JP4361746B2 - 塩化ビニル系樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は塩化ビニル系樹脂組成物に係り、特に成形時の反応によって衝撃強度と引張強度を改良できる塩化ビニル系樹脂組成物及びその成形品に関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
塩化ビニル系樹脂組成物においては、通常衝撃強度を向上させる目的で、通常コア/シェル型の衝撃改良剤、例えばABS、MBS樹脂やアクリルゴム等を塩化ビニル樹脂に添加し各種成形方法により成形される。
しかしながら、上記コア/シェル型の衝撃改良剤は衝撃強度の改良には効果があるが、その反面、引張強度、特に抗張力が低下する問題点があることが知られている。
このようなコア/シェル型の衝撃改良剤を塩化ビニル樹脂に混合し成形した場合その衝撃改良剤とポリ塩化ビニルには化学的な結合がないために引張強度を確保する添加量では衝撃強度が発現しなかった。
一方コアシェル型衝撃改良剤をあらかじめポリ塩化ビニルと共重合したものがあるが、その場合、そのポリ塩化ビニル共重合体の重合工程が複雑になるため工業的生産が劣るという問題があった。また、熱安定性を良好するために重合工程で塩素化塩化ビニル系樹脂の分散物に、窒素ガスを吹き込みながらヒドラジンを添加し化学的な結合を行わせる技術が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
しかしながら、塩化ビニル系樹脂を成形する際に、特定の添加物を組み合わせて溶融温度にて化学的な結合を行わせ成形品の引張強度と衝撃強度の両特性を満足させる技術は知られていなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−239119号公報
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記問題点を解消できる塩化ビニル系樹脂組物を見出したものであって、本発明の要旨とするところは、
塩化ビニル系樹脂に少なくともアクリレート系共重合体と反応性相溶化剤を添加してなり、反応性相溶化剤の添加量がアクリレート系共重合体以下の添加量からなることを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物にある。
【0006】
反応性相溶化剤にはヒドラジン系化合物が好適に使用でき、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.1重量部〜2.0重量部の範囲で添加するのが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明でいう塩化ビニル系樹脂(以下「PVC」という)には、通常のポリ塩化ビニルホモポリマーが使用でき、さらに少量の酢酸ビニル、塩化ビニリデン、スチレン等の共重合性モノマーが共重合されたコポリマーやこれらの樹脂の後塩素化物も使用できる。このPVCの平均重合度は600〜1,700程度、好ましくは820〜1,450程度の範囲のものが好適に使用できる。
【0008】
上記PVCには通常の安定剤を添加するが、安定剤としては毒性が少ない有機錫系安定剤、例えばジオクチル錫化合物やモノブチル錫化合物及びこれらの混合物等が好適に使用できる。安定剤の添加部数としてはPVC100重量部に対して0.2〜3.0重量部、好ましくは0.3〜2.5重量部の範囲で使用すればよい。
【0009】
本発明では上記PVCに特定の衝撃改良剤を使用する必要があり、アクリレート系共重合体を使用する。アクリレート系共重合体としては、アクリルゴム-アクリレート共重合体、ブタジエンゴム-アクリレート共重合体、(ブタジエン-スチレン)ゴム-アクリレート共重合体、(アクリル−シリコンゴム)-アクリレート共重合体、(アクリル−ブタジエン-スチレンゴム)-アクリレート共重合体等が挙げられる。
アクリレート系共重合体の添加部数はPVC100重量部に対して、4.0〜15.0重量部、好ましくは5.0〜8.0重量部の範囲で使用する必要がある。4重量部未満では得られる成形品の衝撃強度が劣り、15重量部を越えると引張強度が劣るという問題がある。
【0010】
本発明では上記アクリレート系共重合体と共に反応性相溶化剤を添加する必要があり、成形時の溶融温度により反応することで物性改良が可能となる。反応性相溶化剤としてはヒドラジン系化合物が好適に使用できる。ヒドラジン系化合物としては下記の化合物が使用できる。
▲1▼ 水加ヒドラジン、ヒドラジン塩化合物
水加ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、臭化水素酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、燐酸ヒドラジン、炭酸ヒドラジン等
▲2▼ アルキルヒドラジン化合物
ベンジルヒドラジン、ブチルヒドラジン塩酸塩、イソプロピルヒドラジン硫酸塩、ヒドラジノ酢酸メチル塩酸塩等
【0011】
▲3▼ヒドラジド化合物
アジピン酸ジヒドラジド、ゼバチン酸ジヒドラジド、トデカンジオヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ヒドロキシナフトエ酸ヒドラジド、カルボヒドラジド、チオカルボヒドラジド、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゾフェノンヒドラジド、アミノポリアクリルアミド等
▲4▼ ピラゾール化合物
▲5▼ トリアゾール化合物
▲6▼ テトラゾール化合物
▲7▼ チアジアゾール化合物
▲8▼ ピリダジン化合物
▲9▼ アゾ化合物
【0012】
ヒドラジン系化合物の添加部数はPVC100重量部に対して、0.1〜5.0重量部、好ましくは0.3〜2.0重量部の範囲で使用するのが好ましい。0.1重量部未満では得られる成形品の引張強度が劣り、5重量部を越えると熱安定性が劣り易いという問題がある。
ここで、ヒドラジン系化合物の添加部数は上記アクリレート系共重合体以下の添加量からなる必要があり、アクリレート系共重合体を超えて使用すると塩化ビニル系樹脂との反応が進行しすぎるため塩化ビニル系樹脂自体の架橋を促進し粘度上昇および熱分解によって成形加工が困難になるという問題がある。
【0013】
本発明の組成物では、さらにステアリン酸カルシウム等の金属石鹸、ジペンタエリスリトール等の多価アルコール、着色剤、滑剤、紫外線吸収剤等を適宜添加することができる。
【0014】
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物を調製するには、従来から知られている方法によることができる。例えば、塩化ビニル系樹脂、ヒドラジン系化合物、アクリレート系共重合体、さらに要すれば他の樹脂添加剤をそれぞれ所定量秤量し、混合機で混合してドライブレンドの形態とする方法、ドライブレンドの形態のものを混練機で混練する方法などが挙げられる。
【0015】
使用できる混合機、混練機には特に制限はなく、従来から知られている混合機、例えばリボンミキサー、チェンジカンミキサー、スーパーミキサー(ヘンシェルミキサー)などが挙げられる。混練機としては、ミキシングロール、バンバリーミキサー、Σ羽根型混練機、高速二軸連続ミキサー、押出機型混練機などが挙げられる。
【0016】
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物は、従来から知られている成形法、例えば押出成形、射出成形、圧縮成形などによって目的の透明性に優れた製品、部品などを製造することができる。製品、部品としては、波板、平板、パイプなどの押出成形品が好適に製造できる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが本発明はこれに限定されるものではない。
共通配合
塩化ビニル樹脂(重合度1300)……100重量部
錫系安定剤(ジオクチル錫メルカプト) …… 1重量部
滑剤(ポリエチレンワックス/ジペンタエリスリトールステアリン酸エステル=
1/1混合滑剤ワンパック) …… 1重量部
塩素化ポリエチレン ………… 1.5重量部
着色剤 ………… 0.3重量部
【0018】
[実施例1]
上記共通配合にアクリル系衝撃改良剤(シリコンアクリル系:三菱レイヨン(株)製「メタブレンS2001」)5重量部、ヒドラジン化合物(アジピン酸ジヒドラジド:日本ヒドラジン(株)製「ADH」)を0.5重量部配合した。
上記配合物1Kgをヘンシェルミキサーで混合した後、2本ロールを用いて190℃、5分間混練し、0.5mm厚のシートを得た。得られたシートを用い加熱プレス機により195℃、15分間、100Kg/cm2で加熱加圧して1mm及び5mm厚のサンプルを得た。得られたサンプルを用いて衝撃強度と引張強度を測定した。
その結果、衝撃強度は97cm、引張強度は46.0MPaといずれも良好であった。
通常、衝撃強度は85cm以上、引張強度は44MPa以上が耐衝撃性硬質塩化ビニル系樹脂成形品として良好といえる。
【0019】
なお、衝撃強度と引張強度の測定方法は以下の通りである。
・衝撃強度
JIS7211に準拠して測定した。1mm厚みのサンプルを用い、おもり2Kg先端R=5mm、−10℃雰囲気での落錘試験を行い50%破壊高さを測定した。
・引張強度
JIS K 6745に準拠して測定した。サンプル厚み5mm、測定温度23℃。
【0020】
[実施例2]
実施例1で用いたヒドラジン化合物に代えて、アセトンチオセミカルバゾン(日本ヒドラジン(株)製「ATS」)を用いた以外は実施例1と同一内容にてサンプルを得た。得られたサンプルを用いて衝撃強度と引張強度を測定した。
その結果、衝撃強度は87cm、引張強度は46.5MPaといずれも良好であった。
【0021】
[比較例1]
実施例1の配合組成で、ヒドラジン化合物を使用しない以外は実施例1と同一内容にてサンプルを得た。得られたサンプルを用いて衝撃強度と引張強度を測定した。
その結果、衝撃強度は80cm、引張強度は45.9MPaと衝撃強度が低かった。
【0022】
[比較例2]
実施例1の配合組成でアクリル系衝撃改良剤(シリコンアクリル系:三菱レイヨン(株)製「メタブレンS2001」)を7重量部に代えるとともにヒドラジン化合物を使用しない以外は実施例1と同一内容にてサンプルを得た。得られたサンプルを用いて衝撃強度と引張強度を測定した。
その結果、衝撃強度は85cm、引張強度は41.0MPaと衝撃強度は良好であるが引張強度が低かった。
【0023】
【発明の効果】
上述したように本発明の樹脂組成物によれば、成形加工性、得られる成形品の外観、強度等に優れており、平板、パイプ、異型押出品等の各種成形品の製造への利用性が大である。
Claims (4)
- 塩化ビニル系樹脂に、少なくともアクリレート系共重合体と、反応性相溶化剤としてのヒドラジン系化合物とを添加してなり、反応性相溶化剤の添加量がアクリレート系共重合体以下の添加量であることを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物(発泡剤としてのヒドラジン系化合物を含有するものを除く)。
- ヒドラジン系化合物は、成形時の溶融温度により塩化ビニル系樹脂及びアクリレート系共重合体と反応する化合物であることを特徴とする請求項1記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 塩化ビニル系樹脂100重量部に対して反応性相溶化剤を0.1〜5.0重量部添加してなることを特徴とする請求項1又は2記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 請求項1乃至3のいずれか1項記載の塩化ビニル系樹脂組成物を成形してなる成形品であって、ヒドラジン系化合物が塩化ビニル系樹脂及びアクリレート系共重合体と反応してなるものであることを特徴とする成形品(発泡したヒドラジン系化合物を含有するものを除く)。
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