JP4334717B2 - 内燃機関用点火装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、点火プラグに点火用高電圧を印加して、点火プラグを火花放電させる内燃機関用点火装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関において、混合気の正常な燃焼を得るために必要な火花エネルギの大きさは、内燃機関の運転状態によって異なることが知られている。ここで、火花エネルギは、火花放電で流れる放電電流(二次電流)の大きさおよび火花放電の継続時間にて表すことができる。
【0003】
例えば、アイドリング運転等の低回転低負荷時では、燃焼室への混合気の充填量は少なく、混合気の乱流(スワール流やタンブル流)の流速も遅いため、混合気の燃焼は非常に緩慢に進む。従って、低回転低負荷時に安定した燃焼を得るためには、火花エネルギを大きくして、火炎核の成長を助け、混合気の燃焼を助ける必要がある。一方、高回転高負荷時では、燃焼室への混合気の充填量は多く、かつ混合気密度が高いことから、燃焼は早く進むため、比較的小さい火花エネルギで充分である。
【0004】
このため、従来の内燃機関用点火装置では、火花エネルギが不足することのないよう、内燃機関の様々な運転状態の中で必要とされる最大の火花放電継続時間を設定して、最大の火花エネルギを供給できるようにしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の内燃機関点火装置では、必要最大の火花エネルギより少ない火花エネルギで運転可能な状態では、火花エネルギの供給が過剰になる。このことは、混合気への着火性に良好な影響をもたらすことがなく、点火プラグの電極消耗を早めてしまう。
【0006】
また別の問題として、内燃機関では高回転高負荷となる運転条件下ほど、混合気の乱流の流速が強く(速く)なるがゆえ、火花エネルギが低下する火花放電の後半時に、火花が流速下流に流されてやがて火花放電が吹き消え、再度発生するといった繰り返し現象(所謂、多重放電)を引き起こすことがある。ここで、この多重放電について、図5を用いて詳細に説明する。図5(a)には、絶縁体13cの軸孔(図示しない)に挿設されると共に、その絶縁体13cの前端面から突出してなる中心電極13aと、その中心電極13aと対向するように備えられた接地電極13bとによりなる点火プラグ13が示され、この中心電極13aと接地電極13bとの間に形成されるプラグギャップGにおいて火花放電が発生する。
【0007】
ところで、通常、点火プラグにおける火花放電の発生直後にあっては、100[A]程度の非常に大きな二次電流(所謂、容量成分)が電極間に極短時間流れる。そして、その容量成分の後であって、火花放電期間中の前半時には、40〜100[mA]程度の二次電流(所謂、誘導成分)が流れる。この誘導成分は火花放電の経過と共に徐々に低下していき、点火コイルの二次巻線に残留する電磁エネルギが火花放電を継続できない程度に低下した時に、火花放電が自然に終了して0[A]となる。
【0008】
従って、火花放電の発生直後から火花放電の前半時にかけては、点火プラグの電極間に流れる二次電流が比較的大きい(火花エネルギが大きい)が、火花放電の後半時には、二次電流が徐々に小さくなってくるのである。そのために、混合気の乱流の流速が強いと、火花放電の後半時には、図5(a)に模式的に示すように火花放電が流され、火花放電が途切れてしまうのである。そして、この火花放電が途切れた時点において、点火コイルの二次巻線に残留する電磁エネルギによりプラグギャップGの二次電圧が再度上昇し、当該二次電圧が放電電圧に達すると火花放電が再度発生するのである。尚、図5(b)に多重放電時の点火プラグの電極間における二次電流の波形を示しており、縦軸を二次電流値、横軸を時間として波形を表している。この図5(b)によれば、二次電流の乱れが火花放電の後半時にみられ、多重放電が発生していることがわかる。
【0009】
このような現象下にあっては、火花放電が流速に下流に集中し、容量放電の繰り返し(多重放電)で電極温度が急激に上昇することとなり、電極材料の溶融やスパッタリングが促進され、特に流速下流側の電極ばかりが消耗する所謂偏消耗が発生し、点火プラグの寿命を無駄に縮めてしまうことにつながってしまう。
【0010】
一方、近年、内燃機関用点火装置では、点火プラグに点火用高電圧を印加するために点火コイルの一次巻線への通電・非通電(遮断)を切り換える手段として、パワートランジスタ等の半導体素子からなるスイッチング素子を使用する、所謂フルトランジスタ型の点火装置が一般的になっている。そして、こうしたフルトランジスタ型の点火装置によれば、点火コイルにエネルギを蓄積するための火花放電前における点火コイルの一次巻線への通電時間を、スイッチング素子の駆動時間(オン時間)を調整することにより、容易に制御できる。このため、この種の内燃機関用点火装置では、内燃機関の運転状態に応じて、点火コイルの一次巻線への通電時間を制御することにより、火花エネルギを混合気の燃焼に必要な量に制御できることになる。
【0011】
しかし、火花放電前の点火コイルの一次巻線への通電時間を制御するようにした場合、通電時間を短くすると、通電により点火コイルに蓄積されるエネルギが小さくなるので、通電遮断によって二次巻線に発生する点火用高電圧も低くなってしまう。この結果、例えば、内燃機関の高回転高負荷時に火花エネルギを小さくすべく、一次巻線への通電時間を短く制御すると、点火コイルの一次巻線への通電・遮断により二次巻線に発生する点火用高電圧が低くなってしまい、点火プラグへの点火に必要な要求電圧が高くなる高回転高負荷時といった運転条件下に見合った点火用高電圧が得られずに、失火を招く虞がある。
【0012】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、内燃機関用点火装置において、火花放電前の点火コイルの一次巻線への通電時間を制御することなく、火花エネルギを必要最小限に抑え、さらに多重放電の発生を抑えることにより、点火プラグの寿命を長くすることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、二次巻線が内燃機関に装着された点火プラグと共に閉ループを形成する点火コイルと、点火コイルの一次巻線に流れる一次電流を通電・遮断することにより、二次巻線に点火用高電圧を発生させ前記点火プラグの電極間に火花放電を発生させる火花放電発生手段と、内燃機関の運転状態に基づき、点火プラグの火花放電によって混合気を燃焼させるのに要する火花放電継続時間を算出する火花放電継続時間算出手段と、その火花放電継続時間算出手段にて算出された火花放電継続時間に応じて、点火プラグの火花放電を強制的に遮断する火花放電遮断手段と、火花放電発生手段による火花放電の発生から火花放電継続時間が経過した時期に、上記火花放電遮断手段を動作させる火花放電遮断時期制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
このように構成された本発明の内燃機関用点火装置においては、火花放電発生手段が点火プラグの電極間に火花放電を発生させてから、火花放電継続時間算出手段により算出された火花放電継続時間が経過した時期に、火花放電遮断時期制御手段が火花放電遮断手段を動作させることにより、火花放電を強制的に遮断することが注目すべき点である。つまり、本発明は、一次巻線への通電時間を内燃機関の運転状態に基づいて制御するのではなく、火花放電を強制的に遮断することで火花放電継続時間を制御するものであって、一次巻線への通電時間を充分長くすることができると共に、点火プラグに不必要に火花エネルギが供給されるのを防止することができる。
【0015】
そして、火花放電継続時間算出手段が、内燃機関の運転状態に応じて火花放電継続時間を算出することから、点火プラグに供給される火花エネルギを運転状態に適した大きさに制御することができる。このため、過剰な火花エネルギが供給されるのを抑えることができると共に、多重放電の発生を抑え、点火プラグの電極が無駄に消耗されてしまうのを防ぐことができる。
【0016】
即ち、本発明(請求項1)によれば、あらゆる内燃機関の運転状態においても、高い点火用高電圧を確保した状態で混合気への着火を行うことで内燃機関を安定して運転することができるとともに、火花エネルギが過剰とならないよう内燃機関の運転状態に基づいて火花放電継続時間を最適に制御することで、点火プラグの無駄な電極消耗を抑えることができる。
【0017】
尚、一般的なフルトランジスタ型の点火装置において、点火プラグにおける火花放電を強制的に遮断するには、例えば、火花放電遮断手段を火花放電継続時間が経過したタイミングで点火コイルの一次巻線への通電を再開できるように構成し、その火花放電遮断手段を火花放電遮断時期制御手段により動作させることで、点火プラグの火花放電を強制的に遮断するように構成するとよい。
【0018】
つまり、火花放電を発生するための点火用高電圧は、点火コイルの一次巻線への通電電流を遮断して急激に磁束の変化を起こすことで二次巻線に誘導されているが、火花放電中に再度一次巻線に電流を流すと磁束の変化方向が反対になり、火花放電時とは逆極性の電圧が二次巻線に発生することになる。そして、点火コイルは、火花放電前における一次巻線への通電開始時に火花放電が発生しないように、二次巻線に火花放電時とは逆極性の電圧が発生しても、二次巻線に電流が流れないように構成されている。このため、火花放電中に一次巻線に電流を流すと、火花放電時とは逆極性の電圧が二次巻線に発生して、二次巻線に電流を流すことができなくなり、火花放電を強制的に遮断することができる。
【0019】
そして、一次電流を再通電するには、例えば、一般的なフルトランジスタ型の点火装置において点火コイルの一次巻線への通電・非通電(遮断)を切り換えるために設けられているパワートランジスタ等の半導体素子からなるスイッチング素子を駆動(オン)することで実現できる。また、フルトランジスタ型の点火装置に限らず、点火装置には、点火コイルの一次巻線への通電・非通電を切り換えるために電気式或いは機械式等のスイッチング手段が設けられることから、こうしたスイッチング手段を導通させるようにすればよい。あるいは、当該スイッチング手段に並列にスイッチング手段を設け、これを導通させるようにしても良い。さらに、一次巻線の両端をスイッチング素子などで短絡することにより、点火コイルに残されている磁束によって、一次巻線とその一次巻線の両端に接続されたスイッチング素子とで形成される閉ループに電流を流し、火花放電時に二次巻線に発生していた点火用高電圧とは逆極性の電圧を二次巻線に誘導させて、火花放電を強制的に遮断してもよい。
【0020】
そして、本発明(請求項1)は、例えば、リーンバーンエンジン等で行われる、空燃比20以上の希薄空燃比で燃焼する内燃機関に適用する場合に有効となる。一般に、希薄空燃比で燃焼する内燃機関にあっては、希薄な燃料を火花放電時前までに均一に拡散させた混合気としなければ着火性が安定して得られないため、混合気の乱流の流速を強くしている。そのために、火花エネルギが低下する火花放電の後半時において、多重放電が発生し易く、点火プラグの電極消耗(偏消耗)が促進され易い。その一方で、この希薄空燃比で燃焼する内燃機関にあっても、高回転高負荷時といった運転条件下では火花エネルギは小さくても混合気への着火性は良好となる。そのことから、本発明(請求項1)の内燃機関用点火装置を上記機関に適用して、その運転状態により火花放電継続時間を短く算出し、火花放電の後半時に発生し易い多重放電の発生前に火花放電を遮断することで、良好な着火性の確保と多重放電の発生を抑制することが期待できる。
【0021】
さらに、本発明の内燃機関用点火装置は、請求項2のように、燃料として気体燃料を用いるガスエンジンで使用することでより効果を発揮することになる。
【0022】
気体燃料は、液体燃料であるガソリン等に比べて絶縁性が高いため、相対的に火花放電電圧が高くなる。従って、気体燃料を用いるガスエンジン向けの点火コイルとしての最大二次電圧発生能力は、ガソリンエンジン向けのそれよりも高く設定しておく必要がある(例えば、ガソリンエンジン向けの点火コイルとしての最大二次電圧が30〔kV〕以上とすれば、ガスエンジン向けのそれは〔40kV〕以上に設定)。そこで、点火コイルの設計としては、一次巻線と二次巻線との一次/二次の巻き数比および巻き数を増やすこと、或いは遮断するための一次電流値を上げることが必要になる。
【0023】
しかしながら、前述のように点火コイルを設計することで、最大二次電圧発生能力は上昇するが、同時に火花エネルギも増加してしまう問題がある。このことは、火花放電継続時間と最大二次電流の相反する関係が関わっており、火花放電継続時間を短くするように設計する(点火コイルの設計としては、一次/二次の巻き数比を少なくする)と、二次電流のピーク値が大きくなってしまい、エネルギ密度が上昇することにより点火プラグの電極の消耗が促進されてしまう。また、二次電流値を少なくするように設計する(点火コイルの設計としては、一次/二次の巻き数を多くする)と、二次電流のピーク値は下がる代わりに火花放電継続時間が長くなってしまい、これまた点火プラグの電極の消耗に影響を及ぼしてしまう。即ち、ガスエンジンではガソリンエンジンに比べ、点火プラグへの不要な火花エネルギの供給量が多くなることが考えられ、点火プラグの寿命をより短くしてしまう虞がある。
【0024】
そこで上述した気体燃料を用いるガスエンジンに対して、請求項1の内燃機関用点火装置を適用すれば、火花エネルギの過剰な供給を防ぐことができ、点火プラグの寿命を延ばすといった効果がより発揮されることになる。
【0025】
さらに、本発明の内燃機関用点火装置は、ガスエンジンの中でも定置型ガスエンジンに適用する場合に有効となる。定置型ガスエンジンでは、燃費が性能上重要なファクターであることから、低燃費化のためリーン化が促進されている。このため、定置型ガスエンジンでは、希薄空燃比での燃焼を効率良く行うべく、混合気の乱流の流速を強くしなければならず、点火プラグの電極間にて上述した多重放電が発生し易い。そこで、本発明の内燃機関用点火装置を定置型ガスエンジンに適用することで、多重放電の発生を抑制して点火プラグの電極消耗を抑えることができる。
【0026】
ところで、火花放電継続時間を算出する火花放電継続時間算出手段としては、請求項3に記載のように、内燃機関にて混合気への着火性が良好となる運転状態ほど、火花放電継続時間が短くなるよう算出するとよい。
【0027】
つまり、混合気への着火性が良好な運転条件下では、混合気の燃焼に必要となる火花エネルギが少なくても十分に混合気を燃焼させることができるため、内燃機関の運転状態に基づいて火花放電継続時間を火花放電継続時間算出手段にて短く算出し、点火プラグに供給される火花エネルギの過剰な供給を抑制するのである。これにより、混合気への着火性が良好な運転状態となるほど、点火プラグに供給される火花エネルギが抑制されるため、点火プラグへの過剰な火花エネルギの供給を抑えることができると共に、多重放電の発生を抑えることができ、点火プラグの電極が無駄に消耗されてしまうのを防ぐことができる。
【0028】
但し、算出される火花放電継続時間が短くなりすぎると、十分に混合気を燃焼させることが出来なくなる虞があるため、運転状態に応じて、少なくとも混合気を燃焼させるのに必要な火花エネルギを点火プラグに供給するように、火花放電継続時間を設定する必要がある。
【0029】
また、請求項3に記載の火花放電継続時間算出手段は、混合気への着火性が良好な運転状態となるほど短い火花放電継続時間を算出することから、反対に、混合気の着火性が劣る運転状態となるほど、火花放電継続時間が長くなるよう火花放電継続時間を算出することになる。このため、混合気の着火性の劣る運転状態になるほど火花エネルギが増大するため、十分な火花エネルギによる火花放電を発生でき、混合気を確実に燃焼させることが可能になる。
【0030】
また、例えば、内燃機関が高回転で運転されているときには、混合気の乱流の流速が速くなり混合気がより均質に撹拌されるため、着火性が良好となる。そこで、火花放電継続時間算出手段としては、請求項4に記載のように、内燃機関にてエンジン回転数が上昇するほど、火花放電継続時間が短くなるよう算出するとよい。
【0031】
つまり、混合気の着火性が良好となる高回転運転時になるに従い、火花放電継続時間を火花放電継続時間算出手段にて短く算出することで、点火プラグに供給される火花エネルギの過剰な供給を抑制するのである。そして、混合気を燃焼するのに必要十分な火花エネルギを点火プラグに供給するように、火花放電継続時間を設定するのである。
【0032】
これにより、高回転運転時であるために混合気への着火性が良好であるにも拘らず、火花放電継続時間が必要以上に長いために点火プラグへ過剰な火花エネルギが供給されてしまうのを防ぐことができる。
【0033】
さらに、高負荷運転時も混合気への着火性が良好な運転条件であるため、請求項5に記載のように、火花放電継続時間算出手段は、内燃機関にてエンジン負荷が上昇するほど、火花放電継続時間が短くなるよう算出するとよい。すなわち、エンジン負荷が上昇するほど火花放電継続時間を短く算出するとよい。
【0034】
つまり、内燃機関が高負荷運転されていると、スロットル開度が大きくなり混合気の充填量が増加するため、混合気の着火性は良好な状態となる。そこで、混合気の着火性が良好となる高負荷運転時となるに従い、火花放電継続時間を火花放電継続時間算出手段にて短く算出することで、点火プラグに供給される火花エネルギの過剰な供給を抑制するのである。そして、混合気を燃焼するのに必要十分な火花エネルギを点火プラグに供給するように、火花放電継続時間を設定するのである。
【0035】
これにより、高負荷運転時であるために混合気への着火性が良好であるにも拘らず、火花放電継続時間が必要以上に長いために点火プラグへ過剰な火花エネルギが供給されてしまうことを防ぐことができる。
【0036】
ところで、点火プラグの電極の消耗に関しては、前述したように火花放電が繰り返し発生する多重放電が大きく影響している。ここで、図6(a)に、プラグギャップ(電極隙間)間の混合気の乱流の流速と、多重放電が発生し始める二次電流(放電電流)値との関係を示す。図6(a)から、混合気の乱流の流速が速くなるほど多重放電が発生し始める二次電流値が大きくなり、反対に混合気の乱流の流速が遅くなるほど多重放電が発生し始める二次電流値が小さくなる傾向があることが判る。
【0037】
また、火花放電は、点火コイルに蓄積された磁束をエネルギ源として発生しており、火花放電発生から時間が経過するにともない、点火コイルに蓄積された磁束(電磁エネルギ)が消費されて放電電流(二次電流)が減少していく。よって、図6(a)に示す関係と、火花放電時の二次電流の変化傾向とを考慮すると、火花放電は、火花放電の発生直後から継続時間が経過するほど二次電流が小さくなり、多重放電が発生し易くなることが判る。
【0038】
そこで、請求項6に記載の発明のように、火花放電継続時間算出手段は、点火コイルに蓄積されたエネルギの減少に伴い発生する多重放電の発生時期よりも火花放電遮断時期が早くなるよう火花放電継続時間を算出するとよい。つまり、火花放電の発生直後から継続時間が経過し、多重放電が発生する程度にまで火花放電の放電電流(二次電流)が小さくなる前に、強制的に火花放電を遮断することで多重放電の発生を防ぐのである。
【0039】
他方、多重放電が発生し始める二次電流値は、点火プラグの電極間距離(プラグギャップ長)によっても変化しており、図6(b)に、その関係を示す。図6(b)から、プラグギャップ長が大きくなるほど多重放電が発生し始める二次電流値が大きくなり、反対にプラグギャップ長が小さくなるほど多重放電が発生し始める二次電流値が小さくなる傾向があることが判る。そして、点火プラグの電極は、使用経過に伴って消耗するため、プラグギャップ長は、使用経過に伴って大きくなる。
【0040】
よって、図6(b)に示す関係と、使用経過に伴う電極消耗とを考慮すると、点火プラグの使用経過に伴い、多重放電が発生し易くなることが判る。
これらのことから、多重放電の発生時期は、混合気の乱流の流速および点火プラグの電極の消耗度合い(プラグギャップ長の拡がり)によって変化することになる。そこで、混合気の乱流の流速あるいは点火プラグのプラグギャップ長に基づいて、多重放電の発生時期を算出することで、運転状態に応じた多重放電の発生時期を算出することができる。
【0041】
具体的な多重放電の発生時期としては、実際の内燃機関において摩耗限界に達した点火プラグにおける多重放電発生時期(多重放電に達する二次電流値)を運転条件別に予め調査しておき、その調査結果に基づいて、運転条件を表す数値をパラメータとするマップを用意して算出することができる。
【0042】
ここで、このときの運転条件を表す数値パラメータの基になる、混合気の乱流の流速はエンジン回転数またはエンジン負荷に比例し、あるいは点火プラグのプラグギャップ長は内燃機関の運転時間積算値に比例することから、エンジン回転数,エンジン負荷あるいは内燃機関の運転時間積算値などの運転状態に基づいて上記マップを作成することで、多重放電の発生時期を算出することができる。
【0043】
そして、運転状態に応じて算出した多重放電発生時期よりも火花放電遮断時期が早くなるように、火花放電継続時間算出手段により火花放電継続時間を算出することで、多重放電の発生を防ぐことができるようになる。よって、本発明(請求項5)によれば、多重放電の発生を有効に防ぐことができるため、点火プラグの電極が無駄に消耗されることがなくなり、点火プラグの寿命を延ばすことができる。
【0044】
尚、多重放電の抑制を目的として火花放電継続時間算出手段により火花放電継続時間を算出するに当たっては、混合気への着火性を考慮し、着火性が低下しないように火花放電継続時間を算出することが必要である。つまり、多重放電の抑制を目的として算出された火花放電継続時間が、混合気への着火が可能な最短の火花放電継続時間よりも短くなると、混合気への着火を正常に行うことが出来ず、内燃機関の運転を正常に維持することが出来なくなってしまう。そのため、多重放電の抑制を目的として算出された火花放電継続時間が、着火性を確保できる最短の火花放電継続時間よりも短いときには、着火性を優先して火花放電継続時間を算出することが望ましい。
【0045】
ところで、内燃機関の始動(特に寒冷地での冷間始動)直後のアイドリング運転(暖機運転)時においては、混合気が不均質な状態であるとともに温度が低く、最も着火性が劣る運転条件であるため、混合気への着火を確実に行うには、火花エネルギを十分に点火プラグに供給して火花放電を発生させる必要がある。
【0046】
そこで、請求項7に記載のように、内燃機関始動直後であって内燃機関が十分に暖機されるまでの運転状態の間は、火花放電継続時間算出手段は火花放電継続時間が最も長くなるよう火花放電継続時間を算出する、あるいは、火花放電遮断時期制御手段は火花放電遮断手段を動作させないようにして点火プラグの火花放電を強制遮断しないようにするとよい。
【0047】
つまり、内燃機関始動直後であって内燃機関が十分に暖気されるまでの運転状態の間は火花放電継続時間を最も長く設定した上で火花放電遮断を行う、あるいは火花放電遮断を行わないことにより、火花エネルギを十分に確保し、混合気を確実に燃焼させることで失火の発生を最小限に抑えるのである。なお、内燃機関が十分に暖気された運転状態にあるか否かの判断は、冷却水温度が規定値を超えたか否か、または/及び潤滑油温度が規定値を超えたか否か等を判断することににより行うことができる。具体的な一手法としては、冷却水温度が50℃以上になったか否かを判断することが挙げられる。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施例を図面と共に説明する。
まず、図1は、実施例の内燃機関用点火装置の構成を表す電気回路図である。尚、本実施例では、1気筒分のみを記して説明を行うが、本発明は複数の気筒を備える内燃機関についても適用でき、各気筒毎の点火装置の基本構成は同様である。また、本実施例の内燃機関は、気体燃料を燃料として運転される定置型ガスエンジンである。
【0049】
図1に示すように、本実施例の内燃機関用点火装置1は、放電用の電気エネルギ(例えば電圧12V)を供給する電源装置(バッテリ)11と、内燃機関の気筒に設けられた点火プラグ13と、一次巻線L1と二次巻線L2とからなる点火コイル15と、一次巻線L1と直列接続されたnpn型のトランジスタ17と、火花放電を強制的に遮断する火花放電遮断回路21と、トランジスタ17及び火花放電遮断回路21に対して、第1指令信号Sa及び第2指令信号Sbを各々出力する電子制御装置(以下、ECUと呼ぶ)19と、を備えている。
【0050】
これらのうち、トランジスタ17は、点火コイル15の一次巻線L1への通電・非通電を切り換える前述の半導体素子からなるスイッチング素子であると共に、イグナイタを構成するものであって、本実施例の内燃機関用点火装置1は、フルトランジスタ型の点火装置である。
【0051】
ここで、一次巻線L1の一端は、電源装置11の正極に接続され、他端はトランジスタ17のコレクタおよび火花放電遮断回路21に接続されている。また、二次巻線L2の一端は、電源装置11の正極に接続されている一次巻線L1の一端に接続され、他端は点火プラグ13の中心電極13aに接続されている。そして、点火プラグ13の接地電極13bは、電源装置11の負極と同電位のグランドに接地され、トランジスタ17のベースはECU19の第1指令信号Saを出力する端子と接続され、トランジスタ17のエミッタは、グランドに接地されている。
【0052】
このため、ECU19から出力される第1指令信号Saがローレベルである場合には、トランジスタ17はオフ状態となり、トランジスタ17を通じて、一次巻線L1に電流が流れることはない。また、第1指令信号Saがハイレベルである場合には、トランジスタ17はオン状態となり、電源装置11の正極側から点火コイル15の一次巻線L1を通って電源装置11の負極側に至る、一次巻線L1の通電経路を形成し、一次巻線L1に一次電流i1を流す。
【0053】
従って、第1指令信号Saがハイレベルであって、一次巻線L1に一次電流i1が流れている状態で、第1指令信号Saがローレベルになると、トランジスタ17がターンオフし、一次巻線L1への一次電流i1の通電が遮断される。すると、点火コイル15の二次巻線L2に点火用高電圧が発生し、これが点火プラグ13に印加されることで、点火プラグ13の電極13a−13b間に火花放電が発生する。
【0054】
尚、点火コイル15は、一次巻線L1への通電・遮断により、点火プラグ13の中心電極13a側にグランド電位よりも低い負の点火用高電圧を発生させるように構成されており、火花放電に伴い二次巻線L2に流れる二次電流i2は、点火プラグ13の中心電極13aから二次巻線L2を通って、一次巻線L1側に流れる。また、二次巻線L2と一次巻線L1との接続部分には、二次巻線L2から一次巻線L1側に電流が流れるのを許容し、逆方向への電流の流れを阻止するために、ダイオード等からなる整流素子Dが設けられており、この整流素子Dの動作によって、トランジスタ17のターンオン時(一次巻線L1への通電開始時)に二次巻線L2に電流が流れることが阻止される。
【0055】
図2は、図1に示す回路図における、第1指令信号Sa、第2指令信号Sb、点火プラグ13の中心電極13aの電位Vp、点火コイル15の一次巻線L1に流れる一次電流i1、の各状態を表すタイムチャートである。ここで、時刻t1にて、第1指令信号Saがローからハイレベルに切り換わると、点火コイル15の一次巻線L1に一次電流i1が流れる。その後、予め設定された通電時間が経過した時刻t2にて、第1指令信号Saがハイからローレベルに切り換わると、点火コイル15の一次巻線L1への一次電流i1の通電が遮断され、点火プラグ13の中心電極13aに負の点火用高電圧が印加される。これにより、中心電極13aの電位Vpが急峻に低下し、点火プラグ13の電極13a−13b間に電流が流れて火花放電が発生していることが判る。
【0056】
次に、火花放電遮断回路21は、エミッタが接地され、ベースがECU19の第2指令信号Sbを出力する端子と接続されたnpn型のトランジスタ25と、一端がトランジスタ25のコレクタに接続され、他端が一次巻線L1に接続されたコンデンサ27と、アノードが接地され、カソードがトランジスタ25のコレクタに接続されたダイオード23とから構成されている。
【0057】
そのため、ECU19から出力される第2指令信号Sbがローレベルである場合には、火花放電遮断回路21内のトランジスタ25がオフ状態となり、火花放電遮断回路21が、一次巻線L1に一次電流i1を流すことはない。また、第2指令信号Sbがハイレベルである場合、火花放電遮断回路21内のトランジスタ25がオン状態となり、電源装置11の正極側から点火コイル15の一次巻線L1および火花放電遮断回路21を通って電源装置11の負極側に至る、一次巻線L1の通電経路を形成し、一次巻線L1に一次電流i1が流れる。このとき、火花放電遮断回路21の内部では、コンデンサ27およびトランジスタ25によって通電経路が形成され、通電経路に存在するコンデンサ27に電荷が蓄積されるに従い、一次電流i1は点火プラグにて再火花放電が発生しないような形態で緩やかに減少することになる。そして、コンデンサ27に、一次巻線L1のインダクタンスとコンデンサ27の容量とで決まる一定の時定数にて所定量の電荷が蓄積されると、コンデンサ27に電流が流れなくなるため、火花放電遮断回路21が一次電流i1の通電を停止することになる。
【0058】
但し、第2指令信号Sbがハイレベルにあっても、コンデンサ27が一次巻線L1側に接続された電極を正極性として完全に充電されていると、一次電流i1は流れないため、予めコンデンサ27に蓄積された電荷を放電させておく必要がある。この本実施例では、次の点火用高電圧を発生させるべく再度第1指令信号Saをハイレベルにする、すなわち、トランジスタ17をオン状態とすることで、コンデンサ27に蓄積された電荷を放電させることができる。つまり、点火用高電圧を発生させるべくトランジスタ17をオン状態とすると、トランジスタ17、コンデンサ27、ダイオード23による閉ループが形成され、コンデンサ27に蓄積された電荷によって、この閉ループに電流が流れることにより、コンデンサ27に蓄積された電荷は放電される。
【0059】
従って、火花放電遮断回路21は、コンデンサ27が放電された状態で第2指令信号Sbがローレベルからハイレベルに変化すると、トランジスタ25がターンオンして、一次巻線L1に一次電流i1を流す。そのあと、火花放電遮断回路21は、時間経過によってコンデンサ27に電荷が蓄積されると共に、一次電流i1を緩やかに減少させていき、最終的には一次電流i1を遮断するように動作する。
【0060】
よって、図2における時刻t3にて、第1指令信号Saおよび第2指令信号Sbをそれぞれローからハイレベルに切り換えると、トランジスタ25がターンオンして、電源装置11の正極側から点火コイル15の一次巻線L1、トランジスタ17を通って電源装置11の負極側に至る通電経路を形成し、一次巻線L1に一次電流i1が通電される。そして、図2における時刻t4にて、第1指令信号Saをハイレベルからローレベルに切り換えると、トランジスタ17がターンオフするため、一次巻線L1の通電経路は、トランジスタ17に代わりコンデンサ27およびトランジスタ25によって形成され、コンデンサ27に電荷が蓄積されるに従い、一次電流i1が緩やかに減少し、コンデンサ27に所定量の電荷が蓄積されると、一次電流i1を遮断する。
【0061】
尚、図2における時刻t1から時刻t2までの間、トランジスタ17がオン状態となっており、コンデンサ27に蓄積された電荷はこの間に放電されているため、時刻t3でのコンデンサ27は、火花放電を遮断するのに必要な大きさの一次電流i1を流すことができる。
【0062】
そして、火花放電中に再度一次巻線L1に電流を流した場合、火花放電時とは逆極性の電圧が二次巻線L2の両端に発生するが、整流素子Dによって二次巻線L2に電流が流れるのが阻止されるため、火花放電を発生させることが出来ない。よって、火花放電中に一次巻線L1を再通電することで、火花放電を強制的に遮断することができる。
【0063】
これらのことから、図2に示すように、点火プラグ13の中心電極13aの電位Vpが充分低いために、電極13a−13b間で火花放電が生じている場合に、ECU19及び火花放電遮断回路21によって一次巻線L1への通電を行うようにすれば、点火プラグ13の中心電極13aの電位Vpを上昇させて、火花放電を強制的に遮断させることができる。
【0064】
従って、本実施例では、ECU19が、第1指令信号Saの切換タイミングを制御することにより、点火プラグ13の火花放電タイミング(換言すれば点火時期)を制御するだけでなく、第1指令信号Saおよび第2指令信号Sbの切換タイミングを制御することにより、点火プラグ13による火花放電の終了時期を制御することができる。つまり、本実施例では、火花放電の遮断時期(火花放電継続時間Tt)を制御することで、混合気を燃焼させるために点火プラグ13に供給する火花エネルギを、混合気の燃焼に必要十分な大きさに抑えることが可能となる。
【0065】
そして、ECU19では、上述のように火花放電を発生させるために第1指令信号Saを制御する点火制御処理が実行され、また、火花放電を強制的に遮断するために第1指令信号Saおよび第2指令信号Sbを制御する火花放電遮断処理が実行されている。
【0066】
尚、ECU19は、内燃機関の火花放電発生時期(点火時期)、燃料噴射量、アイドル回転数等を総合的に制御するためのものであり、点火制御処理や火花放電遮断制御処理のほか、内燃機関の吸入空気量(吸気管圧力),回転速度,スロットル開度,冷却水温,吸気温等、機関各部の運転状態を検出する運転状態検出処理を行っている。
【0067】
まず、点火制御処理で実行される処理について簡単に説明する。尚、点火制御処理は、例えば、内燃機関の回転角度(クランク角)を検出するクランク角センサからの信号に基づき、内燃機関が、吸気,圧縮,燃焼,排気を行う1燃焼サイクルに1回の割合で実行される。
【0068】
そして、内燃機関が始動されて処理が開始されると、点火制御処理は、別途実行される運転状態検出処理にて検出された機関の運転状態を読込み、読み込んだ運転状態に基づき、火花放電発生時期(いわゆる点火時間)を算出する。そして、内燃機関の運転状態に基づいて算出した点火時期(図2における時刻t2)を基準として、この点火時期よりも所定時間だけ早い時刻(図2における時刻t1)で第1指令信号Saをハイレベルに変化させて、一次巻線L1に一次電流i1を流す。ここで、所定時間は、火花放電前の一次電流通電時間のことであり、着火性の劣る運転条件においても確実に混合気へ着火できる高い点火用高電圧による火花放電を発生させるために、一次電流通電時間には、点火コイルに十分な磁束を蓄積できる時間が設定されている。これにより、火花放電が発生してから自然に遮断されるまでの火花放電継続時間Ttも十分長くなり、火炎核の成長を助けて混合気を確実に燃焼させることができるようになる。
【0069】
そのあと、点火制御処理は、時刻t1から所定時間が経過した点火時期(図2における時刻t2)にて、第1指令信号Saをローレベルに変化させて、一次電流i1を急激に遮断し、点火用高電圧を二次巻線L2に発生させて火花放電を発生させる。よって、点火制御処理は、このようにして第1指令信号Saを制御し、点火プラグ13の電極間に火花放電を発生させて混合気を燃焼させることで、内燃機関を運転している。
【0070】
次に、火花放電を強制的に遮断するための火花放電遮断処理を、図3に示すフローチャートに沿って説明する。尚、火花放電遮断処理は、内燃機関が始動されると同時に起動されて、その処理を開始する。
【0071】
そして、この火花放電遮断処理が開始されると、まず、S110(Sはステップを表す)では、内燃機関が十分に暖機された運転状態にあるか否かを判断しており、肯定判定される場合にはS130に移行し、否定判定される場合にはS120に移行する。尚、内燃機関が十分に暖機された運転状態にあるか否かの判断は、冷却水温度が規定値を越えたか否か、または/及び潤滑油温度が規定値を越えたか否か等により判断することができる。本実施例では具体的に、内燃機関の冷却水温度が50℃を超えたか否かを判断している。
【0072】
そして冷却水温度が50℃以下である場合、つまりS120に移行した場合には、後述する火花放電の強制遮断は行わず、火花放電を点火コイルに蓄積された電磁エネルギの減少に伴い自然に終了させるようにする。尚、本実施例の内燃機関用点火装置1は、前述の点火制御処理にて、着火性の劣る運転条件においても確実に混合気へ着火できるように、火花放電前の一次電流通電時間が設定されている。このため、火花放電遮断を行わない時にも、火花放電継続時間を十分に長くすることができ、内燃機関の始動直後のアイドリング運転(暖機運転)時といった着火性の劣る運転状態であっても、確実に混合気を燃焼させることができる。そして、S120の処理が実行されると、再びS110に移行する。
【0073】
よって、内燃機関が十分に暖機された運転状態となるまでの間は、S110,S120の処理を繰り返し実行することで、火花放電を混合気を確実に燃焼できる状態で内燃機関の運転を継続し、火花放電の強制遮断を行わない。そして、S110で肯定判定されて、S130に移行すると、S130ではIG信号(第1指令信号Sa)が立ち上がり方向(ローレベルからハイレベル)に変化したか否かを判断しており、肯定判定されるとS140に移行し、否定判定されると同ステップを繰り返し実行する。つまり、S130では、前述の点火制御処理による一次巻線L1への通電が開始されたか否かをIG信号の変化に基づいて判断することにより、一次電流i1の通電開始時期を検出している。
【0074】
そして、次の燃焼サイクルにおいて、点火制御処理が第1指令信号Saをローレベルからハイレベルに変化させると、S130にて肯定判定されて、S140に移行する。S140では、この時の現在時刻Tを時刻変数T0に代入し、通電開始時期を記憶する。
【0075】
続くS150では、S130と同様に、IG信号(第1指令信号Sa)が立ち上がり方向(ローレベルからハイレベル)に変化したか否かを判断しており、肯定判定されるとS160に移行し、否定判定されると同ステップを繰り返し実行する。つまり、S150では、S130で一次電流i1の通電時期が検出された後、次の燃焼サイクルにおける通電時期を検出している。
【0076】
そして、点火制御処理が第1指令信号Saをローレベルからハイレベルに変化させると、S150にて肯定判定されて、S160に移行する。S160では、この時の現在時刻Tを時刻変数T1に代入し、点火時期を記憶する。
【0077】
続くS170では、S140で記憶された時刻変数T0とS160で記憶された時刻変数T1に基づいて、内燃機関のエンジン回転数を算出する。ここで、時刻変数T0と時刻変数T1の時間差(T1−T0)は、1燃焼サイクルの周期に等しいため、時間差(T1−T0)の逆数を算出することによって、内燃機関のエンジン回転数を算出することができる。
【0078】
続くS180では、時刻変数T1の値を時刻変数T0に代入し、次回のエンジン回転数の算出に備える。次のS190では、内燃機関のエンジン負荷を検出する。ここで、エンジン負荷は、例えばスロットルバルブの開度の大きさや吸気管負圧に比例することから、スロットル開度センサの出力信号あるいは吸気管圧力センサの出力信号に基づいて、エンジン負荷を検出することができる。
【0079】
続くS200では、S170で算出したエンジン回転数と、S190で検出したエンジン負荷に基づいて、火花放電継続時間Ttを設定する。尚、本実施例では、エンジン回転数およびエンジン負荷をパラメータとする第1マップを用いて、火花放電継続時間Ttを算出している。
【0080】
ここで、火花放電継続時間Ttの算出に用いる上記第1マップの一例を、図4に示す。図4に示すように、エンジン回転数が上昇するほど火花放電継続時間Ttが短くなるように、また、エンジン負荷が上昇するほど火花放電継続時間Ttが短くなるように第1マップが設定されていることが判る。つまり、内燃機関における運転条件が、混合気への着火性が良好な運転条件になるほど、火花放電継続時間Ttが短くなるように第1マップが設定されている。
【0081】
尚、エンジン負荷が低負荷で、かつ、エンジン回転数が低回転である時には、火花放電継続時間Ttは図4に示すように火花放電継続時間として最も長い時間(例えば、火花放電が自然に終了する時間)が設定される。このように、最も長い火花放電継続時間が設定されると、火花放電が自然に終了した後に、火花放電遮断回路21による一次電流の通電が行われるため、実質的に火花放電の強制遮断は行われないことになる。
【0082】
更にS200では、火花放電が発生してから火花放電継続時間Ttが経過した火花放電遮断時期が、火花放電の多重放電発生時期よりも遅くなる場合には、火花放電遮断時期が多重放電発生時期よりも早くなるように、火花放電継続時間Ttを補正する。つまり、火花放電が発生してから多重放電が発生するまでの正常放電が行われる時間(正常放電時間)よりも、第1マップから算出した火花放電継続時間Ttが長い場合には、火花放電継続時間Ttに正常放電時間以下の短い時間を設定するのである。
【0083】
尚、正常放電時間は運転条件によって変化することから、例えば、実際の内燃機関において摩耗限界に達した点火プラグにおける多重放電発生時期(多重放電が発生する二次電流値)を運転条件別に予め調査しておき、その調査結果に基づいて、運転条件を表す数値をパラメータとして正常放電時間を算出するマップを用意し、このマップから正常放電時間を算出する。このとき運転条件を表す数値パラメータとしては、例えば、混合気の乱流の流速に比例するエンジン回転数又はエンジン負荷、あるいは点火プラグのプラグギャップ長に比例する内燃機関の運転時間積算値を用いるとよい。そして、本実施例では、上記予め用意された調査結果に基づいて第2マップを設定し、この第2マップに基づき算出された正常放電時間を用いて、多重放電が発生しないように火花放電継続時間Ttを補正する。
【0084】
但し、多重放電が発生しないように設定した火花放電継続時間Ttが、混合気の着火に必要となる最短の火花放電継続時間よりも短くなる場合には、多重放電の抑制よりも着火性を優先して、混合気の着火に必要となる最短の火花放電継続時間を火花放電継続時間Ttに設定する。
【0085】
よって、S200では、第1マップを用いて算出された火花放電継続時間Ttが、第2マップを用いて算出された正常放電時間よりも長い場合には、火花放電継続時間Ttに正常放電時間以下の短い時間を設定し、この火花放電継続時間Ttを以下の処理で使用する。尚、火花放電継続時間Ttが正常放電時間以下である場合には、第1マップを用いて算出された火花放電継続時間Ttをそのまま以下の処理で使用する。
【0086】
続くS210では、IG信号(第1指令信号Sa)が立ち下がり方向(ハイレベルからローレベル)に変化したか否かを判断しており、肯定判定されるとS220に移行し、否定判定されると同ステップを繰り返し実行する。つまり、S210では、前述の点火制御処理による火花放電の発生時期(点火時期)を、IG信号(第1指令信号Sa)に基づいて検出している。
【0087】
そして、点火制御処理が第1指令信号Saをハイレベルからローレベルに変化させると、S210にて肯定判定されて、S220に移行する。S220では、この時の現在時刻Tを時刻変数T2に代入し、点火時期を記憶する。続くS230では、現在時刻Tから時刻変数T2を差し引いた値が、S200で設定した火花放電継続時間Ttに等しいか否かを判断しており、肯定判定されるとS240に移行し、否定判定されると同ステップを繰り返し実行する。つまり、S230では、点火時期から火花放電継続時間Ttが経過した時期(火花放電の遮断時期)に達したか否かを判断している。
【0088】
そして、火花放電の遮断時期に達すると、S230にて肯定判定されて、S240に移行する。S240では、第1指令信号Saおよび第2指令信号Sbをそれぞれローレベルからハイレベルに変化させ、一次電流i1を再通電して火花放電を強制的に遮断する。また、S240では、第1指令信号Saのハイレベル継続時間が予め設定されており、第1指令信号Saをローレベルからハイレベルに変化させてから、このハイレベル継続時間が経過すると、第1指令信号Saをハイレベルからローレベルに変化させる。さらに、S240では、一次電流i1が減少して一次巻線L1に電流が流れなくなる長さの火花放電遮断完了時間が予め設定されており、第2指令信号Sbをローレベルからハイレベルに変化させてから、この火花放電遮断完了時間が経過すると、第2指令信号Sbをハイレベルからローレベルに変化させる。
【0089】
S240での処理が実行されると、再びS150に移行し、S150では次の火花放電のための一次電流通電時期を検出する。そして、火花放電遮断処理は、内燃機関が停止されるまで、S150からS240までの処理を繰り返し実行することで、火花放電の強制遮断を行う。そして、S240まで処理が行われた後に実行されるS170では、前回の燃焼サイクルにおけるS180の処理にて記憶された時刻変数T0と、今回の燃焼サイクルにおけるS160の処理にて記憶された時刻変数T1とに基づいて、エンジン回転数を算出する。
【0090】
尚、本実施例では、ECU19で実行される点火制御処理およびイグナイタを構成するトランジスタ17が、特許請求の範囲に記載の火花放電発生手段に相当し、火花放電遮断回路21が火花放電遮断手段に相当し、火花放電継続時間Ttを設定すべくECU19で実行されるS200の処理が火花放電継続時間算出手段に相当し、火花放電継続時間Ttが経過した時期(火花放電の遮断時期)に達したか否かを判断し、肯定判定されたときに火花放電を強制的に遮断するS230,S240の処理が火花放電遮断時期制御手段に相当する。
【0091】
以上説明したように、本実施例の内燃機関用点火装置1においては、イグナイタを構成するトランジスタ17をオン・オフさせることにより、点火コイル15の二次巻線L2に発生した点火用高電圧を点火プラグ13に印加して、点火プラグ13の電極13a−13b間に火花放電を発生させている。その後、内燃機関の運転状態に基づき求めた火花放電継続時間Ttが経過した時点で、火花放電遮断回路21によって点火コイル15の一次巻線L1に再度一次電流i1を流すことにより、火花放電を強制的に遮断するよう構成されている。
【0092】
そして、本実施例では、高い点火用高電圧による火花放電を発生するため、確実に混合気への着火を行うことができるとともに、火花エネルギが過剰とならないように、かつ、多重放電が発生しないように火花放電継続時間Ttが算出されるため、点火プラグの電極の消耗を抑えて点火プラグの寿命を延ばすことができる。
【0093】
また、火花放電遮断処理での火花放電継続時間の算出においては、多重放電が発生しないように火花放電継続時間を算出するため、多重放電の発生を防ぐことができ、点火プラグの電極が無駄に消耗されることがなくなり、点火プラグの寿命を延ばすことができる。
【0094】
以上、本発明の実施例の一つについて説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
そこで、第2実施例として、コンデンサ27の放電時に流れる電流の大きさを抑制するよう構成された内燃機関用点火装置について説明する。
【0095】
図7は、第2実施例の内燃機関用点火装置の構成を表す電気回路図である。尚、以下の説明において、第1実施例と同じ構成要素については、同一番号(符号)を付与して説明する。
図7に示すように、第2実施例の内燃機関用点火装置1は、放電用の電気エネルギ(例えば電圧12V)を供給する電源装置(バッテリ)11と、内燃機関の気筒に設けられた点火プラグ13と、一次巻線L1と二次巻線L2とからなる点火コイル15と、一次巻線L1と直列接続されたnpn型のトランジスタ17と、火花放電を強制的に遮断する火花放電遮断回路21と、トランジスタ17及び火花放電遮断回路21に対して、第1指令信号Sa及び第2指令信号Sbを各々出力する電子制御装置(以下、ECUと呼ぶ)19と、を備えている。
【0096】
ここで、第2実施例の内燃機関用点火装置1は、火花放電遮断回路21以外の構成要素が第1実施例と同様であることから、同様の構成要素についての説明は省略し、第1実施例と異なる構成要素である火花放電遮断回路21について説明する。
【0097】
図7に示すように、第2実施例の火花放電遮断回路21は、エミッタが接地され、ベースがECU19の第2指令信号Sbを出力する端子と接続され、コレクタがコンデンサ27の一端(電極)に接続されるとともに、ダイオード23を介して接地されたnpn型のトランジスタ25を備えている。そして、ダイオード23は、アノードが接地され、カソードがトランジスタ25のコレクタに接続されている。また、コンデンサ27は、トランジスタ25との接続端(電極)とは反対側の接続端(電極)が、抵抗31を介して一次巻線L1に接続されている。さらに、ダイオード29が抵抗31に並列接続されており、ダイオード29は、アノードが抵抗31と一次巻線L1との接続端に接続され、カソードが抵抗31とコンデンサ27との接続端に接続されている。
【0098】
そして、ECU19から出力される第2指令信号Sbがローレベルである場合には、火花放電遮断回路21内のトランジスタ25がオフ状態となり、火花放電遮断回路21が、電源装置11の正極から一次巻線L1に向かう方向に一次電流i1を流すことはない。
【0099】
また、第2指令信号Sbがハイレベルである場合、第1実施例と同様に、火花放電遮断回路21内のトランジスタ25がオン状態となり、火花放電遮断回路21が、電源装置11の正極側から点火コイル15の一次巻線L1を通って電源装置11の負極側に至る、一次巻線L1の通電経路を形成し、一次巻線L1に一次電流i1を流す。このとき、一次巻線L1からコンデンサ27に流れ込む電流は、ダイオード29を通じて流れる。
【0100】
そして、通電経路に流れる電流によってコンデンサ27に電荷が蓄積されるに従い、一次電流i1は緩やかに減少し、コンデンサ27に、一次巻線L1のインダクタンスとコンデンサ27の容量とで決まる一定の時定数にて、所定量の電荷が蓄積されると、コンデンサ27に電流が流れなくなり、一次電流i1を遮断する。
【0101】
但し、コンデンサ27が、一次巻線L1側に接続された電極を正極性として完全に充電されている場合、第2指令信号Sbがハイレベルであっても、一次電流i1は流れないため、予めコンデンサ27に蓄積された電荷を放電させておく必要がある。そこで、第2実施例では、第1実施例と同様に、点火用高電圧を発生させるための第1指令信号Saをハイレベルにする、すなわち、トランジスタ17をオン状態とすることで、コンデンサ27が充電されている場合のその電荷を放電させることができる。
【0102】
つまり、トランジスタ17をオン状態とすると、トランジスタ17、抵抗31、コンデンサ27、ダイオード23による閉ループが形成され、コンデンサ27に蓄積された電荷によって、この閉ループに電流が流れることにより、コンデンサ27は放電される。このとき、コンデンサ27が放電する電流は、ダイオード29ではなく抵抗31を通じて流れるため、通電経路の抵抗値が大きくなる。このため、通電経路に流れる電流値が小さくなり、トランジスタ17に流れる電流量が抑制されることになる。これにより、コンデンサ27に蓄積された電荷を放電させた時に伴うトランジスタ17の発熱を小さく抑えることが可能となる。
【0103】
従って、火花放電遮断回路21は、コンデンサ27が放電された状態で、第2指令信号Sbがローレベルからハイレベルに変化されると、一次巻線L1に一次電流i1の通電を開始し、時間経過に従い一次電流i1を緩やかに減少させていき、最終的に一次電流i1を遮断する。そして、次の点火用高電圧を発生させるべく再度第1指令信号Saがハイレベルになることで、コンデンサ27に蓄積された電荷が放電される。
【0104】
そして、第2実施例のECU19は、第1実施例と同様の点火制御処理を実行することで第1指令信号Saを制御し、点火プラグ13の電極間に火花放電を発生させて混合気を燃焼させることで、内燃機関を運転している。また、本第2実施例のECU19では、第1実施例と同様の火花放電遮断処理を実行することで火花放電継続時間を算出するとともに、第1指令信号Saおよび第2指令信号Sbを制御して、火花放電を強制遮断している。
【0105】
尚、ECU19は、第1実施例と同様に、内燃機関を総合的に制御するためのものであり、点火制御処理などを行うために、別途、機関各部の運転状態を検出する運転状態検出処理を行っている。よって、第2実施例の内燃機関用点火装置1は、第1実施例と同様に、ECU19の指令によってトランジスタ17をオン・オフさせることにより、点火コイル15の二次巻線L2から点火プラグ13に点火用高電圧を印加させて、点火プラグ13の電極13a−13b間に火花放電を発生させた後、内燃機関の運転状態に基づき求めた火花放電継続時間Ttが経過した時点で、火花放電遮断回路21によって、点火コイル15の一次巻線L1に再度一次電流i1を流すことにより、火花放電を強制的に遮断している。
【0106】
従って、第2実施例の内燃機関用点火装置によれば、火花放電継続時間を制御することが可能となり、第1実施例の内燃機関用点火装置と同様の効果を発揮することができる。また、第2実施例は、第1実施例と同様に一次巻線L1に流れる一次電流i1を2つのトランジスタに分けて流す構成であるため、1つのトランジスタに流すよう構成された内燃機関用点火装置に比べ、トランジスタ1個当りの通電時間が短くなり、通電される電流量が少なくなる。これにより、トランジスタの発熱量を抑制することができ、トランジスタへの負担をさらに軽減することが可能となる。
【0107】
さらに、第2実施例では、コンデンサ27に蓄積された電荷を放電する際に流れる電流の大きさを、抵抗31によって制限しているため、トランジスタ17に流れる電流の大きさを制限することができ、トランジスタ17の発熱を抑えることができる。よって、トランジスタ17への負担をさらに軽減することが可能になる。尚、抵抗31としては、トランジスタに流れる電流の抑制、および、コンデンサ27の放電時間を考慮すると、抵抗値が1〜100[Ω]の抵抗を用いることが望ましい。また、火花放電の遮断時には、ダイオード29によって一次巻線L1に流れる一次電流i1を大きく確保することができ、火花放電の遮断を確実に実行することが可能になる。
【0108】
次に、本第2実施例の内燃機関用点火装置の効果を確認するため、実際に内燃機関を用いて、火花放電継続時間Ttを変化させたときの、点火コイル15の二次巻線L2に流れる二次電流i2の変化を測定した測定結果を図8に示す。尚、測定は、メタンガスを主成分とする都市ガス13Aを燃料とする内燃機関を使用し、回転数を2000rpmとして運転した場合の、二次電流i2の変化を、(a)火花放電を強制遮断しない場合、(b)火花放電継続時間Ttが1.0[mS]の場合,(c)火花放電継続時間Ttが0.5[mS]の場合,の3条件下で、測定を行った。また、本測定では、コンデンサ27の容量は100[μF]とし、抵抗31の抵抗値は5[Ω]とした。そして、図8に、縦軸を二次電流、横軸を時間として測定結果を示す。また、内燃機関用点火装置としては、上記実施例2のものを使用した。
【0109】
まず、図8(a)は、火花放電を強制的に遮断しない場合の測定結果であり、点火時期(図における縦軸が記載されている時刻)で火花放電が発生して二次電流が流れ始めた後、緩やかに電流値が減少していき、点火時期から約0.7[mS]経過したあたりから電流値が大きく乱れて変動しており、多重放電が発生していることがわかる。その後、多重放電が継続して発生し、点火時期から約1.3[mS]経過した時点で電流値が0[mA]となり火花放電が自然に終了している。
【0110】
次に、図8(b)は、火花放電継続時間Ttが1.0[mS]の場合の測定結果であり、図8(a)と同様に、点火時期(図における縦軸が記載されている時刻)で火花放電が発生して二次電流が流れ始めた後、緩やかに電流値が減少していき、点火時期から約0.7[mS]経過したあたりから電流値が大きく乱れて変動しており、多重放電が発生していることがわかる。その後、多重放電が継続して発生しているものの、点火時期から1.0[mS]経過した時点で火花放電が強制的に遮断されて、電流値が0[mA]となっている。これにより、点火時期から1.0[mS]経過した後の多重放電の発生を防ぐことができ、点火プラグの電極消耗を抑えることができる。
【0111】
さらに、図8(c)は、火花放電継続時間Ttが0.5[mS]の場合の測定結果であり、図8(a)および(b)と同様に、点火時期(図における縦軸が記載されている時刻)で火花放電が発生して二次電流が流れ始めた後、緩やかに電流値が減少していき、点火時期から約0.5[mS]経過した時点で火花放電が強制的に遮断されて、電流値が0[mA]となっている。これにより、多重放電の発生を防ぐことができ、さらに点火プラグの電極消耗を抑えることができる。
【0112】
従って、本発明を適用した実施例の内燃機関用点火装置によれば、設定された火花放電継続時間にて、確実に火花放電を遮断することができ、火花放電の過剰供給を抑えて点火プラグの寿命を長くすることができる。
【0113】
また、本発明の内燃機関用点火装置における着火性に関する信頼性を確認するため、実際に内燃機関を用いて、火花放電継続時間Ttを変化させたときの失火率を測定した測定結果を図9に示す。この測定は、メタンガスを主成分とする都市ガス13Aを燃料とする内燃機関を使用し、エンジン負荷を25%とした時の4段階(800,1000,1500,2000[rpm])のエンジン回転数それぞれにおける失火の発生割合(失火率)を、火花放電の強制遮断無しの場合、火花放電継続時間Ttが1.0[mS]、0.5[mS]、0.2[mS]の場合の4条件下にてそれぞれ行った。尚、図9では、縦軸を失火率、横軸を火花放電継続時間、奥行き方向の軸をエンジン回転数として測定結果を示す。
【0114】
図9に示す測定結果より、エンジン回転数が高回転となるほど、火花放電継続時間Ttを短く設定しても、失火が発生せずに内燃機関の運転が良好になされていることが判る。逆に、エンジン回転数が低回転になるほど火花放電を強制遮断しない、あるいは、火花放電継続時間Ttを比較的長く設定することで、失火が発生することなく内燃機関の運転が良好になされていることが判る。これにより、本発明の内燃機関用点火装置においては、内燃機関にてエンジン回転数が上昇するほど、火花放電遮断時期が早くなるよう火花放電継続時間Ttを算出した場合にも、着火性が悪化することなく、内燃機関の運転状態を良好に維持されることが理解できる。
【0115】
次に、図9では、エンジン負荷を25%とした時の失火率の測定結果を示したが、エンジン負荷100%とし、それ以外の条件については図9に示した測定と同様の条件下にて、火花放電継続時間Ttを変化させたときの失火率の測定を行った。その測定結果を図10に示す。尚、図10においても、図9と同様に、縦軸を失火率、横軸を火花放電継続時間、奥行き方向の軸をエンジン回転数として測定結果を示す。
【0116】
図10に示す測定結果を、図9に示す測定結果と比較すると明らかなように、本発明の内燃機関用点火装置においては、エンジン負荷が高負荷となるほど、火花放電遮断時期が早くなるよう火花放電継続時間Ttを算出した場合にも、着火性が悪化することなく、内燃機関の運転状態を良好に維持されることが理解できる。つまり、内燃機関にてエンジン回転数、または/及びエンジン負荷に応じて、最適な火花放電継続時間Ttを算出することによって、混合気を確実に燃焼させることができ、失火の発生を抑制することができるのである。
【0117】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記実施例では、内燃機関が十分に暖機された運転状態に無い場合には、火花放電の遮断処理を行わないように火花放電遮断処理が構成されているが、火花放電継続時間を最も長くなるように算出して火花放電の遮断処理を行うようにしてもよい。このとき、火花放電遮断処理において算出される最も長い火花放電継続時間は、着火性の劣る運転条件においても確実に混合気を燃焼できる時間となるように予め設定しておくとよい。
【0118】
また、上記実施例では、火花放電遮断制御処理に於けるS200での火花放電継続時間Ttおよび正常放電時間の算出をマップを用いて行っているが、マップに限定することはなく、例えば、エンジン回転数やエンジン負荷などをパラメータとする計算式によって算出してもよい。また、各実施例においては、二次巻線L2と一次巻線L1との接続部分に、二次巻線L2から一次巻線L1側に電流が流れるのを許容し、逆方向への電流の流れを阻止するために、ダイオード等からなる整流素子Dが設けられているが、この整流素子Dの設置位置を二次巻線L2と点火プラグ13との接続部分にしてもよい。
【0119】
さらに、第1実施例および第2実施例では、ECU19の指令(信号)によってトランジスタ25(第1実施例においてはトランジスタ17含む)を通電・遮断して、火花放電遮断を行う手法であるが、ECU19を介さずともこの火花放電遮断を行うこともできる。具体的には、内燃機関の回転に伴うクランク角度の信号を入力可能な角度信号入力手段と、前記角度信号によりエンジン回転数を算出する手段と、当該エンジン回転数に基づいて火花放電継続時間を算出する火花放電継続時間算出手段、及び火花放電遮断時期制御手段とをトランジスタ17を備えるイグナイタに設ける(付加する)ことにより行うことができる。これにより、ECUに負担をかけることなく、本発明の特徴である火花放電の強制的な遮断を内燃機関の運転状態に基づいて行うことができる。
【0120】
さらに、第1実施例および第2実施例では、火花放電の遮断の際に、第1指令信号Saおよび第2指令信号Sbをそれぞれハイレベルに変化させて、トランジスタ17および火花放電遮断回路21を用いて一次電流を再通電させているが、第2指令信号Sbのみをハイレベルにして、火花放電遮断回路21のみで一次電流を再通電させてもよい。このように、第2指令信号Sbのみを制御して、第1指令信号Saの制御を行わないようにすることで、上述した第1実施例および第2実施例に比べて、火花放電遮断処理にて実行する処理を少なくすることができる。このため、上述の実施例に比べて火花放電遮断処理が実行されるECU19における処理負荷を低減することができ、また、多数の制御処理を行うECU19への負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例の内燃機関用点火装置の構成を表す電気回路図である。
【図2】 第1実施例の内燃機関用点火装置の各部の状態を表すタイムチャートである。
【図3】 実施例の電子制御装置(ECU)が実行する火花放電遮断処理を表すフローチャートである。
【図4】 火花放電遮断処理における火花放電継続時間の算出に用いる第1マップである。
【図5】 点火プラグの電極間に発生する火花放電の状態を表す説明図と、火花放電時の二次電流の波形を示すグラフである。
【図6】 (a)は電極間の混合気流速と多重放電が発生し始める二次電流値との関係を示すグラフであり、(b)は点火プラグの電極間距離と多重放電が発生し始める二次電流値との関係を示すグラフである。
【図7】 第2実施例の内燃機関用点火装置の構成を表す電気回路図である。
【図8】 点火コイルの二次巻線に流れる二次電流の変化を測定した測定結果を示すグラフである。
【図9】 エンジン負荷を25%として火花放電継続時間を変化させたときの失火率を測定した測定結果を示すグラフである。
【図10】 エンジン負荷を100%として火花放電継続時間を変化させたときの失火率を測定した測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1…内燃機関用点火装置、11…電源装置、13…点火プラグ、13a…中心電極、13b…接地電極、13c…絶縁体、15…点火コイル、D…整流素子、L1…一次巻線、L2…二次巻線、17…トランジスタ、19…電子制御装置(ECU)、21…火花放電遮断回路、23…ダイオード、25…トランジスタ、27…コンデンサ。

Claims (7)

  1. 二次巻線が内燃機関に装着された点火プラグと共に閉ループを形成する点火コイルと、
    前記点火コイルの一次巻線に流れる一次電流を通電・遮断することにより、前記二次巻線に点火用高電圧を発生させ前記点火プラグの電極間に火花放電を発生させる火花放電発生手段と、
    内燃機関の運転状態に基づき、前記点火プラグの火花放電によって混合気を燃焼させるのに要する火花放電継続時間を算出する火花放電継続時間算出手段と、
    前記火花放電継続時間算出手段にて算出された火花放電継続時間に応じて、前記点火プラグの火花放電を強制的に遮断する火花放電遮断手段と、
    前記火花放電発生手段による火花放電の発生から前記火花放電継続時間が経過した時期に、前記火花放電遮断手段を動作させる火花放電遮断時期制御手段と、を備えたことを特徴とする内燃機関用点火装置。
  2. 前記内燃機関は、燃料として気体燃料を用いるガスエンジンであること、を特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火装置。
  3. 前記火花放電継続時間算出手段は、前記内燃機関にて混合気への着火性が良好となる運転状態ほど、前記火花放電継続時間が短くなるよう算出すること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関用点火装置。
  4. 前記火花放電継続時間算出手段は、前記内燃機関にてエンジン回転数が上昇するほど、前記火花放電継続時間が短くなるよう算出すること、を特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の内燃機関用点火装置。
  5. 前記火花放電継続時間算出手段は、前記内燃機関にてエンジン負荷が上昇するほど、前記火花放電継続時間が短くなるよう算出すること、を特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の内燃機関用点火装置。
  6. 前記火花放電継続時間算出手段は、前記点火コイルに蓄積されたエネルギの減少に伴い発生する多重放電の発生時期よりも火花放電の遮断時期が早くなるよう前記火花放電継続時間を算出すること、を特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の内燃機関用点火装置。
  7. 内燃機関始動直後であって内燃機関が十分に暖機されるまでの運転状態の間は、前記火花放電継続時間算出手段は前記火花放電継続時間が最も長くなるよう算出する、あるいは、前記火花放電遮断時期制御手段は前記火花放電遮断手段を動作させないようにして火花放電の強制的な遮断を行わないこと、を特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の内燃機関用点火装置。
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