JP4970878B2 - 多層乳酸系軟質フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、天然植物由来の樹脂である乳酸系重合体を主原料の一つとする乳酸系軟質フィルムであって、詳しくは食品包装用フィルム等として好適に用いることができる乳酸系軟質フィルムに関する。
近年、環境問題の高まりから枯渇性資源の有効活用が重要視されるようになり、天然植物由来の樹脂が注目されている。中でも、乳酸系重合体は、とうもろこしやジャガイモ等のでんぷんから得られる天然植物由来の樹脂であり、量産が可能であるばかりか、透明性及び生分解性に優れているため、軟質フィルムの原料として注目されている。しかし、乳酸系重合体は、剛性が高いため、軟質化するための工夫が必要であった。
例えば、特許文献1には、乳酸系樹脂(a)と、乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸の共重合体(b)と、分子量2,000以下の可塑剤(D)とを含み、成分(a)及び成分(b)の合計中に占める成分(a)の割合が50〜80質量%であり、成分(b)の割合が50〜20質量%であり、かつ、成分(a)及び成分(b)の合計100質量部に対し成分(c)が5〜15質量部配合されてなる乳酸系樹脂組成物であって、当該乳酸系樹脂組成物は、示差走査熱量測定において加熱速度10℃/分で測定されるガラス転移温度が単一となる乳酸系樹脂組成物を用いてなる乳酸系軟質フィルムが開示されている。
特開2006−16605号公報
食品包装用フィルムとして好適に用いることができるためには、室温におけるフィルムの変形に対する回復性が重要であり、さらには低温保存時における容器への密着性、具体的には、フィルムを若干伸ばしながら低温状態にある容器に被せてフィルム端部を容器に付着させた際に、フィルムの復元力によってフィルムが容器から離れない密着性を備えていることが望ましいが、このような低温状態にある容器への密着性を高めることは容易なことではない。
そこで本発明は、乳酸系重合体を主原料とする乳酸系軟質フィルムにおいて、室温におけるフィルムの変形に対する回復性に優れ、より好ましくは低温状態にある容器への密着性も高い乳酸系軟質フィルムを提供せんとするものである。
かかる課題に鑑み、本発明は、少なくとも3層を備えた多層乳酸系軟質フィルムであって、中間層は、乳酸系共重合体(B)を主成分として含有し、両表面層は、中間層の主成分とは異なる熱可塑性樹脂(A)を主成分として含有し、JIS K 7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲にあることを特徴とする多層乳酸系軟質フィルムを提案する。
なお、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものを称し(日本工業規格JIS K 6900)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、通常はその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品を称する。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含し、特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)が50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上(100%含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」を意図し、「Xより大きくYよりも小さいことが好ましい」旨の意図も包含する。
本発明の多層乳酸系軟質フィルムは、室温におけるフィルムの変形に対する回復性に優れ、さらには低温状態にある容器への密着性も高い。しかも、表面層に防曇剤などを含ませることができるため、フィルムの防曇性などを高めることもできる。
以下、本発明の実施形態の一例としての多層乳酸系軟質フィルム(以下「本乳酸系軟質フィルム」という)について説明する。但し、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本乳酸系軟質フィルムは、少なくとも3層を備えた多層乳酸系軟質フィルムであって、中間層は、乳酸系共重合体(B)を主成分として含有し、両表面層は、中間層の主成分とは異なる熱可塑性樹脂(A)を主成分として含有する構成を備えた多層乳酸系軟質フィルムである。
<中間層>
本乳酸系軟質フィルムの中間層は、乳酸系共重合体(B)を主成分として含有することが重要であり、好ましくは、該乳酸系共重合体(B)のほかに、ガラス転移温度(「Tg」とも言う。)が0℃以下の脂肪族ポリエステル(C)を主成分として含有する、すなわち乳酸系共重合体(B)と脂肪族ポリエステル(C)とのポリマーブレンドを主成分として含有するのが望ましい。
(乳酸系共重合体(B))
乳酸系共重合体(B)は、乳酸若しくは乳酸系重合体成分と、ジオール成分及びジカルボン酸成分(これらをまとめて「ジオール・ジカルボン酸」ともいう)との共重合体、言い換えれば、乳酸若しくは乳酸系重合体に由来する構造単位と、ジオール及びジカルボン酸に由来する構造単位とを有する共重合体であり、ガラス転移温度(Tg)が0℃より大きいことが好ましい。
乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、或いはこれらの混合体を用いることができる。
上記混合体におけるL乳酸(L体)とD乳酸(D体)との構成比(モル比)は、L体:D体=100:0〜90:10、もしくは、L体:D体=0:100〜10:90であることが好ましく、中でも好ましくは、L体:D体=99.5:0.5〜94:6、もしくは、L体:D体=0.5:99.5〜6:94である。
乳酸系重合体としては、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)、或いはこれらの混合体を用いることができる。
ここでいうポリ(L−乳酸)又はポリ(D−乳酸)は、理想的にはL−乳酸又はD−乳酸100%からなるポリマーであるが、重合に際し不可避的に異なる乳酸が含まれる可能性があるため、L−乳酸又はD−乳酸を98%以上含むものである。
上記混合体としての乳酸系重合体は、D乳酸(D体)とL乳酸(L体)との構成比(モル比)が、L体:D体=100:0〜90:10、もしくは、L体:D体=0:100〜10:90であることが好ましい。D体とL体との構成比が、この範囲内であれば、得られるフィルムの耐熱性が高く、用途が制限されることがない。中でも好ましくは、L体:D体=99.5:0.5〜94:6、もしくは、L体:D体=0.5:99.5〜6:94である。
なお、L体とD体との共重合比が異なる乳酸系重合体をブレンドしてもよい。この場合、複数の乳酸系重合体のL体とD体との共重合比の平均値が上記範囲内に入るようにすればよい。例えばポリ(L−乳酸)又はポリ(D−乳酸)とポリ(DL−乳酸)とをブレンドすることにより、ブリードのし難さと耐熱性の発現とのバランスをとることができる。
乳酸系重合体の重合法としては、縮合重合法、開環重合法、その他公知の重合方法を採用することができる。例えば縮合重合法では、L−乳酸またはD−乳酸、あるいはこれらの混合物等を直接脱水縮合重合して任意の組成を有する乳酸系重合体を得ることができる。
また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤等を用いながら、適当な触媒を使用して任意の組成、結晶性を有する乳酸系重合体を得ることができる。ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、或いはL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成、任意の結晶性を有する乳酸系重合体を得ることができる。
乳酸系重合体は、重量平均分子量が5万〜40万の範囲のものであることが好ましく、さらに好ましくは10万〜25万の範囲のものである。乳酸系重合体の重量平均分子量が5万以上であれば機械物性や耐熱性等の実用物性を確保することができ、40万以下であれば溶融粘度が高過ぎて成形加工性が劣るようになることがない。
ジオール成分は、特に限定するものではないが、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ペプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の直鎖状ジオール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール等の分岐鎖状ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオールを挙げることができ、中でもポリプロピレングリコールが好ましい。
ジカルボン酸成分は、特に限定するものではないが、例えばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の直鎖状ジカルボン酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、エチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、2−エチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、3−エチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、2−エチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−エチルアジピン酸、メチルグルタル酸等の分岐状ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、ビスフェノールA、ビフェノール等の芳香族ジカルボン酸を挙げることができ、中でもコハク酸が好ましい。
よって、好ましい乳酸系共重合体(B)としては、乳酸若しくは乳酸系重合体と、(ポリ)プロピレングリコールと、コハク酸との共重合体が最も好ましい一例である。
また、上記に挙げた種類の乳酸系共重合体(B)の中でも、乳酸系重合体を軟質化する効果の点から、歪み0.1%、周波数10Hzにて動的粘弾性測定(JIS K 7198 A法の動的粘弾性測定)により測定した損失正接(tanδ)の極大値が1つ存在する共重合体であるのが好ましい(詳しくは特開2006−16605号公報の[0028]−[0032]参照)。
ところで、乳酸若しくは乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸との共重合体の構造は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を挙げることができる。一般的に、共重合体の構造がブロック共重合体の場合には、前記条件にて測定した損失正接の極大値が2つ存在するタイプとなり、また、共重合体の構造がランダム共重合体の場合には、同条件にて測定した損失正接の極大値が1つ存在するタイプとなるから、乳酸系共重合体(B)の構造としては、ランダム共重合体であるのが好ましい。
乳酸系共重合体(B)において、乳酸若しくは乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸との含有比率の目安としては、乳酸若しくは乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸との質量割合が10:90〜40:60、特に10:90〜30:70であるのが好ましい。
なお、乳酸系共重合体(B)は、イソシアネート化合物やカルボン酸無水物を用いて所定の分子量に調整することが可能である。ただし、加工性、耐久性の面から、乳酸系共重合体(B)の重量平均分子量は5万〜30万の範囲が好ましく、10万〜25万の範囲のものがより好ましい。
共重合体の製造方法に関しては特に限定するものではないが、ジオールとジカルボン酸を脱水縮合した構造を持つポリエステル又はポリエーテルポリオールを、ラクチドと開環重合或いはエステル交換反応させて得る方法や、ジオールとジカルボン酸を脱水縮合した構造を持つポリエステル又はポリエーテルポリオールを、乳酸系重合体と脱水・脱グリコール縮合或いはエステル交換反応する方法などを挙げることができる。
乳酸系共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、ガラス転移温度が0℃より大きいこと、特に5〜20℃であることが好ましい。
乳酸系共重合体(B)のメルトフローインデックス(MFR)は190℃、2.16kgで測定した場合、下限が通常0.1g/10分以上であり、上限が通常100g/10分以下であり、より好ましくは50g/10分以下である。
乳酸系共重合体(B)の好ましい市販品として、大日本インキ化学工業(株)製:商品名「プラメートPD−350」が挙げられる。
(脂肪族ポリエステル(C))
本乳酸系軟質フィルムの中間層は、上述したように、上記乳酸系共重合体(B)のほかに、Tg0℃以下の脂肪族ポリエステル(C)を主成分として形成する、言い換えれば、乳酸系共重合体(B)と脂肪族ポリエステル(C)とのポリマーブレンドを主成分として形成するのが好ましい。
一般的にフィルムの緩和特性は構成樹脂のTg付近に発現するが、本乳酸系軟質フィルムの場合には中間層の主成分をなす樹脂のTg付近に発現するため、Tgが0℃より大きい乳酸系共重合体(B)と、Tgが0℃以下である脂肪族ポリエステル(C)とをポリマーブレンドしてフィルムの中間層を形成することにより、室温付近での緩和特性に加えて低温(0℃以下)での緩和特性をフィルムに付与することができる。また、Tgが0℃以下である脂肪族ポリエステル(C)を加えることにより、耐衝撃性を向上させることもできる。
ここで、Tgが0℃以下の脂肪族ポリエステル(C)としては、脂肪族オキシカルボン酸、脂肪族または脂環式ジオール、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体を共重縮合させた脂肪族ポリエステル、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分(50〜100質量%)として重縮合した脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル、菌体内で生合成される脂肪族ポリエステルから選ばれる少なくとも1種或いは2種以上の組み合わせからなる混合物であって、Tgが0℃以下、より好ましくはTgが−20℃以下のものを挙げることができる。
なお、本発明におけるガラス転移温度(Tg)は、以下のようにして求めた値をいう。すなわち、示差走査熱量計(DSC)による測定により、10mg程度に削り出したサンプルをJIS K 7121に準じて、加熱速度を10℃/分で−100℃から200℃まで昇温し、250℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−100℃まで降温し、−100℃で1分間保持した後、加熱速度10℃/分で再昇温したときのサーモグラムから求めたガラス転移温度(Tg)である。
共重縮合脂肪族ポリエステルにおける脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシーn―酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシー3,3ージメチル酪酸、2−ヒドロキシー3ーメチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、あるいはこれらの混合物があげられる。これらの中で好ましいのは、乳酸またはグリコール酸であり、特に好ましいのは、使用時の重合速度の増大が特に顕著で、かつ入手の容易な乳酸またはグリコール酸である。形態としては、30〜95%の水溶液のものが容易に入手できるので好ましい。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、二種以上の混合物としても使用することができる。
共重縮合脂肪族ポリエステルにおける脂肪族または脂環式ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロピオングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ルが好適に挙げられる。得られる共重合体物性の面から、特に1,4−ブタンジオールであることが好ましい。
共重縮合脂肪族ポリエステルにおける脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、およびそれらの低級アルコールエステル、無水コハク酸、無水アジピン酸、などが挙げられる。得られる共重合体の物性の面から、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸またはこれらの無水物、及びそれらの低級アルコールエスエルが好ましく、特にはコハク酸、無水コハク酸、またはこれらの混合物が好ましい。これらは単独でも二種以上混合して使用することも出来る。
環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステルとしては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等の環状モノマーの中から1種以上選んだ開環重合体が例として挙げられる。
合成系脂肪族ポリエステルとしては、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の環状酸無水物とオキシラン類の共重合体が例として挙げられる。
ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の脂肪族ポリエステル(C)として特に好ましく用いられるものは、上記の内で比較的透明性の良いとされる共重縮合した脂肪族ポリエステルであり、その具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキセンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート乳酸、ポリブチレンサクシネートアジペート乳酸、ポリエチレンサクシネートなどが挙げられる。中でも、容易に高分子量体が得られるという意味でポリブチレンサクシネート乳酸、ポリブチレンサクシネートアジペート乳酸等のように脂肪族オキシカルボン酸、脂肪族または脂環式ジオール、および脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体を共重縮合させた脂肪族ポリエステルを選択することが好ましい。乳酸のようなオキシカルボン酸を共重合させることで、数平均分子量1万以上の脂肪族ポリエステルが鎖延長剤を使用することなしに極めて容易に得られるからである。また、オキシカルボン酸成分の導入により、得られるポリエステルの結晶性が低下し、可撓性を付与させることができる。
脂肪族ポリエステル(C)の重合方法としては、直接法、間接法などの公知の方法を採用できる。直接法では、例えば、脂肪族ジカルボン酸成分として上記ジカルボン酸化合物その酸無水物又は誘導体を選択し、脂肪族ジオール成分として上記ジオール化合物又はその誘導体を選択して重縮合を行う方法で、重縮合に際して発生する水分を除去しながら高分子量物を得ることができる。また、乳酸のようなオキシカルボン酸を第三成分として共重合させることで、高分子量体が得やすくなる。間接法では、直接法により重縮合されたオリゴマーに少量の鎖延長剤、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物を添加して高分子量化して得ることができる。
脂肪族ポリエステル(C)の市販品として、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として重縮合した脂肪族ポリエステルとして、昭和高分子社製の「ビオノーレ」シリーズ、また、脂肪族オキシカルボン酸、脂肪族または脂環式ジオール、および脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体を共重縮合させた脂肪族ポリエステルとして、三菱化学社製「GSPla」シリーズが入手可能である。
脂肪族ポリエステル(C)の重量平均分子量は、2万〜50万の範囲が好ましく、さらに好ましくは重量平均分子量15万〜25万の範囲である。分子量が2万より小さいと機械的強度等の実用物性が十分に得られず、分子量が50万を越えると成形加工性に劣る問題がある。
Tgが0℃以下の脂肪族ポリエステル(C)の配合割合は、乳酸系共重合体(B)と脂肪族ポリエステル(C)との合計に対して、脂肪族ポリエステル(C)が40〜80質量%を占めるように配合するのが好ましく、特に60〜70質量%占めるように配合するのが特に好ましい。言い換えれば、乳酸系共重合体(B)と脂肪族ポリエステル(C)との合計に対して、乳酸系共重合体(B)が20〜60質量%を占めるように配合するのが好ましく、特に30〜40質量%占めるように配合するのが特に好ましい。乳酸系共重合体(B)の配合割合が20質量%を下回ると、そのブレンド物のガラス転移温度を室温付近に発現させることはできても、緩和特性(tanδピーク)を上げることが難しくなる。逆に、60質量%を上回ると、乳酸系共重合体(B)の粘度が低いために加工性が制御しづらくなる等の問題を生じる。また、乳酸系共重合体(B)の割合が増えると、乳酸系共重合体(B)の分子量が低いために組成物としての分子量が著しく低下し、成形品としての機能が持てなくなる可能性が生じることになる。
(他の成分)
本乳酸系軟質フィルムの中間層は、熱可塑性樹脂を含有してもよい。
この熱可塑性樹脂は、表面層を構成する熱可塑性樹脂(A)と同じ樹脂であっても、異なる樹脂であってもよいが、好ましくは同じ樹脂であるのがよい。表面層を構成する樹脂と同じ樹脂であれば、中間層と表面層との密着性を高めることができ、フィルム全体での力学特性を高めることができるほか、例えば製膜したフィルムの両端をカットしてトリミングした際に発生するトリミングロスを、中間層の構成原料として添加するようにして調製できるから、材料の無駄を無くし、材料コストの軽減を図ることができる。
この際、最も好適な熱可塑性樹脂としては、エチレン系重合体、その中でも、酢酸ビニル含量が10〜60質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を挙げることができる。このエチレン−酢酸ビニル共重合体は、表面層の主成分である熱可塑性樹脂(A)としても好適に使用することができ、かつ、トリミングロス等から発生するリサイクル樹脂を添加した際の透明性、力学特性や材料コスト面も含めて実用的に大きな問題がなく、工業材料としても安定的に入手可能である。
また、本乳酸系軟質フィルムの中間層には、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、アンチブロッキング剤、光安定剤、核剤、加水分解防止剤、消臭剤などの添加剤を処方することができる。
例えば、本乳酸系軟質フィルムの実用特性を保持するために、カルボジイミド化合物を好ましくは0.1〜3質量部、より好ましくは0.5〜1質量部配合することで重量平均分子量を増大させることができる。かかる範囲を下回る場合、重量平均分子量を増大させる効果が薄い場合が多く、またかかる範囲を上回る場合には、フィルム成形時にフィッシュアイやゲルを生じる場合があり好ましくない。
<表面層>
本乳酸系軟質フィルムの両表面層(すなわち表裏層)は、上記中間層の主成分とは異なる熱可塑性樹脂(A)を主成分として含有することが重要である。
本乳酸系軟質フィルムにおいて表面層は、ヒートシールや密着等による包装体としての気密性を確保するとともに、引裂き強度や突き刺し強度、衝撃強度などの機械的強度を高め、また、インフレーション成形やチューブラー延伸法などによるフィルム成形の際には、成形時の安定性を高めるほか、フィルム巻き取りの際のブロッキング防止層としての役割を果たすこともできる。さらに、防曇剤、帯電防止剤、滑剤等の各種機能を備えた添加剤を添加することにより、フィルムに各種機能を付与することができる上、中間層に可塑剤などの添加剤が添加された場合にはこれらのブリードアウトを防ぐ作用も発揮する。
これらの機能を考慮すると、熱可塑性樹脂(A)の中でも、特にエチレン系重合体が好ましい。
エチレン系重合体としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンの中から選ばれる1種のエチレン系重合体又はこれら2種類以上の組合わせからなる混合樹脂、或いは、エチレンを主成分とする共重合体、すなわち、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン、酢酸ビニル、プロピレン酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル、共役ジエンや非共役ジエンなどの不飽和化合物の中から選ばれる1種または2種以上のコモノマーとの共重合体或いは多元共重合体、または、前記エチレン系重合体、前記共重合体、前記多元共重合体のうちの2種類以上の組合わせからなる混合樹脂を挙げることができる。これらエチレン系重合体のエチレン単位の含有量は通常50質量%を超えるものである。
中でも、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる1種のエチレン系重合体又はこれら2種類以上の組合わせからなる混合樹脂が特に好ましい。
なお、上記のエチレン−アクリル酸エステル共重合体のアクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどが挙げられ、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体のメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
上記エチレン系重合体の中でも、光学特性および密着性などの観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、その中でも、酢酸ビニル含量が5〜25質量%で、メルトフローレート(以下、「MFR」と略することがある。MFRの測定条件は、JIS K 7210に基づき190℃、荷重21.18Nであり、他のMFRも同様である。)が0.3〜10g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
このエチレン−酢酸ビニル共重合体において、酢酸ビニル含量が5質量%以上であれば、透明性を十分に確保することができる。その一方、25質量%以下であれば、押出成形性を確保でき、酢酸臭が強くなることもなく、べたつき現象を生じることもない。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRが0.3g/10分以上であれば、押出加工性は安定し、10g/10分以下であれば、成形時に安定した製膜が可能となると共に、厚み斑や力学強度の低下やバラツキ等が少なくなり好ましい。
他方、電子レンジ加熱に耐え得る電子レンジ耐熱性を重視する場合は、密度が0.90〜0.95g/cm3で、且つMFRが0.2〜20g/10分の線状低密度ポリエチレンが好ましい。
エチレン系重合体の密度がこのような範囲内であれば、適度な結晶性を有するためフィルムが硬くならず、柔軟性や弾性回復性が良好となり、しかもエチレン系重合体の融点がラップの実使用温度範囲、具体的には電子レンジ等で加熱した場合の雰囲気温度よりも高くなるため、得られるフィルムで食品を包装し、電子レンジ等で加熱した場合でも食品容器等にフィルムが溶けて貼りつくといった問題を生じることが無いため好ましい。このような観点から、エチレン系重合体の密度は0.90〜0.94g/cm3であるのが特に好ましく、中でも0.91〜0.94g/cm3であるのがさらに好ましい。
また、エチレン系重合体のMFRが0.2g/10分以上であれば、押出加工性は安定し、20g/10分以下であれば、成形時に安定した製膜が可能となり、厚み斑や力学強度の低下やバラツキ等が少なくなるため好ましい。このような観点から、エチレン系重合体のMFRは0.5〜18g/10分であるのが特に好ましく、中でも1〜15g/10分であるのがさらに好ましい。
上記エチレン系重合体の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法等が挙げられる。
(他の成分)
本乳酸系軟質フィルムの表面層及び/または中間層には、防曇性、帯電防止性、滑り性、粘着性などの性能を付与するために次のような各種添加剤を適宜配合することができる。
例えば、炭素数が1〜12、好ましくは1〜6の脂肪族アルコールと、炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪酸との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステル、具体的には、モノグリセリンオレート、ポリグリセリンオレート、グリセリントリリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、ポリグリセリンステアレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシレート、エチルアセチルリシレート、ブチルアセチルリシレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールオレート、ポリプロピレングリコールオレート、ソルビタンオレート、ソルビタンラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等、ならびに、ポリアルキレンエーテルポリオール、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、更に、パラフィン系オイルなどから選ばれた化合物の少なくとも1種を、各種を構成する樹脂成分100質量部に対して0.1〜12質量部配合させることができ、好適には1〜8質量部配合させるのが好ましい。
<積層構成>
本乳酸系軟質フィルムは、少なくとも、乳酸系共重合体(B)を主成分とする中間層と、熱可塑性樹脂(A)を主成分として含有する両表面層とからなる3層を備えた積層フィルムであればよく、力学特性や層間接着性の改良など必要に応じて他の層(以下、「P層」と略することがある)を適宜導入してもかまわない。例えば、表面層と同様の組成からなる層(以下、「S層」と略することがある)が、両表面層以外に中間層として介在してもかまわないし、また、中間層と同様の組成からなる層(以下、「M層」と略することがある)が、両表面層の間に2層以上介在してもかまわない。具体的には、(S層)/(M層)/(S層)からなる3層構成、(S層)/(P層)/(M層)/(S層)からなる4層構成、(S層)/(P層)/(M層)/(P層)/(S層)、(S層)/(M層)/(P層)/(M層)/(S層)などからなる5層構成などを例示することができる。この場合、各層の樹脂組成や厚み比に関しては同一であっても異なってもよい。
例えば、中間層と表面層の間に接着層を設けることもできる。この場合の接着層としては、上記以外の別の樹脂を単一または混合して用いることができる。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物、アイオノマー樹脂、エチレンα―オレフィン共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、上記のエチレンα―オレフィン共重合体とは異なるX線法による結晶化度が30%以下のα―オレフィン共重合体よりなる軟質樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、スチレンー共役ジエンブロック共重合体および該ブロック共重合体の少なくとも一部を水添したもの、またこれら樹脂を酸変性などにより改質したものなどを例示することができる。
本乳酸系軟質フィルムにおいて、両表面層と中間層との厚み比は21:79〜50:50であるのが好ましい。両表面層の厚み比率が21%未満になると、シール強度が低下するばかりか、防曇性などを高めることが難しくなる。その一方で、50%を越えると引き裂き強度や突き刺し強度等の機械的強度が低下するようになる。また、中間層の厚み比がかかる範囲内であれば、動的粘弾性による各特性値(E’、tanδ)を満足するフィルムの設計が容易となり、例えばTダイ法にてフィルムを成形する際、安定した製膜安定性が得られ、また、食品包装用フィルムに好適なカット性を発現させるための力学特性や容器の密着性を発現させるための緩和特性を比較的容易に付与することができる。
なお、中間層が上記したように2層以上ある場合には、全ての中間層の合計厚みを用いて厚み比を計算すればよい。
本乳酸系軟質フィルムの厚さ(全体)は、食品包装用フィルムとして用いられる範囲、具体的には6μm〜30μmであるのが好ましく、特に10μm〜20μmであるのがより好ましい。
<フィルム特性>
本乳酸系軟質フィルムは、食品包装用フィルムに利用することを考慮すると、JIS K 7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa〜4GPaの範囲にあることが好ましく、中でも100MPa〜800MPaであるのがより好ましい。
フィルムを食品包装用フィルムとして用いる場合、室温付近における弾性率の値が指標となる。そのため、20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa以上であれば、過度の柔軟性により室温でフィルム同士もしくはフィルムと他の物質が密着することはなく、また、4GPa以下であれば、フィルムが硬すぎることがなく適度に伸びるため、食品包装用フィルム用途において有利である。
また、同測定において、20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲にあることが重要であり、特に0.1〜0.3の範囲にあることが好ましい。
損失正接(tanδ)のピーク値は、力が加わった場合の変形の遅れを示す物性であり、応力緩和挙動を示すパラメーターの一つである。損失正接の値が小さいとフィルムの緩和挙動が速くなり、逆に値が大きいと応力緩和が遅くなる。20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1以上であればフィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こることはなく、0.8以下であれば復元挙動が遅すぎることはないため、食品包装用フィルムとして好適である。
さらに好ましくは、同測定において、−50℃〜0℃の範囲に損失正接(tanδ)のピーク値が存在することが好ましい。さらに、−20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲にあることが好ましく、特に0.1〜0.3の範囲にあることがより好ましい。−20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1以上であれば、低温においてもフィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こることはなく、0.8以下であれば低温においても復元挙動が遅すぎることはないため、食品包装用フィルムとしてさらに好適である。
上記のように貯蔵弾性率(E’)及び損失正接(tanδ)を満足するフィルムを作製するには、例えば中間層及び表面層における構成成分の選択(主成分となる樹脂の種類、その分子量やTg、可塑剤の種類、成分の配合割合、乳酸系重合体や乳酸系共重合体のLD比など)、中間層及び表面層の厚み比率、製膜方法、加工条件(例えばフィルム製膜後の熱処理条件など)を適宜バランスよく調整することによって作製することができる。
<製造方法>
次に、本乳酸系軟質フィルムの製造方法について説明する。
先ず、各層の構成原料が混合組成物である場合には、予め各層の構成原料を混合しておき、必要に応じてペレット化しておくのが好ましい。この際の混合方法としては、例えば、予め同方向2軸押出機、ニーダー、ヘイシェルミキサー等を用いてプレコンパウンドするようにしても構わないし、又、各原料をドライブレンドして直接フィルム押出機に投入するようにしても構わない。いずれの混合方法においても、原料の分解による分子量の低下を考慮する必要があるが、均一に混合させるためにはプレコンパウンドすることが好ましい。例えば中間層であれば、乳酸系共重合体(B)、必要に応じて脂肪族ポリエステル(C)、必要に応じて添加剤をそれぞれ十分に乾燥させて水分を除去しておき、これらを二軸押出機を用いて溶融混合し、ストランド形状に押出してペレットを作製すればよい。
この際、乳酸系共重合体(B)および脂肪族ポリエステル(C)の混合割合によって混合物の粘度が変化すること等を考慮して、溶融押出温度を適宜選択することが好ましい。実際には160〜230℃の温度範囲を選択するのが好ましい。
次に、各層の構成原料を、それぞれ別々に押出機に投入して溶融し、多層ダイで共押出し急冷固化して、多層フィルム原反を得るようにすればよい。
押出し法としては、多層のTダイ法、多層のサーキュラー法等を採用することができるが、好ましくは後者がより好ましい。
このようにして得た多層フィルム原反は、適当な温度条件下で延伸処理を行なってもよい。
延伸温度としては、フィルムの延伸開始点(インフレの場合はバブルとして膨張開始する位置)における表面温度で通常120℃以下とするのが好ましく、特に100℃以下とするのがさらに好ましい。
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター法、インフレーションなどを挙げることができる。中でも、同時二軸延伸で製膜する方法が延伸などの点で好ましい。インフレーション法を採用すると、二軸同時延伸することができ、さらに高い生産性で相対的に安価に製造することができ、かつ、形状を袋状(シームレス状)にすることができるので特に好ましい。例えばスーパーマーケット用持ち帰りバッグ、冷凍食品や精肉等の低温の食品パックに結露する水が周囲を濡らすことを防ぐための袋、コンポストバッグ等の袋やバッグの生産に特に好適である。
共押出法と組み合わせることにより、性質の異なる複数の本発明に係る樹脂組成物及び/又は他種ポリマーを用いて多層フィルムを、高い生産性で製造することができる。
必要に応じて、フィルムの熱処理を行ってもよい。
熱処理条件は、温度が40℃〜120℃であることが好ましく、特に好ましくは50℃〜110℃である。熱処理温度を40℃以上とすれば熱処理効果を得られやすく、120℃以下であれば弾性率が低くなりすぎることはない。
また、防曇性、帯電防止性、粘着性等を付与、促進させる目的で、コロナ処理や熟成等の処理、更には、印刷、コーティング等の表面処理や表面加工を行ってもよい。
<用途>
本乳酸系軟質フィルムは、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポストバッグ、食品・菓子包装用フィルム、食品包装用フィルム、化粧品・香粧品包装用フィルム、医薬品包装用フィルム、生薬包装用フィルム、肩こりや捻挫等に適用される外科用貼付薬包装用フィルム、衛生材料(紙おむつ、生理用品)包装用フィルム、農業用・園芸用フィルム、農薬品包装用フィルム、温室用フィルム、肥料用袋、ビデオやオーディオ等の磁気テープカセット製品包装用フィルム、フロッピーディスク包装用フィルム、製版用フィルム、粘着テープ、テープ、防水シート、土嚢用袋等として好適に使用することができる。特に食品包装用フィルムとして好適に使用することができる。
なお、本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特定する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含するものである。
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、実施例中に示す結果は以下の方法で評価を行った。
(測定および評価方法)
(1)動的粘弾性特性
JIS K 7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、岩本製作所(株)製スペクトロレオメーター「VES−F3」を用い、フィルムのMD(フィルムの押出機からの流れ方向)について、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、温度20℃で測定し、温度20℃での貯蔵弾性率(E´)と、温度20℃及び−20℃における損失正接(tanδ)を求めた。
(2)製膜安定性
Tダイ成形法によりフィルムを成形した際、キャスティングの安定性およびロールへの貼り付き度合いを観察し、以下の基準で評価した。
◎:極めて安定している。
○:安定している。
×:やや不安定である。
(3)容器密着性
直径10cm、深さ5cmの茶碗状の陶磁器性の容器に水(50cc)を入れ、得られたフィルムで容器全体を包装し、0℃で15時間保管後に容器に対するフィルムの密着度合いを評価した。
◎:フィルムがハリのある状態で容器と密着していた。
○:フィルムと容器がずれ、若干のたるみが生じていた。
×:ほとんど密着していなかった。
(4)防曇性
直径10cm、深さ5cmの茶碗状の陶磁器性の容器に水(50cc)を入れ、茶碗の開口部を密閉するようにフィルムで包装し、0℃で30分保管後の曇り具合を評価した。
◎:透明で中がはっきりと見える状態であった。
○:表面に細かい液滴が見える状態であった。
×:真っ白に曇っている状態であった。
(実施例1)
乳酸系共重合体(B)として、乳酸とプロピレングリコール・コハク酸の共重合体(乳酸:48モル%、プロピレングリコール:26モル%、コハク酸:26モル%、重量平均分子量:6万、Tg:10℃、以下「B−1」と称する。)を用いた。
また、脂肪族ポリエステル(C)として、ポリブチレンサクシネート乳酸(コハク酸−乳酸―1,4−ブタンジオール共重合体、重量平均分子量:16万、Tg:−32℃、以下「C−1」と称する。)を用いた。
乳酸系共重合体(「B−1」)と脂肪族ポリエステル(C−1)とを、質量比B−1:C−1=40:60の割合でドライブレンドし、三菱重工製40mmφ小型同方向二軸押出機を用いて設定温度180℃で溶融混練してストランド形状に押出して中間層形成用のペレットを作成した。
他方、熱可塑性樹脂(A)として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(日本ポリエチレン社製、商品名「LV440」、酢酸ビニル含量:15質量%、MFR:2.2g/10分、以下「A−1」と略する)を用いた。
エチレン系重合体(A−1)100質量部と、防曇剤としてジグリセリンモノオレート(理研ビタミン社製、商品名「DGO−1」)2.0質量部とを、押出設定温度180〜200℃に設定した同方向ニ軸押出機に投入して溶融混練し、ストランド形状に押出して表面層形成用のペレットを作成した
上記のように作成したペレットをそれぞれ別々の押出機に投入して合流させ、三層Tダイ温度200℃、ダイギャップ2mm、環状ダイ温度200℃、ブローアップ比10にてインフレーション法によって製膜し、総厚み12μm(表面層/中間層/表面層=3μm/6μm/3μm)のフィルムを得た。
得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、B−1とC−1との混合割合を、質量比B−1:C−1=30:70に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、脂肪族ポリエステル(C)として、C−1の代わりにポリブチレンサクシネート乳酸(コハク酸-アジピン酸―乳酸―1,4-ブタンジオール共重合体、重量平均分子量:16万、Tg:−45℃、以下「C−2」と称する。)を用い、B−1とC−2との混合割合を、質量比B−1:C−2=20:80に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、両表面層用の押出機に、実施例1の中間層と同様の組成となるようにプレコンパウンドしたペレットを投入し、実質的に単層フィルムとした以外は実施例1と同様にして総厚み12μmのフィルムを得た。
得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例3において、両表面層用の押出機に、実施例3の中間層と同様の組成となるようにプレコンパウンドしたペレットを投入し、実質的に単層フィルムとした以外は実施例3と同様にして総厚み12μmのフィルムを得た。
得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
(比較例3)
C−1からなるペレットを押出機に投入し、Tダイ温度200℃、ダイギャップ2mm、環状ダイ温度200℃、ブローアップ比10にてインフレーション法によって製膜し、総厚み12μmの単層フィルムを得た。
得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
(比較例4)
B−1からなるペレットを押出機に投入し、Tダイ温度200℃、ダイギャップ2mm、環状ダイ温度200℃、ブローアップ比10にてインフレーション法によって製膜し、総厚み12μmの単層フィルムを得た。
得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
Figure 0004970878
表1の結果から、Tgが0℃より大きい乳酸系共重合体(B)とTgが0℃以下の脂肪族ポリエステル(C)とのポリマーブレンドから中間層を形成することによって、室温(20℃)と0℃以下の低温(−20℃)の両方において緩和特性をフィルムに付与できることが確認できた。
また、表面層がない場合は、インフレーション成形時の安定性が保たれず、特に比較例4においては、表面層を伴わないと成形できないレベルであった。さらに、表面層を伴わない場合には、フィルムの密着性及び防曇性についても効果が得られないことが確認できた。

Claims (4)

  1. 少なくとも3層を備えた多層乳酸系軟質フィルムであって、
    中間層は、ガラス転移温度が0℃よりも高い乳酸系共重合体(B)と、ガラス転移温度が0℃以下の脂肪族ポリエステル(C)とのポリマーブレンドを主成分として含有し、
    両表面層は、中間層の主成分とは異なる熱可塑性樹脂(A)を主成分として含有し、且つ、当該熱可塑性樹脂(A)が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる少なくとも1種のエチレン系重合体、又は、これら2種類以上の組合わせからなる混合樹脂であり、
    JIS K 7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲にあることを特徴とする多層乳酸系軟質フィルム。
  2. 乳酸系共重合体(B)が、乳酸若しくは乳酸系重合体と、ジオール成分と、ジカルボン酸成分との共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の多層乳酸系軟質フィルム。
  3. JIS K 7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した−20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層乳酸系軟質フィルム。
  4. JIS K 7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa〜4GPaの範囲にあることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
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