JP5396688B2 - ポリエステルフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、柔軟性、密着性、バリア性などの特性のバランスおよびブリードアウト抑制に優れたラップフィルムやストレッチフィルム、袋体など物品や食品の包装用フィルムとして好適に使用することのできるポリエステルフィルムに関するものである。
従来、包装資材などに用いられるポリマー樹脂の成型品を廃棄処理する方法としては、焼却や埋め立てなどの方法により処理する方法が長くなされてきた。しかし、近年では焼却による温室ガスの排出や高い燃焼熱による焼却炉の劣化、埋立地の減少や投棄による環境汚染など廃棄物処理の問題が大きく取り上げられるようになってきた。このような中、酵素や微生物で分解される環境に優しい素材として、生分解性プラスチックが大きく注目されてきている。中でも、脂肪族ポリエステル、特にポリ乳酸を用いた成型品に関する製品の開発が活発に行われてきている。特に、ポリ乳酸樹脂からなるポリエステルフィルムについては、工業材料や包装材料分野において開発がなされている。
ポリ乳酸は、トウモロコシなどの穀物や、さつま芋など芋類から得られるデンプンを原料として乳酸を製造し、さらに化学合成により得られる重合体であり、脂肪族ポリエステルの中でも植物由来の原料により合成でき、また機械的物性や耐熱性、透明性に優れているため、フィルム、シート、テープ、繊維、ロープ、不織布、容器などの各種成形品への展開を目的とした研究開発が盛んに行われている。しかしながら、例えば包装用ラップフィルムなどの用途においては、ポリ乳酸はそのままでは柔軟性が不十分なために主に可塑剤の添加による柔軟化技術が各種検討されている。
たとえば、柔軟ポリ乳酸組成物として、通常ポリ塩化ビニルに添加して頻繁に用いられているフタル酸エステルなどの可塑剤を用いる技術が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、フタル酸エステルなど通常用いられている可塑剤を添加して柔軟化した場合、添加直後は柔軟性を発現するものの、経時で可塑剤のブリードアウトが起り、柔軟性が著しく低下する。さらに可塑剤添加により、包装材料などの用途で用いられる際に重要な特性である、水蒸気バリア性などが大幅に悪化するという問題があった。
また、柔軟ポリ乳酸組成物しては、乳酸モノマーや乳酸オリゴマーを可塑剤として使用する技術の開示もなされている(たとえば、特許文献2参照)。しかしながら、これらの技術では可塑剤の熱安定性の悪さがポリマーであるポリ乳酸にも影響を及ぼし、熱安定性が大幅に低下したり、加水分解が容易になり、包装材料などに実際に用いる際に、該組成物からなる成形品の物性が経時で大きく変化してしまうことがあり、実用性に劣るという大きな欠点があった。
さらに、柔軟ポリ乳酸組成物として、可塑剤にポリアルキレンエーテルとポリ乳酸のブロック共重合体を添加する技術が開示されている(たとえば、特許文献3参照)。しかしながら本技術の組成物からなるフィルムでは、包装材料用途や工業材料用途で求められる水蒸気バリア性が、可塑剤の影響で大幅に劣ったものとなってしまうことから、実用性に乏しいものであった。
包装用ラップフィルム用途に限定した技術としては、たとえば、乳酸系脂肪族ポリエステルを主体とする樹脂と液状添加剤を含有する組成物からなる延伸フィルムに関して開示されている(たとえば、特許文献4参照)。しかしながら、液状添加剤が容易にブリードアウトしてしまい、経時でフィルム特性が変化したり、包装されている内容物にブリードアウトした液状添加剤が移行したり、内容物の水分が容易に系外に揮発して干乾びてしまうなどの大きな問題があった。
さらに、積層化によりポリ乳酸フィルムの機能性付与を試みている例がいくつか挙げられる。たとえば、低融点のポリマーと高融点のポリ乳酸を2層に積層化し、ヒートシール性を付与する技術が開示されている(たとえば、特許文献5参照)。
また、液状添加剤により柔軟化したポリ乳酸からなる層と脂肪族/芳香族共重合ポリエステル樹脂に液状添加剤を添加した層の積層化により密着性とガスバリア性の高いラップフィルムに関する技術が開示されている(たとえば、特許文献6参照)。しかしながら、本技術においても、組成物の水蒸気バリア性や、添加剤やラクチドなどのブリードアウトといった観点からは未だ不十分な技術であった。
以上のように、従来からポリ乳酸樹脂に可塑剤を添加するなどして柔軟性を付与したり、積層化によって水蒸気バリア性を向上させる試みはなされていたものの、十分な柔軟性を付与しなおかつフィルムとして使用する際には可塑剤ブリードアウトを抑えることで経時物性変化を抑制したり、実用上問題の無いレベルに水蒸気バリア性制御したフィルムについては達成されていなかった。
特開平4−335060号公報 特開平6−306264号公報 特開平8−253665号公報 特開2000−26623号公報 特開平8−323946号公報 特開2002−88230号公報
本発明は、上記した従来技術の背景に鑑み、ラップフィルムやストレッチフィルムや袋体などに求められる柔軟性、密着性に優れるだけでなく、水蒸気バリア性にも優れており、なおかつ可塑剤のブリードアウトおよびフィルム特性の経時変化が抑制されたポリエステルフィルムを提供せんとするものである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち本発明は、以下である。
フィルムが3層以上からなり、表層が内層よりも可塑剤(B)の含有量が多く、
表層と内層が、共に結晶性を有するホモポリ乳酸と非晶性のホモポリ乳酸を併用し、
ポリ乳酸樹脂と可塑剤の合計100質量%において、ポリ乳酸樹脂50〜95質量%と可塑剤5〜50質量%からなるポリエステルフィルムであって、
該可塑剤は、ポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)と、融点が30℃以下の可塑剤(B)を有しており、
高分子可塑剤(A)量が可塑剤(B)量よりも多く、
高分子可塑剤(A)が、1分子中に数平均分子量が1500〜10000であるポリ乳酸セグメントを1つ以上有し、かつ、数平均分子量が1000〜10000であるポリエーテル系セグメントを有し、
引張弾性率が0.1〜2GPaのポリエステルフィルム。
本発明によれば、柔軟性に優れるだけでなく、経時での物性変化が抑制され、優れた特性を保持でき、さらに包装資材として用いる場合に重要である水蒸気バリア性に優れている、ポリエステルフィルムを提供することができ、かかるポリエステルフィルムは、ラップフィルムやストレッチフィルムや袋体などして好適に使用することができる。
本発明は前記課題、つまりラップフィルムやストレッチフィルムや袋体などに求められる柔軟性、密着性に優れるだけでなく、水蒸気バリア性にも優れており、なおかつ可塑剤のブリードアウトおよびフィルム特性の経時変化が抑制されたポリエステルフィルムについて、鋭意検討した結果、ポリエステルとしてポリ乳酸樹脂を使用し、可塑剤として特定の高分子可塑剤(A)と特定の可塑剤(B)を、特定の量関係を満たす形で含有させてみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
すなわち、本発明のポリエステルフィルムは、ラップフィルムに代表される特有の柔軟性付与のために、ポリ乳酸樹脂と可塑剤の合計100質量%において、ポリ乳酸樹脂50〜95質量%と可塑剤5〜50質量%からなることが必要である。さらに、かかるポリ乳酸樹脂の配合量としては、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは70〜85質量%であることが、フィルムの強度や、使用する際の取り扱い性およびバリア性の観点からよい。
ポリ乳酸樹脂が50質量%未満であれば、フィルム中の主成分は可塑剤となるために、可塑剤中にポリ乳酸が存在する構造となり、よってフィルム中の連続相が可塑剤となる。そのため、フィルムとしての形状の保持が困難となり、フィルム製造時の工程通過性、スリット加工性が不良となる。また、包装する物品類に貼り付き剥離できない等の問題が発生する場合や水蒸気バリア性に劣る場合がある。
また、ポリ乳酸樹脂の含量が95質量%を越えると、柔軟性に劣り、包装する物品や食品の形状に追随して変形せず、十分な密着性が得られない場合がある。また、包装する際に過剰な力が必要となり、被包装物を傷めるなどの問題が発生する場合がある。
ここで本発明のポリ乳酸樹脂は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主な出発原料として製造される高分子であって、本発明のポリエステルフィルムではポリ乳酸樹脂構成成分の70質量%以上がL−もしくはD−乳酸を出発原料とする、結晶性を有するポリ乳酸樹脂であることが好ましい。
また、ポリ乳酸にはL−乳酸からなるポリL−乳酸とD−乳酸からなるポリD−乳酸およびその共重合体であるラセミ体が存在するが、本発明で用いるポリ乳酸樹脂は、結晶性を有する範囲で、構成する乳酸成分のL−乳酸の割合が99〜70質量%であることが好ましく、99〜80質量%であればより好ましい。
また使用する際の用途によっては、必要な機能の付与あるいは向上を目的として、光学純度の異なる2種以上のホモポリ乳酸を併用してもよく、例えば、結晶性を有するホモポリ乳酸と非晶性のホモポリ乳酸を併用することも可能である。
非晶性のホモポリ乳酸とは、昇温速度20℃/分の条件で示差走査熱量測定(DSC)をした際に融点を示さず、実質的に結晶構造を有さないポリ乳酸樹脂である。ポリ乳酸の結晶性は、ポリ乳酸の光学純度によって制御され、L−乳酸を主体とするポリ乳酸の場合には、D−乳酸の比率、すなわちD−乳酸の共重合量の増加に伴い、結晶性の低下とともに融点が低下し、共重合量として概ね10%以上で融点を示さないポリ乳酸となる。
非晶性のホモポリ乳酸の割合は本発明の効果を損ねない範囲で決定すれば良いが、融点が30℃以下の可塑剤(B)の添加量が多いほど、非晶性のホモポリ乳酸の比率を高めることが、耐ブリードアウト性が向上するために好ましい。また積層フィルムとした場合は、可塑剤(B)を含む層において非晶性のホモポリ乳酸の比率を高めることが好ましい。
融点が30℃以下の可塑剤(B)は、密な構造であるポリ乳酸の結晶中には存在することが不可能であり、非晶部の分子間の隙間に含有されるものである。すなわち、樹脂中の非晶部の量により、樹脂中に保持可能な可塑剤(B)の量が決定されるものである。
また、非晶性のポリ乳酸のみで構成される場合には、実質的に結晶を有さないことから、低温で溶融するなど十分な耐熱性が得られない場合がある。そのため、非晶性のポリ乳酸を用いる場合は結晶性のポリ乳酸と併用することが好ましい。通常、ホモポリ乳酸は光学純度が高いほど融点が高く、例えば光学純度が98%以上のポリL−乳酸では融点が約170℃程度であるが、ポリ乳酸系成形品とした際に高い耐熱性を付与したい場合は、使用するポリ乳酸重合体のうち少なくとも1種に光学純度が95%以上のポリ乳酸を含むことがより好ましい。
さらには、高い耐熱性と耐ブリードアウト性を両立する点から光学純度が98%以上のポリ乳酸と非晶性のポリ乳酸を併用することが好ましい。特に限定されるものではないが、例えば柔軟性と140℃以上の耐熱性とを両立する場合、ポリ乳酸樹脂100質量%中の光学純度98%以上のポリ乳酸量が10〜40質量%、非晶性のポリ乳酸が60〜90質量%の範囲である。
本発明のポリ乳酸は、ラクチドのブリードアウトによる製膜工程の汚染を防ぐため、ポリマー中のラクチド残存含有量が0.3質量%以下であることが好ましい。ポリ乳酸中にラクチドが0.3質量%より多く残存した場合、フィルムなどの成形体を製造する際にポリ乳酸からラクチドがブリードアウトして、例えば製膜工程を汚染することがある。そのためポリ乳酸中のラクチド残存含有量は0.3質量%以下であることが好ましい。
ポリ乳酸の製造方法は、L−乳酸およびD−乳酸を原料として環状2量体であるL−ラクチド、D−ラクチドおよびDL−ラクチド(ラセミ体)を生成し、このラクチドを開環重合させることで重合体を得るラクチド法と、乳酸を溶媒中などで直接脱水縮合させることで重合体を得る直接重合法があり、本発明においては、どちらの重合法により得られたポリ乳酸でも同様に用いることが可能である。しかし上述した、ポリ乳酸中のラクチド残存含有量を0.3質量%以下とするためには、直接重合法がより好ましい。
また本発明のポリ乳酸樹脂は、フィルム物性全般、特に機械物性の観点から、数平均分子量が、好ましくは2万〜25万、より好ましくは4万〜15万、特に好ましくは5万〜11万であるのがよい。
本発明のポリ乳酸樹脂は、L−乳酸およびD−乳酸に乳酸以外の単量体残基を共重合した共重合ポリ乳酸であっても良く、共重合に用いる単量体成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類や、エステル形成能を有するグリコール化合物、ジカルボン酸化合物およびそのエステル誘導体を挙げることができる。具体的には、グリコール化合物としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどを挙げる事ができる。また、ジカルボン酸化合物としてはコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸およびこれらのジメチルエステル誘導体などを挙げることができる。これらの中でも、特にポリ乳酸の生分解性を阻害しない共重合成分を好ましく用いることができ、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸やエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールコハク酸、アジピン酸、セバシン酸である。
本発明のポリエステルフィルム中に含有する可塑剤としては、ポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)と融点が30℃以下の可塑剤(B)を含有することが好ましい。
ポリ乳酸セグメントを有さない高分子可塑剤を用いた場合、可塑剤の滲出、抽出(ブリードアウト)により、経時での物性変化、フィルム表面の白化、包装する物品類の汚染といった問題が発生することがある。
また、融点が30℃以下の可塑剤(B)を、ポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)と同時に含有しない場合、つまりポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)のみを可塑剤として使用した場合、水蒸気バリア性に対する十分な効果が得られないことや、密着性などラップフィルムに代表される物性が不十分となることがある。さらに融点が30℃を超える可塑剤を用いた場合は、該可塑剤は流動性のきわめて低い実質的に固体状の可塑剤となるため、柔軟性、密着性等の効果が得られないほか、表面に析出してフィルムの製造工程や包装する物品類を汚染する問題が生じる場合がある。
そのため包装材料用途に好ましく用いられる本発明のポリエステルフィルム中には、耐ブリードアウト性に優れるポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)と、水蒸気バリア性や粘着性を向上させる融点が30℃以下の可塑剤(B)の2種類を、併用して含有することが好ましい。
本発明のポリエステルフィルム中の可塑剤量は、十分な柔軟性を得る点から、ポリ乳酸樹脂と可塑剤の合計100質量%において、ポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)と融点30℃以下の可塑剤(B)の総量が5〜50質量%であることが好ましい。可塑剤量が5質量%未満の場合、本発明のポリエステルフィルムに十分な柔軟性が得られず、また可塑剤量が50質量%を超える場合、組成物あるいはフィルムとして取扱い性が悪化するとともに、フィルムがブロッキングするなどの問題が発生することがある。
本発明のポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)と融点が30℃以下の可塑剤(B)は、フィルム中に高分子可塑剤(A)量が可塑剤(B)量よりも多い関係を満たす形で含有されていることが好ましい。高分子可塑剤(A)量が液状可塑剤(B)量以下となった場合、柔軟性は得られるものの、可塑剤の滲出、抽出(ブリードアウト)の抑制効果が不十分となり、経時での物性変化やフィルム表面の白化、包装する物品類の汚染といった問題が発生する場合がある。
さらに、該フィルム中の可塑剤成分のポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)と融点30℃以下の可塑剤(B)の質量比率は40:1〜1.5:1であることがより好ましく、30:1〜5:1であるとさらに好ましく、25:1〜10:1であることが特に好ましい。また、本発明のフィルムを積層フィルムとする場合は、積層体全体として積層体全体でみて、高分子可塑剤(A)量が可塑剤(B)量よりも多い関係を満たしていることが好ましく、さらに積層体全体として、該積層フィルム中の可塑剤成分のポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)と融点30℃以下の可塑剤(B)の質量比率が、40:1〜1.5:1がより好ましく、30:1〜5:1であるとさらに好ましく、25:1〜10:1を満たすことが特に好ましい。
本発明のポリエステルフィルム中に含有する高分子可塑剤(A)は、ポリ乳酸セグメントを有することが好ましい。ここでポリ乳酸セグメントとは、ポリ乳酸もしくはオリゴ乳酸からなる乳酸ブロック重合体を意味するものである。高分子可塑剤(A)がポリ乳酸セグメントを有すると、高分子可塑剤(A)中のポリ乳酸セグメントが、母材であるポリ乳酸樹脂と相溶化し、その結果、高分子可塑剤(A)中の一部が、母材のポリ乳酸結晶に取り込まれた形の構造となり、そのアンカー効果によって、フィルムからの可塑剤のブリードアウトを抑制することができる。
さらに、かかるポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)は、アンカー効果と可塑化効果の二つの点から、1分子中に分子量が1500〜10000であるポリ乳酸セグメントを1つ以上有し、かつ、分子量が1000〜10000である、ポリエーテル系セグメントおよび/またはポリエステル系セグメントを有する高分子可塑剤(A)を用いることが特に好ましい。
ここでポリエーテル系セグメントとしては、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコールなどのポリアルキレングリコールあるいは、これらポリアルキレングリコールの共重合体からなるセグメントを好ましく用いることができる。
さらに高分子可塑剤(A)として用いるポリアルキレングリコールセグメントは、水蒸気バリア性を良好とする点から親水性の低いポリアルキレングリコールセグメントを用いることが好ましく、例えばポリプロピレングリコールやポリテトラメチレングリコール等炭素数3以上のアルキレングリコール成分を含有していることが特に好ましい。具体的には、ポリプロピレングリコールやポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール共重合体である。
また、ポリ乳酸樹脂との相溶性およびフィルムの密着性の点からは、ポリエチレングリコール成分を含有する高分子可塑剤(A)であることが好ましい。
よって、目的とするフィルム用途に必要な諸特性に応じて、水蒸気バリア性を向上可能な炭素数3以上のアルキレングリコール成分と、相溶性や密着性を向上可能なポリエチレングリコール成分を適宜併用して調整することが特に好ましい。
次に、1分子中に分子量が1500〜10000であるポリ乳酸セグメントを1つ以上有し、かつ分子量が1000〜10000であるポリエーテル系セグメントおよび/またはポリエステル系セグメントを有する高分子可塑剤(A)の製造方法の例を記す。
両末端に水酸基を有する所定の分子量を有する市販のポリエチレングリコールと乳酸の環状二量体であるラクチドを所定の割合で混合し、重合触媒として、たとえばオクチル酸スズを添加して、ポリエチレングリコールの両水酸基末端からラクチドを開環付加重合させ、ポリ乳酸セグメント−ポリエチレングリコールセグメント−ポリ乳酸セグメントと共有結合で結合されたA−B−A型のトリブロック共重合体を得ることができる。そして、ポリエチレングリコール、ラクチドと重合触媒添加量および開環付加重合の条件を制御することでポリ乳酸セグメントの分子量をコントロールすることが可能であり、それにより所望の高分子可塑剤(A)を得ることができる。
本発明のポリエステルフィルム中に含有する可塑剤(B)は、融点が30℃以下である。これはすなわち、30℃において実質的に液状あるいは粘調性液状の形態を有し、30℃における粘度が1000mPa・s以下のものを意味する。
このような可塑剤(B)として、例えば、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジシクロヘキシルなどのフタル酸エステル系、アジピン酸ジ−1−ブチル、アジピン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−n−ブチル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどの脂肪族二塩基酸エステル系、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシル、リン酸ジフェニルオクチルなどのリン酸エステル系、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、クエン酸トリブチルなどのヒドロキシ多価カルボン酸エステル系、アセチルリシノール酸メチル、ステアリン酸アミルなどの脂肪酸エステル系、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリンなどのグリセリン化合物やこれらグリセリン類と酸成分との多価アルコールエステル系、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチルエステル、エポキシステアリン酸オクチルなどのエポキシ系可塑剤、ポリプロピレングリコールセバシン酸エステルなどのポリエステル系可塑剤、ポリアルキレンエーテル系、エーテルエステル系、アクリレート系可塑剤、オリーブ油・ヒマシ油・菜種油・落花生油・椿油等の植物油、肝油・ラノリン・豚脂・蜜蝋等の動物性油脂、流動パラフィン・ワセリン等の鉱物性油など油脂類およびこれら油脂を構成する脂肪酸および脂肪酸エステル等の化合物を挙げることができ、食品包装用途に使用しても問題のない安全なものであることが好ましい。
より好ましくは、ポリ乳酸樹脂との相溶性に優れる点、バリア性を良好とする点、さらにはフィルムの密着性向上に効果的である点から、植物油などの天然の油脂類およびこれらの油脂を構成する脂肪酸、脂肪酸エステルのエポキシ化化合物であり、具体的には、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチルエステルなどのエポキシ化植物油が特に好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも2層以上から構成される積層フィルムとすることにより、柔軟性、密着性、バリア性などの特性のバランスおよびブリードアウト抑制の点でより顕著な効果を有した、さらに好ましいフィルムをとすることができる。
かかる積層フィルムとする場合、ポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)、融点30℃以下の可塑剤(B)はいずれの層に含有していてもよいが、水蒸気バリア性の点からは、親水性の高い高分子可塑剤(A)の含有量を低減した層を設ける方法や、水蒸気バリア性の良好な炭素数3以上のアルキレングリコール成分を含有している高分子可塑剤(A)やエポキシ化植物油等の可塑剤(B)の比率を高めた層を有する構成が好ましい。
また密着性の点からは、表層にポリエチレングリコール成分を含有する高分子可塑剤(A)や可塑剤(B)の比率を高めた層を有する構成とすることが好ましい。より好ましくは、積層フィルムが2層からなる場合は、一方の層が他方の層よりも可塑剤(B)の含有量が多い積層フィルムとすることであり、積層フィルムが3層以上からなる場合は、表層が内層よりも可塑剤(B)の含有量多い積層フィルムとすることである。積層数は、フィルムの表裏での密着性等の物性に差のない構成となる3層以上が特に好ましい。
さらには、積層フィルムの最表層を構成する層の可塑剤(B)含有量が、内層よりも多い構成であることが好ましい。これにより、フィルム全体でみた場合には可塑剤(B)含有量が同じフィルムであっても、水蒸気バリア性や密着性に最も影響する最表層に可塑剤(B)を添加した、積層フィルムの最表層を構成する層の可塑剤(B)含有量が内層よりも多い構成のフィルムは、水蒸気バリア性と密着性に優れたフィルムとすることができるからである。
例えば、高分子可塑剤(A)と融点30℃以下の可塑剤(B)を別々の層に分離した、ポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)を含有する層(A層)と融点30℃以下の可塑剤(B)を含有する層(B層)の各々の層を有する、AB型やBAB型の2層以上の積層フィルムが挙げられる。このフィルムにおいては、B層がA層よりも可塑剤(B)の含有量が多いために、B層が水蒸気バリア性および/または密着性に優れるので、B層を表層とすることで包装材料に好適に使用可能なフィルムとすることができる。
例えば、3層積層する場合では、内層とは2層に挟まれる中心の層を意味する。そして内層は、ポリ乳酸セグメントを有するポリエチレングリコールおよび/または炭素数3以上のアルキレングリコール高分子可塑剤(A)を含有するA層として、柔軟性とバリア性を付与する。そして表層は、内層と比べて高分子可塑剤量(A)を低減して、可塑剤(B)を含有する層とするB層として、バリア性と密着性を付与する。これらA層とB層を、BAB型積層フィルムとする事により、柔軟性、密着性、バリア性、耐ブリードアウト性等の特性を高い水準で達成できるため特に好ましい。
なお、本発明のポリエステルフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で酸化防止剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤あるいは着色顔料等として無機微粒子や有機粒子、有機化合物を必要に応じて添加してもよい。
例えば、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系などが例示される。
着色顔料としてはカーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄などの無機顔料の他、シアニン系、スチレン系、フタロシアイン系、アンスラキノン系、ペリノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、キノクリドン系、チオインディゴ系などの有機顔料等を使用することができる。
また、フィルムの易滑性や耐ブロッキング性の向上を目的として、無機微粒子や有機粒子を添加する際には、例えば、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーンなどの粒子を用いることができる。
また、透明性を良好とする点から、基材として用いるポリエステルと近い屈折率を有する粒子が好ましく、このような点でシリカ、コロイダルシリカ、ポリメチルメタクリレートなどの粒子がより好ましい。また、本発明のポリエステルフィルムに用いる粒子としては、天然に存在する無機粒子や生分解を有する粒子を選択することが好ましい。その平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜3μm、最も好ましくは0.08〜2μmである。
本発明のポリエステルフィルムは、23℃における引張試験により得られる引張弾性率が0.1〜2GPaであることが好ましい。すなわち、フィルムの引張弾性率が0.1GPa未満である場合、フィルム製膜および加工工程で伸びや弛みが発生し、取扱い性、工程通過性、スリット加工性が不良となることがある。また、ラップフィルムとして用いた場合に、容器などの物品や食品を包み込む前にフィルムが変形し、効率よく包装できないなどの問題が発生することがある。また、かかる引張弾性率が2GPaを超える場合は、包装する物品や食品の形状に追随して変形せず、十分な密着性が得られないことがある。また、包装する際に過剰な力が必要となり、被包装物を傷めるなどの問題が発生することがある。引張弾性率のより好ましい範囲としては、0.1〜1.5GPaであり、さらに好ましくは0.15〜1.2GPa、特に好ましくは0.2〜1GPaである。
なお、本発明において引張試験とは、23℃の雰囲気下でJIS K7161およびJIS K7127に準じて、テンシロン万能試験機を用い、引張速度300mm/分条件で行う試験を意味する。また、本発明において引張弾性率とは、上記引張試験で得られる応力−歪み曲線の最初の直線部分を用いて、直線上の2点間の応力の差を同じ2点間の歪みの差で除し求められる値である。
本発明のポリエステルフィルムは、水分を含む食品の保存用などの包装フィルムとして用いる点から水蒸気バリア性の指標である透湿度が、0〜40g/(m・日)であることが好ましい。
かかる透湿度が40g/(m・日)を越えると、水分を含む食品の保存の際に、食品が乾燥してしまう場合があるために好ましくない。また透湿度の値は小さいほど水蒸気バリア性に優れているが、現実的には0.01g/(m・日)未満は達成困難であり、しかし40g/(m・日)以下であれば、食品保存などの包装フィルムとして用いるにあたり十分である。
より好ましくは0〜35g/(m・日)であり、さらに好ましくは0〜30g/(m・日)であり、0〜25g/(m・日)であることが特に好ましい。
ここで透湿度とは、アルミ製の容器に純水を入れ、フィルムで開放部を密閉し、冷蔵庫で三日間保管し、保管前後の重量変化を測定し、一日当たりの透過量を求めたものである。
透湿度を0〜40g/(m・日)とするためには、異形度(長径/短径)が5〜1000であり、平均長径が0.1〜10μmである扁平粒子を0.01〜10質量%含有させる方法を好ましく用いることができる。
水蒸気バリア性とフィルムの透明性の両立、および扁平粒子によるフィルムのへき開防止の観点から、異形度は5〜500であることがより好ましく、7〜100であれば特に好ましい。また扁平粒子の平均長径としては0.3〜5μmであることがより好ましく、0.5〜3μmであれば特に好ましい。扁平粒子としては天然鉱物から採取される層状無機粒子を好ましく用いることができる。
かかる層状無機粒子としては、カオリン、タルク、マイカ、バライトなどを挙げることができるが、水蒸気バリア性の点から特にタルクを用いることが好ましい。フィルムの透明性と透湿度を好ましく両立させるためには含有量が0.5〜3質量%であれば特に好ましい。
また、さらに水蒸気バリア性を向上する点からポリ乳酸樹脂と可塑剤の合計100質量部に対しワックス化合物を0.1〜5質量部含有させる方法を併用しても良い。ワックス化合物を含有させることにより、フィルムの親水性が低減し、また無機粒子の分散性が高まり、より顕著な水蒸気バリア性の効果を得ることが可能である。フィルムの取扱い性などを考慮すると、より好ましくは0.2〜2質量部であり、0.3〜1.5質量部であると特に好ましい。
ここでワックス化合物としてはカルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ペンタエリスリトールフルエステル、ベヘニルベヘネート、パルチルミリステート、ステアリルステアレートやオレフィンワックスなどを挙げることができるが、これらの中でもカルナウバワックス、キャンデリラワックスやライスワックスなどが特に好ましい。
かかるワックス化合物を添加する方法としては、以下に例示する方法に限定されるものではないが、たとえばフィルム製造の際に溶融押出機として二軸押出機を採用し、ポリ乳酸樹脂、可塑剤と共にワックス化合物を溶融押出する方法や、予めポリ乳酸樹脂あるいは高分子可塑剤(A)と二軸押出機で混合しマスターバッチを作製し、溶融押出に供する方法、さらにはポリ乳酸樹脂の重合工程で所定の濃度となるようにワックス化合物を添加し、ワックス化合物の存在下でポリ乳酸の重合を行いマスターバッチを得る方法などを採ることができる。製造装置を限定されない点でマスターバッチを予め作製する方法が中でも好ましい。これらのワックス成分は、油脂類や油脂を構成する脂肪酸および脂肪酸エステル等の化合物と良好な相溶性を有しているため、このような可塑剤(B)と併用して用いることがフィルムの透明性とバリア性の点で特に好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、ラップフィルム等の包装用フィルムとして用いる場合、内容物を容易に見分けることができるように、ヘーズは好ましくは0.1〜10%、より好ましくは0.1〜5%であり、さらに好ましくは0.2〜3%、特に好ましくは0.2〜1%である。
フィルムのヘーズを0.1〜10%とする方法としては、フィルムを構成するポリ乳酸樹脂と可塑剤の相溶性を高めることが重要であることは言うまでもなく、添加する粒子やワックス成分等の添加剤の添加量や組合せなどを制御することが重要である。
ゴミ袋や農業用マルチフィルムなどでは、むしろ一定の隠蔽性が必要とされる場合や、光線透過率が低い方が好ましい場合や、あるいは太陽光などの吸収率が高い方が好ましい場合があり、このような用途においては、必要に応じて例えばカーボンブラックや酸化チタンに代表される着色顔料などを添加しても良い。
以下に、本発明のポリエステルフィルムの製造方法を具体的に例示するが、本発明のフィルムの製造方法はこれに限定されるものではない。まずポリ乳酸樹脂の製造方法として、たとえばポリL−乳酸の重合は以下のように行うことができる。
市販のL−ラクチド100質量部にオクチル酸スズを0.02質量部添加し、窒素雰囲気下190℃で15分間重合し、前駆ポリL−乳酸を得る。この前駆ポリL−乳酸をチップ化したのち、窒素雰囲気下140℃で3時間の固相重合を行うことでフィルム製造に適したポリL−乳酸を得ることができる。
また、本発明で好ましく用いることができる高分子可塑剤(A)の合成は、以下のように行うことができる。市販の平均分子量10000のポリエチレングリコール71質量部とL−ラクチド29質量部とオクチル酸スズ0.02質量部を混合し、窒素雰囲気下160℃で2時間重合することで、ポリエチレングリコールの両末端に平均分子量2000のポリL−乳酸ユニットを有するA−B−A型のトリブロック共重合体を得ることができる。
以上のようにして得られたポリ乳酸樹脂および可塑剤を用いて、本発明のフィルムを製造する事ができる。使用するポリ乳酸樹脂および可塑剤の劣化および分解物の発生を抑制するため、90℃〜110℃にて真空乾燥し、真空度を10Torr以下の高真空とし、乾燥時間は6時間以上とすることが好ましい。
延伸フィルムの製造において、例えば、まず真空下で乾燥した上述のポリエステルを公知の方法でスリット状の口金よりシート状に溶融押し出しすることができるが、熱分解を抑制しラクチドなどの低分子量物の増加を抑制する点から、押出温度をより低温とすることが好ましく、また滞留時間をより短時間とすることが好ましい。具体的には押出し機やポリマー配管、口金などの温度は200℃以下が好ましく、190℃以下がさらに好ましく、180℃以下がより好ましい。また、ポリ乳酸樹脂組成物が押出機内で溶融されてから口金より吐出されるまでの滞留時間は20分以下であることが好ましく、10分以下であることがさらに好ましく、5分以下であることがより好ましい。
押出されたシート状の溶融物は、キャスティングドラムに密着させて冷却固化せしめて未延伸フィルムを得る。ポリ乳酸樹脂に可塑剤を添加する場合、例えば、可塑剤を高濃度含有させたポリ乳酸樹脂のマスターチップとポリ乳酸樹脂のホモチップとを混合したブレンドチップをエクストルーダなど製膜機の押出系へ供して溶融混練しても良いが、組成物の熱劣化を最小限にしラクチド含有量を低減するためには、真空下乾燥を施した原料を用い、2軸押出機を使用するなどして押出機中で溶融したポリ乳酸系重合体に必要に応じて加熱するなどして液状とした可塑剤を計量しつつ連続的に添加し、溶融混練する方法が好ましい。さらに二軸押出機の途中にベントポートを設け、ベントポートを減圧し、水分や溶融時に発生するオリゴマー類などの低分子量成分を除去しつつ溶融混練する方法が好ましい。
かかる方法で得た未延伸フィルムを連続して少なくとも一方向に延伸して得ることができる。延伸フィルムの製造方法はインフレーション法、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法などの方法を用いることができ、逐次二軸延伸法を用いる場合には、例えば、未延伸フィルムを加熱ロールの周速差を利用したロール延伸で長手方向に延伸し、次いで連続クリップを有するテンター内で1段目延伸方向と直交する方向への延伸を施し、延伸に引き続いてテンター内および/または巻き取り後に熱処理を施し得ることができる。
フィルムの延伸条件は、目的とする熱収縮特性、寸法安定性、強度、弾性率などに応じて、適宜調整し任意の方法で行うことができるが、少なくとも一軸方向に1.1以上延伸してなることが好ましい。延伸することで母材であるポリ乳酸系重合体を配向結晶化させ、同時に高分子可塑剤(A)のポリ乳酸セグメントがこの結晶中に取り込まれることを促進することで、可塑剤の揮発や滲出、抽出(ブリードアウト)をさらに抑制することができるため好ましい。また、透明性を保持したまま結晶化を促進させることが可能となり、配向結晶化により強度物性も向上するため、柔軟性と強度を併せ持つフィルムを得ることができる。
例えば延伸温度は、用いるポリエステルのガラス転移温度以上、結晶化温度以下で行うことが二軸延伸性やフィルムの透明性の点で好ましく、延伸倍率は、長手方向、幅方向にそれぞれ1.1倍〜10倍の範囲の任意とすることができ、長手方向、幅方向のどちらかを大きくしてもよく、同一であってもよい。
フィルムの延伸倍率は、目的とする柔軟性、取扱い性、生産性に応じて適宜調整すればよいが、可塑剤のポリ乳酸セグメントが結晶中に取り込まれることを促進する点、透明性の点から、より好ましくは少なくとも一方向に2〜8倍、さらに好ましくは2.5〜8倍である。特に限定されるものではないが、二軸延伸フィルムとする場合には、1方向の延伸倍率が10倍を超えると、延伸性が低下し、製膜中にフィルムが破断しやすくなったり、フィルムの透明性の悪化等が起こる場合があり、また逐次二軸延伸の場合には2方向目の延伸性が低下する場合があるため、適宜調整されることが好ましい。
延伸前後のフィルムの面積割合である面積倍率としては、好ましくは4〜60倍、より好ましくは6〜40倍、さらに好ましくは6〜30倍である。生産性の点からはより高い延伸倍率とすることが好ましい。
熱処理条件は、フィルムの強度、寸法安定性の点からポリエステルのガラス転移温度以上融点以下の範囲のより高い温度で行うことが好ましく、具体的には40〜90℃である。
また、延伸速度は、延伸速度100〜50000%/分の範囲で適宜調整することができる。また、フィルム中の結晶および可塑剤の構造安定化およびフィルム中のオリゴマー成分など低分子量成分を低減する目的で100℃以上で10秒以上のより長時間熱処理を行うことがより好ましい。
また、熱処理の際、フィルム長手方向および幅方向に弛緩させて行っても良い。
またストレッチフィルムなど特定の伸度が求められる場合においては、延伸倍率、熱処理温度を適宜調整することが好ましく、延伸倍率を面積倍率として1〜10倍、熱処理温度を120℃以下で20秒以下の短時間の熱処理とすることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、柔軟性、密着性、バリア性などの特性のバランスおよびブリードアウト抑制の点でより顕著な効果を発現することから、少なくとも2層以上から構成される積層フィルムとする事が好ましい。積層フィルムの製造方法としては、別々の押出機で溶融したポリマーをTダイや丸ダイの上部に設置したフィードブロック内にて積層し、そのままダイから押し出すことで積層フィルムを得る方法が好ましい。なお、表裏の物性差を低減し、柔軟性と製膜安定性を両立する観点からはABAあるいはBAB型の三層積層フィルムとすることが特に好ましい。フィルム構成としては、これに限られるものではなく、必要に応じて3層よりも多層である積層構成であってもよく、各層の積層厚み比も任意に設定できる。
また、本発明のポリエステルフィルムは包装用フィルムとして用いる観点からフィルム厚みが5〜100μmであることが好ましく、7〜60μmであればより好ましい。特にラップフィルムとして用いる点で物品類を包む際の形状追従性を良好とする点から7〜15μmであることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムに対しては、フィルム表面の機能性を高める観点でコロナ放電処理やプラズマ処理などの表面処理を行うことが好ましい。さらにフィルム製造インラインやオフラインで異接着性樹脂などをコーティングしたり、金属化合物を蒸着して用いても良い。
本発明のポリエステルフィルムは、柔軟性や密着性に優れるだけでなく、経時での物性変化が抑制され優れた特性を保持でき、さらに包装資材として重要な水蒸気バリア性に優れていることから、ラップフィルムやストレッチフィルムや袋体などして好適に使用することができる。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、以下の実施例により限定されるものではない。なお特性は以下の方法により測定、評価した。
(1)フィルムの構成成分の特定
フィルムサンプルのH−NMR(核磁気共鳴装置)測定、および13C−NMR測定を行い、構成成分を特定した。必要に応じて、フィルムを加水分解、分解物の誘導体化、誘導体物のGC/MS測定を行い、構成される樹脂、添加物について特定した。
また、積層フィルムの場合には、透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)を用いて、加速電圧100kVでシート断面を超薄切片法(必要に応じてRuOで染色)により倍率1万〜10万倍で観察し、その界面をとらえ、積層構成を確認し、各層ごとに切り出し分析を行った。また、必要に応じて、フィルム表面あるいは凍結超薄切片法によりフィルムの断面の顕微IR分析を行い特定した。
(2)フィルムの構成成分の数平均分子量[Mn]
THF(テトラヒドロフラン)溶液に1mg/ccとなるようにサンプルを溶解させ、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィ)を用いてポリスチレン換算で測定した。機器は島津製作所製LC−10Aシリーズで、溶媒はTHF(高速液体クロマトグラフィ用)、検出器はRI検出器(RID−10A)、カラムは昭和電工社製 Shodex(商標)のKF−806LとKF−804L(各300mm×8mmφ)を直列に並べて使用した。カラム温度は30℃、流速は1.0ml/min(Heによるオンライン脱気方式)。標準に用いたポリスチレンはShodex(商標)製ポリスチレンスタンダードで、Std.No.がS−3850、S−1190、S−205、S−52.4、S−13.9、S−1.31の6種類を用いた。これらを3次式近似にて検量線を引き、測定を行った。
(3)柔軟性:フィルムの引張弾性率[GPa]
フィルムサンプルを長手方向150mm、幅方向10mmに切り出し、あらかじめ温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で24時間調湿した。この試料を23℃の雰囲気下でJIS K7161およびJIS K7127に準じて、テンシロン万能試験機UTC−100型(株式会社オリエンテック)を用い、初期長50mm、引張速度300mm/分条件で引張試験を行った。次いで引張試験で得られた応力−歪み曲線の最初の直線部分を用いて、直線上の2点間の応力の差を同じ2点間の歪みの差で除し、計5回の試験を行い、平均値を求め、これを引張弾性率とし、次の基準で評価した。
◎:引張弾性率が0.1以上1.0GPa未満の範囲。
○:引張弾性率が1.0以上1.5GPa未満の範囲。
△:引張弾性率が1.5以上2.0GPa未満の範囲。
×:引張弾性率が2.0以上。
(4)バリア性:透湿度
JIS L1099(1993年制定)のウォータ法(A−2法)を元に、以下の条件で評価を行った。内径60mmのアルミ製の容器内に純水を約20g入れ、フィルムサンプルを開放部に装着しパッキンとリングを取付け蝶ねじで固定する。この状態で重量を秤量し、その後温度2℃、湿度90%に設定した恒温恒湿槽に3日間(72時間)静置する。72時間後に再度重量を秤量し、重量変化から透湿度を算出する。
透湿度(g/(m・日))=静置前後の重量変化(g)/(サンプル面積(m)×3(日))
ここで、サンプル面積は容器の内径から2.83×10−3である。
◎:透湿度が30g/(m・日)以下の数値。
○:透湿度が30g/(m・日)より大きく、40g/(m・日)以下の数値範囲。
△:透湿度が40g/(m・日)より大きく、60g/(m・日)以下の数値範囲。
×:透湿度が60g/(m・日)より大きい数値。
(5)透明性:フィルムのヘーズ値
フィルムサンプルを長手方向40mm、幅方向に30mmに切り出し、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で24時間調湿した。この試料を23℃の雰囲気下でJIS K 7105(1985年)に基づいて、ヘーズメーター(スガ試験器社製HGM−2GP)を用いてヘーズの測定を行った。測定は任意の3ヶ所で行い、その平均値を採用し、次の基準で評価した。
なお、フィルムヘーズ値は、上記測定器により得られるものであり、散乱光透過率を全光線透過率で除し、100を乗じて得られる値である。
◎:ヘーズが3%未満の範囲のもの。
○:ヘーズが3%以上、5%未満の範囲のもの。
△:ヘーズが5%以上、10%未満の範囲のもの。
×:ヘーズが10%を超えるもの。
(6)耐ブリードアウト性:温水処理後の重量変化率[%]
あらかじめ、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で1日以上調湿したプレスシートあるいは2軸延伸フィルムサンプルについて、処理前の重量を測定し、続いて90℃の蒸留水中で30分間処理した後に再度処理前と同様の条件で調湿してから重量を測定した。重量変化率は、処理前後での重量変化(減少)の処理前の重量に対する割合として算出し、次の基準で評価した。
◎:重量変化率が2%未満。
○:重量変化率が2%以上、3%未満の範囲。
△:重量変化率が3%以上、4%未満の範囲。
×:重量変化率が4%以上。
(7)密着性:密着力[N/cm]
サンプルを幅5cm×長10cmを2枚カットし、各端部10mm2を重ね、荷重500gを1分間掛けた後、引張試験機を用い、測定温度23℃、速度100mm/分で引張り試験を行い、最大荷重をサンプル幅で割った値を密着力(N/cm)とし、次の基準で評価した。
測定にあたり、n数は5とし、その平均値を密着力(N/cm)として求めたものである。
◎:密着力が4N/cm以上。
○:密着力が3N/cm以上、4N/cm未満の範囲。
△:密着力が2N/cm以上、3N/cm未満の範囲。
×:密着力が2N/cm未満。
(8)総合評価
透明性、柔軟性、耐ブリードアウト性、バリア性、密着性を総合的に評価し、全ての項目について○または◎評価のものを総合評価◎、全ての項目について△〜◎評価のものを総合評価○、×評価があるものを総合評価×として評価した。
(原料樹脂の製造)
製膜に使用したポリ乳酸樹脂および高分子可塑剤(A)は以下のように準備を行った。
(ポリ乳酸P1)
L−ラクチド100質量部にオクチル酸スズを0.01質量部添加し、窒素雰囲気下185℃で30分間重合し、前駆ポリL−乳酸を得る。この前駆ポリL−乳酸をチップ化したのち、窒素雰囲気下140℃で3時間の固相重合を行い、数平均分子量10万のポリ乳酸P1を得た。ポリ乳酸P1についてDSC測定を行ったところ、ポリ乳酸P1は結晶性を有し、結晶化温度は130℃、融点は171℃であった。
(ポリ乳酸P2)
L−ラクチド65質量部にDL−ラクチド35質量部をオクチル酸スズを0.02質量部添加し、窒素雰囲気下185℃で60分間重合し、その後、ストランド上に吐出しチップ化することで数平均分子量9万のポリ乳酸P2を得た。ポリ乳酸P2についてDSC測定を行ったところ、ポリ乳酸P2は結晶性を示さず、結晶化温度および融点は観測されなかった。
(高分子可塑剤(A)S1)
数平均分子量8000のポリエチレングリコール62質量部とL−ラクチド38質量部とオクチル酸スズ0.025質量部を混合し、窒素雰囲気下150℃で3時間重合することで、ポリエチレングリコールの両末端に数平均分子量2500のポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)S1を得た。
(高分子可塑剤(A)S2)
数平均分子量10000のポリプロピレングリコール62質量部とL−ラクチド38質量部とオクチル酸スズ0.013質量部を混合し、窒素雰囲気下160℃で2.5時間重合することで、ポリプロピレングリコールの両末端に数平均分子量3000のポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)S2を得た。
(高分子可塑剤(A)S3)
数平均分子量4,000のポリプロピレングリコールの両末端にエチレンオキサイドを付加反応させて作成した、数平均分子量10,000のポリプロピレングリコール・エチレングリコールブロック共重合体65質量部とL−ラクチド35質量部に対し、オクチル酸スズ0.015質量部を混合し、撹拌装置付きの反応容器中で窒素雰囲気中160℃で2.5時間重合し、数平均分子量2700のポリ乳酸セグメントを有する、ポリプロピレングリコール・エチレングリコールとポリ乳酸のブロック共重合物、高分子可塑剤(A)S3を得た。
(高分子可塑剤(A)S4)
数平均分子量4,000のポリプロピレングリコールの両末端にエチレンオキサイドを付加反応させて作成した、数平均分子量10,000のポリプロピレングリコール・エチレングリコールブロック共重合体50質量部とL−ラクチド50質量部に対し、オクチル酸スズ0.02質量部を混合し、撹拌装置付きの反応容器中で窒素雰囲気中160℃で3時間重合し、数平均分子量5000のポリ乳酸セグメントを有する、ポリプロピレングリコール・エチレングリコールとポリ乳酸のブロック共重合物、高分子可塑剤(A)S4を得た。
(可塑剤(B)L1)
旭電化工業社製エポキシ化アマニ油ブチルエステル可塑剤アデカサイザー(登録商標)“D−178”を可塑剤(B)L1として用いた。この可塑剤は、融点2℃、30℃での粘度は25mPa・sであった。
(可塑剤(B)L2)
大八化学社製エポキシ化大豆油系可塑剤“SO”を可塑剤(B)L2として用いた。この可塑剤は、融点約3℃、30℃での粘度は300mPa・sであった。
(可塑剤(B)L3)
旭電化工業社製エーテルエステル系可塑剤“RS−1000”を可塑剤(B)L3として用いた。この可塑剤は、融点−41℃、30℃での粘度は40mPa・sであった。
参考例1)
ポリ乳酸樹脂(P1)20質量部とポリ乳酸樹脂(P2)55質量部、高分子可塑剤(A)(S1)15質量部、可塑剤(B)(L1)10質量部の混合物を100℃で6時間、5torrの真空下で減圧乾燥した後、シリンダー温度190℃の2軸混練押出機に供して溶融混練し均質化した後にチップ化した組成物を得た。得られた組成物は透明であった。
この組成物を80℃24時間、5torrの真空下で減圧乾燥した後、スクリュー径30mmの単軸押出機に供給し、押出機シリンダ温度190℃、Tダイ口金温度190℃でフィルム状に押し出し、5℃に冷却したドラム上に静電印加キャストして未延伸フィルムを作製した。
連続して55℃の加熱ロール間で長手方向に3.0倍延伸した後、得られた一軸延伸フィルムをクリップで把持してテンター内に導き、60℃の温度で加熱しつつ横方向に2.8倍延伸し、幅方向に固定した状態で120℃、10秒間の熱処理を行い、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(比較例1)
高分子可塑剤(A)としてポリ乳酸セグメントを持たない数平均分子量8000のポリエチレングリコールを用いること以外は、参考例1と同様にしてフィルムを作成した。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(比較例2)
ポリ乳酸樹脂(P1)20質量部とポリ乳酸樹脂(P2)55質量部、高分子可塑剤(A)(S1)25質量部の混合物を用いること以外は、参考例1と同様にしてフィルムを作成した。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(比較例3)
ポリ乳酸樹脂(P1)25質量部とポリ乳酸樹脂(P2)55質量部、可塑剤(B)(L3)20質量部の混合物を用いること以外は、参考例1と同様にしてフィルムを作成した。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(比較例4)
ポリ乳酸樹脂(P1)20質量部とポリ乳酸樹脂(P2)55質量部、高分子可塑剤(A)(S1)10質量部、可塑剤(B)(L1)15質量部の混合物を用いること以外は、参考例1と同様にしてフィルムを作成した。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例2)
層Aと層BがB/A/Bの構造に積層された積層フィルムとした。
層Aはポリ乳酸(P1)15質量部、ポリ乳酸(P2)55質量部、高分子可塑剤(A)(S1)30質量部を混合して、ベント式二軸押出機に供給し、真空ベント孔から減圧して真空度1torrに維持しながら溶融押出を行った。
一方、層Bはポリ乳酸樹脂(P1)20質量部、ポリ乳酸樹脂(P2)65質量部、可塑剤(B)(L1)15質量部を同じく混合して、ベント式二軸押出機に供給し、溶融押出を行った。
溶融した混合樹脂を400メッシュのスクリーンで異物などを除去した後、ダイ上部に設置したフィードブロックでB/A/B3層積層構造にし、Tダイより5℃の冷却ロール上に吐出した。なお積層厚み比は1:8:1となるように積層を行った。吐出したポリマーはワイヤー電極を使用して静電印加することで冷却ロールに密着させ未延伸フィルムを得た。ついで、加熱ロールを使用して55℃に加熱し、ロールの周速差を利用してフィルム長手方向に3倍延伸した。ついでテンター式横延伸機にフィルムを導入し、60℃にて幅方向に3倍延伸を行った。さらに、そのままテンター内で120℃10秒間の熱処理を行い、フィルム厚み10μmのポリ乳酸フィルムを得た。
(実施例3)
層Aと層BがB/A/Bの構造に積層された積層フィルムとした。層Aはポリ乳酸(P1)14質量部、ポリ乳酸(P2)54質量部、高分子可塑剤(A)(L1)16質量部、高分子可塑剤(A)(L2)16質量部を混合して用い、層Bはポリ乳酸樹脂(P1)15質量部、ポリ乳酸樹脂(P2)65質量部、可塑剤(B)(L1)20質量部を同じく混合して用い、積層厚み比を1:18:1とすること以外は、実施例2と同様の条件でフィルム厚み10μmのポリ乳酸フィルムを得た。
参考例4)
層Aと層BがB/A/Bの構造に積層された積層フィルムとした。層Aはポリ乳酸(P1)15質量部、ポリ乳酸(P2)60質量部、高分子可塑剤(A)(S2)15質量部、可塑剤(B)(L3)10質量部を混合して用い、層Bはポリ乳酸樹脂(P1)20質量部、ポリ乳酸樹脂(P2)55質量部、高分子可塑剤(A)(S1)25質量部を同じく混合して用いること以外は、実施例2と同様の条件でフィルム厚み10μmのポリ乳酸フィルムを得た。
(実施例5)
層Aはポリ乳酸(P1)20質量部、ポリ乳酸(P2)55質量部、高分子可塑剤(A)(S3)25質量部を混合して用い、層Bはポリ乳酸樹脂(P1)20質量部、ポリ乳酸樹脂(P2)55質量部、高分子可塑剤(A)(S1)15質量部、可塑剤(B)(L1)10質量部を同じく混合して用いた。
各々押出機に供給し、層Aと層BがB/A/B、積層厚み比は1:8:1となるようにダイ直径80mm、ダイスリット間隙1mmの環状ダイよりチューブ状に押出し、25℃の水を通水、オーバーフローさせたサイジングリング内面にフィルムを接触させ冷却し、折り幅140mmの未延伸フィルムを得た。
この未延伸フィルムを上下のニップロール間で周速差をつけながら、50℃5秒間の予熱を行った後、チューブ内に封入した空気の圧力により、長手方向3.0倍、幅方向2.8倍に同時二軸延伸し、エアリングにて20℃の冷却空気を吹き付けて固化させ、延伸フィルムを得た。さらにフィルムの片側端面をスリット、展開し、ニップロールで把持しながら100℃の加熱ロールで熱処理しフィルム厚み10μmのポリ乳酸フィルムを得た。
(実施例6)
実施例5と同様の原料を用い、各々押出機に供給し、層Aと層BがB/A/B、積層厚み比は1:8:1となるようにダイ直径80mm、ダイスリット間隙0.8mmの環状ダイよりチューブ状に押出し、下方のニップロールで引き取りながら、チューブ内に封入した空気の圧力により、長手方向3.0倍、幅方向2.4倍に同時二軸延伸し、エアリングにて20℃の冷却空気を吹き付けて固化させ、インフレーション延伸フィルムを得た。
さらにフィルムの片側端面をスリット、展開し、ニップロールで把持しながら80℃の加熱ロールで熱処理しフィルム厚み15μmのポリ乳酸フィルムを得た。
(実施例7)
層Aはポリ乳酸(P1)10質量部、ポリ乳酸(P2)45質量部、高分子可塑剤(A)(S4)45質量部を混合して用い、層Bはポリ乳酸樹脂(P1)20質量部、ポリ乳酸樹脂(P2)65質量部、可塑剤(B)(L1)15質量部を同じく混合して用いること以外は、実施例5と同様にしてフィルム厚み10μmのポリ乳酸フィルムを得た。
(実施例8)
層Aおよび層Bの各層にカルナウバワックスをそれぞれポリ乳酸樹脂と可塑剤の合計100質量部に対しワックス化合物を1質量部配合すること以外は、実施例2と同様にしてフィルム厚み10μmのポリ乳酸フィルムを得た。
(実施例9)
層Aはポリ乳酸(P1)15質量部、ポリ乳酸(P2)55質量部、高分子可塑剤(A)(S1)15質量部、高分子可塑剤(A)(S2)15質量部、さらにポリ乳酸樹脂と可塑剤の合計100重量部に対しカルナウバワックス1質量部、タルク(平均長径1.0μm、異形度10)粒子4質量部を混合して用い、層Bはポリ乳酸樹脂(P1)15質量部、ポリ乳酸樹脂(P2)65質量部、可塑剤(B)(L1)20質量部、さらにポリ乳酸樹脂と可塑剤の合計100質量部に対しカルナウバワックス1質量部、タルク(平均長径1.0μm、異形度10)粒子4質量部を同じく混合して用い、積層厚み比を1:18:1とすること以外は、実施例6と同様にしてフィルム厚み18μmのポリ乳酸フィルムを得た。
Figure 0005396688
Figure 0005396688
なお、表1中の記号は以下の意味である。
P1 :ポリ乳酸P1
P2 :ポリ乳酸P2
S1 :高分子可塑剤(A)S1
S2 :高分子可塑剤(A)S2
S3 :高分子可塑剤(A)S3
S4 :高分子可塑剤(A)S4
PEG:ポリエチレングリコール
L1 :可塑剤(B)L1
L2 :可塑剤(B)L2
L3 :可塑剤(B)L3
WAX:カルナウバワックス
粒子 :タルク粒子
表1より、実施例では柔軟性、透明性、耐ブリードアウト性、密着性に優れるだけでなく、水蒸気バリア性が極めて優れていた。
一方、比較例1では、ポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)ではないため、耐ブリードアウト性が劣るとともに水蒸気バリア性も劣るものであった。
また比較例2では、耐ブリードアウト性は良好であるものの、可塑剤としてポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)しか含有していないため、水蒸気バリア性が不良であった。
比較例3では、ポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)を有さず、また比較例4では、ポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)が可塑剤(B)よりも少ない構成であるため、柔軟性、透明性は良好であるものの、耐ブリードアウト性が不良であった。
比較例1〜3のように水蒸気バリア性が劣る場合、おにぎり等の食品を包んだ際など、乾燥が進行し固くなるなどの問題が発生する。
また実施例6のフィルムは、長手方向、幅方向の平均で420%の引張伸度を有し、ストレッチフィルムとしての良好な特性を有していた。
また実施例9のフィルムは、ラップフィルムとしての密着性がやや劣るものの、バリア性が良好であるとともにフィルムの滑り性が良好であり、かつヒートシール性を有していることから柔軟性、バリア性の良好な袋体等の包装用フィルムとして良好な特性を有していた。
本発明のポリエステルフィルムは、ラップフィルムやストレッチフィルム、袋体など物品や食品の包装用フィルムとして好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. フィルムが3層以上からなり、表層が内層よりも可塑剤(B)の含有量が多く、
    表層と内層が、共に結晶性を有するホモポリ乳酸と非晶性のホモポリ乳酸を併用し、
    ポリ乳酸樹脂と可塑剤の合計100質量%において、ポリ乳酸樹脂50〜95質量%と可塑剤5〜50質量%からなるポリエステルフィルムであって、
    該可塑剤は、ポリ乳酸セグメントを有する高分子可塑剤(A)と、融点が30℃以下の可塑剤(B)を有しており、
    高分子可塑剤(A)量が可塑剤(B)量よりも多く、
    高分子可塑剤(A)が、1分子中に数平均分子量が1500〜10000であるポリ乳酸セグメントを1つ以上有し、かつ、数平均分子量が1000〜10000であるポリエーテル系セグメントを有し、
    引張弾性率が0.1〜2GPaのポリエステルフィルム。
  2. 可塑剤(B)が、エポキシ化植物油系可塑剤である、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
  3. 高分子可塑剤(A)として、炭素数3以上のアルキレングリコール成分を有する高分子可塑剤(A)を含有してなる、請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
  4. 透湿度が0〜40g/(m・日)である、請求項1〜のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
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