JP4440738B2 - インフレーション成形生分解性軟質フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、包装用、特に家庭で使用される小巻ラップフィルムとして好適に使用することができ、インフレーション成形に適した生分解性軟質フィルムに関する。
プラスチックは今や生活と産業のあらゆる分野に浸透し、全世界の年間生産量は約1億トンにも達している。しかしその一方で、生産量に比例して使用済みプラスチックの処理の問題が大きくなってきている。
従来、使用済みプラスチックの大半は埋め立て等により廃棄処理されてきたが、プラスチックは一般に自然界において長期に渡って安定であり、しかも嵩比重が小さいため、埋立地の短命化が進み、自然の景観や野生植物の生活環境が損なわれたりするなどの問題が生じて来ている。
近年、環境問題に対する関心の高まりから枯渇性資源の有効活用が重要視されるようになり、自然環境に悪影響を及ぼさない生分解性樹脂、即ち、土壌中や水中で加水分解などにより崩壊・分解が進行し、最終的には微生物の作用によって無害な分解物となる生分解性樹脂が注目されている。
現在実用化されている生分解性樹脂としては、ポリ乳酸系樹脂、脂肪族ポリエステル、変性ポリビニルアルコール、セルロースエステル化合物、デンプン変性体やこれらのブレンド体を挙げることができる。
一方、家庭で使用される小巻ラップフィルム(以下、「家庭用ラップフィルム」ともいう)は、カッター刃を具備した紙箱の中に入った形で使用されるのが一般的である。包装する際にラップフィルムを紙箱から引き出し、紙箱に具備されたカッター刃にフィルムを押し当て、カッター刃でフィルムにミシン目状の孔を開けてフィルムを引きちぎることにより、幅方向に引き裂きを伝播させてカットし、カットしたフィルムを容器に盛った食品等をオーバーラップするようにして使用する。このカット工程においてフィルムが柔らか過ぎると、フィルムが幅方向にうまく裂けずに伸びてしまったり、或いは斜め方向に引き裂けたりすることがある。また、家庭用ラップフィルムは、主として冷蔵庫や冷凍庫での食品の保存や、電子レンジで加熱する時に使用されることが多く、電子レンジでの加熱時にはフィルムの温度が100℃以上高くなることがあり、100℃程度の加熱に十分耐え得る耐熱性を備えていないと、電子レンジでの加熱時にフィルム自体が大きく変形し容器や容器内の食品に密着し過ぎてしまったり、加熱中にフィルムが溶けて孔が空いてしまったりするなどの不具合が生じる可能性がある。
このため、家庭用ラップフィルムには、透明性は勿論であるが、紙箱から引き出してカットする際のカット適性、包装・保存・加熱時における適度の弾性、さらには、電子レンジでの加熱中にも溶融穿孔が生じたり、大きな変形や容器への密着、それ自身の変質等が生じない耐熱性等の特殊な物性が求められる。
現在市販されている家庭用ラップフィルムとしては、延伸したポリ塩化ビニリデン系樹脂を主成分とするフィルムや、その後に押出キャストしたポリエチレン系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1系樹脂等を主成分とするフィルムなどが主流である。
また最近では、生分解性樹脂材料を用いた軟質フィルムの提案も為されている。例えば、透明で硬質材料である乳酸系樹脂に可塑剤を添加し、フィルムを軟質化しようとする試みが例えば特許文献1〜特許文献5等に開示されている。
特許文献1には、包装材料や医療用材料として用いることができる自然環境下での分解性をもった熱可塑性ポリポリマー組成物としてポリ乳酸に可塑剤を添加した組成物が開示されており、特許文献2には、ポリ乳酸を主成分とする乳酸系ポリマーと、二塩基酸と二価アルコールの繰り返し単位からなり、かつ末端を一塩基酸及び/又は一価アルコールで封止された、酸価と水酸基価の合計が40以下であるポリエステル系可塑剤とを必須の構成成分として含有する乳酸系ポリマー樹脂組成物が開示され、特許文献3には、使用条件下で十分な熱安定性を持ち、かつ柔軟で透明な乳酸系ポリマーを主成分とする乳酸系ポリマー組成物が開示され、特許文献4には、結晶性を有し、結晶化速度の低い脂肪族ポリエステル樹脂と可塑剤からなる樹脂組成物を成形加工して、柔軟性と耐熱性を同時に付与させた成形物が開示され、特許文献5には、高損失正接を有し、かつ経時的に安定な乳酸系組成物及びその成形品が開示されている。
特開平4−335060号公報 特開平7−118513号公報 特開2000−136300号公報 特開2000−198908号公報 特開2000−248164号公報
従来提案されている生分解性を備えた軟質フィルムは、成形加工時におけるせん断粘度が低く、また、歪み硬化性も乏いため成形加工性にも劣り、特にインフレーション成形においてバブルが安定しないため、工業的にフィルム成形することが困難であるという問題を抱えていた。
本発明の目的は、インフレーション成形によって好適に製造することができる生分解性軟質フィルムであって、包装用、特に家庭用ラップフィルムとして好適に使用できるインフレーション成形生分解性軟質フィルムを提供することにある。
本発明者は、このような課題に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、特定組成からなるポリ乳酸系樹脂組成物を中間層とし、該中間層の両側に、特定のレオロジー特性を有するポリエステル樹脂からなる表裏層を積層することにより、上記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、乳酸系樹脂成分(A)及び分子量2,000以下の可塑剤成分(B)を含有し、成分(A)100質量部に対し10〜20質量部の割合で成分(B)を含有する乳酸系樹脂組成物からなる中間層(β層)を備え、
該中間層(β層)の両側に、ポリエステル樹脂組成物からなる表裏層(α層)を備えたインフレーション成形生分解性軟質フィルムであって、
α層を形成するポリエステル樹脂組成物は、温度200℃において歪み0.1%、周波数100rad/sで測定されるせん断粘度が500〜1000Pa・sであり、かつ、温度150℃において一軸伸長速度1.0sec-1、一軸伸長歪み1.0〜3.0で測定される一軸伸長粘度の歪み硬化度λが0.2〜0.5であるポリエステル樹脂組成物からなることを特徴とするインフレーション成形生分解性軟質フィルムを提案する。
本発明によれば、インフレーション成形によって好適に製造することができる生分解性軟質フィルムであって、家庭用ラップフィルムとして好適に使用することができる生分解性軟質フィルムを得ることができる。特に、インフレーション成形時において、バブルの厚さを均一かつ安定して製造できるため、安定した品質のフィルムを工業的に製造することができる。
なお、本明細書において「主成分」と記載した場合には、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含する趣旨である。特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、一般的には、その成分が組成物中で50質量%、特に70質量%以上を占める。
本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特定する数値範囲から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の範囲に含まる意を包含するものである。
以下、本発明の実施形態について詳しく説明するが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係る生分解性軟質フィルムは、中間層(β層)と、該中間層(β層)の両側に形成される表裏層(α層)を備えた積層フィルムである。
[中間層(β層)]
中間層(β層)は、下記成分(A)と下記成分(B)とを主成分とする乳酸系樹脂組成物から形成される層である。
(A)ポリ乳酸系樹脂
(B)分子量が2,000以下となる可塑剤
(成分A)
成分(A)を構成するポリ乳酸系樹脂としては、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)、或いはこれらの混合体を用いることができる。
可塑剤のブリードアウトを抑える観点から言えば、ポリ乳酸系樹脂の結晶性は低い方が好ましいから、ポリ(L−乳酸)よりも結晶性の低いポリ乳酸、例えばポリ(D−乳酸)、ポリ(DL−乳酸)、或いはこれらの混合体を使用するのが好ましい。
但し、ここでいうポリ(L−乳酸)又はポリ(D−乳酸)は、理想的にはL−乳酸又はD−乳酸100%からなるポリマーであるが、重合に際し不可避的に異なる乳酸が含まれる可能性があるため、L−乳酸又はD−乳酸を98%以上含むものを包含する。
ポリ乳酸系樹脂において、D−乳酸(D体)とL−乳酸(L体)との構成比は、L体:D体=100:0〜84:16、もしくは、L体:D体=0:100〜16:84であることが好ましい。D体とL体との構成比が、この範囲内であれば、得られる成形品の耐熱性を高く維持することができる。中でも好ましくはL体:D体=98:2〜86:14、若しくはL体:D体=2:98〜14:86であり、特に95:5〜88:12、若しくは5:95〜12:88である。
なお、L体とD体との共重合比が異なるポリ乳酸系樹脂をブレンドしてもよい。この場合、複数のポリ乳酸系樹脂のL体とD体との共重合比の平均値が上記範囲内に入るようにすればよい。L体とD体のホモポリマーと、共重合体をブレンドすることにより、ブリードのし難さと耐熱性の発現とのバランスをとることができる。
また、本実施形態で用いられるポリ乳酸系樹脂は、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸のいずれかの乳酸と、α−ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸のいずれか或いはこれらのうちの2種類以上との共重合体であってもよい。
この際、α―ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシ−カルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
また、脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
また、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸及びドデカン二酸等が挙げられる。
ポリ乳酸系樹脂の重合法としては、縮合重合法、開環重合法、その他公知の重合方法を採用することができる。例えば縮合重合法では、L−乳酸またはD−乳酸、あるいはこれらの混合物等を直接脱水縮合重合して任意の組成を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤等を用いながら、適当な触媒を使用して任意の組成、結晶性を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。この際のラクチドとしては、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、或いはL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドなどを挙げることができ、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成、任意の結晶性を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。
本実施形態で用いるポリ乳酸系樹脂の質量平均分子量は、5万〜40万の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは10万〜25万の範囲である。ポリ乳酸系樹脂の質量平均分子量が5万以上であれば機械物性や耐熱性等の実用物性を確保することができ、40万以下であれば溶融粘度が高過ぎ成形加工性が劣るようなことを防ぐことができる。
なお、本実施形態で用いられるポリ乳酸系樹脂には、耐熱性向上等の必要性に応じて、少量の共重合成分を添加することもでき、テレフタル酸等の非脂肪族ジカルボン酸及び/又はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の非脂肪族ジオール等を用いることもできる。
(成分B)
可塑剤は、一般的に乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)を低下させ軟質化させる機能を備えたものであるが、成分(B)を構成する可塑剤としては、相溶性や生分解性の観点から、下記(1)〜(9)に示す化合物の中から選ばれる分子量2,000以下の1種或いは2種類以上の組合わせからなるものが好ましく、中でも特に下記(6)、(7)が好ましい。
(1)H53(OH)3−n(OOCCH3n (但し、0<n≦3)
これは、グリセリンのモノー、又はジー、又はトリアセテートであり、これらの混合物でも構わないが、nは3に近い方が好ましい。
(2)グリセリンアルキレート(アルキル基は炭素数2〜20、水酸基の残基があってもよい)。例えば、グリセリントリプロピオネート、グリセリントリブチレート等が挙げられる。
(3)エチレングリコールアルキレート(アルキル基炭素数1〜20、水酸基の残基があっても良い)。例えば、エチレングリコールアセテート等が挙げられる。
(4)エチレン繰り返し単位が5以下のポリエチレングリコールアルキレート(アルキル基は炭素数1〜12、水酸基の残基があってもよい)。例えば、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
(5)脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20)。例えばステアリン酸ブチル等が挙げられる。中でも数平均分子量100〜2000のものが好ましい。
(6)脂肪族ジカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20、カルボシシル基の残基であってもよい)。例えば、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート等が挙げられる。中でも数平均分子量100〜2000のものが好ましい。
(7)脂肪族トリカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル基の残基があってもよい)。例えば、クエン酸トリメチルエステル等が挙げられる。
(8)天然油脂及びそれらの誘導体。例えば、大豆油、エポキシ化大豆油、ひまし油、桐油、菜種油等が挙げられる。中でも数平均分子量100〜2000のものが好ましい。
成分(A)と成分(B)の配合割合は、成分(A)100質量部に対し10〜20質量部となるように成分(B)を配合することが重要であり、特に12〜18質量部となるように成分(B)を配合するのが好ましい。可塑剤の量が10〜20質量部の範囲内であれば、家庭用小巻ラップフィルムとして好適な特性を付与することができる。その一方、過少の場合は軟質化そのものが進まず、過多の場合にはブリード等の経時的な問題を生じることがある。
[表裏層(α層)]
表裏層(α層)を構成するポリエステル樹脂組成物は、温度200℃において、歪み0.1%、周波数100rad/sで測定されるせん断粘度が500〜1000Pa・sであり、かつ、温度150℃において一軸伸長速度1.0sec-1、一軸伸長歪み1.0〜3.0で測定される一軸伸長粘度の歪み硬化度λが0.2〜0.5であるレオロジー特性を備えていることが、インフレーション成形においてバブルを安定化させるためには重要である。
温度200℃におけるせん断粘度が500Pa・s以上であれば、成形加工性、特にインフレーション成形時のバブル安定性を確保することができ、1000Pa・s以下であれば、スウェルが大きくなったり、溶融押出時にトルク(押出負荷)が高くなるなどの成形加工性の低下を防ぐことができる。また、中間層(β層)を構成するポリ乳酸系樹脂組成物と表裏層(α層)を構成するポリエステル樹脂組成物との粘度差が大きくなり、積層する際に表裏層がうまく展開しないなどの不具合を防ぐことができる。
このような観点から、温度200℃において歪み0.1%、周波数100rad/sで測定されるせん断粘度は、550〜950Pa・sが好ましく、600〜900Pa・sがより一層好ましい。
また、温度150℃において一軸伸長速度1.0sec-1、一軸伸長歪み1.0〜3.0で測定される一軸伸長粘度の歪み硬化度λが0.2〜0.5であれば、インフレーション成形において良好な成形加工性を得ることができる。
このような観点から、温度150℃において一軸伸長速度1.0sec-1、一軸伸長歪み1.0〜3.0で測定される一軸伸長粘度の歪み硬化度λは、0.25〜0.5が好ましく、0.3〜0.5がより一層好ましい。
一軸伸長粘度の歪み硬化度λとは、図1に示すように、一軸伸長粘度計によって測定された一軸伸長粘度の過渡応答において、測定開始後、一軸伸長歪み(ε)の増加に伴い除々に一軸伸長粘度が上昇する領域(線形領域)から外れて一軸伸長歪み(ε)の立ち上がった領域(非線形領域)(図1の一軸伸長速度1.0sec-1のプロットでは、一軸伸長歪み(ε)が1.0以上の領域)で、一軸伸長粘度が上昇する程度を示す指標であり、次のようにして算出することができる。
なお、図1において一軸伸長歪み(ε)とは、一軸伸長速度及び時間を掛けたもので表される。
先ず、一軸伸長粘度計(例えば、TAインスツゥールメント株式会社製(旧レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)商品名:RME)を用いて、測定温度150℃において一軸伸長速度1.0sec-1及び0.1sec-1での一軸伸長粘度の過渡応答性を測定する。ここで、一軸伸長速度1.0sec-1及び0.1sec-1での一軸伸長粘度をそれぞれ、η1、η2とする。
なお、測定時間1.0〜3.0秒での一軸伸長速度1.0sec-1の一軸伸長歪み(ε)は1.0〜3.0であり、図1に示すように一軸伸長速度1.0sec-1での一軸伸長歪み(ε)1.0〜3.0(時間1.0〜3.0秒)の範囲における一軸伸長粘度η1は非線形領域となる。一方、測定時間1.0〜3.0秒での一軸伸長速度0.1sec-1の一軸伸長歪み(ε)は、0.1〜0.3であり、図1に示すように一軸伸長速度0.1sec-1での一軸伸長歪み(ε)0.1〜0.3(時間1.0〜3.0秒)の範囲における一軸伸長粘度η2は線形領域となる。
次に、該η1、η2から算出されるη1/η2の自然対数(ln(η1/η2))を、一軸伸長速度1.0sec-1での一軸伸長歪み(ε)が1.0〜3.0の範囲において求め、プロットすると図2のような関係が得られる。
次に、プロット(図2)について最小二乗法により直線の傾きを求め、一軸伸長粘度の歪み硬化度λとする。このような一軸伸長粘度の歪み硬化度、及びその測定方法については、例えば、小山清人、日本レオロジー学会誌、vol.19、174〜180頁(1991年)にも記載されている。
このようにして求めた一軸伸長歪みが1.0以上の時の粘度上昇の度合いが歪み硬化度λとなる。
この歪み硬化度λが大きいと、例えばインフレーション成形時に一軸伸長歪が1.0以上になると粘度が大きくなるためバブルが安定したり、フィルムの厚み精度が向上するといった効果がある。
表裏層(α層)を構成するポリエステル樹脂としては、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を縮合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル、脂肪族芳香族ポリエステル等を例示することができる。
上記の「脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を縮合して得られる脂肪族ポリエステル」としては、脂肪族ジオールであるエチレングリコール、1,4−ブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール等と、脂肪族ジカルボン酸であるコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸及びドデカンニ酸等の中から、それぞれ1種類以上選んで縮合重合して得られたものを挙げることができる。また、必要に応じてイソシアネート化合物等で鎖延長反応などにより所望の樹脂を得ることができる。
上記の「環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル」としては、環状モノマーであるε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等が代表的に挙げられ、これらから1種類以上選ばれて重合される。
上記の「合成系脂肪族ポリエステル」としては、環状酸無水物とオキシラン類、例えば無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等との共重合体等が挙げられる。
また、上記の「脂肪族芳香族ポリエステル」としては、脂肪族芳香族ポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分、および脂肪族ジオール成分からなる生分解性を有する芳香族脂肪族ポリエステルを挙げることができる。
この際、芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンニ酸等が挙げられ、脂肪族ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。なお、芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分、脂肪族ジオール成分は、それぞれ2種類以上を用いることもできる。最も好適に用いることができる芳香族ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、脂肪族ジカルボン酸成分はアジピン酸であり、脂肪族ジオール成分は1,4−ブタンジオールである。
芳香族脂肪族ポリエステルの代表的なものとして、ポリブチレンアジペートとテレフタレートの共重合体やテトラメチレンアジペートとテレフタレートの共重合体などが挙げられる。
表裏層(α層)を構成するポリエステル樹脂として挙げた中でも、「脂肪族芳香族ポリエステル」が好ましく、特に耐熱性や機械強度を高めるために、ジカルボン酸成分としての芳香族モノマー成分を50モル%以下、特に50〜30モル%の割合で脂肪族ジカルボン酸成分及び脂肪族ジオール成分と共重合して得られた脂肪族芳香族ポリエステルを用いるのが好ましい。このような脂肪族芳香族ポリエステルとして、イーストマンケミカル社製の商品名「イースターバイオ」や、BASF社製の商品名「エコフレックス」等は市販されている。
また、上記のポリエステル樹脂に「カルボジイミド化合物」を混合して表裏層(α層)を構成するのが好ましい。
「カルボジイミド化合物」を加えることで、ポリエステル樹脂の溶融流動特性及び歪み硬化特性を得ることができる。
この際用いる「カルボジイミド化合物」としては、下記一般式の基本構造を有するものを挙げることができる。
−(N=C=N−R−)n−
(上記式において、nは1以上の整数を示し、通常は1〜50の間で適宜決められる。Rはその他の有機系結合単位を示す。これらのカルボジイミド化合物は、Rの部分が、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれかでもよい。)
具体的には、例えば、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド、ポリ(4,4'−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等、および、これらの単量体があげられる。
該カルボジイミド化合物は、単独又は上記のうちの2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリエステル樹脂とカルボジイミド化合物との混合質量比は特に限定するものではないが、次のような割合で混合するのが好ましい。
すなわち、ポリエステル樹脂100質量部に対し、カルボジイミド化合物を0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜0.4質量部、さらに好ましくは0.2〜0.3質量部とする。ここで、カルボジイミド化合物の含有量が0.05質量部以上であれば成形加工性において改良効果を得ることができる。一方、0.4質量部以下であれば、樹脂全体が架橋して成形加工性の低下や耐熱性の低下を防ぐことができる。
本実施形態に係る生分解性軟質フィルムにおいて、表裏層(α層)と中間層(β層)の比率に関しては、α層とβ層の合計質量に対してβ層が32〜85%を占める構成とするのが好ましい。
β層の割合が32質量%以上であれば、カット性などの小巻ラップ用途としての適性を確保でき、85質量%以下あれば、フィルム成形時の成形加工性、特にインフレ適性を十分に確保することができる。
フィルムの厚さとしては、通常の小巻ラップフィルム用として用いられる範囲、即ち8〜30μm程度、代表的には10〜20μm程度の範囲にするのが好ましい。
(生分解性軟質フィルム)
本実施形態で得られる生分解性軟質フィルムは、次の特性を備えており、次の特性が要求される家庭用ラップフィルムとして好適に用いることができる。
なお、本実施形態で得られる生分解性軟質フィルムは、次の特性を備えるものであるが、同時に次の特性は本発明の生分解性軟質フィルムの用途を特定するものでもある。
A−1:JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定法により、周波数10HZ、歪み0.1%にて動的粘弾性により測定した20℃における貯蔵弾性率の値が800〜2000MPaの範囲にあること。
A−2:100℃における貯蔵弾性率の値が10〜100MPaの範囲にあること。
B−1:20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲にあること。
A−1:JIS K−7198 A法記載の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、歪み0.1%にて測定した20℃における貯蔵弾性率の値が800MPa以上であれば、生分解性軟質フィルムが適当な腰を備えるため、フィルムをカットする際に幅方向にうまく裂くことができるといった小巻ラップ適性を有することができる。また、変形に対する応力が小さすぎることもないため、容器等にオーバーラップする際にフィルムが局所的に伸びることがなく、うまく包装することができる。他方20℃における貯蔵弾性率の値が2000MPa以下であれば、フィルムが硬すぎることが無く適度に伸びるため、容器等の形状に沿ってうまく包装することができる。
A−2:JIS K−7198 A法記載の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、歪み0.1%にて測定した100℃における貯蔵弾性率の値が10MPa以上であれば,電子レンジ等でフィルムが加熱されるような場合に、フィルムが加熱によって柔軟化しすぎることがなく、容器や食品に密着しすぎることもないし、また、フィルム自体が溶けて穴があくこともない。他方、100℃における貯蔵弾性率の値が100MPa以下であれば、常温での貯蔵弾性率が高すぎることがないから、常温での包装適性が問題になることがない。
他方、損失正接に関しては、
B−1:JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、歪み0.1%にてにて測定した20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲にある必要がある。損失正接(tanδ)のピーク値は、力が加わった場合の変形の遅れを示す物性値であり、応力緩和挙動を示すパラメータの一つである。即ち、損失正接の値が小さいと応力緩和が速く、フィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こり、逆に損失正接の値が大きいと応力緩和が遅く、フィルムの変形に対する復元挙動が遅くなる。
本実施形態で得られる生分解性軟質フィルムの20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1以上であれば、フィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こることがないから、例えばフィルムを伸ばしてオーバーラップする場合に伸ばす力を取り除いた瞬間に元に戻ってしまうことが無く、皺無く綺麗に包装することができる。他方0.8以下であれば、復元挙動が遅すぎることがないため、普通に使っている分には塑性的な変形を示すことがない。
(製造方法)
次に、本発明における生分解性軟質フィルムの製造方法について説明するが、下記製造法に限定されるものではない。
本発明の生分解性軟質フィルムは、通常の溶融押出しによるフィルム成形方法によって製造することができる。その際、乳酸系樹脂と、可塑剤、さらに必要に応じて他の添加剤などを混合して混合組成物を得る方法としては、例えば、予め同方向2軸押出機、ニーダー、ヘイシェルミキサー等を用いてプレコンパウンドするようにしても構わないし、又、各原料をドライブレンドして直接フィルム押出機に投入するようにしても構わない。いずれの混合方法においても、原料の分解による分子量の低下を考慮する必要があるが、均一に混合させるためにはプレコンパウンドすることが好ましい。具体的には、例えば、乳酸系樹脂と、必要に応じて他の添加剤とをそれぞれ十分に乾燥して水分を除去した後、二軸押出機を用いて溶融混合し、ベント口から可塑剤を所定量添加しながら、ストランド形状に押出してペレットを作製する。
この際、乳酸系樹脂はポリ(L−乳酸)構造とポリ(D−乳酸)構造、ポリ(DL−乳酸)の組成比によって融点が変化すること等を考慮して、溶融押出温度を適宜選択することが好ましい。実際には160〜230℃の融点温度範囲のものが通常選択される。
次に、上記方法にて作製したペレットを十分に乾燥して水分を除去した後、以下の方法でフィルム成形を行う。
複数台の押出機から樹脂組成物を溶融押出し、インフレーション成形することによりフィルムを得ることができる。実用的には、環状口金から材料樹脂を溶融押出してインフレーションするのが好ましく、その際のブローアップ比(バブル径/ダイ径)は4以上が好ましく、特に5〜7の範囲が好適である。
延伸を施すと、例えばフィルムをカッター刃に押し当て、カッター刃でフィルムにミシン目状の孔を開けてフィルムを引きちぎることにより、幅方向に引き裂きを伝播させてカットし、カットしたフィルムを容器に盛った食品をオーバーラップする際に、更なるカット性の向上が得られる場合が多いので好ましい。結晶化度が高くなると可塑剤はブリードアウトし易くなるが、延伸により結晶化度が高くなっても、他の要因で結晶化度が高くなった場合に比べて可塑剤のブリードアウトが生じ難い特徴がある。
延伸条件はシート状物の温度が20〜100℃であり、延伸倍率が1.0〜5.0倍の範囲内であることが好ましい。かかる範囲内であればシート状物の破断や白化が生じたり、シート状物の弾性率が低くなりすぎ、自重によりシート状物が垂れ下がるドローダウンが生じる等のトラブルが発生することが無い。
また、必要に応じて、本発明の趣旨を損なわない範囲で、シート状物を延伸した後、幅固定で熱処理を行っても良い。この際の熱処理条件は、温度が50℃〜120℃であることが好ましく、特に好ましくは60℃〜110℃である。熱処理温度を50℃以上とすれば熱処理効果を得られ易く、120℃以下であるとドローダウンが起こり難い。また、熱処理時間が5秒以上であれば熱処理効果が得られ易く、5分以下であれば熱処理設備が長大にならないから経済性を維持することができる。
フィルム成形後に熱を加える処理は、用いる乳酸系樹脂の種類に応じて適切な条件を選択して行い、この処理によってフィルムの結晶化度を高めてΔHm−ΔHcを20J/g以上にするのが好ましい。
ポリ(DL−乳酸)などの結晶化度の低い乳酸系樹脂を原料に用いた場合には、フィルム成形後、所定の温度で6時間以上保管し養生するのが好ましい。この際、養生温度は、フィルムをJIS K−7121に従って示差熱走査型熱量計を用いて昇温速度10℃/分で昇温したときのガラス転移温度と、昇温中の結晶化に伴い発生する結晶化熱量のピーク温度との間とする必要がある。好ましくは、当該ガラス転移温度よりも30℃以上高い温度で12〜24時間、さらに好ましくは当該ガラス転移温度よりも35〜40℃高い温度で保管し養生する。
すなわち、結晶化度の低い乳酸系樹脂の場合は、穏やかな条件で時間をかけて結晶化度を高める必要がある。
その一方、ポリ(DL−乳酸)とポリ(L−乳酸)或いはポリ(D−乳酸)とのポリマーブレンドの場合には、上記の如き養生によって結晶化度を高めることも可能であるが、ポリ(DL−乳酸)に比べて結晶化度が高いため、高温・短時間で加熱処理しても結晶化度を高めることができる。この際の加熱処理条件としては、例えば60〜120℃で1〜200秒、70〜110℃で2〜30秒、80〜100℃で3〜20秒の加熱処理も可能である。この際、加熱方法としては、直接加熱以外に、高周波や超音波などのエネルギー波での加熱方法を採用することもできる。
なお、ΔHm−ΔHcを増大させるためには、延伸倍率を上げて配向結晶化を促進することも可能であるが、電子レンジ向けのラップフィルムの使用用途を考えると養生或いは加熱処理によって結晶化度を高めるのが好ましい。
引張応力比(σMD/TD)を上記範囲に調整するためには、インフレーション法においては、引取り速度とブロー比が重要であり、ブロー比を1.2〜5.0の範囲にすることが好ましい。また、キャスト法においては、押出引落し率を1.0〜10.0にすることが好ましい。また、延伸法においては、縦延伸倍率を1.5〜5.0に、横延伸倍率を2.0〜6.0にすることが好ましい。
本発明の生分解性軟質フィルムを構成する樹脂組成物には、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、成形加工性や成形品の物性を改良・調整する目的のため、防曇剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、着色剤、顔料、無機フィラー等の添加剤を適宜添加してもかまわない。
以下に本発明の実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
フィルムのMD方向とは引取り方向(流れ方向)、TD方向とは当該MD方向の直角方向(幅方向)を示す。
なお、本明細書中に表示されるポリ乳酸系樹脂組成物および成形品の種々の測定値および評価は次のようにして行った。
(1)一軸伸長粘度の歪み硬化度(λ)
表裏層(α層)を構成する脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなるペレットを100tプレス機を用いて、設定温度150℃にて10分間プレス後、自然放冷で冷却することにより1.5mm厚みの板を作製した。次いで、この板より幅7mm、長さ55mm、厚み1.5mmの試験片を切り出した。
この試験片を一軸伸長粘度計(TAインスツゥールメント株式会社製(旧レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)商品名:RME)を用いて、測定温度150℃、一軸伸長速度1.0sec-1、0.1sec-1にて一軸伸長粘度の過渡応答性をそれぞれ測定した。測定開始から1.0秒後から3.0秒後までの一軸伸長速度1.0sec-1での一軸伸長粘度η1と、一軸伸長速度0.1sec-1での一軸伸長粘度η2とを求めて比η1/η2を算出し、当該比η1/η2の自然対数ln(η1/η2)と一軸伸長歪み(ε)との関係における直線勾配を最小二乗法にて求め、この値を一軸伸長粘度の歪み硬化度λとした。
(2)せん断粘度
(1)で作製した1.5mm厚みの板よりφ40mmの円筒状の試験片を切り出した。この試験片をせん断粘度計(TAインスツゥールメント株式会社製(旧レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)商品名:ARES)を用いて、測定温度200℃、歪み0.1%、周波数100rad/sにおけるせん断粘度を測定した。
(3)動的粘弾性測定
JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、岩本製作所株式会社製粘弾性スペクトロレオメーター「VES−F3」を用い、振動周波数10Hz、歪み0.1%にてフィルムのMDにて測定した。
(4)カット性
フィルムを紙筒に巻いて、市販のノコギリ刃付きのカートンケースに入れ、フィルムをカートンケースから引き出してノコギリ刃カット性を、以下の基準で評価した。
○:カット性が良いもの。
△:カットできるがカット性がやや劣るもの。
×:フィルムが伸びてカット性が良くないもの。
(5)包装適性
陶磁器製の皿にフィルムを包装した場合の包装適性を、以下の基準で評価した。
○:適度に包装できるレベル。
△:少し皺が入る。
×:フィルムが容器に沿わず広がってしまい実用上問題となるレベル。
(6)耐熱性
陶磁器製の皿にエビの天ぷら(長さ160mm程度)2尾を入れ、フィルム包装し、500Wの電子レンジに入れて3分間加熱し、熱による破れ具合を観察し、以下の基準で評価した。
○:穴が空かなかった。
△:少し穴が空いたり、変形した。
×:大きな穴が空いたり、大きな変形をし、使用上問題となるレベルであった。
(実施例1)
中間層(β層)を形成するβ層用ペレットを作製するため、成分(A)として、十分に乾燥されたポリ乳酸A−1:NatureWorks 4032D(カーギル・ダウ社製、L−乳酸:D−乳酸=98.6/1.4、分子量20万)30質量%と、A−2:NatureWorks 4060(カーギル・ダウ社製、L−乳酸:D―乳酸=85/15、分子量19万)70質量%とをドライブレンドしたものを用い、このブレンド体(成分(A))を、φ40mm二軸押出機(L/D=40)を用いて200℃にて溶融する一方、成分(B)としてのB−1:アジピン酸エステル(旭電化工業製 PX−884、分子量650)を、成分(A)100質量部に対して17質量部の割合で押出機のベント口より注入して溶融混練してβ層用ペレットを得た。
また、表裏層(α層)を形成するα層用ペレットを作製するため、α−1:ポリブチレンテレフタレートサクシネート(BASFジャパン製 エコフレックスF)100質量部に対して、α−2:カルボジイミド化合物(日清紡製カルボジライトHMV−8CA)が1質量部となるようにドライブレンドし、このブレンド体を、φ40mm二軸押出機(L/D=40)を用いて200℃にて溶融混練してα層用ペレットを得た。
α層用ペレットとβ層用ペレットを別々のφ60mm単軸押出機(L/D=35)に投入し、200℃にて溶融混練し、各溶融物を丸ダイ口金内で合流させ、表層/中間層/裏層の2種3層構造からなる溶融体を、積層比(質量割合)が1/6/1となるように押出し、インフレーション成形により10μmのフィルムを得た。
(実施例2)
表層/中間層/裏層の積層比(質量割合)を1/10/1となるようにした以外は実施例1と同様の方法にて10μmのフィルムを得た。
(参考例1)
表裏層(α層)を形成するα層用ペレットとして、α−3:ポリブチレンサクシネート(昭和高分子製 ビオノーレ1903)からなるペレットを使用した以外は実施例1と同様にフィルムを得た。
(比較例1)
成分(A)として、十分に乾燥されたポリ乳酸NatureWorks 4032D(カーギル・ダウ社製、L−乳酸:D−乳酸=98.6/1.4)30質量%と、NatureWorks 4060(カーギル・ダウ社製、L−乳酸:D―乳酸=85/15)70質量%とをドライブレンドしたものを用い、このブレンド体(成分(A))をφ40mm二軸押出機(L/D=40)を用いて200℃にて溶融する一方、成分(B)としてのアジピン酸エステル(旭電化工業製 PX−884、分子量650)を、成分(A)100質量部に対して17質量部の割合で押出機のベント口より注入しながら溶融混練してペレットを得た。
このペレットを200℃にて溶融混練し、実施例1と同様の条件でインフレーション成形を試みたが、丸ダイ出口付近で樹脂が溜まり、インフレーション成形することが出来なかった。
(比較例2)
ポリブチレンテレフタレートサクシネート(BASFジャパン製 エコフレックスF)100質量部に対して、カルボジイミド化合物(日清紡製カルボジライトHMV−8CA)が1質量部となるようにドライブレンドし、このブレンド体をφ40mm二軸押出機(L/D=40)を用いて200℃にて溶融混練してペレットを作製した。
このペレットを200℃にて溶融混練し、実施例1と同様の条件でインフレーション成形して10μmのフィルムを得た。
(比較例3)
ポリブチレンテレフタレートサクシネート(BASFジャパン製 エコフレックスF)のみからα層用ペレットを作製した以外は、実施例1と同様の方法でインフレーション成形を試みたが、バブルが安定せずフィルムを連続的に採取することが出来なかった。
実施例1の表裏層(α層)を形成するポリエステル樹脂の一軸伸長粘度の過渡応答性を測定したグラフである。 実施例1の表裏層(α層)を形成するポリエステル樹脂の一軸伸長粘度の歪み硬化度λを最小二乗法により求めたグラフである。

Claims (5)

  1. 乳酸系樹脂成分(A)及び分子量2,000以下の可塑剤成分(B)を含有し、成分(A)100質量部に対し10〜20質量部の割合で成分(B)を含有する乳酸系樹脂組成物からなる中間層(β層)を備え、
    該中間層(β層)の両側に、カルボジイミド化合物を混合してなるポリエステル樹脂組成物からなる表裏層(α層)を備えたインフレーション成形生分解性軟質フィルムであって、
    α層を形成するポリエステル樹脂組成物は、温度200℃において歪み0.1%、周波数100rad/sで測定されるせん断粘度が500〜1000Pa・sであり、かつ、温度150℃において一軸伸長速度1.0sec-1、一軸伸長歪み1.0〜3.0で測定される一軸伸長粘度の歪み硬化度λが0.2〜0.5であるポリエステル樹脂組成物からなることを特徴とするインフレーション成形生分解性軟質フィルム。
  2. α層を形成するポリエステル樹脂組成物は、脂肪族芳香族ポリエステルとカルボジイミド化合物との混合物からなるものである請求項1記載のインフレーション成形生分解性軟質フィルム。
  3. α層のポリエステル樹脂組成物を構成する脂肪族芳香族ポリエステルは、ジカルボン酸成分としての芳香族モノマー成分を、50モル%以下の割合で脂肪族ジカルボン酸成分及び脂肪族ジオール成分と共重合された脂肪族芳香族ポリエステルであることを特徴とする請求項2に記載のインフレーション成形生分解性軟質フィルム。
  4. α層とβ層の合計質量に対して、β層は32〜85%を占めることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインフレーション成形生分解性軟質フィルム。
  5. 周波数10Hz、歪み0.1%にて動的粘弾性により測定した20℃における貯蔵弾性率の値が800〜2000MPaであり、100℃における貯蔵弾性率の値が10〜100MPaの範囲であり、20℃における損失正接の値が0.1〜0.8の範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載のインフレーション成形生分解性軟質フィルム。
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