JP4613074B2 - 排気ガス浄化用触媒、その製造方法、及び排気ガス浄化用一体構造型触媒 - Google Patents
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このうちガソリン機関の排気ガス浄化用触媒としては、HC、SOF、COなどの有害成分を酸化して浄化する酸化触媒、NOxなどの有害成分を一時的に吸蔵した後に加熱したり、燃料などの未燃炭化水素、尿素、アンモニアなどの還元剤を供給することにより還元除去する還元触媒、HC、CO、NOxを同時に酸化・還元処理して浄化する三元触媒が知られている。
このうち自動車に搭載される排気ガス浄化用触媒は、比較的温度の低い床下に設置されるものと、エンジンから排出された直後、高温の排気ガスに触れる位置に設置される直下型と言われるものとがある。直下型では排気ガスの温度は1000℃を超える場合があることから、排気ガス浄化用触媒には、このように高温で苛酷な条件においても安定して排気ガスを浄化できる性能が要求される。
このような状況下、触媒組成物中の貴金属量を増やすことなく排気ガス浄化能力を向上でき、1000℃を超えるような高温で過酷な条件においても安定して排気ガスを浄化できる排気ガス浄化用触媒及び排気ガス浄化用一体構造型触媒が切望されていた。
さらに、本発明の触媒は、貴金属の使用量が少なくて済むため低コストで製造する事ができ、排気ガス浄化装置を安定的に生産し供給することができる。
本発明の排気ガス浄化用触媒は、金属触媒成分(A)が無機母材(B)上に担持された無機母材―金属触媒複合物(C)を含有する排気ガス浄化用触媒であって、金属触媒成分(A)が、白金又はロジウムから選ばれる一種以上であり、無機母材―金属触媒複合物(C)の表層部中で針状形態をなして存在し、かつその直径が実質的に50nm以下であることを特徴とする。
本発明において金属触媒成分は、排気ガスの浄化に対して活性を有する貴金属であり、具体的には、白金又はロジウムから選ばれる1種以上である。金属触媒成分の原料は、通常、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩等の形態で使用される。
金属触媒成分の量は、貴金属の種類、無機母材や担体の種類などによって異なるが、無機母材や担体の容積当り、0.01〜10g/L、特に0.1〜10g/Lである事が好ましい。金属触媒成分の量が10g/Lを超えると、触媒の生産コストが上昇してしまい、0.01g/L未満では、排気ガスの浄化性能が低下する。
ここで、「実質的に」とは、針状に成長した金属触媒成分の直径が、平均して50nm以下であるか、針状形状の直径の内、その多くが50nm以下の直径を有する部位を保ちえる状態を意味する。長さの場合も同様に、平均値で100nmであるか、またはその多くが100nm以上の値を取るものであることを意味する。それは、金属触媒成分の成長過程において、これらの形状に曲がり、凹み等を生じる場合があり、無機母材上で、金属触媒成分が均一に成長しない場合があるためである。なお、無機母材が繊維状である場合も同様である。
本発明において無機母材は、少なくともAl2O3、SiC、SiO2、TiO2、MgOなど、熱的に安定な構成単位からなる無機物質、またはその前駆体である。特にAl2O3、SiO2又はSiCを構成単位とする無機物質が望ましく、その形状は特に限定されない。例えば、球状や柱状などの粒状、板状、繊維状、不定形状など、いずれであってもよい。このような無機物質としては、板状ベーマイト、繊維状ベーマイトや、粒状シリカ、粒状アルミナ、粒状シリカ−アルミナ、SiCナノファイバー(前駆体)などがある。
なお、ベーマイトへのランタンの添加方法は、例えば、硝酸ランタン等のランタン塩の溶液とベーマイトを混合攪拌し、乾燥焼成することによって得ることができる。ここで、ベーマイトに添加されるランタンの量は0.5〜20重量%とし、1〜10重量%がより好ましい。ランタンが0.5重量%未満では充分な耐熱性の向上が得られず、20重量%を超えるとベーマイトに結晶学的変化が起こり、活性アルミナとしての特性が変化してしまう恐れがある。
上記アルミナ原料としては、少なくとも部分的に再水和性を有するρおよび/またはχ結晶構造を示すアルミナが用いられる。中でもギブサイト、バイヤライト等のアルミナ三水和物を急速高温加熱により脱水して得られたもので、比表面積が50〜500m2/gの範囲にあり、かつ部分的に再水和性を有するアルミナが好ましい。
このようにして得られる繊維状ベーマイトは、通常、水に分散したゾル状であるが、このゾルに前記触媒金属成分を混合し、このスラリーを乾燥・焼成すると、繊維状ベーマイトの表面に触媒金属成分が担持され安定した針状構造を形成する。
本発明において複合物は、無機母材上に、金属触媒成分が針状に担持された無機母材―金属触媒複合物であり、この無機母材―金属触媒複合物は、熱的に極めて安定である。
この写真を一見すると、表層部では無機母材の上に金属触媒が載っているだけのようであるが、本発明の無機母材−金属触媒複合物における無機母材は、無機母材上に単に金属触媒が担持されている状態に限らず、無機母材が組成中、あるいは結晶中に金属触媒を取り込んだ状態で有っても良い。
また、他の理由としては、金属触媒成分が所謂ナノサイズにまで微細化されていることで、量子サイズ効果により電子状態が変化し、近年注目されている所謂ナノ材料同様に、当該金属触媒成分が新規で特異な性質を発現し、金属触媒成分の量を減らしても排気ガス浄化性能が向上するのでは無いかと考えられる。
また、金属をナノサイズまで微細化した場合、一般に融点が低下する事が知られているが、本発明において金属触媒成分は長時間高温に晒された状態であっても、金属触媒成分が針状を維持して安定した排気ガス浄化性能を発揮することは、これまで知られていない。
OSC材の量は、その種類、担体の種類などによって異なるが、セリア−ジルコニア複合酸化物であれば、担体の容積当り、0.01〜10g/L、特に0.1〜10g/Lである事が好ましい。このように、本発明を酸化触媒として用いる場合は、OSC材と併用することで、OSC材から放出される酸素によりHC、SOF等の酸化作用が促進される。
本発明の排気ガス浄化用触媒は、金属触媒成分(A)と無機母材(B)とを水系媒体中で混合してスラリーを調製した後、該スラリーを、無機母材(B)上に担持される金属触媒成分(A)がその表層部中で針状形態をなして存在するに十分な程度に、焼成することにより、金属触媒成分(A)の直径が実質的に50nm以下である無機母材―金属触媒複合物(C)を形成させることにより製造される。
なお、焼成条件は、無機母材上に担持される金属触媒成分が針状に存在するに十分な程度であればよく、特に限定されない。なお、乾燥温度は、100〜300℃が好ましく、100〜200℃がより好ましい。また、焼成温度は、300〜1200℃が好ましく、400〜800℃がより好ましい。加熱手段については、電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行う事ができる。
本発明の排気ガス浄化用一体構造型触媒は、排気ガスが流通可能な一体構造型担体表面に、上記の無機母材―金属触媒複合物を被覆した触媒である。
一体構造型担体の全体形状は任意であり、円柱型、四角柱型、六角柱型など適用する排気系の構造に応じて適宜選択できる。さらに開口部の孔数についても処理すべき排気ガスの種類、ガス流量、圧力損失あるいは除去効率などを考慮して適正な孔数が決められるが、通常、自動車用排気ガス浄化用途としては1平方インチ当たり10〜1500個程度である。
なお、本発明ではこのようなフロースルー型担体、ウォールフロー型担体などの一体構造型担体上に触媒組成物が被覆されたものを、以下、一体構造型触媒と言うことがある。
また、金属触媒成分が白金族金属の場合、その担持量は、前記一体構造型担体に対して0.01〜10g/L、特に0.1〜10g/Lである事が好ましい。触媒の担持量が10g/Lを超えると、生産コストが上昇してしまい、0.01g/L未満では、排気ガスの浄化性能が低下する。
本発明の排気ガス浄化用一体構造型触媒は、前記の方法で金属触媒成分またはその前駆体と、前記無機母材またはその前駆体とを水系媒体と共に混合してスラリー状混合物にしてから、一体構造型担体へスラリー状混合物を塗工して、乾燥、焼成する事により製造される。
この際、必要に応じてpH調整のための酸、アルカリを、粘性の調整やスラリー分散性向上のための界面活性剤、分散用樹脂等を配合する事ができる。スラリーの混合方法としては、ボールミルなどによる粉砕混合が適用可能であるが、他の粉砕、もしくは混合方法を適用しても良い。
なお、これら吸着剤、酸素吸蔵・放出材は、無機母材−金属触媒複合物を含む被覆層に配合されていても良い。
<焼成触媒組成物の製造>
無機母材として繊維状ベーマイト(La添加量:5重量%)、金属触媒成分としてプラチナ硝酸塩とロジウム硝酸塩を用い、これに水系媒体を加えてからボールミルを用いて混合しスラリーを得た。なお、各成分の使用量は、原料無機母材に対する金属触媒成分合計量が0.5重量%となり、水系媒体はスラリー中で無機母材と金属触媒成分が均一に分散できる量とした。このスラリーを乾燥し、500℃で1時間焼成し、焼成触媒組成物を得た。
得られた焼成触媒組成物を1100℃のオーブン中で12時間放置し、その後の焼成触媒組成物の外観を走査型透過電子顕微鏡で観察し、耐熱性を評価した。走査型透過電子顕微鏡による写真(倍率:×100k)を図1に示す。図3は原料として用いた無機母材の電子顕微鏡写真である。この実施例1の触媒組成、形状、サイズは表1のとおりであった。なお、原料及び焼成後の無機母材、および焼成後の触媒組成物(複合物)の直径、および長さは、電子顕微鏡下において目視で測定した平均値である。
<焼成触媒組成物の製造>
無機母材として粒状γ−アルミナ(La添加量:5重量%)を用いた以外は実施例1と同様にして、焼成触媒組成物を製造した。まず、金属触媒成分として所定量のプラチナ硝酸塩とロジウム硝酸塩を採り、これに無機母材と水系媒体を加えて、ボールミルで混合しスラリーを得た。なお、各成分の使用量は、原料無機母材に対する金属触媒成分合計量が0.5重量%となり、水系媒体はスラリー中で無機母材と金属触媒成分が均一に分散できる量とした。このスラリーを乾燥し、500℃で1時間焼成し、焼成触媒組成物を得た。
次に、得られた焼成触媒組成物を1100℃のオーブン中で、12時間放置し、耐熱性を評価した。焼成触媒組成物の走査型透過電子顕微鏡による写真(倍率:×100k)を図2に示す。その触媒組成、形状、サイズは表1のとおりであった。なお、原料無機母材、および焼成後の無機母材−金属触媒複合物のサイズは、電子顕微鏡下において目視で測定した平均値である。
[一体構造型担体]
・一体構造型担体の種類:フロースルー型担体
・一体構造型担体の容量:900cc
・一体構造型担体の材質:コージェライト
・一体構造型担体のセル密度:400cel/inch2
実施例1、および比較例1で得られた各一体構造型触媒について、以下の条件で排気ガス中のHC、NOx、COの濃度を測定し、触媒性能を評価した。
・測定モード:FTPモード
・排気ガスの測定機器:HORIBA社製 MEXA9000
・評価エンジン:1.8L ガソリンエンジン
上記条件における排気ガス中のHC、NOx、COの濃度変化を対比し、グラフに表すと図4のようになった。なお、HCについてはFTPモード試験の基準に従い測定した、non−methane hydrocarbon(以下、NMHCという)の結果である。グラフは、比較例1におけるNMHC、NOx、COの排出量(重量)に対する、実施例1の排出量の割合を示している。
グラフから、実施例1の触媒は、比較例1の触媒に対して、浄化能力がNMHCについては21%、NOxについては27%優れていることが分かる。
Claims (11)
- 金属触媒成分(A)が無機母材(B)上に担持された無機母材―金属触媒複合物(C)を含有する排気ガス浄化用触媒であって、
金属触媒成分(A)が、白金又はロジウムから選ばれる一種以上であり、無機母材―金属触媒複合物(C)の表層部中で針状形態をなして存在し、かつその直径が実質的に50nm以下であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。 - 無機母材(B)が、Al2O3を主要構成単位とする無機物質であることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化用触媒。
- 無機母材(B)が、希土類元素から選ばれる一種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載の排気ガス浄化用触媒。
- 希土類元素の含有量が、無機母材(B)に対して0.5〜20重量%であることを特徴とする請求項3に記載の排気ガス浄化用触媒。
- 無機母材―金属触媒複合物(C)の表層部中で金属触媒成分(A)の長さが、実質的に100nm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒。
- 無機母材―金属触媒複合物(C)の表層部中で金属触媒成分(A)が、1100℃の高温で12時間加熱後も針状形状を保つことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒。
- 金属触媒成分(A)と無機母材(B)とを水系媒体中で混合してスラリーを調製した後、該スラリーを、無機母材(B)上に担持される金属触媒成分(A)がその表層部中で針状形態をなして存在するに十分な程度に、焼成することにより、金属触媒成分(A)の直径が実質的に50nm以下である無機母材―金属触媒複合物(C)を形成させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒が、一体構造型担体の表面に被覆してなる排気ガス浄化用一体構造型触媒。
- 金属触媒成分(A)の量が、一体構造型担体に対して0.01〜10g/Lであることを特徴とする請求項8に記載の排気ガス浄化用一体構造型触媒。
- 無機母材―金属触媒複合物(C)の量が、一体構造型担体に対して10〜400g/Lであることを特徴とする請求項8に記載の排気ガス浄化用一体構造型触媒。
- さらに、酸素吸蔵・放出材を含むことを特徴とする請求項8に記載の排気ガス浄化用一体構造型触媒。
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