JP4425706B2 - 部品包装体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
キャリアテープとしては、紙、プラスチックフィルム等のシートを所定の幅にスリットして基材を得、(1)基材の一部を打抜き加工により取り除いた後、基材裏面にボトムテープを装着して部品収納部を形成したパンチドキャリアテープ、(2)基材の一部を凹形にエンボス加工して凹部を形成したエンボスキャリアテープ、(3)基材の一部を圧縮加工することによって凹部を形成したプレスキャリアテープ(例えば特許文献1参照)等が一般的である。また、トレーの形態としては、インジェクショントレー、ソフトトレー等が一般的である。
これらの中で、電子部品等の比較的小型の部品については、収納効率、実装信頼性、実装生産性等の点から、エンボスキャリアテープと、その凹部を封止するカバーテープとを備えた、エンボスキャリアテープ/カバーテープ方式(いわゆるテープアンドリール方式)の部品包装体が主流として使用されている。
しかし、キャリアテープは、製造時に、スリット加工や打抜き加工、エンボス加工、圧縮加工等の成形処理が施されるため、スリット端面や打ち抜き端面、凹部の内側等に、基材のせん断により、紙粉等の粉バリや、ひげバリ、繊維くず等の異物が発生するという問題がある。このような異物の問題は、凹部が微細化するほど大きな問題となり、特に、上述のような微細電子部品用のキャリアテープの場合、部品接着信頼性低下や部品電気的接続信頼性低下などの原因となる。すなわち、異物が凹部内に収納された部品に付着すると、実装時に、部品の接着不良や、電気的なショート、電気的接続不良等が発生する。このような問題は、凹部が微細化するほど発生しやすい。
すなわち、本発明の部品包装体は、複数の部品収納用凹部が成形されたキャリアテープを備える部品包装体であって、前記キャリアテープの表面全体が、当該キャリアテープを生産するための成形加工の終了後に形成された樹脂層によって被覆されており、前記樹脂層が、ガラス転移温度が60℃以上の樹脂から構成され、前記キャリアテープに対し、JIS H 8602に準拠する碁盤目試験において、剥離を示さないか、または該キャリアテープの表面破壊を伴う剥離を示す密着性を有することを特徴とする。
本発明の部品包装体は、前記キャリアテープが紙製キャリアテープであることが好ましい。
本発明の部品包装体は、前記樹脂層がさらに帯電防止剤および/または導電性材料を含有することが好ましい。
本発明の部品包装体は、前記樹脂層が、樹脂エマルションおよび/または樹脂水溶液に、成形されたキャリアテープの表面全体を浸漬させて得られる層であるか、または、樹脂と、該樹脂を溶解する有機溶剤を含有する溶剤との混合溶液に、成形されたキャリアテープの表面全体を浸漬させて得られる層あることが好ましい。
本発明の部品包装体は、前記樹脂層が、該樹脂層により表面全体が被覆された前記キャリアテープにカバーテープを接着した際に、JIS C 0806−3に準拠して測定される、該キャリアテープとカバーテープとの間の、剥離速度300mm/minにおける剥離強度が0.1〜1Nとなるカバーテープ接着性を有することが好ましい。
また、本発明の部品包装体の製造方法は、複数の部品収納用凹部が成形されたキャリアテープを生産するための成形加工の終了後、得られたキャリアテープの表面全体を、ガラス転移温度が60℃以上の樹脂から構成され、該キャリアテープに対し、JIS H 8602に準拠する碁盤目試験において、剥離を示さないか、または該キャリアテープの表面破壊を伴う剥離を示す密着性を有する樹脂層で被覆することを特徴とする。
かかる本発明の部品包装体を用いることにより、プラスチック製エンボスキャリアテープや、紙製パンチドキャリアテープ、プレスキャリアテープ等のキャリアテープにおけるスリット端面や、送り穴、部品収納用凹部の底穴端面、凹部内面等における粉バリやひげバリ等の異物の発生を防止でき、それにより、異物と、リール内面や実装機送り装置、部品等との接触による静電気の発生とそれに伴う実装不良を防止することが可能となる。
本発明の部品包装体は、複数の部品収納用凹部が成形されたキャリアテープを備える部品包装体であって、前記キャリアテープの表面全体が、樹脂から構成される樹脂層によって被覆されており、前記樹脂層が、前記キャリアテープに対し、JIS H 8602に準拠する碁盤目試験において、剥離を示さないか、または該キャリアテープの表面破壊を伴う剥離を示す密着性を有することを特徴とする部品包装体である。
そのようなキャリアテープとしては、一般的にキャリアテープとして市販されているものを使用してもよく、また紙等の基材を成形加工して用いてもよい。
キャリアテープは、これらの樹脂の単層であってもよく、また多層、たとえば中間層と表面裏面との三層構造であってもよい。
本発明は、特にキャリアテープが紙製キャリアテープである場合に有用である。
ここで、「JIS H 8602に準拠する碁盤目試験」とは、以下の手順で行われる試験である。すなわち、まず、試験片の樹脂層に、カッターナイフの刃を用いて、縦横方向に垂直に、1mm間隔で11本ずつの線を引き、100個の碁盤目を作る。この上に、JIS Z1522に規定する幅12mmのテープを指で強く押し、貼り付けてからすぐ真上の方向に強く引き剥がす。このとき樹脂層の碁盤目に剥がれが認められないものを100/100とする。
本発明において、「剥離を示さない密着性を有する」とは、上記試験において、剥離した碁盤目の数が0、すなわち100/100であることを意味する。
また、「キャリアテープの表面破壊を伴う剥離を示す密着性を有する」とは、上記試験において、碁盤目が剥離したとしても、その碁盤目の剥離と同時に、キャリアテープの表面の一部が剥離し、キャリアテープの表面が破壊されるほど強くキャリアテープに密着していることを意味する。
この密着性は、例えば、キャリアテープの材質と樹脂層の材質の溶解度指数(SP値)をできるだけ近いものにする、溶剤によりキャリアテープ表面を溶解しながら樹脂を密着させる、前述した表面処理(コロナ処理、プラズマ処理、イトロ処理等)を行う等により調節することができる。
この剥離強度は、例えばシールこての幅、シール温度の高低、シール時間の長短、シール圧力の強弱等により調節することができる。
この効果は、特に、部品が微細化するほど重要となる。例えばサイズが1005、0603、0402等のような微細電子部品用キャリアテープの場合、該微細電子部品の実装時に、凹部に収納された部品を取り出すためにカバーテープを剥離した際に、剥離帯電により静電気が発生し、凹部内の部品がカバーテープに付着するなどして実装不良を引き起こすことが確認されている。
帯電防止剤としては、非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤等の界面活性剤からなるものが挙げられ、代表的なものとしては、第四級アンモニウム塩が挙げられる。
導電性材料としては、導電性カーボンや、ポリピロール系、ポリアニリン系、ポリチオフェン系等の導電性ポリマー等が挙げられる。
帯電防止剤および/または導電性材料が配合された樹脂層は、上記効果のためには、表面固有抵抗値が104Ω〜1012Ωであることが望ましい。
樹脂層への帯電防止剤および/または導電性材料の配合は、例えば、樹脂層を形成する際に、後述する水系樹脂溶液または非水系樹脂溶液にこれらの帯電防止剤および/または導電性材料を添加、混合することによって行うことができる。
(1)水分散性樹脂および/または水溶性樹脂と水との混合液、すなわち樹脂エマルションおよび/または樹脂水溶液(以下、これらをまとめて水系樹脂溶液ということがある)を用い、該水系樹脂溶液中にキャリアテープを浸漬することによって、該水系樹脂溶液をキャリアテープ表面全体に含浸させる。
(2)樹脂と、該樹脂を溶解する有機溶剤(非水系溶剤)を含有する溶剤との混合溶液を用い、該混合溶液中にキャリアテープを浸漬することによって、該混合溶液をキャリアテープの表面全体に含浸させる。
(3)(1)の水系樹脂溶液または(2)の混合溶液(以下、これらをまとめて樹脂溶液ということがある)をキャリアテープ表面全体に塗工する。
これらの中でも、(1)、(2)による方法は、キャリアテープ表面全体に樹脂溶液を行き渡らせやすく好ましい。特に(1)による方法は、安全面からも好ましい。
例えば、キャリアテープの材質がポリスチレン系樹脂やポリカーボネート樹脂などの場合は、耐有機溶剤性が弱いため、溶剤組成を考慮する必要がある。
また、キャリアテープの材質が紙である場合、有機溶剤を用いる方法は、紙に大量の溶液が含浸されるため、被覆させた樹脂成分を乾燥させて固化するときに引火するおそれがあるなどの危険性が高く、そのため水系樹脂溶液の使用が望まれる。
また、該有機溶剤を含有する溶剤中、該有機溶剤以外に含有していてもよい溶剤としては、水などの、樹脂を溶解しない貧溶媒等が挙げられ、貧溶媒の種類は、その使用する樹脂により異なる。
また、樹脂溶液の粘度は、ある程度低い方が望ましい。粘度が高いと、凹部内まで充分に行き渡らせるのに時間がかかる。
参考例1
ポリスチレン系樹脂製エンボスキャリアテープ(信越ポリマー(株)製「信越キャリアテープ」)を、アクリルエマルション(三菱レイヨン(株)製「LX196」、Tg45℃)100質量部に水道水:IPA=1:1を100質量部加えた樹脂溶液中に浸漬した。ポケット凹部(部品収納用凹部)や送り穴の打ち抜き部分の内部に樹脂溶液が十分濡れない個所があったため、35kHzの超音波を当てて表面全体を樹脂溶液で濡らし、キャリアテープの表側、裏側、凹部内、スリット端面、打ち抜き穴端面を含む表面全体に付着させた。次に、樹脂溶液中からキャリアテープを引き上げ、温度50℃の熱風で乾燥して、表面全体を樹脂層で被覆したエンボスキャリアテープを得た。
王子製紙(株)製「クリーンペーパー」0.5mm厚ロールをスリットマシンにてスリット化工を行い、幅8mmの巻物を得た。これを信越ポリマー(株)製プレス成形機にてプレス成形を行い、ポケット形状0.5mm×0.5mm、深さ0.3mmの凹部を成形した。次いで、直径1.5mmの送り穴を同成形機に設けたプレス打ち抜き金型にて打ち抜き成形を行い、片側に送り穴を有する紙製プレスキャリアテープ(試作品)を得た。これを、参考例1と同様にして、表面全体を樹脂で被覆した紙製プレスキャリアテープを得た。
アクリルエマルションとして、「LX196」に代えて、三菱レイヨン(株)製「LX−301」(Tg70℃)を用いた以外は、参考例2と同様にして、表面全体を樹脂で被覆した紙製プレスキャリアテープを得た。
アクリルエマルション「LX196」に代えて、アクリル溶液(三菱レイヨン(株)製「LR177」、Tg60℃)を用いた以外は参考例2と同様にして、表面全体を樹脂で被覆した紙製プレスキャリアテープを得た。
アクリル溶液に、導電性材料としてポリチオフェン(AGFA製PEDOT)を固形分換算で1.0質量%添加した以外は実施例4と同様にして、表面全体を樹脂で被覆した紙製プレスキャリアテープを得た。
参考例1で使用したポリスチレン系樹脂製エンボスキャリアテープを比較例1とした。
参考例2で使用した紙製プレスキャリアテープ(試作品)を比較例2とした。
参考例1において、アクリルエマルションの代わりにポリビニルアルコール(日本酢ビポバール(株)製JP−04)を使用した以外は参考例1と同様にして、表面全体を樹脂で被覆した紙製プレスキャリアテープを得た。
スリット・成形前の紙原反について、参考例2と同様にして、表面全体を樹脂で被覆した後、該紙原反のスリット・成形を行い、参考例2と同じ形状の紙製プレスキャリアテープを得た。
[密着性]
密着性は、JIS H 8602に準拠する碁盤目試験において、剥離したものは×、全く剥離しなかったもの、および、キャリアテープの表面破壊を伴って剥離したものを○とした。
樹脂被覆されたキャリアテープを一般的に使用されているポリスチレン系樹脂製リールに巻き取り、次いで、該キャリアテープを巻き出しながら、リールと擦れた個所を観察し、ひげバリ発生の有無を確認した。ひげバリがあるものを×、無いものを○とした。
[打ち抜き端部のバリ発生]
各1000mmの長さのキャリアテープを用いて、送り穴を通過させた後、送り穴用ピンロールを観察し、その表面にひげバリや、粉バリが有ったものを×、無かったものを○とした。
JIS C 0806−3に準拠して、以下の手順で剥離強度を測定した。すなわち、信越ポリマー(株)製帯電防止タイプカバーテープ「ASS」を使用し、こて幅片側0.5mm、長さ25mmを両サイドに有するこてを用いて、バンガードシステムズ(株)製テーピング機VN1100にて、160℃、0.3MPa、0.4秒のダブルスタンプ方式にてシールした後、300mm/minの剥離速度で180度剥離を行ったときの剥離強度が0.1Nから1Nの範囲に入ったものを○、それ以外のものを×とした。
[カバーテープ剥離時の樹脂層剥離]
上記カバーテープ剥離強度評価において、樹脂層が剥がれたものを×、剥がれなかったものを○とした。
キャリアテープを330φリールに巻き取り、これを50℃×80%Rhの環境試験機に放置し、24時間後に取り出してブロッキングの有無を観察した。
実装機でのチップ立ちについては、実際に1608(1.6×0.8mm)および0603(0.6×0.3mm)サイズのセラミックコンデンサーを挿入し、帯電防止グレードカバーテープ(信越ポリマー(株)製、ASS)でテーピングしたものを用意し、実装機により実装テストを行った結果を示した。
なお、「チップ立ち」とは、カバーテープを引き剥がす際に発生する静電気によって、微小電子部品がカバーテープに付着したり、部品収納用凹部内で立ち上がった状態になるなど、部品収納用凹部内に精確に収納されていない現象を意味し、その評価は、視認により行った。
また、Tgが60℃以上の樹脂を用いた実施例3〜5のキャリアテープは、50℃×80%Rhの環境中で保存した際にブロッキングが見られず、保存性が良好であった。
さらに、樹脂層に導電性材料を配合した実施例5のキャリアテープは、実装時、0603という微細なサイズにおいても、チップ立ちが見られなかった。
一方、キャリアテープの被覆を行わなかった比較例1,2、樹脂層の密着性が充分でない比較例3、表面全体が樹脂層で被覆されていない比較例4のキャリアテープは、加工端部にバリが発生していた。
Claims (7)
- 複数の部品収納用凹部が成形されたキャリアテープを備える部品包装体であって、
前記キャリアテープの表面全体が、当該キャリアテープを生産するための成形加工を全て終了した後に形成された樹脂層によって被覆されており、
前記樹脂層が、ガラス転移温度が60℃以上の樹脂から構成され、前記キャリアテープに対し、JIS H 8602に準拠する碁盤目試験において、剥離を示さないか、または該キャリアテープの表面破壊を伴う剥離を示す密着性を有することを特徴とする部品包装体。 - 前記キャリアテープが紙製キャリアテープである請求項1記載の部品包装体。
- 前記樹脂層がさらに帯電防止剤および/または導電性材料を含有する請求項1または2に記載の部品包装体。
- 前記樹脂層が、樹脂エマルションおよび/または樹脂水溶液に、成形されたキャリアテープの表面全体を浸漬させて得られる層である請求項1〜3のいずれかに記載の部品包装体。
- 前記樹脂層が、樹脂と、該樹脂を溶解する有機溶剤を含有する溶剤との混合溶液に、成形されたキャリアテープの表面全体を浸漬させて得られる層である請求項1〜3のいずれかに記載の部品包装体。
- 前記樹脂層が、該樹脂層により表面全体が被覆された前記キャリアテープにカバーテープを接着した際に、JIS C 0806−3に準拠して測定される、該キャリアテープとカバーテープとの間の、剥離速度300mm/minにおける剥離強度が0.1〜1Nとなるカバーテープ接着性を有する請求項1〜5のいずれかに記載の部品包装体。
- 複数の部品収納用凹部が成形されたキャリアテープを生産するための成形加工を全て終了した後、得られたキャリアテープの表面全体を、ガラス転移温度が60℃以上の樹脂から構成され、該キャリアテープに対し、JIS H 8602に準拠する碁盤目試験において、剥離を示さないか、または該キャリアテープの表面破壊を伴う剥離を示す密着性を有する樹脂層で被覆することを特徴とする部品包装体の製造方法。
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