JP4355436B2 - 配線パターンの形成方法、回路基板の製造方法および遮光パターンの形成された透光体の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、配線パターンの形成方法に係り、特に、基体上に、インクジェットヘッドを用いて、金属微粒子含有インクにより直接回路パターンを描画するようにした配線パターンの形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、回路基板の製造方法として、例えば、次のような方法が知られている。
(1)銅張り積層板上に、レジストを被覆し、フォトリソグフィ法により、回路パターンの露光、未露光レジストの溶解除去、レジスト除去部のエッチングにより導体パターンを形成する方法。
(2)セラミックス基板上にスクリーン印刷により導電ペーストを所望の回路パターンに印刷し、非酸化雰囲気中で熱処理して導電ペースト中の金属微粒子を焼結して導体パターンを形成する方法。
(3)絶縁基板上に、導電金属の蒸着により薄膜の導電層を形成し、この導電層上に、レジストを被覆し、フォトリソグフィ法により、回路パターンの露光、未露光レジストの溶解除去、レジスト除去部のエッチングにより導体パターンを形成する方法。
【0003】
しかしながら、(1)の銅張り積層板を用いる方法は、幅広の配線パターンを形成する目的には適しているが、ファインパターンの形成には不向きであり、しかもレジストの溶解や銅箔のエッチングが必要なため廃液処理の必要があり、環境上の問題が派生する虞れがある。また、工程数が多いため設備費や生産コストがかさむという問題もある。
【0004】
(2)のスクリーン印刷による方法は、スクリーンのメッシュを細かくするには強度の点から制約があり、このためファインパターンの形成には不向きである、という問題がある。
【0005】
さらに、(3)の蒸着薄膜をエッチングする方法では、薄膜の導電層のエッチングが必要なため廃液処理の必要があり、環境上の問題が派生する虞れがある。また、工程数が多いため設備費や生産コストがかさむという問題もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述した通り、従来から、回路基板の製造方法として、銅張り積層板を用いる方法、スクリーン印刷による方法、蒸着薄膜をエッチングする方法等が知られているが、銅張り積層板を用いる方法やスクリーン印刷による方法には、ファインパターンの形成ができない、廃液処理の必要がある、設備費や生産コストがかさむという問題があり、蒸着薄膜をエッチングする方法には、廃液処理の必要があり、設備費や生産コストがかさむという問題があった。
【0007】
本発明はかかる従来の問題を解消するためになされたもので、ファインパターンの形成が容易で、廃液処理の必要がなく、生産工程が単純で設備費や生産コストが少なくて済む配線パターンの形成方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の配線パターンの形成方法は、 基体上に、インクジェット装置を用いて、平均粒子径が100nm以下の金属微粒子を保護コロイドとしての重合体又は界面活性剤を含有する水または有機溶剤中に分散させた粘度が3〜30センチポイズの金属微粒子インクにより、回路パターンを描画する工程と、前記基体を150〜300℃の温度で熱処理するか、もしくは光線により処理して前記回路パターンに含まれる重合体または界面活性剤を分解揮散させて金属微粒子パターンを形成する工程と、前記金属微粒子パターンをメッキ核として導電金属によるメッキを施し所望の膜厚の導体パターンとする工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明において導体パターンを形成する基体としては、用途に応じて任意のものを使用することができる。
【0010】
回路基板を製造する場合には、後述する熱処理に耐え得る材質の基体であれば特に制限はない。
【0011】
すなわち、本発明に用いられる基体としては、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ガラス−エポキシ基板、紙−フェノール基板、シリコン基板、セラミックス基板、ガラス基板等が例示される。
【0012】
基体として有機質材料からなるフィルムや基板を使用する場合には、金属微粒子インクの重合体としては、この基材の軟化点より低い温度で分解揮散する、例えばウレタン系の重合体が適している。
【0013】
回路基板を製造する場合には、特に、耐熱性、電気絶縁性の優れたポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ガラス−エポキシ基板、紙−フェノール基板、セラミックス基板、ガラス基板等が適している。
【0014】
また、OHPのような画像投射装置に用いる遮光パターンの形成された透光体を製造する場合には、無色で透明度の高いポリエステルフィルムやガラス基板等が適している。
【0015】
本発明に用いられる金属微粒子としては、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Mo、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等があげられるが、特に、Au、Ag、Cuのような金属の微粒子を用いると、電気抵抗が低く、かつ腐食に強い回路パターンを形成することができるので好ましい。
【0016】
本発明において、金属微粒子インクに用いられる重合体または界面活性剤は、金属微粒子の保護コロイドとして作用するものであり、特に、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリウレタンとアルカノールアミンとのブロック共重合体が好適している。
【0017】
本発明の金属微粒子インクは、水系用インクと油系用インクがある。
【0018】
金属微粒子を、水を主体とする分散媒に分散せしめてなる水性インクは、例えば、次のような方法で調整することができる。
【0019】
すなわち、塩化金酸や硝酸銀のような金属イオンソース水溶液に水溶性の重合体を溶解させ、撹拌しながらジメチルアミノエタノールのようなアルカノールアミンを添加する。数10秒〜数分で金属イオンが還元され、平均粒系100nm以下の金属微粒子が析出する。塩素イオンや硝酸イオンを限外ろ過などの方法で除去した後、濃縮・乾燥することにより濃厚な金属微粒子インクが得られる。この金属微粒子インクは、水やアルコール系溶媒、テトラエトキシシランやトリエトキシシランのようなゾルゲルプロセス用バインダーに安定に溶解・混合することが可能である。
【0020】
金属微粒子を油を主体とする分散媒に分散せしめてなる油性インクは、例えば、次のような方法で調整することができる。
【0021】
すなわち、油溶解性のポリマーをアセトンのような水混和性有機溶媒に溶解させ、この溶液を金属イオンソース水溶液と混合する。混合物は不均一系であるが、これを撹拌しながらアルカノールアミンを添加すると金属微粒子は重合体中に分散した形で油相側に析出してくる。これを洗浄・濃縮・乾燥させると水系と同様の濃厚な金属微粒子インクが得られる。この金属微粒子インクは、芳香族系、ケトン系、エステル系などの溶媒やポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等に安定に溶解・混合することが可能である。
【0022】
金属微粒子インクの分散媒中における金属微粒子の濃度は、最大80重量%とすることが可能であるが、用途に応じて適宜稀釈して使用する。
【0023】
通常、金属微粒子インクにおける金属微粒子の含有量は2〜50重量%、界面活性剤および樹脂の含有量は0.3〜30重量%、粘度は3〜30センチポイズが適当である。
【0024】
本発明に使用するインクジェット装置としては、サーマル方式、ピエゾ方式のいずれも使用可能である。ただ、前者は分散媒の突沸現象を利用して金属微粒子インクを噴射するので、使用する金属微粒子インクとしては、油性インクよりも水系性インクの方が適している。
【0025】
現在、公知のインクジェット装置の解像度は、2000DPIに達しているので、本発明によれば6μmの線幅のパターンを形成することが可能である。
【0026】
次に本発明において回路パターンを導体パターンとして用いて回路基板を形成する方法について説明する。
【0027】
まず、用途に応じて選択された正常な絶縁基板上に、インクジェット装置を用いて所定の厚さの回路パターンを形成する。
【0028】
次に、例えば100℃のオーブン中で3分間程度加熱して乾燥させ、さらに150〜300℃のオーブン中に15〜30分間程度置いて重合体を分解揮散させるとともに金属微粒子を焼結させて金属微粒子パターンを形成する。
【0029】
上記工程で得られた金属微粒子パターンをメッキ核として、導電金属によるメッキを施せば、厚膜の導電回路パターンを形成することが可能である。このようにして得られる導体パターンの比抵抗値は10-5〜10-6Ωcmであり、回路基板として十分使用することが可能である。
【0030】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施例について説明する。
【0031】
実施例1
平均粒径20nmのAg微粒子5重量%(保護コロイド1.5重量%を含む)、平均粒径50nmのPd微粒子15重量%(保護コロイド3重量%を含む)を含む水系インクをサーマル式インクジェット装置を用いてポリイミドフィルム上に線幅10μm、膜厚0.5μmの回路パターンを形成し、100℃で15分間乾燥させた。得られたパターンに紫外線を照射して保護コロイド樹脂を分解揮散させたのち、銅の無電解メッキ浴に浸漬して銅膜厚5μmの配線パターンを形成したところ、配線回路の電気抵抗が3×10-5Ωcmの配線パターンを形成できた。
【0032】
実施例2
この実施例は、本発明を多層配線基板のスルーホールに適用した例である。
【0033】
図1に示すように、ポリイミド絶縁層1内に実施例1 で使用した水系インクおよび方法を用いて多層に線幅10μm、膜厚0.5μmの回路パターン2を形成したのち、各回路パターン2の層間接続部が露出するように逆円錐状の透孔3を形成し、この透孔内に同じ水系インクを用いて、サーマル式インクジェット装置により膜厚0.5μmの塗膜4を形成し、100℃で15分間乾燥させた。
【0034】
得られた塗膜4に紫外線を照射して保護コロイド樹脂を分解揮散させたのち、銅の無電解メッキ浴に浸漬して膜厚5μmの銅膜からなるスルーホール5が得られた。
【0035】
なお、以上の実施例では、回路パターンを、Ag微粒子とPd微粒子とを含む水系インクを用いて回路パターンを形成したが、例えば、以下の例に示すような金属微粒子を含むインクを用いる方法によって回路パターンを形成してもよい。
例1
Ag含有率20重量%のAg微粒子インク(Agの平均粒系10nm、保護コロイド樹脂5重量%含有のイソプロピルアルコール分散体)をプロピレングリコールモノメチルアセテートに固形分濃度が15重量%となるように溶解し、ピエゾ方式のインクジェット装置を用いてポリイミドフィルム上に線幅20μm、膜厚3μmの回路パターンを描画し、150℃で15分間乾燥させた。
【0036】
次に、200℃で40分間の焼き付けを行って導体パターンを形成した。得られた導体パターンの抵抗値は2×10-5Ωcmであり、回路基板として使用可能であることが確認できた。
【0037】
例2
Ag微粒子インクに変えてAu粒子インク(Au粒子平均系100nm、Au粒子含有率30重量%護コロイド含有率10重量%の水分散体)を用いて同様にピエゾ方式インクジェットによりガラス板上に線幅50μm、膜厚1μmの導電性回路パターンを作製し、同様に乾燥・焼き付けを行ったところ、配線回路の電気抵抗が3×10-4Ωcmの配線パターンを形成できた。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、基板等の上に従来達成出来なかった導電性のファインパターンをきわめて高精度にかつ迅速に形成することができる。本発明はまた、従来必要とされていた、レジスト膜の塗布や露光、現像、エッチングなどのプロセスを経ずに廃液処理を必要とせずに導電性の回路を形成できる。さらに本発明は、廃液処理などの問題を大幅に軽減できるので、設備費や生産コストの低減に著しく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を用いて形成された回路基板のスルーホールの部分を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1……ポリイミド絶縁層、2……回路パターン、3………逆円錐状の透孔、4……塗膜、5……スルーホール
Claims (2)
- 基体上に、インクジェット装置を用いて、平均粒子径が100nm以下の金属微粒子を保護コロイドとしての重合体又は界面活性剤を含有する水または有機溶剤中に分散させた粘度が3〜30センチポイズの金属微粒子インクにより、回路パターンを描画する工程と、
前記基体を150〜300℃の温度で熱処理するか、もしくは光線により処理して前記回路パターンに含まれる重合体または界面活性剤を分解揮散させて金属微粒子パターンを形成する工程と、
前記金属微粒子パターンをメッキ核として導電金属によるメッキを施し所望の膜厚の導体パターンとする工程と、
を含むことを特徴とする配線パターンの形成方法。 - 前記金属微粒子が、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Mo、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、GaおよびInから選ばれた一種以上からなることを特徴とする請求項1記載の配線パターンの形成方法。
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