JP2003231798A - 乳酸系樹脂組成物とそのシート状物、及び袋状製品 - Google Patents
乳酸系樹脂組成物とそのシート状物、及び袋状製品Info
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Abstract
的特性と、優れた耐熱性、湿熱耐久性を有する乳酸系樹
脂シート状物と、これを製造するために用いられる乳酸
系樹脂樹脂組成物を提供すること。 【解決手段】 乳酸系樹脂組成物は、主成分として、乳
酸系樹脂67質量%〜96質量%と、常圧における沸点
が220℃以上であるか、あるいは5Torr〜10T
orrにおける沸点が170℃以上である可塑剤4質量
%〜33質量%とを含む。また、乳酸系樹脂シート状物
は、この乳酸系樹脂組成物からなるシート状物を少なく
とも一方向に延伸したものであり、20℃における貯蔵
弾性率が500MPa〜3,000MPaであり、温度
120℃で15分間加熱した後の加熱収縮率がTD及び
MD共に10%以下であることが好ましい。
Description
とそのシート状物及び袋状製品に関し、特に、可塑剤を
混合した乳酸系樹脂組成物とそのシート状物及び乳酸系
樹脂シート状物から形成された袋状製品に関する。
ることが多く、焼却や埋立て等の処分が問題となってい
る。すなわち通常のプラスチックは、自然環境中で長期
にわたって安定であり、しかも嵩比重が小さいため、廃
棄物埋め立て処理地の短命化を促進したり、自然の景観
や野生動植物の生活環境を損なうという問題点が指摘さ
れていた。そのため、自然環境下で経時的に分解、消失
する材料の研究が行われている。このような材料として
今日注目を集めているのは、生分解性プラスチックであ
る。生分解性プラスチックは土壌中や水中で加水分解や
生分解によって徐々に崩壊、分解し、最終的には微生物
の作用によって無害な分解物となることが知られてい
る。実用化され始めている生分解性プラスチックとして
は、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル、変性PVA、セル
ロースエステル化合物、デンプン変性体、及びこれらの
ブレンド体等があり、特に乳酸系樹脂はコストパフォー
マンスが良く、植物由来原料から得られること等の点か
ら大きな注目を集めている。
を活かし、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフ
タレート(PET)等の代替品として、とりわけ、特開
平7−207041号公報に開示されているように延伸
フィルム分野において利用され始めている。一方、汎用
フィルムとして広く使われているプロピレン延伸フィル
ム(OPP)は、食品包装をはじめとする電子、医療、
薬品、化粧品等の各種包装用フィルム、農業用フィル
ム、工業用保護フィルム、粘着テープ等に広く使われて
おり、2次加工工程や実用において、フィルムの柔軟
性、良好な溶断シール強度、耐熱性、湿熱耐久性等の特
性が要求される。ところが乳酸系樹脂からなるフィルム
は、OPPの代替品としては、硬すぎたり、溶断シール
強度が低すぎる。特表平8−501584号公報、特開
平7−177826号公報に、乳酸系樹脂に可塑剤を添
加することにより柔軟性等を改良する技術が開示されて
いる。しかし、これらの技術では、耐熱性(熱寸法安定
性)が乏しかったり、湿熱耐久性が乏しく実用的でな
い。また、溶断シール袋の作製のためには、溶断シール
機に対する適性が良好ではなかった。
解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、乳酸
系樹脂が本来有している生分解性に加え、OPPに類似
した物理的特性と、優れた耐熱性、湿熱耐久性を有する
シート状物及び袋と、これらを製造するために用いられ
る乳酸系樹脂組成物を提供することにある。
物は、主成分として、乳酸系樹脂67質量%〜96質量
%と、常圧における沸点が220℃以上であるか、ある
いは5Torr〜10Torrにおける沸点が170℃
以上である可塑剤4質量%〜33質量%とを含むことを
特徴とする。ここで、可塑剤はジグリセリンテトラアセ
テートであることができる。また、さらにカルボジイミ
ド化合物を、乳酸系樹脂と可塑剤との合計量100質量
%に対し0.1質量%〜10質量%の範囲内で混合する
ことができる。本発明の乳酸系樹脂シート状物は、上記
乳酸系樹脂組成物からなるシート状物であって、少なく
とも一方向に延伸されていることを特徴とする。ここ
で、20℃における貯蔵弾性率は500MPa〜3,0
00MPaであり、温度120℃で15分間加熱した後
の加熱収縮率はTD及びMD共に10%以下であること
が好ましい。また、温度40℃、湿度80%RHの雰囲
気下に4週間保管された後の乳酸系樹脂の重量平均分子
量保持率が80%以上であることができる。本発明の袋
状製品は、蒸気乳酸系樹脂シート状物を用いて形成した
ことを特徴とする。
本発明の乳酸系樹脂組成物は、乳酸系樹脂67質量%〜
96質量%と可塑剤4質量%〜33質量%とを主成分と
して含む。ただし、乳酸系樹脂と可塑剤とは合計で10
0質量%となるように混合する。可塑剤の混合量が4質
量%より少ないとシート状物の軟質化が進まず、33質
量%より多いと、シート状物を溶融押し出しする際に粘
度が下がり過ぎたり、耐熱性が得られないという問題が
生じる。したがって、可塑剤の混合量が上記範囲外で
は、OPP類似のシート状物としての特性が付与されな
い。
位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−
乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及び
D−乳酸の両方である共重合体、すなわちポリ(DL−
乳酸)や、これらの混合体であり、さらには、α−ヒド
ロキシカルボン酸等の他のヒドロキシカルボン酸単位と
の共重合体であっても、脂肪族ジオール/脂肪族ジカル
ボン酸との共重合体であってもよい。ただし、乳酸系樹
脂のD乳酸(D体)とL乳酸(L体)との構成比は、L
体:D体=100:0〜90:10、もしくは、L体:
D体=0:100〜10:90であることが好ましい。
D体とL体との構成比がこの範囲外では、シート状物の
耐熱性が得難い。
比が異なる乳酸系樹脂をブレンドしてもよい。この場合
には、複数の乳酸系樹脂のL体とD体との共重合比の平
均値が上記範囲内に入るようにすれば良い。L体又はD
体のホモポリマーと、共重合体をブレンドすることによ
り、ブリードのしにくさと耐熱性の発現とのバランスを
とることができる。
カルボン酸単位としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸
に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸)、
グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪
酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ3,3
−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ3−メチル酪酸、2−
メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪
族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラク
トン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。乳
酸系樹脂に共重合される脂肪族ジオールとしては、エチ
レングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シ
クロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、脂肪
族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベ
リン酸、セバシン酸及びドデカン二酸等が挙げられる。
0万の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは
10万〜25万である。乳酸系樹脂の重量平均分子量が
5万未満では実用物性が発現されにくく、40万より大
きい場合には溶融粘度が高すぎて成形加工性に劣ること
がある。
法、開環重合法など公知のいずれの方法も採用すること
ができる。例えば、縮合重合法ではL−乳酸又はD−乳
酸、あるいはこれらの混合物を、直接脱水縮合重合して
任意の組成を有する乳酸系樹脂を得ることができる。ま
た、開環重合法では乳酸の環状二量体であるラクチド
を、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、適宜選択
された触媒を使用して乳酸系樹脂を得ることができる。
ラクチドにはL−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D
−乳酸の2量体であるD−ラクチド、さらにL−乳酸と
D−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要
に応じて混合して重合することにより任意の組成、結晶
性を有する乳酸系樹脂を得ることができる。
るために、少量の共重合成分を添加することもでき、テ
レフタル酸等の非脂肪族ジカルボン酸、ビスフェノール
Aのエチレンオキサイド付加物等の非脂肪族ジオール等
を用いることもできる。さらにまた、分子量増大を目的
として、少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化
合物、エポキシ化合物、酸無水物等を使用することもで
きる。
る目的で、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の脂肪族
ポリエステル樹脂、脂肪族芳香族ポリエステル樹脂等
を、乳酸系樹脂に対して同量以下でブレンドすることも
できる。脂肪族ポリエステル樹脂としては、乳酸系樹脂
を除く脂肪族ポリエステル樹脂、例えば、脂肪族ジオー
ルと脂肪族ジカルボン酸を縮合して得られる脂肪族ポリ
エステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエ
ステル、合成系脂肪族ポリエステル等が挙げられる。脂
肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を縮合して得られる
脂肪族ポリエステルは、脂肪族ジオールであるエチレン
グリコール、1,4−ブタンジオール及び1,4−シク
ロヘキサンジメタノール等と、脂肪族ジカルボン酸であ
るコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸及び
ドデカン二酸等の中から、それぞれ1種類以上を選択し
て縮合重合することにより得られる。必要に応じてイソ
シアネート化合物等でジャンプアップして所望のポリマ
ーを得ることができる。また、耐熱性や機械的強度を高
めるために、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸等
の芳香族モノマー成分を50モル%以下の範囲で共重合
することもできる。例えば、イーストマンケミカル社製
のイースターバイオや、BASF社製のエコフレックス
等が例示される。環状ラクトン類を開環重合した脂肪族
ポリエステルとしては、環状モノマーであるε−カプロ
ラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレ
ロラクトン等から1種類以上選択されて重合された脂肪
族ポリエステル等が挙げられる。合成系脂肪族ポリエス
テルとしては、環状酸無水物とオキシラン類、例えば、
無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピレンオキサ
イド等との共重合体等が挙げられる。
ト又はフィルムをいう。JISにおける定義上、シート
とは薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりに小さく平
らな製品をいい、フィルムとは、長さ及び幅に比べて厚
さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄
い平らな製品で、通例、ロールの形で供給されるものを
いう(JIS K 6900)。したがって、シートの
中でも厚さの特に薄いものがフィルムであるといえる。
しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、明確に
区別しにくいので、本発明においては、上記のとおり、
シートとフィルムの両方を含んだ概念として「シート状
物」の用語を使用する。
分解性の観点から、下記(1)〜(10)に示される化
合物の中から少なくとも1種類選ばれてなることが好ま
しい。 (1) H5C3(OH)3-n(OOCCH3)n 0<n≦3 これは、グリセリンのモノアセテート、ジアセテート又
はトリアセテ−トであり、これらの混合物でも構わな
い。ただし、nは3に近い方が好ましい。 (2)グリセリンアルキレート(アルキル基は炭素数2
〜20であり、水酸基の残基があってもよい)又はジグ
リセリンテトラアルキレート。例えば、グリセリントリ
プロピオネート、グリセリントリブチレート、ジグリセ
リンテトラアセテート、アセチル化モノグリセライド変
性物(理研ビタミン(株)製のPL009)等が挙げら
れる。 (3)エチレングリコールアルキレート (アルキル基は
炭素数1〜20であり、水酸基の残基があってもよ
い)。例えば、エチレングリコールジアセテート等が挙
げられる。 (4)エチレン繰り返し単位が5以下のポリエチレング
リコールアルキレート (アルキル基は炭素数1〜20で
あり、水酸基の残基があってもよい)。例えば、ジエチ
レングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール
ジアセテート等が挙げられる。 (5)脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル(アルキ
ル基は炭素数1〜20)。例えば、ステアリン酸ブチル
等が挙げられる。 (6)脂肪族ジカルボン酸アルキルエステル(アルキル
基は炭素数1〜20であり、カルボキシル基の残基があ
ってもよい)。例えば、ジ(2−エチルヘキシル)アジペ
ート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート等が挙げられ
る。 (7)芳香族ジカルボン酸アルキルエステル(アルキル
基は炭素数1〜20であり、カルボキシル基の残基があ
ってもよい)。例えば、ジブチルフタレート、ジオクチ
ルフタレート等が挙げられる。 (8)脂肪族トリカルボン酸アルキルエステル(アルキ
ル基は炭素数1〜20であり、カルボキシル基の残基が
あってもよい)。例えば、クエン酸トリメチルエステル
等が挙げられる。 (9)重量平均分子量2万以下の低分子量脂肪族ポリエ
ステル。例えば、コハク酸とエチレングリコール/プロ
ピレングリコール縮合体(大日本インキ(株)によって
「ポリサイザ−」の商品名で販売されている)等が挙げ
られる。 (10)天然油脂及びそれらの誘導体。例えば、大豆
油、エポキシ化大豆油、ひまし油、桐油、菜種油等が挙
げられる。
220℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは
250℃以上である。あるいは、5〜10Torrにお
ける沸点が170℃以上であることが好ましく、さらに
好ましくは180℃以上である。常圧における沸点が2
20℃未満か、あるいは5〜10Torrにおける沸点
が170℃未満では、耐熱性を得るために必要なD体と
L体との比を有する乳酸系樹脂の融点との関係におい
て、乳酸系樹脂を溶融押出加工する際に、押出温度で可
塑剤が揮発しやすくなる。また、可塑剤の溶解性パラメ
ータ(SP値)が9.0〜11.0の範囲内のものが、
乳酸系樹脂に対する相溶性の観点から好ましい。本発明
に用いられる可塑剤としては、ブリードのしにくさ、衛
生性、経済性等の観点からジグリセリンテトラアセテー
ト(5Torrの沸点が193℃、SP値が10.3)
が特に好ましい。
して使用するためには、湿熱耐久性を有することが必要
である。乳酸系樹脂に可塑剤を入れた樹脂組成物は、通
常、大気雰囲気下で空気中の水分のアタックを受けて、
乳酸系樹脂の重量平均分子量の低下が進行する。乳酸系
樹脂の組成や可塑剤の種類にもよるが、シート状物を延
伸することにより結晶化構造が成長して、分子が水のア
タックを受けにくくなり、温度40℃、湿度80%RH
の雰囲気において4週間保管された後の乳酸系樹脂の重
量平均分子量保持率が、実用上問題のない80%以上に
なる。なお、重量平均分子量保持率とは、所定温度、所
定湿度下保管した後の重量平均分子量を保管前の重量平
均分子量で割った値を百分率で示したものである。
脂組成物に、乳酸系樹脂と可塑剤との総量100質量部
に対し、カルボジイミド化合物を0.1〜10質量部添
加することが望ましい。かかる樹脂組成物を用いて形成
されたシート状物は高い湿熱耐久性を有する。カルボジ
イミド化合物の添加量が0.1質量部以上であれば湿熱
耐久性の改良効果が十分に発現され、10質量部以下で
あればカルボジイミド化合物のブリードアウトによりシ
ート状物の外観不良や機械的物性の低下が生じることが
なく、また生分解性が著しく損なわれることもない。カ
ルボジイミド化合物としては、下記一般式の基本構造を
有するものが挙げられる。 −(N=C=N−R−)n− ただし、上記一般式において、nは1以上の整数を示
す。Rはその他の有機系結合単位を示し、例えば脂肪
族、脂環族、芳香族のいずれかであることができる。ま
た、nが2以上の整数である場合に、2以上のRは同一
でも異なっていてもよい。高温多湿下における加水分解
性を防止するためには、nが大きい方が好ましく、特に
nが10〜100の範囲内であることが好ましい。nが
10未満では高温で速く失活する傾向にあり、100よ
り大きいと、可塑剤を添加した時に白濁したり、耐加水
分解性の改良効果が乏しかったり、製造コストが高くな
る場合がある。また、常温大気中における耐加水分解性
付与を目的とする場合には、nが1〜30の範囲内であ
ることが好ましい。かかる範囲内であれば、低温での効
果も得られる。具体的には、例えば、ポリ(4,4'−
ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニ
レンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジ
イミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイ
ソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチル
−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ
(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等、及
び、これらの単量体が挙げられる。カルボジイミド化合
物は、単独、又は、2種以上組み合わせて用いられる。
剤、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、顔料、着色剤、
滑剤、核剤、無機フィラー等の添加剤を添加することが
できる。
造方法について説明する。乳酸系樹脂及び可塑剤等の混
合は、同一の押出機にそれぞれの原料を投入して行うこ
とができる。押出機の口金からそのまま押出して直接フ
ィルムを作製する方法、あるいはストランド形状に押し
出してペレットを作製した後、再度押出機を用いてフィ
ルムを作製する方法がある。いずれの方法においても原
料の分解による分子量の低下を考慮する必要があるが、
均一に混合させるためには後者を選択することが好まし
い。乳酸系樹脂はL−乳酸とD−乳酸の組成比によって
融点が変化すること、可塑剤の混合の割合によって樹脂
組成物の融点が変化すること等を考慮して、溶融押出温
度を適宜選択することが好ましい。通常、100〜25
0℃の温度範囲が選択される。
回転するキャスティングドラム(冷却ドラム)に接触さ
せて急冷することが好ましい。乳酸系樹脂と可塑剤との
混合割合や、これらの樹脂の性質によって適宜選択され
ることが好ましいが、例えば、キャスティングドラムの
温度は60℃以下が適当である。キャスティングドラム
の温度が60℃以下ならば、シート状物がキャスティン
グドラムに粘着して引き取れなかったり、ポリ乳酸部分
の結晶化が促進されて延伸できなくなるという不都合な
事態は生じない。従って、キャスティングドラムの温度
が60℃以下において急冷し、ポリ乳酸部分を実質上非
晶性にすることが好ましい。
延伸される。本発明の延伸フィルムは、通常の延伸フィ
ルム成形法であれば、任意の方法をとることが可能であ
る。原料となる樹脂組成物を同方向2軸押出機、ニーダ
ー、ヘンシェルミキサー等を用い、予めプレコンパウン
ドしても構わないし、樹脂組成物を構成する乳酸系樹
脂、可塑剤等をドライブレンドした後、押出機に投入し
ても構わない。可塑剤等の液状成分は固体成分をブレン
ドするときに同時にブレンドしても良いが、固体成分と
は別に、ポンプ等を用いて押出機のベント口から注入し
てもよい。延伸方法としてはシート状物を周速差のある
2個のロール間で延伸するロール延伸法や、テンターを
用いクリップでシートを把持しながらクリップ列の列間
隔を拡大させて延伸するテンター延伸法、チューブラー
法、インフレーション法等が、適宜、必要に応じて組み
合わせて採用される。二軸延伸する場合には、同時延伸
法あるいは逐次延伸法が採用される。延伸条件は、シー
ト状物の温度が20〜140℃であることが好ましく、
さらに好ましくは40〜110℃であり、延伸倍率が
1.5倍〜5.0倍の範囲内であることが好ましい。か
かる範囲内であれば、シート状物の破断や白化が生じた
り、ドローダウンが生じる等のトラブルが発生すること
がない。
ト状物を延伸した後、幅固定で熱処理を行うことが望ま
しい。熱処理条件は、温度が70〜160℃であること
が好ましく、さらに好ましくは90〜140℃、特に好
ましくは100〜140℃であり、処理時間が5秒〜5
分の範囲内であることが好ましい。温度が70℃未満で
は熱処理効果を得にくく、160℃より上回るとシート
状物がドローダウンしやすい。処理時間が5秒未満では
熱処理効果が得にくく、5分を上回ると熱処理設備が長
大なものになり、経済性が低下する。
塑剤の種類の選択、延伸及び熱処理等により、温度12
0℃で15分間加熱処理した後の加熱収縮率をTD、M
D共に10%以下にすることができる。シート状物の加
熱収縮率が、TDが10%以下、かつMDが10%以下
であれば、耐熱性(熱寸法安定性)に優れ、印刷、製袋
等の2次加工中や、場合によっては保管中にシート状物
が収縮したり、波打ちやカール等の不具合が発生するこ
ともない。ここで、「TD」はシート状物の幅方向(横
方向)を示し、「MD」はシート状物の長手方向(縦方
向)を示す。
周波数10Hz、温度20℃で測定したシート状物の貯
蔵弾性率(E’)が500MPa〜3,000MPaの
範囲内にあることが好ましい。貯蔵弾性率(E’)が5
00MPa未満では、過度に柔らかくて変形しやすいの
で、印刷、製袋等の2次加工時にロールテンションによ
ってシート状物が伸びて位置ずれやカールを起こした
り、自己支持性が乏しく商品のディスプレー効果に劣る
場合がある。また、貯蔵弾性率E’が3,000MPa
を越えると硬くて伸びにくいシート状物になるので、2
次加工時にシワが入りやすかったり、使用時にカサカサ
した感じを受けることがある。OPP類似の特性や風合
いを求める場合には、シート状物の貯蔵弾性率(E’)
が500MPa〜3,000MPaの範囲内にあること
が好ましい。シート状物の貯蔵弾性率(E’)をかかる
範囲にするためには、可塑剤の量を4〜33質量%の範
囲内にすることが最も重要であるが、乳酸系樹脂の組
成、可塑剤の種類、成形加工条件の組み合わせ等を適宜
調整することにより、貯蔵弾性率を所定の範囲内にする
ことができる。
ート状物の原料として好適であり、形成された本発明の
乳酸系樹脂シート状物は、OPPに類似の物性を有し、
溶断シール加工に適しており袋状製品を製造することが
できる。可塑剤を含まない乳酸系樹脂を2軸延伸したシ
ート状物は硬すぎて伸びにくいので寸法差の吸収しろが
乏しく製袋時にシワが入りやすいが、本発明の乳酸系樹
脂シート状物は製袋時にシワが入ることもなく良好に加
工することができる。また、可塑剤を含まない乳酸系樹
脂を2軸延伸したシート状物は溶断シール強度が出にく
いが、本発明の乳酸系樹脂シート状物は、OPPと同程
度の溶断シール強度を有する。
的に説明する。なお、本発明は以下に記載される事項に
よって、限定されるものではない。実施例中に示す測定
値や評価は下記に示すような条件で測定等を行った。
S−F3」を用い、振動周波数10Hz、温度20℃
で、シート状物のMDについて貯蔵弾性率を測定した。 (2)引張強度と伸び JIS K 7127に基づいて引張試験を行い、シー
ト状物が破断した時の強度と伸びを測定した。試験サン
プルとしては2号試験片を用い、引張り速度100mm
/minで5回測定し、その平均値を求めた。 (3)耐熱性(加熱収縮率) シート状物片を120℃のオーブン中に15分間吊り下
げ、下記式に基づいて、加熱収縮率を求めた。ただし、
オーブンで加熱する前のシート状物の長さをL1,加熱
処理後のシート状物の長さをL2とした。 加熱収縮率(%)=(L1−L2)/L1×100 (4)湿熱耐久性(重量平均分子量保持率) あらかじめ乳酸系樹脂の重量平均分子量を測定したシー
ト状物片を、温度80℃、湿度40%RHに調整した恒
温恒湿槽(タバイエスペック(株)製、恒温恒湿器LH
−112)中に4週間静置し、下記式に基づいて重量平
均分子量保持率を求めた。重量平均分子量保持率が80
%以上のものは湿熱耐久性に優れている。 (5)乳酸系樹脂の重量平均分子量 東ソー(株)製のゲルパーミエーションクロマトグラフ
ィー「HLC−8120GPC」に、(株)島津製作所
製のクロマトカラムShim−Packシリーズの「G
PC−800CP」を装着し、溶媒としてクロロホルム
を、溶液濃度0.2wt/vol質量%となるように、
溶液注入量200μL、溶媒流速1.0mL/分、溶媒
温度40℃で測定を行い、ポリスチレン換算により乳酸
系樹脂の重量平均分子量を算出した。用いた標準ポリス
チレンの重量平均分子量は、2,000,000、67
0,000、110,000、35,000、10,0
00、4,000、600である。 (6)ヘイズ JIS K 7105に基づいて、全光線透過率及び拡
散透過率を求め、以下の式を用いて算出した。 ヘイズ(%)=拡散透過率/全光線透過率 ×100 (7)溶断シール製袋機適性 トタニ技研(株)製の溶断シール製袋機「HK65V」
において、幅500mmのシート状物をロール状に巻回
したサンプルを用い、間口100mm×長さ250mm
のサイドシール袋を最適条件で1000枚作製した。得
られた袋の外観を目視し、以下の評価基準に基づいて評
価を行った。 評価基準: ○ シワやカールの発生がない袋が、900〜100
0枚できた △ シワやカールの発生がない袋が、700〜899
枚できた × シワやカールの発生がない袋が、699枚以下し
かできなかった
た。ピューラックジャパン社製のL−ラクチド(商品名
「PURASORB L」)97kgと同社製のDL−
ラクチド(商品名「PURASORB DL」)3kg
に、オクチル酸スズを15ppm添加し、攪拌機と加熱
装置とを備えた500Lのバッチ式重合槽に入れた。次
いで窒素置換を行い、温度185℃、攪拌速度100r
pmで60分間重合を行った。得られた溶融物を、真空
ベントを3段備えた三菱重工社製の40mmφ、同方向
2軸押出機に供し、ベント圧4torrで脱気しなが
ら、200℃でストランド状に押し出してペレット化
し、ペレット形状の乳酸系樹脂を得た。得られた乳酸系
樹脂は、重量平均分子量が20万、L体含有量が98.
6%であった。次に、得られた乳酸系樹脂と、可塑剤と
してジグリセリンテトラアセテート(理研ビニル(株)
製のリケマールPL710)とを87:13(質量%)
で混合し、三菱重工(株)製の40mmφ小型同方向二
軸押出機を用いて温度180℃でコンパウンドし、ペレ
ット形状にした。得られたペレットを三菱重工(株)製
の110mmφ単軸押出機を用いてTダイを介してバレ
ル温度200℃で押出し、30℃のキャスティングロー
ルを用いて急冷し、300μm厚のシート状物を得た。
引き続き、三菱重工(株)製の逐次2軸テンターを用い
て、温度50℃でMD、TDにそれぞれ延伸倍率2.5
倍で延伸を行った後、140℃で15秒熱処理を行い、
膜厚50μmの延伸したシート状物を得た。得られた乳
酸系樹脂シート状物について、貯蔵弾性率(E’)、引
張強度と伸び、加熱収縮率、ヘイズ、溶断シール製袋機
適性の測定と評価を行った。その結果を表1に示す。
酸系樹脂と、可塑剤としてジグリセリンテトラアセテー
ト(理研ビニル(株)製のリケマールPL710)とを
84質量%:16質量%とした以外は実施例1と同様に
して、乳酸系樹脂シート状物を作成した。得られた乳酸
系樹脂シート状物について、実施例1と同様の測定と評
価を行った。その結果を表1に示す。
た乳酸系樹脂と、可塑剤としてアセチル化モノグリセラ
イド変性物(理研ビタミン(株)製の「PL009」、
5Torrの沸点193℃、SP値9.70)とを、そ
れぞれ87:13及び84:16の割合で混合した以外
は実施例1と同様にして、実施例3及び実施例4の乳酸
系樹脂シート状物を得た。得られた実施例3及び実施例
4のシート状物のそれぞれについて、実施例1と同様の
測定と評価を行った。その結果を表1に示す。
酸系樹脂と、可塑剤としてグリセリントリアセテート
(大八化学(株)製の「トリアセチン」、常圧における
沸点258℃、SP値10.24)とを、93:7の割
合で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例5の
乳酸系樹脂シート状物を得た。得られた実施例5のシー
ト状物について、実施例1と同様の測定と評価を行っ
た。その結果を表1に示す。
剤の添加量をそれぞれ3質量%、35質量%に変更した
以外は実施例1と同様にして、比較例1及び比較例2の
膜厚50μmのシート状物を得た。得られたシート状物
のそれぞれについて、実施例1と同様の測定と評価を行
った。その結果を表1に示す。
ドして得られたペレットに、スタバクゾール(バイエル
社製の商品名「スタバクゾールP−100」、一般式
−(N=C=N−R−N=C=N−R’)n−;重合度
n≒28、Rは2,5−ジイソプロピルフェニル基、
R’はフェニル基である)を2.0質量部ドライブレン
ドした以外は実施例1と同様にして、乳酸系樹脂シート
状物を得た。得られた乳酸系樹脂シート状物について湿
熱耐久性試験を行った。その結果を表2に示す。
ート状物について湿熱耐久性の評価を行い、重量平均分
子量保持率を求めた。その結果を表2に示す。
酸系樹脂と、可塑剤としてジグリセリンテトラアセテー
ト(理研ビニル(株)製のリケマールPL710)とを
87:13(質量%)で混合した。これを、三菱重工
(株)製の40mmφ小型同方向二軸押出機を用いて1
80℃でコンパウンドし、ペレット形状にした。得られ
たペレットを三菱重工(株)製の110mmφ単軸押出
機を用いてTダイを介してバレル温度200℃で押出
し、キャスティングロールを用いて30℃に急冷し、膜
厚50μmの無延伸シート状物を得た。得られたシート
状物について、実施例6と同様にして湿熱耐久性の評価
を行った。その結果を表2に示す。
乳酸系樹脂シート状物はMD及びTDの伸びがそれぞれ
100%以上であり、耐破断性に優れており、また、加
熱収縮率がMD及びTD共に10%以下であり、耐熱性
(熱安定性)に優れていることが分かった。また、実施
例1〜5の乳酸系樹脂シート状物はヘイズが15%以下
であり、透明性に優れていることが分かった。さらに、
実施例1〜5の乳酸系樹脂シート状物は貯蔵弾性率
(E’)が500〜3,000MPaの範囲内であり、
溶断シール製袋機適性が良好であることが分かった。一
方、比較例1のシート状物は貯蔵弾性率(E’)が3,
000MPaより大きいので伸びにくいシート状物であ
り、2次加工時にシワが入りやすいことが分かった。比
較例2の乳酸系樹脂シート状物は、加熱収縮率がMD及
びTDともに10%より大きく耐熱性に問題があり、ま
た、貯蔵弾性率(E’)が500MPaより小さいの
で、2次加工時にシート状物が伸びて位置ずれやカール
が発生しやすく、溶断シール製袋機適性に劣っているこ
とが分かった。また、表2から明らかなように、本発明
の乳酸系樹脂シート状物は貯蔵弾性率が80%以上であ
り、湿熱耐久性に優れていることが分かった。一方、比
較例3の未延伸のシート状物は本発明の乳酸系樹脂シー
ト状物より貯蔵弾性率が劣っていることが分かった。な
お、実施例2〜4の乳酸系樹脂シート状物についても湿
熱耐久性の評価を行ったところ、重量平均分子量保持率
は80%以上であった。
の乳酸系樹脂組成物を用いて形成された乳酸系樹脂シー
ト状物や袋状製品は、OPPに類似した物理的特性を有
し、耐熱性(熱安定性)、湿熱耐久性に優れている。本
発明の乳酸系樹脂組成物はポリ乳酸系樹脂と可塑剤とを
主成分とするため生分解性を有し、自然環境中に廃棄さ
れた場合でも生分解され、自然環境に悪影響を与えな
い。また、本発明の乳酸系樹脂組成物は熱収縮性フィル
ムとして従来使用されていたポリエチレン系樹脂等と比
較して燃焼カロリーが低いので、仮に焼却処理された場
合でも、焼却炉を傷めにくい。すなわち、本発明によ
り、自然環境に負荷をかけない生分解性の、OPPに類
似した物理的特性と優れた耐熱性、湿熱耐久性を有する
乳酸系樹脂組成物、シート状物、袋状製品を提供するこ
とができ、包装材や工業材分野に適用することができ
る。
Claims (7)
- 【請求項1】 主成分として、乳酸系樹脂67質量%〜
96質量%と、常圧における沸点が220℃以上である
か、あるいは5Torr〜10Torrにおける沸点が
170℃以上である可塑剤4質量%〜33質量%とを含
むことを特徴とする乳酸系樹脂組成物。 - 【請求項2】 前記可塑剤がジグリセリンテトラアセテ
ートであることを特徴とする請求項1に記載の乳酸系樹
脂組成物。 - 【請求項3】 さらにカルボジイミド化合物を、乳酸系
樹脂と可塑剤との合計量100質量%に対し0.1質量
%〜10質量%の範囲内で混合したことを特徴とする請
求項1又は2に記載の乳酸系樹脂組成物。 - 【請求項4】 請求項1から3のいずれか1項に記載の
乳酸系樹脂組成物からなるシート状物であって、少なく
とも一方向に延伸されていることを特徴とする乳酸系樹
脂シート状物。 - 【請求項5】 20℃における貯蔵弾性率が500MP
a〜3,000MPaであり、温度120℃で15分間
加熱した後の加熱収縮率がTD及びMD共に10%以下
であることを特徴とする請求項4に記載の乳酸系樹脂シ
ート状物。 - 【請求項6】 温度40℃、湿度80%RHの雰囲気下
に4週間保管された後の乳酸系樹脂の重量平均分子量保
持率が80%以上であることを特徴とする請求項4又は
5に記載の乳酸系樹脂シート状物。 - 【請求項7】 請求項4から6のいずれか1項に記載の
乳酸系樹脂シート状物を用いて形成したことを特徴とす
る袋状製品。
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