JP4610130B2 - エチレン系重合体およびその製造方法 - Google Patents

エチレン系重合体およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4610130B2
JP4610130B2 JP2001197592A JP2001197592A JP4610130B2 JP 4610130 B2 JP4610130 B2 JP 4610130B2 JP 2001197592 A JP2001197592 A JP 2001197592A JP 2001197592 A JP2001197592 A JP 2001197592A JP 4610130 B2 JP4610130 B2 JP 4610130B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polymerization
chromium
ethylene
catalyst
supported
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2001197592A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2002080521A (ja
Inventor
尚志 物井
秀信 鳥越
Original Assignee
日本ポリオレフィン株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 日本ポリオレフィン株式会社 filed Critical 日本ポリオレフィン株式会社
Priority to JP2001197592A priority Critical patent/JP4610130B2/ja
Publication of JP2002080521A publication Critical patent/JP2002080521A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4610130B2 publication Critical patent/JP4610130B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)
  • Transition And Organic Metals Composition Catalysts For Addition Polymerization (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はエチレン系重合体の製造方法に関する。さらに詳しくは、クロム触媒にトリアルキルアルミニウム化合物を担持した触媒を用い、水素を共存させてエチレンの重合を行なうエチレン系重合体の製造方法に関する。
本発明の方法により得られるエチレン系重合体は、耐環境応力亀裂(以下、ESCRと略記することがある。)と耐衝撃性が共に優れ、ブロー成形製品、特に大型ブロー成形製品に適している。
【0002】
【関連技術】
エチレン系重合体は、各種成形品の樹脂材料として、一般に広く用いられているが、その成形方法と用途によって要求されるエチレン系重合体に要求される特性が異なっている。
例えば、射出成形法によって成形する製品には、分子量が比較的低く、狭い分子量分布を有する重合体が適している。一方、ブロー成形やインフレーション成形などによって成形する製品には、分子量が比較的高く、分子量分布の広い重合体が適している。
【0003】
従来より、クロム化合物を無機酸化物担体に担持させ、非還元性雰囲気で焼成活性化することにより担持されたクロム原子の少なくとも一部のクロム原子を6価としたクロム触媒(いわゆるフィリップス触媒)を用いることにより、ブロー成形、特に大型ブロー成形に適した広い分子量分布のエチレン系重合体が得られることは公知である。
しかしながら、近年、ガソリンタンク、大型ドラムのような大型ブロー成形製品に適したエチレン系重合体については、一層の高品質化が要望されている。従来のクロム触媒によって得られる広い分子量分布を有するエチレン系重合体をブロー成形した場合、成形物はESCRと耐衝撃性のバランスが十分ではなく、両特性に優れた成形物を要望する顧客の要求に対応できるとは言い難い。
【0004】
フィリップス触媒に有機アルミニウム化合物を組み合わせてエチレン系重合体を得る方法として、フィリップス触媒による重合時にトリアルキルアルミニウムを反応系に供給し、また水素を共存させて重合することによりESCRの優れたポリエチレンを得る方法が開示されている(特公昭49-34759号公報)。しかし、この文献にはトリアルキルアルミニウム担持触媒の開示はなく、重合活性が高く、ESCRと耐衝撃性が共に高くバランスのよい重合体が得られる方法は記載されていない。
【0005】
また、フィリップス触媒およびトリアルキルアルミニウムからなる触媒を用いてエチレン系重合体を得る方法が特公昭36-22144号、特公昭47-23668号公報(米国特許出願68/766,625)に開示されているが、ESCRと耐衝撃性の両方を同時に向上させた重合体を得る方法についての記載はない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は上記問題点を解消し、ブロー成形製品、特に大型ブロー成形製品に適した、耐環境応力亀裂(ESCR)と耐衝撃性が共に高く両特性のバランスに優れたエチレン系重合体を効率よく製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、焼成活性化したクロム触媒に不活性炭化水素溶媒中でトリアルキルアルミニウム化合物を担持し、さらに溶媒を除去・乾燥して得た触媒を用い、水素をエチレンと共存させて重合を行なうことによりESCRと耐衝撃性のバランスに優れたエチレン系重合体が得られることを見出し本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は下記(1)〜(7)のエチレン系重合体の製造方法および(8)〜(9)のエチレン系重合体を開発することにより上記の課題を解決したものである。
【0009】
(1)クロム化合物を無機酸化物担体に担持し非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子を6価とした後、不活性炭化水素溶媒中でクロム原子が過還元されないようにトリアルキルアルミニウム化合物を担持させ、溶媒を除去・乾燥して得られるトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を用いて水素を共存させながらエチレンの重合を行なうことを特徴とするエチレン系重合体の製造方法。
(2)少なくとも一部のクロム原子が6価のクロム化合物担持無機酸化物担体に不活性炭化水素溶媒中でトリアルキルアルミニウム化合物を担持させるに際して、溶媒との接触時間が可能な限り短くなるように処理する前項1に記載のエチレン系重合体の製造方法。
【0010】
(3)不活性炭化水素溶媒中でのトリアルキルアルミニウム化合物の担持反応時間の3倍以内の時間で不活性炭化水素溶媒を除去・乾燥する前項1または2に記載のエチレン系重合体の製造方法。
(4)焼成活性化した後のクロム化合物担持無機酸化物担体の比表面積が350m2/g以上であるクロム触媒を用いる前項1乃至3のいずれかに記載のエチレン系重合体の製造方法。
【0011】
(5)クロム原子に対するトリアルキルアルミニウム化合物のモル比が0.5〜10であるトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を用いる前項1乃至4のいずれかに記載のエチレン系重合体の製造方法。
(6)重合を液相で行ない、液相中の水素濃度(Hc;質量%)とエチレン濃度(ETc;質量%)との比が下記式:
【数3】
1.0×10-6≦Hc/ETc≦1.0×10-2
の関係を満たす条件で重合を行なう前項1乃至5のいずれかに記載のエチレン系重合体の製造方法。
【0012】
(7)重合を気相で行ない、気相中の水素分圧(Hp;MPa)とエチレン分圧(ETc;MPa)との比が下記式:
【数4】
1.0×10-4≦Hp/ETp≦1.0
の関係を満たす条件で重合を行なう前項1乃至5のいずれかに記載のエチレン系重合体の製造方法。
【0013】
(8)前項1乃至7のいずれかに記載のエチレン系重合体の製造方法により得られる、HLMFRが1〜100g/10分、密度が0.935〜0.960g/cm3のブロー成形製品用のエチレン系重合体。
(9)前項1乃至7のいずれかに記載のエチレン系重合体の製造方法により得られる、HLMFRが1〜15g/10分、密度が0.940〜0.955g/cm3の大型ブロー成形製品用のエチレン系重合体。
【0014】
以下、本発明を具体的に説明する。
クロム化合物を無機酸化物担体に担持し、非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子が6価となるクロム触媒は、一般にフィリップス触媒として知られ公知である。この触媒の概要は、M. P. McDaniel著, Advances in Catalysis, Volume 33, 47頁, 1985年, Academic Press Inc. 、M. P. McDaniel著, Handbook of Heterogeneous Catalysis, 2400頁, 1997年, VCH、M. B. Welchら著, Handbook of Polyolefins: Synthesis and Properties, 21頁, 1993年, Marcel Dekker等の文献に記載されている。
【0015】
無機酸化物担体としては、周期律表第2、4、13または14族の金属の酸化物が好ましい。具体的にはマグネシア、チタニア、ジルコニア、アルミナ、シリカ、トリア、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナおよびこれらの混合物が挙げられる。中でもシリカ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナが好ましい。シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナの場合、シリカ以外の金属成分としてチタン、ジルコニウムまたはアルミニウム原子が0.2〜10%、好ましくは0.5〜7%、さらに好ましくは1〜5%含有されたものが用いられる。これらのクロム触媒に適する担体の製法、物理的性質および特徴は、C. E. Marsden著, Preparation of Catalysts, VolumeV, 215頁, 1991年, Elsevier Science Publishers、C.E.Marsden著, Plastics, Rubber and Composites Processing and Applications, Volume 21, 193頁, 1994年等の文献に記載されている。
【0016】
本発明においては、後述する非還元性雰囲気での焼成活性化後にクロム触媒の比表面積が350m2/g以上、好ましくは370m2/g以上、さらに好ましくは400m2/g以上となるような担体を選択することが好ましい。比表面積が350m2/g未満の場合は、担持するトリアルキルアルミニウム化合物のクロム原子に対するモル比が高くなるにつれて、エチレン重合活性の低下が起こりやすくなる。またモル比が高すぎると分子量分布が広くなりESCRは向上するものの耐衝撃性が低下してESCRと耐衝撃性のバランスは悪化する。比表面積の上限値は特に制限ないが、通常は1000m2/g以下である。
【0017】
細孔体積としては、一般的なクロム触媒に用いられる担体の場合と同様0.5〜3.0cm3/g、好ましくは0.7〜2.7cm3/g、さらに好ましくは1.0〜2.5cm3/gの範囲のものが用いられる。
平均粒径としては、一般的なクロム触媒に用いられる担体と同様10〜200μm、好ましくは20〜150μm、さらに好ましくは30〜100μmの範囲のものが用いられる。
【0018】
上記無機酸化物担体にクロム化合物を担持させる。
クロム化合物としては、担持後に非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子が6価となる化合物であればよく、酸化クロム、クロムのハロゲン化物、オキシハロゲン化物、クロム酸塩、重クロム酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、クロム−1,3−ジケト化合物、クロム酸エステル等が挙げられる。具体的例としては、三酸化クロム、三塩化クロム、塩化クロミル、クロム酸カリウム、クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウム、硝酸クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、トリス(2−エチルヘキサノエート)クロム、クロムアセチルアセトネート、ビス(tert−ブチル)クロメート等が挙げられる。これらの中でも、三酸化クロム、酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートが好ましい。酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートのような有機基を有するクロム化合物を用いた場合でも、後述する非還元性雰囲気での焼成活性化によって有機基部分は燃焼し、最終的には三酸化クロムを用いた場合と同様に無機酸化物担体表面の水酸基と反応し、少なくとも一部のクロム原子が6価となってクロム酸エステルの構造で固定化されることが知られている(V. J. Ruddickら著, J. Phys.Chem., Volume 100, 11062頁, 1996年、S. M. Augustineら著, J. Catal., Volume 161, 641頁, 1996年)。
【0019】
無機酸化物担体へのクロム化合物の担持は、含浸、溶媒留去、昇華等の公知の方法によって行なうことができ、使用するクロム化合物の種類によって適当な方法を用いればよい。担持するクロム化合物の量は、クロム原子として担体に対して0.2〜2.0%、好ましくは0.3〜1.7%、さらに好ましくは0.5〜1.5%である。
【0020】
クロム化合物の担持後に焼成して活性化処理を行なう。焼成活性化処理は水分を実質的に含まない非還元性雰囲気、例えば酸素または空気下で行なうことができる。この際不活性ガスを共存させてもよい。好ましくは、モレキュラーシーブス等を流通させ十分に乾燥した空気を用い、流動状態下で行なう。焼成活性化は400〜900℃、好ましくは450〜850℃、さらに好ましくは500〜800℃の温度範囲にて30分〜48時間、好ましくは1時間〜24時間、さらに好ましくは2時間〜12時間行なう。この焼成活性化により無機酸化物担体に担持されたクロム化合物のクロム原子の少なくとも一部が6価に酸化されて担体上に化学的に固定される。
【0021】
以上により本発明で使用するクロム触媒が得られるが、本発明ではクロム化合物担持前またはクロム化合物担持後の焼成活性化前にチタンテトライソプロポキシドのようなチタンアルコキシド類、ジルコニウムテトラブトキシドのようなジルコニウムアルコキシド類、アルミニウムトリブトキシドのようなアルミニウムアルコキシド類、トリアルキルアルミニウムのような有機アルミニウム類、ジアルキルマグネシウムのような有機マグネシウム類などに代表される金属アルコキシド類もしくは有機金属化合物やケイフッ化アンモニウムのようなフッ素含有塩類等を添加してエチレン重合活性、α−オレフィンとの共重合性や得られるエチレン系重合体の分子量、分子量分布を調節する公知の方法を併用してもよい。
【0022】
これらの金属アルコキシド類もしくは有機金属化合物は非還元性雰囲気での焼成活性化によって有機基部分が燃焼し、チタニア、ジルコニア、アルミナまたはマグネシアのような金属酸化物に酸化されて触媒中に含まれる。またフッ素含有塩類の場合は無機酸化物担体がフッ素化される。
【0023】
これらの方法は、C. E. Marsden著, Plastics, Rubber and Composites Processing and Applications, Volume 21, 193頁, 1994年、T. Pullukatら著, J. Polym. Sci., Polym. Chem. Ed., Volume 18, 2857頁, 1980年、M. P. McDanielら著, J. Catal., Volume 82, 118頁, 1983年等の文献に記載されている。
【0024】
本発明においては、焼成活性化したクロム触媒に不活性炭化水素溶媒中でトリアルキルアルミニウム化合物を担持させ、さらに溶媒を除去・乾燥して、トリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒として用いる。
トリアルキルアルミニウムは、下記一般式(1)
【化1】
123Al (1)
(式中、R1、R2、R3は炭素原子数1〜18のアルキル基であり、同一であっても異なっていてもよい。)で示される化合物である。
具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−プロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等が挙げられ、中でもトリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムが好ましい。
【0025】
担持するトリアルキルアルミニウム化合物の量は、クロム原子に対するトリアルキルアルミニウム化合物のモル比が0.5〜10、好ましくは0.7〜7、さらに好ましくは1〜5となるような量が好ましい。モル比を0.5〜10とすることにより、トリアルキルアルミニウム化合物を担持しない場合に比べてエチレン重合活性が大幅に向上する。クロム原子に対するトリアルキルアルミニウム化合物のモル比が0.5未満ではトリアルキルアルミニウム化合物を担持した効果が現われず、エチレン重合活性、ESCR、耐衝撃性はトリアルキルアルミニウム化合物を担持しない場合と変わらない。モル比が10を超えるとエチレン重合活性がトリアルキルアルミニウム化合物を担持しない場合よりも低下するとともに、分子量分布が広くなりESCRは向上するものの耐衝撃性は低下しESCRと耐衝撃性のバランスは悪化する。この活性低下の理由の詳細は不明であるが、過剰のトリアルキルアルミニウム化合物がクロム活性点と結合してエチレン重合反応を阻害するためと考えられる。
【0026】
トリアルキルアルミニウム化合物を担持する方法としては、焼成活性化後のクロム触媒を不活性炭化水素中の液相で接触させる方法ならば特に限定されない。
例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素溶媒に焼成活性化後のクロム触媒を混合してスラリー状態とし、これにトリアルキルアルミニウム化合物を添加する方法が好ましい。
添加するトリアルキルアルミニウム化合物は、上記不活性炭化水素溶媒で希釈しても良いし、希釈せずに添加しても良い。希釈用溶媒と担持用の溶媒は同じでも異なっても良い。
【0027】
使用する不活性炭化水素溶媒の量は、触媒の調製時に少なくともスラリー状態で撹拌を行なえるに十分な量であることが好ましい。このような量であれば溶媒の使用量は特に限定されないが、例えば、焼成活性化後のクロム触媒1g当たり溶媒2〜20gを使用することができる。
【0028】
本発明において、不活性炭化水素溶媒中でクロム触媒をトリアルキルアルミニウム化合物により処理する際の溶媒へのトリアルキルアルミニウム化合物とクロム触媒の添加順序は任意である。具体的には、不活性炭化水素溶媒にクロム触媒を懸濁させ、トリアルキルアルミニウム化合物を添加してこれを撹拌する担持反応の操作が好ましい。
【0029】
担持反応の温度は0〜150℃、好ましくは10〜100℃、さらに好ましくは20〜80℃、担持反応時間は5分〜8時間、好ましくは30分〜6時間、さらに好ましくは1〜4時間である。トリアルキルアルミニウム化合物は焼成活性化により少なくとも一部が6価となったクロム原子と反応し、これを低原子価のクロム原子に還元する。この現象は焼成活性化後のクロム触媒が6価のクロム原子特有のオレンジ色を呈するのに対して、トリアルキルアルミニウム化合物による担持操作をされたクロム触媒が緑色もしくは青緑色であることから確認できる。すなわち、このクロム触媒の色の変化から6価クロム原子の少なくとも一部が3価または2価のクロム原子に還元されているものと推定される。
【0030】
撹拌を停止して担持操作を終了した後は、速やかに溶媒を除去することが必要である。この溶媒の除去は減圧乾燥により行なうが、この際ろ過を併用することもできる。この減圧乾燥では、トリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒が自由流動性の粉末として得られるように乾燥させる。触媒を溶媒と分離せずに長時間保管すると触媒が経時劣化し、エチレン重合活性が低下する。その上分子量分布が広くなるためESCRは向上するものの耐衝撃性が低下し、ESCRと耐衝撃性のバランスが悪化するので好ましくない。したがって、担持反応の際の溶媒との接触時間をも含めて、溶媒との接触時間を極力短縮し、速やかに溶媒を分離・除去することが好ましい。速やかな溶媒の分離・除去によって重合活性およびESCRと耐衝撃性のバランスが向上したエチレン系重合体が得られるという効果を記載した先行技術文献は見当たらず、担持反応後に溶媒を速やかに分離することは本発明の重要な特徴点の一つである。
【0031】
この効果が得られる理由の詳細は不明であるが、溶媒存在下ではクロム活性点とトリアルキルアルミニウム化合物との反応が進行し続けることになり、その結果非還元性雰囲気で焼成活性化され一部が6価となったクロム原子が過還元されてエチレン重合反応を阻害するような触媒構造に変化することによるものと考えられる。但し、過還元状態におけるクロムの原子価の具体的な価数等を示すこと等過還元状態を具体的に示すことは困難である。要は重合活性の低下や得られる重合体の物性の低下、主に衝撃強度の低下により過還元の程度を判別することができる。ここで衝撃強度とは具体的にはテンサイルインパクト強度である。すなわち、溶媒との接触時間が長すぎると重合活性の低下や得られる重合体の物性、主に衝撃強度の低下がみられるのである。従って、重合活性や得られる重合体の衝撃強度が実質的に低下しないよう、たとえ低下してもその低下の程度が最小限となるよう、担持反応における溶媒接触の時間も合算して溶媒との接触時間を可能な限り短くなるようにする。すなわち、溶媒との接触時間である担持反応時間も可能な限り短縮し、担持後は速やかに溶媒を分離し、過還元反応が進行しないようにする必要がある。担持反応終了後、溶媒を分離し乾燥するのに要する時間は担持反応時間の3倍以内が好ましく、さらに2倍以内が好ましく、特に1倍以内が好ましい。担持開始から溶媒除去・乾燥完了となるまでの合計の時間は、5分〜24時間、好ましくは30分〜18時間、さらに好ましくは1〜12時間である。
【0032】
乾燥完了後のトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒は自由流動性(free flowing)のさらさらの状態にあることが好ましい。物性的な目安としては、溶媒の残存質量が、クロム触媒の細孔体積に溶媒の密度を掛けて得られた質量の1/10以下、好ましくは1/30、さらに好ましくは1/100以下になっていることが好ましい。なお、ここで細孔体積は窒素吸着によるBET法によるものであり、溶媒の残存質量は以下の式により求めたものである。
【数5】
溶媒の残存質量=(乾燥後のトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒の質量)−{(トリアルキルアルミニウム化合物の質量)+(クロム触媒の質量)}
【0033】
なお、トリアルキルアルミニウム化合物をクロム触媒と併用する場合、クロム触媒とトリアルキルアルミニウム化合物とを反応器に希釈溶媒の存在下または不存在下に直接または別々にフィードする方法と、クロム触媒とトリアルキルアルミニウム化合物を一旦溶媒中で予備混合または接触させ、この混合スラリーを反応器にフィードする方法が考えられる。しかし、いずれの方法も、クロム触媒とトリアルキルアルミニウム化合物を反応器に別々に供給しながら連続生産を行なうものであるから、連続的に供給するクロム触媒とトリアルキルアルミニウム化合物の量とその比率を正確に調整しなければ、得られるエチレン系重合体の重合活性や分子量が変動して同一規格の製品を連続的に生産することは困難となる。
【0034】
本発明の方法によれば、トリアルキルアルミニウム化合物を予めクロム触媒に担持したクロム原子に対するトリアルキルアルミニウム化合物のモル比が常に一定の触媒を反応器中に供給するので、同一規格の製品を安定的に連続生産することができる。したがって、本発明の方法は一定品質のエチレン系重合体を連続生産するのに好適な優れた方法である。
【0035】
上記のトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を用いて、エチレン系重合体の製造を行なうに際しては、スラリー重合、溶液重合のような液相重合法あるいは気相重合法など、いずれの方法を採用することができる。
液相重合法は通常炭化水素溶媒中で行なう。炭化水素溶媒としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素の単独または混合物が用いられる。
【0036】
気相重合法は、不活性ガス共存下にて、流動床、撹拌床等の通常知られる重合法を採用でき、場合により重合熱除去の媒体を共存させる、いわゆるコンデンシングモードを採用することもできる。
液相または気相重合法における重合温度は、一般的には0〜300℃であり、実用的には20〜200℃、好ましくは50〜180℃、さらに好ましくは70〜150℃である。反応器中の触媒濃度およびエチレン濃度は重合を進行させるのに十分な任意の濃度でよい。例えば、触媒濃度は、液相重合の場合反応器内容物の質量を基準にして約0.0001〜約5質量%の範囲とすることができる。同様にエチレン濃度は、気相重合の場合、全圧として0.1〜10MPaの範囲とすることができる。
【0037】
本発明において、目的とするESCRと耐衝撃性のバランスに優れたエチレン系重合体、特にブロー成形製品に適し、なかんずく大型ブロー成形製品に適したエチレン系重合体を製造するためには、水素をエチレンと共存させて重合を行なうことが必須である。具体的には、水素とエチレンを特定の比率とした条件下で重合させることが必要である。水素は一般的には分子量を調節するためのいわゆる連鎖移動剤としての働きを有するといわれているが、水素のほかエチレンも考慮し水素とエチレンを特定の比率として重合させることにより、ESCRと耐衝撃性のバランスを向上させる効果を奏することを明確に示した従来技術は見当たらない。水素とエチレンを特定の比率とした条件下で重合させることにより、ESCRと耐衝撃性とをバランス良く向上させることは本発明の重要な特徴点の一つである。
【0038】
水素の共存により効果が得られる理由の詳細は不明であるが、トリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒によるエチレン重合において、特定の分子量域に適度な長さまたは数の長鎖分岐を導入する働きを有するため、あるいはα−オレフィンとの共重合による短鎖分岐の分布を変える働きを有するためと考えられる。
【0039】
エチレンの重合が液相重合法の場合には、その液相中の水素濃度(質量%)(Hcと略記する。)と液相中のエチレン濃度(質量%)(ETcと略記する。)との比が、下記式:
【数6】
1.0×10-6≦Hc/ETc≦1.0×10-2、好ましくは
3.0×10-6≦Hc/ETc≦8.0×10-3、さらに好ましくは
5.0×10-6≦Hc/ETc≦5.0×10-3
の関係を満たす条件で重合を行なう。
【0040】
また、気相重合法の場合には反応器中の水素分圧(MPa)(Hpと略記する。)と反応器中のエチレン分圧(MPa)(ETpと略記する。)との比が、下記式:
【数7】
1.0×10-4≦Hp/ETp≦1.0、好ましくは
3.0×10-4≦Hp/ETp≦8.0×10-1、さらに好ましくは
5.0×10-4≦Hp/ETp≦5.0×10-1
の関係を満たす条件で重合を行なう。
【0041】
エチレンと共存させる水素とエチレンの濃度比または分圧比は、水素とエチレンの濃度または分圧を変えることによって容易に調整することができる。前述したように水素は連鎖移動剤としての働きも有するのでHc/ETcまたはHp/ETpを変えた場合、同一HLMFRの製品を得るためには重合温度も変えなければならない。すなわち、Hc/ETcまたはHp/ETpを上げた場合には重合温度を下げ、Hc/ETcまたはHp/ETpを下げた場合には重合温度を上げなければならない。ただし、水素濃度または分圧の絶対値によるので同一HLMFRの製品を得るためには必ず重合温度を変える必要があるわけではない。
【0042】
Hc/ETcまたはHp/ETpの比の値のいずれかが、それぞれ上記の範囲未満の場合には、得られるエチレン系重合体は同一HLMFRにおいてESCRと耐衝撃性は水素共存の効果を奏せず、また、Hc/ETcまたはHp/ETpのいずれかが、それぞれ上記の範囲を超える場合は、得られるエチレン系重合体は同一HLMFRにおいてエチレン重合活性が大きく低下することになり好ましくない。また、分子量分布が広くなりESCRは向上するものの耐衝撃性は低下し、ESCRと耐衝撃性のバランスが悪化する。
なお、水素圧力は、特に限定されないが、通常、液相重合法の場合には、液相中の水素濃度として1.0×10-5〜1.0×10-1質量%、好ましくは5.0×10-4〜5.0×10-2質量%、気相重合法の場合には気相の水素分圧として、1.0×10-3〜10.0MPa、好ましくは5.0×10-2〜5.0MPaの範囲である。またエチレン圧力も特に限定されないが、通常、液相重合法の場合には、液相中のエチレン濃度として1.0〜20.0質量%、好ましくは2.0〜15.0質量%、気相重合法の場合には、気相中のエチレン分圧として1.0〜20.0MPa、好ましくは2.0〜15.0MPaの範囲とする。
【0043】
本発明の方法によりトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒によりエチレン重合を行なうと、エチレンからα−オレフィンが副生し、さらにこのα−オレフィンがエチレンと共重合するため、エチレンモノマーをモノマーとして使用するのみで、結果としてエチレンとα−オレフィンの共重合体を得ることができる。α−オレフィンが副生するメカニズムは不明であるが、トリアルキルアルミニウム化合物を担持しない場合はα―オレフィンの副生は実質上認められないので、トリアルキルアルミニウム化合物により一部のクロム活性点がα−オレフィン副生の活性点に変換されていると推察される。副生するα−オレフィンの種類は1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどであり、特に1−ヘキセンの量が多い。従ってエチレンだけから得られるエチレン系重合体にはエチル分岐、n−ブチル分岐、n−ヘキシル分岐などの短鎖分岐、特にn−ブチル分岐が見られる。クロム原子に対するトリアルキルアルミニウム化合物のモル比が高くなるにつれて得られるエチレン系重合体の密度は低下する傾向にあり、このモル比が高くなるにつれてα−オレフィンが副生する量が増えることがわかる。しかし副生するα−オレフィンだけでは所望する密度のエチレン系重合体が得られない場合には、密度調整の必要に応じてプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどのα−オレフィンを単独または2種類以上反応器に導入して共重合させることもできる。
ここで、本発明においては得られるエチレン系重合体中のα−オレフィン含量は15mol%以下、好ましくは10mol%以下が望ましい。
【0044】
本発明の方法により、HLMFR(ハイロードメルトフローレート)が0.1〜1000g/10分、好ましくは0.5〜500g/10分、密度が0.900〜0.980g/cm3、好ましくは0.920〜0.970g/cm3のエチレン系重合体が得られる。得られるエチレン系重合体はESCRと耐衝撃性が高くバランスに優れるので、特にブロー成形製品、なかんずく大型ブロー成形製品で大きな効果を発揮する。ブロー成形製品用のエチレン系重合体のHLMFRは1〜100g/10分、特に大型ブロー成形製品用のエチレン系重合体は1〜15g/10分である。ブロー成形製品用のエチレン系重合体の密度は0.935〜0.960g/cm3、特に大型ブロー成形製品用のエチレン系重合体の密度は0.940〜0.955g/cm3である。
HLMFRや密度等によっても変わりうるが、本発明の方法により得られるブロー成形製品用に好適なエチレン共重合体は、後記する測定法により求めるESCRと耐衝撃性(テンサイルインパクト)の値として、ESCRが190(hr)以上でかつ耐衝撃性(テンサイルインパクト)が180(kJ/m2)以上の値を示すものである。
【0045】
重合方法としては、反応器を一つ用いてエチレン系重合体を製造する単段重合だけでなく、分子量分布を広げるために少なくとも二つの反応器を連結させて多段重合を行なうこともできる。多段重合の場合、二つの反応器を連結させ、第一段の反応器で重合して得られた反応混合物を続いて第二段の反応器に連続して供給する二段重合が好ましい。第一段の反応器から第二段の反応器への移送は、差圧により連結管を通して、第一段反応器からの重合反応混合物の連続的排出により行なわれる。
【0046】
第一段反応器で高分子量成分、第二段反応器で低分子量成分を、または第一段反応器で低分子量成分、第二段反応器で高分子量成分をそれぞれ製造するいずれの方法でもよいが、第一段反応器で高分子量成分、第二段反応器で低分子量成分を製造する方が、第一段から第二段への移行にあたり中間の水素のフラッシュタンクを必要としないため生産性の面でより好ましい。
【0047】
第一段においては、エチレン単独または必要に応じてα−オレフィンとの共重合を、水素濃度のエチレン濃度に対する質量比または分圧比(Hc/ETcまたはHp/ETp)、重合温度または両者により分子量を調節しながら、またα−オレフィン濃度のエチレン濃度に対する質量比または分圧比により密度を調節しながら重合反応を行なう。
【0048】
第二段においては、第一段から流れ込む反応混合物中の水素および同じく流れ込むα―オレフィンがあるが、必要に応じてそれぞれ新たな水素、α―オレフィンを加えることができる。
したがって、第二段においても、水素濃度のエチレン濃度に対する質量比もしくは分圧比(Hc/ETcもしくはHp/ETp)、重合温度または両者により分子量を調節しながら、またα−オレフィン濃度のエチレン濃度に対する質量比または分圧比により密度を調節しながら重合反応を行なうことができる。触媒や有機アルミニウム化合物のような有機金属化合物についても、第一段から流れ込む触媒により二段目で引き続き重合反応を行なうだけでなく、第二段で新たに触媒、有機アルミニウム化合物のような有機金属化合物またはその両者を供給してもよい。
【0049】
二段重合によって製造する場合の高分子量成分と低分子量成分の比率としては、高分子量成分が10〜90質量部、低分子量成分が90〜10質量部、好ましくは高分子量成分が20〜80質量部、低分子量成分が80〜20質量部、さらに好ましくは高分子量成分が30〜70質量部、低分子量成分が70〜30質量部である。また、高分子量成分のHLMFRは、0.01〜100g/10分、好ましくは0.01〜50g/10分、低分子量成分のMFR(JIS K−7210(1996年版)の表1、条件4に従い、温度190℃、荷重21.18Nにおける測定値)は、10〜1000g/10分、好ましくは10〜500g/10分である。
【0050】
二段重合で得られるエチレン系重合体のHLMFRは、0.1〜1000g/10分、好ましくは0.5〜500g/10分であるが、ブロー成形製品用樹脂としては1〜100g/10分、特に大型ブロー成形製品用樹脂としては1〜15g/10分である。二段重合で得られるエチレン系重合体の密度は、0.900〜0.980g/cm3、好ましくは0.920〜0.970g/cm3であるがブロー成形製品用樹脂としては0.935〜0.960g/cm3、特に大型ブロー成形製品用樹脂としては0.940〜0.955g/cm3である。
得られたエチレン系重合体は、混練することが好ましい。混練は単軸または二軸の押出機または連続式混練機を用いて行なうことができる。
また得られるエチレン系共重合体は、常法によりブロー成形することができる。
【0051】
【実施例】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例において使用した測定方法は以下の通りである。
【0052】
a)液相中の水素およびエチレン濃度の定量:
液相重合法の場合の液相中の水素濃度およびエチレン濃度はJIS K 2301(1992年版)に従い、触媒を導入しない状態で予め各実施例、比較例条件の重合温度、水素分圧、エチレン分圧での水素濃度およびエチレン濃度をガスクロマトグラフ法で分析し定量した。オートクレーブまたは反応器内の溶液を少量抜き出して気化させ、島津製作所製ガスクロマトグラフGC−14Aを用い、前記JISの10頁、表2、カラム組合せBの分析条件にて、熱伝導度検出器により水素濃度およびエチレン濃度を定量した。
【0053】
b)物性測定のためのポリマー前処理:
東洋精機製作所(株)製プラストグラフ(ラボプラストミルME25;ローラー形状はR608型)を用い、添加剤としてチバガイギー社製イルガノックスB225を0.2%添加し、窒素雰囲気下190℃で7分間混練した。
【0054】
c)ハイロードメルトフローレート(HLMFR):
JIS K−7210(1996年版)の表1、条件7に従い、温度190℃、荷重211.82Nにおける測定値をHLMFRとして示した。
d)密度:
JIS K−7112(1996年版)に従い測定した。
【0055】
e)分子量分布(Mw/Mn):
生成エチレン系重合体について下記の条件でゲル透過クロマトグラフ(GPC)を行ない、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。
[ゲル透過クロマトグラフ測定条件]
装置:WATERS 150Cモデル、
カラム:Shodex−HT806M、
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン、
温度:135℃、
単分散ポリスチレンフラクションを用いてユニバーサル評定。
MwのMnに対する比率(Mw/Mn)で示される分子量分布(Mw/Mnが大きいほど分子量分布が広い)については、「サイズ排除クロマトグラフィー(高分子の高速液体クロマトグラフィー)」(森定雄著,共立出版,96頁)に記載された分子量と検出器感度の式にn−アルカンおよびMw/Mn≦1.2の分別直鎖ポリエチレンのデータを当てはめて、次式で示される分子量Mの感度を求め、サンプル実測値の補正を行なった。
【数8】
分子量Mの感度=a+b/M
(a、bは定数で、a=1.032、b=189.2)
【0056】
f)耐環境応力亀裂(ESCR):
JIS K−6760(1996年版)に従って測定したBTL法によるF50値をESCR(hr)の値とした。
g)テンサイルインパクト:
ASTM D−1822に従って、23℃で測定したテンサイルインパクト(kJ/m2)を耐衝撃性の値とした。
【0057】
実施例1
(1)クロム触媒の調製
500mLのビーカーに富士シリシア社製CARiACT P−6グレードのシリカ(比表面積450m2/g、細孔体積1.3cm3/g、平均粒径40μm)20gを入れ、純水50mLを加えてスラリーとした。無水三酸化クロム(和光純薬製)0.40gを10mLの純水に溶解した溶液を撹拌しながらこれに加え、室温で1時間撹拌した。デカンテーションにより水を除き、110℃の定温乾燥器で12時間乾燥し、水分を飛ばした。得られた粉末15gを多孔板目皿付き、管径3cmの石英ガラス管に入れ、円筒状焼成用電気炉にセットし、1.0L/分の流速でモレキュラーシーブスを通した空気にて流動化させ、600℃で18時間焼成活性化を行なった。6価のクロム原子を含有することを示すオレンジ色のクロム触媒が得られた。元素分析の結果、クロム原子担持量は1.01%であった。Fisons Instruments S. p. A.社製 Sorptomatic SO 1990を用いて、真空下で200℃、1時間前処理を行なってから窒素吸着によるBET法(S. J. Gregg ら著, Adsorption, Surface Area and Porosity, 2nd Edition, 42頁, Academic Press, 1982年)で比表面積を測定したところ、440m2/gであった。
【0058】
(2)トリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒
予め窒素置換した100mLのフラスコに、上記(1)で得られたクロム触媒2gを入れ、蒸留精製したヘキサン30mLを加えスラリーとした。東ソー・アクゾ社製トリn−ブチルアルミニウムの0.1mol/L−ヘキサン溶液を3.9ml(Al/Crモル比=1)添加し、40℃で2時間撹拌した。撹拌終了後直ちに減圧下で30分かけて溶媒を除去し、さらさらの自由流動性(free flowing)のトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を得た。触媒は6価のクロムが還元され緑色を示した。
【0059】
(3)重合
充分に窒素置換した1.5Lのオートクレーブに上記(2)で得られたトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒50mgおよびイソブタン0.7Lを仕込み、内温を102℃まで昇温した。水素を0.1MPa導入した後、1−ヘキセン4gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.4MPa(Hc/ETc=8.4×10-4)となるように保ちながら、102℃で1時間重合を行なった。ついで内容ガスを系外に放出することにより重合を終結した。その結果、240gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は4800g/g・hrであった。物性(HLMFR、密度、分子量(Mn、Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、ESCR、テンサイルインパクト)の測定結果を表1に示す。
【0060】
実施例2
トリn−ブチルアルミニウムの代わりに、東ソー・アクゾ社製トリエチルアルミニウムの0.1mol/L−ヘキサン溶液を3.9ml(Al/Crモル比=1)添加した以外は全て実施例1(2)と同様にトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を調製し、重合を行なった。その結果、220gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は4400g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。
【0061】
実施例3
トリn−ブチルアルミニウムの代わりに、東ソー・アクゾ社製トリイソブチルアルミニウムの0.1mol/L−ヘキサン溶液を3.9ml(Al/Crモル比=1)添加した以外は全て実施例1(2)と同様にトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を調製し、重合を行なった。その結果、200gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は4000g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。
【0062】
実施例4
トリn−ブチルアルミニウムの代わりに、東ソー・アクゾ社製トリn−ヘキシルアルミニウムの0.1mol/L−ヘキサン溶液を3.9ml(Al/Crモル比=1)添加した以外は全て実施例1(2)と同様にトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を調製し、重合を行なった。その結果、230gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は4600g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。
【0063】
実施例5
トリn−ブチルアルミニウムの0.1mol/L−ヘキサン溶液の添加量を7.8ml(Al/Crモル比=2)に変えた以外は全て実施例1(2)と同様にトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を調製し、1−ヘキセンの導入量を1gに変えた以外は全て実施例1(3)と同様に重合を行なった。その結果、230gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は4600g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。
【0064】
実施例6
トリn−ブチルアルミニウムの0.1mol/L−ヘキサン溶液の添加量を19.4ml(Al/Crモル比=5)に変えた以外は全て実施例1(2)と同様にトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を調製し、1−ヘキセンの導入量を0.2g、重合温度を100℃に変えた以外は全て実施例1(3)と同様に重合を行なった(Hc/ETc=8.1×10-4)。その結果、130gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は2600g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。
【0065】
実施例7
実施例1(1)においてクロム触媒の焼成活性化の温度を500℃に変え(実施例1(1)と同様に窒素吸着によるBET法で比表面積を測定すると450m2/gであった。)、このクロム触媒を用いた以外は全て実施例1(2)と同様にトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を調製し、水素導入量を0.3MPa、1−ヘキセン導入量を3g、重合温度を105℃にそれぞれ変えた以外は全て実施例1(3)と同様に重合を行なった(Hc/ETc=2.7×10-3)。その結果、160gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は3200g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。
【0066】
実施例8
実施例1(1)においてクロム触媒の焼成活性化の温度を700℃に変え(実施例1(1)と同様に窒素吸着によるBET法で比表面積を測定すると440m2/gであった。)、このクロム触媒を用いた以外は全て実施例1(2)と同様にトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を調製し、重合温度を95℃に変えた以外は全て実施例1(3)と同様に重合を行なった(Hc/ETc=7.6×10-4)。その結果、2200gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は4400g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。
【0067】
実施例9
実施例1(2)のトリアルキルアルミニウム化合物担持触媒を用い、水素導入量を0.3MPa、1−ヘキセン導入量を6g、重合温度を98℃にそれぞれ変えた以外は全て実施例1(3)と同様に重合を行なった(Hc/ETc=7.9×10-4)。その結果、210gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は4200g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。
【0068】
実施例10
(1)クロム触媒の調製
W. R. Grace社から購入したHA30W触媒(クロム担持量=1.0%、比表面積500m2/g、細孔体積1.5cm3/g、平均粒径70μm)を実施例1(1)と同様に600℃で18時間焼成活性化を行なった。元素分析の結果クロム原子担持量は0.99%であった。実施例1(1)と同様に窒素吸着によるBET法で比表面積を測定すると、420m2/gであった。
【0069】
(2)トリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒の調製
実施例1(2)において、クロム触媒として上記(1)で得られた触媒を用い、トリn−ブチルアルミニウムの0.1mol/L−ヘキサン溶液を3.8ml(Al/Crモル比=1)添加した以外は同様にトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を調製した。触媒は6価のクロムが還元され緑色を示した。
【0070】
(3)重合
上記(2)で得られたトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を用いた以外は全て実施例1(3)と同様に重合を行なった。その結果、250gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は5000g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。
【0071】
実施例11:気相重合
G. Mabilonら著, Eur. Polym. J., Volume 21, 245頁, 1985年に記載されている流動床反応器と同様の垂直振動型反応器(容量150cm3、直径50mm、振動速度420回/分(7Hz)、振動距離6cm)を作成し気相重合を行なった。
予め窒素置換した反応器に、実施例1(2)で得たトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒20mgを窒素雰囲気下でアンプルに封入したものを入れ、104℃まで加熱してから0.017MPaの水素を導入した後、1−ヘキセン3gを1.4MPaのエチレンで加圧導入し、振動を開始しアンプルを割ることによって重合を開始した。
反応器内のエチレン分圧を1.4MPaに維持するように、フレキシブル継ぎ手を経由して必要に応じてエチレンを送給した(Hp/ETp=1.2×10-2)。105℃で15分間、重合を行なった後エチレン送給を中止し、反応器を室温まで冷却せしめ、ガス抜きし、内容物を取り出した。その結果、22gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は4400g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。
【0072】
実施例12:二段重合
内容積200Lの第一段反応器にイソブタンを120L/hr、実施例1(2)で得られたトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を5g/hrの速度で連続的に供給し、反応器内容物を所要速度で排出しながら、101℃において液相中の水素濃度のエチレン濃度に対する質量比(Hc/ETc)を8.3×10-4、液相中の1−ヘキセン濃度のエチレン濃度に対する質量比を0.13に保つようにエチレン、水素、1−ヘキセンを供給し、全圧4.1MPa、平均滞留時間0.9hrの条件で、液充満の状態で連続的に第一段重合を行なった。生成した共重合体を含むイソブタンのスラリーをそのまま内容積400Lの第二段反応器に全量、内径50mmの連結管を通して導入し、触媒を追加することなく、103℃においてイソブタン(55L/hr)、エチレンおよび水素(Hc/ETc=8.5×10-4)を供給し、全圧4.1MPa、平均滞留時間1.1hrの条件で第二段重合を行ないポリエチレンを得た。第一段の高分子量成分の比率は47質量部、第二段の低分子量成分の比率は53質量部であった。また第一段目の触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は5200g/g・hr、第二段目の触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は4700g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。
【0073】
比較例1
トリn−ブチルアルミニウムの担持を行なわずに、実施例1(1)のクロム触媒を用い、1−ヘキセンの導入量を5gに変えた以外は全て実施例1(3)と同様に重合を行なった。その結果、130gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は2600g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。実施例1に比べ活性が大幅に低下し、ESCRおよび耐衝撃性が劣っていた。
【0074】
比較例2
実施例1(3)において、水素を全く導入せず(Hc/ETc=0)、重合温度を103℃に変えた以外は全て実施例1と同様に重合を行なった。その結果、235gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は4700g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。実施例1に比べESCRおよび耐衝撃性が劣っていた。
【0075】
比較例3
(1)クロム触媒の調製
実施例1(1)のP−6グレードのシリカの代わりに、富士シリシア社製P−10グレードのシリカ(比表面積300m2/g、細孔体積1.5cm3/g、平均粒径40μm)を用いた以外は全て実施例1(1)と同様にクロム触媒を調製し、焼成活性化を行なった。元素分析を行なうとクロム原子担持量は0.98%であった。実施例1(1)と同様に窒素吸着によるBET法で比表面積を測定すると、290m2/gであった。
【0076】
(2)トリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒の調製
実施例1(2)において、クロム触媒として上記(1)で得られた触媒を用い、トリn−ブチルアルミニウムの0.1mol/L−ヘキサン溶液を18.8ml(Al/Crモル比=5)添加した以外は同様にトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を調製した。触媒は6価のクロムが還元され緑色を示した。
【0077】
(3)重合
上記(2)で得られたトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を用い、1−ヘキセンの導入量を0.2g、重合温度を96℃に変えた以外は全て実施例1(3)と同様に重合を行なった(Hc/ETc=8.1×10-4)。その結果、25gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は500g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。実施例6に比べ活性が激減し、分子量分布(Mw/Mn)が広がり、比較例1および2よりESCRは少し向上したが実施例6に比べ耐衝撃性が劣っていた。
【0078】
比較例4
トリn−ブチルアルミニウムの0.1mol/L−ヘキサン溶液の添加量を0.78ml(Al/Crモル比=0.2)に変えた以外は全て実施例1(2)と同様にトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を調製し、重合温度を103℃に変えた以外は全て実施例1(3)と同様に重合を行なった(Hc/ETc=8.5×10-4)。その結果、155gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は3100g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。比較例1に比べ活性は少し向上したが、実施例1に比べESCRおよび耐衝撃性が劣っていた。
【0079】
比較例5
トリn−ブチルアルミニウムの0.1mol/L−ヘキサン溶液3.9mLの代わりに1.0mol/L−ヘキサン溶液を5.8mL(Al/Crモル比=15)添加した以外は全て実施例1(2)と同様にトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を調製し、1−ヘキセンの導入量を0.2g、重合温度を90℃に変えた以外は全て実施例1(3)と同様に重合を行なった(Hc/ETc=7.0×10-4)。その結果、30gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は600g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。実施例1に比べ活性は激減し、分子量分布(Mw/Mn)が広がり、比較例1および2よりESCRは少し向上したが実施例1より耐衝撃性が劣っていた。
【0080】
比較例6
充分に窒素置換した1.5Lのオートクレーブに実施例1(1)で得られたクロム触媒50mgおよびイソブタン0.7Lを仕込み、内温を100℃まで昇温した。水素を0.1MPa導入した後、トリn−ブチルアルミニウムの0.1mol/L−ヘキサン溶液0.49mL(Al/Crモル比=5)および1−ヘキセン0.2gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.4MPa(Hc/ETc=8.1×10-4)となるように保ちながら、100℃で実施例1(3)と同様に重合を行なった。その結果、60gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は1200g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。実施例6に比べ活性は低下し、分子量分布(Mw/Mn)が広がり、比較例1および2よりESCRは向上したが実施例6に比べ耐衝撃性が劣っていた。
【0081】
比較例7
実施例1(2)のトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を用い、微量水素ボンベにてエチレン分圧1.4MPaの時にHc/ETc=8.1×10-7となるように水素を微量導入した以外は全て実施例1(3)と同様に重合を行なった。その結果、245gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は4900g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。比較例2に比べ、活性、ESCR、耐衝撃性は変わらず、実施例1よりESCRおよび耐衝撃性が劣っていた。
【0082】
比較例8
実施例1(2)のトリアルキルアルミニウム化合物担持触クロム媒を用い、水素導入量を1.5MPa(Hc/ETc=1.3×10-2)、重合温度を95℃、1−ヘキセン添加量を6gにそれぞれ変えた以外は全て実施例1(3)と同様に重合を行なった。その結果、145gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は2900g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。実施例1に比べ、活性は低下し、分子量分布(Mw/Mn)が広がり、比較例1および2よりESCRは少し向上したが実施例1より耐衝撃性が劣っていた。
【0083】
比較例9
実施例10(1)で焼成活性化したHA30W触媒を用い、1−ヘキセン添加量を5gに変えた以外は、全て実施例1(3)と同様に重合を行なった。その結果、125gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は2500g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。実施例10に比べ活性が大幅に低下し、ESCRおよび耐衝撃性が劣っていた。
【0084】
比較例10
実施例10(2)で得たトリアルキルアルミニウム化合物担持HA30W触媒を用い、水素を全く導入せず(Hc/ETc=0)、重合温度を103℃に変えた以外は全て実施例1(3)と同様に重合を行なった。その結果、240gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は4800g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。実施例10に比べESCRおよび耐衝撃性が劣っていた。
【0085】
比較例11
(1)クロム触媒の調製
W. R. Grace社から購入したフィリップス触媒として969ID触媒(クロム担持量=1.0%、比表面積310m2/g、細孔体積1.2cm3/g、平均粒径80μm)を実施例1(1)と同様に600℃で18時間焼成活性化を行なった。元素分析の結果、クロム原子担持量は1.02%であった。実施例1(1)と同様に窒素吸着によるBET法で比表面積を測定すると、280m2/gであった。
【0086】
(2)トリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒の調製
実施例1(2)において、クロム触媒として上記(1)で得られたクロム触媒を用い、トリn−ブチルアルミニウムの0.1mol/L−ヘキサン溶液を3.9ml(Al/Crモル比=1)添加した以外は同様にトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を調製した。触媒は6価のクロムが還元され緑色を示した。
【0087】
(3)重合
上記(2)で得られたトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を用い、重合温度を100℃に変えた以外は全て実施例1(3)と同様に重合を行なった(Hc/ETc=8.1×10-4)。その結果、120gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は2400g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。実施例1に比べ活性が大幅に低下し、ESCRおよび耐衝撃性が劣っていた。
【0088】
比較例12
実施例1(2)において、トリn−ブチルアルミニウムを添加し40℃、2時間撹拌後、スラリー状態のまま室温で96時間放置してから減圧下で溶媒を除去し、さらさらの自由流動性(free flowing)のトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を得た。この触媒を用いた以外は、実施例1(3)と同様に重合を行なった。その結果、135gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は2700g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。実施例1に比べ活性は低下し、分子量分布(Mw/Mn)が広がり、比較例1および2よりESCRは少し向上したが実施例1より耐衝撃性が劣っていた。
【0089】
比較例13
トリn−ブチルアルミニウムの代わりに、東ソー・アクゾ社製ジエチルアルミニウムエトキシドの0.1mol/L−ヘキサン溶液を3.9ml(Al/Crモル比=1)添加した以外は、全て実施例1(2)と同様に担持触媒を調製し、重合温度を100℃に変え、1−ヘキセンの導入量を5gに変えた以外は全て実施例1(3)と同様に重合を行なった。その結果、160gのポリエチレンが得られた。触媒1g、重合時間1時間当たりの重合活性は3200g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。実施例1に比べ活性が低下し、分子量分布(Mw/Mn)が広がった。比較例1および2よりESCRは向上したが実施例1より耐衝撃性が劣っていた。
【0090】
比較例14
トリn−ブチルアルミニウムの代わりに、Aldrich社製ジブチルマグネシウムの0.1mol/L−ヘキサン溶液を3.9ml(Al/Crモル比=1)添加した以外は、全て実施例1(2)と同様に担持触媒を調製し、1−ヘキセンの導入量を4.5gに変えた以外は全て実施例1(3)と同様に重合を行なった。その結果、165gのポリエチレンが得られた。触媒1g、重合時間1時間当たりの重合活性は3300g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。実施例1に比べ活性が低下し、ESCRが劣っていた。
【0091】
比較例15
トリn−ブチルアルミニウムの代わりに、東ソー・アクゾ社製イソブチルアルモキサン(PBAO)の0.1mol/L−ヘキサン溶液を3.9ml(Al/Crモル比=1)添加した以外は、全て実施例1(2)と同様に担持触媒を調製し、1−ヘキセンの導入量を4.5gに変えた以外は全て実施例1(3)と同様に重合を行なった。その結果、160gのポリエチレンが得られた。触媒1g、重合時間1時間当たりの重合活性は3200g/g・hrであった。物性測定結果を表1に示す。
実施例1に比べ活性が低下し、ESCRが劣っていた。
【0092】
比較例16
充分に窒素置換した1.5Lのオートクレーブにイソブタン0.7L、次いでトリn−ブチルアルミニウムの0.1mol/L−ヘキサン溶液0.49mlおよび1−ヘキセン0.2gを仕込んだ。内温を100℃まで昇温した後、エチレンおよび水素を導入し、エチレン分圧を1.4MPa、水素分圧を0.1MPa(Hc/ETc=8.1×10-4)とした。次いで実施例1(1)で得られたクロム触媒50mg(Al/Crモル比=5)を窒素で加圧導入して重合を開始した。エチレン分圧を1.4MPaとなるように保ちながら100℃で1時間重合を行なった。その結果、53gのポリエチレンが得られた。触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は1060g/g・hrであった。実施例6に比べ活性は低下し、分子量分布(Mw/Mn)が広がり、比較例1および2よりESCRは向上したが実施例6に比べ耐衝撃性が劣っていた。
【0093】
【表1】
Figure 0004610130
【0094】
【表2】
Figure 0004610130
【0095】
【表3】
Figure 0004610130
【0096】
【発明の効果】
本発明の方法に従い、クロム触媒に不活性炭化水素溶媒中でトリアルキルアルミニウム化合物を担持し、さらに溶媒を除去・乾燥して得た触媒を用い、水素を共存させてエチレンの重合、好ましくは連続重合を行なうことにより、耐環境応力亀裂(ESCR)と耐衝撃性が共に向上しそのバランスに優れたエチレン系重合体を製造することができる。
本発明の方法により得られるエチレン系重合体は、一般にはESCRと耐衝撃性という相反する異なる物性の両方が同時に向上するという特徴を有し、用途としては特にブロー成形製品に適し、なかんずく大型ブロー成形製品に適している。
【0097】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用するエチレン系重合体製造用触媒調製のフローチャート図である。

Claims (1)

  1. クロム化合物を無機酸化物担体に担持し非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子を6価とした後、不活性炭化水素溶媒中でトリアルキルアルミニウム化合物を担持させ、トリアルキルアルミニウム化合物の担持反応時間の3倍以内の時間で不活性炭化水素溶媒を除去・乾燥して得られるトリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を用いて水素を共存させながらエチレンの重合を行なうエチレン系重合体の製造方法であって、焼成活性化した後のクロム化合物担持無機酸化物担体の比表面積が350m2/g以上であり、前記トリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒におけるクロム原子に対するトリアルキルアルミニウム化合物のモル比が0.5〜10であり、重合を液相で行なう場合は、液相中の水素濃度(Hc;質量%)とエチレン濃度(ETc;質量%)との比が下記式:
    1.0×10-6≦Hc/ETc≦1.0×10-2
    の関係を満たす条件で重合を行ない、重合を気相で行なう場合は、気相中の水素分圧(Hp;MPa)とエチレン分圧(ET;MPa)との比が下記式:
    1.0×10-4≦Hp/ETp≦1.0
    の関係を満たす条件で重合を行なうことを特徴とするエチレン系重合体の製造方法。
JP2001197592A 2000-07-07 2001-06-29 エチレン系重合体およびその製造方法 Expired - Fee Related JP4610130B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001197592A JP4610130B2 (ja) 2000-07-07 2001-06-29 エチレン系重合体およびその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000-207384 2000-07-07
JP2000207384 2000-07-07
JP2001197592A JP4610130B2 (ja) 2000-07-07 2001-06-29 エチレン系重合体およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002080521A JP2002080521A (ja) 2002-03-19
JP4610130B2 true JP4610130B2 (ja) 2011-01-12

Family

ID=26595636

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001197592A Expired - Fee Related JP4610130B2 (ja) 2000-07-07 2001-06-29 エチレン系重合体およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4610130B2 (ja)

Families Citing this family (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7388059B2 (en) 2004-06-28 2008-06-17 Japan Polyethylene Corporation Ethylene polymer, catalyst for producing thereof and method for producing thereof
JP5066308B2 (ja) * 2004-12-28 2012-11-07 日本ポリエチレン株式会社 有機ホウ素処理フッ素化クロム重合触媒及びエチレン系重合体の製造方法並びにエチレン系重合体
JP5168779B2 (ja) * 2005-12-19 2013-03-27 東ソー株式会社 エチレン系重合体
JP5216566B2 (ja) * 2007-12-28 2013-06-19 日本ポリエチレン株式会社 ポリエチレン系樹脂、それを用いた中空プラスチック成形品およびその用途
EP2447287B1 (en) 2009-06-26 2017-07-26 Japan Polyethylene Corporation Polyethylene resin, catalyst used for production of the same, method for producing the same, hollow plastic molded article containing polyethylene resin, and use of the hollow plastic molded article
JP5460140B2 (ja) * 2009-06-26 2014-04-02 日本ポリエチレン株式会社 エチレン重合用触媒
JP5175802B2 (ja) * 2009-06-26 2013-04-03 日本ポリエチレン株式会社 クロム系触媒を用いたエチレン系重合体の製造方法
US20130280462A1 (en) * 2010-12-24 2013-10-24 Japan Polyehtylene Corporation Polyethylene having improved branching degree distribution
US10301409B2 (en) 2011-03-30 2019-05-28 Japan Polyethylene Corporation Ethylene-based polymer, manufacturing method of ethylene-based polymer and manufacturing method of catalyst for polymerization, and molded article of hollow plastics containing ethylene-based polymer and use thereof
JP6199731B2 (ja) * 2013-12-26 2017-09-20 旭化成株式会社 ポリエチレンの製造方法
JP6934518B2 (ja) * 2016-11-18 2021-09-15 エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド クロム含有触媒を利用する重合方法
JP7342394B2 (ja) * 2018-03-26 2023-09-12 日本ポリエチレン株式会社 エチレン系重合触媒の製造方法およびエチレン系重合体の製造方法

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1998046653A1 (fr) * 1997-04-11 1998-10-22 Showa Denko K. K. Procede de preparation de polymere d'ethylene et catalyseur utilise a cet effet

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03188108A (ja) * 1989-12-18 1991-08-16 Asahi Chem Ind Co Ltd α―オレフィンの重合方法
FR2665704B1 (fr) * 1990-08-07 1994-04-08 Bp Chemicals Snc Procede pour arreter une reaction de (co-)polymerisation effectuee a l'aide d'un catalyseur a base d'oxyde de chrome.
JPH11228623A (ja) * 1998-02-17 1999-08-24 Showa Denko Kk エチレン系重合体の製造方法
JPH11302465A (ja) * 1998-02-17 1999-11-02 Showa Denko Kk ポリエチレン樹脂組成物

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1998046653A1 (fr) * 1997-04-11 1998-10-22 Showa Denko K. K. Procede de preparation de polymere d'ethylene et catalyseur utilise a cet effet

Also Published As

Publication number Publication date
JP2002080521A (ja) 2002-03-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6646069B2 (en) Ethylene polymers and method for producing the same
EP2785751B1 (en) Long chain branched polymers and methods of making same
CN1214343A (zh) 烯烃聚合方法及其产品
KR20020093992A (ko) 중합 촉매 조성물 및 중합체와 2모드 중합체의 제조방법
JP4610130B2 (ja) エチレン系重合体およびその製造方法
JP5894237B2 (ja) 硫酸塩による処理を通して活性クロム/アルミナ触媒群を調製する方法および当該クロム/アルミナ触媒群を用いて製造する重合体類
JP4610051B2 (ja) エチレン系重合用触媒、エチレン系重合体およびその製造方法
KR20020053849A (ko) 중합 촉매 및 방법
US6555642B2 (en) Olefin polymer or copolymer formed using a solid catalytic component
EP1448633B2 (en) Two-step polymerization process
JPH11511488A (ja) 環境応力亀裂抵抗の高いエチレンの重合体
JP5175802B2 (ja) クロム系触媒を用いたエチレン系重合体の製造方法
JPH01247405A (ja) 高密度で幅広い分子量分布のα―オレフィンポリマー製造用触媒組成物
JP5460140B2 (ja) エチレン重合用触媒
JP3715595B2 (ja) エチレン系重合体の製造方法
JPH11302465A (ja) ポリエチレン樹脂組成物
JP4653881B2 (ja) エチレン系重合体及びその製造方法
JP3786624B2 (ja) エチレン系重合体の製造方法およびエチレン系重合体
JP5581305B2 (ja) エチレン重合用触媒、それを用いたポリエチレンの製造方法、並びにブロー成形製品用ポリエチレン及び大型ブロー成形製品用ポリエチレン
JP6862997B2 (ja) エチレン重合触媒の製造方法
JP5891901B2 (ja) ポリエチレンおよびその製造方法
JP2006182917A (ja) 有機ホウ素処理フッ素化クロム重合触媒及びエチレン系重合体の製造方法並びにエチレン系重合体
JP5803774B2 (ja) エチレン重合用クロム触媒の製造方法
JPH11106422A (ja) ブロー成形用ポリエチレンの製造
JP2004536914A (ja) エチレン及びその共重合体の重合方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070508

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090304

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100721

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100908

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20100908

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20101005

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20101012

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131022

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4610130

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees