以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
図1に、本発明の塗布方法、塗布装置および塗布処理プログラムの適用可能な構成例として塗布現像処理システムを示す。この塗布現像処理システムは、クリーンルーム内に設置され、たとえばLCD基板を被処理基板とし、LCD製造プロセスにおいてフォトリソグラフィー工程の中の洗浄、レジスト塗布、プリベーク、現像およびポストベークの各処理を行うものである。露光処理は、このシステムに隣接して設置される外部の露光装置(図示せず)で行われる。
この塗布現像処理システムは、大きく分けて、カセットステーション(C/S)10と、プロセスステーション(P/S)12と、インタフェース部(I/F)14とで構成される。
システムの一端部に設置されるカセットステーション(C/S)10は、複数の基板Gを収容するカセットCを所定数たとえば4個まで載置可能なカセットステージ16と、このカセットステージ16上の側方でかつカセットCの配列方向と平行に設けられた搬送路17と、この搬送路17上で移動自在でステージ16上のカセットCについて基板Gの出し入れを行う搬送機構20とを備えている。この搬送機構20は、基板Gを保持できる手段たとえば搬送アームを有し、X,Y,Z,θの4軸で動作可能であり、後述するプロセスステーション(P/S)12側の搬送装置38と基板Gの受け渡しを行えるようになっている。
プロセスステーション(P/S)12は、上記カセットステーション(C/S)10側から順に洗浄プロセス部22と、塗布プロセス部24と、現像プロセス部26とを基板中継部23、薬液供給ユニット25およびスペース27を介して(挟んで)横一列に設けている。
洗浄プロセス部22は、2つのスクラバ洗浄ユニット(SCR)28と、上下2段の紫外線照射/冷却ユニット(UV/COL)30と、加熱ユニット(HP)32と、冷却ユニット(COL)34とを含んでいる。
塗布プロセス部24は、スピンレス方式のレジスト塗布ユニット(CT)40と、減圧乾燥ユニット(VD)42と、上下2段型アドヒージョン/冷却ユニット(AD/COL)46と、上下2段型加熱/冷却ユニット(HP/COL)48と、加熱ユニット(HP)50とを含んでいる。
現像プロセス部26は、3つの現像ユニット(DEV)52と、2つの上下2段型加熱/冷却ユニット(HP/COL)53と、加熱ユニット(HP)55とを含んでいる。
各プロセス部22,24,26の中央部には長手方向に搬送路36,51,58が設けられ、搬送装置38,54,60がそれぞれ搬送路36,51,58に沿って移動して各プロセス部内の各ユニットにアクセスし、基板Gの搬入/搬出または搬送を行うようになっている。なお、このシステムでは、各プロセス部22,24,26において、搬送路36,51,58の一方の側に液処理系のユニット(SCR,CT,DEV等)が配置され、他方の側に熱処理系のユニット(HP,COL等)が配置されている。
システムの他端部に設置されるインタフェース部(I/F)14は、プロセスステーション12と隣接する側にイクステンション(基板受け渡し部)56およびバッファステージ57を設け、露光装置と隣接する側に搬送機構59を設けている。この搬送機構59は、Y方向に延在する搬送路19上で移動自在であり、バッファステージ57に対して基板Gの出し入れを行なうほか、イクステンション(基板受け渡し部)56や隣の露光装置と基板Gの受け渡しを行うようになっている。
図2に、この塗布現像処理システムにおける処理の手順を示す。先ず、カセットステーション(C/S)10において、搬送機構20が、カセットステージ16上の所定のカセットCの中から1つの基板Gを取り出し、プロセスステーション(P/S)12の洗浄プロセス部22の搬送装置38に渡す(ステップS1)。
洗浄プロセス部22において、基板Gは、先ず紫外線照射/冷却ユニット(UV/COL)30に順次搬入され、最初の紫外線照射ユニット(UV)では紫外線照射による乾式洗浄を施され、次の冷却ユニット(COL)では所定温度まで冷却される(ステップS2)。この紫外線洗浄では主として基板表面の有機物が除去される。
次に、基板Gはスクラバ洗浄ユニット(SCR)28の1つでスクラビング洗浄処理を受け、基板表面から粒子状の汚れが除去される(ステップS3)。スクラビング洗浄の後、基板Gは、加熱ユニット(HP)32で加熱による脱水処理を受け(ステップS4)、次いで冷却ユニット(COL)34で一定の基板温度まで冷却される(ステップS5)。これで洗浄プロセス部22における前処理が終了し、基板Gは、搬送装置38により基板受け渡し部23を介して塗布プロセス部24へ搬送される。
塗布プロセス部24において、基板Gは、先ずアドヒージョン/冷却ユニット(AD/COL)46に順次搬入され、最初のアドヒージョンユニット(AD)では疎水化処理(HMDS)を受け(ステップS6)、次の冷却ユニット(COL)で一定の基板温度まで冷却される(ステップS7)。
その後、基板Gは、レジスト塗布ユニット(CT)40でスピンレス法によりレジスト液を塗布され、次いで減圧乾燥ユニット(VD)42で減圧による乾燥処理を受ける(ステップS8)。
次に、基板Gは、加熱/冷却ユニット(HP/COL)48に順次搬入され、最初の加熱ユニット(HP)では塗布後のベーキング(プリベーク)が行われ(ステップS9)、次に冷却ユニット(COL)で一定の基板温度まで冷却される(ステップS10)。なお、この塗布後のベーキングに加熱ユニット(HP)50を用いることもできる。
上記塗布処理の後、基板Gは、塗布プロセス部24の搬送装置54と現像プロセス部26の搬送装置60とによってインタフェース部(I/F)14へ搬送され、そこから露光装置に渡される(ステップS11)。露光装置では基板G上のレジストに所定の回路パターンを露光される。そして、パターン露光を終えた基板Gは、露光装置からインタフェース部(I/F)14に戻される。インタフェース部(I/F)14の搬送機構59は、露光装置から受け取った基板Gをイクステンション56を介してプロセスステーション(P/S)12の現像プロセス部26に渡す(ステップS11)。
現像プロセス部26において、基板Gは、現像ユニット(DEV)52のいずれか1つで現像処理を受け(ステップS12)、次いで加熱/冷却ユニット(HP/COL)53の1つに順次搬入され、最初の加熱ユニット(HP)ではポストベーキングが行われ(ステップS13)、次に冷却ユニット(COL)で一定の基板温度まで冷却される(ステップS14)。このポストベーキングに加熱ユニット(HP)55を用いることもできる。
現像プロセス部26での一連の処理が済んだ基板Gは、プロセスステーション(P/S)24内の搬送装置60,54,38によりカセットステーション(C/S)10まで戻され、そこで搬送機構20によりいずれか1つのカセットCに収容される(ステップS1)。
この塗布現像処理システムにおいては、たとえば塗布プロセス部24のレジスト塗布ユニット(CT)40に本発明を適用することができる。以下、図3〜図39につき本発明をレジスト塗布ユニット(CT)40に適用した一実施形態を説明する。
図3に、この実施形態におけるレジスト塗布ユニット(CT)40および減圧乾燥ユニット(VD)42の全体構成を示す。
図3に示すように、支持台または支持フレーム70の上にレジスト塗布ユニット(CT)40と減圧乾燥ユニット(VD)42とがX方向に横一列に配置されている。塗布処理を受けるべき新たな基板Gは、搬送路51側の搬送装置54(図1)により矢印FAで示すようにレジスト塗布ユニット(CT)40に搬入される。レジスト塗布ユニット(CT)40で塗布処理の済んだ基板Gは、支持台70上のガイドレール72に案内されるX方向に移動可能な搬送アーム74により、矢印FBで示すように減圧乾燥ユニット(VD)42に転送される。減圧乾燥ユニット(VD)42で乾燥処理を終えた基板Gは、搬送路51側の搬送装置54(図1)により矢印FCで示すように引き取られる。
レジスト塗布ユニット(CT)40は、X方向に長く延びるステージ76を有し、このステージ76上で基板Gを同方向に平流しで搬送しながら、ステージ76の上方に配置された長尺形のレジストノズル78より基板G上にレジスト液を供給して、スピンレス法で基板上面(被処理面)に一定膜厚のレジスト塗布膜を形成するように構成されている。ユニット(CT)40内の各部の構成および作用は後に詳述する。
減圧乾燥ユニット(VD)42は、上面が開口しているトレーまたは底浅容器型の下部チャンバ80と、この下部チャンバ80の上面に気密に密着または嵌合可能に構成された蓋状の上部チャンバ(図示せず)とを有している。下部チャンバ80はほぼ四角形で、中心部には基板Gを水平に載置して支持するためのステージ82が配設され、底面の四隅には排気口83が設けられている。各排気口83は排気管(図示せず)を介して真空ポンプ(図示せず)に通じている。下部チャンバ80に上部チャンバを被せた状態で、両チャンバ内の密閉された処理空間を該真空ポンプにより所定の真空度まで減圧できるようになっている。
図4および図5に、本発明の一実施形態におけるレジスト塗布ユニット(CT)40内のより詳細な全体構成を示す。
この実施形態のレジスト塗布ユニット(CT)40においては、ステージ76が、従来のように基板Gを固定保持する載置台として機能するのではなく、基板Gを空気圧の力で空中に浮かせるための基板浮上台として機能する。そして、ステージ76の両サイドに配置されている直進運動型の基板搬送部84が、ステージ76上で浮いている基板Gの両側縁部をそれぞれ着脱可能に保持してステージ長手方向(X方向)に基板Gを搬送するようになっている。
詳細には、ステージ76は、その長手方向(X方向)において5つの領域M1,M2,M3,M4,M5に分割されている(図5)。左端の領域M1は搬入領域であり、塗布処理を受けるべき新規の基板Gはこの領域M1内の所定位置に搬入される。この搬入領域M1には、搬送装置54(図1)の搬送アームから基板Gを受け取ってステージ76上にローディングするためにステージ下方の原位置とステージ上方の往動位置との間で昇降移動可能な複数本のリフトピン86が所定の間隔を置いて設けられている。これらのリフトピン86は、たとえばエアシリンダ(図示せず)を駆動源に用いる搬入用のリフトピン昇降部85(図13)によって昇降駆動される。
この搬入領域M1は浮上式の基板搬送が開始される領域でもあり、この領域内のステージ上面には基板Gを搬入用の浮上高さまたは浮上量Haで浮かせるために高圧または正圧の圧縮空気を噴き出す噴出口88が一定の密度で多数設けられている。ここで、搬入領域M1における基板Gの浮上量Haは、特に高い精度を必要とせず、たとえば250〜350μmの範囲内に保たれればよい。また、搬送方向(X方向)において、搬入領域M1のサイズは基板Gのサイズを上回っているのが好ましい。さらに搬入領域M1には、基板Gをステージ76上で位置合わせするためのアライメント部(図示せず)も設けられてよい。
ステージ76の中心部に設定された領域M3はレジスト液供給領域または塗布領域であり、基板Gはこの塗布領域M3を通過する際に上方のレジストノズル78からレジスト液Rの供給を受ける。塗布領域M3における基板浮上量Hbはノズル78の下端(吐出口)と基板上面(被処理面)との間の塗布ギャップS(たとえば240μm)を規定する。この塗布ギャップSはレジスト塗布膜の膜厚やレジスト消費量を左右する重要なパラメータであり、高い精度で一定に維持される必要がある。このことから、塗布領域M3のステージ上面には、たとえば図6に示すような配列または分布パターンで、基板Gを所望の浮上量Hbで浮かせるために高圧または正圧の圧縮空気を噴き出す噴出口88と負圧で空気を吸い込む吸引口90とを混在させて設けている。そして、基板Gの塗布領域M3内を通過している部分に対して、噴出口88から圧縮空気による垂直上向きの力を加えると同時に、吸引口90より負圧吸引力による垂直下向きの力を加えて、相対抗する双方向の力のバランスを制御することで、塗布用の浮上量Hbを設定値HS(たとえば50μm)付近に維持するようにしている。搬送方向(X方向)における塗布領域M3のサイズは、レジストノズル78の直下に上記のような狭い塗布ギャップSを安定に形成できるほどの余裕があればよく、通常は基板Gのサイズよりも小さくてよく、例えば1/3〜1/4程度でよい。
図6に示すように、塗布領域M3においては、基板搬送方向(X方向)に対して一定の傾斜した角度をなす直線C上に噴出口88と吸引口90とを交互に配し、隣接する各列の間で直線C上のピッチに適当なオフセットαを設けている。かかる配置パターンによれば、噴出口88および吸引口90の混在密度を均一にしてステージ上の基板浮上力を均一化できるだけでなく、基板Gが搬送方向(X方向)に移動する際に噴出口88および吸引口90と対向する時間の割合を基板各部で均一化することも可能であり、これによって基板G上に形成される塗布膜に噴出口88または吸引口90のトレースまたは転写跡が付くのを防止することができる。塗布領域M3の入口では、基板Gの先端部が搬送方向と直交する方向(Y方向)で均一な浮上力を安定に受けるように、同方向(直線J上)に配列する噴出口88および吸引口90の密度を高くするのが好ましい。また、塗布領域M3においても、ステージ76の両側縁部(直線K上)には、基板Gの両側縁部が垂れるのを防止するために、噴出口88のみを配置するのが好ましい。
再び図5において、搬入領域M1と塗布領域M3との間に設定された中間の領域M2は、搬送中に基板Gの浮上高さ位置を搬入領域M1における浮上量Haから塗布領域M3における浮上量Hbへ変化または遷移させるための遷移領域である。この遷移領域M2内でもステージ76の上面に噴出口88と吸引口90とを混在させて配置することができる。その場合は、吸引口90の密度を搬送方向に沿って次第に大きくし、これによって搬送中に基板Gの浮上量が漸次的にHaからHbに移るようにしてよい。あるいは、この遷移領域M2においては、吸引口90を含まずに噴出口88だけを設ける構成も可能である。
塗布領域M3の下流側隣の領域M4は、搬送中に基板Gの浮上量を塗布用の浮上量Hbから搬出用の浮上量Hc(たとえば250〜350μm)に変えるための遷移領域である。この遷移領域M4でも、ステージ76の上面に噴出口88と吸引口90とを混在させて配置してもよく、その場合は吸引口90の密度を搬送方向に沿って次第に小さくするのがよい。あるいは、吸引口90を含まずに噴出口88だけを設ける構成も可能である。また、図6に示すように、塗布領域M3と同様に遷移領域M4でも、基板G上に形成されたレジスト塗布膜に転写跡が付くのを防止するために、吸引口90(および噴出口88)を基板搬送方向(X方向)に対して一定の傾斜した角度をなす直線E上に配置し、隣接する各列間で配列ピッチに適当なオフセットβを設ける構成が好ましい。
ステージ76の下流端(右端)の領域M5は搬出領域である。レジスト塗布ユニット(CT)40で塗布処理を受けた基板Gは、この搬出領域M5内の所定位置または搬出位置から搬送アーム74(図3)によって下流側隣の減圧乾燥ユニット(VD)42(図3)へ搬出される。この搬出領域M5には、基板Gを搬出用の浮上量Hcで浮かせるための噴出口88がステージ上面に一定の密度で多数設けられているとともに、基板Gをステージ76上からアンローディングして搬送アーム74(図3)へ受け渡すためにステージ下方の原位置とステージ上方の往動位置との間で昇降移動可能な複数本のリフトピン92が所定の間隔を置いて設けられている。これらのリフトピン92は、たとえばエアシリンダ(図示せず)を駆動源に用いる搬出用のリフトピン昇降部91(図13)によって昇降駆動される。
レジストノズル78は、ステージ76上の基板Gを一端から他端までカバーできる長さで搬送方向と直交する水平方向(Y方向)に延びる長尺状のノズル本体の下端にスリット状の吐出口78aを有し、門形または逆さコ字形のノズル支持体130に昇降可能に取り付けられ、レジスト液供給機構170(図12、図13)からのレジスト液供給管94(図4)に接続されている。
図4、図7および図8に示すように、基板搬送部84は、ステージ76の左右両サイドに平行に配置された一対のガイドレール96と、各ガイドレール96上に軸方向(X方向)に移動可能に取り付けられたスライダ98と、各ガイドレール96上でスライダ98を直進移動させる搬送駆動部100と、各スライダ98からステージ76の中心部に向かって延びて基板Gの左右両側縁部を着脱可能に保持する保持部102とをそれぞれ有している。
ここで、搬送駆動部100は、直進型の駆動機構たとえばリニアモータによって構成されている。また、保持部102は、基板Gの左右両側縁部の下面に真空吸着力で結合する吸着パッド104と、先端部で吸着パッド104を支持し、スライダ98側の基端部を支点として先端部の高さ位置を変えられるように弾性変形可能な板バネ型のパッド支持部106とをそれぞれ有している。吸着パッド104は一定のピッチで一列に配置され、パッド支持部106は各々の吸着パッド104を独立に支持している。これにより、個々の吸着パッド104およびパッド支持部106が独立した高さ位置で(異なる高さ位置でも)基板Gを安定に保持できるようになっている。
図7および図8に示すように、この実施形態におけるパッド支持部106は、スライダ98の内側面に昇降可能に取り付けられた板状のパッド昇降部材108に取り付けられている。スライダ98に搭載されているたとえばエアシリンダからなるパッドアクチエータ109(図13)が、パッド昇降部材108を基板Gの浮上高さ位置よりも低い原位置(退避位置)と基板Gの浮上高さ位置に対応する往動位置(結合位置)との間で昇降移動させるようになっている。
図9に示すように、各々の吸着パッド104は、たとえば合成ゴム製で直方体形状のパッド本体110の上面に複数個の吸引口112を設けている。これらの吸引口112はスリット状の長穴であるが、丸や矩形の小孔でもよい。吸着パッド104には、たとえば合成ゴムからなる帯状のバキューム管114が接続されている。これらのバキューム管114の管路116はパッド吸着制御部115(図13)の真空源にそれぞれ通じている。
保持部102においては、図4に示すように、片側一列の真空吸着パッド104およびパッド支持部106が1組毎に分離している分離型または完全独立型の構成が好ましい。しかし、図10に示すように、切欠き部118を設けた一枚の板バネで片側一列分のパッド支持部120を形成してその上に片側一列の真空吸着パッド104を配置する一体型の構成も可能である。
上記のように、ステージ76の上面に形成された多数の噴出口88およびそれらに浮上力発生用の圧縮空気を供給する圧縮空気供給機構122(図11)、さらにはステージ76の塗布領域M3内に噴出口88と混在して形成された多数の吸引口90およびそれらに真空の圧力を供給するバキューム供給機構124(図11)により、搬入領域M1や搬出領域M5では基板Gを搬入出や高速搬送に適した浮上量で浮かせ、塗布領域M3では基板Gを安定かつ正確なレジスト塗布走査に適した設定浮上量HSで浮かせるためのステージ基板浮上部145(図13)が構成されている。
図11に、ノズル昇降機構75、ノズル水平移動機構77、圧縮空気供給機構122およびバキューム供給機構124の構成を示す。ノズル昇降機構75は、塗布領域M3の上を搬送方向(X方向)と直交する水平方向(Y方向)に跨ぐように架設された門形フレーム130と、この門形フレーム130に取り付けられた左右一対の鉛直運動機構132L,132Rと、これらの鉛直運動機構132L,132Rの間に跨る移動体(昇降体)のノズル支持体134とを有する。各鉛直運動機構132L,132Rの駆動部は、たとえばパルスモータからなる電動モータ138L、138R、ボールネジ140L,140Rおよびガイド部材142L,142Rを有している。パルスモータ138L、138Rの回転力がボールネジ機構(140L,142L)、(140R,142R)によって鉛直方向の直線運動に変換され、昇降体のノズル支持体134と一体にレジストノズル78が鉛直方向に昇降移動する。パルスモータ138L,138Rの回転量および回転停止位置によってレジストノズル78の左右両側の昇降移動量および高さ位置を任意に制御できるようになっている。ノズル支持体134は、たとえば角柱の剛体からなり、その下面または側面にレジストノズル78をフランジ、ボルト等を介して着脱可能に取り付けている。
ノズル水平移動機構77は、門形フレーム130をノズル長手方向と直交する水平方向(X方向)に案内する左右一対のガイドレール(図示せず)と、それらのガイドレール上で門形フレーム130を直進移動させる左右一対の水平運動機構たとえばパルスモータ駆動型のボールネジ機構135L,135Rとを有し、ガイドレール上の任意の位置に門形フレーム130を位置決めできるように構成されている。
圧縮空気供給機構122は、ステージ76上面で分割された複数のエリア別に噴出口88に接続された正圧マニホールド144と、それら正圧マニホールド144にたとえば工場用力の圧縮空気供給源146からの圧縮空気を送り込む圧縮空気供給管148と、この圧縮空気供給管148の途中に設けられるレギュレータ150とを有している。バキューム供給機構124は、ステージ76上面で分割された複数のエリア別に吸引口90に接続された負圧マニホールド152と、それらの負圧マニホールド152にたとえば工場用力の真空源154からのバキュームを送り込むバキューム管156と、このバキューム管156の途中に設けられる絞り弁158とを有している。
図12に、レジスト液供給機構170の構成を示す。このレジスト液供給機構170は、レジスト液Rを貯留するボトル172より吸入管174を介して少なくとも塗布処理1回分(基板1枚分)のレジスト液Rをレジストポンプ176に予め充填しておき、塗布処理時にレジストポンプ176よりレジスト液Rを吐出管またはレジスト液供給管94を介してレジストノズル78に所定の圧力で圧送し、レジストノズル78から基板G上にレジスト液Rを所定の流量で吐出するようになっている。
ボトル172は密閉されており、ボトル内の液面に向けてガス管178より圧送ガスたとえばN2ガスが一定の圧力で供給されるようになっている。ガス管178には、たとえばエアオペレートバルブからなる開閉弁180が設けられている。
吸入管174の途中には、フィルタ182、脱気モジュール184および開閉弁186が設けられている。フィルタ182はボトル172から送られてくるレジスト液R中の異物(ごみ類)を除去し、脱気モジュール184はレジスト液中の気泡を除去する。開閉弁186は、たとえばエアオペレートバルブからなり、吸入管174におけるレジスト液Rの流れをオン(全開導通)またはオフ(遮断)する。
レジスト液供給管94の途中には、開閉弁188が設けられている。フィルタやサックバックバルブは設けられていない。この開閉弁188は、たとえばエアオペレートバルブからなり、レジスト液供給管94におけるレジスト液Rの流れをオン(全開導通)またはオフ(遮断)する。
レジストポンプ176は、たとえばシリンジポンプからなり、ポンプ室を有するポンプ本体190と、ポンプ室の容積を任意に変えるためのピストン192と、このピストン192を往復運動させるためのポンプ駆動部194とを有している。
レジスト液供給制御部196は局所コントローラであり、後述するメインのコントローラ200(図13)からの指令に応じてレジスト液供給機構170内の各部、特にレジストポンプ176のポンプ駆動部194や各開閉弁180,186,188等を制御する。
このレジスト塗布ユニット(CT)40は、図5に示すように、基板搬送方向(X方向)においてステージ76よりも少し下流側の上方にノズル待機部210を設置しており、このノズル待機部210の中にプライミング処理部を設けている。
図34に、ノズル待機部210内の構成を示す。図示のように、ノズル待機部210は、プライミング処理部212と溶剤雰囲気室214と洗浄部216とをX方向で横一列に配置している。この中で、プライミング処理部212が塗布処理位置に最も近い場所に設置されている。ノズル水平移動機構77(図11)の直進駆動部135L,135Rがノズル待機部210まで延びており(図3)、レジストノズル78をノズル待機部210内の各部(212,214,216)に移送できるようになっている。
洗浄部216は、所定位置に位置決めされたレジストノズル78の下を長手方向(Y方向)に移動またはスキャンするノズル洗浄ヘッド218を有している。このノズル洗浄ヘッド218には、レジストノズル78の下端部および吐出口78aに向けて洗浄液(たとえばシンナー)および乾燥用のガス(例えばN2ガス)をそれぞれ噴き付ける洗浄ノズル220およびガスノズル222が搭載されるとともに、レジストノズル78に当たって落下した洗浄液をバキューム力で受け集めて回収するドレイン部224が設けられている。
溶剤雰囲気室214は、レジストノズル78の全長をカバーする長さでノズル長手方向(Y方向)と平行に延びており、室内には溶剤たとえばシンナーが入っている。溶剤雰囲気室214の上面には、長手方向(Y方向)に延びるスリット状の開口226aを設けた断面V状の蓋体226が取り付けられている。レジストノズル78のノズル部を蓋体226に上方から合わせると、吐出口78aとテーパ形状のノズル下端部だけが開口226aを介して室内に立ち篭もる溶剤の蒸気に曝されるようになっている。ステージ76上でしばらく塗布処理が行われない間に、レジストノズル78は、洗浄部216で吐出口78aおよびノズル部の洗浄を施され、それから溶剤雰囲気室214で待機する。
プライミング処理部212は、レジストノズル78の全長をカバーする長さで水平方向(Y方向)に延びる円柱状のプライミングローラ228を溶剤浴室230の中に配置している。溶剤浴室230内には、プライミングローラ228の下部が浸かる程度の液面レベルで溶剤または洗浄液たとえばシンナーが収容されている。溶剤浴室230の外に配置された回転支持機構232が、プライミングローラ228の回転軸を支持し、プライミングローラ228を回転駆動する。また、溶剤浴室230内には、洗浄液溜りよりも上方の位置でプライミングローラ228の外周面に新液の溶剤を噴きつける溶剤ノズル234およびプライミングローラ228の外周面に擦接するワイパ236が設けられている。プライミング処理部212の作用は後述する。
図13に、この実施形態のレジスト塗布ユニット(CT)40における制御系の主要な構成を示す。コントローラ200は、マイクロコンピュータからなり、ユニット内の各部、特にレジスト液供給機構170、ノズル昇降機構75、ステージ基板浮上部145、基板搬送部84(搬送駆動部100、パッド吸着制御部115、パッドアクチエータ109)、搬入用リフトピン昇降部85、搬出用リフトピン昇降部91、プライミングローラ回転支持機構232、ノズル洗浄ヘッド218等の個々の動作と全体の動作(シーケンス)を制御する。
次に、この実施形態のレジスト塗布ユニット(CT)40における塗布処理動作を説明する。
コントローラ200は、たとえば光ディスク等の記憶媒体に格納されている塗布処理プログラムを主メモリに取り込んで実行し、プログラムされた一連の塗布処理動作を制御する。
搬送装置54(図1)より未処理の新たな基板Gがステージ76の搬入領域M1に搬入されると、リフトピン86が往動位置で該基板Gを受け取る。搬送装置54が退出した後、リフトピン86が下降して基板Gを搬送用の高さ位置つまり浮上位置Ha(図5)まで降ろす。次いで、アライメント部(図示せず)が作動し、浮上状態の基板Gに四方から押圧部材(図示せず)を押し付けて、基板Gをステージ76上で位置合わせする。アライメント動作が完了すると、その直後に基板搬送部84においてパッドアクチエータ109が作動し、吸着パッド104を原位置(退避位置)から往動位置(結合位置)へ上昇(UP)させる。吸着パッド104は、その前からバキュームがオンしており、浮上状態の基板Gの側縁部に接触するや否や真空吸着力で結合する。吸着パッド104が基板Gの側縁部に結合した直後に、アライメント部は押圧部材を所定位置へ退避させる。
次に、基板搬送部84は、保持部102で基板Gの側縁部を保持したままスライダ98を搬送始点位置から搬送方向(X方向)へ比較的高速の一定速度で直進移動させる。こうして基板Gがステージ76上を浮いた状態で搬送方向(X方向)へ直進移動し、基板Gの前端部がレジストノズル78の直下付近の設定位置に着いたところで、基板搬送部84が第1段階の基板搬送を停止する。この時、ノズル昇降機構75は、レジストノズル78を上方の退避位置で待機させている。
基板Gが止まると、ノズル昇降機構75が作動して、レジストノズル78を垂直下方に降ろし、ノズルの吐出口と基板Gとの距離間隔または塗布ギャップを初期値(たとえば60μm)に合わせる。次いで、レジスト液供給機構170がレジストノズル78より基板Gの上面に向けてレジスト液の吐出を開始させると同時に基板搬送部84も第2段階の基板搬送を開始し、一方でノズル昇降機構75がレジストノズル78を塗布ギャップが設定値SA(たとえば240μm)になるまで(たとえば0.1秒の間に)上昇させ、その後はそのまま基板Gを水平移動させる。この第2段階つまり塗布時の基板搬送には、比較的低速の第1の速度VA(たとえば50mm/s)が選ばれる。
こうして、塗布領域M3内において、基板Gが水平姿勢で搬送方向(X方向)に一定速度VAで移動するのと同時に、長尺形のレジストノズル78が直下の基板Gに向けてレジスト液Rを一定の第1のポンプ圧力PAで帯状に吐出することにより、図14に示すように基板Gの前端側から後端側に向かってレジスト液の塗布膜RMが形成されていく。この塗布走査中、基板G上に吐出されたレジスト液Rがぬれ現象によりレジストノズル78の片側つまり塗布走査方向において背面側の側面78bに付着して高さ方向に広がり、ノズル長手方向(Y方向)に延びるメニスカスRQが形成される。
この実施形態では、塗布走査の終盤から終了直後にかけて、走査速度(基板搬送速度)、塗布ギャップおよびポンプ圧力(レジストポンプ176の出力側圧力)が、コントローラ200の制御の下で図15に示すような時間特性でそれぞれ変化する。より詳細には、レジストノズル78が基板G上に設定された所定の通過点X1を相対的に通過した時点t1から、コントローラ200の制御の下でレジスト液供給機構170がレジストポンプ176の吐出圧力つまりポンプ圧力をそれまでの第1のポンプ圧力PAからそれよりも一段高い第2のポンプ圧力PB(たとえば、PB=1.3PA)まで一瞬に上昇させる。レジスト液供給機構170においてレジストノズル78よりレジスト液を吐出するレートまたは流量はポンプ圧力に比例する。したがって、ポンプ圧力の一瞬の上昇(PA→PB)により、図16に示すように、レジストノズル78より基板G上に供給されるレジスト液Rの流量が一瞬増大する。こうして所定の時点t2でピーク値の第2のポンプ圧力PBに達すると、その後はポンプ圧力を大気圧付近の値に設定された基準待機圧力Psまで一気にあるいは段階的に下げる。
一方、ポンプ圧力の低下(PB→PS)と連動して、コントローラ200の制御の下で、基板搬送部84が走査速度(基板搬送速度)をそれまでの第1の速度VA(50mm/s)から零またはその付近の値をとる第2の速度VBまで所定の減速率(たとえば−100mm/s2)で減少させると同時に、ノズル昇降機構75がレジストノズル78を鉛直方向(Z方向)に所定距離(たとえば140μm)だけ所定の移動速度(たとえば280μm/s)で降下させ、塗布ギャップをそれまでの距離間隔SA(240μm)からそれよりも小さな距離間隔SC(100μm)まで狭める。
ここで、ポンプ圧力の瞬間的な上昇が開始される通過点X1(またはタイミングt1)は、レジスト液の特性(粘性等)、塗布条件(膜厚、標準走査速度等)、塗布仕様(マージンサイズ等)に応じて適宜選定されてよい。好ましくは、レジストノズル78が相対的に保証領域境界LXを通過する辺りでポンプ圧力がピーク値の第2のポンプ圧力PBに達するように、基板Gの上面(被処理面)を内側の製品領域(膜厚保証領域)ESと外側のマージン領域(膜厚非保証領域)EMとに二分する境界(以下、「保証領域境界」と称する。)LXより少し内側(保証領域ES内)に上記通過点X1が設定されてよい。同様にして、走査速度(基板搬送速度)および塗布ギャップの減少をそれぞれ開始させる通過点またはタイミングも適宜選定される。
図17に、塗布走査の終了間際にレジストノズル78と基板Gとの間で走査速度が減少しながら塗布ギャップも減少していく様子を示す。図示のように、レジストノズル78の吐出レートが一瞬上昇した保証領域境界LX付近でレジスト塗布膜の局所的な盛り上がりRKが形成される。
こうしてレジストノズル78が所定の時点t3で基板G上の予め設定された走査終点位置Xeに着いてそこでいったん停止すると(図18)、これと同時または相前後してポンプ圧力が所定の時点t4で大気圧付近の基準待機圧力Psに達し、レジスト液吐出動作が終了する(図15)。そして、ポンプ圧力が基準待機圧力Psまで下がった後もしばらくそのままの休止状態を保つ。この間にレジストノズル78の吐出口78aから周囲へ、特に塗布走査と直交する水平方向(Y方向)の周囲へレジスト液Rが広がって基板後端部の隅角部にも十全に行き亘る。
次いで、ポンプ圧力が基準待機圧力Psまで下がった時点t4から所定時間Tsの経過後に、レジスト液供給機構170がレジストポンプ176に吸引動作を行わせる。つまり、図12の構成例においてはピストン192を一定ストロークだけ復動させる。このポンプ吸引動作によってレジストノズル78が基板G上のレジスト液Rを吸い取ることにより、走査終点位置Xeから基板Gの内側に向ってレジスト塗布膜RMの膜厚が減少していく。レジスト液供給機構170は、ポンプ圧力を所定の吸引圧力PCまで下げると、直ぐに基準待機圧力Psに戻す。こうして、塗布走査の終了直後に走査終点位置Xeにて基板G上から一定量のレジスト液Rがレジストノズル78に吸い取られる。
この実施形態においては、上記のように塗布走査の過程で保証領域境界LX付近に盛り上がり部RKが形成され、上記のような走査終了直後の吸い取り(サックバック)の際に盛り上がり部RKのレジスト液が走査終点位置Xe側へ引き寄せられることにより、図19に示すように、保証領域境界LX付近(特に保証領域ES内)のレジスト塗布膜RMの膜厚は設定値または許容範囲内に調整または保持される。
上記のようにして走査終点位置Xeでサックバックが行われた後に、コントローラ200の制御の下で、ノズル昇降機構75がレジストノズル78を上方へ移動(退避)させ、そこでレジスト液供給機構170がレジストノズル78のエア排出(吐き出し)のためにポンプ圧力を一瞬正圧側に上げてレジストノズル78にレジスト液Rを所定量吐出させる。このノズルエア排出の機能および作用については後に詳しく説明する。
一方、コントローラ200の制御の下で、基板搬送部84が搬出領域M5に向けて基板搬送を再開する。この最終段の基板搬送は塗布走査のときよりも大きな搬送速度で行われる。そして、基板Gが搬出領域M5内の搬送終点位置に着くと、基板搬送部84は第3段階の基板搬送を停止する。この直後に、吸着パッド104に対するバキュームの供給が止められ、吸着パッド104は往動位置(結合位置)から原位置(退避位置)へ下りて、基板Gの両側端部から分離する。代わって、リフトピン92が基板Gをアンローディングするためにステージ下方の原位置からステージ上方の往動位置へ上昇する。
しかる後、搬出領域M5に搬出機つまり搬送アーム74がアクセスし、リフトピン92から基板Gを受け取ってステージ76の外へ搬出する。基板搬送部84は、基板Gをリフトピン92に渡したなら直ちに搬入領域M1へ高速度で引き返す。搬出領域M5で上記のように処理済の基板Gが搬出される頃に、搬入領域M1では次に塗布処理を受けるべき新たな基板Gについて搬入、アライメントないし搬送開始が行われる。
上記のように、この実施形態においては、塗布走査の終盤で、レジスト液供給機構170のポンプ圧力つまりレジスト液吐出レートを一瞬上げることにより、保証領域境界LX付近にレジスト塗布膜の盛り上がりRKを形成する。そして、走査終了直後に基板G上の走査終点位置Xeでレジストノズル78にサックバックを行わせることにより塗布走査終端部の余分なレジスト液を取り除き、その際にサックバックの影響(吸い取り作用)を上記レジスト液膜の盛り上がり部RKでキャンセルすることによって、保証領域Es内のレジスト膜厚が設定値また許容範囲以下になるのを防止することができる。
図20〜図22に、塗布走査の終盤で上記のようなポンプ圧力(レジスト液吐出レート)を一瞬上げる工程を省いた場合の作用を比較例として示す。この場合は、図20および図21に示すように、基板G上でレジスト液膜が走査終点位置Xeまでほぼ一定の膜厚を保ち、保証領域境界LX付近のレジスト塗布膜に盛り上がり部は形成されない。そして、レジストノズル78を走査終点位置Xeに停止させてサックバックを行うと、保証領域境界LX付近のレジスト塗布液も走査終点位置Xe側へ引き寄せられる結果、図22に示すように、保証領域Es内のレジスト塗布膜RMの膜厚が設定値以下に薄くなってしまう。
上記した実施形態における塗布処理法(図15)は、塗布走査の終盤にレジスト塗布膜の膜厚を走査方向(−X方向)で制御するものであった。しかしながら、サックバック法を用いる場合は、走査方向と直交する水平方向(Y方向)において別の角度からの膜厚制御が必要になることがある。すなわち、サックバック法においては、上記のように塗布走査の終了間際にレジストノズル78と基板Gとの間で走査速度と塗布ギャップが同時に減少するため、図28に示すように、走査方向の保証領域境界LX付近からレジスト塗布膜RMがサイド方向(Y方向)に基板エッジ付近まで広範囲に広がる。このようなレジスト塗布膜RMのサイド方向の広がりによって、同方向の保証領域境界LYに近い保証領域Es内のレジスト膜厚が薄くなり、レジストの種類によってはサックバック開始前から、あるいはサックバック終了後に設定値または設定範囲以下に薄くなる場合がある。このような場合は、上記実施形態における走査方向の膜厚制御だけでは対応しきれないことがある。
本発明は、この問題に対処するために、走査方向と直交する水平方向またはサイド方向(Y方向)において有効な膜厚制御を提供する。この実施形態においては、塗布走査の終盤に、走査速度(基板搬送速度)、塗布ギャップおよびポンプ圧力を、コントローラ200の制御の下で図23に示すような時間特性でそれぞれ変化させる。この特性の中で図15の制御と異なるのは塗布ギャップの時間特性である。すなわち、塗布走査の終盤に、コントローラ200の制御の下でノズル昇降機構75によりレジストノズル78に昇降動作を行わせることにより、塗布ギャップをそれまでの第1の距離間隔SA(たとえば240μm)からそれよりも大きな第2の距離間隔SB(たとえば300μm)まで所定の垂直移動速度(たとえば600μm/s)でいったん増大させ、それからサックバック用の最小距離間隔SC(たとえば100μm)まで所定の垂直移動速度(たとえば400μm/s)で減少させる。
上記のような塗布ギャップの第1の距離間隔SAから第2の距離間隔SBへの増大が開始される通過点も、レジスト液の特性(粘性等)、塗布条件(膜厚、走査速度等)、塗布仕様(マージンサイズ等)に応じて適宜選定されてよく、通常は走査方向における保証領域境界LXの付近に設定されてよい。
図24〜図27に、上記のような時間特性(図23)で各部を制御した場合の作用を示す。先ず、塗布走査の終盤に、ポンプ圧力つまりレジスト液吐出レートの一瞬の上昇と相俟って、塗布ギャップが瞬間的に増大することにより、図24に示すようにレジスト塗布膜の盛り上がり部RKが一層上方へ延びる(***する)とともに、図25および図26に示すようにレジスト塗布液RMの側縁部(Y方向の端部)が内側に寄せられ(くびれ)、そのぶん膜厚も高くなる。これによって、その直後にレジストノズル78と基板Gとの間で走査速度の減速と塗布ギャップの縮小が同時的に行われても、図27に示すように走査方向の保証領域境界LX付近でレジスト塗布膜RMのサイド方向(Y方向)の広がりを防止ないし抑制することができる。もっとも、塗布走査終端部で膜厚を安定させるためにサックバック開始前に一定時間(Ts)の間を置くため、図27に示すように走査終点位置Xe付近のレジスト塗布膜がサイド方向において基板エッジまで延びるが、保証領域境界LXからは遠い場所であり、広がる液量もさほどではない。
比較例(図28)と対比すると理解されるように、この実施形態(図27)においては、走査方向の保証領域境界LX付近でレジスト塗布膜RMのサイド縁部が内側にくびれることにより、そのぶんサイド方向(Y方向)の保証領域境界LY近くで保証領域Es内のレジスト膜厚が増大する。その結果、走査終点位置Xeでサックバックを行った際に、保証領域Es内のレジスト膜厚がサイド方向(Y方向)の端部で許容範囲以下に薄くなるのを防止することができる。
図29に、基板Gの後端部においてサイド方向(Y方向)の保証領域境界LYより少し内側の保証領域Es内を走査方向(X方向)に通る直線Xs上の膜厚プロファイルを実施例(図29)と比較例(図28)とで対比して示す。図29に示すように、走査方向においてレジスト塗布膜RMの膜厚は走査終点位置Xeに向って指数関数的に減少し、比較例(図28)ではマージン領域EMのみならず保証領域Es内でも設定値Dsより薄くなるが、実施例(図27)では保証領域Es内で設定値Dsを保持することができる。
上記のように、この実施形態においては、塗布ギャップの増減による膜厚制御法を処理液吐出レートの一瞬の上昇による膜厚制御法と併用することで両者の相乗効果により膜厚均一性をより一層向上させることができる。もっとも、アプリケーションに応じて、塗布ギャップの増減による膜厚制御法だけを用いることも可能である。なお、図15および図23において各パラメータが変化するタイミングおよび相互のタイミング関係は一例であり、上記のようにレジスト液の種類や塗布条件、塗布仕様等に応じて種々の変形・変更が可能である。たとえば、図23の特性ではポンプ圧力(処理液吐出レート)と塗布ギャップをそれぞれ増減変化させるタイミングを一致させているが、両者のタイミングを適宜ずらすことも可能である。
図30および図31に、この実施形態のレジスト塗布ユニット(CT)40において枚葉塗布処理の1サイクルを構成する主な工程の手順を示す。図示のように、塗布走査(ステップA1)、サックバック(ステップA2)、ノズルエア排出(ステップA3)およびプライミング処理(ステップA4)が順次実行され、プライミング処理(ステップA4)の後に次サイクルの塗布走査(ステップA1)が実行される。この中で、塗布走査(ステップA1)およびサックバック(ステップA2)の各工程内容は上述したとおりである。以下、ノズルエア排出(ステップA3)およびプライミング処理(ステップA4)の各工程内容について説明する。
ノズルエア排出(ステップA3)は、サックバック(ステップA2)の直後にポンプ圧力を一瞬正圧側に上げてレジストノズル78にレジスト液Rを所定量吐出させる工程であり、この実施形態において第2の特徴をなすものである。具体的には、図15および図23において、サックバック終了直後(t6〜t7)にノズル昇降機構75がレジストノズル78を基板Gから完全に離れる塗布ギャップSc(たとえば数mm)の高さ位置まで上方に移動させ、その直後(t8〜t9)にレジスト液供給機構170がポンプ圧力(レジストポンプ176の出力側圧力)をそれまでの基準待機圧力Psから正圧の所定圧力PE(たとえば、PE=0.5〜0.8PA)まで一瞬に上昇させ、直ぐに基準待機圧力Psに戻す。これにより、レジストノズル78において、吐出口78aより所定量のレジスト液Rが吐出され、直前のサックバックの際に基板G上のレジスト液と一緒に吸い込まれたれエアが吐き出される。
このノズルエア排出動作におけるポンプ圧力の上昇速度およびピーク値PEは、レジストノズル78の中からエアを十全に排出することと、ノズル吐出口78aの外に出たレジスト液Rが下にボタ落ち(垂れ落ち)しないことの2条件を同時に満たすように設定される。後述するように、レジストノズル78内の吐出通路250(図32)の容積は例えば1.5ml(ミリリットル)程度にすぎないので、吐出通路250の容積に相当する吐出量を設定しても、つまり吐出通路250(図32)内のレジスト液を全部吐き出しても、表面張力の保持力でボタ落ちを回避することができる。したがって、ノズルエア排出動作におけるレジスト液吐出量は、好ましくは吐出通路容積の1/2倍〜1倍の範囲内に設定されてよい。また、吐き出し開始のタイミング(t8)は、サックバック終了時(t5)からの経過時間が短いほどよく、好ましくは2秒以内、より好ましくは1秒以内に設定されてよい。なお、レジスト液供給機構170においては、レジスト液供給管94の開閉弁188をサックバック終了後も開状態に保ち、ノズルエア排出動作が終了した直後に閉める。
図32にレジストノズル78の具体的な構成例を示す。図示のノズル構造は極一般のもので、1枚のシム240を挟んで左右から2つの分割ノズル部242,244を突き合わせて構成されている。一方の分割ノズル部242の内壁にノズル長手方向に延びるバッファ用のキャビティ246が形成され、他方の分割ノズル部244の内部に外部のレジスト液供給管94とバッファ室246とを結ぶ導入通路248が形成されている。キャビティ246と下端のノズル吐出口78aとの間にはスリット状の吐出通路250が形成されており、この吐出通路250およびノズル吐出口78aのギャップ(スリットギャップ)Jはシム240の厚みで規定される。吐出通路250の垂直方向のサイズ(ランド長)をL、水平方向のサイズ(吐出幅)をWとすると、吐出通路250内の容積(スリット容積)UはU=J×L×Wで表される。一例として、J=60μm、L=25mm、W=996mmの場合、U=1.494ml(ミリリットル)である。
上記のようにサックバックの際には基板G上のレジスト液と一緒にエアもレジストノズル78に吸い込まれるのであるが、その殆どがサックバック終了間際で入り込むものである。すなわち、サックバックによって基板G上のレジスト塗布膜が薄くなり、その液膜レベルがレジストノズル78の吐出口78aより低くなると周囲のエアが基板G上のレジスト液に混じって吐出口78aの中に吸い込まれる。したがって、レジストノズル78に吸い込まれた直後のエアARは吐出通路250内に在り、キャビティ246までは入っていかない。
しかし、時間の経過とともに吐出通路250内のエアARは上方へ拡散または移動し、比較的間もないうちに(通常はサックバック終了時から4〜5秒も経過すると)キャビティ246に入る。本実施形態のノズルエア排出(ステップA3)を省いた場合、サックバック(ステップA2)の終了からプライミング処理(ステップA4)の開始まで移動やセットアップ等に少なくとも4〜5秒以上の時間を要するのが普通であり、この時間内に吐出通路250からキャビティ246にエアARが入り込む。いったんエアARがキャビティ246に入ると、その中のレジスト液Rに混入し、ウエハ待機部210の洗浄部216(図34)でレジストノズル78にダミーディスペンスを行わせない限り、キャビティ246内にエアARが定在する。枚葉方式の連続塗布処理においては、生産効率を上げるために、図30に示すように塗布処理の1サイクル内では待機中にプライミング処理(ステップA4)しか行わないため、連続塗布処理の回数を重ねるほどキャビティ246内のレジスト液に混入するエアARが累積的に増大する。そうなると、従来技術の問題点として上述したように、塗布走査の開始でポンプ圧力がキャビティ246内の混入エアにより下がり(エア噛みが発生し)、それによって塗布用の設定圧力PAに達するまでの立ち上がりが遅くなり、結果として塗布走査開始部のレジスト塗布膜が薄くなってしまう。
この点、この実施形態では、サックバック終了後にレジストノズル78を塗布走査終了位置から上方に必要最小限の距離だけ退避させて速やかに上記のようなノズルエア排出動作を実行することにより、レジストノズル78の吐出通路250内に在る未だ吸い込まれて間もないエアARを吐出口78aの外へ吐き出す。その際、図33に示すように、エアARと一緒に吐出されたレジスト液は表面張力によって吐出口78aの回りに凸面状の液膜RBを形成し、ボタ落ちしないでそこに留まる。このように、塗布走査およびサックバックが行われる度毎にその後処理としてノズルエア排出動作が行われるので、レジストノズル78のキャビティ246を定常的にエア混入無しの状態に保つことができる。このことにより、塗布走査開始直後にレジストノズル78でエア噛みが発生するのを防止し、ひいては塗布走査開始部においてレジスト塗布膜の膜厚が低下するのを防止することができる。
ノズルエア排出動作(ステップA3)の後に行われるプライミング処理(ステップA4)は、次回の塗布走査(ステップA1)のためにレジストノズル78の吐出口78aないし背面78の下部にレジスト液を下塗りする前処理である。コントローラ200の制御の下で、ノズル昇降機構75およびノズル水平移動機構77(図11)等が連動してレジストノズル78をノズル待機部210のプライミング処理部212に移し、レジスト液供給機構170(図12)およびプライミングローラ回転支持機構232(図34)等が連動してプライミング処理を実行する。
このプライミング処理では、図34に示すように、レジストノズル78の吐出口78aがプライミングローラ228の頂上部と設定間隔のギャップQを隔てて平行に対向する位置までレジストノズル78がプライミングローラ228に近接する。この近接状態の下で、レジストノズル78にレジスト液Rを吐出させ、これと同時または直後にプライミングローラ228を一定方向(図35では時計回り)に回転させる。そうすると、図35に拡大して示すように、レジストノズル78の吐出口78aより出たレジスト液Rがノズル背面78c側に回り込んでからプライミングローラ228の外周面に巻き取られる。レジスト液を巻き取ったプライミングローラ228の外周面は、直後に溶剤の浴に入ってレジスト液Rを洗い落とす。そして、溶剤浴から上がったプライミングローラ228の外周面は、溶剤ノズル234より噴きつけられる新液の溶剤で仕上げの洗浄を施され、その直後にワイパ236により液を拭い取られ清浄な面を回復してから、再びレジストノズル78の吐出口78aの下を通過しそこでレジスト液を受け取る。プライミング処理のためのプライミングローラ228の回転量は任意でよく、たとえば半回転でもよい。なお、レジストノズル78の吐出口とプライミングローラ228との間に形成されるギャップQは、塗布処理時にレジストノズル78の吐出口とステージ76上の基板Gとの間に形成される塗布ギャップSと同一または近似したサイズ(たとえば240μm)に設定されてよい。
このプライミング処理に際しては、レジストノズル78がレジスト液吐出動作を開始してから一定の遅延時間(たとえば1秒)を置いてプライミングローラ228の回転動作を開始させるのが好ましく、この時間差方式によってレジスト液Rをレジストノズル78のテーパ背面78c側へ十全かつ均一に回り込ませることができる。こうして、プライミング処理を終えた後も、レジストノズル78の吐出口78aないし背面78bの下部には、図36に示すように、ノズル長手方向(Y方向)にまっすぐ均一に延びたレジスト液の液膜RFが残る。
上記のようなプライミング処理において、前工程のノズルエア排出動作の結果としてレジストノズル78の吐出口78a回りに付着していた液膜RBは、プライミング処理開始直後のポンプ圧力でレジストノズル78より離脱してプライミングローラ228に回収される。
上記のようなプライミング処理を受けたレジストノズル78は、次サイクルの塗布処理を行うために、コントローラ200の制御の下でノズル昇降機構75およびノズル水平移動機構77(図11)により所定のタイミングでステージ76上の塗布位置へ移される。すなわち、上記したように未処理の基板Gが搬入部M1から塗布領域M3に搬送されて来ると、レジストノズル78が基板Gと所定の初期塗布ギャップを形成する高さ位置まで降ろされる。そうすると、図37に示すように、レジストノズル78の吐出口および背面下端部に付着していたレジスト液の液膜RFが設定サイズdの塗布ギャップをビード状に塞ぐようにして基板Gに付着(着液)する。そして、レジスト液供給機構170がレジスト液Rの吐出を開始すると同時に基板搬送部84が第2段階の基板搬送を開始することで、当該基板Gに対する塗布走査(ステップA1)が実行される。
この場合、レジスト液供給機構170においては、レジストノズル78内(特にキャビティ246内)にエアARが混入されていない状態の下でレジストポンプ176の吐出動作が開始されるので、ポンプ圧力がレジストノズル78内で低下することなく(エア噛みが発生することなく)設定値PAまで安定かつ速やかに立ち上がる。これにより、図38に示すように、塗布走査開始部においてレジスト塗布膜RMの膜厚THを設定値または許容範囲内に制御することができる。
図39に、この実施形態において塗布走査開始部に形成されるレジスト塗布膜の膜厚を測定したデータを上記ノズルエア排出動作を省いた場合(比較例)と対比して示す。なお、膜厚測定位置は、保証領域境界LX付近の位置(たとえば基板の始端から10mm内側の位置)に選んでいる。実施例においては、連続塗布処理を100回行っても塗布走査開始部の膜厚が設定値(16000Å)付近で安定していることが確認された。これに対し、比較例においては、連続塗布処理の回数を重ねるにつれて塗布走査開始部の膜厚が指数関数的に低下し、膜厚許容範囲をたとえば±5%とすると、わずか5回で許容範囲の下限値(15200Å)を割ってしまうことが確認された。
本発明のノズルエア排出動作による塗布走査開始部の膜厚制御は、塗布走査終端部の膜厚制御から独立して単独にサックバック法の塗布処理に適用することも可能である。
以上本発明を好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。たとえば、レジスト液供給機構170のレジストポンプ176にチューブフラムポンプを用いると、ポンプ圧力の立上がり/立下り速度が低いうえ、塗布走査の終盤でポンプ圧力をピーク値PBから基準待機圧力PSまで下げたときに残圧が生じやすい。その場合には、チューブフラムポンプを基準待機圧力PSまで下げた後にいったん負圧側に引いて残圧を開放するようにしてもよい。また、本発明は上記実施形態のような浮上搬送方式のスピンレス塗布法に限定されるものではない。載置型のステージ上に基板を水平に固定載置して、基板上方で長尺形レジストノズルをノズル長手方向と直交する水平方向に移動させながら基板上にレジスト液を帯状に吐出させて塗布する方式のスピンレス塗布法にも本発明を適用することができる。
上記した実施形態はLCD製造の塗布現像処理システムにおけるレジスト塗布装置に係るものであったが、本発明は被処理基板上に処理液を塗布する任意の塗布法に適用可能である。したがって、本発明における処理液としては、レジスト液以外にも、たとえば層間絶縁材料、誘電体材料、配線材料等の塗布液も可能であり、現像液やリンス液等も可能である。本発明における被処理基板はLCD基板に限らず、他のフラットパネルディスプレイ用基板、半導体ウエハ、CD基板、フォトマスク、プリント基板等も可能である。