JP4505417B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高性能オールシーズンタイプのタイヤのトレッドは、例えば、図3に示すように、複数本の周方向主溝104と、タイヤ中央区域の周方向主溝104に開口する傾斜横溝106を周方向に等間隔におき、多数の陸部分108が形成されたパターンを有していた。
【0003】
また、図3に示すパターンの他に、例えば、特許文献1〜5に示すようなパターンがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】
特開平03−38412号公報
【特許文献2】
特開平03−112704号公報
【特許文献3】
特開平05−278416号公報
【特許文献4】
特開2002−248906号公報
【特許文献5】
特開2003−54224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オールシーズンタイヤにおいては、ドライ、ウエットの走行性能と共に、雪上での性能を高次元でバランスさせることが要求される。
【0005】
従来パターンのような構成で、雪上性能を確保しようとすると、一般的には陸部分108内に均等に入れたサイプ(112、114)の本数を増加させる手法をとるが、この手法では、雪上性能を良くしようとすると陸部分の剛性が低下し、ドライ、ウエットの操縦性能の低下に繋がる。
【0006】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、ドライ、ウエット性能を確保しつつ、雪上性能を向上させることのできる空気入りタイヤを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、トレッドに接地端からタイヤ赤道面に向けてタイヤ周方向に対して傾斜して延びる複数の傾斜横溝を配し、前記傾斜横溝がタイヤ赤道面側から接地するように回転方向の指定された空気入りタイヤであって、周方向に隣接する前記傾斜横溝で挟まれる陸部分は、前記傾斜横溝よりも幅狭とされ前記傾斜横溝に沿って形成された複数の細溝によってタイヤ回転方向側の第1陸部分とタイヤ回転方向とは反対側の第2陸部分とに分割されており、前記第1陸部分は最も幅広の前記細溝よりも幅狭のサイプが複数形成され、前記第2陸部は前記傾斜横溝に沿った方向に連続している。
【0008】
次に、請求項1に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0009】
トレッドに接地端からタイヤ赤道面に向けてタイヤ周方向に対して傾斜して延びる複数の傾斜横溝を配したので、接地面内の水を傾斜横溝で排水でき、ウエット路面で走行する際の基本的なウエット性能が得られる。
【0010】
また、雪上走行時では、傾斜横溝に雪が入り込み、雪柱剪断力が得られるため、雪上路面で走行する際の基本的な雪上性能が得られる。
【0011】
ここで、傾斜横溝がタイヤ赤道面側から接地するように回転方向が指定されているので、傾斜横溝が接地面内の水をタイヤ赤道面側から接地端外側へとスムーズに排出でき、ウエット路面における高いハイドロプレーニング性能が得られる。
【0012】
これまでの高性能系のオールシーズンタイヤにおいては、ドライ、ウエット時の操縦性能と、雪上性能を両立するために、大き目のブロックを配置し、その中に均等にサイプを比較的大き目の間隔で配置することで性能を達成してきた。
【0013】
しかしながら、発明者の種々の実験検討の結果、雪上性能のトラクション性能を向上させるためには、タイヤ軸方向に延びる細溝(またはサイプ)を陸部に周方向に均等に形成するよりも、回転方向側(踏み込み側)に細溝(またはサイプ)を多く形成し、雪上に踏み込む際に有効にエッジを機能させた方が良いことが判明した。
【0014】
本発明では、周方向に隣接する傾斜横溝で挟まれる陸部分をタイヤ回転方向側の第1陸部分とタイヤ回転方向とは反対側の第2陸部分とに分割し、第1陸部分に最も幅広の細溝よりも幅狭のサイプを複数形成し、第2陸部を傾斜横溝に沿った方向に連続させた形状とした。回転方向側の第1陸部分が反対側の第2陸部分に比較してタイヤ軸方向エッジ成分が多いため、雪上に踏み込む際に大きなエッジ効果が得られ、雪上でのトラクション性能を向上させることができた。
【0015】
また、周方向に隣接する傾斜横溝で挟まれる陸部分において、回転方向とは反対側の第2の陸部が傾斜横溝に沿って連続しているため、第2陸部分は回転方向側の第1陸部分に比較して陸部剛性は高く、陸部分全体としての陸部剛性は確保され、ドライ、ウエット操縦性能を確保することが出来る。
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記傾斜横溝をトレッド平面視したときに、回転方向側の溝壁は溝長手方向に沿って略直線形状に形成され、反対側の溝壁は反対側へ凸となる凸状曲線を複数連ねて形成されている、ことを特徴としている。
【0020】
次に、請求項2に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0021】
ウエット路面走行時、接地面内の水は傾斜横溝をタイヤ赤道面側から接地端側へ流れるが、その際、水は傾斜横溝の回転方向側壁面に(陸部分の蹴り出し縁部)押し付けられながら流れる。
【0022】
本発明では、傾斜横溝の回転方向側の溝壁が溝長手方向に沿って略直線形状に形成されているので、水を溝内でスムーズに流すことが出来る。
【0023】
また、傾斜横溝の回転方向側とは反対側の溝壁は、凸状曲線が複数連ねて形成されているので、雪上走行でのトラクション時の陸部分の引っ掛かり成分が増す。
【0024】
なお、従来のパターンのように、溝の踏み込み側の溝壁、及び蹴り出し側の溝壁の両壁壁が直線又は曲線で凹凸していなく、比較的周方向に対する角度が小さい(60度以下)場合、溝内に浸入した雪が動いて(流れて)雪柱剪断力が働き難く、トラクションが発生し難い。
【0025】
本発明では、片側の溝壁面が長手方向に凹凸しているので、溝内を動こうとする雪を凸部分で締め付けるので、溝内で雪を確実に掴むことができ、非常に高いトラクション力を発生できる。
【0026】
また、雪上でのブレーキの際は、溝内の雪は、陸部分の蹴り出し側縁に沿って接地端側からタイヤ赤道面側に向かって流れる。
【0027】
したがって、直線又は曲線で凹凸していない溝壁形状を有する傾斜溝の場合、雪がトレッド中央に集まりすぎ、溝体積以上に雪が集まり排雪できなくなり滑ってしまい、雪上でのブレーキ性能が悪化する場合があった。
【0028】
しかし、本発明の傾斜横溝では、回転方向側とは反対側の溝壁を凸状曲線を複数連ねて形成したので、トラクション時と同様に、有効に雪柱剪断力を発生でき、雪上ブレーキ性能も向上できる。
【0029】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記傾斜横溝は、回転方向側とは反対側の溝壁に前記凸状曲線が少なくとも3箇所以上設けられ、前記凸状曲線は曲率半径が10〜200mmの範囲内とされた円弧形状であり、前記傾斜横溝の最大幅に対する最小幅の割合が15〜85%の範囲内にある、ことを特徴としている。
【0030】
次に、請求項3に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0031】
傾斜横溝において、凸状曲線の曲率半径が10mm未満になると、傾斜横溝内で凸状曲線の数が多くなり過ぎ、排水性が悪化する。
【0032】
一方、傾斜横溝において、凸状曲線の曲率半径が200mmを越えると、溝内を流れようとする雪の締め付け効果が薄くなり、有効にトラクション、ブレーキ性能を発揮できなくなる。
【0033】
また、傾斜横溝において、最大幅に対する最小幅の割合が15%未満になると、排水性が悪化する。
【0034】
一方、傾斜横溝において、最大幅に対する最小幅の割合が85%を越えると、溝内を流れようとする雪の締め付け効果が薄くなり、有効にトラクション、ブレーキ性能を発揮できなくなる。
【0035】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記陸部分には、前記傾斜横溝の回転方向側の溝壁から反対側へ向かって反対側の傾斜横溝に開口することがなく、回転方向とは反対側へ凸となる凸状曲線細溝が前記傾斜横溝に沿って複数連ねられている、ことを特徴としている。
【0036】
次に、請求項4に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0037】
陸部分に、傾斜横溝の回転方向側の溝壁から反対側へ向かって反対側の傾斜横溝に開口することがなく、回転方向とは反対側へ凸となる凸状曲線細溝が傾斜横溝に沿って複数連ねることで、陸部分の踏み込み側に細溝が集まることになり、凸状曲線細溝により区画された複数の補助陸部分が踏み込み側に集まっているような配置となる。そして、これらの補助陸部分は、踏み込み時に適度に動くことができるので、雪上走行時に、これら補助陸部分のエッジを有効に働かせることができ、雪上走行性能が向上する。また、凸状曲線細溝は、タイヤ周方向の成分及びタイヤ軸方向の成分の両方の成分を有しているので、あらゆる方向からの力に対して補助陸部分を働かせることができ、トラクション、ブレーキ、コーナリング等の各性能の向上に寄与する。
【0038】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の空気入りタイヤにおいて、タイヤ赤道面側に配置される前記凸状曲線細溝は、接地端側に配置される前記凸状曲線細溝よりも溝幅が狭く設定されている、ことを特徴としている。
【0039】
次に、請求項5に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0040】
タイヤ赤道面側に配置される凸状曲線細溝の溝幅を狭く設定することで、トレッド中央付近のトレッド剛性が確保され、ドライ、ウエット走行時の操縦性能を上げることが出来る。
【0041】
また、溝幅を広く設定した接地端側の凸状曲線細溝により、雪上のブレーキ性能を確保することが出来る。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記サイプは、溝幅が0.5〜4.0mmの範囲内である、ことを特徴としている。
【0047】
次に、請求項6に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0048】
サイプの溝幅が0.5mm未満になると、接地時に補助陸部を有効に働かせる(動かせる)ことができなくなり、サイプのエッジ効果が充分に発揮できなくなる。
【0049】
一方、サイプの溝幅が4.0mmを越えると、接地時の蹴り出し側の陸部分が踏み込み側の陸部分を支える効果が薄くなり、陸部分の倒れ込みが過大になり、ドライ、ウエット走行性能に悪影響を与える。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記トレッドには、タイヤ軸方向中央に周方向主溝を少なくとも1本備え、前記傾斜横溝は、前記周方向主溝に連結していない、ことを特徴としている。
【0054】
次に、請求項7に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0055】
トレッド中央に周方向に連続する周方向主溝を設けることで、排水性が向上し、ハイドロプレーング性能が向上する。
【0056】
また、傾斜横溝を周方向主溝に連結させないことで、トレッド中央域の剛性が確保でき、ドライ、ウエット走行時の操縦性能を確保することが出来る。
【発明の効果】
【0057】
以上説明したように請求項1に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、ドライ、ウエット性能を確保しつつ、雪上性能を向上できる、という優れた効果を有する。
【0058】
【0059】
請求項2に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、ウエット路面走行時、接地面内の水を傾斜横溝内でスムーズに流すことが出来、雪上走行時、高いトラクション性能、及び雪上ブレーキ性能が得られる、という優れた効果を有する。
【0060】
請求項3に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、排水性、トラクション、ブレーキ性能を両立できる。
【0061】
請求項4に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、あらゆる方向からの力に対して補助陸部分を働かせることができ、トラクション、ブレーキ、コーナリング等の各性能を向上できる、という優れた効果を有する。
【0062】
請求項5に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、ドライ、ウエット走行時の操縦性能を上げることが出来、また、雪上のブレーキ性能を確保することが出来る、という優れた効果を有する。
【0063】
【0064】
請求項6に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、ドライ、ウエット走行性能に悪影響を与えることなくサイプのエッジ効果を充分に発揮できる、という優れた効果を有する。
【0065】
【0066】
また、請求項7に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、ハイドロプレーング性能を向上させことができる、という優れた効果を有する。また、トレッド中央域の剛性を確保でき、ドライ、ウエット走行時の操縦性能を確保することが出来る、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドの平面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドの平面図である。
【図3】従来例に係る空気入りタイヤのトレッドの平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態を詳細に説明する。
【0069】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ10のトレッド12には、タイヤ赤道面CL上に直線状の周方向主溝14が形成されている。なお、周方向主溝14は、場合によっては2本以上形成しても良い。
【0070】
本実施形態の周方向主溝14は、溝幅が7.8mm、溝深さが8.5mmに設定されている。
【0071】
タイヤ赤道面CLの左側には左上がりに傾斜し、タイヤ赤道面CLの右側には右上がりに傾斜する傾斜横溝16が周方向に複数形成されている。
【0072】
本実施形態の空気入りタイヤ10は、傾斜横溝16のタイヤ赤道面CL側端部から接地するように回転方向が指定されている(図面矢印A方向がタイヤ回転方向)。
【0073】
傾斜横溝16は、一端が周方向主溝14の近傍で終端しており、他端がトレッド12の接地端12Eに開口している。
【0074】
接地端12Eとは、空気入りタイヤ10をJATMA YEAR BOOK(2003年度版、日本自動車タイヤ協会規格)に規定されている標準リムに装着し、JATMA YEAR BOOKでの適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%の内圧を充填し、最大負荷能力を負荷したときのものである。なお、使用地又は製造地において、TRA規格、ETRTO規格が適用される場合は各々の規格に従う。
【0075】
トレッド12を平面視したときに、傾斜横溝16のタイヤ回転方向側の溝壁16Aは直線形状に形成され、反対側の溝壁16Bは反対側へ円弧状に凸となる凸状曲線壁部分16Baを複数連ねて形成されている。
【0076】
ここで、1本の傾斜横溝16において凸状曲線壁部分16Baを連ねる数は、3個以上が好ましい。
【0077】
本実施形態では、傾斜横溝16の周方向に対する角度θは40度であるが、角度θは40度以外であっても良く、徐々に角度が変化しても良い。
【0078】
凸状曲線壁部分16Baの曲率半径Rは10〜200mmの範囲内が好ましい。
【0079】
また、傾斜横溝16は、最大幅Wmaxに対する最小幅Wminの割合が15〜85%の範囲内にあることが好ましい。
【0080】
本実施形態の傾斜横溝16は、凸状曲線壁部分16Baが3個連ねられており、凸状曲線壁部分16Baの曲率半径Rは40mm、最大幅(8mm)Wmaxに対する最小幅(3mm)Wminの割合が37.5%に設定されている。
【0081】
なお、傾斜横溝16の溝深さは8.5mmに設定されている。
【0082】
ここで、周方向に隣接する傾斜横溝16と傾斜横溝16との間の陸部分18には、タイヤ回転方向とは反対方向に凸となる凸状曲線細溝20が傾斜横溝16の長手方向に沿って複数形成されている。
【0083】
凸状曲線細溝20は円弧形状とされ、タイヤ赤道面CL側の一端が傾斜横溝16の溝壁16Bに開口しており、反対側の端部がタイヤ幅方向外側に隣接する他の凸状曲線細溝20の長手方向中間部分に連結している。
【0084】
また、タイヤ赤道面CL側の凸状曲線細溝20の溝幅よりも、接地端12E側の凸状曲線細溝20の溝幅を広く設定することが好ましい。
【0085】
本実施形態の凸状曲線細溝20は、最もタイヤ赤道面CL側のものから順に、0.8mm、1.5mm、2.0mmに設定されている。
【0086】
ここで、周方向に隣接する傾斜横溝16と傾斜横溝16との間の陸部分18は、複数の凸状曲線細溝20でタイヤ回転方向側の複数の第1陸部分18Aと、タイヤ回転方向とは反対側のリブ状の第2陸部分18Bとに分割される。
【0087】
第2陸部分18Bは、傾斜横溝16に沿ってタイヤ赤道面CL側から接地端12E側へ連続している。
【0088】
第1陸部分18Aには、略タイヤ軸方向に延びるサイプ22が複数本(本実施形態では2本)形成されている。
【0089】
サイプ22は、凸状曲線細溝20よりも溝幅が狭く設定されている。サイプ22の溝幅は、0.5〜4.0mmの範囲内が好ましい。本実施形態では、サイプ22の溝幅が0.5mmに設定されている。
【0090】
また、第1陸部分18Aのタイヤ赤道面CL側の端部には、面取り23が形成されている。
【0091】
なお、周方向主溝14の両側には、周方向に連続して延びる周方向陸部24が設けられている。
【0092】
第2陸部分18Bのタイヤ赤道面CL側の端部には、面取り26が形成されており、この陸部分18と周方向陸部24とは、傾斜横溝16、面取り26及び凸状曲線細溝20によって分離している。
【0093】
なお、本実施形態の周方向陸部24の幅(最大値)は、8.5mmである。
(作用)
次に、本実施形態の空気入りタイヤ10の作用を説明する。
【0094】
トレッド12に接地端12Eからタイヤ赤道面CLに向けてタイヤ周方向に対して傾斜して延びる複数の傾斜横溝16を配して方向性を指定し、さらにはタイヤ赤道面CLに周方向に連続する周方向主溝14を設けたので、高い排水性が得られ、高いハイドロプレーング性能が得られる。
【0095】
ここで、傾斜横溝16は、周方向主溝14に連結していないので、トレッド中央域の剛性が確保でき、ドライ、ウエット走行時の操縦性能が確保される。
【0096】
雪上走行時では、傾斜横溝16に雪が入り込み、雪柱剪断力が得られるため、雪上路面で走行する際の基本的な雪上性能が得られる。
【0097】
周方向に隣接する傾斜横溝16で挟まれる陸部分18において、回転方向側の第1陸部分18Aが反対側の第2陸部分18Bに比較して凸状曲線細溝20、及びサイプ22によるタイヤ軸方向エッジ成分が多いため、雪上に踏み込む際に大きなエッジ効果が得られ、雪上でのトラクション性能を向上させることができる。
【0098】
なお、この陸部分18において、回転方向側とは反対側の第2陸部分18Bは回転方向側の第1陸部分18Aに比較して凸状曲線細溝20、及びサイプ22は少なく陸部剛性が高いので、陸部分全体としての陸部剛性は確保され、ドライ、ウエット操縦性能を確保することが出来る。
【0099】
ウエット路面走行時、接地面内の水は傾斜横溝16をタイヤ赤道面CL側から接地端側12Eへ流れるが、その際、水は傾斜横溝16の回転方向側の溝壁16Aが直線形状形成されているので、水を溝内でスムーズに流すことが出来る。
【0100】
また、傾斜横溝16の溝壁16Bは、凸状曲線壁部分16Baを複数連ねて形成されているので、雪上走行でのトラクション時の陸部分の引っ掛かり成分が増す。また、溝壁16Bが長手方向に凹凸しているので、溝内を動こうとする雪を凸部分(溝幅が狭い部分)で締め付けることができるので、溝内で雪を確実に掴むことができ、非常に高いトラクション力を発生できる。
【0101】
雪上でのブレーキの際は、傾斜横溝16の溝内の雪は、傾斜横溝16の蹴り出し側縁に沿って接地端12E側からタイヤ赤道面CL側に向かって流れようとするが、本実施形態の傾斜横溝16では、傾斜横溝16の蹴り出し側縁、即ち溝壁16Bを凸状曲線壁部分16Baを複数連ねて形成したので、溝内の雪の流れに対して抵抗となり、トラクション時と同様に、有効に雪柱剪断力を発生でき、雪上ブレーキ性能も向上できる。
【0102】
なお、傾斜横溝16において、凸状曲線壁部分16Baの曲率半径が10mm未満になると、傾斜横溝16内で凸状曲線壁部分16Baの数が多くなり過ぎ、排水性が悪化する。
【0103】
一方、傾斜横溝16において、凸状曲線壁部分16Baの曲率半径が200mmを越えると、溝内を流れようとする雪の締め付け効果が薄くなり、有効にトラクション、ブレーキ性能を発揮できなくなる。
【0104】
また、傾斜横溝16において、最大幅に対する最小幅の割合が15%未満になると、排水性が悪化する。
【0105】
一方、傾斜横溝16において、最大幅に対する最小幅の割合が85%を越えると、溝内を流れようとする雪の締め付け効果が薄くなり、有効にトラクション、ブレーキ性能を発揮できなくなる。
【0106】
陸部分18において、凸状曲線細溝20で区画された複数の第1陸部分18Aは踏み込み時に適度に動くので、雪上走行時にこれら第1陸部分18Aのエッジを有効に働かせることができ、雪上走行性能が向上する。
【0107】
また、凸状曲線細溝20は、タイヤ周方向の成分及びタイヤ軸方向の成分の両方の成分を有しているので、あらゆる方向からの力に対して第1陸部分18Aのエッジを働かせることができ、トラクション、ブレーキ、コーナリング等の各性能の向上に寄与する。
【0108】
トレッド12のタイヤ赤道面CL側の凸状曲線細溝20の溝幅を接地端12E側の凸状曲線細溝20の溝幅より狭く設定することで、トレッド中央付近のトレッド剛性が確保され、ドライ、ウエット走行時の操縦性能を上げることが出来る。
【0109】
また、溝幅を広く設定した接地端側12Eの凸状曲線細溝20により、雪上のブレーキ性能を確保することが出来る。
【0110】
第1陸部分18Aにサイプ22を形成することで、エッジ効果が増し、雪上性能(トラクション、ブレーキ)を向上することが出来る。
【0111】
なお、サイプ22の本数を調整することで(多ければ雪上性能より、少なければドライ、ウエット操縦性能よりになる)、性能バランスをチューニングすることが出来る。
【0112】
ここで、サイプ22の溝幅が0.5mm未満になると、接地時に第1陸部分18Aを有効に働かせる(動かせる)ことができなくなり、サイプ22のエッジ効果が充分に発揮できなくなる。
【0113】
一方、サイプ22の溝幅が4.0mmを越えると、接地時の蹴り出し側の陸部分が踏み込み側の陸部分を支える効果が薄くなり、陸部分の倒れ込みが過大になり、ドライ、ウエット走行性能に悪影響を与える。
【0114】
凸状曲線細溝20の溝幅を、サイプ22の溝幅よりも大きく設定することで、接地時に第1陸部分18Aを有効に働かせることが出来る。
[第2の実施形態]
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を詳細に説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0115】
図2に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ10のパターンは、第1の実施形態とは若干異なっており、周方向主溝14の両側に第2の周方向主溝28が形成されており、第2の周方向主溝28のショルダー側には、第2の周方向主溝28及び横溝31でショルダーブロック30が区画されている。
【0116】
ショルダーブロック30には、横溝32、横サイプ34、横サイプ36、縦サイプ38、面取り40が形成されている。
【0117】
また、周方向陸部24と陸部分18の第2陸部分18Bとの間には、サイプ42が形成されている。なお、本実施形態において、周方向主溝14側の凸状曲線細溝20は、第2の周方向主溝28側の凸状曲線細溝20よりも溝幅が狭く、サイプと同様の溝幅に設定されている。
【0118】
本実施形態においても、周方向に隣接する傾斜横溝16で挟まれる陸部分18において、回転方向側の第1陸部分18Aが反対側の第2陸部分18Bに比較して凸状曲線細溝20、及びサイプ22によるタイヤ軸方向エッジ成分が多いため、雪上に踏み込む際に大きなエッジ効果が得られ、雪上でのトラクション性能を向上させることができる。
【0119】
また、陸部分18において、回転方向側とは反対側の領域は、細溝やサイプの形成されていない剛性の高い第2陸部分18Bであるため、陸部分18全体としての陸部剛性は確保され、ドライ、ウエット操縦性能を確保することが出来る。
(試験例)
実施例:前述した実施形態の空気入りタイヤ10である。
【0120】
従来例:図3に示すように、従来例タイヤ100のトレッド102には、タイヤ赤道面CLの両側に周方向主溝104が形成されており、接地端102Eから周方向主溝104に連結するように延びる傾斜横溝106がタイヤ赤道面CLの両側に周方向に複数形成されている。
【0121】
これらの傾斜横溝106は、タイヤ赤道面CLの左側では左上がりに、タイヤ赤道面CLの右側では右上がりに傾斜している。
【0122】
また、周方向に隣接する傾斜横溝106と傾斜横溝106との間の陸部分108には、タイヤ周方向に対して若干傾斜する周方向補助溝110、略タイヤ軸方向に延びるサイプ112、114及び横溝116が形成されている。
【0123】
また、一対の周方向主溝104に挟まれるリブ状の陸部分118には、短いサイプ122が両側部に形成されている。
【0124】
なお、陸部分108において、符号124、126、128は、面取り部分である。
【0125】
また、陸部分118において、符号130は細長三角状の突起であり、突起全体が面取りされている。
【0126】
試験条件、試験方法、及び評価方法
タイヤサイズ205/55R16の本発明の適用された実施例のタイヤと従来例のタイヤを実車に装着し、種々の試験を行なった。内圧は230kPa、荷重は実車2名乗車相当とした。
【0127】
雪上フィーリング:圧雪路面のテストコースにおける制動性、発進性、直進性、コーナリング性のテストドライバーの総合評価。評価は従来例を100とした指数表示であり、数値が大きい程性能に優れていることを表す。
【0128】
雪上ブレーキ:圧雪上を40km/hからフル制動したときの制動距離の計測。評価は従来例の制動距離の逆数を100とした指数表示であり、数値が大きい程性能に優れていることを表す。
【0129】
雪上トラクション:圧雪上での50mの距離での発進からの加速タイムの計測。評価は従来例の加速タイムを100とした指数表示であり、数値が大きい程性能に優れていることを表す。
【0130】
ウエットハイドロプレーンニグ性:水深5mmのウエット路の通過時のハイドロプレーニング発生限界速度でのテストドライバーのフィーリング評価。評価は、従来例を100とした指数表示であり、数値が大きい程性能に優れていることを表す。
【0131】
ドライ操縦安定性:ドライ状態のサーキットコースを各種走行モードにてスポーツ走行したときのテストドライバーのフィーリング評価。評価は、従来例を100とした指数表示であり、数値が大きい程性能に優れていることを表す。
【0132】
ウエット操縦安定性:ウエット状態のサーキットコースを各種走行モードにてスポーツ走行したときのテストドライバーのフィーリング評価。評価は、従来例を100とした指数表示であり、数値が大きい程性能に優れていることを表す。
【0133】
【表1】
【0134】
試験の結果、本発明の適用された実施例のタイヤは、全ての項目について従来例よりも性能に優れていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0135】
ドライ、及びウエット走行のみならず、雪上においても高い走行性能を得たい場合に用いる。
【符号の説明】
10 空気入りタイヤ
16 傾斜横溝
18 陸部分
18A 第1陸部分
18B 第2陸部分
20 凸状曲線細溝(本発明の細溝)
22 サイプ(本発明のサイプ)
Claims (7)
- トレッドに接地端からタイヤ赤道面に向けてタイヤ周方向に対して傾斜して延びる複数の傾斜横溝を配し、前記傾斜横溝がタイヤ赤道面側から接地するように回転方向の指定された空気入りタイヤであって、
周方向に隣接する前記傾斜横溝で挟まれる陸部分は、前記傾斜横溝よりも幅狭とされ前記傾斜横溝に沿って形成された複数の細溝によってタイヤ回転方向側の第1陸部分とタイヤ回転方向とは反対側の第2陸部分とに分割されており、
前記第1陸部分は最も幅広の前記細溝よりも幅狭のサイプが複数形成され、
前記第2陸部は前記傾斜横溝に沿った方向に連続している、ことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記傾斜横溝をトレッド平面視したときに、回転方向側の溝壁は溝長手方向に沿って略直線形状に形成され、反対側の溝壁は反対側へ凸となる凸状曲線を複数連ねて形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記傾斜横溝は、回転方向側とは反対側の溝壁に前記凸状曲線が少なくとも3箇所以上設けられ、前記凸状曲線は曲率半径が10〜200mmの範囲内とされた円弧形状であり、前記傾斜横溝の最大幅に対する最小幅の割合が15〜85%の範囲内にある、ことを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記陸部分には、前記傾斜横溝の回転方向側の溝壁から反対側へ向かって反対側の傾斜横溝に開口することがなく、回転方向とは反対側へ凸となる凸状曲線細溝が前記傾斜横溝に沿って複数連ねられている、ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
- タイヤ赤道面側に配置される前記凸状曲線細溝は、接地端側に配置される前記凸状曲線細溝よりも溝幅が狭く設定されている、ことを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤ。
- 前記サイプは、溝幅が0.5〜4.0mmの範囲内である、ことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッドには、タイヤ軸方向中央に周方向主溝を少なくとも1本備え、
前記傾斜横溝は、前記周方向主溝に連結していない、ことを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
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