JP4230041B2 - 内燃機関用点火装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、点火プラグの火花放電後に燃料混合気が着火することにより発生するイオンを、電流値として検出するイオン電流検出機能を備えた内燃機関用点火装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、内燃機関の失火やノッキングの他、内燃機関の各種運転状態(空燃比,空燃比のリーン限界,排気再循環量の限界等)を検出するために、内燃機関の点火プラグの火花放電後に、点火プラグの電極近傍に存在するイオンによって流れるイオン電流を利用する技術が知られている。
【0003】
即ち、内燃機関のシリンダ内では、点火プラグによる火花放電後の燃焼(火炎伝播)時にイオンが発生し、このイオンの発生量に応じて点火プラグの電極間の抵抗値が変化する。そして、イオンの発生量は、内燃機関の燃焼状態、ひいては内燃機関の運転状態に応じて様々に異なる。このため、点火プラグへの点火用高電圧印加後(つまり点火プラグの火花放電後)に、点火プラグに対して外部から電圧を印加し、それによって流れるイオン電流を検出することにより、点火プラグの電極間の抵抗値の変化(つまり運転状態の変化)を検出することができるのである。
【0004】
そして、このようなイオン電流検出機能を有する点火装置としては、例えば、特開平4−191465号公報等に開示されているように、点火コイルの一次巻線に流れる電流を、一次巻線に直列接続されたパワートランジスタ等のスイッチング素子によりオン・オフ制御する、所謂フルトランジスタ型の点火装置に適用したものが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうした従来のフルトランジスタ型の点火装置においては、点火プラグを火花放電させた後、イオン電流を正確に検出できるようになるまでの時間が長くなってしまい、内燃機関の運転状態によっては、イオン電流を正確に検出できないことがあった。
【0006】
即ち、まず、フルトランジスタ型の点火装置では、点火プラグを火花放電させる点火タイミングの前に、パワートランジスタをオンして点火コイルの一次巻線に電流を流し、その後の点火タイミングで、パワートランジスタをオフして、点火コイルの二次巻線に点火用高電圧を発生させ、この点火用高電圧を点火プラグに印加することにより、点火プラグを火花放電させる。
【0007】
そして、点火プラグの火花放電は、電極間を絶縁破壊する容量放電と、それに続いて発生する誘導放電(アーク放電ともいう)とからなり、誘導放電を含む火花放電の継続時間は、シリンダ内での燃焼状態と、点火コイルのインダクタンスとによって決まる。
【0008】
また、内燃機関の始動時やアイドリング時等、内燃機関の低回転・低負荷運転時には、混合気が着火し難く、着火性を確保するには、内燃機関の高回転・高負荷運転時に比べて、火花放電の継続時間を充分長く(2〜3ms程度)する必要がある。
【0009】
このため、従来のフルトランジスタ型点火装置では、内燃機関の低回転・低負荷運転時等にも火花放電により混合気を確実に着火させることができるように(換言すれば、火花放電の継続時間を充分長くできるように)、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスを大きい値(20〜30H程度)に設定している。
【0010】
しかし、このように混合気の着火性を考慮して点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスを充分大きい値に設定すると、火花放電の継続時間が必要以上に長くなってしまい、例えば、内燃機関の高回転・高負荷運転時のように、点火プラグの火花放電開始直後に混合気が速やかに着火・燃焼し得る運転条件下では、混合気の燃焼によって発生したイオンが点火プラグの火花放電中になくなり、イオン電流を検出できないことがある。尚、これは、火花放電後の混合気の燃焼に伴い発生するイオンは、混合気の着火後わずかな時間しか存在しないためである。
【0011】
また、点火プラグの火花放電終了時には、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスによって(詳しくは、この自己インダクタンスと点火系の容量成分で生じる共振特性によって)、二次巻線側に電圧変動(振動)生じる。
そして、こうした電圧変動が生じているときに、点火プラグにイオン電流検出用の高電圧を印加して、イオン電流を検出しようとしても、その検出信号(イオン電流)は、二次巻線の電圧変動の影響を受けて大きく変動してしまい、正確なイオン電流を検出することができない。
【0012】
このため、従来の点火装置には、点火プラグに火花放電を発生させてから(点火タイミング)から点火プラグが火花放電を終了して二次巻線の電圧が安定する迄の期間はイオン電流の検出を禁止する、所謂マスキング処理を行うようにしたものもある。
【0013】
しかし、火花放電終了時に生じる二次巻線の電圧変動は、二次巻線の自己インダクタンスが大きい程、長く続くことから、混合気の着火性を確保するために二次巻線の自己インダクタンスを大きい値に設定した従来の点火装置では、点火プラグの火花放電開始後、イオン電流を検出できるようになるまでの時間がより長くなってしまい、イオン電流を正確に検出できない運転領域が増えてしまう。
【0014】
また更に、イオン電流を正確に検出できれば、その検出信号に重畳された特定周波数(ノック周波数)の信号を取り出すことにより、内燃機関のノッキングを検出することができるが、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスが大きいと、点火系全体がローパスフィルタとなって、イオン電流の検出信号に重畳されるノッキング信号成分が減衰してしまう。
【0015】
このため、従来のフルトランジスタ型点火装置では、たとえイオン電流を検出できたとしても、検出したイオン電流からノッキングを検出することができないといった問題もある。
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、フルトランジスタ型の点火装置において、内燃機関の運転状態に応じて変化するイオン電流を、内燃機関の全運転領域で常に正確に検出できるようにすることを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた本発明(請求項1〜6)の内燃機関用点火装置は、二次巻線の一端が点火プラグに接続された点火コイルと、該点火コイルの一次巻線に流れる一次電流を、外部からの指令に従い通電、遮断するスイッチング素子と、該スイッチング素子をオン・オフさせることにより、前記点火コイルの二次巻線に点火用高電圧を発生させて、前記点火プラグを火花放電させる点火制御手段と、前記点火プラグの火花放電後に、前記点火プラグの電極間を流れるイオン電流を検出するイオン電流検出手段とを備え、前記点火コイルの前記二次巻線の自己インダクタンスが、4H〜16Hの範囲内に設定されている。
【0017】
即ち、本発明の内燃機関用点火装置は、点火制御手段が、パワートランジスタ等からなるスイッチング素子を内燃機関の回転に同期してオン・オフさせることにより、点火コイルの二次巻線に点火用高電圧を発生させて、点火プラグを火花放電させる、所謂フルトランジスタ型点火装置であり、既述した従来の点火装置と同様、イオン電流検出手段が、点火プラグの火花放電後に点火プラグの電極間を流れるイオン電流を検出する。
【0018】
そして、本発明の内燃機関用点火装置では、点火プラグに印加する点火用高電圧を発生するための点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスが、従来のフルトランジスタ型点火装置で使用される点火コイルの二次巻線の自己インダクタンス(20〜30H)よりも小さい、4H〜16Hの範囲内に設定されている。
【0019】
これは、二次巻線の自己インダクタンスを4Hよりも小さくすると、火花放電の継続時間が短くなり過ぎ、混合気を着火できない運転領域が確実に発生してしまい、逆に、二次巻線の自己インダクタンスを16Hよりも大きくすると、火花放電終了後に二次巻線に生じる電圧変動の発生期間が長くなり過ぎ、イオン電流検出手段が検出したイオン電流から、混合気の燃焼によって発生したイオン量(延いては内燃機関の運転状態)を正確に検出することができなくなってしまうためである。
【0020】
つまり、本発明の内燃機関用点火装置は、従来の点火装置のように、混合気の着火性のみを考慮して、火花放電の継続時間が充分長くなるように、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスを充分大きい値に設定するのではなく、後述実施例にて例示する各種実験を行うことにより、混合気の着火性を確保しつつ、内燃機関の全運転領域でイオン電流を正確に検出し得る二次巻線の自己インダクタンスを設定しているのである。
【0021】
そして、このように構成された本発明の内燃機関用点火装置によれば、前述した従来装置に比べて、点火制御手段の動作によって点火プラグを火花放電させた後の火花放電の継続時間を短くすることができ、しかも、火花放電終了時に生じる二次巻線の電圧変動を速やかに収束させることができることから、点火プラグが火花放電を開始する点火タイミングからイオン電流検出手段がイオン電流検出動作を開始するまでの時間を短くすることができる。
【0022】
よって、本発明によれば、内燃機関の高回転・高負荷運転時等、混合気が着火し易い運転条件下でも、混合気の燃焼によって発生したイオンがなくなる前に、そのイオンの発生量に対応したイオン電流を正確に検出することが可能になる。また、本発明では、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスを、従来のものよりも小さい4H〜16の範囲内に設定していることから、後述の実験例から明らかなように、点火系全体がノッキング周波数成分を減衰させてしまうローパスフィルタとなるのを防止し、イオン電流検出手段にて検出されたイオン電流から、内燃機関に発生したノッキングに対応した信号成分を取り出し、ノッキングを判定することも可能である。
【0023】
ところで、本発明では、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスを4H〜16Hの範囲内に設定するが、設定した自己インダクタンスの値によっては、点火プラグの火花放電の継続時間が、混合気を着火・燃焼させるのに必要な最小時間よりも長くなることも考えられる。
そこで、特に、請求項1に記載の内燃機関用点火装置においては、内燃機関の運転状態に基づき、混合気が着火し難いときには長く、混合気が着火し易いときには短くなるよう放電時間を設定し、点火プラグの火花放電の継続時間がその設定した放電時間に達すると、点火プラグの火花放電を強制終了させる火花放電休止手段を設けている。
【0024】
つまり、例えば、二次巻線の自己インダクタンスを本発明における最大値である16Hに設定した場合、混合気が着火し易い内燃機関の高回転・高負荷運転時には、火花放電の継続時間が必要以上に長くなることが考えられる。一方、内燃機関の高回転・高負荷運転時のイオン電流の検出精度を高めるには、火花放電開始後、イオン電流の検出を開始するまでの時間をできるだけ短くすることが望ましい。そこで、請求項1に記載の発明では、例えば、混合気が着火し易い内燃機関の高回転・高負荷時程、点火プラグの火花放電継続時間が短くなるように、点火プラグの火花放電を、内燃機関の運転状態に応じて休止させるのである。この結果、請求項1に記載の発明によれば、火花放電の継続時間をより短くして、イオン電流の検出精度を高めることが可能になる。
尚、火花放電を休止させるには、点火プラグの火花放電期間中に、スイッチング素子をオンして、点火コイルの一次巻線段への通電を再開させるようにすればよい。但し、この通電再開後に、スイッチング素子をオフすると、点火プラグは再び火花放電することになるので、混合気を着火させる必要のないときには、内燃機関が排気行程に入ってから、スイッチング素子をオフするようにするとよい。
【0025】
一方、本発明では、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスの値を4H〜16Hの範囲内に設定することにより、点火プラグによる火花放電の継続時間及び火花放電終了時に生じる二次巻線の電圧変動期間を短くしているが、このように、火花放電の継続時間を短くすると、内燃機関の低回転・低負荷運転時のように混合気が着火し難い運転条件下では、混合気が失火し易くなる。
【0026】
そこで、特に、請求項3に記載の内燃機関用点火装置においては、イオン電流検出手段により検出されたイオン電流に基づき混合気の着火・失火を判定し、失火を判定すると、前記スイッチング素子を再度駆動して、前記点火プラグを再度火花放電させる再点火制御手段を設け、この再点火制御手段の動作を、内燃機関の運転状態に応じて制御するようにしている。
【0027】
即ち、請求項3記載の内燃機関用点火装置では、点火制御手段が点火プラグを火花放電させ、その後、イオン電流検出手段がイオン電流を検出すると、再点火制御手段が、その検出されたイオン電流に基づき、混合気の着火・失火を判定して、失火を判定すると、点火プラグを再度火花放電させる。
【0028】
このため、請求項3記載の発明によれば、点火制御手段による1回目の火花放電により混合気を着火・燃焼させることができなかった場合にでも、再点火制御手段による火花放電によって混合気を着火・燃焼させることができるようになり、二次巻線の自己インダクタンスを従来より小さい値に設定することにより生じる、失火が発生し易くなるという問題を防止することが可能となる。
【0029】
ここで、再点火制御手段は、点火制御手段が点火プラグを火花放電させた後、一回だけ、イオン電流から失火の有無を判定して、失火判定時に、点火プラグを火花放電させるようにしてもよく、例えば、自らが点火プラグを火花放電させた2回目以降の火花放電後も、イオン電流から失火の有無を判定して、失火判定時に、点火プラグを火花放電させる、というように、「失火判定→火花放電」を複数回繰り返し行うようにしてもよい。そして、再点火制御手段を、「失火判定→火花放電」を複数回繰り返し行うように構成すれば、混合気の失火をより確実に防止し、着火性を高めることが可能になる。
【0030】
尚、このように再点火制御手段を、「失火判定→火花放電」を複数回繰り返し行うように構成することができるのは、本発明では、点火プラグの二次巻線の自己インダクタンスを4H〜16Hと、従来のものに比べて小さい値に設定しているためである。
【0031】
つまり、点火プラグの二次巻線の自己インダクタンスが小さいということは、二次巻線に点火用高電圧を発生させるのに必要な一次巻線の自己インダクタンスも、当然、従来のものに比べて小さくなり、この結果、二次巻線に点火用高電圧を発生させるのに要する一次巻線の通電時間(換言すれば、スイッチング素子のオン時間)も短くなる。
【0032】
そして、本発明では、点火プラグの二次巻線の自己インダクタンスを小さくすることにより、点火コイルの火花放電の継続時間を短くして、火花放電開始後、短時間で、イオン電流を正確に検出できるようにしている。
従って、本発明の点火装置では、「一次巻線の通電→火花放電→イオン電流検出」に要する時間が従来のものに比べて極めて短くなり、内燃機関の点火一回当たりに、「失火判定→火花放電」を複数回繰り返し行うことができるようになるのである。
【0033】
また、点火プラグの二次巻線の自己インダクタンスを上記範囲内に設定することにより失火が発生し易くなるのは、内燃機関の低回転・低負荷運転時であり、内燃機関の高回転・高負荷運転時には、混合気は着火し易く、失火する虞はないので、請求項3に記載の内燃機関用点火装置において、再点火制御手段の動作を実際に制御する際には、その動作を、内燃機関の運転状態に応じて制限するようにしてもよい。
【0034】
具体的には、内燃機関の回転速度が所定回転速度以下であるときや、スロットルバルブの開度,吸入空気量Qと回転数Nとの比Q/N,吸気管圧力等から得られる内燃機関の負荷が所定レベル以下であるときにだけ、再点火制御手段を動作させ、それ以外の運転領域では、再点火制御手段による「失火判定→火花放電」の動作を禁止するようにしてもよい。
【0035】
そして、このようにすれば、内燃機関の高回転時等、内燃機関一回転当たりの時間が短くなり、点火制御手段及び再点火制御手段を実現するエンジン制御装置側で、点火一回当たりの処理に利用可能な時間が短くなったときに、エンジン制御装置側での処理の負担を増大させることなく、点火制御を良好に実行できることになる。
【0036】
また、混合気は、内燃機関の回転速度が低い程着火し難くなり、しかも、内燃機関の1行程当たりに再点火制御手段が「失火判定→火花放電」を実行し得る回数は、内燃機関の回転速度が高い程少なくなるので、上記のように、再点火制御手段を、「失火判定→火花放電」の動作を複数回実行するよう構成する場合には、その最大実行回数を、内燃機関の回転速度に応じて、内燃機関の回転速度が低い程多くなるように設定してもよい。
【0037】
ここで、請求項1に記載の内燃機関用点火装置には、請求項2に記載のように、請求項3と同様に構成された再点火制御手段を設けてもよく、また、請求項3に記載の内燃機関用点火装置には、請求項4に記載のように、請求項1と同様に構成された火花放電休止手段を設けてもよい。
また、イオン電流検出手段は、点火プラグの火花放電後に点火プラグの電極間に流れるイオン電流を検出できるものであればよいが、例えば、請求項5に記載のように、イオン電流検出手段を、点火プラグの火花放電後に点火用高電圧とは逆極性の検出用高電圧を点火プラグに印加し、その電圧印加によって点火プラグの電極間に流れるイオン電流を検出するようにするとよい。
つまり、このように点火用高電圧とは逆極性の検出用高電圧を点火プラグに印加させるためには、後述実施例に記載のように、点火プラグへの点火用高電圧の印加によって点火プラグが火花放電した際に流れる放電電流にてコンデンサを充電しておき、この充電電荷を利用して、検出用高電圧を発生する、といったことが可能になり、こうすることで、検出用高電圧発生のための電力を別途電源装置から取り込む必要がなくなり、電力消費量を低減できる。
【0038】
一方、混合気をより確実に着火・燃焼させるには、請求項6に記載のように、点火制御手段を、内燃機関の1燃焼サイクルの燃焼タイミングにおいて、スイッチング素子を複数回連続してオン・オフすることにより、点火プラグを複数回連続して火花放電させるように構成し、イオン電流検出手段側では、点火制御手段が点火プラグを複数回連続して火花放電させた後に、イオン電流を検出するようにしてもよい。
つまり、このようにすれば、点火制御手段による点火プラグの複数回の火花放電によって混合気をより確実に着火させ、その後、イオン電流検出手段にて検出されるイオン電流から、失火,ノッキング等、内燃機関の運転状態を良好に検出することができるようになる。
【0039】
尚、このように、点火制御手段を、点火プラグの火花放電を複数回連続して発生させるように構成する場合には、火花放電を不必要に実行してしまい、これによって、イオン電流の検出精度が低下したり、点火プラグの寿命が短くなることのないように、点火制御手段が点火プラグに発生させる火花放電の回数を制限することが望ましい。
【0040】
具体的には、混合気が着火し難い運転条件下(例えば、内燃機関の低回転・低負荷運転時)では、点火制御手段による火花放電の連続回数を多くし、混合気が着火し易い運転条件下(例えば、内燃機関の高回転・高負荷運転時)では、点火制御手段による火花放電の連続回数を少なくする(場合によっては火花放電1回にする)、というように、点火制御手段が制御する点火プラグの火花放電の回数を内燃機関の運転状態に応じて設定する火花放電連続回数設定手段を設け、点火制御手段側では、その設定された火花放電回数に従いスイッチング素子をオン・オフして、点火プラグを1又は複数回火花放電させるように構成すればよい。
【0041】
またこのように点火制御手段にて点火プラグの火花放電を複数回連続的に実行させるのは、混合気の着火性を高めるためであることから、火花放電の継続時間を短くすると混合気の着火性が著しく低下する内燃機関、具体的には、燃料噴射弁(インジェクタ)が気筒内に燃料を直接噴射するように構成された所謂直噴式の内燃機関に適用するとよい。
【0042】
つまり、直噴式の内燃機関では、インジェクタから点火プラグ近傍に直接燃料が噴射されるため、点火プラグによる火花放電の発生期間が短いと、燃料がくすぶり易く、混合気をより確実に着火させるには、他の内燃機関(詳しくは、吸気管側で燃料を供給して吸気行程時に燃料と空気との混合気を気筒内に吸入させる内燃機関)に比べて、点火用高電圧の立上がりを急峻にし、且つ、火花放電の継続時間を長くする必要がある。
【0043】
そして、本発明の点火装置では、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスを4H〜16Hの範囲内に設定しているので、従来の点火装置に比べて、二次巻線のインピーダンスが小さくなって、点火用高電圧の立上がりを急峻にできる。しかし、この場合、既述したように、火花放電の継続時間が短くなるので、イオン電流の検出には適しているが、直噴式の内燃機関では、火花放電の継続時間が短くなりすぎ、着火性が低下する虞がある。
【0044】
しかし、請求項6に記載のように、点火制御手段によるイオン電流検出前の火花放電を、複数回連続して実行させるようにすれば、火花放電の継続時間を長くしたのと同様の効果が得られ、混合気の着火性を確保できる。よって、請求項6記載の発明は、特に、直噴式の内燃機関の適用することにより、より効果を発揮することができるようになるのである。
【0045】
尚、請求項6に記載の技術を請求項3に記載の内燃機関用点火装置に適用すれば、点火制御手段により火花放電を複数回実行させる際の回数を必要最小限に抑えつつ、混合気を確実に着火・燃焼させることが可能となり、点火プラグの火花放電回数が不必要に増加するのを防止して、火花放電回数の増大に伴う点火プラグの寿命低下を抑えることができる。
【0049】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
図1は、本発明が適用された内燃機関用点火装置の構成(a)及びイオン電流検出特性(b)を表す説明図である。
【0050】
図1(a)に示すように、本実施例の内燃機関用点火装置は、外側電極2aがグランドに接地された点火プラグ2と、二次巻線L2の一端が点火プラグ2の中心電極2bに接続された点火コイル4と、正極側が点火コイル4の一次巻線L1の一端に接続され、負極側がグランドに接地された直流電源(バッテリ)6と、点火コイル4の一次巻線L1のバッテリ6とは反対側に設けられ、グランドを介してバッテリ6の負極側に至る一次巻線L1の通電経路を導通・遮断するスイッチング素子8と、点火コイル4の二次巻線L2の点火プラグ2とは反対側に設けられ、混合気の燃焼により点火プラグ2の電極近傍に発生するイオンによって流れるイオン電流を検出するためのイオン電流検出回路10と、スイッチング素子8をオン・オフさせて、点火コイル4の一次巻線を通電し、通電遮断時(スイッチング素子8のターンオフ時)に、点火コイル4の二次巻線L2に点火用高電圧を発生させて、点火プラグ2を火花放電させると共に、その後、イオン電流検出回路10を駆動してイオン電流を検出させる、マイクロコンピュータからなる制御装置12と、から構成されている。
【0051】
尚、スイッチング素子8は、コレクタが点火コイル4の一次巻線L1に接続され、エミッタがグランドに接地され、ベースが制御装置12に接続されたNPN型のパワートランジスタからなり、制御装置12から出力される点火信号IGがHighレベルであるときにオン状態となって、点火コイル4の一次巻線L1とバッテリ6との間の通電経路を導通して、一次巻線L1に電流を流す。
【0052】
また、点火コイル4は、スイッチング素子8のターンオフ時に、一次巻線L1への通電により蓄積されたエネルギによって、二次巻線L2の点火プラグ2の中心電極2b側に、グランド電位よりも低い負の点火用高電圧が誘起されるように構成されており、点火プラグ2の火花放電時には、二次巻線L2からイオン電流検出回路10側に放電電流が流れる。
【0053】
また、点火コイル4の二次巻線L2の自己インダクタンスは、本発明を適用することにより、4H〜16Hの範囲内(例えば8H)に設定されており、一次巻線L1と二次巻線L2との巻数比(換言すれば一次巻線L1の自己インダクタンス)は、一次巻線L1への通電遮断時に二次巻線L2に発生させる点火用高電圧に応じて設定されている。
【0054】
次に、イオン電流検出回路10は、特許請求の範囲に記載のイオン電流検出手段に相当するものであり、一端がグランドに接地された抵抗20と、この抵抗20に対してカソードがグランド側となるように並列接続されたたダイオード22と、同じく抵抗20に対して並列接続された、抵抗24及びツェナーダイオード26の直列回路と、抵抗20のグランド側とは反対側に直列接続されたコンデンサ28とを備えており、抵抗20の両端電圧(=ダイオード22の両端電圧=抵抗24及びツェナーダイオード26からなる直列回路の両端電圧)が、イオン電流の検出信号(イオン電流信号)Siとして、制御装置12に入力される。
【0055】
また、コンデンサ28の抵抗20とは反対側には、充電用ダイオード30のカソードが接続されている。充電用ダイオード30は、点火プラグ2の火花放電時に点火コイル4の二次巻線L2からイオン電流検出回路10側に流れ込む放電電流を利用してコンデンサ28を充電するためのものであり、そのアノードは、点火コイル4の二次巻線L2の点火プラグ2とは反対側に接続されている。そして、この充電用ダイオード30には、その両端を制御装置12から出力されるイオン電流検出期間を表すウィンドウ信号IW(Highレベル)によって短絡する、放電用スイッチ32が、並列に接続されている。
【0056】
また、イオン電流検出回路10には、カソードが、点火コイル4の二次巻線L2の点火プラグ2とは反対側に接続され、アノードがグランドに接地されたツェナーダイオード34が設けられている。このツェナーダイオード34は、二次巻線L2及び点火プラグ2と共に閉ループを形成して、点火プラグ2の火花放電時に放電電流を流すと共に、火花放電時の二次巻線L2とグランドとの間の電圧をツェナー電圧に保持することにより、点火プラグ2の火花放電時に、充電用ダイオード30を介して、コンデンサ28を、ツェナーダイオード34のツェナー電圧から、ダイオード30及び22の順方向電圧(2×Vf=約1.4V)分を減じた検出用高電圧(点火プラグ2が火花放電しない程度の電圧;約300V程度)まで充電しておくためのである。
【0057】
そして、このように構成されたイオン電流検出回路10では、放電用スイッチ32がオフ状態にある時、点火コイル4の二次巻線L2からグランドに向かう方向にだけ電流を流すことが可能となり、点火プラグ2の火花放電時には、放電電流を、充電用ダイオード30,コンデンサ28及びダイオード22を通る閉ループで流すと共に、これら各部の両端電圧がツェナーダイオード34のツェナー電圧を越えることのないよう、ツェナーダイオード34にも放電電流を流す。
【0058】
そして、このとき、コンデンサ28の両端電圧は、ツェナーダイオード34のツェナー電圧で決まる所定の検出用高電圧となり、コンデンサ28には、放電用スイッチ32をオフした際に、検出用高電圧を点火コイル4の二次巻線L2を介して点火プラグ2の中心電極2bに印加し得る電荷が蓄積されることになる。
【0059】
次に、この状態で、放電用スイッチ32が閉じられると、コンデンサ28から放電用スイッチ32及び二次巻線L2を通って、点火プラグ2の中心電極2bに検出用高電圧が印加される。そして、このとき、点火プラグ2の電極近傍に混合気の燃焼によって生じたイオンが存在すれば、点火プラグ2の電極間及び抵抗20を通る経路で、イオン電流が流れることになる。また、このようにイオン電流が流れると、抵抗20には、そのイオン電流の大きさと抵抗20の抵抗値とで決まる電圧降下が生じ、抵抗20の両端電圧は、イオン電流に対応した値となる。
【0060】
従って、上記のように、抵抗20の両端電圧(実際には、抵抗20とコンデンサ28との接続点に生じるグランド電位よりも低い負電圧)を、イオン電流信号Siとして制御装置12に入力することにより、制御装置12側で、イオン電流を検出できることになる。
【0061】
尚、抵抗24とツェナーダイオード26との直列回路は、電流測定レンジ(検出抵抗)を自動的に変化させるためのものである。
即ち、例えば、ツェナーダイオード26の降伏電圧を3V、抵抗R20の抵抗値を100kΩ,抵抗24の抵抗値を10kΩに設定した場合、電流が0〜30μA(換言すればイオン電流信号Siが3V以下)のときには、イオン電流は抵抗R20のみに流れるが、イオン電流信号Siが3Vを越えると、イオン電流がツェナーダイオード26を通って抵抗R24に流れることになるので、イオン電流検出用の抵抗値が、抵抗R20と抵抗R24との合成抵抗(約10kΩ)となる。
【0062】
この結果、イオン電流と検出電圧(イオン電流信号Si)との関係は、図1(b)に示すように、イオン電流がツェナーダイオード26の降伏電圧と抵抗R20の抵抗値とで決まる設定値以下(図では30μA以下)の場合には、イオン電流信号Siは、イオン電流の変化に対応して大きく変化するが、イオン電流がその設定値を越えると、イオン電流の変化に対するイオン電流信号Siの変化(傾き)が小さくなり、検出可能なイオン電流の変化幅(換言すればイオン電流検出回路10のダイナミックレンジ)が大きくなる。従って、本実施例のイオン電流検出回路10によれば、イオン電流を広範囲にしかも高精度に測定できることになる。
【0063】
次に、制御装置12が実行する点火制御処理について図2に示すフローチャートに沿って説明する。尚、制御装置12は、内燃機関の点火時期、燃料噴射量、アイドル回転数等を総合的に制御するためのものであり、以下に説明する点火制御処理のために、別途、内燃機関の吸入空気量(吸気管圧力),回転速度,スロットル開度,冷却水温,吸気温等、機関各部の運転状態を検出する運転状態検出処理を行っている。
【0064】
本実施例の点火制御処理は、例えば、内燃機関の回転角度(クランク角)を検出するクランク角センサからの信号に基づき、内燃機関が、吸気、圧縮、燃焼、排気を行う1サイクルに1回の割で実行される。
そして、図2に示すように、点火制御処理が開始されると、まずS110(Sはステップを表す)にて、別途実行される運転状態検出処理にて検出された内燃機関の運転状態(吸入空気量,回転速度等)を読み込み、その運転状態に基づき、点火プラグ2を火花放電させるべき点火時期と、火花放電の継続時間を表す放電時間と、火花放電終了後にイオン電流を検出(詳しくはイオン電流信号Siをサンプリング)する時間(サンプリング時間)とを算出する。
【0065】
尚、点火時期は、例えば、内燃機関の吸入空気量と回転速度をパラメータとするマップ若しくは計算式を用いて制御基準値を求め、これを冷却水温,吸気温等に基づき補正する、といった手順で算出される。
また、放電時間は、例えば、内燃機関の回転速度と機関負荷を表すスロットル開度とに基づき、混合気が着火し難い内燃機関の低回転低負荷運転時には長く、混合気が着火し易い高回転高負荷運転時には短くなるように、予め設定されたマップ若しくは計算式を用いて算出される。
【0066】
また、サンプリング時間は、例えば、内燃機関の回転速度と機関負荷を表すスロットル開度とに基づき、火花放電によって混合気が着火・燃焼するのに時間がかかる内燃機関の低回転低負荷運転時には長く、混合気が着火・燃焼するのに要する時間が短い高回転高負荷運転時には短くなるように、予め設定されたマップ若しくは計算式を用いて算出される。
【0067】
次に、S120では、S110にて算出した点火時期にて点火プラグ2を火花放電させるのに必要な一次巻線L1への通電開始時期を求め、その通電開始時期に達したか否かを判断し、否定判定された場合には、同ステップを繰り返し実行することにより、通電開始時期になるのを待つ。そして、S120にて、通電開始時期に達したと判断されると、S130に移行して、点火信号IGをLow からHighレベルに変化させる(図3に示す時点t0参照)。この結果、スイッチング素子8がオン状態となって、点火コイル4の一次巻線L1に一次電流が流れる。尚、一次巻線L1の通電時間は予め設定されており、S120では、S110にて算出した点火時期からその通電時間分だけ早い時期を、一次巻線L1の通電開始時期として設定する。
【0068】
次に、S140では、クランク角センサからの検出信号に基づき、S110にて求めた点火時期に達したか否かを判断し、否定判定された場合には、同ステップを繰り返し実行することにより、点火時期になるのを待つ。そして、S140にて、点火時期に達したと判断されると、S150に移行して、点火信号IGをHighからLow レベルに変化させる(図3に示す時点t1参照)。
【0069】
この結果、スイッチング素子8がターンオフして、一次巻線L1への通電が遮断され、点火コイル4の二次巻線L2の点火プラグ2側に点火用高電圧(以下、二次巻線L2の点火プラグ2側電圧を二次電圧V2という)が発生して、点火プラグ2が火花放電する。尚、このとき、イオン電流検出回路10内の放電用スイッチ32は、オフ状態であり、イオン電流検出回路10内のコンデンサ28には、検出用高電圧発生のための電荷が蓄積される。
【0070】
また次に、続くS160では、S150による一次巻線L1への通電遮断後(換言すれば火花放電開始後)、S110にて求めた放電時間が経過したか否かを判断し、否定判定された場合には、同ステップを繰り返し実行することにより、放電時間が経過するのを待つ。そして、S160にて、放電時間が経過したと判断されると、S170に移行して、点火信号IGを再度Low からHighレベルに変化させ、続くS180にて、イオン電流検出回路10に対して出力するウィンドウ信号IWをLow からHighレベルに変化させる(図3に示す時点t2参照)。
【0071】
この結果、スイッチング素子8が再度オン状態となって、一次巻線L1への通電が再開され、点火プラグ2の火花放電が強制的に終了されると共に、イオン電流検出回路10内の放電用スイッチ32がオンして、イオン電流検出回路10内のコンデンサ28に蓄積された電荷によって、点火プラグ2の電極間に、火花放電時とは逆極性の検出用高電圧が印加されることになる。
【0072】
尚、S170及びS180の動作によって、点火プラグの火花放電を強制的に終了すると同時に、ウィンドウ信号IWをLow からHighレベルに変化させた直後には、図3に示すように、二次巻線L2に電圧変動が生じ、イオン電流検出回路10から制御装置12に入力されるイオン電流信号Siも大きく変動するが、本実施例では、二次巻線L2の自己インダクタンスを例えば8Hと小さい値に設定していることから、この変動期間は短く、その後、混合気が着火・燃焼してイオンが発生すれば、イオン電流信号Siは、図3に点線で示すように、イオンの発生量に応じて変動し、逆に、混合気が着火せず、イオンが発生しなければ、イオン電流信号Siは、図3に実線で示すように、基準レベルに速やかに収束することになる。
【0073】
次に、S190では、イオン電流検出回路10から出力されるイオン電流信号Siを取り込み、S200にて、S170及びS180の処理実行後、S110で求めたサンプリング時間が経過したか否かを判定し、サンプリング時間が経過していなければ再度S190に移行する、といった手順で、サンプリング時間内にイオン電流検出回路10から出力されたイオン電流信号Siをサンプリングする。
【0074】
そして、S200にて、サンプリング時間が経過したと判断されると、S210に移行して、イオン電流検出回路10に対するウィンドウ信号IWをHighからLow レベルに変化させて、イオン電流の検出を一旦終了し(図3に示す時点t3参照)、続くS220にて、S190にてサンプリングしたサンプリング時間内のイオン電流信号Siの変化に基づき、失火判定を行う。
【0075】
次に、S190にて、失火は発生しておらず、混合気は正常燃焼していると判断されると、S230に移行して、内燃機関が燃焼行程から排気行程に移行したか否かを判断することにより、排気行程になるのを待ち、内燃機関が排気行程に入ると、S240に移行して、点火信号IGをHighからLow レベルに変化させて、一次巻線L1への通電を遮断し、当該処理を一旦終了する。尚、これは、内燃機関が正常燃焼しているにもかかわらず失火判定後にそのまま一次巻線L1の通電を遮断すると、点火プラグ2に火花放電が発生して、混合気の燃焼に悪影響を及ぼすことが考えられるためである。
【0076】
一方、S190にて、サンプリング時間中にサンプリングしたイオン電流信号Siから、イオン電流を検出できず、失火したと判断されると、S250に移行して、点火信号IGをHighからLow レベルに変化させることにより、混合気を着火させるための火花放電を再度実行させる(図3に示す時点t3参照)。
【0077】
そして、続くS260では、内燃機関の運転状態(回転速度,負荷等)に基づき、火花放電の継続時間を予測し、その継続時間が経過した時刻を、イオン電流の検出開始タイミングとして設定し、続くS270にて、現在時刻が、設定された検出タイミングに達したか否かを判断することにより、検出タイミングになるのを待つ。
【0078】
次に、S270にて、検出タイミングに達したと判断されると、今度は、S280に移行して、上記S180と同様、イオン電流検出回路10に対して出力するウィンドウ信号IWをLow からHighレベルに変化させる(図3に示す時点t4参照)。
【0079】
そして、続くS290では、イオン電流検出回路10から出力されるイオン電流信号Siを取り込み、S300にて、S280の処理実行後、S110で求めたサンプリング時間が経過したか否かを判定し、サンプリング時間が経過していなければ再度S290に移行する、といった手順で、サンプリング時間内にイオン電流検出回路10から出力されたイオン電流信号Siをサンプリングする。
【0080】
そして、S300にて、サンプリング時間が経過したと判断されると、S310に移行して、イオン電流検出回路10に対するウィンドウ信号IWをHighからLow レベルに変化させて、イオン電流の検出を終了する(図3に示す時点t5)。そして、続くS320では、S190にてサンプリングしたサンプリング時間内のイオン電流信号Siの変化に基づき、失火判定を行い、その判定結果を記憶(又は表示)し、当該処理を終了する。
【0081】
以上説明したように、本実施例の内燃機関用点火装置は、点火コイル4の一次巻線L1に直列接続されたスイッチング素子8をオン・オフさせることにより、点火プラグ2に点火用高電圧を印加して、その電極間に火花放電を発生させる、フルトランジスタ型点火装置であり、点火コイル4の二次巻線L2の自己インダクタンスが、4H〜16Hの範囲内(例えば8H)に設定されている。このため、二次巻線L2の自己インダクタンスが20H〜30H程度に設定された従来の点火装置に比べ、二次巻線L2のインピーダンスが極めて小さくなり、点火プラグ2の火花放電の継続時間が短くなる。
【0082】
また、内燃機関を実際に運転する際には、図3に示すように、まず、内燃機関の運転状態に基づき求めた点火時期(時点t1)で点火プラグ2が火花放電するよう、図3に示す時点t0から時点t1までの間、スイッチング素子8をオンして点火コイル4の一次巻線L1を通電し、スイッチング素子8がターンオフした時点t1で、点火コイル4の二次巻線L2側に点火用高電圧を発生させて、この点火用高電圧にて点火プラグ2を火花放電させる。
【0083】
そして、火花放電は、そのまま放置しておけば、一次巻線L1への通電によって点火コイル4に蓄積されたエネルギが放出されるまで継続するが、本実施例では、火花放電の継続時間を計時し、これが、内燃機関の運転状態に基づき設定した放電時間に達した時点t2で、スイッチング素子8を再度オンして一次巻線L1を通電することにより、火花放電を強制終了させる。このため、点火プラグ2の火花放電の継続時間は、従来の点火装置に比べて、より短くなる。
【0084】
また、火花放電を強制終了させると、その後、内燃機関の運転状態に基づき設定したサンプリング時間が経過する時点t3までの間、イオン電流検出回路10から出力されるイオン電流信号Siをサンプリングする。
このサンプリングしたイオン電流信号Siの信号波形は、火花放電の終了に伴い二次巻線L2に発生する電圧変動(二次電圧V2の変動)の影響を受けるが、二次巻線L2の自己インダクタンスが従来のものに比べて小さいことから、二次電圧V2の変動期間,延いてはイオン電流信号Siの変動期間も短くなる。
【0085】
このため、本実施例によれば、火花放電開始後、混合気の燃焼に伴い発生したイオン量に対応したイオン電流を検出できるようになるまでの時間が、従来の点火装置に比べて極めて短くなり、混合気が着火し易く、火花放電を開始してから混合気の燃焼によってイオンが発生するまでの時間が短い運転条件下(内燃機関の高回転・高負荷運転時等)でも、イオン電流を正確に検出できることになる。
【0086】
また、本実施例では、イオン電流信号Siのサンプリングが終了すると(時点t3)、そのサンプリングしたイオン電流信号Siに基づき失火判定を行うが、この失火判定では、二次電圧V2の変動期間を除くイオン電流信号Siの信号波形を用いることにより、内燃機関の運転状態によらず、常に正確に失火判定を行うことが可能となる。
【0087】
また更に、本実施例では、失火判定の結果、失火が検出されると、スイッチング素子8をオフして一次巻線L1への通電を遮断することにより、点火プラグ2を再度火花放電させる。このため、一回目の火花放電にて混合気を着火・燃焼させることができなかった場合でも、この2回目の火花放電により混合気を着火・燃焼させることが可能になる。
【0088】
尚、本実施例においては、制御装置12で実行される点火制御処理の内、S120〜S150の処理が、本発明の点火制御手段として機能し、S160,170の処理が、本発明の火花放電休止手段として機能し、S180〜S220及びS250の処理が、本発明の再点火制御手段として機能する。
【0089】
以上のように、本実施例では、点火コイル4の二次巻線L2の自己インダクタンスを、従来のものに比べて極めて小さい4H〜16Hの範囲内に設定することにより、点火プラグ2の火花放電の継続時間及び火花放電終了時に生じる二次電圧V2の変動期間を、従来よりも短くし、しかも、1回目の火花放電の継続時間については、火花放電を強制終了させることにより、より短くするようにしている。
【0090】
これは、既述したように、混合気が着火し易く、火花放電開始後イオンが発生するまでの時間が短い運転条件下でも、イオン電流を正確に検出できるようにするためであるが、次に、こうした効果を裏付ける各種実験例について説明する。[実験例1]
まず、図4は、1.8L,4気筒の内燃機関を搭載した車両を用いて、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスがイオン電流に与える影響を測定した測定結果を表す。
【0091】
図4において、(a)は、上記実施例と同じイオン電流検出回路を備えたフルトランジスタ型点火装置で、点火コイルに、二次巻線の自己インダクタンスが8Hのものを用い、内燃機関をリーン空燃比で運転しつつ、車両を100km/hで走行させた際の、イオン電流信号Si、二次電圧V2及び気筒内燃焼圧力Piの測定結果であり、(b)は、二次巻線の自己インダクタンスが16Hの点火コイルを用いて同様の実験を行った測定結果であり、(c)は、二次巻線の自己インダクタンスが23Hの点火コイルを用いて同様の実験を行った測定結果である。尚、各測定結果の下方に記載の矢印↑は、火花放電の開始時期(点火時期)を表す。 そして、この測定結果から、二次巻線の自己インダクタンスが23Hの点火コイルを用いた場合には、火花放電終了時に生じる二次電圧V2の変動が長く続き、イオン電流信号Siもそれに応じて振動するため、混合気の燃焼に伴い発生したイオン量に対応したイオン電流波形が、その振動の影響を受けてしまうことが判った。また、二次巻線の自己インダクタンスを16H,8Hと小さくすると、火花放電終了時に生じる二次電圧V2の変動期間が短くなり、イオン電流信号Siが二次電圧V2の変動の影響を受け難くなることも判った。
【0092】
従って、この実験例1の測定結果から、イオン電流を正確に検出するには、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスを、従来のように20H〜30H程度に設定するのではなく、上記実施例のように、従来よりも小さい値(4H〜16H)に設定した方がよいことが判る。
【0093】
[実験例2]
次に、図5は、二次巻線の自己インダクタンスが16Hの点火コイルを用いて、実験例1と同様の点火装置で、1.8L,4気筒の内燃機関を運転させ、その運転時に、点火プラグの火花放電を最後まで継続させたとき(a)と、火花放電を強制終了させたとき(b)とで、イオン電流信号Siがどのように変わるかを測定結果を表す。
【0094】
尚、図5において、各測定結果の下方に記載の矢印t1は、火花放電の開始時期(点火時期)を表し、(b)の下方に記載の矢印t1は、スイッチング素子を再通電して火花放電を強制終了させたタイミングを表す。また、この実験では、実験例1と同様に、内燃機関には車両に搭載されたもの使用した。そして、図5の測定結果は、内燃機関をストイキ(理論空燃比)で運転させつつ、車両を100km/hで走行させた際に得られた値である。
【0095】
この測定結果から、火花放電を継続させると、火花放電の継続時間だけでなく、火花放電終了時に生じる二次電圧V2の変動期間も長くなり、イオン量に対応したイオン電流信号Siを検出できなくなることがあるのに対し、火花放電を強制遮断させると、火花放電の継続時間及び火花放電終了時の二次電圧V2の変動期間が共に短くなって、イオン量に対応したイオン電流信号Siが得られるようになることが判った。
【0096】
従って、この実験例3による測定結果から、イオン電流を正確に検出するには、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスを、従来よりも小さい値に設定するだけではなく、上記実施例のように、火花放電の継続期間が、混合気を着火し得る範囲内で、できるだけ短くなるように、火花放電を強制的に終了させるとよいことが判る。
[実験例3]
次に、図6は、二次巻線の自己インダクタンスが16Hの点火コイルと、同じく自己インダクタンスが23Hの点火コイルとを夫々用いて、実験例1と同様の点火装置で、1.8L,4気筒の内燃機関を、点火プラグの火花放電を強制終了させつつ運転させ、その運転時に、混合気が正常燃焼(着火)したときと、失火したときとで、イオン電流信号Siがどのように変化するかを測定した測定結果を表す。
【0097】
尚、図6において、(a)は、二次巻線の自己インダクタンスが16Hの点火コイルを用いた場合の測定結果であり、(b)は、二次巻線の自己インダクタンスが23Hの点火コイルを用いた場合の測定結果である。また、各測定結果の下方に記載の矢印は、火花放電の開始時期(点火時期)を表す。また、この実験では、実験例1,実験例2と同様に、内燃機関には車両に搭載されたもの使用した。そして、図6の測定結果は、内燃機関をストイキ(理論空燃比)で運転させつつ、車両を75km/hで走行させた際に得られた値である。
【0098】
この測定結果から、二次巻線の自己インダクタンスが23Hの点火コイルを用いた場合には、火花放電終了後に生じる振動により、イオン電流信号Siから混合気の失火・着火を判定できないことがあるのに対し、二次巻線の自己インダクタンスが16Hの点火コイルを用いた場合には、火花放電終了後に生じる振動の発生期間が短いことから、その振動後のイオン電流信号Siの信号波形から、混合気の失火・着火を正確に判定できることが判った。
【0099】
従って、この実験例3による測定結果からも、イオン電流を正確に検出するには、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスを、従来よりも小さい値(4H〜16H)に設定した方がよいことが判る。
[実験例4]
次に、図7は、二次巻線の自己インダクタンスが23Hに設定された上記実施例の点火コイルを用いて、下記(1)〜(3)の点火制御を行うことにより、2L,6気筒の内燃機関を運転し、各点火制御において内燃機関を運転し得る混合気の空燃比(A/F)を測定した測定結果(a)、及び、各点火制御における気筒内燃焼圧力Piのばらつき測定した測定結果(b)を表す。
【0100】
(1) 火花放電の継続時間を制限することなく(継続時間は2.0msec.となった)、火花放電を一回だけ実行させる従来の点火制御。
(2) 火花放電の継続時間を、夫々、1.5msec.及び0.7msec.に制限し、火花放電を一回だけ実行させる点火制御。
【0101】
(3) 火花放電の継続時間を0.7msec.に制限しつつ、火花放電を行い、その1回目の火花放電後にイオン電流信号Siに基づき失火判定を行って、失火検出時には再度火花放電を実行させる上記実施例と同様の点火制御。
尚、この実験での内燃機関の運転条件は、回転速度:2000r.p.m.、ブースト(吸入負圧):130mmHgである。
【0102】
そして、この測定結果(a)から、火花放電を一回だけ行う点火制御では、火花放電の継続時間を短くし過ぎると(本測定結果では0.7msec.)、混合気を着火させることができない運転領域が増えて、運転可能な混合気の空燃比の上限が低くなることが判った。しかし、火花放電の継続時間を同様に制限しても、上記実施例のように、失火判定を行って、失火検出時には火花放電を再度実行するようにすれば、2回目の火花放電で混合気を着火させることが可能になり、運転可能な混合気の空燃比の上限も、従来の点火制御と同程度になることが判った。
【0103】
一方、測定結果(b)からは、火花放電を一回だけ行う点火制御では、火花放電の継続時間を短くし過ぎると(本測定結果では0.7msec.)、混合気を着火させることができない運転領域が増えることから、内燃機関を安定して運転することができず、内燃機関運転時の気筒内燃焼圧力Piのばらつきが大きくなることが判った。しかし、火花放電の継続時間を同様に制限しても、上記実施例のように、失火判定を行って、失火検出時には火花放電を再度実行するようにすれば、内燃機関を安定して運転することができるようになり、内燃機関運転時の気筒内燃焼圧力Piのばらつきも、従来の点火制御と同程度になることが判った。
【0104】
従って、この実験例4による測定結果からは、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスを小さい値(4H〜16H)に設定し、点火プラグの火花放電の継続時間を運転状態に応じて制限するようにした場合には、上記実施例のように、火花放電後に、イオン電流信号Siを用いて失火判定を行い、失火検出時には、点火プラグを再度火花放電させるようにするとよいことが判る。
[実験例5]
次に、従来の点火コイルを用いた点火装置において検出したイオン電流に基づくノッキングの検出精度と、本発明の点火コイルを用いた点火装置において検出したイオン電流に基づくノッキングの検出精度とを比較するため、図8に示す回路構成にて、ノッキング発生時にイオン電流信号Siに重畳されるノッキング信号成分を測定(シミュレーション)した。そのシミュレーション結果を、図9に示す。
【0105】
尚、このシミュレーションには、図8に示すように、点火コイル4の一次巻線L1の両端に、夫々、バッテリ6及びNPNパワートランジスタからなるスイッチング素子8を接続し、二次巻線L2の一端(図1に示した実際の点火装置とは反対側)に、外側電極2aがグランドに接地された点火プラグ2の中心電極2bを接続し、二次巻線L2の他端に、コンデンサ28を介して、一端がグランドに接地された抵抗20の他端を接続すると共に、抵抗20とコンデンサ28との間に、カソードが接地されたダイオード22のアノードを接続し、更に、コンデンサ28の二次巻線側に、アノードが接地されたツェナーダイオード34のカソードを接続した、シミュレーション用の点火回路を用いた。尚、これら各構成要素は、上記実施例のものと同じものを使用しているため、同一符号としている。
【0106】
そして、点火プラグ2に対しては、イオン電流の経路となる高抵抗値(1MΩ)の抵抗50を並列に接続すると共に、イオン電流にノッキング信号成分を重畳するための回路を並列に接続した。
ノッキング信号重畳用の回路は、アノードが点火プラグ2の中心電極2b側に接続されたダイオード52と、エミッタが抵抗56を介してグランドに接地されたNPN型のトランジスタ53と、一端がダイオード52のカソードに接続され、他端がトランジスタ53のコレクタに接続された抵抗54と、トランジスタ53のベースに接続された抵抗58とからなり、この抵抗58を介してトランジスタ53のベースに周波数7kHz,14kHzの駆動信号を印加することにより、イオン電流にノッキング信号成分を重畳できるようにされている。
【0107】
また、このシミュレーションでは、二次巻線L2の自己インダクタンスが、4H,8H,16H,23Hに設定された4種類の点火コイルを用いた。そして、これらの点火コイルを備えた点火回路毎に、スイッチング素子8をオン・オフすることで、点火プラグ2の電極間に火花放電を発生させ、コンデンサ28を充電し、火花放電終了後、コンデンサ28に充電された検出用高電圧によって、抵抗R50にリーク電流(シミュレーション用のイオン電流)を流し、同時に、トランジスタ53を周波数7kHz,14kHzの駆動信号にてスイッチングすることにより、点火プラグ2の電極間の等価抵抗を、抵抗R50から、抵抗R50と抵抗R54と抵抗R56との合成抵抗(=R50×(R54+R56)/(R50+R54+R56)へと周期的に切り換え、そのときイオン電流検出用の抵抗20の両端に生じる電圧ViをFFT(高速フーリエ変換)解析した。その解析結果が、図9に示すシミュレーション結果である。
【0108】
図9に示す如く、二次巻線L2の自己インダクタンスが4Hの点火コイル4を用いた場合、イオン電流の検出電圧Viには、トランジスタ53のスイッチング周波数7kHz,14kHzと同じ信号成分と、これら各信号の高調波成分とが重畳されている。しかし、点火コイル4の二次巻線L2の自己インダクタンスが、8H、16H、23Hと大きくなるにつれて、これら各信号成分のレベルが低下し、特に、二次巻線L2の自己インダクタンスが23Hの点火コイル4を用いた場合には、14kHzを越える高調波成分がノイズに埋もれてしまい、計測できないことが判った。
【0109】
従って、この実験例5によるシミュレーション結果からは、イオン電流検出回路を用いて検出したイオン電流信号Siからノッキングを正確に検出するには、点火コイル4の二次巻線L2の自己インダクタンスを、従来よりも小さい値(4H〜16H)に設定した方がよいことが判る。
【0110】
尚、点火コイル4の二次巻線L2の自己インダクタンスが大きい程、イオン電流に重畳されるノッキング信号成分のレベルが低くなるのは、二次巻線L2とこれに接続される点火系各部の容量成分とにより、点火系全体がローパスフィルタとなって、高周波のノッキング信号成分が減衰してしまうためであると考えられる。
[実験例6]
次に、図10〜図14は、2L,4気筒の内燃機関を用いて、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスが、イオン電流に基づくノッキングの検出精度に与える影響を実際に測定した測定結果を表す。
【0111】
尚、この実験例6では、二次巻線の自己インダクタンスを4H、8H、12H、16H、23Hに設定した5種類の点火コイルを用いて、内燃機関を、ノッキング無しの状態及びノッキング有りの状態で運転した。
またこの運転時には、イオン電流に基づくノッキングの検出精度と、気筒内の燃焼圧力に基づくノッキングの検出精度と、内燃機関の振動を検出するノックセンサを用いたノッキングの検出精度とを比較するため、内燃機関の回転速度が1600[r.p.m.]、4000[r.p.m.]、6000[r.p.m.]のときに、これら各ノッキング検出方法に沿った下記(1) 〜(3) の測定を行った。
【0112】
(1) 上記実施例と同じイオン電流検出回路を用いてイオン電流を検出し、得られたイオン電流信号Siを、周波数帯域3kHz〜20kHzのバンドパスフィルタに通して、イオン電流信号Siに重畳されたノッキング信号成分を抽出し、この抽出したノッキング信号成分を所定のノック判定期間中積分した。
【0113】
(2) 気筒内の燃焼圧力を検出する圧力センサからの検出信号を、周波数帯域3kHz〜20kHzのバンドパスフィルタに通して、ノッキング信号成分を抽出し、この抽出したノッキング信号成分を所定のノック判定期間中積分した。
(3) ノックセンサからの検出信号を、周波数帯域3kHz〜20kHzのバンドパスフィルタに通して、ノッキング信号成分を抽出し、この抽出したノッキング信号成分を所定のノック判定期間中積分した。
【0114】
そして、上記(1) 〜(3) の測定方法により得られた各信号の積分値を、夫々、内燃機関にノッキングが発生しているときの積分値と、内燃機関にノッキングが発生していないときの積分値とに分け、各値の平均値の比をS/N比(=ノッキング発生時の積分値/ノッキング無時の積分値)として求めた。
【0115】
図10〜14は、その結果(S/N比)を表しており、図10は、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスが4HであるときのS/N比を、図11は、同じく8HであるときのS/N比を、図12は、同じく12HであるときのS/N比を、図13は、同じく16HであるときのS/N比を、図14は、同じく23HであるときのS/N比を、夫々表す。
【0116】
そして、この測定結果から、二次巻線L2の自己インダクタンスが、4Hから、8H,12H,16Hと大きくなるに従い、イオン電流に基づくノッキングの検出精度(S/N比)が低下してゆき、二次巻線L2の自己インダクタンスを23Hにすると、イオン電流に基づくノッキングの検出精度(S/N)が、ノックセンサで得られる検出精度(S/N)よりも悪くなってしまうことが判った。
【0117】
従って、この実験例6からも、イオン電流に基づくノッキングの検出精度を高めるには、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスをできるだけ小さくすることが望ましく、少なくとも16H以下に設定しないと、ノッキングの検出精度を確保できないことが判った。
【0118】
尚、上記各種実験例から、内燃機関の運転状態に対応したイオン電流を正確に検出するには、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスを、16H以下のできるだけ小さい値に設定すればよいこと判った。そこで、自己インダクタンスの下限を確認するために、二次巻線の自己インダクタンスを4Hよりも小さい点火コイルを作製し、上記と同じ実験をしようとしたが、二次巻線の自己インダクタンスを4Hよりも小さくすると、混合気の着火に必要な火花放電の継続時間を確保することができず、内燃機関を正常に運転できないことが判った。従って、点火コイルの二次巻線の自己インダクタンスは、4H以上に設定する必要がある。
【0119】
以上、本発明の実施例及びその効果を裏付ける各種実験例について説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記実施例では、点火プラグの火花放電後に、イオン電流から失火を検出すると、点火プラグを再度火花放電させる、再点火制御手段としての処理を、一回だけ行うものとして説明したが、この再点火制御手段としての処理は、複数回実行するようにしてもよい。具体的には、図2のS220にて失火を検出した際に、失火の連続回数をカウントし、そのカウント値が再点火実行可能回数を表す設定値に達していれば、S250に移行し、逆に、カウント値が再点火実行可能回数を表す設定値に達してい無ければ、S150に戻って、点火プラグを火花放電させるようにしてもよい。そして、このようにすれば、混合気をより確実に着火・燃焼させることができるようになる。
【0120】
また、上記実施例では、イオン電流から失火を判定するまでの点火プラグの火花放電回数は、1回であるとして説明したが、例えば、図15に示すように、点火信号IGを複数回(図では3回)連続して反転させることにより、スイッチング素子8を複数回連続してオン・オフさせて、点火プラグを複数回連続して火花放電させ、その後、最後の火花放電が完了(強制終了)した後、イオン電流を検出して、失火を判定するようにしてもよい。そして、このようにすれば、前述した直噴式の内燃機関のように、混合気を着火・燃焼させるのに要する火花放電の継続時間が長い内燃機関であっても、混合気をより確実に着火させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の内燃機関用点火装置の構成及びイオン電流検出特性を表す説明図である。
【図2】 制御装置による点火制御処理を表すフローチャートである。
【図3】 点火制御処理に伴う装置各部の信号波形を表すタイムチャートである。
【図4】 実験例1による測定結果を表すグラフである。
【図5】 実験例2による測定結果を表すグラフである。
【図6】 実験例3による測定結果を表すグラフである。
【図7】 実験例4による測定結果を表すグラフである。
【図8】 実験例5で用いたシミュレーション用の点火回路を表す電気回路図である。
【図9】 実験例5によるシミュレーション結果を表すグラフである。
【図10】 実験例6において二次巻線の自己インダクタンスを4Hにしたときの測定結果を表すグラフである。
【図11】 実験例6において二次巻線の自己インダクタンスを8Hにしたときの測定結果を表すグラフである。
【図12】 実験例6において二次巻線の自己インダクタンスを12Hにしたときの測定結果を表すグラフである。
【図13】 実験例6において二次巻線の自己インダクタンスを16Hにしたときの測定結果を表すグラフである。
【図14】 実験例6において二次巻線の自己インダクタンスを23Hにしたときの測定結果を表すグラフである。
【図15】 点火制御処理の他の例を説明するタイムチャートである。
【符号の説明】
2…点火プラグ、2a…外側電極、2b…中心電極、4…点火コイル、L1…一次巻線、L2…二次巻線、6…バッテリ、8…スイッチング素子、10…イオン電流検出回路、12…制御装置、20,24…抵抗、22…ダイオード、26,34…ツェナーダイオード、28…コンデンサ、30…充電用ダイオード、32…放電用スイッチ。
Claims (6)
- 二次巻線の一端が点火プラグに接続された点火コイルと、
該点火コイルの一次巻線に流れる一次電流を、外部からの指令に従い通電、遮断するスイッチング素子と、
該スイッチング素子をオン・オフさせることにより、前記点火コイルの二次巻線に点火用高電圧を発生させて、前記点火プラグを火花放電させる点火制御手段と、
前記点火プラグの火花放電後に、前記点火プラグの電極間を流れるイオン電流を検出するイオン電流検出手段と、
を備えた内燃機関用点火装置であって、
前記点火コイルの前記二次巻線の自己インダクタンスを4H〜16Hの範囲内に設定すると共に、
内燃機関の運転状態に基づき、混合気が着火し難いときには長く、混合気が着火し易いときには短くなるよう放電時間を設定し、前記点火プラグの火花放電の継続時間が当該放電時間に達すると、前記点火プラグの火花放電を強制終了させる火花放電休止手段を設けたことを特徴とする内燃機関用点火装置。 - 前記イオン電流検出手段により検出されたイオン電流に基づき混合気の着火・失火を判定し、失火を判定すると、前記スイッチング素子を再度駆動して、前記点火プラグを再度火花放電させる再点火制御手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の内燃機関用点火装置。
- 二次巻線の一端が点火プラグに接続された点火コイルと、
該点火コイルの一次巻線に流れる一次電流を、外部からの指令に従い通電、遮断するスイッチング素子と、
該スイッチング素子をオン・オフさせることにより、前記点火コイルの二次巻線に点火用高電圧を発生させて、前記点火プラグを火花放電させる点火制御手段と、
前記点火プラグの火花放電後に、前記点火プラグの電極間を流れるイオン電流を検出するイオン電流検出手段と、
を備えた内燃機関用点火装置であって、
前記点火コイルの前記二次巻線の自己インダクタンスを4H〜16Hの範囲内に設定すると共に、
前記イオン電流検出手段により検出されたイオン電流に基づき混合気の着火・失火を判定し、失火を判定すると、前記スイッチング素子を再度駆動して、前記点火プラグを再度火花放電させる再点火制御手段を設け、
前記再点火制御手段の動作を、内燃機関の運転状態に応じて制御することを特徴とする内燃機関用点火装置。 - 内燃機関の運転状態に基づき、混合気が着火し難いときには長く、混合気が着火し易いときには短くなるよう放電時間を設定し、前記点火プラグの火花放電の継続時間が当該放電時間に達すると、前記点火プラグの火花放電を強制終了させる火花放電休止手段を設けたことを特徴とする請求項3記載の内燃機関用点火装置。
- 前記イオン電流検出手段は、前記点火プラグの火花放電後に、点火用高電圧とは逆極性の検出用高電圧を前記点火プラグに印加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関用点火装置。
- 前記点火制御手段は、内燃機関の1燃焼サイクルの燃焼タイミングにおいて、前記スイッチング素子を複数回連続してオン・オフすることにより、前記点火プラグを複数回連続して火花放電させ、前記イオン電流検出手段は、前記点火制御手段が前記点火プラグを複 数回連続して火花放電させた後に、イオン電流を検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関用点火装置。
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