更に好ましく、更には10分以内が好ましい。また、流延中にインラインで添加することにより、添加1分以内に流延が行えるため、インライン添加が最も好ましい。
【0058】
共流延の場合、アルコール添加量は内外層同量であっても問題はないが、内部層のみにアルコールを添加するか、内部層に多く添加することがフイルム全体のゲル化適性、面状の観点から好ましい。
【0059】
セルロースアシレートフイルムの製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、乾燥工程における乾燥温度は30〜250℃、特に40〜180℃が好ましく、特公平5−17844号公報に記載がある。更には、積極的に幅方向に延伸する方法もあり、本発明では、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、および同11−48271号の各公報に記載の方法を用いることができる。フイルムの延伸は、一軸延伸でもよく二軸延伸でもよい。フイルムの延伸倍率(元の長さに対する延伸による増加分の比率)は、10〜30%であることが好ましい。
【0060】
乾燥後のセルロースアシレートフイルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常5〜500μmの範囲であり、更に20〜250μmの範囲が好ましく、特に30〜180μmの範囲が最も好ましい。なお、光学用途としては30〜110μmの範囲が特に好ましい。フイルム厚さの調製は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
【0061】
ここで場合により、セルロースアシレートフイルムの表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフイルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。具体的には、発明協会公開技報2001−1745、32頁左段の16行目から32頁右段の42行目に記載がある。
【0062】
用途によっては、セルロースアシレートフイルムの少なくとも一層に帯電防止層を設けたり、偏光子と接着するための親水性バインダー層が設けられることが好ましい。具体的には、発明協会公開技報2001−1745、32頁右段の下から12行目から45頁左段の下から3行目に記載がある。
【0063】
セルロースアシレート溶液からなるセルロースアシレートフイルムは、様々な用途で用いることができる。具体的には、発明協会公開技報2001−1745、45頁右段の下から5行目以降に記載されている「14.用途」の項目を挙げることができる。
【0064】
【実施例】
各実施例において、セルロースアシレート、溶液およびフイルムの化学的性質および物理的性質は、以下のように測定および算出した。
【0065】
[実施例1]
(0)セルロースアシレートの置換度(%)
酢化度はケン化法により測定した。乾燥したセルロースアシレートを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシドとの混合溶媒(容量比4:1)に溶解した後、所定量の1N−水酸化ナトリウム水溶液を添加し、25℃で2時間ケン化した。フェノールフタレインを指示薬として添加し、1N−硫酸(濃度ファクター:F)で過剰の水酸化ナトリウムを滴定した。また、上記と同様の方法により、ブランクテストを行った。そして、下記式に従って、まず仮の酢化度を算出した。
仮の酢化度=(6.005×(B−A)×F)/W
式中、Aは試料の滴定に要した1N−硫酸量(ml)、Bはブランクテストに要した1N−硫酸量(ml)、Fは1N−硫酸のファクター、Wは試料質量を示す。
尚、複数のアシル基を含有する系では、そのpKaの差を使って、各アシル基の量を求めた。また、公知文献(T.Sei,K.Ishitani,R.Suzuki,K.Ikematsu Polymer Journal 17 1065(1985))に記載の方法によっても同様に求め、その値が正しいことを別途確認した。
さらに、これらにより求められた仮の酢化度、その他のアシル基の量からモル分子量を考慮して置換度に換算した。
【0066】
(1)セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)
絶乾したセルロースアシレート約0.2gを精秤し、メチレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)の混合溶剤100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式により求めた。
Figure 0003987344
【0067】
(2)溶液の安定性
得られた溶液またはスラリーの状態を常温(23℃)で20日間静置保存したまま観察し、以下のA、B、C、Dの4段階に評価した。製造に於ける安定性評価であることを考慮し、アルコールを添加していない溶液は添加をしないものの安定性を評価した。
A:透明性と液均一性を示す。
B:若干の溶け残りがある、または少し白濁が見られる。
C:明らかな溶け残りがある、または溶液がゲル化している。
D:液は膨潤・溶解が見られず不透明性で不均一な溶液状態である。
【0068】
(3)溶液の粘度
作製したセルロースアシレート溶液の0℃および50℃における見掛け粘度は、Cone−plate型のセンサを用い、Rheometer(TA Instruments社製)にて測定した。
【0069】
(4)フイルム面状
フイルムを目視で観察し、その面状を以下の如く評価した。
A:フイルム表面は平滑であり、きわめて面状が良好である。
B:フイルム表面は平滑であるが、まれに凹凸が認められる。
C:フイルム表面は平滑であるが、弱い凹凸が比較的多数見られる。
D:フイルム全面に弱い凹凸が認められる。
E:フイルムに強い凹凸が見られ、異物が見られる。
【0070】
(5)フイルムのヘイズ
ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
【0071】
(6)フイルムの剥げ残り
得られたフイルムを金属支持体から剥ぎ取る際の支持体表面を目視で観察し、セルロースアシレートフイルムの剥げ残りを以下の如く評価した。
A:金属支持体に剥げ残りは認められない。
B:金属支持体に剥げ残りがわずかに認められた。
C:金属支持体に剥げ残りがかなり認められた。
D:金属支持体に剥げ残りが多量認められた。
【0072】
(7)フイルムのブツ(ブツと略称)
得られたフイルムを目視で観察し、その表面上のブツを以下の如く評価した。
A:フイルム表面にブツは認められなかった。
B:フイルム表面にブツがわずかに認められた。
C:フイルム表面にかなりのブツが認められた。
D:フイルム表面に凹凸が見られ、ブツが多数認められた。
【0073】
(1−1)セルロースアシレート溶液の作製
下記の2種の溶解方法にてセルロースアシレート溶液を作製した。各本発明および比較例の詳細な溶剤組成については、第1表に記載した。なお、可塑剤A(ジトリメチロールプロパンテトラアセテート)、可塑剤B(トリフェニルフォスフェート)、UV剤a(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン)、UV剤b(2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール)、UV剤c(2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール)、微粒子(二酸化ケイ素(粒径20nm)、モース硬度:約7)を、それぞれセルロースアシレートの6質量%、6質量%、0.5質量%、0.5質量%、0.5質量%、0.5質量%添加した。また、剥離剤として、クエン酸モノメチルエステルをセルロースアシレートに対して質量で2000ppmの割合で添加した(但し、重層の場合には、金属支持体と接する外部層にのみクエン酸モノメチルエステルを添加した)。尚、本発明における共流延の内部層、外部層を形成する液としてはアルコールを含まないでセルロースアシレート溶液を作製し、直前または第1表に示す時間となるようにアルコールを添加した。詳細は第1表に合わせて示した。
【0074】
(1−1a)冷却溶解(第1表に「冷却」と記載)
溶剤中に、よく攪拌しつつ第1表記載のセルロースアシレートを徐々に添加し、室温(25℃)にて3時間放置し膨潤させた。得られた膨潤混合物をゆっくり撹拌しながら、−8℃/分で−30℃まで冷却、その後第1表記載の温度まで冷却し6時間経過した後、+8℃/分で昇温し内容物のゾル化がある程度進んだ段階で、内容物の撹拌を開始した。50℃まで加温しドープを得た。
【0075】
(1−1b)高圧高温溶解(第1表に「高温」と記載)
溶剤中に、よく攪拌しつつ第1表記載のセルロースアシレートを徐々に添加し、室温(25℃)にて3時間放置し膨潤させた。得られた膨潤混合物を、二重構造のステンレス製密閉容器に入れた。容器の外側のジャケットに高圧水蒸気を通すことで+8℃/分で加温し1Mpa下、第1表に記載の温度で5分間保持した。この後外側のジャケットに50℃の水を通し−8℃/分で50℃まで冷却し、ドープを得た。
【0076】
(1−2)セルロースアシレート溶液の濾過
次に、得られたドープを50℃にて、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で濾過し、さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。
【0077】
(1−3)(1−2)の溶液を特開昭56−162617号公報に記載の流延機を用いて流延し、120℃の環境下で30分乾燥して溶剤を蒸発させセルロースアシレートフイルムを得た。層構成は、本発明においては二層または三層であり、二層ではバンド面から内部層/外部層の構成、三層では外部層/内部層/外部層のサンドイッチ型構成であった。詳細は第1表に示した。
また、一部の実施例については、インラインでアルコールを添加し、流延直前で溶液を作製した。この系では、アルコール添加から1分以内に流延が行われていることになる(表中には「インライン」と記載)なお、同時調液とはアルコールを含めた全容剤を同時に仕込むことであり、バッチとはアルコール以外の溶剤で仕込みを行った後に、アルコールのみを後添加することを意味している。
【0078】
【表1】
Figure 0003987344
【0079】
(1−4)結果
得られたセルロースアシレートの溶液およびフイルムを上述の項目に従って評価した。評価結果を第2表に示す。本発明1〜5で作製したセルロースアシレート溶液およびフイルムは、フイルムの機械物性、光学物性において特に問題は認められなかった。一方、比較例1、2は液の不溶化が起こっており、溶液の安定性、フイルムの面状、フイルムブツ、ヘイズに問題が認められた。比較例3ではさらに剥離性が不良であり、剥げ残りが認められた。比較例4では液の安定性は問題なかったが、ゲル化適性が不足であり、高速流延不能であった。
【0080】
【表2】
Figure 0003987344
【0081】
[実施例2]
実施例1のセルロースアシレート溶液の作製において、第3表のように、使用するセルロースアシレート、溶剤組成、剥離剤、中和剤等を用いた以外は同様にしてフイルムを作製し、評価を行った。得られたセルロースアシレートの溶液およびフイルムを上述の項目に従って評価した。
【0082】
【表3】
Figure 0003987344
【0083】
【表4】
Figure 0003987344
【0084】
評価結果を第4表に示す。本発明1〜7で作製したセルロースアシレート溶液およびフイルムは、フイルムの機械物性、光学物性において特に問題は認められなかった。一方、比較例1、2は液の不溶化が起こっており、溶液の安定性、フイルムの面状、フイルムブツ、ヘイズに問題が認められた。比較例3ではさらに剥離性が不良であり、剥げ残りが認められた。比較例4では液の安定性は問題なかったが、ゲル化適性が不足であり、高速流延不能であった。
【0085】
【表5】
Figure 0003987344
【0086】
[実施例3]
実施例1のセルロースアシレート溶液の作製において、第5表のように、使用するセルロースアシレート、溶剤組成、剥離剤等を用いた以外は同様にしてフイルムを作製し、評価を行った。尚、本発明における共流延の内部層を形成する液としてはアルコールを含まないでセルロースアシレート溶液を作製し、直前または第5表に示す時間となるようにアルコールを添加した。外部層を形成する液も同様にアルコールを含まない形で溶液を作製しているが、一部の液は同時調整を行った。詳細は第5表に合わせて示した。得られたセルロースアシレートの溶液およびフイルムを上述の項目に従って評価した。
【0087】
【表6】
Figure 0003987344
【0088】
【表7】
Figure 0003987344
【0089】
【表8】
Figure 0003987344
【0090】
本発明1〜6で作製したセルロースアシレート溶液およびフイルムは、フイルムの機械物性、光学物性において特に問題は認められなかった。一方、比較例1は溶液の安定性、フイルム面状に問題が認められた。比較例2では溶液の安定性は良好であるものの、剥離性が不良であり得られたフイルムの面状は不良であった。比較例3、4では内部層の溶液安定性が不良のためフイルムのブツが不良であった。比較例4は更に剥離性も不良であり面状は極めて悪いものであった。
【0091】
【表9】
Figure 0003987344
【0092】
また、これらのフイルムを、製膜工程中の乾燥工程中にオンラインで、あるいはその後オフラインで130℃にて10%〜30%MD、さらに10%〜30%TD延伸延伸した。これらは、延伸倍率に比例し40nm〜160nmにレターデーションを増加させることができた。
このようにして得たセルロースアシレートフイルムを、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置に用いたところ、良好な性能が得られた。さらに、特開昭54−016575号公報に記載の偏光板として用いたところ、良好な性能が得られた。
【0093】
【発明の効果】
セルロースアシレートを実質的に塩素系溶剤から構成される単独または複数の溶剤に溶解後、流延製膜することを特徴とするセルロースアシレートフイルムの製造方法であって、該セルロースアシレート溶液が少なくとも5乃至40質量%のアルコールを含有し、該アルコール添加を流延から一日以内に行うことを特徴とするセルロースアシレートフイルムの製造方法により、金属支持体からの剥離性および高速製造適性に優れたセルロースアシレート溶液を提供し、かつ面状の優れたセルロースアシレートフイルムの製造方法を提供できた。

Claims (15)

  1. 少なくとも1つ以上のセルロースアシレート溶液を調製後、流延製膜するセルロースアシレートフイルムの製造方法であって、セルロースアシレート溶液が実質的に塩素系溶剤から構成される溶剤にセルロースアシレートを溶解したものであり、流延されるセルロースアシレート溶液のうち少なくとも1つ以上の溶液が塩素系溶剤の他に少なくともアルコールを含有し、少なくとも1つのセルロースアシレート溶液へのアルコールの添加が流延前の24時間以内に行なわれ、アルコールの添加量が、その溶液の全溶剤に対して5乃至40質量%の範囲にあることを特徴とするセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  2. アルコール以外の溶剤で溶液を調製してからアルコールを添加することを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  3. アルコールが、炭素原子数6以下の脂肪族系アルコールであることを特徴とする請求項1もしくは2に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  4. アルコールの添加をインライン添加で行うことを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  5. 溶液を構成するアルコールが複数のアルコールからなり流延前の24時間以内に添加されるアルコールの炭素数の方が、調液時に添加されるアルコールの炭素数よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれかの項に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  6. セルロースアシレート溶液の溶剤が実質的にメチレンクロリドまたは/およびクロロホルムからなることを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれかの項に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  7. 流延が、共流延法により行われ、内部層の溶液及び外部層の溶液の両方にアルコールを添加することを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれかの項に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  8. 流延が、共流延法により行われ、内部層のみにアルコールを流延前添加するか、または外部層に対して内部層へのアルコール添加量が1.05倍乃至6.0倍であることを特徴とする請求項1乃至7のうちのいずれかの項に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  9. セルロースアシレートフイルムが二層以上の多層構造を有し、該セルロースアシレートフイルムの少なくとも一方の側の外部層の乾燥膜厚が1〜50μmの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至8のうちのいずれかの項に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  10. 流延が共流延法により行われ、各層を同時に流延製膜することを特徴とする請求項1乃至9のうちのいずれかの項に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  11. セルロースアシレート溶液が、可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子粉体、離型剤、中和剤、劣化防止剤および光学異方性コントロール剤から選択される少なくとも一つの添加剤を含有する請求項1乃至10のうちのいずれかの項に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  12. 酸中和剤が、pKaが4.50以上のアミン化合物、または、実質的に揮散性を持たず、塩基性基1個当たりの分子量が200以下のアミン化合物であることを特徴とする請求項11に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  13. 金属支持体と接する外部層のみに剥離剤を含有することを特徴とする請求項1乃至12のうちのいずれかの項に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  14. 該セルロースアシレートのアシル置換度が2.75乃至2.95の範囲にあり、6位アシル置換度が0.92以上であることを特徴とする請求項1乃至13のうちのいずれかの項に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  15. セルロースアシレート溶液へアルコールのみを添加することを特徴 とする請求項1乃至14のうちのいずれかの項に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
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