以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
図1〜図12は本発明の第1実施例を示すものであり、図1はスクータ型自動二輪車の側面図、図2は図1の2−2線に沿うパワーユニットの断面図、図3はスタンドが第1の起立位置にある状態での図2の3ー3線矢視図、図4は図3の4−4線断面図、図5は図3の5−5線断面図、図6は支持ケース内を図3と同一方向から見た側面図、図7は操作レバー付近の側面図、図8はスタンドが格納位置にある状態での図6に対応した側面図、図9はスタンドが第2の起立位置に回動した状態での図1に対応した側面図、図10はスタンドが格納位置にある状態で伝動ケース内のキック始動装置、後輪ロック機構およびキック始動不能手段を見た側面図、図11は図7の11矢視図、図12はスタンドが起立位置にある状態での図10に対応した図である。
先ず図1において、スクータ型自動二輪車の車体フレーム15は、前端にヘッドパイプ16が固着されたメインフレームパイプ17と、該メインフレームパイプ17の後端に直角に固着されるクロスパイプ18と、クロスパイプ18の両端部に前端がそれぞれ連設される左右一対のリヤフレームパイプ19…とを備える。
メインフレームパイプ17は、ヘッドパイプ16から後ろ下がりに傾斜したダウンフレーム部17aと、ダウンフレーム部17aの後端からほぼ水平にして後方に延びるロアフレーム部17bとが一体に連設されて成る。クロスパイプ18は車体フレーム15の左右方向に延びるものであり、該クロスパイプ18の軸方中央部がメインフレームパイプ17の後端部に直角に固着される。
前記ヘッドパイプ16には前輪WFを跨ぐフロントフォーク20が操向可能に支承され、フロントフォーク20の上端には操向ハンドル21が連結される。
車体フレーム15における両リヤフレームパイプ19…の前部には、後輪WRの前方側に配置されるエンジンEと、後輪WRの左側方に配置される伝動装置Mとから成るユニットスイング式のパワーユニットPが、上下に揺動することを可能としてリンク22を介して上下揺動可能に支承され、後輪WRはパワーユニットPの後部に軸支される。
図2において、単気筒の空冷4サイクルエンジンである前記エンジンEは、左右に2分割された左右クランクケース半体23L,23Rが結合されて成るクランクケース23と、該クランクケース23に結合されるシリンダブロック24と、該シリンダブロック24に結合されるシリンダヘッド25と、該シリンダヘッド25に結合されるヘッドカバー26とを備え、前上がりにわずかに傾斜してシリンダブロック24に設けられるシリンダボア27にピストン28が摺動可能に嵌合される。前記クランクケース23には、車体フレーム15の幅方向に延びるクランク軸29が回転自在に支承されており、該クランク軸29に前記ピストン28がコネクティングロッド30およびクランクピン31を介して連接される。
前記伝動装置Mは、Vベルト式の無段変速機32と、該無段変速機32の出力を減速して後輪WRの車軸33に伝達する減速ギヤ列34とから成り、前記クランクケース23に連設されて後輪WRの左側方に延びる伝動ケース35内に収納される。
前記伝動ケース35は、クランクケース23の左クランクケース半体23Lに一体に連なって後方に延びる内側ケース38と、該内側ケース38を外側から覆うカバー39と、内側ケース38の後部に結合されるギヤケース40とから成り、内側ケース38およびカバー39間には無段変速機32を収容する変速機室41が形成され、内側ケース38およびギヤケース40間には減速ギヤ列34を収容するギヤ室42が形成される。
無段変速機32は、クランクケース23から変速機室41内に突入するクランク軸29の端部に装着されるドライブプーリ43と、クランク軸29と平行な軸線を有して内側ケース38およびギヤケース40で回転自在に支承される出力軸44に装着されるドリブンプーリ45と、ドライブプーリ43からドリブンプーリ45に動力を伝達する無端状のVベルト46とで構成される。
ドライブプーリ43は、クランク軸29に固定された固定プーリ半体47と、固定プーリ半体47に対して接近・離間可能な可動プーリ半体48とを備え、可動プーリ半体48は、クランク軸29に固定されたランププレート49および可動プーリ半体48間に配置されるウエイト50に作用する遠心力によって軸方向に駆動される。
またドリブンプーリ45は、相対回転を可能として出力軸44を同軸に囲繞する内筒51と、軸線まわりの相対回動ならびに軸線方向の相対移動を可能として内筒51を摺動可能に嵌合せしめる外筒52と、内筒51に固定される固定プーリ半体53と、該固定プーリ半体53に対向して外筒52に固定される可動プーリ半体54と、該可動プーリ半体54および固定プーリ半体53間の相対回転位相差に応じて両プーリ半体53,54間に軸方向の分力を作用せしめるようにして内筒51および外筒52間に設けられるトルクカム機構55と、可動プーリ半体54を固定プーリ半体53側に向けて弾発付勢するコイルスプリング56とを備え、固定プーリ半体53および可動プーリ半体54間にVベルト46が巻き掛けられる。
ドリブンプーリ45の内筒51および出力軸44間には、エンジン回転数が設定回転数を超えるのに伴って動力伝達状態となる遠心クラッチ57が設けられ、この遠心クラッチ57の一部を構成して前記内筒51に同軸にかつ相対回転不能に結合されるドライブプレート58と、前記可動プーリ半体54との間に、前記外筒52を囲繞するコイルスプリング56が縮設される。
而してドリブンプーリ45における固定プーリ半体53および可動プーリ半体54間の間隔は、前記トルクカム機構55によって生じる軸方向の力と、コイルスプリング56によって生じる軸方向の弾性力と、固定プーリ半体53および可動プーリ半体54間の間隔をあける方向に作用するVベルト46からの力とのバランスにより決定され、ドライブプーリ43において可動プーリ半体48を固定プーリ半体47に近接させることによりVベルト46のドライブプーリ43への巻き掛け半径が大きくなると、Vベルト46のドリブンプーリ45への巻き掛け半径が小さくなる。
後輪WRの車軸33は、内側ケース38およびギヤケース40で回転自在に支承されており、前記出力軸44および前記車軸33間に設けられる減速ギヤ列34がギヤ室42に収納される。
再び図1において、パワーユニットPにおける伝動ケース35の後部と、左右一対のリヤフレームパイプ19…のうち左側のリヤフレームパイプ19との間にはリヤクッションユニット59が設けられる。またエンジンEにおけるシリンダヘッド25の下部から排気ガスを導く排気管60がエンジンEから後輪WRの右側方側に延出されており、この排気管60は、後輪WRの右側方に配置される排気マフラー61に接続される。
エンジンEにおけるシリンダヘッド25の上部には吸気管62を介して気化器63が接続されており、この気化器63は、該気化器63よりも後方で後輪WRの左側方に配置されるエアクリーナ64に接続される。
両リヤフレームパイプ19…の前部間には、ヘルメット等を収納可能な収納ボックス65が前記エンジンEの上方に配置されるようにして支持され、収納ボックス65を上方から覆う乗員用シート66が、開閉可能として前記収納ボックス65の前側上部に支持される。
図3〜図5を併せて参照して、前記伝動ケース35の前方側下部には、支持ケース70Aが連設されており、この支持ケース70Aは、椀状に形成された左右一対のケース半体71,72が相互に対向して複数のボルト73…で結合されて成り、ケース半体71は、前記伝動ケース35におけるカバー39に一体に形成され、ケース半体72は前記ケース半体71を外側から覆うようにしてケース半体71に締結される。
而して前記支持ケース70Aと、前記パワーユニットPの右側に設けられた図示しないブラケットとに、スタンド75が回動可能に取付けられるものであり、該スタンド75は、後輪WRを接地させた姿勢での駐車状態を得るための第1の起立位置(図1および図3で示す位置)ならびに駐車状態を解除するための格納位置(図8で示す位置)間で回動することを可能とするとともに、後輪WRを地面からわずかに浮かせた姿勢での駐車状態を得るための第2の起立位置(図9で示す位置)まで第1の起立位置から前記格納位置とは反対側にさらに回動することが可能である。
一方、ヘッドパイプ16の前方で車体フレーム15には、乗員用シート66側から乗員が上下に手動操作することを可能として操作子である操作レバー76が支持されており、該操作レバー76の手動操作に応じて連動手段77が前記スタンド75を回動させる。
スタンド75は、左右一対の脚部79…と、それらの脚部79…の中間部間を連結する連結パイプ80とから成るものであり、両脚部79…のうち左側の脚部79の一端部に固定されたスタンド軸82が支持ケース70Aで回動可能に支承され、右側の脚部79の一端部に前記スタンド軸82と同軸に固定された軸が前記パワーユニットPの右側に設けられたブラケットで回動可能に支承される。また前記左側の脚部79の他端部には、スタンド75を第1の起立位置から第2の起立位置に回動せしめる際に足をかけるための足掛け部81が突設される。
図6を併せて参照して、前記連動手段77は、前記支持ケース70Aに取付けられるものであり、前記スタンド75が備える左側の脚部79の長手方向中間部に植設された第1連結ピン85に一端が連結されるコイル状のスタンドばね86と、該スタンドばね86の他端が連結される第2連結ピン87が一端側に植設されるとともに前記支持ケース70Aに他端部が支承されるばね支持部材88と、スタンド75を第1の起立位置から前記格納位置側に回動する側への前記操作レバー76の手動操作力を前記ばね支持部材88側に伝達する格納操作力伝達手段89と、前記スタンド75を前記格納位置から第1の起立位置側に回動する側への前記操作レバー76の手動操作力を前記ばね支持部材88側に伝達する起立操作力伝達手段90と、前記支持ケース70Aに回動可能に支承されるとともに前記格納操作力伝達手段89が連結される第1回動レバー91と、前記支持ケース70Aに回動可能に支承されるとともに前記起立操作力伝達手段90が連結される第2回動レバー92と、前記ばね支持部材88の他端部および前記第1回動レバー91間に設けられる伝達機構93とを備える。
ばね支持部材88は、スタンド軸82の上部を囲むようにした円弧状に形成されて前記支持ケース70Aの左側方に配置される。一方、支持ケース70Aには、前記スタンド軸82と平行な軸線を有してスタンド軸82の後方斜め下に配置される第1回動軸94が回動可能に支承されており、この第1回動軸94の前記支持ケース70Aから左側方への突出端部にばね支持部材88の他端部が固定される。
また前記支持ケース70Aには、スタンド軸82および第1回動軸94と平行な軸線を有して第1回動軸94の後方斜め上に配置される第2回動軸95が回動可能に支承される。第1回動レバー91および第2回動レバー92は一直線状に延びて一体に連なるものであり、支持ケース70Aの左側方に配置される。而して前記支持ケース70Aから左側方への第2回動軸95の突出端部に第1および第2回動レバー91,92の連設部が固定されている。
前記伝達機構93は、第1および第2回動軸94,95間に設けられて支持ケース70Aに収納されるものであり、第2回動軸95に固定された駆動セクタギヤ96と、該駆動セクタギヤ96に噛合して第1回動軸94に固定される被動セクタギヤ97とから成る。而して第1および第2回動レバー91,92とともに第2回動軸95が回動すると、その回動力は、前記伝達機構93を介して第1回動軸94およびばね支持部材88に伝達されることになる。
図7において、操作レバー76の基端部は、ヘッドパイプ16の前方で車体フレーム15に回動可能に支承されたドラム100に固定される。また格納操作力伝達手段89は、アウターケーブル101内にインナーケーブル102が移動自在に挿通されて成るケーブルであり、アウターケーブル101の一端は前記ドラム100の下方で車体フレーム15に固定されたケーブル支持板103に固定され、このアウターケーブル101の一端から突出したインナーケーブル102の一端部は、操作レバー76を図7の鎖線で示す起立操作位置から図7の実線で示す格納操作位置まで上方に回動操作するのに応じて前記ドラム100への巻きかけ量が多くなるようにしてドラム100に巻きかけ、連結される。また起立操作力伝達手段90も、アウターケーブル104内にインナーケーブル105が移動自在に挿通されて成るケーブルであり、アウターケーブル104の一端はケーブル支持板103に固定され、このアウターケーブル104の一端から突出したインナーケーブル105の一端部は、操作レバー76を図7の実線で示す格納操作位置から図7の鎖線で示す起立操作位置まで下方に回動操作するのに応じて前記ドラム100への巻きかけ量が多くなるようにしてドラム100に巻きかけ、連結される。
一方、格納操作力伝達手段89のアウターケーブル101の他端は、支持ケース70Aに固定されたケーブル支持板106に固定されており、このアウターケーブル101の他端から突出したインナーケーブル102の他端が第1回動レバー91に連結される。また起立操作力伝達手段90のアウターケーブル104の他端は支持ケース70Aに固定されたケーブル支持板99に固定されており、このアウターケーブル104の他端から突出したインナーケーブル105の他端が第2回動レバー92に連結される。
したがって操作レバー76を格納操作位置から起立操作位置まで下方に回動操作するのに応じて第2回動レバー92が図3および図6の時計方向に回動し、第2回動軸95から伝達機構93を介して第1回動軸94およびばね支持部材88に反時計方向への回動力が伝達される。また操作レバー76を起立操作位置から格納操作位置まで上方に回動操作するのに応じて第1回動レバー91が図3および図6の反時計方向に回動し、第2回動軸95から伝達機構93を介して第1回動軸94およびばね支持部材88に時計方向への回動力が伝達される。
ところで、操作レバー76を起立操作位置側に回動したときには、図6で示すように、ばね支持部材88の第2連結ピン87は、スタンド軸82の中心および第1連結ピン85の中心を結ぶ直線LAよりも前方側の位置にあり、この状態でスタンドばね86は、スタンド75を第1の起立位置側に付勢するばね力を発揮する。また操作レバー76を格納操作位置側に回動したときには、図8で示すように、ばね支持部材88の第2連結ピン87は、スタンド軸82の中心および第1連結ピン85の中心を結ぶ直線LBよりも上方側の位置にあり、この状態でスタンドばね86は、スタンド75を格納位置側に付勢するばね力を発揮する。
前記支持ケース70A内でスタンド軸82には大径部82aが設けられており、この大径部82aには、アウターリング108を有する一方向クラッチ109が装着される。この一方向クラッチ109は、スタンド75が第1の起立位置にある状態で前記アウターリング108の回転が阻止されることによってスタンド軸82およびスタンド75の格納位置側への回動を阻止するものの、第1の起立位置から第2の起立位置側へのスタンド軸82およびスタンド75の回動は許容するものであり、前記アウターリング108の回転を阻止する状態および回転を許容する状態の切換はクラッチ作動制御手段110で制御される。
前記クラッチ作動制御手段110は、前記アウターリング108の外周に等間隔に設けられる複数の係止歯部111,111…と、それらの係止歯部111…の1つに選択的に係合する位置ならびに係合を解除する位置間での作動を可能とした係合爪112とを備えるものであり、係合爪112は、支持ケース70Aのケース半体71に支軸113を介して回動可能に支承される。
第2回動軸95はロストモーション機構116を介して前記係合爪112に連結されるものであり、該ロストモーション機構116は、被動セクタギヤ97に隣接した位置で第2回動軸95に相対回動可能に装着される回動部材114と、該回動部材114および前記係合爪112間を連結する連結リンク115と、第2回動軸95を囲繞して第2回動軸95および回動部材114に両端が係合されるねじりばね117とで構成される。
また前記被動セクタギヤ97には、回動部材114側に突出するピン118が植設されており、回動部材114には、第2回動軸95の軸線まわりに図6の時計方向から前記ピン118に当接する当接部114aが設けられる。
而して操作レバー76を起立操作位置側に回動し、第1回動軸94が図3および図6の時計方向に回動したときには、図6で示すように、第2回動軸95および被動セクタギヤ97が図6の反時計方向に回動し、第2回動軸95の回動がねじりばね117を介して回動部材114に伝達され、係合爪112が一方向クラッチ109が備えるアウターリング108の外周の係止歯部111…の1つに係合してアウターリング108の回転が阻止される。また操作レバー76を格納位置側に回動し、第2回動軸95が図8の反時計方向に回動したときには、被動セクタギヤ97のピン108が回動部材114の当接部114に当接し、回動部材114を図8の反時計方向に回動せしめることにより、係合爪112が前記アウターリング108の外周の係止歯部111…の1つとの係合を解除し、アウターリング108の回転が許容されることになる。
前記一方向クラッチ109は、第1の起立位置でアウターリング108の回転が阻止された状態では、第1の起立位置から格納位置側へのスタンド軸82の回動を阻止するのであるが、第1の起立位置から格納位置とは反対側への回動は許容するものであり、第1の起立位置にあるスタンド75の足掛け部81に足をかけた状態で車体を後方側斜め上方に向けた力を加えることにより、図9で示すように、スタンド75は第2の起立位置まで回動し、この状態では後輪WRが地面からわずかに浮いた状態となる。
図10において、伝動ケース35内には、後輪WRに連動、連結される回転部材123に係合して前記後輪WRの回転を阻止するロック状態ならびに前記回転部材123との係合を解除するロック解除状態を切換可能な係合部材124とを有する後輪ロック機構125が収納される。
前記回転部材123は、遠心クラッチ57およびカバー39間に配置されるものであり、減速ギヤ列34を介して後輪WRの車軸33に連動、連結されている出力軸44に固定され、この回転部材123の外周に、前記係合部材124を択一的に係合させ得る複数の係止歯部126…が設けられる。また係合部材124は、前記出力軸44と平行な軸線を有する支軸127を介して前記カバー39に回動可能に支承される。
また前記カバー39には、出力軸44および支軸127と平行な軸線を有する第3回動軸128が回動可能に支承されており、この第3回動軸128に第3回動レバー129の中間部が固定される。
第3回動軸128は、ロストモーション機構130を介して前記係合部材124に連結されるものであり、該ロストモーション機構130は、第3回動軸128に相対回動可能に装着される回動部材131と、該回動部材131および前記係合部材124間を連結する連結リンク132と、第3回動軸128を囲繞して第3回動軸128および回動部材131に両端が係合されるねじりばね133とで構成される。
一方、第3回動レバー129の一端には連動ケーブル120が連結される。この連動ケーブル120は、図11で示すように、アウターケーブル121にインナーケーブル122が移動自在に挿通されて成り、アウターケーブル121の一端は車体フレームに固定されたケーブル支持板103に固定され、このアウターケーブル121の一端から突出したインナーケーブル122の一端部が、起立操作力伝達手段90におけるインナーケーブル105と同一側からドラム100に巻きかけ、連結される。すなわち前記インナーケーブル122は、操作レバーを格納操作位置から起立操作位置まで下方に回動操作するのに応じて前記ドラム100への巻きかけ量が多くなるようにしてドラム100に巻きかけ、連結される。
前記連動ケーブル120におけるアウターケーブル121の他端は伝動ケース35に固定され、アウターケーブル121の他端から突出して伝動ケース35内に導入されたインナーケーブル122の他端が第3回動レバー129の一端に連結される。
而して、操作レバー76を起立位置側に回動したときには、図12で示すように、第3回動レバー129が反時計方向に回動し、第3回動軸128の回動がねじりばね133を介して回動部材131に伝達され、係合部材124が回転部材123の外周の係止歯部126…の1つに係合して回転部材123すなわち後輪WRの回転が阻止される。また操作レバー76を格納位置側に回動したときには、図10で示すように、第3回動軸129が時計方向に回動し、係合部材124が回転部材123の外周の係止歯部126…の1つとの係合を解除し、回転部材123すなわち後輪WRの回転が許容されることになる。
ところで、このスクータ型自動二輪車はキック始動装置135が装備されるものであり、このキック始動装置135は、伝動ケース35のカバー39に回転可能に支承されるキック軸136と、前記カバー39から突出した前記キック軸136の端部に固定されるキックペダル137と、キック軸136およびカバー39間に設けられるばね138と、キック軸136の内端に固定されるウォームホイル139と、該ウォームホイル139に噛合するとともに前記キック軸136と平行な軸線方向に移動可能なウォームギヤ140と、該ウォームギヤ140に固定される連結部材141と、該連結部材141に対向してクランク軸26に固定される被係合部材142とを備え、キックペダル137の踏み込み操作によって連結部材141が被係合部材142に係合する位置まで前進して回転することでクランク軸26に始動用の回転動力が伝達されるものである。
而して前記キック始動装置135によるエンジンEの始動は、前記後輪ロック機構125のロック解除状態ではキック始動不能手段144によって不能とされるものであり、このロック始動不能手段144は前記後輪ロック機構125に連動、連結される。
前記ロック始動不能手段144は、前記連結部材141に設けられた係止溝143に係合して連結部材141の回転を阻止する状態ならびに係止溝143との係合を解除して連結部材141の回転を許容する状態を切換可能としてカバー39に軸146を介して回動可能に支承される係合レバー部材145と、該係合レバー部材145を係止溝143に係合する方向のばね力を発揮して係合レバー部材145およびカバー39間に設けられるねじりばね147と、係合レバー部材145の回動位置を規制すべく該係合レバー部材145および第3回動レバー129の他端間を連結する連結ロッド148とを備える。
このようなロック始動不能手段144によれば、操作レバー76を起立位置側に回動したときには、図12で示すように、第3回動レバー129が反時計方向に回動するのに応じて係合レバー部材145は係止溝143との係合を解除する位置に回動し、キック始動装置135によるエンジンEの始動が可能となる。また操作レバー76を格納位置側に回動したときには、図10で示すように、第3回動軸129が時計方向に回動するのに応じて係合レバー部材145が係止溝143に係合する位置に回動し、キック始動装置135によるエンジンEの始動が不能となる。
次にこの第1実施例の作用について説明すると、手動操作可能な操作レバー76を起立位置側に回動操作すると、連動手段77によってスタンド75が格納位置から第1の起立位置に回動するのであるが、この連動手段77は、パワーユニットPに取付けられる支持ケース70Aで回動可能に支承されるスタンド75に一端が連結されるコイル状のスタンドばね86と、該スタンドばね86の他端が連結される第2連結ピン87を一端側に有するとともに前記操作レバー76の手動操作に応じて第2連結ピン87の位置を変化させることを可能として前記操作レバー76に連動、連結されるばね支持部材88とを有するものであり、ばね支持部材88の他端部が前記支持ケース70Aで回動可能に支承されており、操作レバー76の起立位置側への操作に応じて定まる第2連結ピン87の位置は前記スタンドばね86が前記スタンド75を前記起立位置側に付勢する状態となるように設定されている。
したがってスタンドばね86のばね力を利用してスタンド75を格納位置から起立位置に回動することが可能であり、第2連結ピン87の位置を変化させるようにばね支持部材88を作動せしめるための操作力は小さくてすむので、操作荷重を小さく抑えてスタンド75を起立位置側に回動することができる。
また連動手段77は、スタンド75を前記格納位置から前記起立位置側に回動する側への前記操作レバー76の手動操作力を前記ばね支持部材88側に伝達する起立操作力伝達手段90と、スタンド75を前記起立位置から前記格納位置側に回動する側への前記操作レバー76の手動操作力を前記ばね支持部材88側に伝達する格納操作力伝達手段89とを備えており、操作レバー76の格納位置側への操作に応じて定まる第2連結ピン87の位置は前記スタンドばね86が前記スタンド75を前記格納位置側に付勢する状態となるように設定されている。
したがって起立操作力伝達手段90および格納操作力伝達手段89を追加するだけの簡単な構成で、操作荷重を小さく抑えつつ、操作レバー76の手動操作に応じてスタンド75を格納位置から起立位置側に回動することができるとともに起立位置から格納位置側に回動することができる。
また連動手段77は、前記操作レバー76の手動操作に応じて第2回動軸95とともに回動する第1および第2回動レバー91,92を備え、前記ばね支持部材88に固定される第2回動軸95および第1回動軸94間に、第2回動軸95の回動力を第1回動軸95および前記ばね支持部材88に伝達する伝達機構93が設けられるので、連動手段77の一部を構成する第1および第2回動レバー91,92の配置上の自由度を高めることができる。しかも伝達機構93に増速もしくは減速機能を持たせれば、スタンド75の作動調整幅が向上して設計自由度を高めることができる。
またスタンド75に固定されて支持ケース70Aで回動可能に支承されるスタンド軸82に、アウターリング108を有する一方向クラッチ109が装着され、スタンド75が第1の起立位置にある状態でアウターリング108の回転がクラッチ作動制御手段110で阻止されるものであり、一方向クラッチ109は、スタンド75が第1の起立位置にある状態で前記クラッチ作動制御手段110で前記アウターリング108の回転が阻止されることで前記スタンド75の前記格納位置側への回動を阻止するものであるので、一方向クラッチ109およびクラッチ作動制御手段110を用いた簡単な構成で、第1の起立位置側に回動したスタンド75の格納位置側への回動を無段階で止めることができ、確実な回り止め効果を得ることができる。したがって前輪WFおよび後輪WRを接地させた駐車が可能となるだけでなく、乗員の乗車または降車動作による車輪の空気圧変動に影響されることなく、確実な駐車状態を維持することができる。しかも特別な部品を使用せず、一般的な一方向クラッチ109を用いるので、コストの増大も抑制することができる。
またクラッチ作動制御手段110は、アウターリング108の外周に等間隔に設けられる複数の係止歯部111…と、それらの係止歯部111…の1つに選択的に係合する位置ならびに係合を解除する位置間での作動を可能とした係合爪112とを備えるものであり、クラッチ作動制御手段110を、簡単な構造で構成することができる。
しかも操作レバー76の手動操作によってスタンド75を回動させるようにするときには、スタンド75の位置を把握し難いのであるが、無段階でスタンド75の格納位置側への回動を規制することができる一方向クラッチ109を用いていることによりスタンド75の回動操作の確実性を高めることができる。
さらに連動手段77の一部を構成する第2回動軸95が、ロストモーション機構116を介して前記係合爪112に連結されるので、スタンド75を回動させる操作レバー76の操作が、係合爪112の作動に影響されることはなく、スタンド75の回動操作および係合爪112の作動の両方を確実に行うことができる。
また後輪WRに連動、連結される回転部材123と、該回転部材123に係合して前記後輪WRの回転を阻止するロック状態ならびに前記回転部材123との係合を解除するロック解除状態を切換可能な係合部材124とを有する後輪ロック機構125を備えており、係合部材124が操作レバー76の起立位置側への操作に応じて回動する第3回動レバー129に連動、連結され、回転部材123の回転を、スタンド75の起立位置側への回動に連動して阻止するようにしたので、スタンド75を起立位置としてスクータ型自動二輪車を駐車状態としたときには後輪WRの回転が阻止されることになり、スタンド75を起立させたときにスクータ型自動二輪車が不所望に走行し始めることを防止することができる。しかもスタンド75の回動に連動してブレーキ機構を作動せしめるようにしたものと比べると、ブレーキ機構の遊び量やブレーキパッドの厚みの減少によって、スタンド75の起立作動と、ブレーキ作動との間に狂いが生じることはなく、それぞれの操作性に影響を与えることはないのでメンテナンスが容易となる。
しかも第2回動軸95および前記係合部材124間にロストモーション機構130が介設されるので、スタンド75を回動させる操作レバー76の操作が、係合部材124の作動に影響されることはなく、スタンド75の回動操作および係合部材124の作動の両方を確実に行うことができる。
またエンジンEに付設されたキック始動装置135によるエンジンEの始動を後輪ロック機構125のロック解除状態では不能とするようにして後輪ロック機構125に連動するキック始動不能手段144を備え、後輪WRの回転が後輪ロック機構125で阻止されている状態でのみ、エンジンEのキック始動を可能としたので、キック始動時にスクータ型自動二輪車が動いてしまうことはなく、キック始動の操作性が向上する。
またキック始動装置135は、キック始動時にエンジンEのクランク軸方向に移動してクランク軸26に係合する連結部材141を備え、前記キック始動不能手段144は、前記連結部材141に係合して該連結部材141の移動を不能とし得る係合レバー部材145を備えるものであるので、キック始動装置135の連結部材141に係合レバー部材145を係合させるだけの簡単な構造として、キック始動不能手段144をコンパクトに構成することができる。
さらに連動手段77がユニットスイング式であるパワーユニットPに配設されるものであるので、車体フレーム15側に連動手段を配設するスペースを確保することを不要とし、車体フレーム15側のレイアウトの自由度を高めることができる。しかもパワーユニットP側に集約することで自動二輪車の小型化を図ることができ、車体フレームにパワーユニットが固定される自動二輪車と比べて、パワーユニットPの取り外しが容易であるので、連動手段77のメンテナンスおよび交換作業が容易となる。
またスタンド75を起立位置側に回動させるように操作レバー76を手動操作するのに応じて後輪WRをロックさせる後輪ロック機構125が、前記伝動装置Mを収容する伝動ケース35内に収容されているので、スタンド装置のシステムをパワーユニット側に集約して自動二輪車をより小型化することができる。
ところで、スタンド75を回動可能に支持するとともに連動手段77が取付けられる支持ケース70Aの一部であるケース半体72が、伝動ケース35の一部を構成するカバー39に一体に形成されており、支持ケース70Aを構成する部品点数を低減することができる。またカバー39を外すだけで、伝動装置Mおよび連動手段77のメンテナンスを行うことができ、メンテナンス性が向上する。
図13は本発明の第2実施例を示すものであり、スタンド75を回動可能に支持するとともに連動手段77が取付けられる支持ケース70Bは、椀状に形成された左右一対のケース半体151,152が相互に対向して締結されて成るものであり、一方のケース半体151は、伝動ケース35における内側ケース38に一体に形成され、他方のケース半体152は伝動ケース35におけるカバー39に一体に形成される。
このような第2実施例によっても、支持ケース70Bを構成する部品点数を低減することができるとともに、カバー39を外すだけで、伝動装置Mおよび連動手段77のメンテナンスを行うことができ、メンテナンス性が向上する。
図14は本発明の第3実施例を示すものであり、スタンド75を回動可能に支持するとともに連動手段77が取付けられる支持ケース70Cは、椀状に形成された左右一対のケース半体153,154が相互に対向して締結されて成るものであり、一方のケース半体153は、伝動ケース35における内側ケース38に一体に形成され、他方のケース半体154は伝動ケース35の一部を構成するようにして前記ケース半体153に締結され、伝動ケース35のカバー39が前記ケース半体154に連設される。
このような第3実施例によっても、支持ケース70Cを構成する部品点数を低減することができる。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
たとえば本発明をスクータ型自動二輪車以外の自動二輪車に適用することも可能である。