JP4516222B2 - 自動二輪車の車体フレーム構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動二輪車の車体フレーム構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動二輪車のエンジン、燃料タンク、シート等の配置は車種によって異なる。これに応じて車体フレームも多くの種類がある。そのうち、車体フレームにエンジンを固定するとともに車体フレームの後部にスイングアームを介して後輪を取付けるものとしては、例えば実公平2−14545号公報「自動二輪車の車体フレーム」(以下、「従来の技術▲1▼」と言う)や、実開昭63−147388号公報「オートバイのフレーム」(以下、「従来の技術▲2▼」と言う)が知られている。
【0003】
上記従来の技術▲1▼は、同公報の第1図及び第11図に示される通り、ヘッドパイプ14(番号は公報に記載されたものを引用した。以下同じ。)から後方へ下部フレーム17を延し、下部フレーム17の後端からセンターフレーム18を下ろし、センターフレーム18にピボット部35を介してリアフォーク4を上下スイング可能に取付け、このリアフォーク4に後輪2を取付け、さらに、下部フレーム17の取付部28及びセンターフレーム18の取付部29,30にエンジン8を取付けたというものである。取付部29,30はピボット部35の上方及び下方に設けたものである。
【0004】
走行中の路面反力は後輪2、リアフォーク4及びピボット部35を介してセンターフレーム18に作用する。一方、エンジン8の荷重は上下の取付部29,30を介してセンターフレーム18に作用する。
なお、センターフレーム18は本発明のロアブラケットに相当し、リアフォーク4は本発明のスイングアームに相当する。
【0005】
上記従来の技術▲2▼は、同公報の第1図に示される通り、ヘッドパイプ5から後方へメインフレーム1を延し、メインフレーム1の後端から下フレーム6を下ろし、下フレーム6に後ホーク12を上下スイング可能に取付け、この後ホーク12に後輪を取付け、さらに、メインフレーム1のエンジン取付部及び下フレーム6の上下のエンジン取付部にエンジンケース2を取付けたというものである。下フレーム6の上下のエンジン取付部は後ホーク取付部の上方及び下方に設けたものである。
【0006】
走行中の路面反力は後輪、後ホーク12及びピボット部を介して下フレーム6に作用する。一方、エンジンケース2の荷重は上下のエンジン取付部を介して下フレーム6に作用する。
なお、下フレーム6は本発明のロアブラケットに相当し、後ホーク12は本発明のスイングアームに相当する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術▲1▼は、センターフレーム18に対する取付部29,30を、エンジン8のすぐ近くに設けたものである。エンジン8の近くに取付部29,30があるので、エンジン8を取付部29,30に取付けるハンガーの長さを、小さくできる。
このように、自動二輪車全体並びにエンジン8のデザイン上の制約や各部品の配置上の制約があり、ピボット部35の中心を通る鉛直線上に上・下のエンジン取付部の全てを配置することは、できない場合が多い。
従って、取付部29,30はピボット部35から前方へオフセットした位置にある。オフセットしていると、その分だけモーメントが生じるので、センターフレーム18の剛性を高める必要がある。
【0008】
ところで、自動二輪車の操縦安定性を確保するためには、車体フレーム全体の剛性のバランスが重要である。従って、センターフレーム18の剛性だけを大幅に高めることはできない。大荷重が作用する取付部29,30、ピボット部35及びこれらの部分の周囲だけを部分的に補強することになる。例えば、部分的に板厚を上げたり補強材を設ける。しかし、センターフレーム18の重量が増すので、車体フレームの全重量も増す。しかも、補強するための工数が増すので、コストアップの要因となる。
上記従来の技術▲2▼についても同様である。
【0009】
そこで本発明の目的は、フレーム重量を抑制するとともにコストアップを抑制しつつ、ロアブラケットに必要な剛性を確保することができる技術を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、ヘッドパイプから後方へ左右一対のメインフレームを延し、これら左右のメインフレームの後端から左右のピボット取付用ロアブラケットを下ろし、これら左右のロアブラケットに、後輪付きスイングアーム用ピボット軸を設け、前記左右のロアブラケットに前記ピボット軸の上方及び下方の位置でエンジン取付部を設けた自動二輪車の車体フレーム構造において、前記左右の上のエンジン取付部にエンジンの後上ハンガー部を取り付ける取付部材と、左右の下のエンジン取付部にエンジンの後下ハンガー部を取り付ける取付部材とが各々一本の長いボルトで構成され、エンジンは、その後端部に、上のエンジン取付部に取り付けられる後上ハンガー部と、下のエンジン取付部に取り付けられる後下ハンガー部とを有し、前記左右のロアブラケットは、その上端から前記左右のメインフレームの延出方向に沿って延び、下側に屈曲するとともに、上下方向に延びるように形成されており、前記上のエンジン取付部は、前記ロアブラケットの上下方向に延びる部分の前縁よりも後方に配置されており、前記上のエンジン取付部の中心から前記下のエンジン取付部の中心まで延した直線が、鉛直線又はほぼ鉛直線となるようにし、このような直線が前記ピボット軸の断面でピボット軸中心よりも前側を通るように構成し、前記ロアブラケットの上端間に、前記上のエンジン取付部の後方に隣接するとともに、前記ロアブラケット後端までの前後幅を有する上部クロスメンバを掛け渡し、前記ロアブラケットの下端間に、前記下のエンジン取付部の後方に隣接するとともに、前記ロアブラケット後端までの前後幅を有する下部クロスメンバを掛け渡したことを特徴とする。
【0011】
上のエンジン取付部の中心から下のエンジン取付部の中心まで延した直線を考えたときに、この直線を、ピボット軸の断面を通る鉛直線又はほぼ鉛直線となるようにした。ロアブラケットの剛性を確保するためには、ピボット軸の中心を通る鉛直線に前記直線を合致させることが最も好ましい。合致しない場合であっても、比較的大剛性であるピボット軸の断面を通る鉛直線又はほぼ鉛直線に前記直線を合致させることで、実質的には、ピボット軸の中心を通る鉛直線に直線を合致させたものと見做すことができる。何故なら、ピボット軸の中心を通る鉛直線に対し、上下のエンジン取付部の中心のオフセット量が小さいので、オフセットに伴うモーメントが極めて小さいからである。このようなモーメントが小さいので、ロアブラケットだけの剛性を高める必要はない。自動二輪車の操縦安定性を勘案して、車体フレーム全体の剛性のバランスを考慮することで、ロアブラケットに必要な剛性を確保することができる。さらには、ロアブラケットを補強する必要がないので、フレーム重量を抑制するとともにコストアップを抑制することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従う。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【0013】
図1は本発明に係る自動二輪車の左側面図であり、自動二輪車10の要部を示す。
自動二輪車10は、車体フレーム11と、車体フレーム11のヘッドパイプ12に取付けたフロントフォーク13と、フロントフォーク13の下部に取付けた前輪14と、フロントフォーク13に連結したハンドル15と、車体フレーム11の長手略中央に取付けたエンジン16と、エンジン16の後部に取付けた変速機17と、車体フレーム11の後部に取付けたスイングアーム式懸架装置18と、スイングアーム式懸架装置18に取付けた後輪19と、車体フレーム11の上部に取付けた前部の吸気ボックス21並びに後部の燃料タンク22と、燃料タンク22に内蔵した縦長型の燃料供給ポンプ23と、燃料タンク22の後半部における上部並びに左右両側部を覆ったリヤカウル24と、リヤカウル24に取付けたシートクッション25並びにシートバック26と、を主要な構成部材としたレーシング用の車両である。
【0014】
車体フレーム11は、ヘッドパイプ12と、ヘッドパイプ12から後方へ延した左右一対のメインフレーム31,31(この図では手前の1個のみを示す。以下同じ。)と、左右のメインフレーム31,31の後端から下ろした左右のピボット取付用ロアブラケット35,35とを、主要な構成要素とした側面視略逆L字状フレームである。
【0015】
より具体的には、メインフレーム31は後下方へ延びるとともに長手略中央から下方へブラケット部32を延し、このブラケット部32に上下の前部エンジン取付部33,34を設けた部材である。
ロアブラケット35は、上下方向途中に後輪付きスイングアーム用ピボット36を設けるとともに、このスイングアーム用ピボット36の上方及び下方に後部エンジン取付部37,38を設けた構造である。
以下、後輪付きスイングアーム用ピボット36のことを「スイングアーム用ピボット36」と言い、上位の後部エンジン取付部37のことを「上のエンジン取付部37」と言い、下位の後部エンジン取付部38のことを「下のエンジン取付部38」と言う。
【0016】
エンジン16は、前シリンダ51並びに後シリンダ52を有するV型5気筒エンジンである。ところで、エンジン16は後部に変速機17を一体的に組付けることで、パワーユニット27をなす。以下の説明においてエンジン16と言うときには、変速機17を包含したものを指す。
【0017】
このようなエンジン16は側面視において、前シリンダ51に設けた前上ハンガー部53並びに前下ハンガー部54と、後端部に設けた後上ハンガー部55並びに後下ハンガー部56とを備える。前上・前下ハンガー部53,54はメインフレーム31の前部エンジン取付部33,34に取付ける部材であり、後上ハンガー部55は上のエンジン取付部37に取付ける部材であり、後下ハンガー部56は下のエンジン取付部38に取付ける部材である。
【0018】
スイングアーム式懸架装置18は、ロアブラケット35のスイングアーム用ピボット36にスイングアーム62の基端を上下スイング可能に取付け、さらにスイングアーム62を後方へ延し、その後端部に後輪19を回転可能に取付け、スイングアーム62の基端近傍にクッションユニット63の上端部を取付け、クッションユニット63の下端部をロアブラケット35の下端部にリンク機構64を介して取付けたものである。
【0019】
クッションユニット34は、後輪19からスイングアーム62を介して車体フレーム11に作用する衝撃力を吸収して緩和する部材である。スイングアーム62は上述のように、車体フレーム11の後部に取付けた後輪付きスイングアームである。
【0020】
図2は本発明に係る車体フレームの背面図であり、ヘッドパイプ12から後方へ左右のメインフレーム31,31を延し、これらのメインフレーム31,31の後端からロアブラケット35,35を下ろし、これらのロアブラケット35,35の上端間に上部クロスメンバ41を掛け渡し、ロアブラケット35,35の下端間に下部クロスメンバ42を掛け渡し、下部クロスメンバ42に左右のリンク取付用ブラケット43,43を取付けたことを示す。
【0021】
スイングアーム用ピボット36,36は水平なピボット中心Cm上で貫通した貫通孔であり、上のエンジン取付部37,37は水平な中心Cu上で貫通した貫通孔であり、下のエンジン取付部38,38は水平な中心Cd上で貫通した貫通孔である。
【0022】
図3は本発明に係るスイングアーム式懸架装置及びエンジン取付部の要部側面図であり、スイングアーム用ピボット36に後輪付きスイングアーム用ピボット軸61(以下「ピボット軸61」と言う。)で後輪付きスイングアーム62を上下スイング可能に連結したことを示す。すなわちロアブラケット35は、上下方向途中にピボット36を設けるとともに、このピボット軸36の上方及び下方にエンジン取付部37,38を設けたものである。
スイングアーム式懸架装置18のリンク機構64は、側面視三角形状の第1リンク65及び前後に細長い第2リンク66からなる。
【0023】
第1リンク65は3つの頂点部分のうち、後上の頂点部分にスイングアーム62の前下部を第1ピン71で上下スイング可能に連結し、前下の頂点部分に上記クッションユニット63の下端部(ピストンロッド側)を第2ピン72で上下スイング可能に連結し、後下の頂点部分に第2リンク66の後端部を第3ピン73で連結したものである。
第2リンク66の前端部は、上記リンク取付用ブラケット43に第4ピン74で上下スイング可能に連結したものである。
クッションユニット34は縦向きに配置し、上端部(シリンダ側)をスイングアーム62の前上部に第5ピン75で上下スイング可能に連結したものである。
【0024】
このような構成のスイングアーム式懸架装置18は次の作用をなす。
後輪19(図1参照)を介してスイングアーム62の後部に上向きの衝撃力が作用したとき、スイングアーム62はスイングアーム用ピボット36を中心に図反時計回りにスイングする。このときに第1リンク65は第1ピン71を中心に図時計回りにスイングする。これに応じてクッションユニット63の下端部は上昇する。この結果、クッションユニット63は縮みながら減衰力を発生して衝撃を吸収する。
【0025】
図4は図3の4−4線断面図であり、左右のスイングアーム用ピボット36,36にスイングアーム62の基端(左右の連結部62a,62a)を連結するピボット軸61が1本の長いボルトであること、左右の上のエンジン取付部37,37にエンジン16の後上ハンガー部55,55を取付ける取付部材77や、左右の下のエンジン取付部38,38にエンジン16の後下ハンガー部56,56を取付ける取付部材78が、各々1本の長いボルトであることを示す。
【0026】
ここで上記図3に戻って説明を続ける。
本発明は、上のエンジン取付部37の中心Cuから下のエンジン取付部38の中心Cdまで延した直線をLoとし、(1)直線Loが、鉛直線又はほぼ鉛直線となるようにし、且つ、(2)直線Loがピボット軸61の断面を通るようにしたことを特徴とする。以下、この点について詳しく説明する。
【0027】
より具体的には図3において、上のエンジン取付部37の中心Cuから下のエンジン取付部38の中心Cdまで延した直線Loを考えたときに、この直線Loを、ピボット軸61の断面を通る鉛直線又はほぼ鉛直線となるようにした。
ここで「ピボット軸61の断面」とは、ピボット軸61をこの軸に直角に切断したときの断面のことを言う。この実施の形態においては、ピボット軸61の断面は図3に示すような円形断面である。
【0028】
「鉛直線」とは、上記図1に示すように前・後輪14,19が接地するとともに、乗員が乗らずに荷物を積載しない状態(いわゆる空の状態であって、通称1Gの状態と言う。)の自動二輪車10を考えたときに、前・後輪14,19が接する面(接地面)に対して垂直な線のことを言う。この鉛直線は、路面に起立した状態の自動二輪車10における、上下方向の垂直な軸(Z軸)ということで、車体垂線とも称する。
【0029】
上述の「直線Loを、ピボット軸61の断面を通るほぼ鉛直線となるようにした」構成は、好ましくは、ピボット軸61を通る鉛直線Lvから前後各15゜の範囲内に上・下のエンジン取付部37,38を配置した構成にすることである。詳しくは、次の通りである。
【0030】
ピボット軸61のピボット中心Cmを通る鉛直線Lvを考え、また、ピボット中心Cmを通るとともに前に傾けた直線を第1の線Lfとし、ピボット中心Cmを通るとともに後に傾けた直線を第2の線Lrとする。鉛直線Lvに対して、第1の線Lfの傾斜角θ1及び第2の線Lrの傾斜角θ2は、共に15゜である。第1の線Lfと第2の線Lrとで囲う傾斜角(θ1+θ2=30゜)の範囲内、すなわち鉛直線Lvから前後各15゜の範囲内に上のエンジン取付部37及び下のエンジン取付部38を配置する。
【0031】
この実施の形態においては、第1の線Lf上に上のエンジン取付部37の中心Cuを配置するとともに、鉛直線Lv上に下のエンジン取付部38の中心Cdを配置したものである。
【0032】
図5(a)は本発明の参考例を示す側面図、また、(b)〜(d)は本発明に係るピボット軸に対する上・下のエンジン取付部の配置例を示す側面図である。
(a)は、ピボット軸61のピボット中心Cmを通る鉛直線Lv上に直線Loを配置した参考例を示す。
(b)は、ピボット中心Cmを通る鉛直線Lvの前に上のエンジン取付部37の中心Cuを配置するとともに、鉛直線Lv上に下のエンジン取付部38の中心Cdを配置した例を示す。
(c)は、ピボット中心Cmを通る鉛直線Lv上に上のエンジン取付部37の中心Cuを配置するとともに、鉛直線Lvの前に下のエンジン取付部38の中心Cdを配置した例を示す。
(d)は、ピボット中心Cmを通る鉛直線Lvの前に配置した直線Loを、鉛直線Lvに平行になるようにした例を示す。
【0033】
上記(b)〜(d)の例においては、直線Loを、ピボット中心Cmを通る鉛直線Lvの線対称に配置した変形例としてもよい。このような(b)〜(d)の変形例及び上記(a)〜(d)のいずれの例も、直線Loを、ピボット軸61の断面を通る鉛直線又はほぼ鉛直線となるようにしたものである。
特に、上記(a)〜(d)の例にすることがより好ましい。上記図3に示すエンジン16の後上・後下ハンガ部55,56の長さを小さくできるからである。
【0034】
ロアブラケット35の剛性を確保するためには、(a)のようにピボット中心Cmを通る鉛直線Lvに直線Loを合致させることが最も好ましい。
合致しない場合であっても、(b)〜(d)及びこれら(b)〜(d)の変形例のように、比較的大剛性であるピボット軸61の断面を通る鉛直線又はほぼ鉛直線に直線Loを合致させることで、実質的には、ピボット中心Cmを通る鉛直線Lvに直線Loを合致させたものと見做すことができる。何故なら、ピボット中心Cmを通る鉛直線Lvに対し、上下のエンジン取付部37,38の中心Cu,Cdのオフセット量が小さいので、オフセットに伴うモーメントが極めて小さいからである。
【0035】
このようなモーメントが小さいので、ロアブラケット35だけの剛性を高める必要はない。自動二輪車の操縦安定性を勘案して、車体フレーム全体の剛性のバランスを考慮することで、ロアブラケット35に必要な剛性を確保することができる。さらには、ロアブラケット35を補強する必要がないので、フレーム重量を抑制するとともにコストアップを抑制することができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、ヘッドパイプから後方へ左右一対のメインフレームを延し、これら左右のメインフレームの後端から左右のピボット取付用ロアブラケットを下ろし、これら左右のロアブラケットに、後輪付きスイングアーム用ピボット軸を設け、前記左右のロアブラケットに前記ピボット軸の上方及び下方の位置でエンジン取付部を設けた自動二輪車の車体フレーム構造において、前記左右の上のエンジン取付部にエンジンの後上ハンガー部を取り付ける取付部材と、左右の下のエンジン取付部にエンジンの後下ハンガー部を取り付ける取付部材とが各々一本の長いボルトで構成され、エンジンは、その後端部に、上のエンジン取付部に取り付けられる後上ハンガー部と、下のエンジン取付部に取り付けられる後下ハンガー部とを有し、前記左右のロアブラケットは、その上端から前記左右のメインフレームの延出方向に沿って延び、下側に屈曲するとともに、上下方向に延びるように形成されており、前記上のエンジン取付部は、前記ロアブラケットの上下方向に延びる部分の前縁よりも後方に配置されており、前記上のエンジン取付部の中心から前記下のエンジン取付部の中心まで延した直線が、鉛直線又はほぼ鉛直線となるようにし、このような直線が前記ピボット軸の断面でピボット軸中心よりも前側を通るように構成し、前記ロアブラケットの上端間に、前記上のエンジン取付部の後方に隣接するとともに、前記ロアブラケット後端までの前後幅を有する上部クロスメンバを掛け渡し、前記ロアブラケットの下端間に、前記下のエンジン取付部の後方に隣接するとともに、前記ロアブラケット後端までの前後幅を有する下部クロスメンバを掛け渡したことを特徴とする。
ロアブラケットの剛性を確保するためには、ピボット軸の中心を通る鉛直線に前記直線を合致させることが最も好ましい。合致しない場合であっても、比較的大剛性であるピボット軸の断面を通る鉛直線又はほぼ鉛直線に前記直線を合致させることで、実質的には、ピボット軸の中心を通る鉛直線に直線を合致させたものと見做すことができる。何故なら、ピボット軸の中心を通る鉛直線に対し、上下のエンジン取付部の中心のオフセット量が小さいので、オフセットに伴うモーメントが極めて小さいからである。このようなモーメントが小さいので、ロアブラケットだけの剛性を高める必要はない。自動二輪車の操縦安定性を勘案して、車体フレーム全体の剛性のバランスを考慮することで、ロアブラケットに必要な剛性を確保することができる。さらには、ロアブラケットを補強する必要がないので、フレーム重量を抑制するとともにコストアップを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る自動二輪車の左側面図
【図2】 本発明に係る車体フレームの背面図
【図3】 本発明に係るスイングアーム式懸架装置及びエンジン取付部の要部側面図
【図4】 図3の4−4線断面図
【図5】 図5(a)は、本発明の参考例を示す側面図、図5(b)〜(d)は、本発明に係るピボット軸に対する上・下のエンジン取付部の配置例を示す側面図
【符号の説明】
10…自動二輪車、11…車体フレーム、12…ヘッドパイプ、16…エンジン、19…後輪、31…メインフレーム、35…ピボット取付用ロアブラケット、36…後輪付きスイングアーム用ピボット、37…上のエンジン取付部、38…下のエンジン取付部、61…後輪付きスイングアーム用ピボット軸、77,78…取付部材、Cd…下のエンジン取付部の中心、Cm…ピボット中心、Cu…上のエンジン取付部の中心、Lo…直線、Lv…鉛直線。
Claims (1)
- ヘッドパイプから後方へ左右一対のメインフレームを延し、これら左右のメインフレームの後端から左右のピボット取付用ロアブラケットを下ろし、これら左右のロアブラケットに、後輪付きスイングアーム用ピボット軸を設け、前記左右のロアブラケットに前記ピボット軸の上方及び下方の位置でエンジン取付部を設けた自動二輪車の車体フレーム構造において、
前記左右の上のエンジン取付部にエンジンの後上ハンガー部を取り付ける取付部材と、左右の下のエンジン取付部にエンジンの後下ハンガー部を取り付ける取付部材とが各々一本の長いボルトで構成され、
エンジンは、その後端部に、上のエンジン取付部に取り付けられる後上ハンガー部と、下のエンジン取付部に取り付けられる後下ハンガー部とを有し、
前記左右のロアブラケットは、その上端から前記左右のメインフレームの延出方向に沿って延び、下側に屈曲するとともに、上下方向に延びるように形成されており、
前記上のエンジン取付部は、前記ロアブラケットの上下方向に延びる部分の前縁よりも後方に配置されており、
前記上のエンジン取付部の中心から前記下のエンジン取付部の中心まで延した直線が、鉛直線又はほぼ鉛直線となるようにし、このような直線が前記ピボット軸の断面でピボット軸中心よりも前側を通るように構成し、
前記ロアブラケットの上端間に、前記上のエンジン取付部の後方に隣接するとともに、前記ロアブラケット後端までの前後幅を有する上部クロスメンバを掛け渡し、
前記ロアブラケットの下端間に、前記下のエンジン取付部の後方に隣接するとともに、前記ロアブラケット後端までの前後幅を有する下部クロスメンバを掛け渡した、
ことを特徴とする自動二輪車の車体フレーム構造。
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