以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明において、線材及び線材を構成する構成要素の断面積及び断面形状とは、線材の長手方向に直交する面における、線材及び線材を構成する構成要素の断面積及び断面形状を意味するものとする。
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態におけるコイルを作成するための線材の構成を示す模式図である。図1(a)は、本実施の形態に係る線材10の上面模式図であり、図1(b)は、線材10の側面模式図である。
図1に示す線材10は、単位部11が線材10の長手方向に連続して形成された線材である。単位部11は、一定の断面形状及び一定の断面積を有する一定部12及び14と、断面形状が連続的に変化するとともに一定の断面積を有する変化部13と、境界部12a及び14aとを有する。
なお、図1では、単位部11と単位部11の左側に隣接する単位部(図示省略)との境界、及び単位部11と単位部11の右側に隣接する単位部(図示省略)との概念上の境界を、それぞれ実線で表示している。しかし、実際には、物理的に明確な境界線が存在するわけではなく、単位部11が、線材10の長手方向に連続的に繰り返されることにより線材10を構成する。本明細書における線材、及び単位部の構成に関する説明及び図示は、以下同様とする。
図1(a)及び(b)に示すように、一定部12は、単位部11の左端に位置し、一定部14は、単位部11の右端に位置している。変化部13は、一定部12と14との間に位置する。一定部12と変化部13とは、境界部12aを介してつながっており、一定部14と変化部13とは、境界部14aを介してつながっている。なお、境界部12a及び14aは、一定部12及び14から変化部13に移り変わる途中段階の領域と考えればよい。
なお、境界部12a及び14aの長手方向の長さは、一定部12及び14、変化部13と比較して非常に短い。このため、図1では、境界部12aを一定部12と変化部13との境界線として示し、境界部14aを変化部13と一定部14との境界線として示している。以下、本実施の形態における境界部と、以下に記載の実施の形態の境界部とは、いずれも同様の性質を有している。
以下では、このような構成を有する本実施の形態の線材について説明を行う。
最初に、単位部11について説明する。単位部11は、一定部12及び14を備えている点を除き、図28に示す平角線コイル80を作成するための線材92(図29参照)に対応する。平角線コイルを作成するための線材は、単位部11ごとに線材10を切断することによって作成される。なお、図1に示すように、単位部11は、中心線aに対し、軸対称の形状である。
また、図1に示す単位部11において、一定部12の断面積と一定部14の断面積とは、同一である。しかし、一定部12及び14の断面積は、製造上の理由により、変化部13の断面積よりも大きい。この理由については、実施の形態2のA(1)でさらに説明する。
次に、一定部12及び14と、変化部13の断面形状について説明する。図2は、一定部12及び14の断面形状が円形の場合の、単位部11の断面図である。図2(a)は、一定部12のA−A断面図、図2(b)は、変化部13のB−B断面図、図2(c)は、一定部14のC−C断面図である。なお、図2(a)〜(c)に示す×印は、線材10の中心線aの位置を示している。
図2(a)に示す、一定部12の厚み及び幅を、それぞれta1、wa1とする。図2(b)に示す、変化部13の厚み及び幅を、それぞれta2、wa2とする。図2(c)に示す、一定部14の厚み及び幅を、それぞれta3、wa3とする。
一定部12及び14は、図28に示す平角線コイル80の端部81a及び81bに対応する領域ではあるが、上述した通り、本実施の形態の一定部12及び14は、一定の断面積及び一定の断面形状を有する点で、平角線コイル80の端部81a及び81bと相違する。また、一定部12及び14の断面形状は、同一の円形である。
変化部13は、図28に示す平角線コイル80の渦巻き部80a及び80bを形成する領域に対応する。変化部13の断面形状は、図2(b)に示すように、一定部12及び14と異なる形状であり、幅方向に細長い矩形状である。また、ta2の厚みを示す側面は、製造上の理由により、外側に膨らんでいる。
次に、変化部13の断面形状の変化について説明する。図1(a)に示すように、変化部13の幅は、左側端部から極部15まで連続的に増加し、極部15から右側端部まで連続的に減少する。一方、図1(b)に示すように、変化部13の厚みは、左側端部から極部15まで連続的に減少し、極部15から右側端部まで連続的に増加する。すなわち、極部15において、単位部11の幅は最大となり、厚みは最小となる。
このように、変化部13の厚みと幅の変化には関連性がある。これは、変化部13の断面積が、その位置によらず一定であるために、変化部13の幅と厚みとが、それぞれの増減に応じて変化するためである。ここで、単位部11における、厚み及び幅の関係についてまとめると、ta1=ta3>ta2、wa1=wa3<wa2である。
なお、単位部11が、本発明の単位部の一例であり、一定部12及び14が、本発明の一定部の一例であり、変化部13が本発明の変化部の一例であり、極部15が、本発明の厚みが最小となる部位の一例である。
なお、本実施の形態では、一定部12及び14の断面形状が円形である場合について説明したが、これに限らず、例えば、図3に示すように、一定部12及び14の断面形状が矩形であってもよい。図3は、一定部12及び14の断面形状が矩形の場合の、単位部11の断面図である。図3(a)は、一定部12のA−A断面図、図3(b)は、変化部13のB−B断面図、図3(c)は、一定部14のC−C断面図である。
図3(a)及び(c)に示すように、一定部12及び14の断面形状は、同一の矩形である。また、一定部12の厚み及び幅を、それぞれta1’、wa1’とする。変化部13の厚み及び幅を、それぞれta2’、wa2’とする。一定部14の厚み及び幅を、それぞれta3’、wa3’とする。このとき、単位部11における厚み及び幅の関係は、それぞれta1’=ta3’>ta2’、wa1’=wa3’<wa2’である。
また、本実施の形態では、一定部12及び14の断面積が、変化部13の断面積より大きいものとして説明したが、これに限らず、一定部12及び14の断面積と、変化部13の断面積とを、同一としてもよい。この場合、単位部11の断面積は、一定部12及び14と、変化部13の位置によらず、一定となる。この理由については、実施の形態2のA(2)で説明する。
以下では、本実施の形態の線材の変形例について説明する。
(第1の変形例)
図4は、本実施の形態の第1の変形例の線材20を示す図である。図4(a)は、線材20の上面模式図であり、図4(b)は、線材20の側面模式図である。
図4に示す線材20は、上述した図1の線材10と同様に、単位部21が線材20の長手方向に連続して形成された線材である。単位部21は、一定の断面形状及び一定の断面積を有する一定部22と、断面形状が連続的に変化するとともに一定の断面積を有する変化部23と、一定の断面形状及び一定の断面積を有する一定部24と、境界部22a及び24aとを有する。
図4(a)及び(b)に示すように、一定部22は、単位部21の左端に位置し、一定部24は、単位部21の右端に位置する。変化部23は、一定部22と24の間に位置する。一定部22と変化部23とは、境界部22aを介してつながっており、一定部24と変化部23とは、境界部24aを介してつながっている。
以下では、このような構成を有する本変形例の線材について説明を行う。
まず、単位部21と単位部11との主な相違点について説明する。図4に示すように、変化部23の断面形状の変化が、変化部13の断面形状の変化と異なる。また、図1に示す単位部11では、一定部12及び14の断面積が、変化部13の断面積より大きいのに対し、図4に示す単位部21では、一定部22の断面積が、変化部23の断面積及び一定部24の断面積より大きい。この理由については、実施の形態2のB(1)でさらに説明する。
図4に示す線材20について、以下では図1に示す線材10との相違点を中心に説明し、線材10と同様の点については、その説明を省略する。
次に、一定部22及び24と、変化部23の断面形状について説明する。図5は、一定部22の断面形状が円形である場合の、単位部21の断面図である。図5(a)は、一定部22のD−D断面図、図5(b)は、変化部23のE−E断面図、図5(c)は、一定部24のF−F断面図である。なお、図5(a)〜(c)に示す×印は、線材20の中心線aの位置を示している。
図5(a)に示す一定部22の厚み及び幅を、それぞれtb1、wb1とする。図5(b)に示す変化部23の厚み及び幅を、それぞれtb2、wb2とする。図5(c)に示す一定部24の厚み及び幅を、それぞれtb3、wb3とする。
図5(a)及び(c)に示すように、一定部22の断面形状が円形であるのに対し、一定部24の断面形状は、幅方向に細長い矩形状である。また、変化部23の断面形状は、図5(b)に示すように、幅方向に細長い矩形状である。
次に、変化部23の断面形状の変化について説明する。図4に示すように、変化部23の幅は、左側端部から右側端部まで、連続的に増加するのに対し、変化部23の厚みは、連続的に減少する。従って、単位部21の厚みが最大となり、かつ、幅が最小となる部位は、一定部22となる。一方、単位部21の厚みが最小となり、かつ、幅が最大となる部位は、一定部24となる。ここで、単位部21における、厚み及び幅の関係についてまとめると、tb1>tb2>tb3、wb1<wb2<wb3である。
なお、単位部21が、本発明の単位部の一例であり、一定部22及び24が、本発明の一定部の一例であり、変化部23が本発明の変化部の一例である。
なお、本変形例では、一定部22の断面積が、変化部23の断面積及び一定部24の断面積より大きいものとして説明したが、これに限らず、一定部22及び24の断面積と、変化部23の断面積とを、同一としてもよい。この場合、単位部21の断面積は、一定部22及び24と、変化部23の位置によらず、一定となる。この理由については、実施の形態2のB(2)でさらに説明する。
(第2の変形例)
図6は、本実施の形態の第2の変形例の線材30を示す図である。図6(a)は、線材30の上面模式図であり、図6(b)は、線材30の側面模式図である。
図6に示す線材30は、上述した図1の線材10と同様に、単位部31が線材30の長手方向に連続して形成された線材である。単位部31は、一定の断面形状を有する一定部32及び34と、断面形状が連続的に変化する変化部33と、境界部32a及び34aとを有する。
図6(a)及び(b)に示すように、一定部32は、単位部31の左端に位置し、一定部34は、単位部31の右端に位置する。変化部33は、一定部32と34の間に位置する。一定部32と変化部33とは、境界部32aを介してつながっており、一定部34と変化部33とは、境界部34aを介してつながっている。
以下では、このような構成を有する本変形例の線材について説明を行う。
まず、単位部31と単位部11との主な相違点について説明する。単位部11において、一定部12及び14の断面積が変化部13の断面積より大きいのに対し、一定部32及び34と、変化部33との位置によらず単位部31の断面積が一定である点が異なる。この理由については、実施の形態2のC(1)でさらに説明する。また、変化部33の断面形状の変化が、変化部13の断面形状の変化と異なる。
図6に示す線材30について、以下では図1に示す線材10との相違点を中心に説明し、線材10と同様の点については、その説明を省略する。
次に、一定部32及び34と、変化部33の断面形状について説明する。図7は、変化部33の極部35における断面形状が矩形状である場合の、単位部31の断面図である。図7(a)は、一定部32のG−G断面図、図7(b)は、変化部33のH−H断面図、図7(c)は、一定部34のI−I断面図である。なお、図7(a)〜(c)に示す×印は、線材30の中心線aの位置を示している。
図7(a)に示す、一定部32の厚み及び幅を、それぞれtc1、wc1とする。図7(b)に示す、変化部33の厚み及び幅を、それぞれtc2、wc2とする。図7(c)に示す、一定部34の厚み及び幅を、それぞれtc3、wc3とする。
図7(a)及び(c)に示すように、一定部32及び34の断面形状は、同一の矩形状である。一方、図7(b)に示すように、変化部33の断面形状は、一定部32及び34より厚みを増した矩形状である。
次に、変化部33の断面形状の変化について説明する。図6(a)に示すように、変化部33の幅は、左側端部から極部35まで連続的に減少し、極部35から右側端部まで連続的に増加する。一方、図6(b)に示すように、変化部33の厚みは、左側端部から極部35まで連続的に増加し、極部35から左側端部まで連続的に減少する。すなわち、極部35において、単位部31の幅は最小となり、厚みは最大となる。ここで、単位部31における厚み及び幅の関係についてまとめると、tc1=tc3<tc2、wc1=wc3>wc2である。
なお、単位部31が、本発明の単位部の一例であり、一定部32及び34が、本発明の一定部の一例であり、変化部33が本発明の変化部の一例であり、極部35が、本発明の厚みが最大となる部位の一例である。
なお、本変形例では、単位部31の断面積は一定であるものとして説明したが、これに限らず、例えば、極部35における断面積が、単位部31において最大となっていてもよい。この理由については、実施の形態2のC(2)でさらに説明する。
また、本変形例では、図6において極部35の厚みが幅より大きい状態の線材30を示したが、これに限らず、例えば、極部35において、厚みと幅が同じ大きさであってもよい。この場合、図6(a)に示す線材30の大きさが、相似的に拡大された形状となると考えてもよいし、図6(b)に示す線材30の大きさが、相似的に縮小された形状となると考えても同じことである。
(実施の形態2)
以下では、実施の形態1の線材10(図1参照)、20(図4参照)及び30(図6参照)を製造するための、本発明の線材の製造方法の一実施の形態について説明する。なお、線材10、20及び30を製造するために用いる線材の製造装置の構成は、基本的には同じであるため、まず、線材10を製造するために用いる線材の製造装置の構成を例として説明する。なお、線材の製造装置の動作説明は、それぞれの線材ごとに説明する。
図8は、線材10を製造するための線材の製造装置100の模式的な側面図である。線材の製造装置100は、線材10の材料となる素線110を加圧して成型するための、成型用押しローラ101及び成型用受けローラ102を有する。なお、図8において、線材の製造装置100が有する、線材排出用のローラや、形成された線材を巻き取るためのボビンなどの図示を省略している。
成型用押しローラ101及び成型用受けローラ102は、円筒形の形状であり、互いに対向する円周面が凹凸のない面となっている。なお、上記の構成において、成型用押しローラ101は、本発明の一方の成型用ローラの一例であり、成型用受けローラ102は、本発明の他方の成型用ローラの一例である。
線材の製造装置100は、成型用押しローラ101の回転軸101cと成型用受けローラ102の回転軸102cとの距離である軸間距離Drを制御する。これにより、線材の製造装置100は、成型用押しローラ101と成型用受けローラ102との間の最短距離drを変化させる。
次に、上記のような構成を有する線材の製造装置100の基本的な動作を説明する。
はじめに、成型用押しローラ101と成型用受けローラ102とは、それぞれの円周に沿って描かれた点線矢印の方向に、同期して回転している。回転している両ローラの間に、素線110として、断面形状が円形の丸線を挿入する。挿入された素線110は、両ローラの間に入り込み、両ローラによって図8の上下方向から加圧され、変形する。変形した素線110は、線材排出用ローラ(図示省略)によって両ローラの間から外部に引き出され、線材10となる。
このように、線材の製造装置100の基本的な動作は、従来の線材の製造装置と同一であるが、線材の製造装置100は、線材10(図1参照)を形成する際の、軸間距離Drの制御が従来の線材の製造装置と異なる。
以下、実施の形態1の線材10(図1参照)、20(図4参照)及び30(図6参照)を形成する場合について、以下のA〜Cの項目で説明する。
A(1) 最初に、素線110として丸線を用いた場合の、線材10(図1参照)を形成する際の線材の製造装置100の動作を説明する。
まず、一定部12及び14を形成する際の線材の製造装置100の動作を説明する。素線110が両ローラの間に位置する状態において、線材の製造装置100は、軸間距離Drを制御して、最短距離drが素線110の厚みよりも大きい状態を所定の時間維持する。すなわち、素線110は図8の上下方向から加圧されないため、断面積及び断面形状が素線110と同一の一定部12及び14が形成される。このため、一定部12及び14の断面形状は、図2(a)及び(c)に示すように、円形となる。
続いて、変化部13を形成する際の、線材の製造装置100の動作を説明する。素線110が両ローラの間に位置する状態において、線材の製造装置100は、軸間距離Drを制御して、素線110の厚みより小さい状態で、最短距離drを変化部13の厚みに対応させて連続的に変化させる。これにより、長手方向に断面形状が連続的に変化する変化部13が形成される。このとき、変化部13の断面(図2(b)参照)の両側は、丸線が両ローラでプレスされるので、外側に膨らんだ形状となる。
更に、境界部12a及び14aを形成する際の線材の製造装置100の動作を説明する。境界部12aは、線材の製造装置100が、一定部12と変化部13を連続して形成する途中で形成される。境界部14aは、線材の製造装置100が、変化部13と一定部14とを連続して形成する途中で形成される。
次に、変化部13の断面積が、一定部12及び14の断面積より小さくなる理由を説明する。上述のように、素線110は、変化部13を形成する際に図8の上下方向から加圧される。このとき、素線110は、幅方向に圧延されるだけでなく、長手方向にも圧延される。この結果、変化部13の断面積は、素線110の断面積よりも小さくなる。すなわち、変化部13の断面積が、素線110の断面積よりやせる。従って、変化部13の断面積は、素線110と同一の断面積を有する一定部12及び14の断面積よりも小さくなる。
しかし、変化部13を形成する際、素線110が加圧されて変形することに伴う上記断面積のやせ方が一律であるため、変化部13の断面積は実質的に一定となる。
A(2) ここで、上記とは別に、単位部11の断面積が一定である線材10を形成する際の線材の製造装置100の動作を、素線110として丸線を用いた場合を例にして説明する。線材の製造装置100は、一定部12及び14を形成する際、軸間距離Drを制御して、最短距離drが素線の厚みより小さい状態を所定の時間維持する。すなわち、線材の製造装置100は、素線110を加圧して一定部12及び14を形成する。なお、変化部13を形成する際の線材の製造装置100の動作は、上記と同様である。従って、一定部12及び14と、変化部13とは、素線110を加圧することによって形成されるため、単位部11全体の断面積は、一律にやせる。従って、単位部11の断面積を一定とすることができる。このとき、一定部12及び14の断面形状は、図3(a)及び(c)にそれぞれ示す断面の両側が外側に膨らんだ形状となる。
B(1) 次に、線材20(図4参照)を形成する際の線材の製造装置100の動作を、素線110として丸線を用いた場合を例にして説明する。
まず、線材の製造装置100は、軸間距離Drを制御して、素線110の厚みより最短距離drが大きい状態を所定の時間維持することによって一定部22を形成する。続いて、線材の製造装置100は、軸間距離Drを制御して、変化部23の厚みの変化に合わせて最短距離drを連続的に変化させて、変化部23を形成する。その後、線材の製造装置100は、軸間距離Drを制御して、最短距離drが素線110の厚みより小さい一定の状態を所定の時間維持することによって、一定部24を形成する。
このように、変化部23は素線110を加圧することで形成されるため、変化部23の断面積がやせる。このため、変化部23の断面積は、一定部22の断面積より小さくなる。また、一定部24も、素線110を加圧することで形成される。このため、変化部23の断面積のやせ方と一定部24の断面積のやせ方とが、同一となり、変化部23及び一定部24の断面積は、同一となる。従って、線材の製造装置100によって形成された線材20では、変化部23及び一定部24の断面積は、一定部22の断面積より小さくなる。
B(2) ここで、上記とは別に、断面積が一定の単位部21で構成された線材20を形成する際の線材の製造装置100の動作を、素線110として丸線を用いた場合を例にして説明する。線材の製造装置100は、一定部22を形成する際、軸間距離Drを制御して、最短距離drが素線110の厚みより小さい状態を所定の時間維持する。変化部23及び一定部24を形成する際の線材の製造装置100の動作は、上記と同様である。従って、一定部22及び24と変化部23は、素線110を加圧することによって形成されるため、単位部21全体の断面積は、一律にやせる。従って、単位部21の断面積を一定とすることができる。
C(1) 次に、線材30(図6参照)を形成する際の線材の製造装置100の動作を、素線110として平角線を用いた場合を例にして説明する。
線材の製造装置100は、軸間距離Drを制御して、最短距離drが素線110の厚みより小さい一定の状態を所定の時間維持することによって、一定部32及び34を形成する。続いて、線材の製造装置100は、軸間距離Drを制御して、最短距離drを素線110の厚みより小さい状態で、変化部33の厚みに対応させて連続的に変化させることによって、変化部33を形成する。このように、一定部32及び34と変化部33は、素線110を加圧することで形成されるため、単位部31全体の断面積は、一律にやせる。従って、単位部31の断面積は、一定となる。
C(2) ここで、上記とは別に、極部35の断面積が単位部31において最大となる線材30を形成する際の、線材の製造装置100の動作を、素線110として平角線を用いた場合を例にして説明する。なお、極部35を除く単位部31を製造する際の、線材の製造装置100の動作は、上記と同様であるため省略する。
線材の製造装置100は、極部35を形成する際に、軸間距離Drを制御して、最短距離drが素線110の厚みより大きい状態とする。すなわち、線材の製造装置100は、極部35を形成する際に、素線110を加圧しない。従って、極部35の断面積は、素線110と同一となる。一方、極部35を除く単位部31は、上述のように断面積がやせる。従って、極部35の断面積は、単位部31において最大となる。
なお、本実施の形態において、素線110として丸線を用いて線材10(図1参照)及び20(図4参照)を形成するものとして説明したが、これに限らず、素線110として平角線を用いてもよい。この場合、線材10の断面形状は、図3に示す形状となる。また、線材20において、一定部22の断面形状は矩形となり、変化部23及び一定部24の断面形状は、図5(b)及び(c)に示す形状と同じとなる。
また、本実施の形態において、素線110として平角線を用いて線材30(図6参照)を形成するものとして説明したが、これに限らず、例えば、素線110として丸線を用いてもよい。この場合、線材30の上面模式図は、図6(a)に示す極部35に対応する幅が図6(b)の極部35の厚みと等しくなるように、図6(a)の形状が相似的に拡大された形状を呈する。
(実施の形態3)
図9は、本発明の一実施の形態におけるコイルを作成するための線材の構成を示す模式図である。図9(a)は、本実施の形態に係る線材40の上面模式図であり、図9(b)は、線材40の側面模式図である。
最初に、本実施の形態の線材40と、線材10(図1参照)との相違点について説明する。図1に示す線材10において、変化部13は、断面形状が連続的に変化するが、断面積は一定である。一方、図9に示す線材40において、後述する変化部は、断面積及び断面形状が連続的に変化する。以下、図1に示す線材10と異なる点を中心に、図9に示す本実施の形態の線材40について説明する。
図9に示す線材40は、単位部41が線材40の長手方向に連続して形成された線材である。単位部41は、一定の断面形状及び一定の断面積を有する一定部42及び44と、断面積及び断面形状が連続的に変化する変化部43と、境界部42a及び44aとを有する。
図9(a)及び(b)に示すように、一定部42は、単位部41の左側に位置し、一定部44は、単位部41の右側に位置する。変化部43は、一定部42と44との間に設けられている。一定部42と変化部43とは、境界部42aを介してつながっており、変化部43と一定部44とは、境界部44aを介してつながっている。また、境界部42a及び44aの図9中での表し方は、上記実施の形態と同じである。なお、線材40の製造方法等については、実施の形態4の(D)で説明する。
以下では、このような構成を有する本実施の形態の線材について説明を行う。
最初に、単位部41について説明する。単位部41は、一定部42及び44を備えている点を除き、図28に示す平角線コイル80を作成するための線材92(図29参照)に対応する。また、単位部41は、図9に示すように、中心線aに対し軸対称の形状である。
次に、一定部42及び44と、変化部43の断面形状について説明する。図10は、一定部42及び44の断面形状が円形の場合の、単位部41の断面図である。図10(a)は、一定部42のJ−J断面図、図10(b)は、変化部43のK−K断面図、図10(c)は、一定部44のL−L断面図である。なお、図10(a)〜(c)に示す×印は、線材40の中心線aの位置を示している。
図10(a)に示す一定部42の厚み及び幅を、それぞれtd1、wd1とする。図10(b)に示す変化部43の厚み及び幅を、それぞれtd2、wd2とする。図10(c)に示す一定部44の厚み及び幅を、それぞれtd3、wd3とする。
一定部42及び44の断面形状は、図10(a)及び(c)に示すように、同一の円形である。また、変化部43の断面形状は、図10(b)に示すように、一定部42及び44の断面形状と異なり、幅方向に細長い矩形である。なお、境界部42a及び44aでは、一定部42及び44から変化部43まで、断面形状が円形から矩形に連続的に変化する。
次に、変化部43の断面形状の変化について説明する。図9(a)に示すように、変化部43の幅は、長手方向に対して変化せず、一定である。一方、変化部43の厚みは、図9(b)に示すように、左側端部から極部45まで連続的に減少し、極部45から右側端部まで連続的に増加する。このように、極部45において、単位部41の厚みは最小となる。ここで、単位部41における厚みおよび幅の関係についてまとめると、td1=td3>td2、wd1=wd2=wd3である。
次に、変化部43の断面積について説明する。変化部43の断面積は、断面形状の変化に伴い、左側端部から極部45まで連続的に減少し、極部45から右側端部まで連続的に減少する。このため、極部45で、変化部43の断面積が最大となる。すなわち、極部45で、単位部41の断面積が最大となる。
なお、単位部41が、本発明の単位部の一例であり、一定部42及び44が、本発明の一定部の一例であり、変化部43が本発明の変化部の一例であり、極部45が、本発明の断面積が最小となる部位の一例である。
なお、本実施の形態において、一定部42及び44の断面形状が円形である場合について説明したが、これに限らず、一定部42及び44の断面形状は、矩形であってもよい。図11は、一定部42及び44の断面形状が矩形の場合の、単位部41の断面図である。図11(a)は、一定部42のJ−J断面図、図11(b)は、変化部43のK−K断面図、図11(c)は、一定部44のL−L断面図である。図11(a)及び(c)に示すように、一定部42及び一定部44の断面形状は、同一の矩形である。
一定部42の厚み及び幅を、それぞれtd1’、wd1’とする。変化部43の厚み及び幅を、それぞれtd2’、wd2’とする。一定部44の厚み及び幅を、それぞれtd3’、wd3’とする。このとき、単位部11における厚みと幅の関係は、それぞれ、td1’=td3’>td2’、wd1’=wd2’=wd3’である。
以下では、本実施の形態の線材の変形例について説明する。
(第1の変形例)
図12は、本実施の形態の第1の変形例の線材50を示す図である。図12(a)は、線材50の上面模式図であり、図12(b)は、線材50の側面模式図である。
図12に示す線材50は、上述した図9の線材40と同様に、単位部51が線材50の長手方向に連続して形成された線材である。単位部51は、一定の断面形状及び一定の断面積を有する一定部52と、断面積及び断面形状が連続的に変化する変化部53と、一定の断面形状及び一定の断面積を有する一定部54と、境界部52a及び54aとを有する。
図12(a)及び(b)に示すように、一定部52は、単位部51の左端に位置し、一定部54は、単位部51の右端に位置する。変化部53は、一定部52と54の間に設けられている。一定部52と変化部53とは、境界部52aを介してつながっており、変化部53と一定部54とは、境界部54aを介してつながっている。なお、線材50の製造方法等については、実施の形態4の(E)で説明する。
以下では、このような構成を有する本実施の形態の線材について説明を行う。
最初に、単位部51と単位部41との主な相違点について説明する。図12に示すように、変化部53は、変化部43のように極部を有しない。また、変化部53は、変化部43と異なり、幅が連続的に変化する。従って、変化部53の断面積及び断面形状の変化は、変化部43の断面積及び断面形状の変化と異なる。
図12に示す線材50について、以下では図9に示す線材40との相違点を中心に説明し、線材40と同様の点については、その説明を省略する。
次に、一定部52及び54と、変化部53の断面形状について説明する。図13は、一定部52及び54の断面形状が円形である場合の、単位部51の断面形状を示す図である。図13(a)は、一定部52のM−M断面図、図13(b)は、変化部53のN−N断面図、図13(c)は、一定部54のO−O断面図である。なお、図13(a)〜(c)に示す×印は、線材50の中心線aの位置を示している。
図13(a)に示す一定部52の厚み及び幅を、それぞれte1、we1とする。図13(b)に示す変化部53の厚み及び幅を、それぞれte2、we2とする。図13(c)に示す一定部54の厚み及び幅を、それぞれte3、we3とする。
図13(a)及び(c)に示すように、一定部52及び54の断面形状は、円形であるが、厚み、幅及び断面積がそれぞれ異なる。また、図13(b)に示すように、変化部53の断面形状は、厚み方向に細長い矩形である。また、なお、境界部52a及び54aでは、一定部52及び54から変化部53まで、断面形状が円形から矩形に連続的に変化する。
次に、変化部53の断面積及び断面形状の変化について説明する。図12(a)及び(b)に示すように、変化部53の厚み及び幅は、左側端部から右側端部まで連続的に減少する。また、厚み及び幅の変化に伴い、変化部53の断面積は、左側端部から右側端部まで連続的に減少する。従って、単位部51において、厚み、幅及び断面積が最大となる部位は、一定部52となり、最小となる部位は、一定部54となる。ここで、単位部51における厚み及び幅の関係についてまとめると、te1>te2>te3、we1>we2>we3となる。
なお、単位部51が、本発明の単位部の一例であり、一定部52が、本発明の一方の一定部の一例であり、変化部53が本発明の変化部の一例であり、一定部54が、本発明の他方の一定部の一例である。
なお、本変形例において、一定部52及び54の断面形状が円形である場合について説明したが、これに限らず、例えば、一定部52及び54の断面形状は、矩形であってもよい。図14は、一定部52及び54の断面形状が矩形である場合の、単位部51の断面形状を示す図である。図14(a)は、一定部52のM−M断面図、図14(b)は、変化部53のN−N断面図、図14(c)は、一定部54のO−O断面図である。
図14(a)に示す一定部52の厚み及び幅を、それぞれte1’、we1’とする。図14(b)に示す変化部53の厚み及び幅を、それぞれte2’、we2’とする。図14(c)に示す一定部54の厚み及び幅を、それぞれte3’、we3’とする。このとき、単位部51における厚み及び幅の関係は、te1’>te2’>te3’、we1’>we2’>we3’となる。
(第2の変形例)
図15は、本実施の形態の第2の変形例の線材60を示す図である。図15(a)は、線材60の上面模式図であり、図15(b)は、線材60の側面模式図である。
図15に示す線材60は、図9に示す線材40と同様に、単位部61が長手方向に連続して形成された線材である。単位部61は、一定の断面積及び一定の断面形状を有する一定部62及び64と、断面積及び断面形状が連続的に変化する変化部63と、境界部62a及び64aとを有する。
図15(a)及び(b)に示すように、一定部62は、単位部61の左端に位置し、一定部64は、単位部61の右端に位置する。変化部63は、一定部62と64の間に設けられている。一定部62と変化部63とは、境界部62aを介してつながっており、変化部63と一定部64とは、境界部64aを介してつながっている。なお、線材60の製造方法等については、実施の形態4の(F)で説明する。
以下では、このような構成を有する本実施の形態の線材について説明を行う。
最初に、単位部61と単位部41との主な相違点について説明する。図15(a)及び(b)に示すように、変化部63の断面積及び断面形状の変化が、変化部43の断面積及び断面形状の変化と異なる。
図15に示す線材60について、以下では図9に示す線材40との相違点を中心に説明し、線材40と同様の点については、その説明を省略する。
次に、一定部62及び64と、変化部63の断面形状について説明する。図16は、一定部62及び64の断面形状が円形である場合の、単位部61の断面形状を示す図である。図16(a)は、一定部62のP−P断面図、図16(b)は、変化部63のQ−Q断面図、図16(c)は、一定部64のR−R断面図である。
図16(a)に示す一定部62の厚み及び幅を、それぞれtf1、wf1とする。図16(b)に示す変化部63の厚み及び幅を、それぞれtf2、wf2とする。図16(c)に示す一定部64の厚み及び幅を、それぞれtf3、wf3とする。
図16(a)及び(c)に示すように、一定部62及び64の断面形状は、同一の円形であり、一定部62及び64の断面積は、同一である。また、図16(b)に示すように、変化部63の断面形状は、厚み方向に細長い矩形である。なお、境界部62a及び64aでは、一定部62及び64aから変化部63まで、断面形状が円形から矩形に連続的に変化する。
次に、変化部63の断面形状の変化について説明する。変化部63の幅は、図15(a)に示すように、長手方向に対して変化せず、一定である。一方、変化部63の厚みは、図15(b)に示すように、左側端部から極部65まで連続的に増加し、極部65から右側端部まで連続的に減少する。すなわち、極部65において、単位部61の厚みは最大となる。ここで、単位部61における厚み及び幅の関係についてまとめると、tf1=tf3<tf2、wf1=wf2=wf3となる。
次に、変化部63の断面積の変化について説明する。変化部63の断面積は、断面形状の変化に伴い、変化部63の左側端部から極部65まで連続的に増加し、極部65から変化部63の右側端部まで連続的に減少する。すなわち、極部65で、単位部61の断面積は、最大となる。
なお、単位部61が、本発明の単位部の一例であり、一定部62及び64が、本発明の一定部の一例であり、変化部63が本発明の変化部の一例であり、極部65が、本発明の断面積が最大となる部位の一例である。
なお、本変形例において、一定部62及び64の断面形状が円形である場合について説明したが、これに限らず、例えば、一定部62及び64の断面形状は、矩形であってもよい。図17は、一定部62及び64の断面形状が矩形である場合の、単位部61の断面形状を示す図である。図17(a)は、一定部62のP−P断面図、図17(b)は、変化部63のQ−Q断面図、図17(c)は、一定部64のR−R断面図である。
図17(a)に示す一定部62の厚み及び幅を、それぞれtf1’、wf1’とする。図17(b)に示す変化部63の厚み及び幅を、それぞれwf2’、tf2’とする。図17(c)に示す一定部64の厚み及び幅を、それぞれtf3’、wf3’とする。このとき、単位部61における厚み及び幅の関係は、tf1’=tf3’<tf2’、wf1’=wf3’=wf2’となる。
(実施の形態4)
以下では、実施の形態3の線材40(図9参照)、50(図12参照)及び60(図15参照)の製造方法と、その製造に用いる本発明の線材の製造治具の一実施の形態について説明する。なお、線材40、50及び60を製造するために用いられる線材の製造装置の構成は、基本的に同じであるため、まず、線材40を製造するために用いられる線材の製造装置を例として説明する。なお、線材の製造装置の一部を構成する製造治具については、それぞれの線材ごとに説明する。
図18は、線材40を形成するための線材の製造装置の模式的な側面図である。図18に示す線材の製造装置200は、線材40の材料となる素線210を加圧成型するための、成型用押しローラ201及び成型用受けローラ202を有する。なお、図18では、線材の製造装置200が有する、線材排出用のローラや、形成された線材を巻き取るボビンなどの図示を省略している。
成型用押しローラ201及び成型用受けローラ202は、双方とも同じ厚みで、同じ半径の円盤形状であり、互いに対向する円周面が、接触位置200tで接触している。また、成型用押しローラ201及び成型用受けローラ202の両ローラの各円周面には、溝部211及び212が形成されている。図18に示す×印は、両ローラのそれぞれの回転中心を示している。
まず、成型用押しローラ201に形成された溝部211について説明する。なお、以下の説明では、素線210として丸線を用いるものとする。
図19は、成型用押しローラ201の側面模式図である。図19に示すように、溝部211は、変化部43を形成するための変化溝211aと、一定部42及び44を形成するための一定溝211bとで構成される。また、図19のO点は、成型用押しローラ201の回転中心を示す。
図20は、溝部211の断面形状を示す図である。図20(a)〜(d)は、図19に示す変化溝211aのA−A’断面図、B−B’断面図、C−C’断面図、一定溝211bのD−D’断面図である。図20(d)に示す一定溝211bは、断面形状が半円形の溝であり、幅、深さ及び断面形状が円周に沿って変化せず、一定である。図20(a)〜(c)に示す変化溝211aは、一定の幅を有する断面形状が略U字形の溝であり、A−A’断面から時計回りの方向へ深さが連続的に増加している。なお、図19の区間V1における変化溝211aは、図19の時計回りの方向へ、断面形状が略U字形から、図20(d)に示す半円形に徐々に変化している。
なお、詳細については後述するが、図20(d)において、一定溝211bと212bで形成される空間の幅及び高さが、素線210の幅及び厚みより大きいことを説明するために、一定溝211b及び212bと、素線210との間の空間を誇張して示している。しかし実際には、一定溝211b及び212bの幅及び高さは、素線210の幅及び厚みに合わせた大きさとなっており、一定溝211b及び212bと、素線210との間の空間は、非常に小さい。このため、図19では、一定溝211bの深さが急激に大きくなるように図示されているが、実際には、変化溝211aと一定溝211bは、滑らかにつながっている。
次に、成型用受けローラ202の溝部212について説明する。図21は、成型用受けローラ202の側面模式図である。溝部212は、溝部211と同様に、変化溝212aと、一定溝212bとで構成される。また、図21のO点は、成型用受けローラ202の回転中心を示す。溝部212の断面形状は、溝部211の断面形状と同一であるため、その詳細な説明を省略する。なお、変化溝212aのA−A’断面図、B−B’断面図、C−C’断面図、一定溝212(d)のD−D’断面図は、それぞれ図20(a)〜(d)に対応する。
次に、上記のような構成を有する線材の製造装置200の動作を、D〜Fの項目に分けて説明する。
はじめに、図18に示すように、両ローラは、溝部211及び212の断面積及び断面形状が、接触位置200tで常に一致した状態で、実線矢印の方向に互いに同期して回転している。
(D) まず、線材40(図9参照)の一定部42及び44を形成する際の、線材の製造装置200の動作を説明する。接触位置200tにおいて、一定溝211b及び212bは、図20(d)に示すように、対向した状態である。このとき、一定溝211bと212bによって形成される空間の幅及び高さは、素線210の幅及び厚みより大きい。従って、一定溝211bと212bによって形成される空間に供給される素線210は、加圧成型されることなく、一定部42及び44となる。このため、一定部42及び44の断面形状は、図10(a)及び(c)に示すように、円形となる。
更に、変化部43(図9参照)を形成する際の、線材の製造装置200の動作を説明する。接触位置200tにおいて、変化溝211aと212aによって形成される空間の幅及び高さは、素線210の幅及び厚みより小さい。すなわち、変化溝211aと212aによって形成される空間の断面積は、素線210の断面積より小さい。従って、変化溝211aと212aによって形成される空間に供給される素線210は、加圧成型されて、変化部43となる。
具体的には、両ローラの同期した回転に伴い、接触位置200tにおいて、変化溝211a及び212aのそれぞれのA−A’断面が対向し、変化溝211a及び212aのそれぞれのB−B’断面が対向し、変化溝211a及び212aのそれぞれのC−C’断面が対向する。このように、変化溝211aと212aによって形成される空間の断面積及び断面形状が、変化部43の断面積及び断面形状と対応して変化するため、図9に示す変化部43を形成することができる。
なお、境界部42a及び44aは、区間V1の変化溝211aと212aによって形成される空間に、素線210が供給されることによって形成される。
上述の溝部211及び212の説明は、図19に示す溝部211の右側半分の部分、及び図21に示す溝部212の右側半分の部分に関する説明である。しかし、溝部211は、図19に示すA−O−D線を通り、かつ紙面に垂直な平面を中心にして左右対称の形状である。また、溝部212は、図21に示すA−O−D線を通り、かつ、紙面に垂直な平面を中心にして左右対称の形状である。従って、図19に示す溝部211の左側半分の部分、及び図21に示す溝部212の左側半分の部分の断面形状についても、上記の溝部211及び212の右側半分の部分の説明と同様の説明が成り立つ。
なお、上記の構成において、成型用押しローラ201は、本発明の第1ローラの一例であり、成型用受けローラ202は、本発明の第2ローラの一例である。成型用押しローラ201と成型用受けローラ202とで構成される一対のローラは、本発明の線材の製造治具の一例である。変化溝211a及び212aは、本発明の変化溝の一例であり、一定溝211b及び212bは、本発明の一定溝の一例である。
(E) 次に、線材50(図12参照)を形成するための製造治具と、線材の製造装置200の動作について、図22及び図23を用いて説明する。なお、上記と同様の説明については省略する。
図22(a)は、線材50を形成するための溝部213が形成された、成型用押しローラ201の側面模式図である。溝部213は、変化部53を形成するための変化溝213aと、一定部52及び54をそれぞれ形成するための一定溝213b及び213cとで構成される。図22(b)は、線材50を形成するための溝部214が形成された、成型用受けローラ202の側面模式図である。溝部214は、溝部213と同一の形状であり、変化溝214aと、一定溝214b及び214cとで構成される。
次に、溝部213及び214の断面形状について説明する。図23は、溝部213の断面形状を示す図である。図23(a)〜(d)は、一定溝213cのA−A’断面図、変化溝213aのB−B’断面図、変化溝213aのC−C’断面図、一定溝213bのD−D’断面図である。
図23に示すように、一定溝213b及び213cは、断面形状が半円形の溝であり、幅、深さ及び断面形状が円周に沿って変化せず、一定である。ただし、一定溝213bと213cとは、幅及び深さが異なる。変化溝213aは、断面形状が略U字形の溝であり、図22(a)の時計回りの方向へ、幅及び深さが連続的に増加する。また、区間V2の変化溝213aは、図22(a)の時計回りの方向へ、断面形状が略U字形から図23(d)に示す半円形に徐々に変化している。また、区間V3の変化溝213aでは、図22(a)の反時計回りの方向へ、断面形状が略U字形から図23(a)に示す半円形に徐々に変化している。このため、一定溝213bと、変化溝213aと、一定溝213cとは、滑らかにつながっている。
溝部214の断面形状は、溝部213の断面形状と同一であるため、その説明を省略する。なお、溝部214において、一定溝214cのA−A’断面図、変化溝214aのB−B’断面図、C−C’断面図、一定溝214bのD−D’断面図は、図23(a)〜(d)にそれぞれ対応する。
次に、図18に示す接触位置200tにおける、溝部213と214によって形成される空間に供給される素線210の断面形状の変化を説明する。
変化溝213aと214aによって形成される空間の断面積は、素線210の断面積より小さく、断面積及び断面形状は、両ローラの回転とともに、変化部53(図12参照)の断面積及び断面形状の変化に対応して変化する。従って、変化溝213aと214aによって形成された空間に供給される素線210は、加圧成型されて、変化部53となる。
また、一定溝213bと214bによって形成される空間の幅及び高さは、素線210の幅及び厚みより大きい。従って、一定溝213bと214bによって形成される空間に供給される素線210は、加圧成型されることなく、一定部52(図12参照)となる。
また、一定溝213cと214cによって形成される空間の断面積は、素線210の断面積より小さい。従って、一定溝213cと214cによって形成される空間に供給される素線210は、加圧成型されて、一定部54(図12参照)となる。
更に、境界部52a及び54a(図12参照)は、区間V2及びV3の変化溝213aと214aによってそれぞれ形成される空間に、素線210が供給されることで形成される。
(F) 次に、線材60(図15参照)を形成するための製造治具と、線材の製造装置200の動作について、図24及び図25を用いて説明する。なお、上記と同様の説明については省略する。
図24(a)は、線材60を形成するための溝部215が形成された、成型用押しローラ201の側面模式図である。溝部215は、変化部63を形成するための変化溝215aと、一定部62及び64を形成するための一定溝215bとで構成される。図24(b)は、線材60を形成するための溝部216が形成された、成型用受けローラ202の側面模式図である。溝部216は、溝部215と同一の形状であり、変化溝216aと、一定溝216bとで構成される。
次に、溝部215及び216の断面形状について説明する。図25は、溝部215の断面形状を示す図である。図25(a)〜(d)は、それぞれ変化溝215aのA−A’断面図、B−B’断面図、C−C’断面図、一定溝215bのD−D’断面図である。
一定溝215bは、断面形状が半円形の溝であり、幅、深さ及び断面形状が円周に沿って変化せず一定である。変化溝215aは、一定の幅を有する断面形状が略U字形の溝であり、A−A’断面から図24(a)の時計回りの方向へ、深さが連続的に減少する。なお、区間V4の変化溝215aでは、図24(a)の時計回りの方向へ、断面形状が略U字形から図25(d)に示す半円形に徐々に変化している。このため、変化溝215aと一定溝215bとは、滑らかにつながっている。
溝部216の断面形状は、溝部215の断面形状と同一であるため、その説明を省略する。なお、変化溝216aのA−A’断面図、B−B’断面図、C−C’断面図、一定溝216bのD−D’断面図は、図25(a)〜(d)にそれぞれ対応する。
次に、溝部215と溝部216とによって形成される空間に供給される素線210の断面形状の変化を説明する。なお、線材60を形成する際には、線材60で最大の断面積を有する、極部65の断面積よりも大きい断面積を有する素線210を用いる必要がある。
変化溝215aと216aによって形成される空間の断面積は、素線210の断面積より小さく、断面積及び断面形状は、両ローラの回転とともに、変化部63(図15参照)の断面積及び断面形状の変化に対応して変化する。従って、変化溝215aと216aとによって形成された空間に供給される素線210は、加圧成型されて、変化部63となる。また、変化溝215a及び216aのA−A’断面によって形成される空間に供給される素線210は、極部65となる。
また、一定溝215bと216bによって形成される空間の断面積は、素線210の断面積より小さい。従って、一定溝215bと216bによって形成される空間に供給される素線210は、加圧成型されて、一定部62及び64(図15参照)となる。
更に、境界部62a及び64aは、区間V4の変化溝215aと216aによって形成される空間に、素線210が供給されることによって形成される。
このようにして線材60を形成する際、両ローラに対する素線210の挿入速度を、両ローラの回転速度に対して、常に遅くなるように保ち、かつ、溝部215と216によって形成される空間の断面積に応じて変化させる。これにより、素線210が両ローラの溝部に嵌まるときに発生する余剰体積を、素線210の長手方向に吸収させる。
なお、本実施の形態では、素線210として丸線を用いた場合を例にして説明したが、これに限らず、例えば、素線210として平角線を用いてもよい。この場合、一定溝211b、212b、213b及び214bの断面形状は、素線210の断面形状に対応した略U字形となる。また、この場合、線材40(図9参照)の一定部42及び44の断面形状は、図11(a)及び(c)に示すように矩形となる。線材50(図12参照)の一定部52の断面形状は、図14(a)に示すように矩形となる。線材60(図15参照)の断面形状は、図16に示す形状と変化しない。
このように、素線210として平角線を用いて線材40(図9参照)を形成する場合、変化溝211a及び212aに、断面形状が変化する区間V1を設けなくてもよい。また、線材50(図12参照)を形成する場合についても、同様に、変化溝213a及び214aに、区間V2を設けなくてもよい。
また、本実施の形態では、一定溝213c、214c、215b及び216bの断面形状が半円形である場合を例にして説明したが、これに限らず、例えば、これらの一定溝の断面形状が、略U字形であってもよい。この場合、線材50(図12参照)の一定部54の断面形状は、図14(c)に示すように矩形となり、線材60(図15参照)の一定部62及び64の断面形状は、図17(a)及び(c)に示すように矩形となる。
このように、線材50の変化部53と一定部54との間で断面形状が変化しないため、変化溝213a及び214aに、断面形状が変化する区間V3を設けなくてもよい。また、変化溝215a及び216aについても、同様に、断面形状が変化する区間V4を設けなくてもよい。
最後に、上記実施の形態の線材から作成した平角線コイルにおける、絶縁被膜の剥離について説明する。上述のように、上記実施の形態の一定部の断面形状及び断面積は一定であり、一定部の断面形状は、円形または矩形である。このため、本実施の形態の線材を用いた平角線コイルの端部を被覆する絶縁被膜に対する機械剥離は、従来の機械剥離と同様の方法によって行うことができる。従って、従来の線材92(図29参照)を用いた平角線コイルと異なり、絶縁被膜の材料が限定されることがないため、本実施の形態の線材は、用途の制限を従来に比べて少なくすることができる。
なお、上記実施の形態において、変化部の断面形状が矩形状であるものとして説明したが、変化部の側面が曲面であっても、変化部の上面と下面とが平面で形成され、ほぼ平行であれば、変化部を実質的に平角線として扱っても問題はない。
また、上記実施の形態において、線材10(図1参照)の極部15、及び線材30(図6参照)の極部35が長手方向の長さを有しないものとして説明したが、これに限らず、例えば、極部15及び35が所定の長さを有してもよい。この場合、線材の製造装置100(図8参照)は、軸間距離Drを制御して、最短距離drが極部15及び35の厚みに対応する状態を所定の時間維持することで、所定の長さの極部15及び35を形成することができる。この場合、極部35の断面積及び断面形状は、素線110と同一となる。
また、上記実施の形態において、図8に示すように、成型用押しローラ101と、成型用受けローラ102とによって構成される一つのローラ対によって線材10(図1参照)、20(図4参照)及び30(図6参照)を形成するものとして説明したが、これに限らず、例えば、線材の製造装置100は、二つ以上のローラ対を備えてもよい。この場合、ローラ対ごとに、圧延する比率を変えることによって、所望の厚みを有する線材10、20及び30を形成することができる。
また、上記実施の形態では、線材40(図9参照)の変化部43、及び線材60(図15参照)の変化部63の幅が一定であるものとして説明したが、これに限らず、例えば、変化部43及び63の幅が連続的に変化してもよい。図26(a)及び(b)は、変化部43及び63の幅が連続的に変化する線材40及び60のそれぞれの上面模式図である。図26(a)において、変化部43の幅は、極部45で最小であり、極部45から左側端部及び右側端部に向けて連続的に増加する。また、図26(b)において、変化部63の幅は、極部65で最大であり、極部65から左側端部及び右側端部に向けて連続的に減少する。この場合、それぞれの変化溝の幅を、変化部43及び63の幅の変化に合わせて変化していればよい。
また、上記実施の形態では、線材40(図9参照)の極部45、及び線材60(図15参照)の極部65は、長手方向に長さを有しないものとして説明したが、これに限らず、例えば、極部45及び65が所定の長さを有してもよい。この場合、極部45及び極部65にそれぞれ対応する変化溝の断面積及び断面形状を一定にすることで、所定の長さの極部45及び65を形成できる。
また、上記実施の形態において、線材40(図9参照)、50(図12参照)及び60(図15参照)の各変化部の断面形状が矩形であるものとして説明したが、これに限らず、例えば、上記各変化部の断面形状は、それぞれ円形でもよい。この場合、それぞれの変化部に対応する変化溝の断面形状を、半円形とすることによって、上記各変化部の断面形状を円形とすることができる。
また、上記実施の形態において、変化部の厚み及び幅が連続的に変化するものとして説明したが、これに限らず、例えば、厚み及び/または幅が一定となる区間を変化部が有していてもよい。上記実施の形態の各変化部における厚み及び幅の変化の条件を満たしていれば、変化部の厚み及び幅の変化は、単調に減少していなくてもよい。
また、上記実施の形態において、極部が変化部の中点にあるものとして説明したが、これに限らず、極部が変化部の中点と一致していなくてもよい。
また、上記実施の形態において、本発明の線材は、中心線aに対して軸対称であるものとして説明したが、これに限らず、例えば、上記実施の形態の線材は、軸対象でなくてもよい。図27(a)〜(c)は、中心線aに対して軸対象でない線材10(図1参照)、線材20(図4参照)、線材30(図6参照)の側面模式図である。このように、上記実施の形態の線材の下面が平面であってもよい。
また、上記実施の形態において、線材10(図1参照)、20(図4参照)及び30(図6参照)のそれぞれの単位部の断面積が一定である線材の製造方法として、単位部を常にローラによって加圧する場合について説明したが、これに限らず、例えば、上型と下型とで構成されるプレス金型を用いて、単位部の断面積が一定である線材10、20及び30を形成してもよい。具体的には、プレス金型の上型に、一定溝と変化溝を形成する。そして、プレス金型の上型と下型とを合わせたときに、一定溝と下型とによって形成される空間の断面積と、変化溝と下型によって形成される空間の断面積が同一となればよい。また、一定溝と変化溝の断面形状を、所望の断面形状することで、単位部の断面積が一定の線材10、20及び30を形成することができる。
また、上記実施の形態において、線材40(図9参照)、50(図12参照)及び60(図15参照)を形成するための製造治具として、成型用押しローラ201及び成型用受けローラ202の両ローラに溝部が形成されるものとして説明したが、これに限らず、例えば、一方のローラの回転面に溝部が形成され、他方のローラの回転面は凹凸のない面としてもよい。この場合、一方のローラに形成された溝部と、他方のローラの回転面とによって形成される空間の断面積及び断面形状が、各線材の変化部及び一定部の断面積及び断面形状に対応していればよい。また、一方のローラに溝部が形成され、他方のローラに凸部が形成されていてもよい。
また、上記実施の形態において、線材40(図9参照)の一定部42及び44の断面積及び断面形状を、素線210と同一とするための一定溝211b及び212b(図19〜図21参照)について説明したが、これに限らず、例えば、一定部42及び44の断面積が、素線210の断面積より小さくてもよい。この場合、一定溝211bと212bによって形成される空間の幅及び高さを、素線210の幅及び厚みより小さくする。これにより、この空間に供給される素線210は、加圧成型されて、素線210の断面積より小さい断面積の一定部42及び44が形成される。また、線材50の一定部52についても同様である。
また、上記実施の形態において、線材60(図15参照)の極部65を、素線210を加圧して形成するものとして説明したが、これに限らず、例えば、極部65の断面積及び断面形状を、素線210と同一としてもよい。この場合、図24に示す変化溝215a及び216aのA−A’断面によって形成される空間の幅及び高さを、素線210の幅及び厚みより大きくすることで、素線210と同一の断面積及び断面形状の極部65を形成することができる。
また、上記実施の形態で説明した線材10〜60(図1、図4、図6、図12、及び図15参照)において、一定部及び変化部における、厚みと幅と大きさの関係、断面形状及び断面積の変化等は、図示したものに限られない。