JP4386995B2 - カメラ用フォーカルプレンシャッタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結像面の直前位置に設けられた長方形の開口部を、撮影時において開閉させるようにしたカメラ用フォーカルプレンシャッタに関する。
【0002】
【従来の技術】
通常のカメラ用フォーカルプレンシャッタは、先羽根(群)と後羽根(群)とを備えていて、カメラの不使用時においては、結像面の直前位置に設けられている長方形の開口部を先羽根(群)が覆っており、撮影時においては、先羽根(群)と後羽根(群)を所定の時間間隔で同一方向へ作動させ、撮影終了直後においては、上記の開口部を後羽根(群)が覆うようにしている。そして、シャッタをセットするときには、先羽根(群)と後羽根(群)の両方を、それらのセット位置まで同一方向へ作動させるようにしている。また、このような構成のフォーカルプレンシャッタは、フィルム使用のカメラだけではなく、CCDなどの撮像素子を用いた電子カメラにも採用できることが知られている(例えば、特公平3−79912号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、フォーカルプレンシャッタは、従来より高級カメラに内蔵されるものとして知られており、高速撮影が精度よく行なえるようにしたり、高感度フィルムを用いても漏光の心配がないようにするなど、高度の性能を要求され続けてきた。従って、一方では小型化や低コスト化が要求されているとはいうものの、それらは、あくまでも高性能が得られた上でのことであって、このような要求は、現在でも大勢として変わりがないといっても過言ではない。しかしながら、最近では、レンズ交換が可能であれば、高速化や高性能化は二の次であって、先ずは小型化・低コスト化であるという要求が出てきているのも事実である。
【0004】
また、最近多くなってきたCCDなどの撮像素子を用いた電子カメラの場合には、従来のフィルムを用いるカメラのシャッタや上記した公報に記載のシャッタのように、二つのシャッタ羽根(群)で形成されるスリットによって結像面の露光制御を行なうのではなく、撮像素子を電気的に制御することによって撮影を行い、次の撮影が行なわれるまでは、撮像素子の全面をシャッタによって覆っておくようにしたものがある。そして、そのようなカメラに採用されるフォーカルプレンシャッタの場合には、先ずは、小型化と低コスト化が要求されることになる。
【0005】
しかしながら、従来の構成のカメラ用フォーカルプレンシャッタでは、二つのシャッタ羽根(群)を有しているために、部品点数が極めて多く且つ加工工程も多くなってしまって低コスト化が極めて困難であり、また、被写体の光路を規制する開口部を全開にしたとき、二つのシャッタ羽根(群)の収容スペースを別々に設けなければならないため、小型化も極めて困難であるという問題点を有している。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、地板に枢着されている複数のアームに、平行リンク機構を構成するようにして所定数枚の羽根を取り付け、撮影開始信号によってそのアームの一つを往動させ、撮影終了信号によって復動させるようにしただけの小型化と低コスト化に適した簡易型のカメラ用フォーカルプレンシャッタを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタは、羽根室を構成するために所定の間隔を空けて相互に取り付けられていて結像面の直前位置において被写体光の光路を規制するための長方形の開口部を形成した二つの地板と、前記二つの地板の間に配置されていて前記開口部の側方位置において前記二つの地板の一方に一端部を枢着された複数のアームと、それらのアームに対して平行リンク機構を達成するようにして取り付けられた所定枚数の羽根と、撮影開始信号により第1ばねの付勢力で前記アームの一つを往動させ前記羽根に前記開口部を全開にさせる第1駆動部材と、撮影終了信号により第2ばねの付勢力で前記第1駆動部材を前記第1ばねの付勢力に抗して作動させ前記アームの一つを復動させることによって前記羽根に前記開口部を閉鎖させる第2駆動部材と、を備えていて、前記第1駆動部材は、前記第2駆動部材が前記第2ばねの付勢力に抗してセットされるときには係止部材によって係止されていて、その係止を前記撮影開始信号に応じて解除され、前記係止部材は、前記第1駆動部材が前記第1ばねの付勢力に抗して前記第2駆動部材によって作動させられたとき、その作動中に前記第1駆動部材に接触して該作動に制動を与えるようにする。
その場合、前記第1駆動部材は、前記第2駆動部材が前記第2ばねの付勢力に抗してセットされる過程で、セット手段によって前記係止部材による係止を解除されて第2の係止部材に係止され、その第2の係止部材による係止を前記撮影開始信号に応じて解除されるようにすると、前記第1駆動部材の係止が確実に行え、その上、制動も好適に行える構成にすることが可能になる。
更に、前記第1駆動部材と前記アームの一つとが単一部材として構成されているようにすると、全体構成を簡単にすることが可能になる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図1〜図6に示した実施例によって説明する。これらの図面は、何れもカメラに組み込まれた状態において、実施例のシャッタを被写体側から視た平面図であるが、シャッタの右半分については、本発明にとって特に重要ではなく、且つ当業者であれば周知のシャッタ構成に準じて理解することが可能であるため、左側の約半分を示したものである。そして、図1は撮影が終了した直後におけるシャッタの閉鎖状態を示したものであり、図2はセット作動を開始した直後の状態を示したものであり、図3はセット作動中における図2よりも後の状態を示したものであり、図4はオーバーセット状態を示したものであり、図5はセット状態を示したものであり、図6はシャッタの開放状態を示したものである。尚、各図とも、図面を見やすくするために、各部材を付勢しているばねについては、図示を省略してある。
【0009】
先ず、本実施例の構成を説明する。シャッタ地板1には、その略中央部に長方形を横長にした開口部1aが形成されている。しかし、上記したように、各図は実施例の左側の約半分を示したものであるため、その開口部1aは一部だけが示されている。また、シャッタ地板1の背面側には、所定の間隔を空けて図示していない補助地板が取り付けられていて、それらの地板の間に羽根室を形成している。更に、その補助地板にも、開口部1aと類似の開口部が形成されていて、その開口部を開口部1aと重ねるように配置して被写体光の光路枠、即ち被写体像の画枠を規制するようにしている。
【0010】
また、シャッタ地板1には、その開口部1aの左側に、円弧状の長い孔1bと短い孔1c,1dとが形成されている。更に、シャッタ地板1の表面側(被写体側)には、軸1e,1f,1g,1h,1i,1j,1k,1mと柱1n,1pが立設されている。そして、それらのうち、軸1e,1gは、シャッタ地板1の背面側にも突き出ている。また、柱1nには環状の緩衝部材2が取り付けられており、柱1pは、後述する第1セット部材10のストッパの役目をするためのものである。
【0011】
次に、シャッタ地板1の表面側において、上記の各軸に取り付けられている部材を、順を追って説明する。先ず、軸1eには、第1駆動部材3と第2駆動部材4が回転可能に取り付けられている。そのうち、第1駆動部材3は、第2駆動部材4よりもシャッタ地板1側に配置されていて、図示していないばねによって反時計方向へ付勢されている。また、この第1駆動部材3は、被係止部3aと、同軸上に設けられたピン3b,3cを有していて、背面側に設けられているピン3cの先端部は、シャッタ地板1の孔1bを貫通して、羽根室内に臨んでいる。他方、第2駆動部材4は、第1駆動部材3を付勢しているばねよりも強いばねによって時計方向へ回転するように付勢されている。そして、ローラ4a,被係止部4b,押動部4cを有していて、その押動部4cが、第1駆動部材3のピン3bを押すようになっている。
【0012】
シャッタ地板1の軸1fには、第1駆動部材用第1係止部材5が、回転可能に取り付けられている。そして、この第1駆動部材用第1係止部材5は、軸1fに取り付けられた図示していない板ばねによって軸1fの軸方向へ付勢されており、その付勢力による摩擦抵抗力によって所定の回転位置での姿勢が保たれるようになっている。また、この第1駆動部材用第1係止部材5は、第1駆動部材3のピン3bを係止するための係止部5aと、第1駆動部材3のピン3cによって押される被押動部5bと、緩衝部材2に当接する二つの腕部5c,5dとを有している。
【0013】
シャッタ地板1の軸1gには、第1駆動部材用第2係止部材6が、回転可能に取り付けられていて、図示していないばねによって時計方向へ回転するように付勢されている。そして、この第1駆動部材用第2係止部材6は、第1駆動部材3の被係止部3aを係止するための係止部6aと、被押動部6bと、係合部6cとを有しているが、それらは何れも折曲部として形成されており、係合部6cは、シャッタ地板1の孔1dに挿入されている。
【0014】
シャッタ地板1の軸1hには、第2駆動部材用係止部材7が、回転可能に取り付けられており、図示していないばねによって時計方向へ回転するように付勢されている。そして、この第2駆動部材用係止部材7には、第2駆動部材4の被係止部4bを係止する係止部7aと、被押動部7bとが、折曲部で形成されている。また、この第2駆動部材用係止部材7は、図1の状態においては、被押動部7bが、図示していない電磁石の鉄片部材に接触することによって、この姿勢を保たされている。即ち、図1の状態においては、電磁石は非通電状態であって、鉄片部材は、ばねの付勢力によって離反位置にあるところへ、その付勢力よりも弱いばねの付勢力によって、被押動部7bが接触した状態となっている。
【0015】
シャッタ地板1の軸1iには、解除部材8が、回転可能に取り付けられており、図示していないばねによって時計方向へ回転するように付勢されている。そして、この解除部材8は、第1駆動部材用第2係止部材6の被押動部6bを押す押動部8aと、ローラ8bと、ピン8c、被係止部8dとを有しているが、そのうちピン8cは、背面側に設けられていて、シャッタ地板1の孔1cに挿入されている。また、上記のばねの付勢力は、第1駆動部材用第2係止部材6を付勢しているばねより強いため、図1においては、解除部材8は、そのピン8cが孔1cの下端縁に当接するまで回転しており、それによって押動部8aが、第1駆動部材用第2係止部材6を反時計方向へ回転させている。
【0016】
シャッタ地板1の軸1jには、解除部材用係止部材9が、回転可能に取り付けられており、図示していないばねによって反時計方向へ回転するように付勢されている。そして、この解除部材用係止部材9には、解除部材8の被係止部8dを係止する係止部9aと、被押動部9bとが、折曲部で形成されている。また、この解除部材用係止部材9は、図1の状態においては、被押動部9bが、図示していない電磁石(上記の第2駆動部材用係止部材7の説明における電磁石とは異なる電磁石)の鉄片部材に接触することによって、第2駆動部材用係止部材7の場合と同様にして、この姿勢を保たされている。
【0017】
シャッタ地板1の軸1kには、第1セット部材10が、回転可能に取り付けられており、図示していないばねによって反時計方向へ回転するように付勢されているが、図1には、その回転を柱1pによって阻止されている状態が示されている。そして、この第1セット部材10は、図示していない部材によって操作されるローラ10aと、押動部10bとを有している。
【0018】
シャッタ地板1の軸1mには、第2セット部材11が、回転可能に取り付けられており、図示していないばねによって反時計方向へ回転するように付勢されているが、図1においては、ローラ11aが上記の押動部10bに接触することによって、その回転を阻止されている。そして、この第2セット部材11は、ローラ11aのほかに、もう一つのローラ11bと、ピン11cと、孔11dとを有していて、図1の状態においては、ローラ11bが、第2駆動部材4のローラ4aに接触し、第2駆動部材4の時計方向への回転を阻止している。また、ピン11cは、第2セット部材11が時計方向へ回転されたとき、上記した図示されていない二つの鉄片部材を、夫々の電磁石に接触させるためのものである。
【0019】
また、上記の軸1kには、第1セット部材10のほかに、第3セット部材12が、回転可能に取り付けられていて、その第3セット部材12は、カム形状をした押動部12aと、表面側に立設した軸12bと、その軸12bと同心的に背面側に設けたピン12cとを有している。そのうち、押動部12aは、解除部材8のローラ8bを押す部位であり、ピン12cは、第1駆動部材用第1係止部材5の腕部5cを押すための部位である。
【0020】
更に、上記の第2セット部材11と第3セット部材12との間には、連結部材13が取り付けられている。そして、その取り付け方は、連結部材13を第3セット部材12の軸12bに回転可能に取り付け、第2セット部材11の孔11dを連結部材13の軸13aに対して回転可能に嵌合させるようにしている。
【0021】
次に、シャッタ地板1の背面側に取り付けられているシャッタ羽根の構成を説明するが、本実施例の場合には、フォーカルプレンシャッタであるにもかかわらず、通常のシャッタのように、撮影に際してスリットを形成しないので、シャッタ羽根は一つしか設けられていない。そして、本実施例のシャッタ羽根は、二つのアーム14,15と、5枚の羽根16,17,18,19,20とで構成されている。そして、アーム14,15は、それらの一端部が、羽根室に突き出している軸1e,1gに、回転可能に取り付けられている。また、羽根16,17,18,19,20は、アーム14,15の他端部に向けて、夫々二つの連結軸を介して順に枢支されているが、その各枢支構成は周知であるので、詳細な説明は省略する。そして、アーム14には孔が形成されており、その孔には、上記した第1駆動部材3のピン3cが回転可能に嵌合している。
【0022】
このような構成をした本実施例のフォーカルプレンシャッタは、構成の一部を変更するようなことをせずに、そのまま、フィルムを使用するカメラにも、CCDなどの撮像素子を使用するカメラにも、採用することが可能である。そこで、次に行なう本実施例の作動説明においては、比較的採用される可能性の大きな、CCDを用いた一眼レフタイプの電子カメラの場合で説明することにする。
【0023】
先ず、図1は撮影が終了した直後の状態を示している。そのため、被写体の光路を規制する長方形の開口部1aは、5枚の羽根16,17,18,19,20によって閉鎖されている。また、この閉鎖状態は、第2駆動部材4が、大きな付勢力を有する図示していないばねによって時計方向へ回転されていて、その押動部4cが、第1駆動部材3のピン3bを押し、ピン3cを孔1bの下方の端縁に押し付けることによって維持されている。
【0024】
このような撮影直後の状態からセット状態への作動は、第1セット部材10が、ローラ10aを操作されて、図示していないばねの付勢力に抗して時計方向へ回転されることによって行なわれる。そして、第1セット部材10は、その回転によって、押動部10bがローラ11aを押し、第2セット部材11を図示していないばねの付勢力に抗して時計方向へ回転させ、また、第2セット部材11は、その回転によって、連結部材13を介して第3セット部材12を時計方向へ回転させることになる。
【0025】
また、第2セット部材11は、その回転によって、ローラ11bがローラ4aを押して、第2駆動部材4を図示していないばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させていく。そのため、図示していないばねによって反時計方向へ回転するように付勢されている第1駆動部材3も、ピン3bが押動部4cに追従して回転し、ピン3cによってアーム14を反時計方向へ回転させていく。しかしながら、この第1駆動部材3の回転は、そのピン3cが、第1駆動部材用第1係止部材5の係止部5aに係止されて直ちに停止される。そのため、羽根16,17,18,19,20は、僅かに作動されただけであるから、その停止状態では開口部1aを完全に覆ったままである。そして、その後は、第2駆動部材4だけが、反時計方向への回転を続けていくことになる。
【0026】
他方、第2セット部材11の時計方向への回転と並行して、第3セット部材12が時計方向へ回転しているので、カム形状をした押動部12aがローラ8bを押し、解除部材8を図示していないばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させていく。そのため、図示していないばねによって時計方向へ付勢されている第1駆動部材用第2係止部材6は、その被押動部6bが押動部8aに追従して回転し、係止部6aを第1駆動部材3の被係止部3aの作動軌跡内に移動させていく。そして、その第1駆動部材用第2係止部材6の回転は、係合部6cが孔1dの縁に当接することによって停止される。そのときの状態が図2に示されている。
【0027】
また、この図2の状態は、第3セット部材12の背面側に設けられたピン12cが、第1駆動部材用第1係止部材5の腕部5cの下端縁を僅かに押した状態でもある。そのため、第1駆動部材用第1係止部材5は、図示していない板ばねによって与えられる摩擦抵抗力に抗して僅かに時計方向へ回転され、腕部5cが緩衝部材2から離れた状態になっているが、この状態になっても、上記した第1駆動部材3の係止状態は維持されている。
【0028】
そして、この状態からセット作動が僅かに進むと、第1駆動部材用第1係止部材5が更に時計方向へ回転されることによって、ピン3cの係止が解除される。そのため、第1駆動部材3は、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転されるが、その回転は第1駆動部材用第2係止部材6の係止部6aによって阻止され直ちに停止される。従って、この場合にも、羽根16,17,18,19,20は、僅かに作動されたことになるが、その停止状態では未だ開口部1aを完全に覆ったままである。そのときの状態が図3に示されている。
【0029】
その後、尚も各セット部材10,11,12がセット作動を続けると、第2セット部材11は、第2駆動部材4を時計方向へ回転するように付勢しているばねをオーバーチャージさせることによって、第2駆動部材4を、セット位置を越えたオーバーセット位置まで作動させる。他方、その第2セット部材11は、それと並行して、ピン11cによって周知のホールド部材の作動を可能にし、図示していない二つの鉄片部材を、それらに離反習性を付与しているばねの付勢力に抗して、夫々の電磁石に接触する位置まで作動させる。
【0030】
その結果、それまで図示していない各鉄片部材によって図1に示す状態に維持されていた第2駆動部材用係止部材7と解除部材用係止部材9とが、図示していないばねの付勢力によって回転し、第2駆動部材用係止部材7は、その係止部7aを第2駆動部材4の被係止部4bの作動軌跡内に深く臨ませ、解除部材用係止部材9は、その係止部9aを解除部材8の被係止部8dの作動軌跡内に臨ませる。そして、第1駆動部材用第1係止部材5の腕部5dが緩衝部材2に当接することによって、各セット部材10,11,12の作動が停止する。その停止状態が、図4に示されたオーバーセット状態である。
【0031】
その後、セット部材10は、直ちに、図1に示した初期位置への復帰作動を行わされる。それに伴って、第2セット部材11も、図示していないばねの付勢力によってローラ11aが押動部10bに追従して反時計方向へ回転し、それによって、連結部材13を介して第3セット部材12を反時計方向へ回転させるが、第1駆動部材用係止部材5は、その腕部5cが第3セット部材12のピン12cに追従せず、図示していない板ばねの付勢力によって、図4に示された位置を維持されたままでいる。
【0032】
また、第2セット部材11の反時計方向への回転によって、第2駆動部材4は、そのローラ4aがローラ11bに追従して時計方向へ回転することになるが、その回転は、直ちに被係止部4bが第2駆動部材用係止部材7の係止部7aに係止されて停止する。また、それと並行して、解除部材8は、そのローラ8bが第3セット部材12の押動部12aに追従して時計方向へ回転することになるが、その回転は、押動部8aが第1駆動部材用第2係止部材6の被押動部6bを押す前に、被係止部8dが解除部材用係止部材9の係止部9aに係止されて停止する。そして、各セット部材10,11,12が図1の位置に復帰した状態が、本実施例のセット状態であり、その状態が図5に示されている。尚、セット部材11が、このような初期位置へ復帰しても、上記した周知のホールド部材が、鉄片部材を電磁石に接触させた状態にホールドしている。
【0033】
次に、撮影に先立って電源スイッチが閉じられると、各種の電子回路が働き、露光制御関連の回路がスタンバイ状態となる。そして、撮影に際して、カメラのレリーズボタンが押されると、一方では、ミラーの跳ね上げが行なわれ、他方では、上記した図示していない二つの電磁石に通電が行なわれる。それによって、図示していない各鉄片部材が夫々の電磁石に吸着保持された後、ホールド部材が鉄片部材の離反作動の軌跡外へ退く。その後、ミラーが安定した停止状態になると、二つの電磁石にうちの一方の電磁石に対する通電が断たれ、それに吸着されていた鉄片部材が電磁石から離反作動を行い、図5の状態にある解除部材用係止部材9の被押動部9bを押し、図示していないばねの付勢力に抗して時計方向へ回転させる。
【0034】
その結果、解除部材用係止部材9の係止部9aによる係止が解け、解除部材8は、ピン8cが孔1cの下端縁に当接するまで、図示していないばねの付勢力によって時計方向へ回転し、その過程で、押動部8aが被押動部6bを押すことにより、第1駆動部材用第2係止部材6を図示していないばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させる。そのため、係止部6aによる被係止部3aの係止が解け、第1駆動部材3は、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転し、ピン3cがアーム14を反時計方向へ回転させることによって、羽根16,17,18,19,20を上方へ作動させていく。そして、第1駆動部材3が、そのピン3bを第2駆動部材4の押動部4cに当接させ、羽根16,17,18,19,20を開口部1aの上方位置へ格納させて停止した状態が、図6に示された状態である。
【0035】
このようにして、開口部1aが全開状態になると、CCDに対する所定の電荷の蓄積開始信号をトリガー信号として、露光制御回路が起動し、所定の制御秒時のカウントが開始される。そして、その制御秒時のカウントが終了すると、その出力信号によって、上記した図示していない二つの電磁石のうち、他方の電磁石に対する通電も断たれることになる。そのため、図示していない鉄片部材が電磁石から離反作動を行い、被押動部7bを押して第2駆動部材用係止部材7を反時計方向へ回転させる。
【0036】
その結果、被係止部4bに対する係止部7aの係止が解け、第2駆動部材4は、図示していないばねの付勢力によって時計方向へ回転するが、そのとき、押動部4cがピン3bを押しながら回転するので、第1駆動部材3も時計方向へ回転させられる。そのため、アーム14もピン3cによって時計方向へ回転され、5枚の羽根16,17,18,19,20は、隣接する羽根同士の重なりを小さくしつつ下方へ移動し、開口部1aを閉じていく。そして、その閉じ作動の終了段階になると、第1駆動部材3のピン3cが第1駆動部材用第1係止部材5の被押動部5bを押すことになる。
【0037】
それによって、第1駆動部材用第1係止部材5は反時計方向へ回転させられることになるが、この第1駆動部材用第1係止部材5は、図示していない板ばねによって軸方向へ付勢されていることから、その付勢に伴う摩擦抵抗力によって、第1駆動部材3と第2駆動部材4の回転が制動されることになる。そして、それらの駆動部材3,4の回転は、第1駆動部材用第1係止部材5の腕部5cが緩衝部材2に当接することによって停止する。
【0038】
また、このとき、板ばねによる摩擦抵抗力によって制動を加えられ且つ緩衝部材2によって停止時における衝撃を吸収されているとはいえ、駆動部材3,4がバウンドして開口部1aの一部を一時的に開いてしまうことがあり得るが、そのときには、既に、第1駆動部材用第1係止部材5の係止部5aがピン3cのバウンド方向の作動軌跡内に入ってきているので、そのような不都合は生じない。このようにして、開口部1aが閉じた後、画像書き込み装置などを介して被写体像が記憶媒体に記憶され、且つミラーがファインダ光学系による観察可能状態に復帰して、次の撮影に備えることになる。その状態が図1に示した状態である。
【0039】
尚、上記の作動説明は、結像面にCCDを配置した一眼レフカメラの場合で説明したが、特に詳しく説明するまでもなく、本実施例は結像面にフィルムを配置した一眼レフカメラの場合にも用いることが可能である。但し、その場合には、通常のように、先羽根(群)と後羽根(群)とによってスリットを形成するタイプのものとは、タイプが異なるものになることは言うまでもない。また、本実施例は5枚の羽根が二つのアームに枢支されているが、アームと羽根の数については、実施例の場合に限定されるものではない。しかしながら、特に羽根が1枚の場合には、アームの数は二つであることが好ましい。
【0040】
また、上記の実施例においては、第1駆動部材用第1係止部材5の回転軸1fに板ばねを取り付けるようにしたことと、セット時において第1駆動部材3の係止を確実に行なえるようにしたために、複雑な構成を採用しているが、第1駆動部材用第1係止部材5による第1駆動部材3の係止が確実に行なえるのであれば、ねじりコイルばねによって、第1駆動部材用第1係止部材5に、反時計方向へ回転する付勢力を付与しておき、開き作動開始時において、実施例においては解除部材用係止部材9の被押動部9bを押す鉄片部材によって、その係止部5aによる第1駆動部材3の係止を解除するようにすると、構成が格段に簡単となる。
【0041】
また、上記の実施例においては、第1駆動部材3とアーム14とを別部材として構成しているが、これらを単一部材として構成しても差し支えない。即ち、アーム14を、ばねによって反時計方向へ回転するように付勢し、ピン3b,3cに相当するピンをアーム14に設け、シャッタ地板1の表面側で、第2駆動部材4の押動部4cが、そのピンを押し得るようにし、且つ第1駆動部材用第1係止部材5の係止部5aが、そのピンを係止し得るように構成すればよい。
【0042】
更に、上記の実施例においては、第1駆動部材用第1係止部材5が、二つの駆動部材3,4の作動を制動するように構成しているが、本発明は、そのような制動機能を有するものに限定されるものではなく、第1駆動部材3の係止機能を有するだけであっても差し支えない。また、本発明のシャッタは、実施例のように、ばねを駆動源として用いたものに限定されず、モータの往復作動によって、アームを往復作動させるようにしても差し支えない。
【0043】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、地板に枢着されている複数のアームに、平行リンク機構を構成するようにして所定数枚の羽根を取り付け、撮影開始信号によってそのアームの一つを往動させ、撮影終了信号によって復動させるようにしただけのものであるから、小型化と低コスト化が可能であって、簡易型のカメラ用フォーカルプレンシャッタとして極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のシャッタを被写体側から視て左側の約半分を示した平面図であって、撮影が終了した直後の閉鎖状態を示したものである。
【図2】図1と同様にして示した実施例の平面図であって、セット作動を開始した直後の状態を示したものである。
【図3】図1及び図2と同様にして示した実施例の平面図であって、セット作動中における図2よりも後の状態を示したものである。
【図4】図1〜図3と同様にして示した実施例の平面図であって、オーバーセット状態を示したものである。
【図5】図1〜図4と同様にして示した実施例の平面図であって、セット状態を示したものである。
【図6】図1〜図5と同様にして示した実施例の平面図であって、開放状態を示したものである。
【符号の説明】
1 シャッタ地板
1a 開口部
1b,1c,1d,11d 孔
1e,1f,1g,1h,1i,1j,1k,1m,12b 軸
2 緩衝部材
3 第1駆動部材
3a,4b,8d 被係止部
3b,3c,8c,11c,12c ピン
4 第2駆動部材
4a,8b,10a,11a,11b ローラ
4c,8a,10b,12a 押動部
5 第1駆動部材用第1係止部材
5a,6a,7a,9a 係止部
5b,6b,7b,9b 被押動部
5c,5d 腕部
6 第1駆動部材用第2係止部材
6c 係合部
7 第2駆動部材用係止部材
8 解除部材
9 解除部材用係止部材
10 第1セット部材
11 第2セット部材
12 第3セット部材
13 連結部材
14,15 アーム
16,17,18,19,20 羽根
Claims (3)
- 羽根室を構成するために所定の間隔を空けて相互に取り付けられていて結像面の直前位置において被写体光の光路を規制するための長方形の開口部を形成した二つの地板と、前記二つの地板の間に配置されていて前記開口部の側方位置において前記二つの地板の一方に一端部を枢着された複数のアームと、それらのアームに対して平行リンク機構を達成するようにして取り付けられた所定枚数の羽根と、撮影開始信号により第1ばねの付勢力で前記アームの一つを往動させ前記羽根に前記開口部を全開にさせる第1駆動部材と、撮影終了信号により第2ばねの付勢力で前記第1駆動部材を前記第1ばねの付勢力に抗して作動させ前記アームの一つを復動させることによって前記羽根に前記開口部を閉鎖させる第2駆動部材と、を備えていて、前記第1駆動部材は、前記第2駆動部材が前記第2ばねの付勢力に抗してセットされるときには係止部材によって係止されていて、その係止を前記撮影開始信号に応じて解除され、前記係止部材は、前記第1駆動部材が前記第1ばねの付勢力に抗して前記第2駆動部材によって作動させられたとき、その作動中に前記第1駆動部材に接触して該作動に制動を与えるようにしたことを特徴とするカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
- 前記第1駆動部材は、前記第2駆動部材が前記第2ばねの付勢力に抗してセットされる過程で、セット手段によって前記係止部材による係止を解除されて第2の係止部材に係止され、その第2の係止部材による係止を前記撮影開始信号に応じて解除されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
- 前記第1駆動部材と前記アームの一つとが単一部材として構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
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