ところが、バットレス部に前記のような溝が形成されている重荷重用空気入りタイヤのトレッドショルダー端部に過度の荷重がかかった際に、前記溝を含むバットレス部が変形をして溝の壁面どうしが接触をした場合には、前記溝はそれ以上変形できず、接地圧力を低減することができなくなってしまう。このため、旋回時に前記のように過度な荷重がかかり、過度な横力やねじれが重荷重用空気入りタイヤに加えられた場合には、トレッドショルダー端部に欠けやもげが発生する虞がある。このようにトレッドショルダー端部に欠けやもげが発生した場合には、接地面積を大きくした場合に有効な本来の偏摩耗防止の効果が得られなくなってしまう。また、前記のような大きな荷重がかかる場合の接地圧力を低減させる場合には、溝の幅を広くすることにより、溝の変形量が大きくなるので分散される荷重も大きくなり、前記の接地圧力を低減できるが、単に溝の幅を大きくした場合には、旋回時の荷重によるトレッドショルダー端部の変形量も大きくなり、操縦安定性が低下してしまう。
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、操縦安定性を維持しつつ、旋回時の過度な荷重によるトレッドショルダー端部の欠けやもげ等を抑制することのできる重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る重荷重用空気入りタイヤは、トレッド部のタイヤ幅方向外方に形成されているバットレス部にタイヤ周方向に溝部が設けられている重荷重用空気入りタイヤにおいて、前記溝部は連続して、或いは、不連続で形成されており、且つ、開口部が前記バットレス部に形成される主溝と、当該主溝の底部に開口部を有すると共にその開口部から当該溝部の深さ方向に形成される副溝とにより形成され、前記副溝は、前記副溝の底部の中心線の形状が、前記主溝の開口部の中心線の形状と異なっていると共に前記副溝の底部が当該副溝の幅方向に周期的な波形で形成されており、前記副溝を形成する波形は、前記主溝の溝幅をW1とし、波形のピッチをPとした場合に、W1×2≦P≦W1×15となるように形成されていることを特徴とする。
この発明では、バットレス部に形成する溝部を二段以上の溝で形成することにより、旋回時にトレッドショルダー端部にかかる大きな荷重を、これらの複数の溝で分散し、トレッドショルダー端部への接地圧力を低減できる。これにより、過荷重によるトレッドショルダー端部の欠けやもげ等を抑制できる。また、荷重を複数の溝で分散するので、1つの溝底部への力の集中を抑制できる。これにより、応力集中を抑制できるので、応力集中による溝底部のクラックを抑制することができる。さらに、大きな荷重を分散する際に、幅の広い溝が大きく変形して分散するのではなく、複数の溝で分散し、それぞれの溝が小さく変形することにより前記の接地圧力を低減させるので、トレッドショルダー端部の変形量を少なくできる。これにより、トレッドショルダー端部に荷重がかかった際の操縦安定性を維持できる。またさらに、溝部を複数の溝で形成することにより、溝の壁面の面積が増加するので、走行時に発生する熱を放出し易くなる。これらの結果、旋回時にトレッドショルダー端部に大きな荷重がかかった場合でも、前記溝部によってその荷重を分散し、接地圧力を低減できるので、旋回時のトレッドショルダー端部の欠けやもげ等を抑制することができる。さらに、その際でもトレッドショルダー端部の変形量が少ないので、操縦安定性を維持することができる。またさらに、溝の壁面の面積の増加により放熱性が向上するので、耐久性を向上させることができる。
また、この発明に係る重荷重用空気入りタイヤは、前記溝部は、前記トレッド部の踏面のタイヤ幅方向の端部であるトレッドショルダー端部からタイヤ径方向内方に向かって、前記重荷重用空気入りタイヤのトレッド部にタイヤ周方向に設けられた縦溝の深さの80%〜150%の範囲内の位置に設けられていることを特徴とする。
この発明では、バットレス部に形成する前記溝部の位置を、トレッドショルダー端部からタイヤ径方向内方に向かって、トレッド部に形成する縦溝の深さの80%以上の位置に設けている。これにより、トレッド部の踏面が摩耗することにより、当該トレッド部の厚さが薄くなった場合でも、バットレス部に設けられる前記溝部は、踏面が摩耗をする前の形状を維持できるので、摩耗後も上記の効果を得ることができる。また、前記溝部が設けられている位置は、トレッドショルダー端部からタイヤ径方向内方に向かって、トレッド部に形成する縦溝の深さの150%以下の位置でもある。ここで、本発明のような重荷重用空気入りタイヤでは、踏面が前記のように摩耗した場合には、トレッド部を削り取ってバフ掛けをし、新たなトレッド部を接合して更生をする場合が多々ある。前記溝部の位置が、トレッドショルダー端部からタイヤ径方向内方に、トレッド部に形成する縦溝の深さの150%以上の位置に形成される場合には、更生時のバフ掛けをする際にバフライン上に前記溝部が存在し、接合面が溝部によって本来の接合面とは異なった形状となる場合があるので、新たなトレッド部の接合面と幅が合わないなどの不具合が生じる虞がある。さらに、溝部がこの位置に形成された場合には、トレッドショルダー端部から離れ過ぎているため、トレッドショルダー端部にかかった荷重を分散する効果を得にくくなる。
しかし、この発明の前記溝部は、前記の位置に設けられているため、その位置はバフラインよりもタイヤ径方向外方であり、前記溝部は更生時には全て除去されるので、当該重荷重用空気入りタイヤは更生時に新たなトレッド部との幅が合わないなどの不具合が生じない。また、トレッドショルダー端部と溝部とが近くなるため、トレッドショルダー端部にかかる荷重を溝部で分散するなど、トレッドショルダー端部の働きを補うことができる。これらの結果、前記溝部は、トレッド部の踏面の摩耗に関係なく上記の効果を得ることができ、また、トレッド部の更生時においても、その更生をする際の溝部による不具合を防止できる。さらに、溝部を設ける際の上記の効果を確実に得ることができる。
また、この発明に係る重荷重用空気入りタイヤは、前記溝部は、深さが2mm〜10mmで形成されていることを特徴とする。
この発明では、前記溝部の開口部から底部までの深さを2mm〜10mmで形成している。前記溝部の深さをこの範囲で形成することにより、旋回時のトレッドショルダー端部の荷重を分散しつつ、操縦安定性を確保している。即ち、溝部の深さが2mm以下の場合は、溝部の変形量が少ないため、トレッドショルダー端部にかかった荷重を分散することができず、前記トレッドショルダー端部に大きな荷重がかかった場合には、欠けやもげ等が発生してしまう。また、溝部の深さを10mm以上で形成した場合には、トレッドショルダー端部に荷重がかかった際の溝部の変形が大き過ぎ、トレッドショルダー端部の変形量も大きくなるので、操縦安定性が低下してしまう。そこで、前記溝部全体の深さを2mm〜10mmで形成することにより、旋回時のトレッドショルダー端部の荷重を分散して接地圧力を低減することによって欠けやもげを抑制しつつ、操縦安定性を維持している。
また、この発明に係る重荷重用空気入りタイヤは、前記溝部は、開口部が前記バットレス部に形成される主溝と、当該主溝の底部に開口部を有し、且つ、その開口部から当該溝部の深さ方向に形成される副溝とにより形成され、前記副溝の底部の中心線の形状が、前記主溝の開口部の中心線の形状と異なっていることを特徴とする。
この発明では、二段以上ある溝部の、主溝の開口部の幅方向の中心である中心線の形状と、副溝の底部の幅方向の中心である中心線の形状とが異なっている。即ち、例えば主溝はタイヤ周方向に沿った円形の溝として形成しており、副溝はタイヤ径方向に振幅した波形の形状で形成しながらタイヤ周方向に沿って形成している場合や、それとは逆に、波形の主溝に円形の副溝が形成している場合など、主溝と副溝との形状が異なっていることを表している。このように、主溝と副溝との形状を異ならせて形成することにより、壁面の面積が増えるので、トレッドショルダー端部にかかる荷重を分散させ易くなると同時に、増えた面積の分だけ外部から力を受けることができるので、溝部全体の剛性を向上させることができる。この結果、旋回時にトレッドショルダー端部に荷重がかかった場合でも、トレッドショルダー端部の欠けやもげを抑制しつつ、操縦安定性を維持できる。また、主溝と副溝との形状が異なっているため、当該溝部を形成する壁面の面積が増加する。このように壁面の面積が増加した場合には、壁面からの放熱性がさらに高まる。この結果、耐久性がさらに向上する。
また、この発明に係る重荷重用空気入りタイヤは、前記副溝の底部の中心線の長さは、前記主溝の開口部の中心線の長さよりも長いことを特徴とする。
この発明では、前記副溝の中心線の長さが、前記主溝の開口部の中心線の長さよりも長い、即ち、副溝は主溝よりもタイヤ周方向に1周する際に、長い距離で形成されていることになる。これにより、副溝を形成する壁面の面積を増加させることができる。このように溝の壁面の面積を増加させる結果、より大きな荷重を溝部で分散させることができるので、トレッドショルダー端部の接地圧力をより低減でき、欠けなどを抑制し易くなる。さらに、壁面の面積が大きいため荷重がかかった際に荷重をより分散できるので溝部全体の変形量がさらに少なくなり、操縦安定性を維持し易く確保できる。
また、この発明に係る重荷重用空気入りタイヤは、前記副溝は、当該副溝の底部が当該副溝の幅方向に周期的な波形で形成されていることを特徴とする。
この発明では、前記副溝が周期的な波形になるように形成しているので、前記のように壁面の面積を増加させて荷重を受ける場合に、壁面の面積をタイヤ周方向で平均的に増加させることができる。また、副溝を波形で形成することにより、荷重が分散されるので、荷重がかかった際の副溝のクラックの発生を抑制できる。これらの結果、荷重の吸収によるトレッドショルダー端部の欠け等の抑制や操縦安定性の確保などの効果が、タイヤ周方向で偏ることがなく、トレッド部のタイヤ周方向のどの位置が路面に接地した場合でも、同一の効果を得ることができ、さらに、溝部自体の破損を抑制できる。
また、この発明に係る重荷重用空気入りタイヤは、前記副溝を形成する波形は、前記主溝の溝幅をW1とし、波形のピッチをPとした場合に、W1×2≦P≦W1×15となるように形成されていることを特徴とする。
この発明では、前記の波形のピッチを、W1×2≦P≦W1×15(P=ピッチ、W1=主溝の溝幅)とすることにより、副溝の壁面の面積の増加のよる前記のような効果を効率的に得ている。即ち、波形のピッチが主溝の溝幅の2倍よりも小さい場合には、副溝の壁面の面積が大き過ぎて溝部の強度が高くなり過ぎるため、トレッドショルダー端部に荷重がかかった際に、溝部が変形せず、その荷重を分散できないため、トレッドショルダー端部に欠け等が生じる可能性がある。また、副溝の波形のピッチが主溝の溝幅の15倍よりも大きい場合には、副溝の溝壁の面積の増加による溝部の強度の向上が望めず、操縦安定性が低下する虞がある。そこで、波形のピッチを、W1×2≦P≦W1×15の範囲で形成することにより、副溝の溝壁の面積の増加による効果を適確に得ることできるので、旋回時のトレッドショルダー端部の荷重を分散することによって欠け等を抑制しつつ、操縦安定性を維持できる。
また、この発明に係る重荷重用空気入りタイヤは、前記副溝を形成する壁面は、タイヤ外表面の法線に対し5°〜45°の範囲で周期的に変化して傾斜していることを特徴とする。
この発明では、前記副溝の壁面の傾斜角度を前記の範囲で形成することにより、副溝の壁面の面積の増加のよる前記のような効果を効率的に得ている。即ち、前記壁面の角度が前記の範囲外の場合には、主溝に対する副溝の振幅の変位量が大きいことになる。この場合、前記壁面の増加による強度の増加が大き過ぎるため溝部が変形せず、トレッドショルダー端部の荷重を分散できないので、欠け等の不具合が生じる可能性がある。また、副溝の振幅の変位量が大きい場合には、形成が困難になるので、コストの増加にもつながる。そこで、副溝の壁面の傾斜角度を前記の範囲で形成することにより、前記のように副溝の壁面の面積の増加による効果を効率的に得つつ、その際のコストの増加を防いでいる。
本発明にかかる重荷重用空気入りタイヤは、操縦安定性を維持しつつ、旋回時の過大な荷重によるトレッドショルダー端部の欠けやもげ等を抑制する、という効果を奏する。また、バットレス部に形成する溝部のクラックを抑制する、という効果を奏する。さらに、熱による劣化を抑制し、耐久性を向上させる、という効果を奏する。
以下に、本発明にかかる重荷重用空気入りタイヤの実施をするための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、重荷重用空気入りタイヤの仮想の回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内方とはタイヤ幅方向において赤道線に向かう方向、タイヤ幅方向外方とは、タイヤ幅方向において赤道線の向かう方向の反対方向をいう。また、タイヤ径方向とは、前記回転軸と直交する方向をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周方向である。図1は、この発明にかかる重荷重用空気入りタイヤを示す一部断面図である。図2は、図1の重荷重用空気入りタイヤの一部斜視図である。この重荷重用空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向の最も外側にトレッド部2が形成されており、トレッド部2のタイヤ幅方向の端部はトレッドショルダー端部6として形成されている。このトレッド部2の表面にはトレッドパターンを形成する縦溝3及び横溝4が設けられており、このトレッド部2のタイヤ径方向内方側にはベルト層8が設けられている。また、前記トレッド部2のタイヤ幅方向の両端からタイヤ径方向内方に向けてサイドウォール部9が設けられている。さらに、このサイドウォール部9のタイヤ幅方向内方側、及び前記ベルト層8のタイヤ径方向内方側にはカーカス10が設けられている。前記トレッド部7の、タイヤ幅方向外方に形成されている面、或いは、前記サイドウォール部9のタイヤ径方向外周部付近、つまり、サイドウォール部9の前記トレッドショルダー端部6付近は、バットレス部7として形成している。
前記トレッド部2の、路面と接地する部分である踏面5はタイヤ幅方向及びタイヤ周方向に沿った面として形成しており、前記バットレス部7は、略タイヤ幅方向外方の面、つまり、当該重荷重用空気入りタイヤ1の側面の一部として形成している。このため、バットレス部7は、略タイヤ幅方向の外側に面しつつ、タイヤ周方向に形成している。このように、トレッド部2とバットレス部7とは、形成する面が異なった方向を向いているため、双方の境目であり、且つ、トレッド部2のタイヤ幅方向外方の端部でもあるトレッドショルダー端部6は、エッジ状となって形成している。
前記バットレス部7には、タイヤ周方向に沿って溝部11が形成されており、溝の深さ方向が略タイヤ幅方向となる向きで形成されている。この溝部11は、主溝12と副溝13とから形成されており、副溝13は主溝12の奥の方、つまり、主溝12よりも赤道線25方向、或いはタイヤ幅方向内方側に設けられている。また、この溝部11は、前記主溝12が前記バットレス部7に、開口部14によって開口し、開口部14からタイヤ幅方向内方側に向けて2つで1組の主溝壁面15が形成されている。この1組の主溝壁面15は、タイヤ径方向の外方側或いは内方側からそれぞれが他方に面するようにほぼ平行に設けられている。さらに、主溝壁面15のタイヤ幅方向内方には、主溝底部16が前記バットレス部7と略並行な面で形成されている。
前記副溝13は前記主溝底部16からタイヤ幅方向内方に設けられている。この副溝13の開口部である副溝開口部17は、前記主溝底部16に形成されており、主溝底部16の幅方向の中心と副溝開口部17の幅方向の中心とが、ほぼ一致する位置に形成している。この副溝開口部17からタイヤ幅方向内方に向けて2つで1組の副溝壁面18が、互いに他方に面しながら設けられている。さらに、この副溝壁面18のタイヤ幅方向内方には、副溝底部19が前記バットレス部7と略並行な面で形成されている。この副溝13は、前記のように副溝開口部17が主溝底部15に設けられているため、当該副溝13の溝幅は主溝12の溝幅よりも狭くなっている。
前記の主溝12及び副溝13からなる溝部11は、前記の形状で、前記バットレス部7のタイヤ周方向に沿って1周にかけて連続して設けられている。その位置は、前記トレッドショルダー端部6からタイヤ径方向内方に向かって、前記縦溝3の深さの80%〜150%の範囲内に入る位置に設けられている。これにより、溝部11は、トレッド部2の更生時にトレッド部を削り落とすラインであるバフライン20よりも、タイヤ径方向外方に設けられている。さらに、この溝部11は、主溝12と副溝13との合計の深さが、2mm〜10mmの範囲に入るように形成されている。
この重荷重用空気入りタイヤ1をトラックなどの車両に装着して走行した場合で、旋回をすると、当該重荷重用空気入りタイヤ1と路面とが接地している部分である踏面5の、タイヤ幅方向の端部である前記トレッドショルダー端部6への荷重、或いは接地圧力は大きくなる。当該重荷重用空気入りタイヤ1は、前記のような車両重量の重いトラック等に主に装着されるために、前記のような場合にはトレッドショルダー端部6には大きな接地圧力がかかる。このようなトレッドショルダー端部6への圧力は、主にトレッドショルダー端部6をタイヤ径方向内方に向けて圧縮する力であるが、当該トレッドショルダー端部6のタイヤ径方向内方には、前記溝部11が設けられている。この溝部11には、前記のように主溝12と副溝13とが形成されている。前記トレッドショルダー端部6に圧力が加えられると、その圧力の方向と同方向には溝部11が設けられているため、当該溝部11が潰れる方向に変形することにより、トレッドショルダー端部6にかかる圧力は溝部11によって逃がされる。また、当該溝部11は、前記のように主溝12と副溝13とによって形成されているため、前記の圧力が分散されるので、溝部11の1箇所に集中することがなく、結果的に大きな圧力を受けることができる。
これらの結果、前記トレッドショルダー端部6にかかる大きな圧力に対し、トレッドショルダー端部6にかかる負担が軽減されるので、旋回時の接地圧力によるトレッドショルダー端部6の欠けやもげを抑制できる。さらに、前記のように圧力が溝部11の1箇所に集中することがないので、応力集中による溝部11のクラックを抑制することができる。
また、前記の圧力は、主溝12と副溝13とに分散されるので、それぞれが小さな力を受けることによって前記の圧力を受けるので、溝部11全体としては、変形量が少ないまま圧力を受けることができる。この結果、トレッドショルダー端部6の変形量も少なくできるので、接地圧力を受けたときの操縦安定性を維持できる。また、前記溝部11が主溝12と副溝13とによって形成されているので、溝部11を形成する壁面等の表面積が大きくなる。この結果、走行時に発生する熱を放出し易くなるので、熱による劣化が抑制され、耐久性が向上する。
また、当該重荷重用空気入りタイヤ1を装着した車両が走行を続けて踏面5が摩耗をすると、摩耗後のトレッドショルダー端部6と溝部11との距離は近くなる。その場合でも、前記溝部11はトレッドショルダー端部6からタイヤ径方向内方に向かって、トレッド部2の縦溝3の深さの80%以上の位置に設けられているので、踏面5が摩耗するにしたがってバットレス部7がタイヤ径方向内方に摩耗しても、溝部11が形成されている部分まで摩耗することはない。この結果、溝部11はタイヤトレッドの摩耗後も形状が変化することがないので、トレッド部2の摩耗に関係なく上記の効果を得ることができる。
また、当該重荷重用空気入りタイヤ1は、走行を重ねてトレッド部2の踏面5の摩耗が進行した場合には、当該トレッド部2をバフライン20まで削り落として、新たなトレッド部2を貼り付けて更生させる場合が多い。この場合でも、前記溝部11は、トレッドショルダー端部6からタイヤ径方向内方に向かって、トレッド部2の縦溝3の深さの150%以下の位置に設けられているので、削り落とした際に、溝部11の中途半端な位置で削られることがない。さらに、削り落とした後に、上記のような溝部11が形成されたトレッド部2を張り合わせることにより、上記と同様の効果を得ることができる。この結果、トレッド部2の更生時に、トレッド部2を削り落とした部分と新たなトレッド部2の接合面との形状が合わない等の不都合を防止できる。さらに、当該重荷重用タイヤ1の更生時に、溝部11が形成されたトレッド部2を貼り付けることによって、更生後も上記の効果と同様の効果を得ることができる。またさらに、溝部11はトレッドショルダー端部6に対して前記の位置に設けられており、トレッドショルダー端部6から離れ過ぎていないため、前記のようにトレッドショルダー端部6にかかった接地圧力を確実に分散できるので、トレッドショルダー端部6への接地圧力による負担を低減できる。
また、前記溝部11は、主溝12と副溝13との合計の深さが2mm以上あるので、トレッドショルダー端部6にかかった接地圧力を当該溝部11によって充分分散できる。この結果、上記のように、旋回時にトレッドショルダー端部6にかかる接地圧力を低減して、欠けやもげ等を抑制することができる。さらに、溝部11の主溝12と副溝13との合計の深さは10mm以下で形成されているので、旋回時などトレッドショルダー端部6に接地圧力が大きくなり、その圧力を分散する場合でも、溝部11が変形し過ぎずに適度な変形量で変形する。このため、旋回時のトレッドショルダー端部6の変形量も少ないまま、前記の接地圧力が分散される。この結果、旋回時のようにトレッドショルダー端部6の接地圧力が大きくなる場合の、操縦安定性を維持することができる。
図3は、副溝が複数の段の溝で形成されている重荷重用空気入りタイヤの一部断面図である。図4は、図3の重荷重用空気入りタイヤの一部斜視図である。図3及び図4は、下記で説明している部分以外の構成は図1及び図2と同様なので、その説明を省くとともに同一の符号を付す。本発明の重荷重用空気入りタイヤは上記以外の形態でも実施でき、図3のような形態でも実施できる。即ち、図1の副溝13は溝の段数が一段で形成しているが、図3の副溝33は二段で形成している。これにより、溝部31全体では三段の溝で形成されている。この図3の溝部31は、主溝32は図1の主溝12と同様一段の溝で形成されており、副溝33が第1副溝35と第2副溝39とから形成されている。
第1副溝35は前記と同様に主溝底部に形成され、主溝32よりも当該溝部31の溝深さの奥の方に、上記の副溝33とほぼ同様な形状で形成されている。つまり、主溝底部34に第1副溝開口部36は形成され、そこからタイヤ幅方向内方に向けて第1副溝壁面37が、さらに第1副溝壁面37のタイヤ幅方向内方の端部に第1副溝底部38が設けられている。また、この第1副溝底部37には、第2副溝開口部40が形成されている。
この第1副溝35と第2副溝39との関係は、上記の溝部31の主溝32と副溝33との関係と同様であり、第1副溝35のタイヤ幅方向内方に第2副溝39は形成されている。このため、前記第2副溝開口部40からタイヤ幅方向内方に向けて、2つで1組の第2副溝壁面41がタイヤ径方向の外方側或いは内方側から互いに他方に面しながら設けられている。さらに、この第2副溝壁面41のタイヤ幅方向内方には、第2副溝底部42が前記バットレス部7と略並行な面で形成されている。この第2副溝39は、前記のように第2副溝開口部40が第1副溝底部38に設けられているため、当該第2副溝39の溝幅は第1副溝35の溝幅よりも狭くなっている。さらに、第1副溝35は、第1副溝開口部36が主溝底部34に設けられているため、当該第1副溝35の溝幅は主溝32の溝幅よりも狭くなっている。このように主溝32、第1副溝35及び第2副溝39からなる溝部31は、前記の形状で、前記バットレス部7のタイヤ周方向に沿って1周にかけて連続して設けられている。その位置は、前記トレッドショルダー端部6からタイヤ径方向内方に向かって、前記縦溝3の深さの80%〜150%の範囲内に入る位置に設けられている。さらに、この溝部31は、主溝32と副溝33との合計の深さが、2mm〜10mmの範囲に入るように形成されている。
この重荷重用空気入りタイヤ30を装着したトラックなどの車両の走行時に、旋回をすると、トレッドショルダー端部6の接地圧力は大きくなる。そのような場合に、前記溝部31は、副溝33が二段の溝で形成されており、このため、溝部31全体では三段の溝で形成されている。これにより、前記の接地圧力は当該溝部31の主溝32、第1副溝35及び第2副溝39によって分散されるので、より大きな圧力をこの溝部31で分散できる。この結果、旋回時にトレッドショルダー端部6に過大な接地圧力がかかった場合でも、この圧力を分散できるので、当該トレッドショルダー端部6の欠けやもげなどを抑制できる。さらに、力が当該溝部31によってより分散されるので、溝部31の各部に伝わる力はより小さくなり、応力集中によるクラックを、より抑制することができる。
また、溝部31を三段の溝によって形成したので、前記の接地圧力を各溝で分散して受けるので、溝部31全体の変形量がより少なくなる。この結果、トレッドショルダー端部6の変形量もさらに少なくなるので、過大な接地圧力を受けたときの操縦安定性をより維持し易くなる。また、溝部31を形成する溝の段数を増やしたことにより、溝の壁面などの表面積がさらに増加する。この結果、放熱性がさらに高くなるので、熱による劣化がより抑えられ、耐久性がさらに向上する。
図5は、副溝が波形の形状で形成されている重荷重用空気入りタイヤの一部断面図である。図6は、図5の重荷重用空気入りタイヤの一部斜視図である。図7は、図5のAA矢視図である。図8は、図7のBB断面図である。図9は、図7のCC断面図である。図5〜図9は、下記で説明している部分以外の構成は図1及び図2と同様なので、その説明を省くとともに同一の符号を付す。本発明の重荷重用空気入りタイヤに設ける溝部の副溝は、上記のようにバットレス部のタイヤ周方向に沿った形状ではなく、波形に形成しつつ、バットレス部のタイヤ周方向に沿った形状でも実施できる。図5の溝部51は、主溝53は図2の溝部11の主溝12と同様に、バットレス部7にタイヤ周方向に沿って1周にかけて設けられている。また、この主溝53は、上記の主溝12と同様な形状で主溝壁面55及び主溝底部56が形成されている。この主溝53のタイヤ幅方向内方に、前記副溝58は形成されている。
前記副溝58は、主溝53と同様にタイヤ周方向に沿って1周にかけて設けられているが、単なる円形に設けられているのではなく、タイヤ径方向に波形に形成しながら設けられている。即ち、タイヤ外表面の法線52に対して、副溝壁面59が所定の傾斜角度を有して形成されている。即ち、副溝壁面59の傾斜角度は、当該溝部51を主溝開口部54から副溝底部60方向に見た場合に、双方の副溝壁面59は、対向する副溝壁面59側に5°〜45°の角度となる範囲で形成されている。
換言すると、図8及び図9の副溝壁面59のタイヤ外表面の放線52に対する角度f、角度gが5°〜45°の範囲になるように、副溝壁面59が形成されつつ、副溝底部60の幅が一定になるように形成されている。この範囲内で副溝壁面59の角度が周期的に変化しながら、当該副溝58は形成されている。その周期は、前記主溝53の溝幅をW1とし、前記の周期をPとした場合に、W1×2≦P≦W1×15の範囲に入る周期で、前記副溝壁面59の傾斜角度は変化している。
つまり副溝58が、詳細には副溝底部60がタイヤ径方向、或いは溝の幅方向に形成する波形のピッチは前記Pであり、そのPが、W1×2≦P≦W1×15の範囲に入るように前記副溝底部60は形成されている。これにより、前記副溝底部60の幅方向の中心を通る線である副溝中心線61は、前記のPの周期で波形となる。このため、この副溝中心線61と、前記主溝開口部54の幅方向の中心を通る線である主溝中心線57とでは、副溝中心線61の方が長くなっている。この形状で、当該副溝58はバットレス部7に形成されており、その他の形状は、上記の溝部11と同様である。
この重荷重用空気入りタイヤ50を装着したトラックなどの車両の走行時に、旋回をすると、トレッドショルダー端部6の接地圧力は大きくなる。この場合に、当該重荷重用空気入りタイヤ50に形成された溝部51は主溝53と副溝58とから形成されており、さらに、副溝58は、タイヤ径方向に波形に形成しながら設けられている。これにより、副溝壁面59の面積は増加するので、力をより分散して受けることができ、トレッドショルダー端部6にかかる過大な接地圧力を、より分散できるようになる。この結果、旋回時にトレッドショルダー端部6にかかる圧力による欠けやもげ等を、さらに抑制し易くなる。また、副溝壁面59の面積が大きく形成されているため、当該溝部51は強度が高く形成されている。このため、前記の接地圧力を分散する際でも、より少ない変形量で分散できる。この結果、トレッドショルダー端部6の変形量も減少するので、操縦安定性を維持し易くなる。また、副溝壁面59は波形の形状で形成されているので、表面積が大きくなっている。このため、より放熱性が高くなっている。この結果、熱による劣化に対する耐久性がさらに向上する。
また、タイヤ径方向に形成する副溝58の波形を、バットレス部7のタイヤ周方向の全周に設けているので、副溝壁面59の面積をタイヤ周方向で平均的に増加させることができる。また、副溝壁面59を波形で形成したので、副溝58にかかる力を、より分散させることができる。この結果、トレッドショルダー端部6のタイヤ周方向のどの部分の接地圧力に対しても、欠けやもげ等を、より効果的に抑制することができ、クラックをさらに抑制できる。また、副溝58の波形のピッチPが、主溝53の溝幅W1の2倍以上となって形成されている。これにより、当該副溝58を含む溝部51が、トレッドショルダー端部6への過大な接地圧力を、分散することができる。この結果、旋回時の接地圧力によるトレッドショルダー端部6の欠けやもげを、さらに抑制し易くなる。また、当該副溝58の波形のピッチPが、主溝53の溝幅W1の15倍以下で形成されている。これにより、副溝58の波形によって強度が確実に向上するので、当該副溝58を含む溝部51の強度を確実に向上させることができる。この結果、旋回時の操縦安定性をさらに維持し易くなる。
また、波形を形成するために傾斜している副溝壁面59は、タイヤ外表面の法線52から5°〜45°の範囲で傾斜しているので、副溝壁面59の増加による副溝58の強度が強くなり過ぎることもなく、適度な強度でトレッドショルダー端部6にかかる接地圧力を分散できる。この結果、旋回時にトレッドショルダー端部6にかかる接地圧力を分散することにより、欠けやもげ等をより確実に抑制でき、且つ、操縦安定性をさらに維持し易くなる。また、副溝壁面59の傾斜が大きい場合には、副溝58の形成が困難になるが、傾斜は前記の角度となっているので、容易に形成できる。この結果、副溝58を波形に形成する際のコストの増加を軽減することができる。
図10は、副溝が略三角錐状の形状を組合せて形成されている重荷重用空気入りタイヤの一部断面図である。図11は、図10の重荷重用空気入りタイヤの一部斜視図である。図12は、図10のDD矢視図である。図13は、図12のEE断面図である。図10〜図13は、下記で説明している部分以外の構成は図1及び図2と同様なので、その説明を省くとともに同一の符号を付す。本発明の重荷重用空気入りタイヤに設ける溝部の副溝は、図2のようにバットレス部のタイヤ周方向に沿った形状ではなく、三角錐に近似する形状を組み合わせ、この組合せた形状でバットレス部のタイヤ周方向に沿わせても実施できる。図10の溝部71は、主溝72が図2の溝部11の主溝12と同様に、バットレス部7にタイヤ周方向に沿って1周にかけて設けられている。また、この主溝72は、上記の主溝12と同様な形状で主溝壁面74及び主溝底部75が形成されている。この主溝72のタイヤ幅方向内方に、前記副溝76は形成されている。前記副溝76は、主溝72と同様にタイヤ周方向に沿って1周にかけて設けられているが、単なる円形に設けられているのではなく、三角錐80の仮想底面81側を副溝開口部77とし、頂点側82が溝の奥の方になる向きにして、複数の三角錐80を組合せて形成している。さらに、頂点側82の角部を削除して、副溝底部79がバットレス部7に平行になるように形成されている。
詳細には、三角錐80の仮想底面81の一辺である辺aが前記主溝72の主溝開口部73と平行になる向きにして形成し、この主溝開口部73に並行な辺aは副溝開口部77の一部として主溝底部75に形成される。この三角錐80と隣合う三角錐80も同様に仮想底面の一辺である辺aを主溝開口部73と平行な向きになるように形成するが、この三角錐80の当該辺aは、前記の三角錐80の辺aが形成した副溝開口部77と対向する側の副溝開口部77の一部として形成される。さらに、この二つの辺aの長さは同一であるが、その長さの1/2ずつずれた位置にこれらの辺aが位置するように、前記の三角錐80は形成されている。また、前記のそれぞれの辺aの端部は、他方の三角錐80の仮想底面81の前記辺aが対向する角bと、接している。つまり、前記三角錐80の仮想底面81は二等辺三角形で形成されており、等しい長さの二辺に挟まれた辺が、前記の主溝開口部73の一部となる辺aであり、等しい長さに挟まれた角bは、隣合う三角錐80の仮想底面81の辺の端部と接している。
また、それぞれの三角錐80の仮想底面81と対向し、頂点側82となる仮想角部83は、それぞれ自己の前記主溝開口部73を形成する辺a側に傾いており、このため、当該副溝76をタイヤ周方向に見た場合、前記仮想角部83が互い違いになるように形成されている。また、三角錐80の仮想底面81以外の部分の面は、副溝壁面78として形成されている。また、前記仮想角部83は、前記のように除去され、除去後の形状はその三角錐80の仮想底面81と平行な面として形成されて、この部分が副溝底部79となる。互いにこのような位置関係や形状の三角錐80がタイヤ周方向に沿って連なって、当該副溝76は形成されている。この溝部71の場合は、前記の頂点側82の面を副溝底部79として、上記の溝部11と同様に主溝72と副溝76とを合計した深さを2mm〜10mmの範囲内で形成する。
重荷重用空気入りタイヤ70のバットレス部7に、このような形状の副溝76を有する溝部71を形成した場合は、副溝壁面78が、タイヤ径方向だけでなく、タイヤ幅方向にも凹凸を有しているため、トレッドショルダー端部6にかかるあらゆる方向からの圧力に対しても、その圧力を分散でき、また、強度も確保できる。この結果、トレッドショルダー端部6にかかる接地圧力が、タイヤ径方向のみでなく、それ以外の方向からかけられた場合でもその圧力を分散できるので、トレッドショルダー端部6の欠け等を、より確実に抑制できる。さらに、副溝壁面78がタイヤ幅方向にも凹凸を有しているので、トレッドショルダー端部6への斜め方向からの圧力に対しての強度を有し、操縦安定性を確実に維持することができる。
図14及び図15は、溝部が不連続に形成されている重荷重用空気入りタイヤの一部斜視図である。図14及び図15は、下記で説明している部分以外の構成は図1及び図2と同様なので、その説明を省くとともに同一の符号を付す。本発明の重荷重用空気入りタイヤに設ける溝部は、図2のようにバットレス部のタイヤ周方向に沿って連続した形状ではなく、タイヤ周方向に沿って不連続に形成した形状でも実施できる。図14の形状は、図2の溝部11を単純に不連続にした形状である。このため、各溝部91には図2の溝部11と同様に、主溝92と副溝93とが設けられている。また、図15では、溝部95をタイヤ径方向にずらして配置し、さらに、タイヤ径方向に異なる溝部95どうしがタイヤ周方向において重なるようにして配置している。この場合、全ての溝部95が、前記トレッドショルダー端部6からタイヤ径方向内方に向かって、前記縦溝3の深さの80%〜150%の範囲内に入る位置に設けられている。
重荷重用空気入りタイヤ90に、このように溝部91、95をバットレス部7のタイヤ周方向に不連続に形成した場合でも、不連続に1周にかけて形成されていれば、上記のような効果を有するので、旋回時のトレッドショルダー端部7の欠け等を抑制し、且つ、操縦安定性を維持できる。特に、図15の重荷重用空気入りタイヤ90に形成する溝部95のように、複数の溝部95をタイヤ径方向にずらしつつ、タイヤ周方向にもずらし、タイヤ周方向のいずれの部分にもタイヤ径方向のどこかに前記溝部95が設けられている場合には、確実にトレッドショルダー端部7の欠け等を抑制し、且つ、操縦安定性を維持できる。また、溝部91、95を不連続に形成することにより、溝部91、95の形状や配置の自由度が向上する。この結果、その形状や配置を工夫することにより、溝部91、95を模様などのデザインとしても使用することができるので、当該重荷重用空気入りタイヤ90の美的外観の向上を図ることができる。
図16及び図17は、副溝が主溝に対してずれた位置に形成されている重荷重用空気入りタイヤの一部断面図である。図16及び図17は、下記で説明している部分以外の構成は図1及び図2と同様なので、その説明を省くとともに同一の符号を付す。本発明の重荷重用空気入りタイヤの副溝は、図1の溝部11の副溝13のように溝の幅方向の中心の位置が、主溝12の幅方向の中心の位置と同じ位置ではなく、ずれていても実施できる。例えば、図16の溝部101は、主溝102と副溝103とがずれて形成しているだけで、それ以外の形状は図1の溝部11と同様の形状である。また、このように溝どうしがずれて形成する溝部は、主溝と副溝とがずれる場合だけでなく、図17の溝部111のように副溝113が第1副溝114と第2副溝115との二段で形成され、第1副溝114と第2副溝115とがずれて形成する場合でも可能である。この溝部111は、主溝112、第1溝部114及び第2溝部115がずれて形成しているだけで、それ以外の形状は図3の溝部31と同様の形状である。また、溝部111がそれ以上の段数の溝で形成された場合でも、各溝をずらして形成することができる。
このように、溝部に形成される複数の溝どうしをずらした場合には、2つの副溝壁面105のうち、片方の副溝壁面105が主溝壁面104と連続して形成されるので、形成が容易になる。この結果、上記のようにトレッドショルダー端部7の欠け等を抑制する、或いは操縦安定性を維持するなどの効果を得るために溝部を複数の溝で形成する場合に、製造コストを抑えることができる。
以下、上記の重荷重用空気入りタイヤについて、従来の重荷重用空気入りタイヤと参考例の重荷重用空気入りタイヤとについて行った性能の評価試験について説明する。評価試験は、欠けやもげを含む摩耗に対する耐偏摩耗性、耐クラック性、操縦安定性及び放熱性について行った。
試験方法は、11R22.5サイズのタイヤを22.5×7.50のリムに装着し、車両形式2D−4のトラックに取り付け、内圧を700kPaに設定して行なった。耐偏摩耗性と耐クラック性については、前記のトラックで5万km走行後、トレッドショルダー端部の摩耗状態をチェックし、溝部が形成されていない重荷重用空気入りタイヤの摩耗状態を100とした指数で示した。指数が大きいほど、偏摩耗性に優れている。なお、クラックは目視によって溝部のクラックの有無を確認した。操縦安定性については、前記のトラックでテスト走行をし、テストドライバー3人により、各タイヤのフィーリングを点数付けを行なった。この点数は、数値が大きいほど、操縦安定性が優れている。放熱性については、室内ドラム試験機を用いて重荷重用空気入りタイヤに2725kgの荷重をかけ、速度80km/hrで一定時間走行し、トレッドショルダー端部の内部温度を測定した。この測定結果を、バットレス部に溝が形成されていない重荷重用空気入りタイヤの放熱性を100とした指数で示した。指数が大きいほど、放熱性に優れている。
試験をする重荷重用空気入りタイヤは、参考例と比較する比較例として3種類、参考例として3種類を、上記の試験方法で試験する。従来例である比較例1〜3の各重荷重用空気入りタイヤのバットレス部の形状は、比較例1は、バットレス部に溝が形成されていないもの、比較例2は、バットレス部に一段の溝が形成されたもの、比較例3は、1段ずつの小さな溝をタイヤ径方向に2つ形成したものである。
また、参考例1〜3の各重荷重用空気入りタイヤのバットレス部に形成される溝部の形状は、参考例1は、図1の溝部11と同様の形状で形成されており、バットレス部7に溝部11を形成し、その溝部11を主溝12と副溝13の二段の溝によって形成している。参考例2は、図16の溝部101と同様の形状で形成されており、参考例1と同様、溝部101を主溝102と副溝103とによって形成しているが、一方の主溝壁面104と一方の副溝壁面105とを連続した面で形成している。参考例3は、図17の溝部111と同様の形状で形成されており、バットレス部7に形成する溝部111を主溝112と副溝113とによって形成し、副溝を二段の溝によって形成している。前記の比較例1〜3及び参考例1〜3の重荷重用空気入りタイヤを、上記の方法で評価試験をし、得られた結果を表1に示す。
各重荷重用空気入りタイヤの上記の評価試験による試験結果は、表1に示すように、比較例1では、耐偏摩耗性と放熱性については、この比較例1が基準となっているので、双方共に100となっている。また、操縦安定性=3となっている。比較例2では、耐偏摩耗性=105、操縦安定性=2.5、放熱性=105となっている。また、この比較例2では、溝底にクラックが発生している。比較例3では、耐偏摩耗性=102、操縦安定性=3、放熱性=103となっている。また、この比較例3では、溝底にクラックが発生している。参考例1では、耐偏摩耗性=108、操縦安定性=3、放熱性=104となっている。この参考例1では、溝底にはクラックは発生していない。参考例2では、耐偏摩耗性=108、操縦安定性=3、放熱性=104となっている。この参考例2では、溝底にはクラックは発生していない。参考例3では、耐偏摩耗性=108、操縦安定性=3、放熱性=104となっている。この参考例3では、溝底にはクラックは発生していない。
上記の試験結果で明らかなように、バットレス部7に溝部を形成することにより、旋回時に大きくなるトレッドショルダー端部6の接地圧力を前記溝部で分散できるので、トレッドショルダー端部6の欠けやもげ、摩耗に対する耐偏摩耗性が向上する。さらに、参考例1〜3のように、溝部を複数段の溝によって形成することにより、前記の接地圧力を個々の溝で分散できるので、前記の接地圧力を分散する際の溝部の変形量を少なくできる。これにより、トレッドショルダー端部6の変形量も減少するので、バットレス部7に溝部を形成する際の操縦安定性を維持できる。また、前記のように前記接地圧力が複数の溝で分散されるので、応力の集中が緩和され、溝底のクラックの発生を抑制できる。さらに、溝部を複数の段の溝によって形成することにより、溝の壁面の面積が増加するので、放熱性が向上する。これらの結果、バットレス部7に複数段の溝からなる溝部を形成することにより、当該重荷重用空気入りタイヤを装着した車両の操縦安定性を維持しつつ、旋回時に大きくなるトレッドショルダー端部6への接地圧力による欠け等を含む偏摩耗を抑制することができる。
なお、前記の溝部は、バットレス部7にタイヤ周方向に1周にかけて形成するのが好ましいが、不連続に形成するものであってもよい。溝部の長さや間隔を適正なものとすることにより、連続して形成されている溝部と同様の効果を得ることができる。或いは、主溝はバットレス部7にタイヤ周方向に1周にかけて形成し、副溝を不連続に形成する形状でもよい。この場合も、副溝の長さや間隔を適正なものとすることにより、副溝が連続して形成されている溝部と同様の効果を得ることができる。また、副溝の形状は、上記に示したように、波形や三角錐状の形状のものを組み合わせたもの、または、それ以外の形状でもよい。要は、バットレス部7に最低限二段以上の溝からなる溝部を設けることにより、上記のように操縦安定性を維持しつつ、トレッドショルダー端部6の欠けなどを抑制できる。さらに、より確実な効果を求める場合は、トレッドショルダー端部6にかかる接地圧力やその他の使用状況に応じて、溝の段数や副溝の形状などを決めればよい。